【文献】
山本英則 他,透析液の安全管理 第9回 培養法以外の細菌検出法,臨牀透析,2011年10月10日,Vol.27, No.11,pp.1495-1501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の先行技術における蛍光染料法による透析液検査を行った場合、検査の度に血液透析を行っている場所とは異なる場所に透析液を移動し、特定の染色試薬による染色処理を行い、CCDカメラで撮影した後に生物粒子数をカウントする必要があった。また、その透析液の検査の結果が確認されるのに約20分間を要していた。したがって、血液透析中はリアルタイムで検査を行うことができなかった。
【0006】
そこで本発明は、人体に投与される透析液についてリアルタイムで検査でき、透析液中の生物粒子を検出してその個数を計数し、所望の条件に基づき、その結果をその場で報知することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段1:本発明の透析用生物粒子計数器は、血液透析用又は血液濾過用の透析液を流通する液体流通手段と、前記液体流通手段により流通され
てフィルタを通過した前記透析液の一部を人体に投与する前に分流する液体分流手段と、前記液体分流手段により分流された前記透析液に向けて所定の波長の光を
1つの光源から照射する発光手段と、前記透析液に含まれる対象物と前記発光手段により照射された光との相互作用により放出される光のうち、自家蛍光に基づいて、前記透析液に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定する生物粒子判定手段とを備える透析用生物粒子計数器である。
【0008】
本発明の透析用生物粒子計数器による生物粒子の計数は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(1)人工的に血液浄化が行われる血液浄化装置、例えば、血液透析や血液濾過透析が行われるダイアライザに流入される前の透析液、又は、血液濾過が行われた血液に混入される前の透析液について、その透析液中に生物粒子が存在するか否かを検査するために、人体に投与される前(血液透析に用いられる前)の透析液の一部を採取する。そして、その採取した透析液に、特定の波長の光を照射する。例えば、レーザーダイオードから単一波長のレーザー光を照射する。ここで、血液透析や血液濾過に必要な透析液は、人体に不足している成分を含んでいるが、そのほとんど全てが水で構成されているため、以下、透析液を水として説明する。また、透析液(水)に含まれ検出対象とする対象物としては、生物粒子や非生物粒子等である。
【0009】
(2)上記(1)によりレーザー光を照射すると、レーザー光と対象物との相互作用により光が放出されることとなる。なお、具体的に放出される主な光は、生物粒子との反射等によって放出される散乱光、レーザー光が生物粒子に吸収されそのエネルギーを利用して放出される自家蛍光、非生物粒子との反射等によって放出される散乱光である。
【0010】
(3)上記(2)による生物粒子からの自家蛍光に基づいて、水に含まれる対象物が生物粒子であるか否かが判定される。そして、その判定において生物粒子であると判定された場合、その個数をカウントすることで、生物粒子数が計数されることとなる。
【0011】
このように、本解決手段によれば、血液透析される前の透析液、又は、人体に投与する前の透析液に関して、指標とする自家蛍光物質からの自家蛍光を検出することで、生物粒子が存在するか否かをリアルタイムで判定することができる。また、血液透析を実行している現場においてリアルタイムで透析液内に生物粒子が存在していることが確認できるため、異常な(大量の生物粒子の計数)状態になる前に透析液への早期対処ができるので、患者に対する影響を極力抑制することができる。
【0012】
解決手段2:本発明の透析用生物粒子計数器は、解決手段1において、前記対象物又は前記透析液と前記発光手段により照射された光との相互作用により放出される光のうち、透過する前記透析液から放出されるラマン散乱光を低減し、且つ、前記対象物から放出される自家蛍光を透過させる自家蛍光選択光学手段をさらに備え、前記生物粒子判定手段は、前記自家蛍光選択光学手段により前記ラマン散乱光が低減された後の光に基づいて、前記透析液に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定し、前記発光手段は、照射後放出される前記自家蛍光のピーク波長と前記ラマン散乱光のピーク波長とを異ならせる前記所定の波長の光を照射することを特徴とする透析用生物粒子計数器である。
【0013】
本解決手段の透析用生物粒子計数器による生物粒子の計数は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(4)上記(1)によりレーザー光を照射すると、上記(2)のレーザー光と対象物との相互作用による光のほかに、レーザー光と水との相互作用により光が放出されることとなる。したがって、具体的に放出される主な光は、生物粒子との反射等によって放出される散乱光、レーザー光が生物粒子に吸収されそのエネルギーを利用して放出される自家蛍光、非生物粒子との反射等によって放出される散乱光、水(分子)に入射した光の波長が変換されて放出されるラマン散乱光となる。なお、自家蛍光のスペクトルのピーク波長が散乱光及びラマン散乱光のピーク波長と異なる波長になるように、照射するレーザー光の波長を設定する。
【0014】
(5)上記(4)により放出された光の波長はそれぞれ異なっており、例えば、生物粒子や非生物粒子からの散乱光はレーザー光の波長と同程度であるのに対し、ラマン散乱光や自家蛍光といった光の波長はそのレーザー光の波長よりも長くなる。また、ラマン散乱光と自家蛍光の波長については、それぞれの波長分布領域が重なることもあり、例えば、自家蛍光における波長分布のピーク値(ピーク波長)の方がラマン散乱光の波長分布のピーク値(ピーク波長)よりも長い波長となることもある。ここでは、照射するレーザー光の波長の設定によって自家蛍光とラマン散乱光のピーク波長が異なることを利用することにより、特定の波長(カットオフ波長)を基準とする光学分離器を用いて、ラマン散乱光の光量を自家蛍光の光量よりも低減することができる。例えば、特定の波長を基準とするロングパスフィルタやバンドパスフィルタを用いて、ラマン散乱光は低減し、自家蛍光はほとんど透過させる。
【0015】
(6)上記(5)により透過された光、すなわち、生物粒子からの自家蛍光に基づいて、水に含まれる対象物が生物粒子であるか否かが判定される。そして、その判定において生物粒子であると判定された場合、その個数をカウントすることで、生物粒子数が計数されることとなる。
【0016】
このように、本解決手段によれば、血液透析又は血液濾過される前の透析液に関して、水によるラマン散乱光と自家蛍光のピーク波長を異ならせるような照射光を用い、ラマン散乱光を光学的に抑制しさらに影響を低減していることで、指標とする自家蛍光物質からの自家蛍光を効率よく検出することができ、生物粒子が存在するか否かをリアルタイムで判定することができる。また、血液透析を実行している現場においてリアルタイムで透析液内に生物粒子が存在していることが確認できるため、異常(大量の生物粒子の計数)な状態になる前に透析液への早期対処ができるので、患者に対する影響を極力抑制することができる。
【0017】
解決手段3:本発明の透析用生物粒子計数器は、解決手段2において、前記対象物から放出される散乱光を反射し、前記自家蛍光及び前記ラマン散乱光を含む光を透過する散乱光選択光学手段をさらに備え、前記生物粒子判定手段は、前記散乱光選択光学手段及び前記自家蛍光選択光学手段を経た後の光に基づいて、前記透析液に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定することを特徴とする透析用生物粒子計数器である。
【0018】
本解決手段の透析用生物粒子計数器による生物粒子の計数は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(7)上記(5)によれば、上記(4)により放出された光の波長については、生物粒子や非生物粒子からの散乱光はレーザー光の波長と同程度であるのに対し、ラマン散乱光や自家蛍光といった光の波長はそのレーザー光の波長よりも長いということであった。したがって、生物粒子や非生物粒子からの散乱光の波長は、ラマン散乱光や自家蛍光よりも短いこととなる。この波長の関係を利用して、特定の波長を基準とする光学分離器を用いて、生物粒子や非生物粒子からの散乱光を選択することができる。例えば、特定の波長(カットオフ波長)を基準とするショートパスフィルタを用いて、生物粒子や非生物粒子からの散乱光だけを透過させることができる。他にも、カットオフ波長を基準として分離するダイクロイックミラーを用いて、この分離する波長より短い波長の生物粒子や非生物粒子からの散乱光は反射させ、この分離する波長より長い波長の光(ラマン散乱光や自家蛍光)は透過させることができる。
