特許第5965147号(P5965147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965147
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】薬剤の局所適用のためのキット
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20160721BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A61M35/00 Z
   A61K31/522
   A61P31/22
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-510961(P2011-510961)
(86)(22)【出願日】2009年5月25日
(65)【公表番号】特表2011-520578(P2011-520578A)
(43)【公表日】2011年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2009056265
(87)【国際公開番号】WO2009144181
(87)【国際公開日】20091203
【審査請求日】2012年3月30日
【審判番号】不服2014-22132(P2014-22132/J1)
【審判請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/056,043
(32)【優先日】2008年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジヤナン,リオネル
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 平瀬 知明
【審判官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−523234(JP,A)
【文献】 特表2006−524103(JP,A)
【文献】 特開2005−198669(JP,A)
【文献】 特表平10−502291(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/66149(WO,A2)
【文献】 特表2003−510259(JP,A)
【文献】 特開2007−126462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の局所適用を必要とする医学的状態を治療するためのキットであって、
(a)流体の形態の薬剤を複数回の適用にとって充分に含んでいる薬剤の容器と、
(b)複数回の適用と同数である複数のアプリケータとが内部に配置されてなるケースを含んでおり、
各々のアプリケータが、充分な柔軟性および弾性を有しかつ薬剤に対して非吸収性である材料から一体的に形成されるとともに、弾性的なネック部によって接続された一体的に形成されたハンドル部および平坦なブレード部を備えており、前記弾性的なネック部が、平坦なブレード部を使用時に反らすことができるよう、ハンドル部およびブレード部よりも小さい断面の高さを有している、前記キット。
【請求項2】
複数のアプリケータが、個別に包装されている、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
ケースの内側に配置された鏡をさらに備えている、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
各々のアプリケータが、3から6cmというハンドルの一端から平坦なブレードの反対側の端部まで延びる長さを有しており、弾性的なネック部の断面の高さが、0.5から0.7mmである、請求項1から3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
アプリケータが、ポリオレフィンから形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
ポリオレフィンが、低密度ポリエチレンである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
各々のインジケータの各々のハンドル部の表面に、親指用のくぼみが形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
薬剤が、抗ウイルス剤である、請求項1から7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
抗ウイルス剤は、ペンシクロビルである、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
