特許第5965153号(P5965153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965153
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】流体荷役装置における緊急離脱装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/30 20060101AFI20160721BHJP
   F16L 23/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16L37/30
   F16L23/04
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-24340(P2012-24340)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-160350(P2013-160350A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046602
【氏名又は名称】東京貿易エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】河合 務
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−1800(JP,U)
【文献】 特開2009−185881(JP,A)
【文献】 特開平7−235343(JP,A)
【文献】 特表2013−545651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/30 − 37/373
F16L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々に開閉弁が設けられた第一カプラーと第二カプラーとが連結機構を介して離脱可能に連結され緊急離脱自在に構成され、この第一カプラー及び第二カプラーの夫々の前記開閉弁を開閉操作する開閉弁作動機構を備え、この開閉弁作動機構は、シリンダ装置と、このシリンダ装置の作動により進退移動する操作杆と、この操作杆に設けられているカム係合部と、夫々の前記開閉弁に設けられ前記操作杆の進退移動によって回動して前記開閉弁を開弁方向若しくは閉弁方向に操作する第一カム部及び第二カム部とで構成され、緊急時に前記シリンダ装置が作動して前記第一カム部及び前記第二カム部を回動操作することで前記第一カプラーと前記第二カプラーの夫々の前記開閉弁閉弁状態になると共に、前記連結機構による第一カプラーと前記第二カプラーとの連結が解除され前記第一カプラーと前記第二カプラーとが離脱するように構成されている流体荷役装置における緊急離脱装置において、前記第一カプラーと前記第二カプラーとは、前記第一カプラーが上側、前記第二カプラーが下側に配設されており、前記シリンダ装置は、上側となる前記第一カプラー側に設けられており、引動作方向が重力方向と反対方向の上方向となるように設けられており、また、このシリンダ装置には、前記操作杆が一本連結されており、この操作杆は、前記シリンダ装置の押動作によって下方向へ前進移動し、引動作によって上方向へ後退移動するように構成され、前記第一カプラーと前記第二カプラーの夫々の前記開閉弁は、前記シリンダ装置の押動作による前記操作杆の下方向への前進移動により同時開弁操作され、引動作による前記操作杆の上方向への後退移動により同時閉弁操作されるように構成されており、前記第二カプラーの前記開閉弁を操作する前記第二カム部には、この第二カム部と係合している前記操作杆の前記カム係合部が該第二カム部から離脱するための係合離脱用開口部を有する第二カム溝が設けられており、この第二カム溝の係合離脱用開口部は、前記シリンダ装置の引動作によって前記操作杆が上方向へ後退移動し、この操作杆の後退移動によって前記第二カム部が回動して前記開閉弁が閉弁状態となった際に、前記操作杆の後退移動線上に位置して離脱可能な位置となるように構成されており、前記第一カプラーと前記第二カプラーとが緊急離脱する時は、前記シリンダ装置が引動作して前記操作杆が後退移動して、前記第一カプラーと前記第二カプラーの夫々の前記開閉弁を同時閉弁操作し、この閉弁操作が完了すると、前記第二カム部に設けられている前記第二カム溝の前記係合離脱用開口部が前記操作杆の後退移動線上に位置して離脱可能な位置となり、前記操作杆の前記第二カム部と係合している前記カム係合部が前記係合離脱用開口部を介して前記第二カム部から離脱し得る状態となるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置における緊急離脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスや液化石油ガス等の流体を荷役する際に、流体荷役装置に連結して緊急時の安全を確保する流体荷役装置における緊急離脱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海上のタンカーと陸上の流体貯蔵設備との間で、液化天然ガスや液化石油ガス等の各種流体の荷役作業する際には、強風や高潮、或いは津波等によるタンカーの予期せぬ移動で海上側、陸上側の各流体荷役装置間で流体搬送ラインの破断が生じ、搬送中の流体の外部流出を防止する目的として、或いは、海上側、陸上側の一方で火災など不測の事態が発生した際に、他方側への被害の拡大を防止する目的として、緊急時に速やかに流体の搬送を緊急遮断弁によって遮断して流体の外部への流出を確保した後、搬送ラインを海上側、陸上側の夫々に分離する緊急離脱装置が用いられている。
【0003】
この流体荷役装置における緊急離脱装置としては、夫々に開閉弁(緊急遮断弁)が設けられ互いに連結される一対のカプラーと、この一対のカプラー同士を連結する連結機構と、前記開閉弁を開閉動作させるためのシリンダ装置とから成り、海上側と陸上側の夫々に設置した流体荷役装置間に配設され、シリンダ装置の作動により、このシリンダ装置に接続したシリンダロッドが、連結機構によって連結された一対のカプラーに設けられている夫々の開閉弁を同時に閉動操作し、夫々の開閉弁が閉弁状態となり海上側、陸上側の双方から流体の外部流出を阻止した状態にした後、連結機構がカプラー同士の連結を解除し連結状態の一対のカプラーを海上側と陸上側とに分離し流体の荷役ラインを分断するように構成されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−154962号公報
【特許文献2】特開2009−185881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1や特許文献2に示される流体荷役装置における緊急離脱装置(以下、従来例と称する。)は、シリンダ装置の押動によって開閉弁を閉弁状態にする構造であるため、シリンダ装置を駆動させる油圧機構にトラブルが生じシリンダ装置のピストンの上下両側に圧油が流入する状況になった場合、シリンダ装置のピストンは、受圧面積が大きい上面側(シリンダロッドが付設されない側)が下面側よりも大きい押圧力を受け、その結果、ピストンは押動方向に移動しシリンダロッドを伸長方向に移動させ、このシリンダロッドが伸長方向に移動することで各カプラーの開閉弁が閉弁してしまう可能性がある。
【0006】
また、圧油の漏洩トラブル等で油圧回路内の圧力が低下しシリンダ装置のピストンがフリー状態となった場合、従来例はシリンダ装置の押動方向、即ち、シリンダロッドが開閉弁を閉弁する方向と重力方向が一致しているため、重力によってシリンダロッドが伸長方向に移動し各カプラーの開閉弁を閉弁してしまう可能性もある。
【0007】
即ち、流体荷役時に油圧機構にトラブルが発生してしまうと、緊急時同様に開閉弁が閉弁してしまったり、この閉弁動作に連動してカプラー同士の連結が解除されたりして、荷役作業が中断されてしまい作業に支障を来す恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記のような従来例の問題を解決し、油圧機構に不具合が生じた際、開閉弁が勝手に閉じることなく荷役作業を継続することができる実用性に優れた流体荷役装置における緊急離脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
夫々に開閉弁1が設けられた第一カプラー2と第二カプラー3とが連結機構4を介して離脱可能に連結され緊急離脱自在に構成され、この第一カプラー2及び第二カプラー3の夫々の前記開閉弁1を開閉操作する開閉弁作動機構5を備え、この開閉弁作動機構5は、シリンダ装置6と、このシリンダ装置6の作動により進退移動する操作杆7と、この操作杆7に設けられているカム係合部8と、夫々の前記開閉弁1に設けられ前記操作杆7の進退移動によって回動して前記開閉弁1を開弁方向若しくは閉弁方向に操作する第一カム部9及び第二カム部10とで構成され、緊急時に前記シリンダ装置6が作動して前記第一カム部9及び前記第二カム部10を回動操作することで前記第一カプラー2と前記第二カプラー3の夫々の前記開閉弁1閉弁状態になると