(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、ケーシング内部の冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過する空気量をエアミックスドアによって変更して所望温度の調和空気を生成し、車室に供給するように構成されている。
【0003】
車種により、車室の運転席側エリアと助手席側エリアとに異なる温度の調和空気を供給する独立温度コントロールタイプの空調装置が搭載される場合と、両エリアに同一温度の調和空気を供給する非独立温度コントロールタイプの空調装置が搭載される場合とがある。
【0004】
独立温度コントロールタイプの空調装置は、運転席側に供給する調和空気が流れる運転席側空気通路と、助手席側に供給する調和空気が流れる助手席側空気通路とがケーシングの内部に形成されている。そして、ケーシングの内部には、運転席側空気通路を流れる調和空気の温度を調節するための運転席側エアミックスドアと、助手席側空気通路を流れる調和空気の温度を調節するための助手席側エアミックスドアとが配設されている。そして、運転席側及び助手席側エアミックスドアは、別々のアクチュエータで駆動される。
【0005】
ところで、独立温度コントロールタイプの空調装置と、非独立温度コントロールタイプの空調装置とで、ケーシングを共通化したいという要求がある。上述のようにエアミックスドアは、独立温度コントロールタイプでは運転席側と助手席側とを独立して作動させる必要がある一方、非独立温度コントロールタイプでは両ドアを連動させて1つのアクチュエータで済むようにしたい。
【0006】
したがって、独立温度コントロールタイプ用のドアと、非独立温度コントロールタイプ用のドアとが存在することになり、製造現場では、独立温度コントロールタイプの車両用空調装置に非独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアが組み付けられたり、それとは逆に、非独立温度コントロールタイプの車両用空調装置に独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアが組み付けが行われてしまうことが考えられる。
【0007】
このような誤った組み付けの対策としては、例えば特許文献1に開示されているように、独立温度コントロールタイプ用のドアの孔部に、非独立コントロールタイプ用のドアの軸部を途中まで差し込んだときに、軸部を、孔部内の挿入止部によって止めて完全に差し込むことができないようにすることが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、ドアの軸部が孔部の挿入止め部に当たった時点で、はじめて誤って組み付けてしまったことが分かる。つまり、軸部を孔部に所定以上差し込まなければ誤って組み付けられているか否か分からないので、作業者は誤った組み付けであっても組付動作を途中まで行う必要があり、その後、挿入止め部に当たって誤っていることに気付いてから、今度は軸部を孔部から抜く作業を行わなければならない。このように、特許文献1の組付構造では作業者に負担が強いられていた。
【0010】
このことに対し、ドアに目印を付けることによって独立温度コントロールタイプ用のドアと非独立温度コンとトールタイプ用のドアとを区別することが考えられるが、目印を付けただけでは作業者が見落としてしまうことがあり、根本的な解決方法とはならない。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のタイプのドアユニットを共通のケーシングに組付可能にする場合に、一方のドアユニットの軸部を他方のドアユニットの孔部に差し込む前の段階で誤って組み付けられているか否かが組付作業者に分かるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、第1及び第2ドアが独立して動作する独立動作ドアユニットと、両ドアが連動する連動ドアユニットとのドアの軸部の径と、軸部が差し込まれる孔部の径との大小関係を特定した。
【0013】
第1の発明は、第1空気通路と第2空気通路とが形成されるケーシングと、
上記ケーシング内に配設される空調用機器と、
上記ケーシングに回動可能に支持されて上記第1及び第2空気通路の開度を調整する第1及び第2ドアを有するドアユニットとを備え、
上記ケーシング内には、該ケーシング内を上記第1空気通路と上記第2空気通路とに仕切るための仕切部材が配設され、
上記ドアユニットは、上記第1及び第2ドアが独立して動作する独立動作ドアユニットと、上記第1及び第2ドアを連動させる連動ドアユニットとが設定されており、
上記独立動作ドアユニットと上記連動ドアユニットとは共通の上記ケーシングに組み付けられるように構成された車両用空調装置において、