抗ウイルス剤が、アシクロビルである、請求項8に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、例えば単純ヘルペスの治療のための薬剤の局所適用のためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスは、ときには「単純疱疹(fever blister)」と称されるが、通常は、唇または口腔の外側に現れる水ぶくれまたははれものであり、口腔の内部に現れる口内炎とは異なる。ヘルペスは、ウイルスによって引き起こされ、医療を要する状態であると考えられる。ヘルペスは、通常は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)によって引き起こされる。このウイルスは、水痘、帯状疱疹(herpes zoster)、および陰部疱疹を引き起こすウイルス(HSV−2)と同じ族の一部である。
【0003】
ヘルペスは、人ごとにさまざまである可能性があるが、一般的には、発生が約7から10日間続き、年に3または4回生じる。このときに、ヘルペスに関する苦痛が、強烈になる可能性がある。さらに、ヘルペスは、接触伝染性がきわめて高く、物理的な接触によって広がることができる。
【0004】
ヘルペスの治療は、経口の抗ウイルス薬の形態であってもよいが、より一般的には、局所適用の抗ウイルス薬の形態であり、通常はクリームまたは軟膏の形態である。そのような薬剤を、処方箋なしで、店頭で購入することが可能である。そのような薬剤において一般的な有効成分として、これらに限られるわけではないが、ペンシクロビル(Vectavir、Fenestil Pencivir、およびDenivirという名称で販売されている)ならびにアシクロビル(Zoviraxという名称で販売されている)が挙げられる。局所適用によって使用されており、体外でHSVに対する阻害作用を呈する他の知られている抗ウイルス剤は、例えば、アデニンアラビノシド(ara−A、ビダラビン)、アラビノシルアデニン一リン酸塩(ara−AMP)、ロブカビル(ビスヒドロキシメチルシクロブチルグアニン、BHCG)、ブリブジン(ブロモビニルデオキシウリジン、BVDU)、デシクロビル、ファムシクロビル、シドフォビル(HPMPC、GS504)、イドクスウリジン、ネチブジン(ゾナビル、BW882C87)、PAA(ホスホノアセテート)、PFA(ホスホノホルメート)、ソリブジン(ブロバビル、BV−araU)、トリフルリジン(トリフルオロチミジン、TFT)、トロマンタジン、バラシクロビル、ビレンド、1−ドコサノール(リダコル)、348U87、2242(2−アミノ−7−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシメチル)プリン)、HOE 961、シバミド(カプサイシン)、PMEA(9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン)、ペプチド T、BILD 1263、CRTである。
【0005】
ヘルペスを引き起こすウイルスの高い接触伝染性という性質ゆえに、ヘルペスを患う者は、他部への口づけを避けるように警告され、またはヘルペスに触れないように警告される。したがって、店頭で販売される多くの製品に添えられている説明書が、ユーザに対して「少量を指へと絞り出し、患部へと塗布する」ように指示していることは、驚くべきことである。いくつかの事例では、局所適用の処置を行うときに、手袋または指サックを着用し、またはアプリケータ(例えば、綿棒)を使用することが、ユーザに対して指示されている。これらの矛盾する指示および手袋の使用に必要な余分な手間ゆえに、結果として、人々が推奨される頻度(通常は、2から3時間ごと)での薬剤の塗布または推奨される継続期間(通常は、7日間)にわたる薬剤の塗布を怠る可能性がある。綿棒は、繊維がヘルペスに捕捉される結果となりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,211,243号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0072432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
局所適用の抗ウイルス薬の既存の塗布方法の不適切さにもかかわらず、この領域における改善は、皆無ではないとしても、わずかである。米国特許第6,211,243号明細書が、壊れやすいリザーバへと突き当てられる吸収性の攪拌パッドを有しているヘルペス薬のアプリケータを開示している。パッドは、繊維または毛の集まりであり、それらで治療用の組成物を保持でき、病んだ組織を削り落とすことができる。したがって、このアプリケータの意図は、同じアプリケータを複数回使用し(結果として、再感染または他部への転移の恐れが生じる)、局所薬をヘルペスにこすり付ける(苦痛を生じさせかねない処置である)ことにあるように見受けられる。米国特許出願公開第2008/0072432号明細書が、ヘルペス薬の保存および適用に使用することができる「適用器具」を開示している。しかしながら、この用途のために用いられる器具またはツールは、アプリケータパッドまたはブラシである。したがって、これも複数回使用のアプリケータであり、付随の問題を抱えている。
