【実施例1】
【0012】
以下に、本発明の実施例1に係る発光装置10について、
図1a、bを参照しつつ説明する。
図1aは、本発明の実施例1に係る発光装置10を光放射面側からみた平面図である。
図1bは、
図1aにおける1b−1b線に沿った断面の一部を示す図である。尚、図面の明瞭化のため、
図1aでは、波長変換体を省略している。また、本発明の発光装置には、様々な発光素子を使用可能であるが、以下の実施例では、特にLED素子を使用した場合について説明する。
【0013】
基板11は、上面にAu等の導電体で配線が形成されているAlNセラミックス等の絶縁基板であり、上面配線上にフリップチップタイプの発光素子13が、互いに約100μm離間させられてマトリクス状に実装されている。発光素子13は、例えば、一辺が1mm、厚さ100μmであり、青色光(波長約430nm〜470nm程度)を出射する青色LEDである。
【0014】
隔壁体15は、基板11上の発光素子13の素子間領域に形成されている構造体である。隔壁体15は、発光素子13周囲の基板11の露出面において、発光素子間の距離である約100μmの厚さtを有し、上方に向かって厚みが次第に薄くなるように形成されている。隔壁体15は、基板11の上面と垂直な方向からの上面視において格子状になっており、発光素子13の各々を互いに分離し、発光素子13を囲繞する壁部を形成している。隔壁体15は、発光素子13から出射した光を遮光可能な、反射性または光吸収性を有する樹脂材料、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素または酸化亜鉛等を含有するエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂等からなっている。尚、隔壁体15は、発光素子13からの発光を阻害せずに発光装置10から効率良く出射させるために、先端部の厚さをできるだけ小さくするのが好ましい。
【0015】
隔壁体15上には、透光板17が設けられている。透光板17は、例えば、ガラス等の透光性を有する材料からなる100μm〜200μmの厚さを有する板材であり、上面が発光装置10の光取り出し面を形成している。透光板17は、基板11と対向する面(すなわち下面)の発光素子13の位置に対応する部分に、発光素子13の上面よりも大きい先端面(下面)形状を有しかつ矩形の断面形状を有する凸部17Aを有している。凸部17Aは、先端面の周囲にエッジ17Bを有している。また、凸部17Aの周囲の隔壁体15上面と接する部分には、基板11の上面に垂直な方向から見た上面視において、隔壁体15の存在する領域に重なるように格子状に形成されている凹部17Cが設けられており、この凹部17Cが隔壁体15の上部と密着して嵌合している。
【0016】
この凹部17Cは、以下に説明する製造時に波長変換体19を形成するペースト材の濡れ拡がりを防止する波長変換体分離構造になっている。具体的には、凹部17Cの側面頂部のエッジ17Bまたはその近傍凹部17Cの側面においてペースト材の濡れ拡がりがせき止められることとなる。
【0017】
波長変換体19は、基板11、隔壁体15及び透明板17によって形成されている閉じた空間を充填し、発光素子13を埋設するように形成されている。上述のように、透光板17の下面と隔壁体15の上面とが密着して嵌合して構成されているので、この嵌合部において、波長変換体19の連続性が完全に断たれている。
【0018】
波長変換体19は、透光性を有する材料、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、またはハイブリッド樹脂(エポキシ樹脂+シリコーン樹脂)からなっている。波長変換体19には、例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:Y
3Al
5O
12)に付活剤としてCe(セリウム)を導入したYAG:Ce蛍光体が分散されている。蛍光体は、発光素子13から発せられる、例えば、約460nmの青色光を吸収して、約560nmの発光ピーク波長を有する黄色光を発する。従って、発光素子13から発せられて蛍光体に吸収されなかった青色光と蛍光体から発せられる黄色光とが混ざり合うことによって白色光が得られる。尚、発光素子の発光色または発光装置10で実現すべき発光色に応じて、波長変換体19に含まれる蛍光体の種類を変更してもよい。複数種類の蛍光体を混合しても良い。発光装置10の発光色と発光素子13の発光色が同一の場合は、波長変換体19に蛍光体を含有させないこととしてもよい。
【0019】
また、波長変換体19には、スペーサ19Aが配されている。スペーサ19Aは、発光素子13が発する光、及び発光素子13の発する光により励起された蛍光体が発する蛍光に対して透光性を有する材料、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の透明樹脂、またはガラス等の透明な無機材料等で形成されている。
