特許第5965148号(P5965148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965148無線電力伝送を用いたモバイル端末用受電モジュール及び当該モバイル端末用受電モジュールを備えたモバイル端末用充電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965148
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】無線電力伝送を用いたモバイル端末用受電モジュール及び当該モバイル端末用受電モジュールを備えたモバイル端末用充電池
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20160721BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20160721BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160721BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H02J50/10
   H02J7/00 301D
   H01F17/00 B
   H01M10/46
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-553(P2012-553)
(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公開番号】特開2013-140880(P2013-140880A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】亀山 工次郎
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英志
(72)【発明者】
【氏名】砂原 肇
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−294385(JP,A)
【文献】 特開2011−187559(JP,A)
【文献】 特開2004−047701(JP,A)
【文献】 特開2008−159703(JP,A)
【文献】 特開2004−186360(JP,A)
【文献】 特開2009−124878(JP,A)
【文献】 特開平11−251142(JP,A)
【文献】 特開2011−211176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 17/00
H01M 10/46
H02J 7/00
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受電モジュール間で電力を無線により伝送する無線電力伝送方式を用いたモバイル端末用受電モジュールであって、
基板に、導体からなるコイルが回路パターンとして設けられたシートコイルと、
磁性粉末が分散された樹脂により形成された磁性シートと、
を備え
前記磁性シートは、前記コイルに密着する部分では前記樹脂に対する前記磁性粉末の濃度を低くした低濃度層と、前記コイルに密着しない部分では前記低濃度層よりも高い濃度で前記磁性粉末を前記樹脂に分散させた高濃度層とを有することを特徴とするモバイル端末用受電モジュール。
【請求項2】
前記シートコイルには、前記基板の表面及び裏面に亘って前記コイルが回路パターンとして設けられており、
前記基板の裏面に設けられた前記コイルの導体間に、前記磁性シートが充填されていることを特徴とする請求項1に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項3】
前記基板の表面において、前記基板の表面に設けられた前記コイルの導体間のみに、前記磁性シートが充填されていることを特徴とする請求項2に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項4】
前記磁性シートは、前記基板の裏面に設けられた前記コイルを覆うように設けられていることを特徴とする請求項3に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項5】
前記磁性シートは、前記樹脂に分散させる前記磁性粉末を、絶縁コーティングしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項6】
前記絶縁コーティングした磁性粉末の前記磁性シートに対する体積比率は、60Vol%〜90Vol%であることを特徴とする請求項5に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項7】
前記磁性シートにおいて、前記磁性粉末を分散させた樹脂をBステージ状にしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項8】
前記磁性シートにおいて、前記樹脂の代わりに粘着剤を使用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモバイル端末用受電モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載したモバイル端末用受電モジュールを備えたモバイル端末用充電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で電力を伝送する無線電力伝送方式を用いたモバイル端末用受電モジュール及び当該モバイル端末用受電モジュールを備えたモバイル端末用充電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型PC、タブレット型PC、デジタルカメラ、携帯電話(特にスマートフォン)など人が携帯しながら使用できるモバイル端末が急速に普及してきている。そして、これらのモバイル端末のほとんどには充電池が搭載されており、定期的な充電が必要とされる。このモバイル端末の充電地への充電作業を簡易にするために、送電モジュールと受電モジュール間における電磁誘導を利用したコードレスの給電(無線電力伝送)により、充電池を充電する機器が増えつつある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
