(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アームの先端部に取付けられ、前記アームからその先端まで連続した通路を有する産業用ロボットの手首構造であって、筒状に形成されている第1連結部材と、前記第1連結部材の一方の開口端部に固定された環状の固定部材、及び前記固定部材の内側に回動可能に設けられた環状の第1回動部材を有する関節体と、筒状に形成され、その内部空間が前記第1連結部材の内部空間と繋がるよう前記関節体の第1回動部材に締結されている第2連結部材と、前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結する第1締結部材とを備え、前記第1連結部材は、前記一方の開口部及びそれと異なる他方の開口部を両端部に夫々有し、且つ前記一方の開口部及びそれとは異なる他方の開口部の開口方向の成す角度が鈍角になるように形成され、前記第1回動部材及び前記第2連結部材には、前記第1回動部材から前記第2連結部材に達する有底の第1通し孔が複数形成され、前記複数の第1通し孔は、前記第2連結部材から所定方向に延びる軸線に沿って延在し、前記第1連結部材は、前記複数の第1通し孔のうち一部の第1通し孔は、その軸線が前記他方の開口部内を通過するように前記他方の開口部から表出するよう形成され、且つ前記第2連結部材を前記第1連結部材に対して相対的に回動させることで前記複数の第1通し孔が順番に表出するよう構成され、前記第1締結部材は、前記第1通し孔に前記第1回動部材の他方の開口部から通されている産業用ロボットの手首構造の組付け方法において、
前記第1連結部材に固定された前記第1回動部材の第1通し孔に前記第1締結部材を通して前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結する締結工程と、
前記締結工程後に前記第1連結部材を前記アームの先端部に連結する連結工程とを有し、
前記締結工程では、前記第2連結部材を前記第1連結部材に対して相対回動させて前記複数の第1通し孔を順番に前記他方の開口部から表出させ、表出する前記第1通し孔に前記第1締結部材を順番に通して前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結するようになっている、産業用ロボットの手首構造の組付け方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の手首構造では、傘歯車と第2関節部とを固定するボルトを通すための通し孔が第2関節部に形成されている。この通し孔は、第2関節部の外側に開口しており、ボルトを外側から挿入するようになっている。そのため、通し孔の開口が外側に表出しており、この開口から異物が入って通し孔の中に溜まることがある。特に、手首構造を塗装用ロボット等で使用する場合、跳ね返された塗料が前記外側に表出する開口から入ることがある。入った塗料は通し孔の中に溜まっていくのであるが、その溜まった塗料が作業中に飛散することがあり、飛散して製品に付着することで製品の品質低下を招く。このような品質低下を防ぐべく手首構造に付着した塗料を除去するべく手首構造の外周部を清掃するが、第2関節部の外周部に複数の開口が形成されていると清掃がしにくく、清掃時間が長くなる。
【0005】
そこで、本発明は、第2連結部材の外周部に形成される孔の中に溜まる異物を低減し、且つ第2連結部材の外周部の清掃を容易にすることができる産業用ロボットの手首構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の産業用ロボットの手首構造は、アームの先端部に取付けられ、前記アームからその先端まで連続した通路を有するものであって、筒状に形成されている第1連結部材と、前記第1連結部材の一方の開口端部に固定された環状の固定部材、及び前記固定部材の内側に回動可能に設けられた環状の第1回動部材を有する関節体と、筒状に形成され、その内部空間が前記第1連結部材の内部空間と繋がるよう前記関節体の第1回動部材に締結されている第2連結部材と、前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結する第1締結部材とを備え、前記第1回動部材及び前記第2連結部材には、前記第1回動部材から前記第2連結部材に達する有底の第1通し孔が形成され、前記第1締結部材は、前記第1通し孔に前記第1回動部材側から通されているものである。
【0007】
