(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、重ね合わせられた鋼板等の板材の接合には、一対の溶接電極間で挟み加圧力を与えながら、両溶接電極間に大電流を一定時間通電し、接合部をほぼ溶融温度まで上げてナゲットを形成するスポット溶接が広く行われている。
【0003】
ここで、
図11(a)で示すように、剛性の低い薄板101、薄板101より厚く剛性が高い第1厚板102、第2厚板103の3枚を重ね合わせた板組の被溶接部材100をスポット溶接する場合には、薄板101と第1厚板102との間、及び第1厚板102と第2厚板103との間が間隙なく密着した状態で、可動側電極111と固定側電極112とによって被溶接部材100を挟んで電源113により通電すると、可動側電極111と固定側電極112との間の通電経路における電流密度がほぼ均一となり、薄板101から第2厚板103に亘って良好なナゲットが形成されて、必要な溶接強度を得ることができる。
【0004】
しかし、実際には、可動側電極111と固定側電極112とによって被溶接部材100を挟んで加圧すると、剛性の低い薄板101と第1厚板102とが上方に撓んで、薄板101と第1厚板102との間及び第1厚板102と第2厚板103との間に間隙が生じる。この状態でスポット溶接を行うと、可動側電極111と薄板101間の接触面積は薄板101の撓みにより大きくなるのに対して、薄板101と第1厚板102間及び第1厚板102と第2厚板103間の接合部の接触面積は隙間により小さくなる。このため、可動側電極111と固定側電極112間の電流密度が薄板101側に対して第2厚板103側が高くなり、薄板101と第1厚板102間よりも第1厚板102と第2厚板103間の方が局部的な発熱量が多くなる。
【0005】
その結果、
図11(a)で示すように、まず第1厚板102と第2厚板103との接合部にナゲットNが形成され、次第にナゲットNが大きくなり、やがて
図11(b)に示すように、薄板101と第1厚板102間が溶着される。しかし、この薄板101と第1厚板102との間の溶け込み量が小さく溶接強度が不安定で、薄板101が剥離することが懸念され、かつ溶接品質にバラツキがある。この不具合は、特に第1厚板102及び第2厚板103が厚いほど第1厚板102と薄板101との間にナゲットNが到達しにくく顕著である。
【0006】
この対策として、例えば特許文献1に開示のスポット溶接方法は、
図12に示すように、薄板101、第1厚板102、第2厚板103の3枚重ねの被溶接部材100をスポット溶接するときに、薄板101側の可動側電極125の加圧力を、第2厚板103側の固定側電極124の加圧力より小さくすることで、薄板101と第1厚板102との接合部の接触抵抗が大きくなる一方、第1厚板102と第2厚板103との接合部の接触抵抗が小さくなり、可動側電極125と固定側電極124間に通電したときに、薄板101と第1厚板102との接合部の発熱量が増加して薄板101と第1厚板102の溶接強度が高められる。
【0007】
この方法の実施に用いられるスポット溶接装置の構成は、溶接ロボット115の手首部116にスポット溶接装置120が搭載される。スポット溶接装置120は、手首部116に取り付けられた支持ブラケット117に固定されたリニアガイド121によって上下動自在に支持されたベース部122を備え、このベース部122には下方に延びる固定アーム123が設けられ、固定アーム123の先端に固定側電極124が設けられる。
【0008】
また、ベース部122の上端には、加圧力アクチュエータ126が搭載され、加圧力アクチュエータ126により上下動するロッド127の下端に固定側電極124と対向して可動側電極125が取り付けられる。支持ブラケット117の上端にサーボモータ128が搭載され、サーボモータ128の作動によりボールねじ機構を介してベース部122が上下動する。
【0009】
ここで、図示しないコントローラに予め記憶されているティーチングデータに従って、コントローラは、まず、サーボモータ128によりベース部122を上昇させて固定側電極124を被溶接部材100の下面に当接させるとともに、加圧力アクチュエータ126により可動側電極125を下降させて、クランパ118にクランプ支持された被溶接部材100の上面に当接させる。ここで、加圧力アクチュエータ126による加圧力が可動側電極125と、ベース部122及び固定アーム123を介して固定側電極124とに均等に作用し、固定側電極125からの加圧力FLと可動側電極125からの加圧力FUで挟持加圧する。
【0010】