例えば、特許文献1には、交流を巻線、コイル、または、任意のタイプの電流担持ワイヤに印加することによって交番する磁場を作成するベースユニット(送電モジュール)からエネルギーを受け取り、再充電可能なバッテリに伝達するレシーバ(受電モジュール)をモバイル端末に搭載した機器が開示されている(図16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−527226号公報
【特許文献2】米国特許第7948208 B2号明細書
【特許文献3】米国特許第7952322 B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モバイル端末に、充電池とともに、コードレス給電を可能とする受電モジュールを搭載すると、モバイル端末自体の厚みが増してしまう。一方、モバイル端末自体の厚みを維持しようとすれば、充電池自体の厚みを薄くする必要があるが、充電地の容量を減らさなければならず不都合である。そのため、受電モジュール自体の薄型化、小型化、軽量化が求められている。
【0006】
更に、送受電モジュール間における無線電力伝送では、高電力・高送電効率で給電が求められる。そして、送受電モジュール間における無線電力伝送を高電力・高送電効率で行うと過剰な熱が発生するという問題があるため、放熱性の向上も求められる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、送受電モジュール間で電力を無線により伝送する無線電力伝送方式を用いたモバイル端末用の受電モジュール自体の薄型化、小型化、軽量化を図るとともに、放熱性を高めつつ、高送電効率での受電を可能とするモバイル端末用受電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明の一つは、送受電モジュール間で電力を無線により伝送する無線電力伝送方式を用いたモバイル端末用受電モジュールであって、基板に、導体からなるコイルが回路パターンとして設けられたシートコイルと、磁性粉末が分散された樹脂により形成された磁性シートとを備え、前記磁性シートは、前記コイルに密着する部分では前記樹脂に対する前記磁性粉末の濃度を低くした低濃度層と、前記コイルに密着しない部分では前記低濃度層よりも高い濃度で前記磁性粉末を前記樹脂に分散させた高濃度層とを有することを特徴とするものである。
【0009】
上記の構成によれば、樹脂を含む磁性シート自体に接着性があるため、この磁性シートの接着性を利用して、モバイル端末に本モバイル端末用受電モジュールを貼り付けることにより組み込むことができる。このため、従来、モバイル端末に受電モジュールを組み込む際に必要とされた接着剤が不要となり、モバイル端末の薄型化・小型化・軽量化を実現することができる。また、コイルが発熱したときに、コイルの熱を、シートコイルと磁性シートを介して放熱することができるため放熱性を向上させることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記モバイル端末用受電モジュールの前記シートコイルにおいて、前記基板の表面及び裏面に亘って前記コイルが回路パターンとして設けられており、前記基板の裏面に設けられた前記コイルの導体間に、前記磁性シートが充填されていることを特徴とするものである。
【0011】
上記の構成によれば、コイルの巻き数確保のために基板の表面・裏面にコイルを形成した場合でも、基板の裏面に設けられたコイルの導体間に、磁性シートの一部を充填することにより、基板の裏面に設けられたコイルを磁性シートに埋め込むことができ、受電モジュール全体を薄型形成することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記基板の表面において、前記基板の表面に設けられた前記コイルの導体間のみに、前記磁性シートが充填されていることを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0013】
上記の構成によれば、基板の表面ではコイルの導体間のみに、磁性シートが充填されているため、送電モジュールから受電モジュールへの電力の電送効率を向上させることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記磁性シートが、前記基板の裏面に設けられた前記コイルを覆うように設けられていることを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0015】
上記の構成によれば、表面及び裏面に磁性シートを設けることにより、送電モジュールから受電モジュールへの電力の電送効率を向上させることができる。また、基板の表面側では、コイルの導体間のみに磁性シートが充填されているため、送電モジュールからの電力伝送の際に磁束を遮蔽してしまうことがない。一方、基板の裏面側では、コイルがコイルの導体間のみならずコイル全体に亘って磁性シートによって覆われているため、磁束を遮断することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記磁性シートにおいて、前記樹脂に分散させる前記磁性粉末が、絶縁コーティングされていることを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0017】