【0019】
(8)上記(5)により分離された光(自家蛍光)と、上記(7)により分離された光(生物粒子や非生物粒子からの散乱光)との相関関係に基づいて、水に含まれる対象物が生物粒子であるか否かが判定される。そして、その判定において生物粒子であると判定された場合、その個数をカウントすることで、生物粒子数が計数されることとなり、非生物粒子であると判定された場合、その個数もカウントしてもよい。
【0020】
(9)ここで、上記(5)のロングパスフィルタを上記(4)のダイクロイックミラーの下流の透過側に設置してもよく。上記(5)、(7)による光の分離について、まず、上記(5)による分離を行い、その分離後の光に対して上記(5)による分離を行ってもよい。具体的には、まず、上記(7)による分離によりカットオフ波長よりも短い生物粒子や非生物粒子からの散乱光が反射され、カットオフ波長よりも長いラマン散乱光や自家蛍光を含んだ光が透過され、次に、上記(5)による分離が先ほど透過したラマン散乱光や自家蛍光を含んだ光に対して行われ、カットオフ波長よりも長い自家蛍光を含んだ光が透過される。
【0021】
(10)上記(9)により最終的に分離(透過)された光(自家蛍光)と、途中の段階で分離(反射)された光(生物粒子や非生物粒子からの散乱光)との相関関係に基づいて、水に含まれる対象物が生物粒子であるか否かが判定される。そして、その判定において生物粒子であると判定された場合、その個数をカウントすることで、生物粒子数が計数されることとなり、非生物粒子であると判定された場合、その個数もカウントしてもよい。
【0022】
このように、このように、本解決手段によれば、ラマン散乱光の透過を抑制し、一方生物粒子からの自家蛍光については透過させているため、対象物からの散乱光との相関関係により、水に含まれる対象物が生物粒子であるか否かが判定することができる。例えば、散乱光と透過光がある場合は対象物が生物粒子であると判定し、散乱光だけがある場合は対象物が生物粒子ではない非生物粒子であると判定し、透過光がある場合は水によるラマン散乱光であると判定することができる。これにより、生物粒子に対する計数精度をさらに向上させることができる。また、設置環境(条件)に対応させて、ダイクロイックミラー、ロングパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ等の光学分離器の使用を選択することができる
【0023】
解決手段4:本発明の透析用生物粒子計数器は、解決手段3において、前記自家蛍光選択光学手段を経た後の光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第1信号を出力する自家蛍光受光手段と、前記散乱光選択光学手段を経た後の光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第2信号を出力する散乱光受光手段と、前記散乱光受光手段により出力された前記第2信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記透析液に含まれる対象物から放出された散乱光を検出したとして検出信号を出力する散乱光検出信号出力手段と、前記散乱光選択光学手段から前記自家蛍光選択光学手段を経て前記自家蛍光受光手段までの光路に、前記光路以外から入射する光が入り込むことを防ぐ遮光壁とをさらに備え、前記生物粒子判定手段は、前記散乱光検出信号出力手段により前記検出信号が出力された場合であって、前記散乱光受光手段により前記透析液に含まれる前記対象物から放出された前記散乱光が受光された時点と同時期に前記自家蛍光受光手段により光が受光され、前記時点と同時期に前記自家蛍光受光手段により前記受光された光に対応する前記第1信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記散乱光検出信号出力手段により出力された前記検出信号に対応する前記透析液に含まれる前記対象物を生物粒子であると判定することを特徴とする透析用生物粒子計数器である。
【0024】
本解決手段の透析用生物粒子計数器による生物粒子の計数は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(11)上記(7)で透過された光(自家蛍光)を受光し、受光した光量に応じた大きさの第1信号を出力する。例えば、フォトマルチチューブやフォトダイオード等の光検出装置により、受光した光量に応じた第1信号が出力される。
【0025】
(12)上記(7)で反射された光(対象物の散乱光)、又は、上記(7)で反射された光(対象物の散乱光)を受光し、受光した光量に応じた大きさの第2信号を出力する。例えば、フォトダイオード等の光検出装置により、受光した光量に応じた第2信号が出力される。
【0026】
(13)上記(12)で出力された第2信号の大きさが所定の閾値以上であるか否かが判定され、判定の結果、閾値以上であると判定された場合を対象物からの散乱光が検出されたとする検出信号(例えば、検出フラグ)が出力される。
【0027】
(14)上記(13)で検出信号が出力された場合であって、その検出信号に対応する時間、すなわち、上記(12)で受光した時点と同時期に、上記(5)で分離された、又は上記(10)で透過された光が受光されて第1信号が出力されていた場合、上記(6)における判定で、対象物が生物粒子であると判定する。なお、検出信号が出力されており、第1信号が出力されていない場合、対象物が非生物粒子であると判定してもよい。そして、その判定において生物粒子であると判定された場合、その個数をカウントすることで、生物粒子数が計数されることとなり、非生物粒子であると判定された場合、その個数もカウントしてもよい。また、第2信号の大きさに基づき、生物粒子(や非生物粒子)の大きさについても判定してもよい。
【0028】
このように、本解決手段によれば、対象物との散乱光について所定の閾値を設けたことで、閾値より大きい信号を対象物の散乱光であると判定することができる。
【0029】
解決手段5:本発明の透析用生物粒子計数器は、解決手段2から解決手段4のいずれかにおいて、前記発光手段により照射される光の前記所定の波長は、375nm〜420nmであり、前記自家蛍光選択光学手段により光を透過する基準となるカットオフ波長は、450nm〜490nmであることを特徴とする透析用生物粒子計数器である。
【0030】
本解決手段の透析用生物粒子計数器による生物粒子の計数は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(15)上記(1)による照射するレーザー光の波長を375nm〜420nmに設定し、上記(5)又は上記(10)による水によるラマン散乱光を低減し自家蛍光を透過するカットオフ波長を450nm〜490nmの間の所定の波長に設定する。
【0031】
このように、本解決手段によれば、例えば、405nmのレーザー光を照射し、水中の生物粒子の細胞内のリボフラビンからの自家蛍光を指標にすることで、リボフラビンのエネルギー状態を励起させやすくすることができ、さらに、その自家蛍光のピーク波長が約520nmであるのに対し水のラマン散乱光のピーク波長が約465nmとなるので、自家蛍光選択光学手段(ロングパスフィルタ)の基準とするカットオフ波長を490nmとすれば効率よく分離することができるため、生物粒子に対する計数精度をさらに向上させることができる。
【0032】
解決手段6:本発明の透析液監視システムは、解決手段1から解決手段5のいずれかに記載の前記透析用生物粒子計数器を備えた透析液監視システムであって、前記透析液を複数人分供給する多人数用透析液供給手段と、前記多人数用透析液供給手段により供給される前記透析液を、それぞれの透析監視装置へ分流し流通する多人数用液体流通手段と、前記透析用生物粒子計数器による判定結果を報知する報知手段とを備え、前記透析用生物粒子計数器は、前記多人数用透析液供給手段又は複数の前記透析監視装置のうちの少なくともいずれかに1つに接続され、前記多人数用透析液供給手段に流通する前記透析液又は前記透析監視装置に分流された前記透析液について、前記透析液に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定することを特徴とする透析液監視システムである。
【0033】