次に、サーボモータ128によりベース部122を押し上げて固定側電極124の加圧力より可動側電極125側の加圧力を小さくすることで、相対的に薄板101と第1厚板102間の電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板1023との接合部における発熱量が確保でき、溶け込み量が増大して溶接強度が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1によると、クランパ118に保持された被溶接部材100の第2厚板103側に固定側電極124を当接させるとともに可動側電極125を薄板101に当接させ、更にベース部122を押し上げて固定側電極124の加圧力より可動側電極125側の加圧力を小さくすることで、相対的に薄板101と第1厚板102間の電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板102との接合部における発熱量が確保でき、溶け込み量が増大して溶接強度が増加する。
【0013】
しかし、クランパ118により保持された被溶接部材100を固定側電極124と可動側電極125とによって挟持加圧した状態でベース部122を移動して固定側電極124の加圧力FLより可動側電極125による加圧力FUを小さくするには、被溶接部材100をクランプ保持するクランパ118に大きな負荷が要求される。一方、クランパ118による被溶接部材100のクランプ位置と溶接位置が大きく離間した状態では、被溶接部材100が撓み変形して固定側電極124による加圧力と可動側電極125による加圧力にバラツキが生じて安定した薄板101と第1厚板102との間の接触抵抗及び第1厚板102と第2厚板103との間の接触抵抗の確保が困難であり、接合部における電流密度にバラツキが生じてスポット溶接の品質低下が懸念される。
【0014】
そこで、本件出願人は、特願2010−200643において、
図13に概要を示すように、固定側電極132と、加圧力アクチュエータにより作動する可動側電極131との間で被溶接部材100の溶接部を所定の加圧力F、すなわち可動側電極131の加圧力FUと固定側電極132の加圧力FLで挟持するとともに加圧し(F=FU+FL)、更に図示しない副加圧力アクチュエータによって、副加圧部133を被溶接部材100の薄板101に押圧して副加圧力fを付与することで、薄板101側に作用する固定側電極132の加圧力を第2厚板103側に作用する可動側電極131の加圧力より小さく制御して、可動側電極131と固定側電極132との間に通電して溶接するスポット溶接装置を提案した。
【0015】
一方、このスポット溶接装置においては、長年の使用による経年劣化や被溶接部材に当接する等による荷重付加により副加圧部133が変形して破損したり、取付位置が偏位したりして所期の状態から変化することが懸念される。このように、副加圧部133に不具合が生じたままで被溶接部材100の溶接作業を続行すると、スポット溶接装置の所期の効果を達成することができなくなり、溶接品質の低下を誘発する要因となる。更に、副加圧部133に不具合が発生することによって、スポット溶接装置やその周辺の装置に不意の影響を及ぼすことも懸念される。
【0016】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スポット溶接装置による安定した使用を可能にするために、副加圧部の破損や偏位等の不具合の発生を目視によることなく効率的に検出し得るスポット溶接装置の異常検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明によるスポット溶接装置の異常検出方法は、第1溶接電極と、該第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、副加圧部が前記被溶接部材に当接して該被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧付与手段と、を備え、前記第1溶接電極と第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧するとともに
前記副加圧部によって副加圧力を付与し、前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接するスポット溶接装置の異常検出方法であって、
前記副加圧部は、前記被溶接部材に当接して副加圧力を付与する副加圧位置と、前記被溶接部材から離反する退避位置とに移動可能であって、前記副加圧部が前記退避位置となる予め設定された位置に待機する前記スポット溶接装置の通常状態の
前記副加圧部を基準状態とし、
前記退避位置における前記副加圧部の状態を検出手段によって検出し、該検出手段で検出した検出結果に基づいて