上記独立動作ドアユニット及び上記連動ドアユニットは、共に、上記第1ドアから上記第2ドア側へ突出する軸部を、上記第2ドアに形成された孔部に差し込むことによって構成されるものであり、
上記独立動作ドアユニットの第1ドアの軸部は、上記独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込まれ、該第1及び第2ドアが相対回動可能に構成され、
上記連動ドアユニットの第2ドアの孔部内面には、該孔部の中心線に接近する方向に突出し、上記連動ドアユニットの第1ドアの軸部が差し込まれた状態で該軸部に嵌合する突出部が形成され、
上記独立動作ドアユニットの第1ドアの軸部は、上記連動ドアユニットの第1ドアの軸部よりも小径とされ、
上記連動ドアユニットの第1ドアの軸部の外径は、上記独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部の内径よりも大きく設定され、上記独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部の開口径は上記連動ドアユニットの第1ドアの軸部の外径よりも小さく設定され、
上記突出部の突出量は、上記独立動作ドアユニットの第1ドアの軸部が上記連動ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込まれるのを阻止するように設定され
、
上記仕切部材には、上記ドアユニットの第1ドアの軸部が挿通する挿通孔が形成され、
上記独立動作ドアユニットの第1ドアの軸部の突出方向先端側が上記仕切部材の挿通孔から突出して上記独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込まれる差し込み部とされ、該軸部の基端側は、該差し込み部よりも大径とされて上記仕切部材の挿通孔に挿通する大径部とされ、該大径部の外面が上記挿通孔の内面に摺接するように設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、独立動作ドアユニットの第1ドアの軸部を、独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込むと、第1ドアと第2ドアとは相対回動可能になるので、ケーシングの第1空気通路と第2空気通路との開度をそれぞれ調整することが可能になる。
【0015】
一方、連動ドアユニットの第1ドアの軸部を、連動ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込むと、第1ドアの軸部が突出部に嵌合し、第1ドアと第2ドアとは一体に回動するようになるので、1つのアクチュエータによって第1空気通路と第2空気通路との両方の開度を調整することが可能になる。
【0016】
製造時において、組立作業者が、例えば、連動ドアユニットの第1ドアの軸部を、独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込もうとした場合、連動ドアユニットの第1ドアの軸部の径が独立動作ドアユニットの第2ドアの孔部の径よりも大きいので、差し込むことができない。
【0017】
また、組立作業者が、独立動作ユニットの第1ドアの軸部を、連動ドアユニットの第2ドアの孔部に差し込もうとすると、連動ドアユニットの第2ドアの孔部内面の突出部によって差し込まれるのが阻止されるので、差し込むことができない。
【0018】
したがって、各ドアユニットの第1ドアの軸部を第2ドアの孔部に差し込む前の段階で誤って組み付けられているか否かを組付作業者が把握することができる。
【0019】
また、独立動作ドアユニット及び連動ドアユニットの両方の第1ドアを仕切部材により支持することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、独立動作ドアユニットと連動ドアユニットの第1ドアの軸部を第2ドアの孔部に差し込む前の段階で誤って組み付けられているか否かを組付作業者が把握することができるので、組立作業者の負担を軽減することができるとともに、組立工数も削減できる。
【0021】
また、独立動作ドアユニット及び連動ドアユニットの両方の第1ドアを仕切部材により支持することができるので、ドアユニットの動作をスムーズにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用空調装置1の左側面図である。
【0025】
この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0026】