本発明の透析液監視システムによる透析液内の生物粒子の検査は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(16)例えば、血液透析は通常数時間要するため、一度に複数人の血液透析が行われる。そこで、複数人分の透析液を供給するために、予め大量の透析液を貯留する多人数用透析液供給装置が備えられる。
【0034】
(17)上記(16)により多人数用透析液供給装置から供給される透析液は、血液透析が行われる場所まで配管を流通する。なお、配管は途中で分岐しており、分岐した配管を流通してきた透析液が血液透析に用いられ、同時に複数の患者に対する血液透析が行われる。なお、患者一人ごとに血液透析の監視が透析監視装置により行われ、透析液は多人数用透析液供給装置から透析監視装置へまず送られ、透析監視装置を通して患者の血液透析が行われることとなる。
【0035】
(18)ここで、上記(17)において、透析液により血液透析が各患者に対して行われる前に、その透析液の一部がそれぞれ分流し採取され各透析用生物粒子計数器を用いて生物粒子が存在するか否かの判定が行われる。
【0036】
(19)上記(18)による透析用生物粒子計数器を用いた生物粒子が存在するか否かの判定の結果は、例えば、透析用生物粒子計数器又は透析監視装置により画面に表示又は警報音などで報知してもよいし、中央監視制御装置に収集し管理してもよい。
【0037】
このように、本解決手段によれば、同時に複数人の患者に対して血液透析が行われている場合、リアルタイムで透析液内に生物粒子が存在していることが確認できる。また、その結果は、透析用生物粒子計数器又は透析監視装置により画面に表示又は警報音などで報知されることで、透析液に生物粒子などが確認された場合、透析液への早期対処ができるので、患者に対する影響を極力抑制することができる。
【0038】
解決手段7:本発明の透析液監視システムは、解決手段6に記載の前記透析用生物粒子計数器を備えた透析液監視システムであって、前記透析用生物粒子計数器は、前記透析監視装置ごとに備えられることを特徴とする透析液監視システムである。
【0039】
本発明の透析液監視システムによる透析液内の生物粒子の検査は、例えば、以下の特徴を有しており、所定の手順に沿って進行する。
(20)上記(17)の透析監視装置に透析用生物粒子計数器がそれぞれ備えられるため、複数の場所で行われている血液透析について、その場においてリアルタイムで透析液内に生物粒子が存在していることが確認できる。したがって、透析液への早期対処ができるので、患者に対する影響を極力抑制することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の透析用生物粒子計数器、透析用生物粒子計数方法、及び、透析液監視システムによれば、患者が血液透析や血液濾過を行っている間においても、これらに用いられる透析液に光を照射し、生物粒子による自家蛍光の検出を指標として判定することで、リアルタイムで透析液が生物粒子に汚染されているかを判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1は、血液透析における透析液検査に関するシステムについて説明する図である。
図1に示すように、患者の血液透析は血液透析装置700により実行され、その血液透析に用いられる透析液中に生物粒子が存在するか否かの判定及び生物粒子数の個数の計数は透析用生物粒子計数器77により実行される。血液透析装置700及び透析用生物粒子計数器77について具体的に説明する。なお、本発明は血液透析装置に限らず、血液濾過装置においてもその透析液に用いることができる。
【0044】
〔血液透析装置〕
血液透析装置700は、患者情報及び血液や透析液の流れ等を監視、調整する透析監視装置710、血液や透析液を流す流通回路720、血液中の老廃物を排出しつつ不足しているものを透析液から血液に拡散させる血液浄化器770、及び、透析液を供給する透析液供給装置730から構成されている。
【0045】
〔透析監視装置〕
透析監視装置710は、制御監視部740、及び、流通調整部750から構成されている。制御監視部740は、例えば、血液透析全般の制御及び監視を行う装置であり、患者から採血する血液や血液透析後に投与する血液の流通調整、透析液供給装置730から血液浄化器770に送り出す透析液の温度及び流通の調整、患者の体調(例えば、血圧や心電図情報等)の監視、血液透析前後の透析液の流通及び監視等を行う制御監視装置743と、各種情報、進行状況、入力データ等を表示する表示部745(報知手段)と、外部(例えば、医療従事者)からの操作を受け付ける操作部747から構成されている。
【0046】
具体的には、制御監視装置743は各種処理を実行するCPU、処理内容(プログラムやデータ)を格納するROM、各種情報を格納するRAM等からなる装置である。また、表示部745は、ディスプレイであり、制御監視装置747から出力された情報を表示する。また、操作部747は、例えば、複数の入力ボタンからなり、医療従事者により所定の操作ボタンを押下されることで、各種処理を受け付けたり、各種情報の入出力を受け付けたりすることができる。また、図示していないが、外部(中央制御装置)からの制御信号を受け付けたり、各種情報を出力したりする外部接続端子を備えてもよい。
【0047】
〔流通調整部〕
流通調整部750は、例えば、患者から採血した血液の流量を調整して循環させるための血液ポンプ753、透析液供給装置730から供給される透析液の流量を調整する透析液調整バルブ755、血液浄化器770から排出された透析液を排出するための排出装置757から構成されている。これらの血液ポンプ753、透析液調整バルブ755、排出装置757は上記制御監視装置747により制御される。なお、排出装置757から透析監視装置710の外部に排出された透析液は、廃液処理部759に流されその後廃液処理される。
【0048】
〔流通回路〕
流通回路720は、血液回路721、722、727及び透析液回路723、724、725,727、728から構成されている。
【0049】
〔血液回路〕
血液回路721は、患者の動脈と血液ポンプ753の血液流入口との間を接続し、患者から採血した血液を血液ポンプ753まで流している。血液回路722は、血液流出口と血液浄化器770の血液流入口との間を接続し、血液ポンプ753により送り出された血液を血液浄化器770まで流している。血液回路727は、血液浄化器770の血液流出口と患者の静脈との間を接続し、血液浄化器770により血液透析された血液を患者の静脈に投与している。これらの血液回路721、722、727に流される血液の流量は血液ポンプ753により調整され、例えば、約200ml/minの流量の血液が循環している。
【0050】
〔透析液回路(液体流通手段、液体流通工程)〕
透析液回路723は、透析液供給装置730から供給される透析液を流している。なお、透析液回路723の途中には、透析液の流量を調整する透析用バルブ755が備えられる。透析液回路723を流れる透析液は、血液浄化器770の透析液流入口に流される前に、透析液内の生物粒子を計数するため、透析液分流器725b(液体分流手段)により分流される。具体的には、透析液回路723を流通する透析液の一部は、分流後透析液回路725に流され、その後透析用生物粒子計数器77に送られる。一方、透析液回路723を流れるほとんどの透析液は、透析液回路724に流され血液浄化器770の透析液流入口に流される。透析液回路726は、透析用生物粒子計数器77において生物粒子の検出及び計数処理が終了した透析液を廃液処理装置78まで流し、廃液処理装置78においてその透析液は廃液処理される。透析液回路728は、血液浄化器770の透析液流出口から送り出される透析液を流している。なお、透析液回路728の途中には、廃液処理装置759に排出する排出装置757が備えられる。これらの透析液回路723、724、725、726、728に流される透析液の流量は透析液調整バルブ755や透析用生物粒子計数器77により調整され、例えば、約500ml/minの流量の透析液が血液浄化器770に流入され、約10ml/minの流量の透析液が透析用生物粒子計数器77に流入されることとなる。
【0051】
〔透析液供給装置〕
透析液供給装置730は、透析液を供給する装置であり、例えば、タンクの中に透析液が貯留されており、透析監視装置710内の透析液調整バルブ755が操作されることで透析液を血液浄化器770や透析用生物粒子計数器77に供給することができる。また、透析液供給装置730と血液浄化器770との間にはフィルター735が設置されており、血液浄化器770に流入する前の透析液の最終的な浄化が行われる。
【0052】
〔血液浄化器〕