前記副加圧部が前記基準状態にあるか否かを判定手段によって判定する、ことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、通常状態にある副加圧部を基準状態と設定したうえで、副加圧部の状態を検出し、検出結果に基づいて、副加圧部が基準状態か否かを判定することで、副加圧部の破損や偏位等による異常の発生を効率的に検出することができる。従って、副加圧部に異常が発生した状態のままで被溶接部材の溶接を実行することを未然に防止して、被溶接部材の溶接品質の低下を防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスポット溶接装置の異常検出方法において、前記検出手段は、レーザ位置検出センサを備え、該レーザ位置検出センサによって照射するレーザが
前記副加圧部に接触するか否かを検出し、前記判定手段が前記レーザ位置検出センサによる検出結果と予め設定された基準状態データとを対比して
前記副加圧部が
前記基準状態か否かを判定する、ことを特徴とする。
【0020】
この発明によると、レーザ位置検出センサがレーザを照射して副加圧部がレーザに接触するか否かを検出し、その検出結果と基準状態データとを対比することで、副加圧部に破損等の異常が発生しているか否かを容易に判定することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のスポット溶接装置の異常検出方法において、前記検出手段は、予め設定されたサーチプレートを備え、該サーチプレートに対して相対移動する
前記副加圧部が前記サーチプレートに当接するか否かを検出し、前記判定手段が該検出結果と予め設定された基準状態データとを対比して副加圧部が
前記基準状態か否かを判定する、ことを特徴とする。
【0022】
この発明によると、サーチプレートに対して相対移動する副加圧部がサーチプレートに当接するか否かを検出し、その検出結果と基準位置データとを対比することで、副加圧部に破損等の異常が発生しているか否かを容易に判定することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のスポット溶接装置の異常検出方法において、前記検出手段は、画像取得装置を備え、該画像取得装置が
前記副加圧部の状態を撮像して
前記副加圧部の画像データを取得し、前記判定手段が前記画像取得装置による取得画像データと予め設定された基準状態データとを対比して
前記副加圧部が
前記基準状態か否かを判定する、ことを特徴とする。
【0024】
この発明によると、画像取得装置により撮像された副加圧部の取得画像データと基準状態データとを対比することで、副加圧部に破損等の異常が発生しているか否かを容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、適正状態にある副加圧部を基準状態と設定したうえで、副加圧部の状態を検出し、その検出結果に基づいて、副加圧部が基準状態か否かを判定することで、副加圧部の異常の発生を効率的に検出することができる。従って、副加圧部に異常が発生した状態のままで被溶接部材の溶接を実行することを未然に防止して、被溶接部材の溶接品質の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施の形態)
次に、本発明の第1実施の形態に係るスポット溶接装置の異常検出方法を、
図1〜5を参照して説明する。本異常検出方法による検出対象となるスポット溶接装置の一例について、
図1及び2を参照して説明する。
図1はスポット溶接装置の構成図、
図2は、
図1のA部拡大斜視図である。なお、このスポット溶接装置の説明にあたり、便宜上、
図1における上方及び下方をスポット溶接装置における上方及び下方とする。
【0028】
スポット溶接装置1は、図示しない溶接ロボットの手首部にイコライザユニットを介して取り付けられる矩形のベース部3及びベース部3の両側から下方に折曲して対向する一対の側部4を有する下方が開放されたコ字状の支持ブラケット2を有し、支持ブラケット2に固定アーム10、加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段30及び溶接トランス40が取付支持される。
【0029】
固定アーム10は、支持ブラケット2の両側部4の下端間に基端が結合されて下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端にL字状に折曲する電極保持部12が形成され、電極保持部12に第1溶接電極である固定側電極15が、その頂端15aを上方にして装着される。
【0030】