本発明に従えば、第1通し孔は、有底であり、且つ第1回動部材側から第一締結部材を通すようになっているので、第1通し孔の開口が第1連結部材の外側に表出しない。それ故、第2連結部材の外周部に第1締結部材を通すための孔を形成する必要がなくなり、第2連結部材の外周部に形成される孔の数を低減することができる。これにより、従来技術のように孔の中に異物が溜まるようなことを抑制することができ、また第2連結部材の外周部の清掃をしやすくすることができる。
【0008】
上記発明において、前記第1連結部材は、前記一方の開口部及びそれとは異なる他方の開口部の開口方向の成す角度が鈍角になるように形成され、前記第1回動部材及び第2連結部材には、複数の前記第1通し孔が形成され、前記複数の第1通し孔は、前記第2連結部材から所定方向に延在し、前記第1連結部材は、前記複数の第1通し孔のうち一部の第1通し孔だけが前記他方の開口部から前記所定方向に向かって表出するよう形成され、且つ前記第2連結部材を前記第1連結部材に対して相対的に回動させることで前記複数の第1通し孔が順番に表出するよう構成されていることが好ましい。
【0009】
上記構成に従えば、一方の開口部及び他方の開口部の開口方向の成す角度が鈍角になっているので、第2連結部材を第1連結部材に対して相対的に回動させることで第2連結部材の向きを様々な方向に変えることができる。また、一方の開口部及び他方の開口部の開口方向の成す角度が鈍角になっているにも関わらず複数の第1通し孔のうちの一部が他方の開口部から所定方向に表出しているので、第1締結部材を締結するための工具を他方の開口部から真直ぐ入れることができる。それ故、工具が入れやすく、また作業しやすい。更に、第1連結部材に対して第2連結部材を回すことで隠れている第1通し孔を表出させることができるので、一部の第1通し孔しか他方の開口部から表出しなくても全ての第1通し孔に第1締結部材を通すことが容易であり、手首構造の組立が容易である。
【0010】
上記発明において、前記第1回動部材の内側に回動可能に設けられている第2回動部材と、筒状に形成され、その内部空間が第2連結部材の内部空間と繋がるよう前記第2連結部材に回動可能に設けられ、且つ前記第2回動部材に連動して回転する第3連結部材と、前記第1回動部材及び前記第2回動部材を回動させるための回動駆動ユニットとを備え、前記第1回動部材は、前記回動駆動ユニットからの動力が伝達される第1歯車部を有し、前記第2回動部材は、前記回動駆動ユニットからの動力が伝達される第2歯車部を有し、前記第1締結部材は、前記第1歯車部と前記第2歯車部との間に配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、第1締結部材を第1歯車部の外側に配置する場合に比べて第1歯車部の外形寸法を大きくすることができる。これにより、第1連結部材を大きくすることなく第1歯車部の耐久性を向上させることができる。
【0012】
上記発明において、前記固定部材を前記第1連結部材に締結して固定する第2締結部材を備え、前記固定部材及び第1連結部材には、前記固定部材から前記第1連結部材の一方の開口部に達する有底の第2通し孔が形成され、前記第2連結部材は、前記第2通し孔を覆う被覆部を有していることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、前記固定部材と第1連結部材と締結するための第2通し孔が覆われるので、手首構造の外方に開口する孔の数を低減することができる。これにより、異物が孔の中に溜まることを抑制することができ、また手首構造の外周部の清掃がしやすくなる。
【0014】
本発明は、アームの先端部に取付けられ、前記アームからその先端まで連続した通路を有する産業用ロボットの手首構造であって、筒状に形成されている第1連結部材と、前記第1連結部材の一方の開口端部に固定された環状の固定部材、及び前記固定部材の内側に回動可能に設けられた環状の第1回動部材を有する関節体と、筒状に形成され、その内部空間が前記第1連結部材の内部空間と繋がるよう前記関節体の第1回動部材に締結されている第2連結部材と、前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結する第1締結部材とを備え、前記第1回動部材及び前記第2連結部材には、前記第1回動部材から前記第2連結部材に達する有底の第1通し孔が形成され、前記第1締結部材は、前記第1通し孔に前記第1回動部材側から通されている産業用ロボットの手首構造の組付け方法において、前記第1連結部材に固定された前記関節体の第1回動部材の第1通し孔に前記第1締結部材を通して前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結する締結工程と、前記締結工程後に前記第1連結部材を前記アームの先端部に連結する連結工程とを有している方法である。