上記の構成によれば、磁性粉末が絶縁コーティングされているため、磁性シートをコイルの導体間に充填した場合に、コイルの導体間における短絡を防止することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記絶縁コーティングした磁性粉末の前記磁性シートに対する体積比率が、60Vol%〜90Vol%であることを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0019】
上記の構成によれば、磁性粉末が絶縁コーティングされているため、コイルの導体間を、磁性粉末が高濃度で含まれる磁性シートで充填したとしてもコイルの導体間における短絡を防止しつつ電力の電送効率を向上させることができる。
【0020】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記磁性シートが、前記コイルに密着する部分では前記樹脂に対する前記磁性粉末の濃度を低くした低濃度層と、前記コイルに密着しない部分では前記低濃度層よりも高い濃度で前記磁性粉末を前記樹脂に分散させた高濃度層とを有することを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0021】
上記の構成によれば、磁性シートにおいて、コイルに密着する部分には樹脂に対する磁性粉末の濃度を低くした低濃度層を設けることにより、コイルの導体間を、磁性シートで充填したとしてもコイルの導体間における短絡を防止することができる。一方、コイルに密着しない部分には、低濃度層よりも高い濃度で磁性粉末を樹脂に分散させた高濃度層を設けることにより、電力の電送効率を向上させることができる。
【0022】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記磁性シートが、前記コイルに密着する部分では低い透磁率を有する磁性粉末を前記樹脂に分散させた低透磁率層と、前記コイルに密着しない部分では前記低透磁率層よりも高い透磁率を有する磁性粉末を前記樹脂に分散させた高透磁率層とを有することを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0023】
上記の構成によれば、磁性シートにおいて、コイルに密着する部分には低い透磁率を有する磁性粉末を樹脂に分散させた低透磁率層を設けることにより、コイルの導体間を、磁性シートで充填したとしてもコイルの導体間における短絡を防止することができる。一方、コイルに密着しない部分には、低透磁率層よりも高い透磁率を有する磁性粉末を樹脂に分散させた高透磁率層を設けることにより、電力の電送効率を向上させることができる。
【0024】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記磁性シートにおいて、前記磁性粉末を分散させた樹脂をBステージ状にしたことを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0025】
上記の構成によれば、磁性シートの接着性能を向上させることができる。
【0026】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記磁性シートにおいて、前記樹脂の代わりに粘着剤を使用したことを特徴とするモバイル端末用受電モジュールである。
【0027】
上記の構成によれば、樹脂の代わりに粘着剤を使用しているため、より磁性シートの接着性能を向上させることができる。
【0028】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、上記に記載したモバイル端末用受電モジュールを備えたモバイル端末用充電池である。
【0029】
上記の構成によれば、薄膜状に形成されたモバイル端末用受電モジュールを備えたモバイル端末用充電池を提供することができる。モバイル端末用受電モジュールが薄く形成されているので、モバイル端末用充電池の容量を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
送受電モジュール間で電力を無線により伝送する無線電力伝送方式を用いたモバイル端末用の受電モジュール自体の薄型化、小型化、軽量化を図るとともに、放熱性を高めつつ、高送電効率での受電を可能とするモバイル端末用受電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
図3】第1実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの説明図である。
図4】第1実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの磁場の状態を示す説明図である。
図5】第2実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
図6】第3実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
図7】第4実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
図8】第5実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
図9】第6実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
図10】第7実施形態に係るモバイル端末用受電モジュールの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るモバイル端末用受電モジュール1を図面に基づいて説明する。
【0033】
(モバイル端末用受電モジュール1の概要)