加圧アクチュエータ20は、サーボモータ21及びボールネジ送り機構等によって構成された直動部22を有し、サーボモータ21の作動によって直動部22のロッドが昇降往復動する。直動部22のロッドの下端に電極アーム23が設けられ、電極アーム23の先端に固定アーム10に設けられた固定側電極15と同軸上、すなわち中心軸線L上に固定側電極15と対向して第2溶接電極である可動側電極25が設けられる。これにより、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25は固定側電極15から上方に離反する上昇移動端の退避位置と、被溶接部材100を固定側電極15と協働して挟持するとともに被溶接部材100に加圧力を付与する加圧位置との間で中心軸線Lに沿って移動する。この加圧力はサーボモータ21の回転トルクによって決定され、サーボモータ21の回転トルクを制御することで要望の加圧力が得られる。
【0031】
副加圧付与手段30は、支持ブラケット2の両側部4に両端が結合されたコ字状の取付ブラケット5に設けられた基板6に取り付けられるサーボモータ32及びボールネジ送り機構等によって構成された直動部33を備えた副加圧付与アクチュエータ31を有し、サーボモータ32の作動によって直動部33のロッドが昇降往復動し、ロッドの先端に互いに離間して対向配置された一対の可動軸34a、34bの先端に副加圧付与アーム35が設けられる。
【0032】
副加圧付与アーム35は、可動軸34a、34bの先端に基端部が結合されて可動軸34a、34bに対して折曲する略水平方向に延在する基端アーム部36、基端アーム部36の基端部36Aに基端部が結合されて固定側電極15の軸心方向、すなわち中心軸線L方向に沿って下方に延在するアーム部37によって構成され、アーム部37の先端部に副加圧部38が設けられる。
【0033】
基端アーム部36は、基端部36A及び基端部36Aから分岐して電極アーム23を隔てて対向して延在して基端部がそれぞれ各可動部34a、34bの先端にボルトによって結合される取付アーム部36B、36Cを有する略U字形板状に形成される。
【0034】
アーム部37は、固定アーム10と電極アーム23との間において中心軸線Lに沿って上下方向に延在する矩形板状のアーム本体37Aとアーム本体37Aの基端部となる上端に折曲形成された上部取付フランジ部37Bとアーム本体37Aの先端部となる下端に折曲形成された下部取付フランジ部37Cとを有し、上部取付フランジ部37Bが基端アーム部36の先端部36Aの下面に接合してボルトによって結合される。
【0035】
副加圧部38は、基端部38Aがアーム部37の下部取付フランジ部37Cにボルト38aによって結合されて中心軸線L方向に向って延在する側部38C、38Dを有する矩形板状であって、先端38Bに中心軸線Lと同軸で頂部39aが上方に突出して固定側電極15の貫通を許容する断面半円弧状、すなわち半割筒状の当接部39が設けられる。
【0036】
このように構成された副加圧付与アーム35は、サーボモータ32の作動によって副加圧付与アーム35の先端に設けた副加圧部38の当接部39の頂部39aが、被溶接部材100から離反して固定側電極15の頂端15aより下方となる退避位置と、固定側電極15と可動側電極25とによって挟持された被溶接部材100に下方から当接して副加圧力を付与する副加圧位置との間で中心軸線Lに沿って移動する。この副加圧力はサーボモータ32の回転トルクによって決定され、サーボモータ32の回転トルクを制御することで要望の副加圧力が得られる。
【0037】
電源となる溶接トランス40の一方の出力端子がバスバ及び固定アーム10等を介して固定側電極15に通電可能に接続され、他方の出力端子がバスバ及び電極アーム23等を介して可動側電極25に通電可能に接続される。
【0038】
また、図示しない溶接ロボットコントローラには、溶接ロボットのティーチングデータが格納され、ティーチングデータには、被溶接部材100の各溶接打点位置を順次スポット溶接するための作動プログラム及び各溶接打点、すなわち溶接位置におけるスポット溶接装置1の位置及び姿勢が含まれる。図示しない溶接コントローラには、スポット溶接装置1の作動プログラム及び加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段30、溶接トランス40の作動制御が含まれる。
【0039】
一方、被溶接部材100は、
図2に示すように、重ね合わせられた2枚の厚板の一方に薄板を重ね合わせた、下から順に剛性の低い薄板101、薄板101より板厚が大きく剛性が高い第1厚板102及び第2厚板103が重ね合わせられた3枚重ねの板組によって構成される。
【0040】
スポット溶接装置1による被溶接部材100のスポット溶接にあたり、予め設定されたプログラムに従い、可動側電極25が固定側電極15から離反した退避位置でかつ副加圧付与手段30の副加圧部38が退避位置に保持された状態で、溶接ロボットコントローラは溶接ロボットを作動して、被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に固定側電極15の頂端15aを当接してスポット溶接装置1を位置決めする。