【0015】
上記構成に従えば、前記固定部材と第1連結部材と締結するための孔が外側に表出していないので、外方に開口する孔の数を低減することができる手首構造を容易に組み付けることができる。また、手首構造をその先端側からの組立てることができるので、ロボットとは別に手首構造を先に組立てることができるので、ロボットへの取付時間を短縮することができる。
【0016】
上記発明において、上述するの産業用ロボットの手首構造の組付け方法において、前記第1連結部材は、前記一方の開口部及びそれとは異なる他方の開口部の開口方向の成す角度が鈍角になるように形成され、前記第1回動部材及び第2連結部材には、複数の前記第1通し孔が形成され、前記複数の第1通し孔は、前記第2連結部材から所定方向に延在し、前記第1連結部材は、前記複数の第1通し孔のうち一部の第1通し孔だけが前記他方の開口部から前記所定方向に向かって表出するよう形成されており、締結工程では、前記第2連結部材を前記第1連結部材に対して相対回動させて前記複数の第1通し孔を順番に表出させ、表出する前記第1通し孔に前記第1締結部材を順番に通して前記第1回動部材と前記第2連結部材とを締結するようになっていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、第1連結部材に対して第2連結部材を回すことで隠れている第1通し孔を表出させることができるので、複数の第1通し孔を順次表出させてそこに第1締結部材を通すことで、全ての第1通し孔に第1締結部材を通すことができる。それ故、他方の開口部から一部の第1通し孔しか表出しない手首構造であっても全ての第1通し孔に第1締結部材を通すことが容易であり、容易に手首構造を組立てることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第2連結部材の外周部に形成される孔の中に溜まる異物を低減することができ、また第2連結部材の外周部の清掃を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、前述する図面を参照しながら、本件発明の実施形態の手首構造1について説明する。なお、全ての図を通じて同一又は相当する要素には同じ参照符号を付してその重複する説明を省略する。また、以下の説明において使用する方向の概念は、説明の便宜上で使用するものであって、必ずしもその方向に限定されるものではない。また、以下に説明する手首構造1は、本発明の一つの実施形態に過ぎない。従って、本発明は、実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、又は変更が可能である。
【0021】
[手首構造の構成]
手首構造1は、その先端部に塗装用ガン、溶接用ガンや工具等のアタッチメントを取付可能に構成されている産業用ロボット2(
図2参照)に備わっている。産業用ロボット2は、例えば多関節ロボットであり、前記アタッチメントを任意の位置に移動させて作業するようになっている。産業用ロボット2は、その先端側にアーム2a(
図2参照)を有しており、このアーム2aの先端部に
図1に示すような手首構造1が設けられている。
図1〜3に示すように、手首構造1は、3つの筒状の連結部材11〜13を有している。
【0022】
<第1連結部材>
第1連結部材11は、側面視で大略三角形状になっており、一方の開口部11aの開口方向(つまり、開口面の法線方向、
図3参照)A1と他方の開口部11bの開口方向A2(
図3参照)との成す角度αが鈍角、本実施形態では約120度になっている。また、第1連結部材11内には、側面視で円弧状の管状部14が形成されている。管状部14は、その中に第1連通路14aを有しており、この第1連通路14aによって2つの開口部11a,11bが繋がっている。また、一方の開口部11aを規定する一方の開口端部11eには、関節体15を介して第2連結部材12が回動可能に設けられており、他方の開口部11bには、後述するように産業用ロボット2のアーム2aの先端部が挿入されている。
【0023】
<関節体>