この車両用空調装置1は、例えば自動車の車室内に搭載されるものであり、空調ユニット3の他に送風ユニット2(仮想線で示す)を備えている。送風ユニット2は空調ユニット3に空調用空気を送風するためのものである。尚、この車両は、左側に運転席が配設された、いわゆる左ハンドル車である。
【0027】
送風ユニット2は、車両のインストルメントパネル内の助手席側(右側)に配設される。また、空調ユニット3は、上記インストルメントパネル内の左右方向略中央部に配設される。
【0028】
図2に示すように、空調ユニット3は、ケーシング40と、冷却用熱交換器30と、加熱用熱交換器31と、エアミックスドアユニット32と、デフロスタドア33と、ベントドアユニット34と、ヒートドアユニット35とを有している。
【0029】
ケーシング40は、前側ケーシング43と後側ケーシング44とに分割されている。
【0030】
冷却用熱交換器30は、冷凍サイクル装置の一要素であるエバポレータを構成するものであり、ケーシング40内に導入された空調用空気を冷却するためのものである。冷却用熱交換器30は、ケーシング40内において空気流れ方向最上流部(ケーシング40内の前端部近傍)に配置されている。ケーシング40内に導入された空調用空気の略全量が冷却用熱交換器30を通過するようになっている。
【0031】
冷却用熱交換器30を通過した空気は、ケーシング40の下側に向かう流れと、上側に向かう流れとに分流するようになっている。
【0032】
ケーシング40内の冷却用熱交換器30よりも下流側には、加熱通路R1が形成されている。加熱通路R1に加熱用熱交換器31が配設されている。加熱用熱交換器31は、エンジンの冷却水が循環するヒータコアであり、冷却用熱交換器30を通過して加熱通路R1へ流れた空気を加熱するためのものである。
【0033】
冷却用熱交換器30を通過して上側へ流れた空気は、エアミックス空間AMに流入する。また、加熱用熱交換器31を通過した空気もエアミックス空間AMに流入する。エアミックス空間AMでは、冷却用熱交換器30を通過した空気と、加熱用熱交換器31を通過した空気とを混合させて所望温度の調和空気を生成する。
【0034】
エアミックス空間AMの下流側は、デフロスタ通路D、ベント通路B及びヒート通路Hに分岐している。
【0035】
ケーシング40の内部には、
図3に示すように、ケーシング40の内部空間を左右方向に仕切るための仕切部材Pが設けられている。仕切部材Pは、冷却用熱交換器30の下流側から
図2に示すエアミックス空間AM、デフロスタ通路D、ベント通路B及びヒート通路H内まで延びる板状に形成されている。したがって、ケーシング40内の空気通路は、冷却用熱交換器30よりも下流側が仕切部材Pによって左右に分けられる。
【0036】
デフロスタ通路Dの下流端は、ケーシング40の上壁部の前側に開口している。デフロスタ通路Dは、図示しないがダクトを介してインストルメントパネルのデフロスタノズルに接続されている。
【0037】
ベント通路Bの下流端は、ケーシング40の後壁部の上側に開口している。ベント通路Bの仕切部材Pよりも左側は、インストルメントパネルの左側に配設されている運転席側ベントノズルに接続されている。これにより、ケーシング40内の仕切部材Pよりも左側の空気通路(運転席側空気通路)Dr(
図4に示す)を流れる空気は車室の運転席側エリアに供給されることになる。運転席側空気通路Drが本発明の第1空気通路である。
【0038】
また、ベント通路Bの仕切部材Pよりも右側は、インストルメントパネルの右側に配設されている助手席側ベントノズルに接続されている。これにより、ケーシング40内の仕切部材Pよりも右側の空気通路(助手席側空気通路)Psを流れる空気は車室の助手席側エリアに供給されることになる。助手席側空気通路Psが本発明の第2空気通路である。
【0039】
ヒート通路Hの下流端は、ケーシング40の下部に開口している。ヒート通路Hには図示しないヒートダクトが接続されている。
【0040】
図2や
図3に示すように、デフロスタドア33は、左右方向に延びる回動軸33aと、回動軸33aの径方向に延びる閉塞板部33bとを備えている。回動軸33aの両端部は、ケーシング40に形成された軸受孔40c(
図1に示す)に挿入された状態で回動可能に支持されている。閉塞板部33bは、デフロスタ通路Dを開閉するためのものである。
【0041】
図3に示すように、ベントドアユニット34は、仕切部材Pよりも左側に配設される運転席側ベントドア34Drと、仕切部材Pよりも右側に配設される助手席側ベントドア34Psとを備えている。運転席側ベントドア34Drと助手席側ベントドア34Psとは、一体に回動するように結合されている。
【0042】
運転席側ベントドア34Dr及び助手席側ベントドア34Psは、それぞれ、回動軸34aと、ベント通路Bを開閉する閉塞板部34bとを備えている。回動軸34aは、ケーシング40に形成された軸受孔40d(