【0041】
次に、固定側電極15が被溶接部材100の薄板101に当接した状態で、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を退避位置から固定側電極15に接近する加圧位置方向に移動させて第2厚板103に上方から当接させる。更に、サーボモータ21を所定トルクに達するまで作動して可動側電極25を第2厚板103に圧接させる。これにより、加圧アクチュエータ20の加圧力が可動側電極25と固定アーム10を介して固定側電極15とに作用し、可動側電極25と固定側電極15とで被溶接部材100の溶接部を挟持するとともに加圧する。
【0042】
更に、副加圧付与アクチュエータ31によって、可動側電極25または固定側電極15の中心軸線に沿って上下動する副加圧部38を被溶接部材100の薄板101に押圧して副加圧力を付与することで、薄板101側に作用する固定側電極15の加圧力を、第2厚板103側に作用する可動側電極25の加圧力より小さく制御して、可動側電極25と固定側電極15との間に通電して溶接する。
【0043】
これにより、可動側電極25と固定側電極15との間に通電したときに、薄板101と第1厚板102間の接合部における接触抵抗が相対的に大きくなって電流密度が高くなるとともに、第1厚板102と第2厚板103間の接触抵抗が小さく保持される。従って、薄板101と第1厚板102の接合部における発熱量が第1厚板102と第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好なナゲットが形成され、薄板101の溶接強度が確保できる。
【0044】
次に、本実施の形態に係るスポット溶接装置の異常検出方法について、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0045】
スポット溶接装置1の長年の使用によって、例えば、副加圧部38が変形して破損することがある。また、副加圧付与アーム35等が変形して、取付位置が偏位することが懸念される。本実施の形態に係るスポット溶接装置の異常検出方法は、このような副加圧部38の異常状態を検出するものである。
【0046】
図3は、本実施の形態に係る異常検出方法を実行する異常検出制御手段の概略を説明する構成図である。図示のように、異常検出制御手段50は、検出手段となるレーザ位置検出センサ51を備えるとともに、制御部52を備える。
【0047】
図4は、レーザ位置検出センサ51の概略を説明する図である。図示のように、レーザ位置検出センサ51は、スポット溶接装置1の作動エリア内の予め設定された位置、本実施の形態では溶接を開始する前あるいは溶接終了後にスポット溶接装置1が待機する溶接待機位置に配置された第1レーザセンサ51a、第2レーザセンサ51b及び第3レーザセンサ51cを備える。
【0048】
溶接待機位置に待機するスポット溶接装置1の通常状態の副加圧部38を副加圧部38の基準状態とし、第1レーザセンサ51aは、基準状態における副加圧部38の先端38B側から基端38A側に向かって副加圧部38の一方の側部38Cから微小距離dを介在して副加圧部38の側部38Cの延在方向に平行なレーザL1を照射するように設定されている。
【0049】
第2レーザセンサ51bは、副加圧部38の先端38B側から基端38A側に向かって副加圧部38の他方の側部38Dから微小距離dを介在して副加圧部38の側部38Dの延在方向に平行なレーザL2を照射するように設定されている。
【0050】
一方、第3レーザセンサ51cは、副加圧部38の先端38B側の側部38Cに接触するレーザL3を照射するように設定されている。
【0051】
第1レーザセンサ51a及び第2レーザセンサ51bにより照射したレーザL1及びL2が、副加圧部38の側部38C、38Dの側方を通過するか否かを検出するとともに、第3レーザセンサ51cにより照射したレーザL3が副加圧部38の先端38B側の側部38Cに接触するか否かを検出する。
【0052】
各レーザセンサ51a、51b、51cによる検出の概略を、
図5を用いて具体的に説明する。
図5(a)は
図4のB矢視図、(b)は
図4のC矢視図である。
図5(a)及び(b)に実線で示すように、副加圧部38が基準状態すなわち通常状態にあるときは、第1レーザセンサ51a及び第2レーザセンサ51bによるレーザL1及びL2は副加圧部38の側部38C、38Dから微小距離dを介在して側部38C、38Dの延在方向に沿って平行に通過し、第3レーザセンサ51cによるレーザL3は副加圧部38の先端38B側の側部38Cに接触する。
【0053】
一方、副加圧部38が仮想線38aで示すようにレーザL1側に偏位している場合は、側部38CがレーザL1に接触し、仮想線38bで示すように副加圧部38がレーザL2側に偏位している場合は、側部38DがレーザL2に接触する。