関節体15は、大略円環状の部材であり、一方の開口部11aに部分的に挿入するようにして一方の開口端部11eに設けられている。関節体15は、外側環状部材21と、中央環状部材22と、内側環状部材23とを有している。固定部材である外側環状部材21は、その内周部に外側軸受部材25を保持するための円環状の部材である。外側環状部材21の外周面は、第1連結部材11の外周面と略面一になっており、その内周部に円環状の外側軸受部材25が内嵌されている。更に詳細に説明すると、外側環状部材21は、2つの円環状の保持部21a,21bを有しており、その2つの保持部21a,21bがその軸線が略一致するように一方の開口端部11eに重ねて設けられている。この2つの保持部21a,21bは、それらを貫通する複数のボルト24によって一方の開口端部11eに締結されている。また、各保持部21a,21bの内周部には、半径方向内に突出する突起部分が形成されている。この突起部分の間には、外側軸受部材25が介在しており、保持部21a、21bを一方の開口端部11eに締結することで外側軸受部材25の外縁部が突起部分によって挟持されている。そして、この外側軸受部材25には、中央環状部材22が内嵌されており、外側軸受部材25を介して中央環状部材22が外側環状部材21に設けられている。
【0024】
第1回動部材である中央環状部材22は、大略円環状の部材であり、その先端側の開口端部に第2連結部材12が締結されている。更に詳細に説明すると、中央環状部材22は、円環状に形成されている2つの第1傘歯車26及びスペーサ部27を有しており、第1傘歯車26及びスペーサ部27は、その軸線が略一致するように重ねられている。第1傘歯車26は、一方の開口部11aに挿入されている。第1傘歯車26の外縁部には、周方向全周にわたって傘状の歯部26aが形成されており、その外縁部より内側の部分には、複数の締結孔18と複数の第1通し孔28が形成されている。
【0025】
締結孔18は、周方向に間隔をあけて、例えば等間隔で配置されており、関節体15の軸線方向、つまり開口方向B1に延在している。締結孔18は、第1連結部材11内に開口を有する有底の孔であり、スペーサ部27まで達している。つまり、締結孔18の底がスペーサ部27に形成されている。この締結孔18には、開口がある第1傘歯車26側からボルト19が通されている。このボルト19は、スペーサ部27に螺合されており、第1傘歯車26をスペーサ部27に締結している。これら隣接する締結孔18の間には、第1通し孔28が位置している。
【0026】
第1通し孔28は、周方向に間隔をあけて、例えば等間隔で形成されており、関節体15の軸線方向、つまり開口方向B1に延在している。この第1通し孔28は、第1連結部材11内に開口を有する有底の孔であり、スペーサ部27を貫通している。また、スペーサ部27には、後で詳述する第2連結部材12の一方の開口端部12cが当接しており、第1通し孔28は、この第2連結部材12まで達し、第2連結部材12にその底が形成されている。この第1通し孔28には、開口がある第1傘歯車26側からボルト29(第1締結部材)が通されており、通されたボルト29は、更に第2連結部材12に螺合され、第1傘歯車26及びスペーサ部27を第2連結部材12に締結している。また、第1傘歯車26及びスペーサ部27の外周部には、夫々突起部分が形成されており、これらの突起部分は、第1傘歯車26及びスペーサ部27を第2連結部材12に締結することによって外側軸受部材25を挟持している。
【0027】
なお、締結孔18及び第1通し孔28の第1傘歯車26における位置は、必ずしも前述のような位置に限られない。また、締結孔18を第1通し孔28に代えてもよく、例えば、締結孔18をなくして全ての孔を第1通し孔第1通し孔28としてもよい。
【0028】
このように、第1連結部材11側から、つまり第1連結部材11内に位置する中央環状部材22から第1通し孔28にボルト29が通されており、その底が第2連結部材12に形成されているので、第1通し孔28の開口が外側に表出しない。それ故、第2連結部材12の外周部にボルト29を通すための通し孔を形成する必要がなくなる。これにより、第2連結部材12の外周部に形成される孔の数を低減することができ、孔の中に異物が溜まることを抑制することができ、また第2連結部材12の外周部の清掃がしやすくなる。
【0029】
<第2連結部材>
第2連結部材12は、第1連結部材11と同様に側面視で大略三角形状に形成されており、一方の開口部12aの開口方向(つまり、開口面の法線方向)B1と他方の開口部12b(
図1の下側の開口部)の開口方向B2との成す角度βが鈍角、本実施形態では約120度になっている。また、第2連結部材12内には、側面視で円弧状の管状部16が形成されており、管状部16は、その中に2つの開口部12a,12bを繋ぐ第2連通路16aを有している。
【0030】