血液浄化器770は、例えば、患者から採血した血液を浄化する装置であって、具体的には、血液透析器(ダイアライザ)である。なお、血液濾過装置であれば、血液濾過器(ヘモフィルタ)を用いる。本実施形態においては、血液浄化器として血液透析器ダイアライザ770を使用したものとして説明する。
【0053】
ダイアライザ770は、血液流入口、血液流出口、透析液流入口、透析液流出口を備え、血液回路722は血液流入口、血液回路727は血液流出口、透析液回路724は透析液流入口、透析液回路728は透析液流出口にそれぞれ接続される。また、血液を内部に流通させることができる中空糸膜を複数(例えば、数千本)備えており、血液流入口を介して血液回路722から流入した血液は数千本の中空糸膜に分流され、血液透析された血液は血液流出口から血液回路727に流出される。また、透析液流入口を介して透析液回路724から流入した透析液は、複数の中空糸膜の周りに血液とは逆方向に流され、血液透析された透析液は透析液流出口から透析液回路728に流出される。ダイアライザ770の内部では、血液中の老廃物が中空糸膜の外側の透析液中に移動し、血液中に不足した成分が透析液中から中空糸膜を通り血液中に移動するといった拡散が起こっている。
【0054】
〔透析液用生物粒子計数器〕
透析用生物粒子計数器77は、対象物に光を照射し、対象物からの散乱光や自家蛍光を検出する光検出システム1と、光検出システム1から出力された信号に基づいて自家蛍光数をカウントする自家蛍光計数システム2、操作部72、74、報知ディスプレイ76(報知手段)とから構成されている。操作部72、74は、例えば、複数種類のボタン72、コントローラー74から構成されており、医療従事者により透析用生物粒子計数器77の操作を受け付けることができる。また、報知ディスプレイ76は、例えば、入力情報、操作情報、計数結果等を表示することができる。
【0055】
なお、透析用粒子計数器77の内部又は透析液回路726に、吸引ポンプ又は流量調整バルブ726bを設けるとよい。例えば、透析用粒子計数器77を設けることにより、透析液供給装置730の透析液供給量の調整が十分でない場合など、容易にその調整が可能となる。
【0056】
以下、透析用生物粒子計数器77の構成要素及び透析液内の生物粒子の有無の判定、生物粒子の計数等について具体的に説明する。
【0057】
図2は、透析用生物粒子計数器の一実施形態を示す概略構成図である。
図2に示すように、生物粒子計数器システムは、対象物に光を照射し、対象物からの散乱光や自家蛍光を検出する光検出システム1と、光検出システム1から出力された信号に基づいて自家蛍光数をカウントする自家蛍光計数システム2とから構成されている。これらのシステムにより、水中の対象物のうち生物粒子(以下、生物粒子とする)を検出及び計数することができる。なお、本実施形態における検出(計数)可能な生物粒子は、例えば、0.1μm〜数100μmの大きさの生物粒子であり、具体的には、細菌、酵母、カビ等である。また、生物粒子に照射する光は紫外線領域のレーザー光であり、生物粒子の体内(細胞内)に存在する代謝に必要となる物質(リボフラビン、NAD(P)H(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸))等)から発せられる自家蛍光を指標として検出する。
【0058】
〔光検出システム〕
光検出システム1は、例えば、発光装置10、照射光学レンズ系20、対象流動装置30、第1集光光学レンズ系40、遮光装置50、散乱光選択光学装置60、遮光壁65、自家蛍光選択光学装置70、第2集光光学レンズ系80、蛍光用受光装置90、第3集光光学レンズ系100、散乱用受光装置110から構成されている。これらの構成要素により、対象物に光を照射し、対象物からの散乱光や自家蛍光を検出することができる。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0059】
〔発光装置(発光手段、発光工程)〕
発光装置10は、例えば、半導体レーザーダイオード(半導体LED素子を含む。以下、レーザーダイオードとする)から構成されている。レーザーダイオード10によりレーザー光が発振され、生物粒子を含む透析液(水)に照射される。レーザーダイオード10が発振するレーザー光の波長は、生物粒子の細胞内に存在する自家蛍光を発することができる物質(以下、自家蛍光物質とする)に対応して決定される。ここで、自家蛍光物質は、照射される光のエネルギーを吸収して励起状態に励起しやすい励起波長を有している。その励起波長はその物質によって異なっており、さらに、励起状態から基底状態に戻る際に放出する自家蛍光の波長も自家蛍光物質によって異なっている。自家蛍光物質の励起波長及び自家蛍光波長について具体例を挙げて説明する。
【0060】
〔励起波長及び自家蛍光波長〕
図3は、自家蛍光物質の一例であるリボフラビンとNAD(P)Hの励起吸収スペクトルとその物質からの自家蛍光スペクトルの一例を示す図である。
図3に示すように、各分布は、NAD(P)Hの励起波長スペクトル、リボフラビンの励起波長スペクトル、NAD(P)Hからの自家蛍光スペクトル、リボフラビンからの自家蛍光スペクトルを示している。例えば、NAD(P)Hの励起波長スペクトルは、約340nmの波長をピークにした分布をしている。また、リボフラビンの励起波長スペクトルは、約375nmの波長をピークにした分布をしており、リボフラビンを励起させやすくするために375nm〜420nmの波長のレーザー光を照射することが適していることを表している。
【0061】
したがって、多くの自家蛍光を生物粒子から放出させるために、レーザーダイオード10から発振されるレーザー光の波長は、生物粒子の細胞内に存在するNAD(P)Hやリボフラビンの励起波長に対応して決定される。本実施形態では405nmの波長を有するレーザー光がレーザーダイオード10から発振されることと想定する。この405nmの波長を有するレーザー光を照射することにより、リボフラビンによる自家蛍光が生物粒子から放出されることになる。
【0062】
〔照射光学レンズ系〕
照射光学レンズ系20は、例えば、複数種類の光学レンズから構成されている。例えば、コリメーターレンズ、両凸レンズ、シリンドリカルレンズから構成されており、レーザーダイオード10から発振されたレーザー光を平行光線に調整し、対象物に照射している。
【0063】
〔対象流動装置〕
対象流動装置30(フローセル30)は、例えば、合成石英やサファイア等で作成された中空の四角柱の筒部32から構成されており、対象物(生物粒子35又は非生物粒子37)を含んだ透析液(水)33が上から下に流動する構造をしている。レーザーダイオード10から発振されたレーザー光31は、筒部32の透析液(水)が流動する中空領域に照射されて検出領域が形成される。
【0064】
この検出領域において、レーザー光31がフローセル30内を流動する透析液(水)33の水(水分子)や対象物(生物粒子35又は非生物粒子37)と相互作用を起すこととなる。
【0065】
生物粒子35に入射するレーザー光31の波長が405nmであるので、生物粒子35からの散乱光も405nmの波長で放出されることとなる。また、
図3に示すように、レーザー光31が生物粒子35の細胞内のリボフラビンに吸収された場合、約520nmをピークとした分布の波長となる。ここで、生物粒子35から放出される散乱光又は自家蛍光は、周囲に放出されることとなる。
【0066】
また、非生物粒子37に入射したレーザー光31による散乱光は、生物粒子35から放出される散乱光と同様である。
【0067】
上記のように、生物粒子35や非生物粒子37とレーザー光31とが相互作用することにより、生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光、又は生物粒子35からの自家蛍光が放出される。そして、それらの光は複数の集光レンズ系や波長選択光学装置を経て受光装置により検出されることになる。なお、散乱光の強度、すなわち、散乱光の光量は生物粒子35や非生物粒子37の大きさに依存し、大きいほど光量も多くなる。ここで、生物粒子35からの自家蛍光は生物粒子35の細胞内のリボフラビンの量に依存する。また、レーザー光31の光量(強度)にも依存し、レーザー出力を高めて、フローセル30に多くのレーザー光31を照射すれば、生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光、生物粒子35からの自家蛍光も増加することとなる。しかし、生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光、生物粒子35からの自家蛍光以外の光も増加し、具体的には、レーザー光31と水33との相互作用(ラマン散乱)による光(ラマン散乱光)も増加することとなる。次に水によるラマン散乱光について、具体的に説明する。