図1に示す)に挿入されて回動可能に支持される。
【0043】
図3に示すように、ヒートドアユニット35も左側の運転席側ヒートドア35Drと、右側の助手席側ヒートドア35Psとを備えており、運転席側ヒートドア35Drと助手席側ヒートドア35Psとは、一体に回動するように結合されている。
【0044】
運転席側ヒータドア35Dr及び助手席側ヒータドア35Psは、それそれ、回動軸35aと、ヒータ通路Hを開閉する閉塞板部35bとを備えている。回動軸35aは、ケーシング40に形成された軸受孔40e(
図1に示す)に挿入されて回動可能に支持される。
【0045】
本実施形態の車両用空調装置1は、搭載される車種により、車室の運転席側エリアと助手席側エリアとに異なるの温度の調和空気を供給する独立温度コントロールタイプと、運転席側エリアと助手席側エリアとに同一温度の調和空気を供給する非独立温度コントロールタイプとがあり、
図4及び
図5に示す独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアユニット32Aと、
図6及び
図7に示す非独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアユニット32Bとが設定されている。
【0046】
独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアユニット32Aと、非独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアユニット32Bとは、共通のケーシング40に組み付けられるように構成されており、車両用空調装置1の製造現場において組立作業者が指示に従って一方を選択して組み付けることができるようになっている。
【0047】
図4及び
図5に示すように、独立温度コントロールタイプ用のエアミックスドアユニット32Aは、運転席側エアミックスドア321と、助手席側エアミックスドア322とを備えている。運転席側エアミックスドア321は、左側に突出する回動軸321aと、助手席側エアミックスドア322側(右側)に向けて突出する支軸321bと、回動軸321aの径方向に延びる閉塞板部321cとを備えている。
【0048】
回動軸321aは、ケーシング40の左側壁部に形成された軸受孔40bに挿入されて回動可能に支持される。支軸321bは、回動軸321aと同心上に位置付けられており、仕切部材Pに形成された挿通孔P1に挿入されて回動可能に支持される。閉塞板部321cは、加熱通路R1の一部である上流端開口62と下流端開口63とを同時に開閉することができるものである。閉塞板部321cは回動軸321a周りに回動することにより、
図2に示す加熱通路R1の上流端開口62と下流端開口63とを閉塞した状態でエアミックス空間AMの冷風流入口61を開放する一方、加熱通路R1の上流端開口62と下流端開口63とを開放した状態でエアミックス空間AMの冷風流入口61を閉塞する。加熱通路R1の上流端開口62と下流端開口63との開度、及び冷風流入口61の開度を調節することにより、エアミックス空間AMに流入する温風量と冷風量とを変更してエアミックス空間AMの運転席側で生成される調和空気の温度を変更することができる。
【0049】
図5にも示すように、支軸321bは、円柱状に形成されている。支軸321bの基端側は、先端側よりも大径とされて仕切部材Pの挿通孔P1に挿通する大径部321fとされている。この大径部321fの外面が仕切部材Pの挿通孔P1の内面に摺接するようになっている。また、支軸321bの先端側は、後述する助手席側エアミックスドア322の孔部322bに差し込まれる差し込み部321gとされている。
【0050】
図4に示すように、助手席側エアミックスドア322は、右側に向けて突出する回動軸322aと、左側に開口する孔部322b(
図5に示す)と、回動軸322aの径方向に延びる閉塞板部322cとを備えている。回動軸322aは、ケーシング40の右側壁部に形成された軸受孔40aに挿入されて回動可能に支持される。孔部322bの中心線は回動軸322aと同様に左右方向に延びており、該回動軸322aの中心線と同心上に位置付けられている。孔部322bは、運転席側エアミックスドア321の支軸321bと同様な円形断面を有している。運転席側エアミックスドア321の支軸321bが孔部322bに差し込まれた状態で支軸321bの外面が孔部322bの内面に摺接するようになっている。つまり、運転席側エアミックスドア321と助手席側エアミックスドア322とは、相対回動可能になっている。
【0051】
独立温度コントロールタイプでは、