共に、前記連結機構4による第一カプラー2と前記第二カプラー3との連結が解除され前記第一カプラー2と前記第二カプラー3とが離脱するように構成されている流体荷役装置における緊急離脱装置において、前記第一カプラー2と前記第二カプラー3とは、前記第一カプラー2が上側、前記第二カプラー3が下側に配設されており、前記シリンダ装置6は、上側となる前記第一カプラー2側に設けられており、引動作方向が重力方向と反対方向の上方向となるように設けられており、また、このシリンダ装置6には、前記操作杆7が一本連結されており、この操作杆7は、前記シリンダ装置6の押動作によって下方向へ前進移動し、引動作によって上方向へ後退移動するように構成され、前記第一カプラー2と前記第二カプラー3の夫々の前記開閉弁1は、前記シリンダ装置6の押動作による前記操作杆7の下方向への前進移動により同時開弁操作され、引動作による前記操作杆7の上方向への後退移動により同時閉弁操作されるように構成されており、前記第二カプラー3の前記開閉弁1を操作する前記第二カム部10には、この第二カム部10と係合している前記操作杆7の前記カム係合部8が該第二カム部10から離脱するための係合離脱用開口部11を有する第二カム溝12が設けられており、この第二カム溝12の係合離脱用開口部11は、前記シリンダ装置6の引動作によって前記操作杆7が上方向へ後退移動し、この操作杆7の後退移動によって前記第二カム部10が回動して前記開閉弁1が閉弁状態となった際に、前記操作杆7の後退移動線上に位置して離脱可能な位置となるように構成されており、前記第一カプラー2と前記第二カプラー3とが緊急離脱する時は、前記シリンダ装置6が引動作して前記操作杆7が後退移動して、前記第一カプラー2と前記第二カプラー3の夫々の前記開閉弁1を同時閉弁操作し、この閉弁操作が完了すると、前記第二カム部10に設けられている前記第二カム溝12の前記係合離脱用開口部11が前記操作杆7の後退移動線上に位置して離脱可能な位置となり、前記操作杆7の前記第二カム部10と係合している前記カム係合部8が前記係合離脱用開口部11を介して前記第二カム部10から離脱し得る状態となるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置における緊急離脱装置に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、荷役作業中にシリンダ装置の油圧機構においてシリンダ装置のピストンの上下両側のシリンダ室に圧油が流入してしまう不具合が発生しても、シリンダ装置のピストンは開閉弁を開弁させる押動方向に移動した状態が保持されるので、勝手に開閉弁が閉弁することなく流体の荷役作業を継続することができる実用性に優れた画期的な流体荷役装置における緊急離脱装置となる。
【0012】
また、シリンダ装置を作動させる油圧機構に不具合が生じ、油圧回路内の圧力が低下してシリンダ装置のピストンがフリーな状態になっても、シリンダ装置のピストンは重力によって下方に移動することとなり、このピストンの下方側への移動は押動方向への移動と一致するので、開弁状態の開閉弁は、開弁状態が保持されることとなり、よって、油圧機構のトラブルによって、勝手に開閉弁が閉弁することなく流体の荷役作業が中断されることなく継続することができる実用性に優れた流体荷役装置における緊急離脱装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例において開閉弁が開弁した状態を示す説明正面図である。
図2】本実施例において開閉弁が閉弁した状態を示す説明正面図である。
図3】本実施例の緊急離脱状態を示す説明正面図である。
図4】本実施例の開閉弁作動機構を示す一部を切り欠いた説明側面図である。
図5】本実施例の連結機構を示す一部を切り欠いた説明平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1の開閉操作は、シリンダ装置6の押引動作によって一本の操作杆7が進退移動し、この一本の操作杆7の進退移動によって第一カム部9、第二カム部10の二つのカム部が同時に回動し、この第一カム部9、第二カム部10の回動によって、第一カプラー2、第二カプラー3夫々の開閉弁1の弁軸13が回動することで成される。
【0016】
詳細には、定常状態、即ち流体の荷役作業を行うために、第一カプラー2、第二カプラー3夫々の開閉弁1を開弁状態にする開弁操作は、シリンダ装置6の押動作によって操作杆7がこの操作杆7の先端側に前進移動し、この操作杆7の前進移動によってこの操作杆7と係合している第一カム部9、第二カム部10が開閉弁1を開弁する方向に回動し、この第一カム部9、第二カム部10が開弁方向に回動することによって第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1に設けられた各弁軸13が開弁方向に回動することで成される。