図5(b)で示すように、副加圧部38が仮想線38cで示す上方または仮想線38dで示す下方に偏位している場合は、副加圧部38はレーザL3に接触しない。
【0054】
また、副加圧部38がアーム部37から脱落あるいは副加圧部38の先端38B等が欠損して破損している場合は、副加圧部38は、各レーザセンサ51a〜51cによる各レーザL1〜L3のいずれにも接触しない。
【0055】
制御部52は、
図3で示すように、判定手段となる対比判定手段53及び作動指示手段54を備える。この制御部52には、副加圧部38がレーザL1及びL2に非接触でかつ副加圧部38がレーザL3に接触する場合に、副加圧部38が基準状態すなわち通常状態にあると表示する基準状態データD1が予め格納されている。
【0056】
対比判定手段53は、レーザ位置検出センサ51から検出結果が入力されると、検出結果と基準状態データD1とを対比して、副加圧部38が基準状態にあるか否かを判定する。
【0057】
具体的には、検出結果が、副加圧部38が第1レーザセンサ51a及び第2レーザセンサ51bによるレーザL1及びL2に非接触でかつ副加圧部38が第3レーザセンサ51cによるレーザL3に接触する場合は、この検出結果と基準状態データD1とが一致し、副加圧部38は基準状態にあると判定する。すなわち、副加圧部38が通常の状態に保持されていると判定する。
【0058】
一方、検出結果が、副加圧部38がレーザL1またはL2に接触、あるいは副加圧部38がレーザL3に非接触の少なくとも1つに該当する場合は、この検出結果と基準状態データD1とが異なり、副加圧部38は基準状態にないと判定する。すなわち、副加圧部38が異常な状態であると判定する。
【0059】
作動指示手段54は、対比判定手段53での判定結果に基づいて、溶接ロボットコントローラ55に作動指示信号を発信する。すなわち、副加圧部38が基準状態にあると判定した場合は溶接開始の作動指示を発信し、副加圧部38が基準状態にないと判定した場合は、異常検出信号を発信して溶接ロボットの作動を遮断する。
【0060】
次に、本実施の形態に係るスポット溶接装置の異常検出方法の概略を説明する。
【0061】
溶接待機位置に待機するスポット溶接装置1の副加圧部38に対して、レーザ位置検出センサ51の第1レーザセンサ51aからレーザL1、第2レーザセンサ51bからレーザL2、第3レーザセンサ51cからレーザL3を照射する。
【0062】
照射したレーザL1及びL2が副加圧部38の側部38C、38Dの側方を通過するか否か、照射したレーザL3が副加圧部38の先端38B側の側部38Cに接触するか否かを検出し、検出結果を対比判定手段53に入力する。
【0063】
対比判定手段53では、検出結果と基準状態データD1とを対比して、副加圧部38が基準状態にあるか否かを判定する。
【0064】
副加圧部38が基準状態にあると判定した場合は、副加圧部38は破損や偏位等の異常が発生していない通常の状態であることから、作動指示手段54は、溶接ロボットコントローラ55に溶接開始の作動指示信号を発信する。溶接ロボットは、予め設定されたプログラムに従い、スポット溶接装置1を溶接待機位置から被溶接部材100の溶接打点位置に移動して、溶接を開始する。
【0065】
溶接が完了した後、溶接ロボットを作動してスポット溶接装置1を溶接待機位置に移動して、レーザL1またはL2が副加圧部38に接触するか否か、レーザL3が副加圧部38に接触するか否かを検出し、検出結果と基準状態データD1とを対比して副加圧部38が基準状態にあるか否かを判定する。副加圧部38が通常の状態であれば、スポット溶接装置1を溶接待機位置から被溶接部材100の次の溶接打点位置に移動して、溶接を開始する。すなわち、溶接サイクルごとに本実施の形態に係る異常検出方法を実行して、副加圧部38に異常が発生しているか否かを検出する。
【0066】
一方、副加圧部38が基準状態にないと判定した場合は、副加圧部38は破損や偏位等の異常が発生した状態であることから、作動指示手段54は、異常検出信号を発信して、溶接ロボットの作動を遮断する。この場合は、副加圧部38の異常の内容を確認して迅速に対処する。
【0067】
このように、副加圧部38がレーザL1及びL2に接触するか否か及び副加圧部38がレーザL3に接触するか否かを検出し、検出結果に基づいて検出結果と基準状態データD1とを対比することで、目視等によることなく、副加圧部38に破損や偏位等の異常が発生しているか否かを容易に判定することができる。
【0068】
従って、スポット溶接装置1が溶接打点位置に移動する前に、溶接待機位置において本実施の形態に係る異常検出方法を実行することで、副加圧部38に異常が発生した状態のままで被溶接部材100の溶接を実行することを未然に防止することができる。