図1に示すように、モバイル端末用受電モジュール1は、ノート型PC4やスマートフォン5に収納されている充電池パック2に、充電池3とともに収納された状態で使用される。そして、モバイル端末用受電モジュール1は、送電シート6に組み込まれた複数の送電モジュール7と対になり、モバイル端末用受電モジュール1と送電モジュール7との間で磁気結合により誘導起電力を引き起こすように構成されている。これにより、モバイル端末用受電モジュール1は、送電モジュール7から電力を無線により受電することができる。そして、受電した電力は充電池3に充電される。この他、モバイル端末用受電モジュール1は、電磁誘導を利用したコードレスの給電や磁界共鳴を利用したコードレスの給電により充電可能な充電池を搭載したタブレット型PC、デジタルカメラ、携帯電話などにも使用することができる。
【0034】
上記のモバイル端末用受電モジュール1は、図2に示すように、基板11に導体からなるコイル12が回路パターンとして設けられたシートコイル13と、磁性粉末が分散された樹脂により形成された磁性シート14とを有した構造をしている。なお、送電モジュール7もモバイル端末用受電モジュール1と同様の構成をしている。
【0035】
ここで、図1に記載した磁気結合方向とは、受電側のモバイル端末用受電モジュール1と送電側の送電モジュール7の中心部同士が対向配置された場合のように、磁気結合させる側(送電側)と磁気結合される側(受電側)とを対向配置したときに最も強く磁気結合することによって、最も大きな誘導起電力を発生する位置関係となった場合における磁気結合させる側と磁気結合される側との中心部同士を結ぶ方向である。
【0036】
上記の構成によれば、樹脂を含む磁性シート14自体に接着性があるため、この磁性シート14の接着性を利用して、充電池3にモバイル端末用受電モジュール1を貼り付けることによりスマートフォン5などのモバイル端末に組み込むことができる。このため、従来、スマートフォン5に受電モジュールを組み込む際に必要とされた接着剤が不要となり、スマートフォン5自体の薄型化・小型化・軽量化を実現することができる。また、コイル12が発熱したときに、コイル12の熱を、シートコイル13と磁性シート14を介して放熱することができるため放熱性を向上させることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係るモバイル端末用受電モジュール1について、電磁誘導を利用して送電モジュール7からモバイル端末用受電モジュール1に給電がなされる構成を詳細に説明する。
【0038】
(モバイル端末用受電モジュール1の構成)
モバイル端末用受電モジュール1は、図2に示すように、充電池パック2に、充電池3に貼り付けられた状態で収納されている。そして、このモバイル端末用受電モジュール1は、基板11に導体からなるコイル12が回路パターンとして設けられたシートコイル13と、磁性粉末が分散された樹脂により形成された磁性シート14とを有した構造をしている。充電池3には、縦幅が32mm、横幅が46mm、厚みが4.5mmのリチウムイオン電池を使用している。
【0039】
(シートコイル13)
シートコイル13を構成する基板11には、表面及び裏面の両面に回路パターンが作成可能なフレキシブル回路基板11を使用している。本実施形態では、フレキシブル回路基板11は、図2が示すように、縦幅が32mm、横幅が46mm、厚みが30μm(厚みは12μm〜75μmでもよく、好ましくは12μm〜25μmがよい)の薄板形状(シート状)をしており、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面には、厚みが60μm(厚みは18μm〜75μmでもよく、好ましくは35μm〜50μmがよい)の銅箔が貼られた構成をしている。また、コイル12は、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面に設けられた銅箔が、後述するサブトラクティブ工法にて、渦巻き状に巻回した平面コイル状となるように加工されて形成されている。これにより、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面に形成されたコイル12は、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面から60μmほど突出した状態になっている。なお、フレキシブル回路基板11の表面に形成されたコイル12と、裏面に形成されたコイル12とは、フレキシブル回路基板11に設けられたスルーホールを介して接続されている。また、フレキシブル回路基板11の縦幅及び横幅は、充電池3に縦幅及び横幅に対応して適宜設定される。
【0040】
また、コイル12は、コイル12の両端が、図示しない整流装置に接続されている。そして、整流装置は、電磁誘導により形成された交流電力を直流電力に平滑化して充電池3を充電する。なお、図1に示すように、送電モジュール7に設けられたコイル71は、コイル71の両端が、電源装置8に接続されて、任意の周波数で交流電力を供給可能にしている。
【0041】
(磁性シート14)
磁性シート14の縦幅及び横幅は、基板11の縦幅及び横幅と同じ幅で形成され、縦幅が32mm、横幅が46mmである。また、磁性シート14の厚みは、370μm(厚みは、5μm〜600μmでもよく、好ましくは50μm〜500μmがよい)であり、薄膜形状をしている。磁性シート14は、図3に示すように、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12の導体間に設けられた隙間Bを埋めるようにコイル12の壁面に密着して接合している。
【0042】
(磁性シート14:樹脂)