【0017】
また、緊急時、即ち第一カプラー2と第二カプラー3とが緊急離脱するために、第一カプラー2、第二カプラー3夫々の開閉弁1を閉弁状態にする閉弁操作は、シリンダ装置6の引動作によって操作杆7がこの操作杆7の基端側(シリンダ装置6との連結側)に後退移動し、この操作杆7の後退移動によってこの操作杆7と係合している第一カム部9、第二カム部10が開閉弁1を閉弁する方向に回動し、この第一カム部9、第二カム部10が閉弁方向に回動することによって第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1に設けられた各弁軸13が閉弁方向に回動することで成される。
【0018】
更に、この緊急時には、夫々の開閉弁1が閉弁状態になった後、第一カプラー2と第二カプラー3とを連結している連結機構4が、この第一カプラー2と第二カプラー3との連結を解除し、この第一カプラー2と第二カプラー3とを緊急離脱可能な状態となる。
【0019】
また、この第一カプラー2と第二カプラー3とが緊急離脱可能な状態になるには、上記の第一カプラー2と第二カプラー3との連結を解除する他に、これら第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1を開閉操作する第一カム部9、第二カム部10間に架設状態に設けられている操作杆7と第二カプラー3との係合状態を解除する必要がある。
【0020】
この点、本発明においては、第二カプラー3の開閉弁1を開閉操作する第二カム部10に、この第二カム部10と係合している操作杆7のカム係合部8が離脱するための係合離脱用開口部11を設け、この係合離脱用開口部11をシリンダ装置6の引動作によって操作杆7が後退移動し第二カム部10が回動して開閉弁1を閉弁した状態となった際に、操作杆7の後退移動線上に位置するように構成して、第一カプラー2と第二カプラー3とが緊急離脱する際に、操作杆7のカム係合部8が係合離脱用開口部11を介して第二カム部10から離脱し得るように構成したから、第一カプラー2と第二カプラー3との少なくても一方が他方に対して離反方向に移動することで、操作杆7の先端側に設けた第二カム部10と係合するカム係合部8が係合離脱用開口部11を介して第二カム部10から離脱し、第一カプラー2の開閉弁1を開閉操作する第一カム部9と、第二カプラー3の開閉弁1を開閉操作する第二カム部10とに架設状態に係合していた操作杆7の架設状態が解除され、シリンダ装置6と操作杆7とが第一カプラー2側に設けられた状態で第一カプラー2と第二カプラー3とに分離することとなる。
【実施例】
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、夫々に開閉弁1を設けた第一カプラー2と第二カプラー3とを連結機構4を介して離脱可能に連結して緊急離脱自在に構成し、この第一カプラー2及び第二カプラー3の夫々の開閉弁1を開閉操作する開閉弁作動機構5を備え、この開閉弁作動機構5を、シリンダ装置6と、このシリンダ装置6の作動により進退移動する操作杆7と、この操作杆7に設けたカム係合部8及び各開閉弁1と係合し操作杆7の進退移動によって回動して開閉弁1を開閉操作する第一カム部9及び第二カム部10とで構成して、緊急時にシリンダ装置6が作動して第一カム部9及び第二カム部10を回動操作することで第一カプラー2と第二カプラー3の夫々の開閉弁1を閉弁状態にすると共に、連結機構4が第一カプラー2と第二カプラー3との連結を解除して第一カプラー2と第二カプラー3とが離脱するように構成した流体荷役装置における緊急離脱装置である。
【0023】
具体的には、第一カプラー2は、一端側に対となる第二カプラー3と連結する連結用フランジ2aを設け他端側に流体荷役装置と接続する接続フランジ2bを設け、内部の流体経路に緊急離脱時に緊急遮断弁として機能する開閉弁1(本実施例ではボール弁を採用)を設けた構成としており、この開閉弁1は、回転軸となる弁軸13を上下方向に突設してこの開閉弁1を水平方向(左右方向)に開閉回動自在に設けた構成としている。
【0024】