【0020】
スペーサ19Aは、発光素子13と透光板17との間に挟まれることにより、発光素子13の上面と発光素子13上に波長変換体19を介して配される透明板17の下面との間隔を定め、これにより波長変換体19の層厚を規定(決定)するための部材である。スペーサ19Aは、形成すべき波長変換体19の層厚に応じて、所望の粒径を有する粒子状のものであればよく、その形状は、多面体であっても球状であってもよい。例えば、10μm以上、100μm以下の粒径のスペーサ19Aを好適に用いることができる。このようなスペーサ19Aは、発光素子13の発する可視光波長よりも粒径が非常に大きいため、光を散乱させる作用はほとんど生じない。波長変換体19の側面は、発光素子13の側面と透明板17の底面とを結ぶ傾斜面を形成している。具体的には、発光素子側に向かって凸の曲面からなる傾斜面を形成しており、傾斜面の下端は、発光素子13の側面と底面との境界に位置している。当該傾斜面により、発光素子13の側面から出射された光を発光素子13の内部に戻さずに、波長変換体19の傾斜面で反射して上方に出射することができるため、発光面からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0021】
遮光膜21は、基板11に垂直な方向から見た上面視において隔壁体15の厚さよりも薄い、膜厚数nm〜数十μmのAl等の遮光性を有する膜体である。つまり、遮光膜21の膜厚は、隣接する発光素子間の間隔(発光素子13の搭載間隔)より小さく形成することができるため、発光装置における暗部の幅を発光素子の搭載間隔よりも小さいものとすることができる。遮光膜21は、透光板17の凹部17Cの底面(すなわち、隔壁体15との接触部)から透光板17の上面まで貫通するように形成されている。遮光膜21は、基板11に垂直な方向からみた上面視において、隔壁体15が形成されている領域と重なるように格子状に形成されている。すなわち、遮光膜21は、隔壁体15と連続的に形成されており、発光素子13毎に形成される発光領域23を、隔壁体15と共に画定する格子状の遮光壁25(図中破線に囲まれた部分)を形成している。尚、遮光膜21は、薄膜を形成できかつ発光素子13から出射される光を遮光可能な材料ならばよく、例えば、Ag等の他の反射性を有する材料、またはカーボンブラック等の炭素材料のように光吸収性を有する材料でもよい。
【0022】
また、遮光膜21は、遮光機能を果たしつつ、光取り出し面における暗部の面積を小さくして、光取り出し面における発光領域の連続性を高めるために、数nmから数十μmであるのが好ましく、25μm以下の厚さであるのがさらに好ましい。尚、遮光膜21の厚さが1μm以上あれば、遮光膜21において発光素子13からの出射光及び波長変換体19内の蛍光体からの蛍光の透過はほぼ発生しない。また、遮光膜21が光吸収性の材料からなる場合には遮光膜21自体の発熱が考えられること、また輝度向上の点から、遮光膜21は光反射性の材料からなるのが好ましい。
【0023】
このように、発光装置10では、透光板17の下面と隔壁体15の上面とが密着して嵌合して構成されているので、この嵌合部によって波長変換体19の連続性が完全に断たれ、かつ隔壁体15及び遮光膜21によって形成される遮光壁25によって、発光素子13の各々からの発光及び波長変換体19内の蛍光体からの蛍光が遮光されるので、発光領域23内から隣接する発光領域23に光が漏出することが防止される。それによって、発光装置10の所望の照射領域以外に光が照射されることが防止され、選択的な配光が可能になる。また、発光装置10では、透光板17内に形成されている遮光膜21の膜厚が非常に薄いので、光取り出し面である透光板17上面における非発光領域が非常に小さくなっている。それによって、発光領域間の境界に形成される暗部を非常に小さくすることができ、発光装置の照射光の連続性を高めることが可能である。
【0024】
以下に、発光装置10の製造方法について、
図2a−dを参照しつつ説明する。
図2a−dは、発光装置10の各製造工程を、
図1aの1b−1b線における断面の一部で示した図である。
【0025】
まず、
図2aに示すように、上面にAu等の導電体で配線が形成されているAlNセラミックス等の絶縁基板11を用意し、基板11上の配線とフリップチップタイプの発光素子13の素子電極とを金属バンプ(図示せず)を用いて電気的に接続し、発光素子13を搭載する。
【0026】
次に、
図2bに示すように、硬化した後に波長変換体19となる波長変換体ペースト19′を発光素子13上面に塗布または滴下する。この工程においては、まず、シリコーン樹脂またはエポキシ樹脂等の未硬化のペーストを用意し、蛍光体粒子及びスペーサ17Aを予め定めた濃度で添加し、混練することにより基材中に一様に分散させ、未硬化の波長変換体ペースト19′を得る。その後、この波長変換体ペースト19′を