磁性シート14は、磁性粉末が分散された樹脂により形成されている。ここで使用する樹脂は、樹脂自体が充電池3への接着性を有し、長期間にわたり接着性に対する信頼性が維持できるものであれば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。例えば、熱硬化性樹脂であれば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂、シアノエステル樹脂、マレイミド樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂であれば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。本実施形態では、接着性に対する信頼性、絶縁性に対する信頼性の観点から、エポキシ樹脂を主成分とした混合樹脂を用いている(詳細は後述する)。特に限定されるものではないが、このエポキシ樹脂には、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂等を用いることができる。また、左に挙げたエポキシ樹脂は単独でも、2種類以上混ぜて使ってもよい。
【0043】
更に、エポキシ樹脂に、硬化剤として、公知のフェノール樹脂、酸無水物、アミン化合物等を添加してもよい。また、エポキシ樹脂に、エラストマー成分を含ませてもよい。このエラストマー成分を含ませることにより、シート状の磁性シート14に柔軟性および可撓性を付与することができる。このように磁性シート14に柔軟性および可撓性を付与するものであれば、特に限定されるものではないが、エラストマー成分としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。とりわけ、エラストマー成分には、エポキシ樹脂に分散させやすいという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。差に挙げたエラストマー成分は単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。なお、アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、常法によってラジカル重合することにより合成して使用することができる。
【0044】
更に、エポキシ樹脂の硬化作用を促進するために、エポキシ樹脂に硬化促進剤を添加してもよい。例えば、アミン系、リン系、イミダゾール系など、各種公知の硬化促進剤が使用できる。中でも反応性の高さから、イミダゾール系化合物を用いるのが望ましい。
【0045】
(磁性シート14:磁性粉末)
また、磁性シート14は、上記樹脂中に磁性粉末が分散されている。磁性粉末には、軟磁性粉末を使用するが、本実施形態では、粒子径が106μm以下のガスアトマイズ粉(山陽特殊製)Fe-3%Siを使用している。軟磁性粉末としては、特に限定されるものではないが、純Fe、Fe-Si、Fe−Al-Si(センダスト)、Fe-Ni(パーマロイ)、ファインメット(日立金属製)、ソフトフェライト、Fe基アモルファス、Co基アモルファス、Fe-Co(パーメンジュール)などを用いることができる。
【0046】
また、本実施形態では、粒子径が106μm以下の軟磁性粉末を使用している。ここで、樹脂中に分散させる軟磁性粉末の平均粒子径は、5μm〜200μmでもよく、好ましくは50μm〜100μmとするのがよい。なお、軟磁性粉末の平均粒子径を200μm以下としている理由は、軟磁性粉末の平均粒子径が200μmよりも大きいものを使用すると磁性シート14自体の厚みが増してしまい、モバイル端末用受電モジュール1の薄型化という本発明の目的に沿わないからである。また、軟磁性粉末の平均粒子径を5μm以上としている理由は、平均粒子径が5μmよりも小さいものを使用すると反磁界の影響が著しくなり、透磁率が劣化し良好な吸収特性が得られなくなるからである。
【0047】
また、磁性シート14において、上記軟磁性粉末は、樹脂に対する添加量が、体積比率50Vol%〜99Vol%(好ましくは体積比率60Vol%〜90Vol%)になるように混合されている。
【0048】
更に、樹脂に分散させる軟磁性粉末の表面は、シリカ層により絶縁コーティングされている。軟磁性粉末の表面の絶縁コーティングには、シリカに限らず、リン酸塩ガラス(ヘガネス社Somaloy500等)なども使用することができる。なお、磁性粉末への絶縁コーティング工程は後述する。
【0049】
(動作)
上記の構成において、図1に示すように、送電シート6の各送電モジュール7に対して電源装置8を接続して、高周波の交流電流(交流電力)が供給されると、送電モジュール7が電磁誘導により交番磁場を生成する。そして、スマートフォン5の充電池パック2に収納されたモバイル端末用受電モジュール1のコイル12が磁気結合して交番磁場と鎖交し、誘導起電力が発生する。そして、誘導起電力により形成された交流電力を整流装置において直流電力に平滑化して充電池3を充電する。この際、図4に示すように、モバイル端末用受電モジュール1は、磁気結合方向に一致する断面において、コイル12の導体間に磁性シート14が充填されて、交互に並列配置された構成をしていることによって、モバイル端末用受電モジュール1は、コイル12の隙間に磁性シート14が充填されていない場合と比較して、コイル12周辺における磁気結合にとって無効な磁界を減少させると共に、全体的な磁界の広がりを抑制することが可能になる。この結果、モバイル端末用受電モジュール1は、送電モジュール7からモバイル端末用受電モジュール1に向かう磁束密度を高めることが可能になる。これにより、モバイル端末用受電モジュール1は、送電モジュール7から高い送電効率で電力を受電することができる。
【0050】
また、モバイル端末用受電モジュール1の内部では、コイル12への交流電流の流通により生成された磁界が、並列配置された他のコイル12に対して錯交することにより誘導電流を発生させ、この誘導電流が抵抗として作用する現象を、コイル12の隙間Bに充填した磁性シート14により抑制することができる。これにより、高い磁束密度と誘導電流による抵抗の低減とによって、高い送電効率による受電が可能になる。
【0051】