【0068】
〔水によるラマン散乱〕
図4は、波長が405nmの光を照射した際の水によるラマン散乱光スペクトルの一例を示す図である。
図4に示すように、水に波長405nmのレーザー光31を照射すると、水とレーザー光31との相互作用により、約465nmの波長をピークとした波長分布を有するラマン散乱光が放出される。
【0069】
〔遮光装置〕
遮光装置50は、例えば、レーザートラップから構成されている。このレーザートラップ50は、レーザーダイオード10から発振され、フローセル30内で相互作用を起さずに通過したレーザー光31を遮光する。遮光することで、その通過したレーザー光31が様々な場所で反射などを起して、生物粒子35による散乱光や自家蛍光の検出のノイズとなることを抑制する。
【0070】
〔第1集光光学レンズ系〕
第1集光光学レンズ系40は、例えば、複数の光学レンズから構成されている。この第1集光光学レンズ系40は、レーザー光31の進行方向(光軸)に対して約90度の角度の位置に設置される。この第1集光光学レンズ系40により、フローセル30内における生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光及び生物粒子35からの自家蛍光が集光される。なお、これら生物粒子35からの側方散乱光及び自家蛍光をなるべく多く集光するために、レンズ口径は大きい方が好ましく、生物粒子35からの散乱光や自家蛍光を検出する検出装置が備えられる位置(距離)に対応して決定される。
【0071】
〔散乱光選択光学装置(散乱光選択光学手段、散乱光選択光学工程)〕
散乱光選択光学装置60は、例えば、ダイクロイックミラーから構成されている。本実施形態のダイクロイックミラー60は、410nmよりも長い波長の光を透過させ、410nmよりも短い波長の光を反射させる。このように光の波長で分離する基準となる特定の波長をカットオフ波長と称する。しがたって、フローセル30内で405nmのレーザー光31により散乱された生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光の波長は主に405nmであるため、ダイクロイックミラー60により生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光を反射することができる。そして、反射された生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光は、次に第3集光光学レンズ系100に集光され、散乱用受光装置110に結像されることとなる。
【0072】
一方、フローセル30内を流動する生物粒子35から放出される自家蛍光については、
図3に示すように、約520nmをピークにした波長分布をしているため、ダイクロイックミラー60に反射されることなくほぼ全てが透過することとなる。また同様に、水によるラマン散乱光も、
図4に示すように、約465nmをピークにした波長分布をしており、カットオフ波長410nmよりも長い波長が大部分を占めているため、一部を除いた大部分がダイクロイックミラー60を透過することとなる。そして、透過する自家蛍光及び水によるラマン散乱光は、次に自家蛍光選択光学装置へ進むこととなる。
【0073】
なお、ダイクロイックミラー60の基準となるカットオフ波長は410nmに限定されることなく、レーザー光31により散乱された生物粒子35又は非生物粒子37からの散乱光が反射され、生物粒子35から自家蛍光が透過される波長であればよい。
【0074】
〔自家蛍光選択光学装置(自家蛍光選択光学手段、自家蛍光選択光学工程)〕
自家蛍光選択光学装置70は、例えば、光学フィルターから構成されている。本実施形態においては、490nmの波長(カットオフ波長)よりも長い波長の光を透過させるロングパスフィルタ70が備えられている。
【0075】
一方、水によるラマン散乱光は、
図4に示すように、一部を除いた大部分がカットオフ波長490nmよりも短い波長であり、約90%を低減できる。
【0076】
〔ロングパスフィルタによる水のラマン散乱光の強度分布変化〕
図5は、ロングパスフィルタ入射前の水によるラマン散乱光の時間変化強度分布の一例を示す図であり、
図6は、ロングパスフィルタ透過後の水によるラマン散乱光の時間変化強度分布の一例を示す図である。
図5及び
図6において、水によるラマン散乱光33sの強度分布がロングパスフィルタにより変化することを表している。
【0077】
〔ロングパスフィルタ入射前の水によるラマン散乱光の強度分布〕
図5に示すように、横軸を時間、縦軸を光の任意単位で表した強度として、水によるラマン散乱光33sはランダムな増減を繰り返す分布をしている。例えば、水によるラマン散乱光33sの強度が0.5をピークにした分布もあれば、0.3をピークにした分布もあり、水によるラマン散乱光33sが多量に入射することもあれば、少量で入射することもあり、時間に関係なくランダムに入射している。
【0078】
〔ロングパスフィルタ透過後の水のラマン散乱光分布〕
また、
図6に示すように、横軸を時間、縦軸を光の任意単位で表した強度として、ロングパスフィルタ70を透過した後の水によるラマン散乱光33sは、
図5に示した水によるラマン散乱光33sの時間変化分布に対して大きさが約1/10に変化していることを表している。
【0079】
次に、水によるラマン散乱光33sだけではなく、ダイクロイックミラーを透過する光Lt、すなわち、水によるラマン散乱光33sと生物粒子35から放出される自家蛍光35eとをトータルした光Ltについて説明する。
【0080】
〔ロングパスフィルタによる光の強度分布変化〕
図7は、光学フィルター入射前の全ての光の時間変化分布の一例を示す図であり、
図8は、光学フィルター透過後の全ての光の時間変化分布の一例を示す図である。
図7及び
図8において、ダイクロイックミラー60を透過してきた全ての光Ltの強度分布がロングパスフィルタ70により分離されることが表されている。
【0081】
〔ロングパスフィルタ入射前の光の強度分布〕
図7に示すように、横軸を時間、縦軸を光の相対的な強度として、ロングパスフィルタ70に入射する光の分布は、水によるラマン散乱光33sの分布と自家蛍光35eの分布とを合成(合計)した光Ltによる分布からなる。例えば、ある時刻から時間Δtの間において、相対的な強度が0.5をピークとした分布の光量の水によるラマン散乱光33sと、相対的な強度が0.2をピークとした分布の光量の自家蛍光35eと、が入射すると想定すると、その時間Δtの間には、それら光量を合成した量の光Ltが入射することとなり、その光Ltによる相対的な強度分布は0.7をピークとした分布となる。
【0082】
〔ロングパスフィルタ透過後の光の強度分布〕
また、
図8に示すように、透過する全ての光Ltの時間変化分布は、入射時の約10%となった水のラマン散乱光33sの光量の時間変化強度分布と、入射時とはほとんど変化していない自家蛍光35eの光量の時間変化強度分布とを合成した分布であることを表している。例えば、ある時刻から時間Δtの間において、相対的な強度が0.05をピークとした分布の光量の水によるラマン散乱光33sと、相対的な強度が0.2をピークとした分布の光量の自家蛍光35eと、が透過すると想定すると、その時間Δtの間には、それら光量を合成した量の光Ltが透過することとなり、その光Ltによる相対的強度分布は0.25をピークとした分布となる。
【0083】
なお、自家蛍光選択光学装置70で分離する光の波長の基準は、水によるラマン散乱光33sを生物粒子35から放出される自家蛍光35eよりも小さくする波長が選択される。具体的には、カットオフ波長は490nmに限定されることなく、450nm〜520nm、好ましくは450nm〜490nmのいずれかの値の波長としてもよい。また、490nmよりも長い波長を透過するといったロングパスフィルタに限定されることなく、490nm〜600nmの波長域の光を透過するといったバンドパスフィルタを備えてもよい。
【0084】
ここで、自家蛍光選択光学装置70として、生物粒子35の細胞内のリボフラビンからの自家蛍光35eを指標とするために、上記のカットオフ波長(例えば、490nm)を基準としたロングパスフィルタを備えたが、生物粒子35の細胞内のNAD(P)Hを指標とする場合、410nm〜470nmのいずれかの波長(例えば、450nm)をカットオフ波長としそれよりも長い波長の光を透過するといったロングパスフィルタや、カットオフ波長として450nm〜600nmの波長域の光を透過するといったバンドパスフィルタを備えてもよい。これは、約350nmのレーザー光31を照射した場合、水によるラマン散乱光33sが400nmをピークとした分布をし、450nmを基準としたロングパスフィルタにより、リボフラビンからの自家蛍光35eの検出を指標とした場合と同様に大部分の水のラマン散乱光33sを遮光できるからである。