また、この第一カプラー2と連結する第二カプラー3は、上述した第一カプラー2と同様の構成とし、一端側に対となる第一カプラー2と連結する連結用フランジ3aを設け他端側にタンカーの流体荷役用配管と接続する接続フランジ3bを設け、内部の流体経路に緊急離脱時に緊急遮断弁として機能する開閉弁1(本実施例ではボール弁を採用)を設けた構成としており、この開閉弁1は、回転軸となる弁軸13を上下方向に突設してこの開閉弁1を水平方向(左右方向)に開閉回動自在に設けた構成としている。
【0025】
また、本実施例の流体荷役装置における緊急離脱装置は、この第一カプラー2と第二カプラー3とを上下方向に連結して立設状態で被連結体間、具体的には陸上の流体荷役装置(ローディングアーム)と海上のタンカーの流体荷役用配管との間に配設する構成としており、より具体的には、第一カプラー2を上側、第二カプラー3を下側に配設した構成としている。
【0026】
また、第一カプラー2、第二カプラー3の夫々に設けた開閉弁1は、開閉弁作動機構5によって開閉操作する構成とし、具体的には、開閉弁作動機構5の押動作によって開弁状態となり、引動作によって閉弁状態になるように構成している。
【0027】
また、この開閉弁1を開閉操作する開閉弁作動機構5は、駆動源となるシリンダ装置6と、このシリンダ装置6の押引動作により進退移動する操作杆7と、この操作杆7に設けたカム係合部8及び各開閉弁1と係合し操作杆7の進退移動によって回動して開閉弁1を開閉操作する第一カム部9及び第二カム部10とで構成している。
【0028】
具体的には、この開閉弁1の開閉操作の駆動源となるシリンダ装置6は、油圧機構より圧送される圧油の流入出によってピストン14を作動させる油圧式のシリンダ装置6であり、本実施例においては、立設状態に連結した第一カプラー2、第二カプラー3の第一カプラー2側(上側)に配設し、このシリンダ装置6の押動作によってピストン14が押動方向となる下方に移動してこのピストン14に連結するピストンロッド15が伸長(下降)し後述する操作杆7をこの操作杆7の先端側となる下方へ前進移動させて各開閉弁1を開弁状態にし、引動作によってピストン14が引動方向となる上方に移動してピストンロッド15が縮退(上昇)し操作杆7をこの操作杆7の基端側となる上方へ後退移動させて各開閉弁1を閉弁状態にする構成としている。
【0029】
また、このシリンダ装置6の押引動作によって上下方向に進退移動する操作杆7は、所定形状に形成した帯状板材を間隙16を設けて上下方向に対向配設し、この間隙16の操作杆7の先端側と基端側との二か所にカム係合部8を設けた構成とし、基端部がシリンダ装置6のピストンロッド15の先端と連結する構成としている。
【0030】
本実施例では、このカム係合部8としてカムフォロア8を採用しており、このカムフォロア8は、操作杆7の先端側と基端側とにそれぞれ設けた貫通孔に貫通配設した回転軸17に軸着して回転自在に設けた構成としている。
【0031】
また、操作杆7は前述したように、シリンダ装置6の押引動によって上下方向に進退移動するが、本実施例は、この操作杆7の進退移動にガタツキが生じずスムーズな直線移動が成されるように、この操作杆7の移動をガイドするガイド機構18を設けた構成としている。
【0032】
このガイド機構18は、ガイドレール19とガイドローラ20とで構成し、ガイドレール19は、第一カプラー2側と第二カプラー3側とに分割した状態で、操作杆7の左右両側にこの操作杆7に沿設状態に設けており、ガイドローラ20は、先端側と基端側の夫々のカムフォロア8を軸支した夫々の回転軸17に設け、詳しくは、操作杆7に貫通配設して操作杆7の上面、下面の夫々から突出した回転軸18の両端部に夫々軸着して回転自在に設けて、このガイドローラ20が左右のガイドレール19に沿って転動することで操作杆7がスムーズに移動する構成としている。
【0033】
また、第一カム部9は、板状体を湾曲状に形成し、先端側にカムフォロア8と係合する第一カム溝21を設け基端側に第一カプラー2の開閉弁1の弁軸13と回り止め状態に係合する回り止め係合部を設けた構成とし、先端側に設けた第一カム溝21は、湾曲状に形成したこの第一カム部9の形状に略沿った湾曲状に形成すると共に、板状体からなるこの第一カム部9に厚み方向に貫通した状態で形成した構成としている。
【0034】
また、この第一カム部9は、シリンダ装置6の押動作によってピストン14が押動方向に移動してピストンロッド15が伸長した状態においては、第一カム溝21が操作杆7に対して略直交状態となり、シリンダ装置6の引動作によってピストン14が引動方向に移動してピストンロッド15が縮退した状態においては、第一カム溝21が操作杆7に対して略平行状態となるように設けた構成としている。
【0035】