図2bに示すように、発光素子13の上面に所定量塗布(又は滴下)する。
【0027】
次に、
図2cに示すように、波長変換体ペースト19′上に、発光素子13の上面より若干大きい下面を有する凸部17Aを有する透明板17を配置する。透明板17は、各発光素子13に対応する複数の光取り出し面と、それぞれの光取り出し面を厚み方向で分離する遮光膜とが、予め(波長変換体ペースト19′上に配置する前に)一体的に形成されている。
【0028】
ここで、遮光膜21を有する透明板17の形成方法について
図3a−cを参照して説明する。まず、
図3aに示すように、底面を正方形とする正四角柱ガラス棒31の周囲に、遮光膜21となるAg、Alまたはカーボンブラック等の膜21′を蒸着またはメッキで形成する。次に、膜21′が形成されたガラス棒31を
図3bに示すように、必要数(ここでは、一例として3×3の計9個とする)を互いに、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはシアノアクリレート系接着剤からなる接着剤を用いて側面同士接着して、矢印で示す破線Aに沿って切断する。その後に、
図3cに示すように、例えば、選択的なエッチング、選択的なブラスト処理、またはレーザアブレーション等によって凹部17Cを形成すると共に凸部17Aを形成する。ここで、凸部17Aのエッジ17Bは、できるだけエッジを立たせて(シャープに、丸めないで)形成するのが好ましい。なぜならば、後述する透明板17を波長変換体ペースト19′上に載置するステップにおいて、波長変換体ペースト19′がエッジ17Bを越えて濡れ広がることを防止するためである。
【0029】
上述のようにして形成した透明板17を、波長変換体ペースト19′上に載置する。この工程においては、基板表面に垂直な方向から見た上面視において、凸部17AがLED素子13と重なるように、すなわち凹部17Cが素子間領域と重なるように載置する。この工程においては、透明板17を自重によって、または必要に応じて透明板17の上面に荷重をかけることで下方に移動させ、波長変換体ペースト19′中のスペーサ19Aを介して透明板17が発光素子13の上面に支持されるようにし、発光素子13の上面と透明板17との間隔がスペーサ19Aによって定まるようにする。こうすることにより、スペーサ19Aの粒径に相当する層厚の波長変換体ペースト19′の層が形成される。
【0030】
このとき、波長変換体ペースト19′が発光素子13の側面の少なくとも一部を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子13の側面と透明板17の下面を接続する波長変換体ペースト19′の傾斜面が形成される。この際、波長変換体ペースト19′は、表面張力故にエッジ17Bを越えて濡れ広がらない。それ故に、各々の発光素子上に配された波長変換層ペースト19′は、互いに分離された状態を保っている。
【0031】
その後、波長変換体ペースト19′を加熱(例えば150℃の環境下にて4時間放置)して硬化し、波長変換体19を形成する。この工程の後に、基板11、波長変換体19、及び透明板17に囲まれた空隙部27が形成される。透明板17の下面の構造である凸部17A及び凹部17Cによって、波長変換体19の上面形状、及び空隙部27の形状が決まることとなる。
【0032】
次に、
図2dに示すように、空隙部27に、発光素子13から出射した光を遮光可能な、遮光性または反射性を有する樹脂材料、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素または酸化亜鉛等を含有するペースト状のエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂等を注入して固化し、隔壁体15を形成する。具体的には、基板11の端部における空隙部27の開口部から上記樹脂材料を注入する。当該注入においては、開口部に樹脂材料を注入すると、圧力を加えなくとも毛細管現象により樹脂が空隙部27全体に充填される。その後、注入された樹脂材料を加熱して硬化することで、隔壁体15が形成され、発光装置10が完成する。このように、隔壁体15は、空隙部27全体に充填されることで形成されるので、空隙部27を画定する透明板17の下面の構造である凸部17A及び凹部17Cによって、隔壁体15の形状が決まることとなる。透明板17には、複数の光取り出し面と遮光膜とが予め一体的に形成されているため、透明板の配置により、複数の発光素子上に一括して各発光素子に対する波長変換体と発光面(透明板における光透過部)を形成することができる。
【実施例2】