【0085】
〔第2集光光学レンズ系:
図2参照〕
第2集光光学レンズ系80は、例えば、複数の光学レンズから構成されている。
この第2集光光学レンズ系80は、ロングパスフィルタ70を透過してきた光の進行方向(光軸)上に設置される。この第2集光光学レンズ系80により、ロングパスフィルタ70を透過してきた自家蛍光35e及び水によるラマン散乱光33sが集光され、蛍光用受光装置90の入射面に結像されることとなる。
【0086】
〔蛍光用受光装置(自家蛍光受光手段、自家蛍光受光工程)〕
蛍光用受光装置90は、例えば、半導体受光素子(フォトダイオードPhoto Diode:PD)又はフォトダイオードよりも感度のよい光電子増倍管(フォトマルチプライヤーチューブPhoto Multiplier Tube:PMT)から構成されている。これらフォトダイオードやフォトマルチプライヤーチューブ(以下、フォトマルとする)は受光した光を電流にし、受光した光量に応じた電流を出力する。なお、受光した光の光量によって出力する電流の大きさが変化し、受光した光の光量が多ければ多いほど、電流の大きさが大きくなる。なお、フォトマル90から出力される電気信号は、次に自家蛍光計数システム2に入力される。
【0087】
〔遮光壁〕
遮光壁65は、ダイクロイックミラー60の透過側からフォトマル90までの光路を囲う筒状の構造物から構成されている。この遮光壁65により、ダイクロイックミラー60を透過してきた光(自家蛍光35e)以外の光がフォトマル90に入射することを防ぐことができる。例えば、ラマン散乱光33sや対象物からの散乱光35s、37sが光検出システム1内で反射して、この光路に回り込まないように遮蔽することができる。図示していないが、ダイクロイックミラー60の反射側から散乱用受光装置110までの光路などにも同様に遮光壁を設けてもよい。
【0088】
〔第3集光光学レンズ系〕
第3集光光学レンズ系100は、例えば、複数の光学レンズから構成されている。この第3集光光学レンズ系100は、ダイクロイックミラー60によって反射された光の進行方向(光軸)上に設置される。
【0089】
〔散乱用受光装置(散乱光受光手段、散乱光受光工程)〕
散乱用受光装置110は、例えば、フォトダイオード又はフォトマルから構成される。ここで、散乱用受光装置110に入射する光は、ダイクロイックミラー60により反射された410nmより短い波長の光であって、具体的には、フローセル30内を流動する生物粒子35や非生物粒子37により散乱された散乱光である。これら生物粒子35や非生物粒子37による散乱光は、生物粒子35から放出される自家蛍光35eよりも光量が多いため、フォトマルではなく安価なフォトダイオードでも十分に検出することができる。本実施形態においては、このフォトダイオード110が備えられ、ダイクロイックミラー60により反射された生物粒子35や非生物粒子37による散乱光を受光する。フォトダイオード110が受光した光は、その光量に応じた電気信号に変換され、その電気信号がフォトダイオード110から出力されることとなる。フォトダイオード110からの出力信号は、次に自家蛍光計数システム2に入力される。
【0090】
〔自家蛍光計数システム(生物粒子判定手段、生物粒子判定工程):
図2参照〕
自家蛍光計数システム2は、例えば、検出信号処理部200、データ処理部300、報知部400から構成されている。また、
図9は、自家蛍光計数処理の手順例を示すフローチャートである。
【0091】
検出信号処理部200は、例えば、光検出システム1からの出力信号、すなわち、蛍光用受光装置(フォトマル)90からの出力信号と散乱用受光装置フォトダイオード)110からの出力信号をそれぞれ受信し、受信した信号を増幅し、アナログ信号からデジタル信号にAD変換する処理等を行う(
図9中のデータ収集処理ステップS200)。
【0092】
データ処理部300は、例えば、検出信号処理部200でAD変換処理された自家蛍光信号(信号A)及び散乱光信号(信号B)を受信し保存し(
図9中のデータ解析処理ステップS300)、保存した信号A及び信号Bから透析液(水)中に生物粒子35に由来する信号、すなわち、自家蛍光35eによる信号が含まれているか否かを判定し、その判定結果を出力する(
図9中のステップ解析結果出力処理S400)等を行う。
【0093】
報知部400は、例えば、データ処理部300により判定された結果を外部に報知したり、外部に報知信号を出力したりする(
図9中の報知処理ステップS500)。
以下、各構成要素及びその処理について具体的に説明する。
【0094】
〔検出信号処理部〕
検出信号処理部200は、例えば、蛍光用出力信号処理装置210と、散乱用出力信号処理装置220から構成されている。さらに、蛍光用出力信号処理装置210は、例えば、第1増幅器212、第1アナログ/デジタル変換器214から構成され、散乱用出力信号処理装置220は、例えば、第2増幅器222、第2アナログ/デジタル変換器224から構成されている。
【0095】
〔データ収集処理〕
図10は、データ収集処理の手順例を示すフローチャートである。
まず、蛍光用出力信号処理装置210は、蛍光用受光装置(フォトマル)90からの出力信号を受信すると(出力信号受信処理ステップS210)、第1増幅器212がフォトマル90から出力された出力信号を増幅する(出力信号増幅処理ステップS220)。そして、第1アナログ/デジタル変換器214が第1増幅器212により増幅されたアナログ信号をデジタル信号(信号A)に変換する(出力信号A/D変換処理ステップS230)。
【0096】
同様に、散乱用出力信号処理装置220は、散乱用受光装置(フォトダイオード)110からの出力信号を受信すると(出力信号受信処理ステップS210)、第2増幅器222がフォトダイオード110から出力された出力信号を増幅する(出力信号増幅処理ステップS220)。そして、第2アナログ/デジタル変換器224が第2増幅器222により増幅されたアナログ信号をデジタル信号(信号B)に変換する(出力信号A/D変換処理ステップS230)。
【0097】
その後、デジタル信号に変換された信号A及び信号Bは蛍光用出力信号処理装置210及び散乱用出力信号処理装置220から出力される(変換信号出力処理ステップS240)。出力された信号A及び信号Bは、次にデータ処理部300に入力される。
【0098】
〔データ処理部〕
データ処理部300は、例えば、データ収集装置310、データ解析装置320、解析結果出力装置330から構成されている。また、データ収集装置310は、例えば、データを記憶するメモリ(RAM)310から構成されている。
【0099】
〔データ解析処理〕
図11は、データ解析処理の手順例を示すフローチャートである。
まず、データ処理部300は、蛍光用出力信号処理装置210及び散乱用出力信号処理装置220から出力される信号A及び信号Bを受信する(変換信号受信処理ステップS310)。受信された信号A及び信号Bは、そのままメモリ310の記憶領域に記憶される。
【0100】
メモリ310への信号A及び信号Bの記憶が終了すると、つぎに、これらの信号A及び信号Bを用いて解析処理(解析処理ステップS340)が行われる。
【0101】
〔データ解析装置(生物粒子判定手段、散乱光検出信号出力手段)〕
データ解析装置320は、例えば、メモリ310に記憶されたデータ(信号A及び信号B)を解析する計算回路(例えば、CPU322)及び計算処理内容(プログラム、閾値データ)等を予め記憶(保存)したメモリ324(ROM)から構成されている。
【0102】
〔解析処理(生物粒子判定工程、散乱光検出信号出力工程)〕
図12は、解析処理の手順例を示すフローチャートである。
まず、メモリ310に記憶された信号Bに関して、CPU322により予めメモリ324に記憶された閾値データ(電圧値)と比較される。具体的には、記憶された信号Bの電圧値が閾値B(V
thB)以上か否かが判定される(ステップS342)。この判定の結果、信号Bの電圧値が閾値B以上であると判定された場合(ステップS342:Yes)、散乱用受光装置フォトダイオード110に生物粒子35又は非生物粒子37からの散乱光が入射し検出されたことを表している。ここで、生物粒子35又は非生物粒子37からの散乱光が検出されたことを示す散乱光検出フラグをONにする処理が行われてもよい。
【0103】
次に、メモリ310に記憶された信号Aに関して、CPU322により予めメモリ324に記憶された閾値データ(電圧値)と比較される。具体的には、記憶された信号Aの電圧値が閾値A(V