また、第二カム部10は、第一カム部9と同様に、板状体を湾曲状に形成し、先端側にカムフォロア8と係合する第二カム溝12を設け基端側に第一カプラー2の開閉弁1の弁軸13と回り止め状態に係合する回り止め係合部を設けた構成とし、この第二カム部10の先端側に設けた第二カム溝12は、湾曲状に形成したこの第二カム部10の形状に略沿った湾曲状に形成すると共に、板状体からなるこの第二カム部10に厚み方向に貫通した状態で形成し、更に、第一カム部9同様に、シリンダ装置6の押動作によってピストン14が押動方向に移動してピストンロッド15が伸長した状態においては、第二カム溝12が操作杆7に対して略直交状態となり、シリンダ装置6の引動作によってピストン14が引動方向に移動してピストンロッド15が縮退した状態においては、第二カム溝12が操作杆7に対して略平行状態となるように設けた構成としている。
【0036】
また更に、この第二カム溝12の先端側には、この第二カム溝12に係合しているカムフォロア8がこの第二カム溝12から離脱するための係合離脱用開口部11を設けた構成とし、こ係合離脱用開口部11は、シリンダ装置6の引動作によって操作杆7が後退移動し、この操作杆7の後退移動によって第二カム部10が回動して開閉弁1を閉弁した状態となった際に、操作杆7の後退移動線上、より具体的には、操作杆7に設けたカムフォロア8の移動線上に位置し(本実施例においては、係合離脱用開口部11の開口方向が鉛直方向を向き)、第一カプラー2と第二カプラー3とが緊急離脱する際に、即ち、互いに離反する方向に移動することで、操作杆7のカムフォロア8が係合離脱用開口部11を介して第二カム部10から離脱し得るように構成している。
【0037】
また、第一カプラー2、第二カプラー3を離脱可能に連結する連結機構4は、複数(本実施例では四つ)のクランプ部22と、これらクランプ部22同士を連結するクランプ連結ロッド23と、この円弧状クランプ部22とクランプ連結ロッド23とを環状に連結して成るクランプ装置24の締め付け及び締め付け解除を操作するクランプ操作機構25とで構成し、定常時はクランプ装置24の両端の円弧状クランプ部22の一方がクランプ操作機構25に設けた弾性部材26(本実施例では皿ばねを採用)の付勢によって連結フランジ2a,3aに密着する方向に引き寄せられ他方は連結フランジ2a,3aに密着する方向に押し込まれることで連結フランジ2a,3aに対して締め付け状態となり、緊急離脱時は、このクランプ操作機構25に設けた弾性部材26の付勢力が解除され、クランプ装置24の両端の円弧状クランプ部22の連結フランジ2a,3aに対する締め付けが解除されて第一カプラー2と第二カプラー3とが離脱可能な状態となるように構成している。
【0038】
本実施例は以上のように構成したので、定常状態時、即ち、流体を荷役作業する状態においては、第一カプラー2、第二カプラー3は連結フランジ2a,3a同士を突合せて連結機構4で分離可能に連結した状態にあり、また、第一カプラー2、第二カプラー3夫々の開閉弁1は開閉弁作動機構5の押動作によって開弁した状態となっている。
【0039】
また、この第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1を開弁状態にするには、以下のような操作が成される。
【0040】
シリンダ装置6が押動作し、ピストン14が押動方向、即ち下降方向に移動し、このピストン14の下降移動によってピストンロッド15が伸長する。
【0041】
ピストンロッド15が伸長することによって、操作杆7が前進移動(下降方向に移動)し、この操作杆7の前進移動によって、操作杆7の基端側と先端側とに設けた二つのカムフォロア8が第一カム部9、第二カム部10に設けた第一カム溝21、第二カム溝12を転動しながらこの第一カム部9、第二カム部10を同時に押動して同方向に同じ移動量、回動(本実施例においては反時計回りに90°回動)させる。
【0042】
この第一カム部9、第二カム部10が回動することによって、この第一カム部9、第二カム部10の回転軸となる夫々の弁軸13が開閉弁1を開弁する方向に回動し、開閉弁1が開弁状態となる。
【0043】
尚、この開閉弁1が開弁した状態においては、図1に示すように、第一カム部9の第一カム溝21、第二カム部10の第二カム溝12は夫々操作杆7と略直交する状態となり、従って、第二カム部10の第二カム溝12に設けた係合離脱用開口部11は、操作杆7の先端側に設けたカムフォロア8の移動線上に無く、このカムフォロア8の移動線上には第二カム溝12の側面が位置するため、カムフォロア8と第二カム部10との係合状態は保持された状態となり、操作杆7が移動する際は、このカムフォロア8が第二カム部10を押動し回動させることが可能となる。