【0069】
その結果、副加圧部38に異常が発生したままの状態でスポット溶接を行うことを防止して、被溶接部材100の溶接品質の低下を防止することができる。更に、副加圧部38が異常な状態、例えば、副加圧部38が固定側電極15と可動側電極25の中心軸線Lに対して偏位している等の異常により、副加圧部38によって被溶接部材100に偏加重が付与されることに起因してスポット溶接装置1が破損する等の二次的破損の発生を防止することができる。
【0070】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態について、
図6〜
図8を参照して説明する。なお、
図6〜
図8において、
図1〜
図5と同様の構成には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0071】
図6は、本実施の形態に係るスポット溶接装置の異常検出方法を実行する異常検出制御手段の概略を説明する構成図である。図示のように、異常検出制御手段60は、本実施の形態では、副加圧部38を検出する検出手段となる副加圧部検出装置61を備えるとともに、制御部62を備える。
【0072】
図7は、副加圧部検出装置61の概略を説明する図である。図示のように、副加圧部検出装置61は、スポット溶接装置1の作動エリア内の予め設定された位置、本実施の形態では溶接待機位置に配置される。
【0073】
副加圧部検出装置61は、副加圧部38の当接部39における頂部39aが当接可能な平坦なサーチ面61bを有するサーチプレート61a、及び副加圧付与手段30のサーボモータ32の電流値の変化を検出する図示しない電流検知手段を備えて構成される。
【0074】
溶接待機位置に待機するスポット溶接装置1の通常状態の副加圧部38を副加圧部38の基準状態とし、サーチプレート61aは、固定側電極15と可動側電極25との間に突出して固定側電極15と可動側電極25との間に介在された状態で、サーチプレート61aに対して副加圧部38を相対移動する、すなわち副加圧付与手段30のサーボモータ32を作動して直動部33のロッドを上昇して副加圧部38を上昇すると副加圧部38がサーチプレート61aにおけるその先端側の範囲xのサーチ面61bに当接するように設けられている。
【0075】
サーボモータ32により副加圧部38を上昇せしめて副加圧部38がサーチプレート61aに当接すると、サーボモータ32の電流値が上昇し、電流検知手段が電流値の上昇を検出する。副加圧部検出装置61は、この電流検知手段が検知するサーボモータ32の電流値の上昇に基づいて、副加圧部38がサーチプレート61aに当接するか否かを検出する。
【0076】
副加圧部検出装置61による検出の概略を、
図8を用いて具体的に説明する。
図8は、
図7のD矢視図であり、(a)は副加圧部38が基準状態にある場合、(b)は副加圧部38が欠損して破損している場合の概略を説明する図である。
図8(a)に実線で示すように、副加圧部38が基準状態すなわち通常状態にあるときは、副加圧部38を上昇させると、副加圧部38は、仮想線38eで示すようにサーチプレート61aに当接する。一方、
図8(b)に仮想線38fで示すように、副加圧部38が欠損して破損している場合は、副加圧付与手段30のアーム部37は、副加圧部38がサーチプレート61aに当接する位置を越えて上昇する。
【0077】
制御部62は、
図6で示すように、判定手段となる対比判定手段63及び作動指示手段54を備える。この制御部62には、副加圧部38を上昇させてサーチプレート61aに当接する場合に、副加圧部38が基準状態にあると表示する基準状態データD2が予め格納されている。
【0078】
対比判定手段63は、副加圧部検出装置61から検出結果が入力されると、検出結果と基準状態データD2とを対比して、副加圧部38が基準状態にあるか否かを判定する。
【0079】
具体的には、検出結果が、副加圧部38を上昇させると副加圧部38がサーチプレート61aに当接する場合は、この検出結果と基準状態データD2とが一致し、副加圧部38は基準状態にあると判定する。すなわち、副加圧部38が通常の状態に保持されていると判定する。
【0080】
一方、検出結果が、副加圧部38を上昇させても副加圧部38がサーチプレート61aに当接しない場合は、この検出結果と基準状態データD2とが異なり、副加圧部38は基準状態にないと判定する。すなわち、副加圧部38が異常な状態であると判定する。
【0081】
このように、検出手段として副加圧部位置検出装置61を用いることによって、異常検出の対象となる副加圧部38を上昇して副加圧部38がサーチプレート61aに当接するか否かを検出し、検出結果に基づいて検出結果と基準状態データD2とを対比することで、副加圧部38に破損等の異常が発生しているか否かを容易に判定することができる。