thA)以上か否かが判定される(ステップS344)。この判定の結果、信号Aの電圧値が閾値A以上であると判定された場合(ステップS344:Yes)、蛍光用受光装置フォトマル90に生物粒子35から放出された自家蛍光35eが入射し検出されたことを表している。そして、その自家蛍光35eが検出されたことを示す検出フラグをONにする処理が行われる(ステップS346)。なお、この検出フラグ(ON)は、次に解析結果出力処理装置330にフラグ信号として送信される。
【0104】
一方、これらの判定の結果、信号Bの電圧値が閾値B以上ではないと判定された場合(ステップS342:No)、又は、信号Aの電圧値が閾値A以上ではないと判定された場合(ステップS344:No)、検出フラグをOFFにする処理が行われ(ステップS348)、自家蛍光35eが検出されなかったことを表している。ここで、上記散乱光検出フラグがONであり、かつ、検出フラグがOFFであった場合、生物粒子35ではない非生物粒子37が検出されたことを示す非生物検出フラグをONにする処理が行われてもよい。なお、この検出フラグ(OFF)は、次に解析結果出力処理装置330にフラグ信号として送信される。また、非生物検出フラグも送信してもよい。
【0105】
上記解析処理について、各受光装置から出力された出力信号に対応する信号A及び信号Bの図を用いて具体的に説明する。
【0106】
〔蛍光用受光装置及び散乱用受光装置からの出力信号の一例〕
図13は、蛍光用受光装置及び散乱用受光装置からの出力信号の一例を示す図である。
図13中の上段の信号は蛍光用受光装置のフォトマル90から出力された検出信号に対応する信号Aの時間変化分布、
図13中の下段の信号は散乱用受光装置のフォトダイオード110から出力された検出信号に対応する信号Bの時間変化分布を示している。ここで、
図13中の上下段に示されている信号A及び信号Bの分布はタイミング調整された分布であると想定する。また、横軸の時間については、時刻t1、t2、t3、…といった順に時間が経過していることを示している。
【0107】
例えば、時刻t1では、閾値B(V
thB(図ではV
thB1))よりも大きな信号Bの電圧値がデータ処理部300に入力されたとすると、CPU322は、信号Bの電圧値が閾値B以上であると判定する(ステップS342:Yes)。すなわち、時刻t1に、散乱用受光装置フォトダイオード110に生物粒子35又は非生物粒子37からの散乱光が入射し検出されたことを表している。
【0108】
そして、CPU322により予めメモリ324に記憶された閾値A(V
thA)と、信号Aの電圧値とが比較される(ステップS344)。時刻t1における信号Aについては、閾値Aよりも大きな信号ではないため(ステップS344:No)、時刻t1における信号Bは非生物粒子37からの散乱光となり、検出フラグはOFFにセットされる(ステップS348)。
【0109】
次に、時刻t2では、CPU322は信号Bの電圧値が閾値B以上であると判定する(ステップS342:Yes)。
【0110】
そして、CPU322により閾値A(V
thA)と信号Aの電圧値とが比較され(ステップS344)、その結果、CPU322は信号Aの電圧値が閾値A以上であると判定する(ステップS344:Yes)。したがって、時刻t2における信号A及び信号Bは生物粒子35からの自家蛍光35e及び散乱光であることを表し、検出フラグがONにセットされる(ステップS346)。
【0111】
上記のようにして、リアルタイムで生物粒子35の存在の有無の結果が得られることとなる。ここで、信号Aや信号Bの大きさについては、蛍光用受光装置フォトマル90や散乱用受光装置フォトダイオード110に入射する光量に応じ、さらに、散乱光の大きさは生物粒子35又は非生物粒子37の大きさに応じたものとなる。したがって、生物粒子35の存在の有無だけではなく、信号Aや信号Bの大きさに基づいて、生物粒子35又は非生物粒子37の大きさについても測定することができる。
【0112】
ここで、予めメモリ324に生物粒子35の大きさ(0.1μm〜0.3μm、0.3μm〜0.5μm、0.5μm〜1.0μm、…)に対応する閾値Bが複数個(V
thB1、V
thB2、V
thB3、V
thB4、…)記憶してあると想定する。例えば、時刻t2の信号Bについては、V
thB1よりも大きくV
thB2よりも小さいことから、生物粒子35の大きさは0.1μm〜0.3μmであると測定することができる。なお、生物粒子35の大きさ(0.1μm以上、0.2μm以上、…)に対応する閾値Bが複数個記憶してあるとしてもよく、これらの閾値Bは所望により決めればよい。
【0113】
本実施例では信号記憶処理ステップS310で保存したデータに対して解析処理S340を行っているが、保存せずに閾値B,Aと逐次比較することにより生物粒子35又は非生物粒子37を検出し、リアルタイムに信号Bのピークを検出し、粒径区分を求めてもよい。また、自家蛍光35eの光量に応じた信号Aの大きさは、生物粒子の種類や活性状態にも対応していることから、信号Aのピークを検出することでそれらの情報についても求めてもよい。
【0114】
上記のように、信号A及び信号Bにより、リアルタイムで生物粒子35の存在の有無を検出することができ、さらに、生物粒子35の大きさも測定することができる。生物粒子35の存在の有無の検出により検出フラグがONにセットされると、次に解析結果出力処理ステップS400により生物粒子35の計数処理が行われる。
【0115】
〔解析結果出力装置(生物粒子計数手段)〕
解析結果出力装置330は、データ解析装置320により解析された生物粒子35の個数を計数し、その計数値を報知部400に送信する装置である。
【0116】
〔解析結果出力処理(生物粒子計数工程)〕
図14は、解析結果出力処理の手順例を示すフローチャートである。
まず、解析結果出力装置330は、データ解析装置320よりフラグ信号(検出フラグ)を受信する。そして、検出フラグがONにセットされているか否かを判定する(ステップS410)。その結果、検出フラグがONであった場合(ステップS410:Yes)、生物粒子35を検出したとして、カウント数を1増加し計数値を算出する(ステップS420)。そして、計数値(カウント数)を報知部400に送信する(ステップS430)。ここで、図示していないが、リセットボタン(図示せず)が押下された場合や、スタートボタン(図示せず)が押下された場合、カウント数をリセットする処理をステップS410の前に実行してもよい。また、受信したフラグ信号(大きさフラグ)に基づいて、生物粒子35の大きさ別に生物粒子35の個数を計数してもよい。
【0117】
〔報知部〕
報知部400(報知手段)は、例えば、表示装置410、スピーカー420から構成されている。
【0118】
〔報知処理〕
図15は、報知処理の手順例を示すフローチャートである。
まず、報知部400は、データ処理部300の解析結果出力装置330が送信してきた計数値を受信する(ステップS510)。次に、表示装置410に受信した計数値に更新し検出した生物粒子35の個数を表示する(ステップS520)。また、スピーカーから報知音を出力する(ステップS530)。ここで、表示装置410に生物粒子35の大きさ別に検出した生物粒子35の個数を表示してもよい。また、リアルタイムでカウントを1づつ増加するといった表示形態でもよく、所定の時間(例えば、5秒間隔)後にその更新した計数値を表示する形態でもよい。
【0119】
報知音については計数値の増加頻度に対応して出力態様(報知音の出力回数、報知音の高低)を変化させてもよい。また、生物粒子35の大きさに応じて報知音の出力態様も変化させてもよい。例えば、単位時間における0.2μm以上の生物粒子35の計数値が1〜9個である場合は「ピ!」といった単音を1回出力し、その計数値が10〜99個である場合は「ピ!ピ!」といった単音を2回出力し、その計数値が100個以上である場合は「ピ!ピ!ピ!」といった単音を3回出力するといった出力態様でもよい。
【0120】
図16は、生物粒子35の計数結果を報知する表示装置及びスピーカーの一例を示す図である。表示装置として生物粒子35の大きさ別に計数結果を報知する表示パネル410と、生物粒子35が検出されたことを音で報知するスピーカー420が備えられている。例えば、表示パネル410は、生物粒子35の大きさの基準を示す「Size(μm)」の表示部と、各大きさに対応する検出した生物粒子35の個数(計数値)を示す「Count」の表示部からなる。生物粒子35の大きさの基準を示す「Size(μm)」の表示部には、例えば、3つの値「0.2」「1.0」「5.0」予め表示されている。それぞれの値に関して、「0.2」については、0.2μm以上の生物粒子35の大きさ、「1.0」については1.0μm以上の生物粒子35の大きさ、「5.0」については5.0μm以上の生物粒子35の大きさにそれぞれ対応する。又は、「0.2」については0.2μm〜1.0μmの生物粒子35の大きさ、「1.0」については1.0μm〜5.0μmの生物粒子35の大きさ、「5.0」については5.0μm〜の生物粒子35の大きさにそれぞれ対応するように表示してもよく、表示は所望により決めればよい。