【0008】
要約すると、局所適用のヘルペス薬の容易な使用を手助けし、苦痛が少なく、再感染または他部への感染の転移の恐れが少ない製品について、ニーズが依然として存在する。本発明の目的は、そのような製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、薬剤の局所適用を必要とする医学的状態を治療するためのキットを提供する。キットは:
(a)流体の形態の薬剤を複数回の適用にとって充分に含んでいる薬剤の容器、および
(b)各々が弾性的な材料から一体的に形成されている複数のアプリケータが内部に配置されてなるケースを含んでおり、
各々のアプリケータが、ネック部によって接続されたハンドル部および平坦なブレード部を備えており、前記ネック部の断面が、使用時に平坦なブレード部を反らすことができるよう、少なくとも1つの寸法においてハンドル部および平坦なブレード部よりも薄く、平坦なブレード部が、薬剤を吸収しない表面を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるキットの斜視図を示している。
図2】本発明のキットにおいて有用なアプリケータの実施形態を示している。
図3】使用前のキャリア上の複数のアプリケータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、薬剤の局所適用を必要とする病状の治療のためのキットを提供する。図1が、本発明によるキットの斜視図を示している。キットは、ケース10、薬剤の容器12、および複数のアプリケータ14を有している。随意により、キットは、鏡16をさらに含むことができ、ケース10内に使用の印刷された説明書18を収容することができる。薬剤の容器は、推奨される1回の治療課程の全体にとって充分な薬剤など、複数回の治療に充分な薬剤を収容している。キット内のアプリケータの数および治療の回数は、好ましくは同じである。
【0012】
図2が、本発明のキットにおいて有用なアプリケータの実施形態を示している。アプリケータは、一体的に形成されたハンドル部20および平坦なブレード部22を、弾性ネック部24によって接続して備えている。用語「一体的に形成」は、アプリケータが成形された材料の単一片から形成されることを意味し、例えば成型プラスチック材料から形成されることを意味する。
【0013】
図1のハンドル部20は、おおむね矩形の断面を有しており、ユーザによるアプリケータの把持に役立つように、随意による親指用のくぼみ26が形成されている。しかしながら、ハンドル部20の全体形状は、設計上の選択の問題である。したがって、ハンドル部20は、円形もしくは長円形の断面、またはより角張った断面を有してもよく、親指用のくぼみの代わりに隆起した畝を有してもよい。
【0014】
平坦なブレード部22が、アプリケータのうちの薬剤が適用される部分である。図示のとおり、この部分は、おおむね平坦な上面28を有している。反対側の表面(図示せず)も平坦であってもよく、または設計上の選択として、丸みを帯びていても、審美的な造作を有していてもよい。したがって、用語「平坦なブレード部」は、アプリケータのうちで、薬剤が適用される少なくとも1つのおおむね平坦な表面28を有している部位を指す。裏面は、平坦であってもよく、または湾曲した表面もしくは装飾的な表面を有してもよい。
【0015】
ネック部24は、平坦なブレードとハンドルとの間に配置された断面の高さが減らされている領域である。特に、図2における断面の高さAが、ハンドルおよびブレードの断面の高さに比べて減らされている。さらにネック24は、所望であれば、減らされた断面の幅を有することができる。断面の高さを減らす目的は、アプリケータに、使用時にネックの領域において曲がることができるように、弾性的な柔軟性をもたらすことにある。ヘルペスはかなりの痛みを伴うことが多いため、剛体的なアプリケータで薬剤を塗布すると、不快を感じる恐れが高まり、結果として治療の計画が遵守されなくなる可能性が高まると考えられる。ネック部の断面の高さを減らすことによって、アプリケータが、より柔らかくて優しい感触を有し、結果として不快の可能性が低くなる。
【0016】
アプリケータの寸法は、決定的に重要というわけではないが、いくつかの関心事のバランスを呈する。(例えば、再び閉じることのできるボックスなどの紙、またはプラスチック製の)ケースが、ユーザが容易に携行することができるように、パースまたはポケットに好都合にフィットするサイズであることが望ましい。ケースが、治療の計画の全体に対応するように20個、30個、またはそれ以上のアプリケータの収容を必要とする可能性があるため、個々の各々のアプリケータのサイズは、相当に小さくなければならない。他方で、アプリケータが小さすぎると、一部の者にとって使用が困難になる。したがって、好ましい実施形態において、本発明のアプリケータは、例えば3.5から6cmなど、3から6cmの長さを有し、ハンドルおよびブレードの領域において0.8から1.2mmの断面の高さを有する。したがって、ネック部は、適切には、0.5から0.7mmの範囲にあるより小さな断面の高さを有する。