更に、コイル12が発熱したときに、コイル12の熱が、コイル12の隙間Bに充填した磁性シート14を介して効率的に移動するため、コイル12で発生した熱を効率良く放熱することができる。
【0052】
(モバイル端末用受電モジュール1の製造方法)
次に、モバイル端末用受電モジュール1の製造方法について説明する。
【0053】
(シートコイル13の作成工程)
まず、シートコイル13の作成工程について説明する。表面及び裏面に銅箔が設けられたフレキシブル回路基板11に、スルーホール加工を施し、できた穴に銅メッキ加工をすることでフレキシブル回路基板11の表面及び裏面を電気的に接続する。次に、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面に設けられた銅箔部分に、渦巻き状に巻回した平面コイルとなるように、シルクスクリーン印刷などで防蝕膜となるインクや塗料を塗布して覆い(マスキング)、金属腐食性のある薬品でエッチングさせて渦巻き状に巻回した平面コイル状のコイル12を形成する(サブトラクティブ工法)。これにより、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面にコイル12が回路パターンとして設けられたシートコイル13が作成される。
【0054】
(磁性シート14の作成工程)
次に、磁性シート14の作成工程について説明する。
【0055】
(絶縁コーティング工程)
まず、樹脂に分散させる軟磁性粉末に絶縁コーティングをする工程について説明する。加熱硬化型シリコーンレジン(信越化学製)KR220Lをトルエンで希釈し、固形分濃度が10wt%のシリコーンレジンワニスを作製する。次に、軟磁性粉末として、粒子径が106μm以下のガスアトマイズ粉(山陽特殊製)Fe-3%Siを用意する。このガスアトマイズ粉Fe-3%Siは、ガスアトマイズ法により、不純物が少ない軟磁性粉末として製造されている。そして、ガスアトマイズ粉Fe-3%Siを三次元的な粉体流動が可能な転動流動コーティング装置(パウレック社)を用いて、三次元的な流動をさせて、トルエンで希釈したシリコーンレジンワニスを噴霧することにより、ガスアトマイズ粉Fe-3%Siの表面にトルエンで希釈したシリコーンレジンワニスを披着させる。
【0056】
次に、シリコーンレジンワニスを披着させたガスアトマイズ粉Fe-3%Siに対して、窒素雰囲気中470℃で約1h熱処理を行うことで、シリコーンレジンワニス中の有機分を除去し、ガスアトマイズ粉Fe-3%Siの表面にシリカ層を形成させる。
【0057】
なお、磁性粉末の表面をシリカ層で絶縁コーティングするには、物理的にシリコーンレジンなどを磁性粉末に塗布後、熱処理しシリカ層を形成させてもよい。また、TEOS等のシリコンアルコキシドを出発原料とし、ゾルゲル法などでシリカ層を磁性粉末表面に形成させてもよい。また、パーカー処理と呼ばれるリン酸塩ガラス処理で磁性粉末表面に絶縁皮膜ガラス層を形成させてもよい。
【0058】
(樹脂の配合工程)
次に、軟磁性粉末を分散させる樹脂の配合工程について説明する。樹脂の配合量は、エポキシ樹脂EXA-4850‐150(DIC社製)が1.34g、エポキシ樹脂EPPN‐501HY(日本化薬株式会社製)が0.57g、フェノール樹脂GS-200(群栄化学製)が0.67g、アクリルゴム(ブチルアクリレート:アクリルニトリル:グリシジルメタクリレート=85:8:7重量%からなる共重合体で、重量平均分子量80万)が105.3gとなるように容器に入れる。なお、アクリルゴムは85wt%がメチルエチルケトン(MEK)で希釈されているものを使用している。メチルエチルケトン(MEK)を使用する目的としては、材料の混合及び各種材料の溶解性を考慮して使用している。次に、混合した樹脂をディスパーにて攪拌混合し、均一に溶解されたメチルエチルケトン溶媒の混合樹脂を作成する。
【0059】
(磁性粉末の分散工程)
上記樹脂の配合工程で作成したメチルエチルケトン溶媒の混合樹脂に、上記絶縁コーティング工程で作成した、表面がシリカ層で被覆されたガスアトマイズ粉Fe-3%Siを331重量部投入し、この混合樹脂を再びディスパーにて攪拌混合し、シリカ層で被覆されたガスアトマイズ粉Fe-3%Siを混合樹脂中に均一に分散させた。
【0060】
(硬化促進剤の配合工程)
上記磁性粉末の分散工程で作成した混合樹脂に2−メチルイミダゾール(四国化成工業製)0.1gを添加し再び、ディスパーにて攪拌混合させる。
【0061】
(シート形状加工工程)
次に、表面がシリコン処理された平板状のPETフィルムの表面に、上記硬化促進剤の配合工程で混合された混合樹脂を、アプリケータを使用して薄膜状に塗布する。なお、PETフィルムとしては、他に、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート等のプラスチック製基材、およびこれら多孔質基材、グラシン紙、上質紙、和紙等の紙製基材、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、アラミド等の不織布、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔、ニッケル箔などの金属製フィルム基材を使用してもよい。
【0062】
次に、PETフィルムの表面に塗布された混合樹脂を、温熱乾燥機を使用して110℃で3分間乾燥させてBステージ状にする。その結果、PETフィルムの表面でBステージ状になった厚み185μmのシート状の混合樹脂が得られる。ここで、Bステージ状とは、熱硬化性樹脂が半硬化状態であることをいう。このようなBステージ状の熱硬化性樹脂は、硬化が終了していないため、常温あるいは必要に応じて加熱により被着体に容易に接着させることができる。なお、使用する樹脂の種類や塗布する樹脂の厚みの差異により、温熱乾燥させる温度、時間を調整する必要がある。
【0063】