このような形状を有する第2連結部材12は、一方の開口部12aを規定する一方の開口端部12cに第1通し孔28の一部が形成されている。一方の開口端部12cには、互いの軸線が一致するようにスペーサ部27が配置され、そこにボルト29によって第1傘歯車26とスペーサ部27とが締結されている。また、第2連結部材12の外周部には、その一方の開口部12a側に周方向全周にわたって延在するフランジ部12dが形成されている。被覆部であるフランジ部12dは、半径方向外方に突出しており、外側環状部材21に対向している。この外側環状部材21の外周縁部には、ボルト24(第2締結部材)を通すための複数の第2通し孔30が形成されており、第2通し孔30は、周方向に等間隔をあけて夫々位置している。第2通し孔30は、外側環状部材21を貫通して第1連結部材11に達し、第1連結部材11に底を有する有低の孔であり、その開口がフランジ部12dによって覆われている。このように第2通し孔30の開口を覆うことによって塗料等の異物が第2通し孔30に溜まることを防ぐことができ、また溜まった異物が飛散することを防ぐことができる。他方、第2連結部材12の他方の開口端部12eには、軸受保持部材31が設けられている。
【0031】
軸受保持部材31は、大略円環状の部材であり、その内側には、大略円環状の先端側軸受部材32が内嵌されている。詳細に説明すると、軸受保持部材31は、円環状の2つの保持部31a,31bを有しており、その2つの保持部31a,31bが互いの軸線が略一致するように他方の開口端部12eに重ねて配置されている。この2つの保持部31a,31bは、それらを貫通する複数のボルト33によって他方の開口端部12eに締結されている。各保持部31a,31bの内周部には、半径方向に突出する突起部分が形成されており、これらの突起部分の間に先端側軸受部材32が介在している。そして、保持部31a、31bを他方の開口端部12eに締結することで先端側軸受部材32の外縁部が突起部分により挟持されている。このように挟持された先端側軸受部材32には、回動部材34が内嵌されている。
【0032】
回動部材34は、円筒状の部材であり、第2連結部材12の他方の開口部12bからその中に挿入されている。回動部材34の先端側の外周部は、残余部分より小径になっており、その先端側の外周部に先端側軸受部材32が外嵌されている。また、回動部材34の先端部には、円筒状の第3連結部材13が配置されている。
【0033】
<第3連結部材>
第3連結部材13の基端部分は、軸受保持部材31内に挿入されており、回動部材34の外周部と共に先端側軸受部材32の内縁部を挟持している。また、第3連結部材13は、その中の第3連通路13aが回動部材34の内部空間と繋がるように互いの軸線を略一致させるようにして配置されており、複数のボルト35によって回動部材34の先端部に締結されている(
図9も参照)。なお、このボルト35は、第3連結部材13の内側に設けられており、ボルト35を通す孔も外側に表出していない。他方、第3連結部材13の先端部分には、図示しないアタッチメント等が着脱可能に取付けられる。
【0034】
また、第3連結部材13の外周部には、周方向全周にわたってフランジ部13bが形成されている。フランジ部13bは、半径方向外方に延在しており、軸受保持部材31に対向している。この軸受保持部材31の外縁部には、ボルト33を通すための複数の第3通し孔36が形成されており、第3通し孔36は、周方向に等間隔をあけて夫々位置している。第3通し孔36は、軸受保持部材31を貫通して第2連結部材12まで達し、その底が第2連結部材12に形成されている有底の孔であり、その開口がフランジ部13bによって覆われている。このように第3通し孔36の開口を覆うことによって塗料等の異物が孔に溜まること、及びその異物が飛散することを防ぐことができる。また、フランジ部13bの外周面は、軸受保持部材31の外周面に略面一になっている。
【0035】
<歯車の噛合構造>
また、回動部材34の内周部の基端側(つまり、アーム2a側)の部分は、その残余の部分より大径になっており、そこには第2連結部材12の管状部16の一方の開口端部16bが挿入されている。回動部材34は、その基端部(つまり、アーム2a側の端部)に第2傘歯車37を有しており、第2傘歯車37の外周縁には、周方向全周にわたって傘状の歯部37aが形成されている。この第2傘歯車37は、一方の開口端部16bを囲むように位置している。管状部16の周りには、他方の開口部12bと一方の開口部12aとを繋ぐ断面C字状の第1連通空間38が形成されており、この第1連通空間38に位置する第2傘歯車37の一部が第2連結部材12の一方の開口部12aに位置している。そして、この一方の開口部12aには、関節体15を構成する内側環状部材23が位置している。
【0036】