図4に示すように、左側エアミックスアクチュエータ53と、右側エアミックスアクチュエータ54とがケーシング40に組み付けられる。左側エアミックスアクチュエータ53は、ケーシング40の左側壁部に固定されており、運転席側エアミックスドア321の回動軸321aに連結されている。
【0052】
一方、右側エアミックスアクチュエータ54は、ケーシング40の右側壁部に固定されており、助手席側エアミックスドア322の回動軸322aに連結されている。
【0053】
左側エアミックスアクチュエータ53のみを作動させると運転席側エアミックスドア321のみが回動し、また、右側エアミックスアクチュエータ54のみを作動させると助手席側エアミックスドア322のみが回動する。これにより、運転席側空気通路Drで生成される調和空気の温度と、助手席側空気通路Psで生成される調和空気の温度とを異なる温度にすることが可能になる。
【0054】
尚、左側エアミックスアクチュエータ53及び右側エアミックスアクチュエータ54は、例えば、運転席乗員の設定温度及び助手席乗員の設定温度等に基づいて図示しない制御装置によって制御される。
【0055】
図6及び
図7に示すように、非独立温度コントロールタイプのエアミックスドアユニット32Bも、同様に運転席側エアミックスドア323と、助手席側エアミックスドア324とを備えている。運転席側エアミックスドア323は、回動軸323aと、助手席側エアミックスドア324に向けて突出する支軸323bと、閉塞板部323cとを備えている。回動軸323aは、ケーシング40の左側壁部の軸受孔40bに挿入されて回動可能に支持される。支軸323bは、仕切部材Pに形成された挿通孔P1に挿入されて回動可能に支持される。閉塞板部323cは、独立温度コントロールタイプのエアミックスドアユニット32Aの閉塞板部321cと同様のものである。
【0056】
図7に示すように、支軸323bは、柱状に形成されている。支軸323bの基端側は、仕切部材Pの挿通孔P1に挿通する挿通部323fとされている。この挿通部323fの外径は、独立温度コントロールタイプのエアミックスドアユニット32Aの大径部321fと同じに設定されている。支軸323bの先端側は、後述する助手席側エアミックスドア324の孔部324bに差し込まれる差し込み部323gとされている。独立温度コントロールタイプの運転席側エアミックスドア321の差し込み部321g(
図5に示す)は、非独立温度コントロールタイプの運転席側エアミックスドア323の差し込み部323g(
図7に示す)よりも小径とされている。
【0057】
図8にも示すように、支軸323bの差し込み部323gの外周面には、2つの凹部323d,323dが形成されている。差し込み部323gの凹部323d,323dが形成されていない部位の径(最大外径A1)は、独立温度コントロールタイプのエアミックスドアユニット32Aの差し込み部321gの径(
図5に示すA2)よりも大きく設定されている。
【0058】
図6及び
図7に示すように、助手席側エアミックスドア324は、回動軸324aと、孔部324bと、閉塞板部324cとを備えている。回動軸324aは、ケーシング40の軸受孔40aに挿入されて回動可能に支持される。孔部324bは、運転席側エアミックスドア323の支軸323bの差し込み部323gと同様な断面を有している。すなわち、
図9に示すように、孔部324bの内面には、孔部324bの中心線に接近する方向に突出する2つの凸部(突出部)324e,324eが形成されている。凸部324e,324eは、孔部324bの中心線方向両端に亘って形成されている。凸部324eの数は、2つに限られるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0059】
これら凸部324e,324eが差し込み部323gの凹部323d,323dに嵌合するようになっている。凸部324e,324eが凹部323d,323dに嵌合した状態で、運転席側エアミックスドア323と助手席側エアミックスドア323とが一体化して相対回動不能になる。
【0060】
孔部324bの凸部324e先端と、該先端に対向する部位との離間寸法(A3)は、独立温度コントロールタイプのエアミックスドアユニット32Aの差し込み部321gの径(
図5に示すA2)よりも短く設定されている。
【0061】
図6に示すように、非独立温度コントロールタイプでは、左側エアミックスアクチュエータ53のみがケーシング40に組み付けられる。左側エアミックスアクチュエータ53を作動させて運転席側エアミックスドア323を回動させると、助手席側エアミックスドア324が連動する。これにより、運転席側空気通路Drで生成される調和空気の温度と、助手席側空気通路Psで生成される調和空気の温度とが同一温度になる。尚、右側エアミックスアクチュエータ54のみをケーシング40に組み付けてもよい。