次に、所望の厚みになるように上記Bステージ状になったシート状の混合樹脂を90℃に設定した油圧式ラミネーターにて複数枚重ね合わせる。本実施形態では、厚さ370μmにするため、2枚のBステージ状になったシート状の混合樹脂を重ね合わせて磁性シート14を作成する。
【0064】
(シートコイル13及び磁性シート14の貼合わせ工程)
次に、シートコイル13と磁性シート14とを重ね合わせて上下から真空プレスする。この真空プレスでは、加圧式真空ラミネーター装置を用い、真空引きした後、温度100℃、加圧力1MPaで加圧時間1分の条件にて加圧する。なお、使用する樹脂の種類や樹脂の厚みの差異や製造環境に合わせて、加圧力0.5〜10MPa、加圧時間30秒〜10分、加熱温度50℃〜150℃(好ましくは70℃〜130℃)の範囲で調整する。
【0065】
このように、磁性シート14をBステージ状にしているため、シートコイル13とBステージ状の磁性シート14とを重ね合わせて加圧した場合に、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12とBステージ状のシートコイル13とを密着させて接合することができる。即ち、隣接する導体間に隙間Bが存在するコイル12とBステージ状の磁性シート14とを重ね合わせて加圧した場合に、隙間BにBステージ状の磁性シート14が入り込み、隙間Bに磁性シート14を密着させて接合することができる。また、真空プレスをすることで、磁性シート14中に気泡が発生するのを防止することができる。
【0066】
上記シートコイル13及び磁性シート14の貼合わせ工程を経てモバイル端末用受電モジュール1が完成する。
【0067】
上記で説明したモバイル端末用受電モジュール1によれば、樹脂を含む磁性シート14自体に接着性があるため、この磁性シート14の接着性を利用して、磁性シート14を接着面としてモバイル端末用受電モジュール1を充電池3に貼り付けることによりスマートフォン5などのモバイル端末に組み込むことができる。このため、従来、スマートフォン5に受電モジュールを組み込む際に必要とされた接着剤が不要となり、スマートフォン5自体の薄型化・小型化・軽量化を実現することができる。また、コイル12が発熱したときに、コイル12の熱を、シートコイル13と磁性シート14を介して放熱することができるため放熱性を向上させることができる。
【0068】
また、上記モバイル端末用受電モジュール1のシートコイル13において、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面に亘ってコイル12が回路パターンとして設けられており、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12の導体間に設けられた隙間Bに、磁性シート14が充填されている。このため、コイル12の巻き数確保のためにフレキシブル回路基板11の表面・裏面にコイル12を設けた場合でも、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12の導体間にできた隙間Bに、磁性シート14の一部を充填することにより、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12を磁性シート14に埋め込むことができ、モバイル端末用受電モジュール1全体を薄型形成することができる。
【0069】
また、上記モバイル端末用受電モジュール1では、磁性シート14が、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12を覆うように設けられているため、磁束を遮断することができる。
【0070】
また、上記モバイル端末用受電モジュール1では、樹脂に分散させる磁性粉末が絶縁コーティングされているため、磁性シート14をコイル12の導体間にできた隙間Bに充填した場合でも、コイル12の導体間における短絡を防止することができる。
【0071】
また、上記モバイル端末用受電モジュール1では、絶縁コーティングした磁性粉末の磁性シート14に対する体積比率を、好ましくは60Vol%〜90Vol%としているため、コイル12の導体間にできた隙間Bを、磁性粉末が高濃度で含まれる磁性シート14で充填したとしてもコイル12の導体間における短絡を防止しつつ電力の電送効率を向上させることができる。
【0072】
また、上記モバイル端末用受電モジュール1では、磁性シート14において、磁性粉末を分散させた樹脂をBステージ状にしているため、磁性シート14の接着性能を向上させることができる。
【0073】
また、上記モバイル端末用受電モジュール1を備えた充電池3を提供することができる。上記のようにモバイル端末用受電モジュール1が薄く形成されているので、スマートフォン5などに使用される充電池3の容量を十分に確保することができる。
【0074】
(第2実施形態)
上記第1実施形態におけるモバイル端末用受電モジュール1では、コイル12の巻き数確保のために、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面の両面にコイル12を設けた構成としているが、この構成に限らず、図5に示すように、フレキシブル回路基板11の表面にだけコイル12を設けた構成としてもよい。この場合、フレキシブル回路基板11の裏面に加工する必要がないので、コストダウン及び製造工程の簡略化が図れる。
【0075】
(第3実施形態)
また、第1実施形態におけるモバイル端末用受電モジュール1では、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面の両面にコイル12を設けた構成にして、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12の導体間にできた隙間Bを埋めるように磁性シート14を充填しているが、図6に示すように、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12の導体間にできた隙間Bに磁性シート14を充填せずに磁性シート14をシートコイル13に貼り合わせた構成としてもよい。