第2回動部材である内側環状部材23は、大略円環状の部材であり、中央環状部材22に内嵌されている内側軸受部材39を介して中央環状部材22に回動可能に設けられている。具体的に説明すると、第1傘歯車26及びスペーサ部27の内周部には、外周部と同様に夫々突起部分が形成されており、この突起部分の間に内側軸受部材39が介在しており、この内側軸受部材39は、第1傘歯車26及びスペーサ部27を第2連結部材12に締結することでこれらの突起部分によって挟持されている。そして、この内側軸受部材39に内側環状部材23が内嵌されている。
【0037】
内側環状部材23は、2つの傘歯車40,41を有しており、2つの傘歯車40,41は、その軸線が略一致するように重ねられて複数のボルト42によって締結されている。2つの傘歯車40,41は、内側環状部材23の両側端部の外縁部に相当する位置に周方向全周にわたって延在する傘状の歯部40a,41aを夫々有している。第3傘歯車40の歯部40aは、第2連結部材12の一方の開口部12aに挿入されており、そこに位置する第2傘歯車37の歯部37aに噛合している。他方、第4傘歯車41は、管状部14の一方の開口部14bを囲むように位置している。管状部14の周りには、一方の開口部11aと他方の開口部11bとを繋ぐ第2連通空間43が形成されており、第2連通空間43に位置する第4傘歯車41の歯部41aが他方の開口部11bに位置している。この歯部41a(第4歯車部)は、その半径方向外側にある第1傘歯車26の歯部26a(第1歯車部)と間をあけて位置しており、複数の第1通し孔28がそれらの間に形成されている。
【0038】
このように、第4傘歯車41の歯部41aと第1傘歯車26の歯部26aとの間に第1通し孔28を形成してその間にボルト29を配置することで、ボルト29を第1傘歯車26の外側に配置する場合に比べて手首構造1の外径を変えることなく第1傘歯車26の外形寸法を大きくすることができる。これにより、第1傘歯車26の耐久性を向上させることができる。
【0039】
<回転駆動構造>
このように構成された第1及び第4傘歯車26,41の歯部26a,41aの一部は、他方の開口部11bに位置しており、他方の開口部11bには、アーム2aが部分的に挿入されている。
【0040】
アーム2aは、
図2に示すように大略円筒状に形成されており、ケーシング51と、3つのドライブシャフト52〜54(回動駆動ユニット)を有している。ケーシング51は、大略円筒状に形成されており、その中に3つのドライブシャフト52〜54が収容されている。第1〜第3ドライブシャフト52〜54は、大略円筒状に形成されており、第1ドライブシャフト52内に第2ドライブシャフト53が回動可能に挿通され、この第2ドライブシャフト53内に第3ドライブシャフト54が回動可能に挿通されている。
【0041】
本実施形態では、第1ドライブシャフト52の先端部が第1連結部材11の他方の開口端部11dと締結されており、第1連結部材11が第1ドライブシャフト52と共回りするようになっている。なお、ケーシング51は、第1連結部材11側にある先端部の外周縁部にカバー部51aを有している。このカバー部51aは、大略円環状になっており、第1連結部材11の方に向かって突出している。カバー部51aは、半径方向外方から飛散してくる塗料等が第1ドライブシャフト52と第1連結部材11とを締結するボルト51b及びピン51cを挿入するための孔の中に入り込むことを防いでいる。
【0042】
第2ドライブシャフト53は、先端部分の外周部に傘歯状の歯部53aを有しており、この歯部53aが他方の開口部11bにて第1傘歯車26の歯部26aに歯合している。更に、第3ドライブシャフト54は、先端部分の外周部に傘歯状の歯部54aを有しており、この歯部54aが他方の開口部11bにて第4傘歯車41の歯部41aに噛合している。
【0043】
これら3つのドライブシャフト52〜54には、ギア(図示せず)を介して電動モータ(図示せず)が夫々設けられており、電動モータを駆動させると、対応するドライブシャフト52〜54が回動するようになっている。ドライブシャフト52〜54が回動することで、ドライブシャフト52〜54を介して各連結部材11〜13が相対回動する。手首構造1では、一方の開口部11a及び他方の開口部11bの開口方向A1,A2の成す角度が鈍角になっているため、第2連結部材12を第1連結部材11に対して相対的に回動させることで第2連結部材12の向きを様々な方向に変えることができる。手首構造1は、その先端部を様々な方向に向けることができるように産業用ロボット2のアーム2aの先端部に取付けられている。
【0044】