【0017】
アプリケータは、2つの重要な特徴をもたらす材料から一体的に形成される。すなわち、(1)材料が、薬剤に関して非吸収性であるべきであり、(2)材料が、柔らかなアプリケータの感触をもたらすべく、きわめてわずかな圧力に応答してネックが曲がることができるよう、充分な柔軟性および弾性を有するべきである。この目的に適した材料は、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンなどのポリオレフィン類であるが、「柔らか」な感触を提供するための充分な柔軟性を有している他のプラスチックも適している。
【0018】
図3は、本発明のキットへと配置のためのキャリア30に組み合わせられた複数のアプリケータ14を示している。キット内のアプリケータの数は、手洗いの可能性が限られているときにアプリケータを使用することができるように、1日もしくは数日の治療を提供するために充分な数(例えば、5から10個のアプリケータ)から適切に変更することができ、または容器内の治療の各々についてアプリケータを提供するために充分であるように、より多数であってもよい。この後者の場合には、複数のアプリケータは、複数である容器内の薬剤の適用回数と同数である。しかしながら、ケースがいくつかの複数のアプリケータを収容するための充分なサイズである限りにおいて、すべてのアプリケータが当初よりキットに備えられている必要はない。アプリケータは、包装されていなくても、個別に包装されていても、または図3に示されているようなキャリア(アプリケータがグループとして結び付けられ、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および低密度のポリオレフィン類(例えば、低密度ポリエチレン)などといった材料から形成された外包みによって塵埃から保護される)にて提供されてもよい。存在するアプリケータの数を視覚的に確認できるよう、透明であることが望ましいが、必ずしも透明である必要はない。1つのアプリケータ14がキャリア30から取り出されるとき、残りのアプリケータの先端は、再び閉じることができる小袋であってもよいキャリア30内に保護されたままであってもよい。
【0019】
容器内の薬剤は、流体の形態で提供される。流体の形態の薬剤を、容器から絞り出し、滴下させ、または汲み出すことができる。流体の形態の薬剤は、たとえ適用の準備において逆さまの姿勢へと裏返された場合でもアプリケータのブレード部にとどまるための充分な粘性および/または表面張力を有することができる。流体の形態の例として、これらに限られるわけではないが、ゲル、発泡体、クリーム、軟膏、ペースト、粘稠液、およびローションが挙げられる。
【0020】
容器は、チューブ、スポイト、またはポンプディスペンサ、あるいは流体の形態の薬剤を収容し、アプリケータのブレード部へと送り出すことができる任意の他の種類の容器であってもよい。
【0021】
薬剤それ自体は、複数回の治療において局所薬として繰り返し塗布される任意の種類の薬剤であってもよい。具体的な実施形態においては、薬剤が、ヘルペスの治療に使用される有効成分を含んでいる。具体的な有効成分の例として、これらに限られるわけではないが、ペンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、またはアシクロビルなどの抗ウイルス剤、テトラカイン、ベンゾカイン、リドカイン、ベンジルアルコール、樟脳、およびフェノールなどの麻痺薬、ならびにドコサノール、亜鉛、リシン、フェノール、およびタンニン酸などといったこの目的に使用される他の有効成分が挙げられる。
【0022】
本発明のキットを使用するために、ユーザは、1つのアプリケータを取り出し、このアプリケータに指示に沿った量の薬剤を適用する。所望であれば、アプリケータのブレード部の表面28が、適切な量の薬剤の取り出しを容易にするためのマーキングを有してもよい。そのようなマーキングが存在する場合、マーキングの具体的な位置は、薬剤を存在させてなる流体の形態の種類、薬剤の濃度、および治療対象の領域のサイズに依存して決まる。ひとたび薬剤がアプリケータ上に位置すると、アプリケータは、薬剤を治療対象の領域へと塗布するために使用される。次いで、アプリケータは、後の塗布において使用されるさらなるアプリケータがキットに存在するため処分される。このようにして、キットを使用することで、ヘルペスまたは他の治療対象領域を指で触れる必要がなくなり、指で薬剤に触れる必要がなくなり、治療前または治療後に手を洗う必要がなくなり、同じアプリケータの反復使用による交差汚染の恐れがなくなる。さらに、キットの形態ゆえに、薬剤およびアプリケータを、ヘルペスの最初の徴候(疼き)の段階で治療を開始すべく利用することができ、または通常の1日のあいだずっと治療の計画を守ることができるよう、好都合に携帯することができる。このようにして、キットを使用することで、ヘルペスの治療において、治療の質が改善され、遵守が促進される。
図1
図2
図3