【0076】
(第4実施形態)
また、第1実施形態におけるモバイル端末用受電モジュール1では、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面の両面にコイル12を設けた構成にして、フレキシブル回路基板11の裏面に設けられたコイル12の導体間にできた隙間Bを埋めるように磁性シート14を充填しているだけであるが、これに限らず、図7に示すように、フレキシブル回路基板11の表面に設けられたコイル12の導体間にできた隙間Bのみを埋めるように磁性シート14を充填した構成としてもよい。ただし、磁性シート14は、フレキシブル回路基板11の表面に設けられたコイル12全体を覆う構成としてはならない。もし、磁性シート14が、フレキシブル回路基板11の表面に設けられたコイル12全体を覆ってしまうとコイル12で発生する磁束を遮蔽してしまうからである。これによれば、フレキシブル回路基板11の表面ではコイル12の導体間にできた隙間Bのみに、磁性シート14が充填されているため、送電モジュール7からモバイル端末用受電モジュール1への電力の電送効率を向上させることができる。
【0077】
図7に示すモバイル端末用受電モジュール1によれば、フレキシブル回路基板11の表面及び裏面に磁性シート14を設けることにより、送電モジュール7からモバイル端末用受電モジュール1への電力の電送効率を向上させることができる。また、フレキシブル回路基板11の表面側では、コイル12の導体間にできた隙間Bのみに磁性シート14が充填されているため、送電モジュール7からの電力伝送の際に磁束を遮蔽してしまうことがない。一方、フレキシブル回路基板11の裏面側では、コイル12がコイル12の導体間のみならずコイル12全体に亘って磁性シート14によって覆われているため、磁束を遮断することができる。
【0078】
(第5実施形態)
また、第1実施形態におけるモバイル端末用受電モジュール1では、樹脂に磁性粉末を分散させた磁性シート14を使用しているが、図8に示すように、磁性シート14において、シートコイル13と貼り合わせない側の面に主に接着剤で構成された接着層30を設けた構成としてもよい。例えば、充電池3を覆う材料の性質によっては、樹脂製の磁性シート14が貼り付かない場合があるため、より接着性を有する接着層30を設けることにより充電池3にモバイル端末用受電モジュール1を確実に接着することが可能となる。
【0079】
(第6実施形態)
また、第1実施形態におけるモバイル端末用受電モジュール1では、磁性シート14において、樹脂に分散させる磁性粉末に対して絶縁コーティングをしているが、絶縁コーティングをしない磁性粉末を使用してもよい。
【0080】
ただし、磁性シート14に絶縁コーティングをしない磁性粉末を使用する場合、コイル12の導体間の隙間Bに充填された磁性シート14中の磁性粉末同士が接触し、コイル12の導体間で短絡する場合がある。この短絡を防止するために、図9に示すように、磁性シート14を、コイル12に密着する部分では樹脂に対する磁性粉末の濃度を低くした低濃度層141と、コイル12に密着しない部分では低濃度層141よりも高い濃度で磁性粉末を樹脂に分散させた高濃度層142とを有する構成にしてもよい。この場合、磁性シート14において、コイル12に密着する部分には樹脂に対する磁性粉末の濃度を低くした低濃度層141を設けることにより、コイル12の導体間にできた隙間Bを、磁性シート14で充填したとしてもコイル12の導体間における短絡を防止することができる。一方、コイル12に密着しない部分には、低濃度層141よりも高い濃度で磁性粉末を樹脂に分散させた高濃度層142を設けることにより、電力の電送効率を向上させることができる。
【0081】
(第7実施形態)
また、磁性シート14に絶縁コーティングをしない磁性粉末を使用する場合、短絡を防止するために、図10に示すように、磁性シート14を、コイル12に密着する部分では低い透磁率を有する磁性粉末を樹脂に分散させた低透磁率層145と、コイル12に密着しない部分では低透磁率層145よりも高い透磁率を有する磁性粉末を樹脂に分散させた高透磁率層146とを有する構成にしてもよい。この場合、磁性シート14において、コイル12に密着する部分には低い透磁率を有する磁性粉末を樹脂に分散させた低透磁率層145を設けることにより、コイル12の導体間にできた隙間Bを、磁性シート14で充填したとしてもコイル12の導体間における短絡を防止することができる。一方、コイル12に密着しない部分には、低透磁率層145よりも高い透磁率を有する磁性粉末を樹脂に分散させた高透磁率層146を設けることにより、電力の電送効率を向上させることができる。
【0082】
(その他の実施形態)
また、磁性シート14を構成する樹脂に複数種類の磁性粉末を分散させてもよい。この場合、複数種類の磁性粉末を樹脂中に均一に分散させてもよいし、図10のように、低透磁率層145と高透磁率層146とに分散させる磁性粉末の種類を分けて用いてもよい。
【0083】
また、上記実施形態におけるモバイル端末用受電モジュール1では、磁性シート14において、磁性粉末を分散させた樹脂を使用しているが、樹脂の代わりに粘着剤を使用してもよい。使用する粘着剤の種類には、ゴム系、アクリル系、シリコン系、ウレタン系などが挙げられる。このように樹脂の代わりに粘着剤を使用すると、より磁性シート14の接着性能を向上させることができる。
【0084】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 モバイル端末用受電モジュール
2 充電池パック
3 充電池
5 スマートフォン
7 送電モジュール
11 フレキシブル回路基板
12 コイル
13 シートコイル
14 磁性シート
B 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10