【0044】
また、緊急時、即ち上記した定常状態から流体を荷役作業を中断し、第一カプラー2と第二カプラー3とを緊急離脱させる場合は、以下のような操作が成される。
【0045】
シリンダ装置6が引動作し、ピストン14が引動方向、即ち上昇方向に移動し、このピストン14の上昇移動によってピストンロッド15が縮退する。
【0046】
ピストンロッド15が縮退することによって、操作杆7が後退移動(上昇方向に移動)し、この操作杆7の後退移動によって、操作杆7の基端側と先端側とに設けた二つのカムフォロア8が第一カム部9、第二カム部10に設けた第一カム溝21、第二カム溝12を転動しながらこの第一カム部9、第二カム部10を同時に押動して同方向に同じ移動量、回動(本実施例においては時計回りに90°回動)させる。
【0047】
この第一カム部9、第二カム部10が回動することによって、この第一カム部9、第二カム部10の回転軸となる夫々の弁軸13が開閉弁1を閉弁する方向に回動し、開閉弁1が閉弁状態となる。
【0048】
この第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1が閉弁した後、第一カプラー2、第二カプラー3夫々の連結フランジ2a,3aを締め付け第一カプラー2、第二カプラー3の連結状態を保持していた連結機構4が解除作動し、連結フランジ2a,3aを締め付けていた円弧状クランプ部22が連結フランジ2a,3aから外れ、第一カプラー2、第二カプラー3が緊急離脱可能な状態となる。
【0049】
尚、この第一カプラー2と第二カプラー3とが緊急離脱可能な状態になるには、上記した各開閉弁1の閉弁操作や、第一カプラー2と第二カプラー3とを連結している連結機構4の解除操作以外に、操作杆7と第二カプラー3の開閉弁1を開閉操作する第二カム部10との係合状態を解除する必要があるが、本実施例においては、この開閉弁1が閉弁した状態においては、図2に示すように、第一カム部9の第一カム溝21、第二カム部10の第二カム溝12は夫々操作杆7と略平行な状態となり、第二カム部10の第二カム溝12に設けた係合離脱用開口部11が操作杆7の先端側に設けたカムフォロア8の移動線上に位置し、このカムフォロア8が係合離脱用開口部11方向に移動することでこの係合離脱用開口部11を介して第二カム部10から離脱して第二カム部10との係合状態が解除されることとなる。
【0050】
即ち、陸上の荷役装置(ローディングアーム)に接続している第一カプラー2側が上方に引き抜かれるようにして離脱することで、操作杆7の先端側に設け第二カム部10の第二カム溝12に係合していたカムフォロア8が係合離脱用開口部11を介して第二カム溝12から外れて操作杆7と第二カム部10との係合状態を解除するので、図3に示すように、第一カプラー2と第二カプラー3とは、第一カプラー2側にシリンダ装置6と開閉弁作動機構5とが付随した状態で分離する。
【0051】
このように本実施例は、シリンダ装置6の作動により進退移動する一本の操作杆7で第一カプラー2、第二カプラー3の夫々の開閉弁1を同時開閉操作することができ、しかも、第一カプラー2と第二カプラー3との緊急離脱を実現可能とした実用性に優れた画期的な流体荷役装置における緊急離脱装置となる。
【0052】
しかも、荷役作業中にシリンダ装置6の油圧機構においてシリンダ装置6のピストン14の上下両側のシリンダ室27に圧油が流入してしまう不具合が発生しても、シリンダ装置6のピストン14は開閉弁1を開弁させる押動方向に移動した状態が保持されるので、勝手に開閉弁1が閉弁することなく流体の荷役作業を継続することができ、また、シリンダ装置6を作動させる油圧機構に不具合が生じ、油圧回路内の圧力が低下してシリンダ装置6のピストン14がフリーな状態になっても、シリンダ装置6のピストン14は重力によって下方に移動することとなり、このピストン14の下方側への移動は押動方向への移動と一致するので、開弁状態の開閉弁1は、開弁状態が保持されることとなり、よって、油圧機構のトラブルによって、勝手に開閉弁が閉弁することなく流体の荷役作業が中断されることなく継続することができる実用性に優れた流体荷役装置における緊急離脱装置となる。
【0053】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0054】
1 開閉弁
2 第一カプラー
3 第二カプラー
4 連結機構
5 開閉弁作動機構
6 シリンダ装置
7 操作杆
8 カム係合部
9 第一カム部
10 第二カム部
11 係合離脱部用開口部
12 第二カム溝
図1
図2
図3
図4
図5