【0062】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の製造要領について説明する。
【0063】
製造現場のライン上では、独立温度コントロールタイプの車両用空調装置1と、非独立温度コントロールタイプの車両用空調装置1とが製造されている。組立作業者は、独立温度コントロールタイプであるか、非独立温度コントロールタイプであるか指示を受けて製造する。例えば、独立温度コントロールタイプを製造する場合には、
図10に示すように、独立温度コントロールタイプの運転席側エアミックスドア321と、助手席側エアミックスドア322とをケーシング40に組み付ける。運転席側エアミックスドア321の回動軸321aをケーシング40の軸受孔40bに挿入してケーシング40に組み付ける。そして、ケーシング40に仕切部材Pを組み付ける。このとき、運転席側エアミックスドア321の支軸321bを仕切部材Pの挿通孔P1に挿入し、大径部321fを挿通孔P1に挿通させる。
【0064】
その後、助手席側エアミックスドア322を組み付ける。このとき、運転席側エアミックスドア321の支軸321bの差し込み部321gを助手席側エアミックスドア322の孔部322bに差し込む。以上のようにして独立温度コントロールタイプのエアミックスドアユニット32Aが構成されてケーシング40に組み付けられた状態になる。
【0065】
一方、
図11に示すように、例えば、組立作業者が独立温度コントロールタイプの運転席側エアミックスドア321に、非独立温度コントロールタイプの助手席側エアミックスドア324を誤って組み付けようとすることが考えられる。
【0066】
この場合、助手席側エアミックスドア324の孔部324b内面に凸部324eが形成されていて、凸部324e先端と、該先端に対向する部位との離間寸法(
図9に示すA3)が、運転席側エアミックスドア321の差し込み部321gの径(
図5に示すA2)よりも短いので、運転席側エアミックスドア321の差し込み部321gを助手席側エアミックスドア324の孔部324bに差し込むことができない。これにより、運転席側エアミックスドア321の差し込み部321gを助手席側エアミックスドア324の孔部324bに差し込む前に、誤って組み付けていることを組付作業者が把握することができる。
【0067】
また、
図12に示すように、例えば、組立作業者が非独立温度コントロールタイプの運転席側エアミックスドア323に、独立温度コントロールタイプの助手席側エアミックスドア322を誤って組み付けようとすることが考えられる。
【0068】
この場合、助手席側エアミックスドア322の孔部322bの径(
図5のA2と略等しい)が、独立温度コントロールタイプの運転席側エアミックスドア323の差し込み部323gの径(
図8のA1)よりも小径であるため、運転席側エアミックスドア323の差し込み部323gを助手席側エアミックスドア322の孔部322bに差し込むことができない。これにより、運転席側エアミックスドア323の差し込み部323gを助手席側エアミックスドア322の孔部322bに差し込む前に誤って組み付けていることを組付作業者が把握することができる。
【0069】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1では、独立温度コントロールタイプと、非独立温度コントロールタイプとで、ケーシング40や、冷却用熱交換器30、加熱用熱交換器31、仕切部材Pを共通化することができる。
【0070】
そして、組立作業者が独立温度コントロールタイプ用の運転席側エアミックスドア321に非独立温度コントロールタイプ用の助手席側エアミックスドア324を誤って組み付けようとすること、及び、非独立温度コントロールタイプ用の運転席側エアミックスドア323に独立温度コントロールタイプ用の助手席側エアミックスドア322を誤って組み付けようとすることを、それらの差し込み部321g,323gを孔部322b,324bに差し込む前の段階で把握することができる。これにより、組立作業者の負担を軽減することができるとともに、組立工数も削減できる。
【0071】
尚、本実施形態では、エアミックスドアに本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、ベントダンパやヒートダンパを運転席側と助手席側とで異なる動きをさせる場合にも適用することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、本発明をバタフライタイプのドアを備えた車両用空調装置1に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、図示しないがロータリードア等を備えた車両用空調装置に適用することもできる。