【0033】
以下に、本発明の実施例2に係る発光装置40について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施例2に係る発光装置40の断面図である。
【0034】
実施例2に係る発光装置40は、透明板17の凹部17Cあたる部分に、製造時に波長変換体ペースト19′の濡れ拡がりをせき止める波長変換体分離構造として、疎液性の凸構造41が形成されている以外の構成に関しては、実施例1の発光装置10の構成と同一である。
【0035】
凸構造41は、透光板17の下面の隔壁体15と接する部分に設けられている突起構造である。この凸構造41は、透明板17の製造における凹部17Cの形成工程に代えて、凹部17Cを形成すべき位置に、樹脂等をライン状に塗布することで、凹部17Cと同様の格子形状に形成される。凸構造41を形成する材料は、波長変換体ペースト19′の濡れ拡がりを防止する観点から、フッ素置換ポリイミド樹脂等の疎液性の樹脂であるのが好ましい。また、凸構造41を形成する材料は、凸構造41の内部を光が伝播するのを防止するために、光反射率が高いかまたは光吸収率の高いすなわち遮光性の高い材料で形成するのが好ましい。このような材料は、例えば、エポキシ樹脂もしくはシリコーン樹脂または上記したフッ素置換ポリイミド樹脂等の樹脂に、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素または酸化亜鉛等を含有させたものであってもよい。
【0036】
実施例2においては、
図4に示すように、透明板17の下面の構造である凸構造41の周縁部によって波長変換体ペーストがせき止められ、波長変換体19の上面形状、及び後に形成される隔壁体15の先端形状が凸構造41によって決まることとなる。
【0037】
実施例2に係る発光装置40においては、波長変換体ペースト19′をせき止める構造を、樹脂等を塗布して凸構造41を配置することで形成可能であり、透明板17を切削加工する必要が無い。従って、発光装置40は発光装置10よりも容易に形成することが可能である。また、発光装置40では、遮光性のある隔壁体15、凸構造41及び遮光膜21が連続的に形成される遮光壁25によって、発光素子13の各々からの発光及び波長変換体19内の蛍光体からの蛍光が、発光領域23内から隣接する発光領域23に漏出することが防止される。それによって、発光装置10と同様に、所望の照射領域以外に光が照射されることが防止され、選択的な配光が可能になる。また、発光装置10と同様に、遮光膜21の膜厚が非常に薄いので、光取り出し面である透光板17上面における非発光領域が非常に小さくなっている。それによって、発光領域間の境界に形成される暗部を非常に小さくすることができ、照射光の連続性を高めることが可能である。
【0038】
上述の実施例においては、波長変換体の分離構造として、透明板に凸部または凹部が形成されたが、透明板に波長変換体に対して疎液性の物質を塗布するか、または透明板の表面を処理して濡れ性を変化させることで波長変換体ペーストの濡れ拡がりをせき止めることとしてもよい。また、
図5のように、溝状の切欠部51を2つ形成することとしてもよく、隣接する波長変換体を分離することができれば、他の適宜な構造、方法を適用することができる。
【0039】
上述の実施例においては、スペーサを用いることとしたが、スペーサを使用しなくても波長変換体を所望の層厚にすることができるならば、スペーサは必要ではない。
【0040】
また、上述の実施例においては、発光素子13からの発光を、光取り出し面から効率良く取り出し、かつ発光領域23の中央部と周縁部との発光にムラを生じさせないようにするために、波長変換体の分離構造である凹部17C及び凸構造41をできるだけ小さく形成し、隔壁体15の上部形状をできるだけ小さくすることが好ましい。また、透光板17内に蛍光体または散乱材を含有させることとしてもよい。
【0041】
また、発光領域の数は任意であり、正方形配列、長方形配列等の様々な配列も可能である。また、発光領域の形状も、透光板製造工程で正三角柱や正六角柱等のガラス棒を用いることで、正三角形状、正六角形状等様々な形状をとることが可能である。
【0042】
また、上記実施例では、遮光膜が透光板の隔壁体15との接触部から上面に達することとしているが、隣接する発光領域同士の遮光が達成可能であるならば、透光板の上面にまで達していなくともよい。
【0043】
さらに、上述した実施例における種々の数値、寸法、材料等は、例示に過ぎず、用途及び使用される発光素子、封止樹脂等に応じて、適宜選択することができる。
【0044】
本発明の発光装置によれば、本発明の発光装置の複数の発光素子を選択的または個別に点灯可能な制御回路を組み合わせることで、所望の配光に切り替え可能な配光可変型の照明装置を形成することができる。