また、第3ドライブシャフト54では、その内孔によりアーム内通路2bを形成している。アーム内通路2bは、第1連結部材11の第1連通路14aに繋がっている。この第1連通路14aは、第2連通路16a及び第3連通路13aに繋がっており、手首構造1は、アーム2aから手首構造1の先端まで連続した連通路1aが形成されている。この連通路1aには、アーム内通路2bを通って導かれるホースやケーブル等が収容されている。
【0045】
[手首構造の組付け方法]
以下では、手首構造1を組立ててアーム2aに取付ける手首構造1の組付け方法について、
図4を参照しながら説明する。
【0046】
関節体組立て工程であるステップS1では、関節体15を組立てる。具体的に説明すると、まず、外側環状部材21の2つの保持部21a,21bによって外側軸受部材25を挟持させ、これら2つの保持部21a,21bをボルト24によって締結する。次に、外側軸受部材25の内側に中央環状部材22を配置し、その第1傘歯車26及びスペーサ部27によって外側軸受部材25を挟持させる。他方、中央環状部材22の内側に内側軸受部材39を配置し、内側軸受部材39を第1傘歯車26及びスペーサ部27によって挟持させる。その後、締結孔18にボルト19を通し、第1傘歯車26及びスペーサ部27をボルト19によって締結する。最後に、内側軸受部材39の内側に内側環状部材23を配置し、内側軸受部材39を2つの傘歯車40,41によって挟持させる。これにより、
図3に示すような関節体15が組み上がり、ステップS2に移行する。
【0047】
関節体取付け工程であるステップS2では、
図5に示すように第1連結部材11に関節体15を組み付ける。具体的に説明すると、関節体15の第1傘歯車26と第4傘歯車41を第1連結部材11の一方の開口部11aから挿入し、これらの傘歯車26,41を第2連通空間43に位置させる。そして、外側環状部材21を第1連結部材11の一方の開口端部11eに当接させて第2通し孔30に通したボルト24によって外側環状部材21と第1連結部材11とを締結する。締結すると、手首構造1が
図5に示すような形状になり、ステップS3に移行する。
【0048】
第2連結部材組付け工程であるステップS3では、
図6に示すように関節体15を介して第1連結部材11に第2連結部材12を組み付ける。具体的に説明すると、まず、第1連結部材11に組み付けられた関節体15の第3傘歯車40を第2連結部材12の一方の開口部12aから挿入し、第3傘歯車40を第1連通空間38に位置させる。そして、中央環状部材22のスペーサ部27を第2連結部材12の一方の開口端部12cに当接させる。これにより、第2連結部材12のフランジ部12dによって第2通し孔30が覆われる。次に、第2連結部材12及び関節体15は、各々の第1通し孔28の関節体15側の部分が対応する第1通し孔28の第2連結部材側の部分に繋がるように位置決めし、複数の第1通し孔28を形成させる。このように複数の第1通し孔28を形成されると手首構造1が
図6のような形状になり、ステップS4に移行する。
【0049】
締結工程であるステップS4では、
図7に示すように第1通し孔28にボルト29を挿入して、関節体15と第2連結部材12とを締結する。具体的な締結方法について説明する前に、締結する際の複数の第1通し孔28の位置及び姿勢について説明する。第1通し孔28は、関節体15の軸線方向、つまり開口方向B1に延在している。そのため、第1連結部材11の一方の開口部11aの開口方向A1と他方の開口部11bの開口方向A2との成す角度αが鈍角にも関わらず複数の第1通し孔28のうちの幾つかだけが他方の開口部11bからその延在方向に向かって表出している(
図6及び
図7参照)。他方、残余の第1通し孔28は、他方の開口部11bから表出せずに第1連結部材11の内側に隠れている。このように一部が表出し、且つ残余が表出していない複数の第1通し孔28の全てにボルト29を通して第2連結部材12に螺合することで関節体15と第2連結部材12とを締結され、関節体15を介して第1連結部材11と第2連結部材12とが連結される。以下では、その締結方法について詳細に説明する。
【0050】
まず、他方の開口部11bから表出している第1通し孔28にボルト29を通し、ボルト29を第2連結部材12の一方の開口端部12cに螺合させる。この際、ボルト29が通された第1通し孔28は、その延在方向に向かって他方の開口部11bから表出しているので、第1連結部材11外(他方の開口部11bの外側)から第1通し孔28にボルト29を真直ぐ挿入することができ、またボルト29を第2連結部材12に螺合する際に工具を真直ぐ入れることができる。それ故、工具が入れやすく、また作業しやすく、第1連結部材と第2連結部材との連結作業が容易である。
【0051】