【0121】
ここでは、0.2μm以上の大きさの生物粒子35が321個、1.0μm以上の大きさの生物粒子35が7個、5.0μm以上の大きさの生物粒子35が0個とそれぞれ計数されたことを表している。
【0122】
上記のように、報知部400は、表示装置410からリアルタイムで生物粒子35の計数値を報知し、スピーカー420から生物粒子35を検出した際に報知音を出力することができる。なお、他にも、報知部400は外部出力端子を備えてもよく、端子を通して別の装置にデータを出力してもよい。
【0123】
なお、光検出システム1の自家蛍光選択光学装置については、ロングパスフィルタ70に限定されることなく、ダイクロイックミラーから構成されてもよい。例えば、カットオフ波長490nmよりも長い波長の光を透過させ、カットオフ波長490nmよりも短い波長の光を反射させるダイクロイックミラーを備えることで410nmよりも短い波長の光(主に生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光)は散乱用受光装置フォトダイオード110に受光され、490nmよりも長い波長の光(主に生物粒子35からの自家蛍光35e)は蛍光用受光装置フォトマルチチューブ90に受光されることとなる。
【0124】
他にも、光検出システム1の散乱光選択光学装置及び自家蛍光選択光学装置について、
散乱光選択光学装置の後方に自家蛍光選択光学装置を設置せず、散乱光と自家蛍光の光路が別系統になるように散乱光選択光学装置と自家蛍光選択光学装置を並列して設置してもよい。その場合、散乱光選択光学装置としてカットオフ波長410nmよりも短い波長の光だけを透過するといったショートパスフィルタを使用する。そして、それぞれの光学装置の前後にフローセルからの散乱光や自家蛍光35eを集光する集光レンズ光学系と、散乱用受光装置フォトダイオード110及び蛍光用受光装置90と、をそれぞれの光学装置に対して設置する。これにより、例えば、レーザー光31の光軸から90度の位置(水平面)に設置された410nmを基準にした散乱光選択光学装置(ショートパスフィルタ)により主に生物粒子35や非生物粒子37からの散乱光を散乱用受光装置フォトダイオード110で検出することができ、レーザー光31の光軸から90度の位置(垂直面)に設置された490nmをカットオフ波長にした自家蛍光選択光学装置(ロングパスフィルタ)により主に生物粒子35からの自家蛍光35eを蛍光用受光装置フォトマル90で検出することができる。
【0125】
また、自家蛍光物質に対応した波長のレーザー光31を照射し、対象物による散乱光を反射するためのダイクロイックミラーと、水などによるラマン散乱光33sを低減し、生物粒子35からの自家蛍光35eを透過するロングパスフィルタとを備えることで、生物粒子35に対する計数精度を向上させることができる。
【0126】
なお、検査対象となる液体は血液透析や血液濾過用の透析液に限定されず、例えば人体に投与される点滴液など、大部分を水から構成されており、透明な液体であれば同様にリアルタイムで生物粒子の存在の有無の検出や計数を行うこともできる。
【0127】
このように、本実施形態によれば、透析用生物粒子計数器77を用いることで、透析液に関して、検出(計測)対象とする生物粒子35の細胞内のリボフラビンやNAD(P)Hといった生体内で行っている生命活動の代謝に必要となる自家蛍光物質からの自家蛍光35eの検出を指標として、生物粒子35が存在するか否かをリアルタイムで判定することができる。したがって、透析用生物粒子計数器77による計数の結果、計数された透析液内に規定数以上の生物粒子35が存在していることが確認された場合、報知手段として透析用生物粒子計数器77に備えられたスピーカーから報知音を出力したり、透析監視装置710や中央監視制御装置640の表示ディスプレイ745に表示したりすることができるので、生物粒子による汚染が進行する前に透析液への早期対処が可能となり、患者に対する影響を極力抑制することができる。
【0128】
次に、この透析用生物粒子計数器77を備えた透析液監視システムについて説明する。
【0129】
〔透析用生物粒子計数器を備えた透析液監視システム〕
図17は、多人数用人工透析装置システムを説明する図である。
図17に示すように、多人数用人工透析装置システムは、一つの多人数用透析液供給装置630を用いて同時に複数の患者の血液透析を行うシステムと、様々な箇所に透析用生物粒子計数器77を設置して透析液中の生物粒子の有無の判定を行う透析液監視システムから構成されている。
【0130】
多人数用人工透析装置システムに用いられる透析液は複数の工程を経て製造される。まず、原水供給装置600(例えば、水道)の水をRO水生成装置610でイオンやその他有機物の除去等を行い浄化されたRO水(逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis膜)により浄化された水、所謂純水)が製造される。そして、RO水を用いてA粉末溶解装置623で透析用A希釈溶液、B粉末溶解装置624で透析用B希釈溶液が製造される。最終的に、第1フィルター621で浄化されたRO水、第2フィルター623で浄化された透析用A希釈溶液、及び、第3フィルター625で浄化された透析用B希釈溶液を混ぜ合わせて透析液が製造される。この製造された透析液は多人数用透析液供給装置630(多人数用透析液供給手段)に貯留されることとなる(多人数用透析液供給工程)。
【0131】
多人数用透析液供給装置630に貯留された透析液は、例えば、透析用配水管(多人数用液体流通手段)を流通し第1透析監視装置710a、第2透析監視装置710b、第3透析監視装置710c、…に分流される(多人数用液体流通工程)。そして、各透析監視装置710a、710b、710cに接続されているダイアライザ770a、770b、770cに透析液が流入される。また、患者A、B、Cから採血された血液がダイアライザ770a、770b、770c内で血液透析され、その後浄化された血液が患者に投与されることとなる。
【0132】
なお、ここでは複数の患者に対する血液透析は、中央監視制御装置640(多人数用生物粒子判定結果収集手段)により監視することを想定しており、具体的には、各透析監視装置710a、710b、710cからの情報がネットワーク650を介してリアルタイムで中央監視制御装置640に送信され監視されている(多人数用生物粒子判定結果収集工程)。
【0133】
また、本実施例では、様々な箇所に設置された透析用生物粒子計数器77により透析液中の生物粒子の有無の判定が行われる。例えば、透析液を使用して血液透析された血液が患者A、B、Cに投与される前、すなわち、ダイアライザ770a、770b、770cに流入される前の透析液内に生物粒子が存在しているか否かを判定するために、透析監視装置710a、710b、710cとダイアライザ770a、770b、770cとの間に透析用生物粒子計数器77a、77b、77cが備えられている。また、透析用生物粒子計数器77a、77b、77cの計数結果は、各透析監視装置710a、710b、710cに送信され、そして、各透析監視装置710a、710b、710cからネットワーク650を経て中央監視制御装置640に送信される。したがって、いずれかの透析用生物粒子計数器77による計数の結果、計数された透析液内に規定数以上の生物粒子が存在していることが確認された場合、透析用生物粒子計数器77に備えられたスピーカーから報知音が出力されたり、透析監視装置710や中央監視制御装置640の表示ディスプレイ745(報知手段)に透析液の状態を示す表示がされたりする。これにより、血液透析を実行している現場においてリアルタイムで透析液内に生物粒子が存在していることが確認できるため、生物粒子による汚染が進行する前に透析液への早期対処が可能となり患者に対する影響を極力抑制することができる。
【0134】
他にも、多人数用透析液供給装置630から流通される透析液を直接検査するために、多人数用透析液供給装置630や透析用配水管(多人数用透析液流通手段)に透析用生物粒子計数器77を設置することができる。また、図示していないが、RO水生成装置610、A粉末溶解装置623、B粉末溶解装置624、第1フィルター621、第2フィルター623、第3フィルター625の前後にこの透析用生物粒子計数器77を備えることで、いずれの装置、又は、装置と装置の間のいずれの配管が生物粒子に汚染されているのかを確認することができる。