【0082】
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態について、
図9及び
図10を参照して説明する。なお、
図9及び
図10において、
図1〜
図8と同様の構成には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0083】
図9は、本実施の形態に係るスポット溶接装置の異常検出方法を実行する異常検出制御手段の概略を説明する構成図である。図示のように、異常検出制御手段70は、本実施の形態では、副加圧部38を検出する検出手段となる画像取得装置71を備えるとともに、制御部72を備える。
【0084】
図10は、画像取得装置71の概略を説明する図である。図示のように、画像取得装置71は、予め設定された位置、本実施の形態では、溶接待機位置に待機するスポット溶接装置1の退避位置における副加圧部38を撮像可能な位置に配置されている。
【0085】
画像取得装置71は、CCDカメラ等で構成された画像取得部71aを備える。
【0086】
溶接待機位置に待機する通常状態の副加圧部38を副加圧部38の基準状態とし、画像取得部71aは、基準状態の副加圧部38の先端38B側を撮像するように設定されている。
【0087】
画像取得装置71は、画像取得部71aが副加圧部38を撮像して、副加圧部38の画像データを取得する。具体的には、副加圧部38が基準状態であればその状態を撮像し、副加圧部38が破損または偏位等した異常状態であればその状態を撮像して、画像データを取得する。
【0088】
制御部72は、
図9で示すように、判定手段となる対比判定手段73及び作動指示手段54を備える。この制御部72には、基準状態すなわち通常状態の副加圧部38の画像データが基準状態データD3として予め格納されている。
【0089】
対比判定手段73は、画像取得装置71から副加圧部38を撮像した取得画像データが入力されると、検出結果すなわち取得画像データと基準状態データD3とを対比して、副加圧部38が基準状態にあるか否かを判定する。
【0090】
具体的には、検出結果すなわち取得画像データが基準状態データD3と一致した場合には、副加圧部38は予め設定した基準状態にあると判定する。すなわち、副加圧部38が通常の状態に保持されていると判定する。
【0091】
一方、検出結果すなわち取得画像データが基準状態データD3と異なる場合は、副加圧部38は予め設定した基準状態にないと判定する。すなわち、副加圧部38が異常な状態であると判定する。
【0092】
このように、検出手段として画像取得装置71を用いることによって、副加圧部38の画像を撮像し、撮像した取得画像データに基づいて検出結果と基準状態データD3とを対比することで、副加圧部38に破損や偏位等の異常が発生しているか否かを容易に判定することができる。
【0093】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記第1実施の形態では、レーザ位置検出センサ51を用いて副加圧部38の検出を行うことを説明したが、レーザ位置検出センサ51に代えて、例えば、赤外線センサ、超音波センサを用いてもよい。
【0094】
上記第1実施の形態では、第1レーザセンサ51a〜第3レーザセンサ51cによりレーザL1〜L3が照射されることを説明したが、レーザセンサによるレーザの照射本数及び照射位置は、副加圧部38の位置や形状に合わせて増減し、あるいは照射位置を変更することが可能である。
【0095】
なお、レーザセンサの個数を増加させてレーザの照射本数を増大させれば、レーザが副加圧部38に接触するか否かを検出する精度が向上する。
【0096】
その一方で、第3レーザセンサ51cに代えてレーザ距離変位センサを用いれば、
図5(a)の仮想線38a、38bに示す方向に副加圧部38が偏位すると、レーザ距離変位センサから照射されるレーザの照射距離が変化することから、レーザの照射距離が変化したか否かを検出することができる。従って、第1レーザセンサ51a及び第2レーザセンサ51bを用いないで、第3レーザセンサ51cに代えたレーザ距離変位センサのみによって検出手段を構成することができる。
【0097】
上記第2実施の形態では、副加圧付与手段30のサーボモータ32の作動により副加圧部38を上昇させることを説明したが、副加圧部38を退避位置に退避させた状態で、溶接ロボットを作動してスポット溶接装置1全体を上昇させることで副加圧部38をサーチプレート61aに対して相対移動させてもよい。この場合、溶接ロボットを作動するモータの電流値の変化を検出する電流検知手段が溶接ロボットに設けられ、この電流検知手段とサーチプレート61aによって、副加圧部検出装置が構成されている。