このように表出している第1通し孔28の全てにボルト29を通した後、関節体15を介して第2連結部材12を第1連結部材11に対して相対回動させる。そうすると、先程ボルト29を通した第1通し孔28が第1連結部材11の内側に隠れ、その位置に第1連結部材11の内側に隠れていた別の第1通し孔28が移動してきてそれらが表出する。このようにして新たに表出した第1通し孔28にボルト29を通し、そしてこのボルト29を第2連結部材12の一方の開口端部12cに螺合させる。このボルト29の螺合動作と相対回動動作とを繰り返し行うことで全ての第1通し孔28にボルト29を通して第2連結部材12に螺合させ、関節体15を第2連結部材12に締結することができる。このように関節体15を第2連結部材12に締結すると、ステップS5に移行する。
【0052】
回動部材組付け工程であるステップS5では、回動部材34を軸受保持部材31に組み付ける。具体的に説明すると、回動部材34に先端側軸受部材32を外嵌する。そして、その外嵌された先端側軸受部材32をその軸線方向両側から挟持するように軸受保持部材31の2つの保持部31a,31bを先端側軸受部材32に取付け、これら2つの保持部31a,31bをボルト33によって締結して、軸受保持部材31に先端側軸受部材32を保持させる。なお、回動部材34に先端側軸受部材32を外嵌する前に軸受保持部材31に先端側軸受部材32を保持させてもよい。
【0053】
第3連結部材組付け工程であるステップS6では、
図8に示すように第2連結部材12に第3連結部材13を取付ける。具体的に説明すると、まず、ステップS5にて軸受保持部材31に組み付けた回動部材34の基端部を、第2連結部材12の開口部12bから挿入し、第2傘歯車37を第1連通空間38に位置させる。そして、軸受保持部材31が第2連結部材12の開口端部12eに当接させ、第3通し孔36に通したボルト33によって軸受保持部材31と第2連結部材12とを締結する。その後、軸受保持部材31に第3連結部材13の基端部分を挿入し、また第3連結部材13のフランジ部13bによって第3通し孔36を覆い、そしてボルト35によって第3連結部材13を回動部材34の先端部に締結する。これにより、第3連結部材13と回動部材34とによって先端側軸受部材32が挟持され、第3連結部材13が回動部材34、先端側軸受部材32及び軸受保持部材31を介して第2連結部材12に組み付けられる。このように組み付けられると手首構造1が完成し、ステップS7に移行する。
【0054】
アーム取付工程であるステップS7では、完成した手首構造1をアーム2aに取付ける(
図2参照)。具体的に説明すると、まず、アーム2aの第2及び第3ドライブシャフト53,54の先端部分にある歯部53a,54aを第1連結部材11の一方の開口部11aに挿入し、歯部53a,54aを第2連通空間43に位置させて同様に第2連通空間43に位置している第1傘歯車26及び第4傘歯車41に歯合させる。そして、第1ドライブシャフト52の先端部を第1連結部材11の他方の開口端部11dと当接させ、第1ドライブシャフト52の先端部と第1連結部材11の他方の開口端部11dとを締結する。これにより、第1連結部材11、第2連結部材12及び第3連結部材13が互いに独立して回動可能に手首構造1がアーム2aに組み付けられる。
【0055】
このような組付け方法で組立て及び取付けられる手首構造1は、第1通し孔28、第2通し孔30及び第3通し孔36等が外側に表出していないので、外方に開口する孔をなくすことができ、
図9に示すようにその外表面の凹凸を低減することができる。そして、そのような手首構造1を前述する組付け方法によって容易に組立ててアーム2aに取付けることができる。また、手首構造1の先端側からの組付けとなるので、ロボット2とは別に手首構造1を先に組立てることができるので、ロボット2のアーム2aへの取付時間を短縮することができる。
【0056】
[その他の実施の形態]
上述の形態では、3つの筒状の連結部材11〜13がアームの基端から先端に向かって順に連結されるよう構成されている。しかしながら、3つの筒状の連結部材11〜13の連結構造自体には方向性はない。従って、例えば、回転駆動力の伝達構造を除いて、3つの筒状の連結部材11〜13がアームの先端から基端に向かって順に連結されるよう構成されても構わない。また、例えば、第2連結部材12に事前に第3連結部材13を取付けておき、その第2連結部材12を第1連結部材11に取付けた関節体15に取付けるという順序で連結してもよい。但し、この場合には、回転駆動力の伝達構造が、アームの基端から先端に向かって回転駆動力が伝達されるよう構成され、また、3つの筒状の連結部材11〜13がアームの基端から先端に向かって順に細くなるよう構成される等、適宜、修正されることは言うまでもない。