【実施例1】
【0059】
<構成>以下、構成について説明する。
【0060】
(構成1−1)
この実施例の排水配管は、
図4〜
図6(主に、
図5参照)に示すように、少なくとも直管部21を有している。
【0061】
そして、この直管部21が上記した閉塞防止機構24を備えることによって、排水配管が部分的に排水22で塞がれて、排水配管内部に負圧が発生するのを防止し得るようにしている。
【0062】
そして、この閉塞防止機構24を、螺旋羽根26などの整流部材(整流部)としている。
【0063】
この場合、直管部21の出口部(下流側)に、屈曲管部23が設けられている。この屈曲管部23は、直管部21内を流れる排水22を方向転換可能なものである。この屈曲管部23の内面が、大きな曲面に沿って排水22の流れを屈曲させるようにした大曲部23aと、この大曲部23aに相対する小曲部23bとで構成されている。また、上記した直管部21の内面が、大曲部23aの上流側に位置する後側の半周壁部分21aと、小曲部23bの上流側に位置する前側の半周壁部分21bとで構成されている。
【0064】
上記した螺旋羽根26は、直管部21の前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22を、屈曲管部23の大曲部23aへ向けて案内可能なものとされている。そして、屈曲管部23の出口部が部分的に排水22で塞がれることによって、直管部21内に負圧が発生するのを防止するものとされている。
【0065】
(補足説明1−1)
ここで、上記した「直管部21」は、円形断面を有するものとされる(
図4参照)。また、「屈曲管部23」は、円形断面の入口部と出口部とを有するものとされる。屈曲管部23の入口部と出口部とは、通常は、同径のものとされる。屈曲管部23の内部は、ほぼ円形断面を保持しつつ屈曲するものとされる。但し、屈曲のための若干の断面形状の変形は許容される。
【0066】
屈曲管部23の「大曲部23a」は、排水22の流れが屈曲する部分の外側(外周側)の(半周域の)部分とされる。また、「小曲部23b」は、排水22の流れが屈曲する部分の内側(内周側)の(半周域の)部分とされる。直管部21の「後側の半周壁部分21a」は、大曲部23a側の半周域に連続するものとされる。また、「前側の半周壁部分21b」は、小曲部23b側の半周域に連続するものとされる。
【0067】
上記した整流部としての「螺旋羽根26」は、各排水配管の途中、特に好ましくは、直管部21の下流側に屈曲管部23が接続された屈曲部分Aの少なくとも1つまたは全てに対して設けられる。なお、直管部21と屈曲管部23とは、ほぼ垂直な面内に設けられるものに限らず、ほぼ水平な面内に設けられるものに対しても適用することができる。
【0068】
この螺旋羽根26は、好ましくは、直管部21の内壁に沿い、少なくとも螺旋の一部を構成するように延びるものとされる。この螺旋羽根は、直管部21の軸線21cを中心として、周方向および軸線方向へ延びる螺旋形状のものとされる。この場合、螺旋羽根26は、軸線方向の設置範囲(または、軸線方向の周回ピッチ)をより短くするために連続した一条のものとされている。なお、
図5の断面図では、螺旋羽根26の下半分のみが図示されており、図示されていない上半分は、図中上方へ向かって斜めに延びている。螺旋羽根26の旋回方向については、右回りであっても、左回りであってもどちらでも良い。但し、上流側から流れてくる排水22が旋回流である場合、排水22の旋回方向に合わせるようにする。螺旋羽根26の全体形状については、例えば、
図10(a)に描かれているようなものとされる。
【0069】
(構成1−2)
この際、特に、
図5に示すように、上記した整流部(としての螺旋羽根26)が、排水22の流れを屈曲管部23の大曲部23aの屈曲開始部25へ向かうように案内可能なものとされる。
【0070】
(補足説明1−2)
上記した大曲部23aの「屈曲開始部25」は、文字通り、屈曲管部23において大曲部23aが開始される位置である。この屈曲開始部25は、大曲部23a側の半周域全体に亘って存在する。排水22は、この半周域上であれば、どの位置を狙うようにしても良いが、螺旋羽根26によって案内された排水22の全量を安定して大曲部23aへと導かせるようにするためには、半周分の周上の中央位置またはその周辺に設定するのが最も好ましい(
図6参照)。
【0071】
なお、螺旋羽根26が、大曲部23aの屈曲開始部25を狙うように設けられるのは、大曲部23aの屈曲開始部25よりも下を狙うと、屈曲管部23の出口部の閉塞を確実に防止することが難しくなってしまうことによる。また、大曲部23aの屈曲開始部25よりも上を狙うと、屈曲管部23の出口部の閉塞については防止できるが、その分、直管部21が長くなってしまうことによる。よって、螺旋羽根26は、大曲部23aの屈曲開始部25をピンポイントに狙うようにするのが最も好ましいが、屈曲開始部25の上下数cm(±1〜3cm)程度くらいのズレであれば許容できる。更に、大曲部23aの屈曲開始部25を狙う際には、排水22に作用する重力や、排水22の水勢の影響を考慮するのが望ましい。
【0072】
(構成1−3)
そして、
図6に示すように、直管部21の後側の半周壁部分21aに、排水22を流すのに最低限必要な円形断面の最低必要通路部27を確保する。そして、上記した整流部(としての螺旋羽根26)が、最低必要通路部27を除いた残りの部分に設置されるようにする。
【0073】
(補足説明1−3)
ここで、上記した「最低必要通路部27」は、後側の半周壁部分21aにおける周方向の中央部に内接するように設定される。この最低必要通路部27は、排水配管を流れる排水22の種類によって大きさや径が異なるものである。排水配管が、トイレ用配管64である場合、最低必要通路部27は、1回に流す排水22の最大流量や、排水22中に含まれる固形物を支障なく通し得る大きさなどを考慮して設定される。例えば、住宅用のトイレ用配管64の場合、直管部21の内径が70Φ〜80Φなどとされ、最低必要通路部27は、およそ55Φの径を有して直管部21の軸線方向へ延びる円形断面のものなどとされる。即ち、最低必要通路部27は、直管部21の内径に対して比較的径の大きなものとなる。これにより、螺旋羽根26の幅寸法26wも、直管部21の内径から最低必要通路部27の直径を引いた長さが最大幅となる。
【0074】
(構成1−4)
更に、上記した整流部(としての螺旋羽根26)が、前側の半周壁部分21bを越えて後側の半周壁部分21aへハミ出さないようにする。そのために、螺旋羽根26の端部が、後側の半周壁部分21aにおける最低必要通路部27の外側の部分29内へ及ばないようにする。
【0075】
(補足説明1−4)
上記により、螺旋羽根26は、直管部21の前側の半周壁部分21bのみに設置されるものとなる。即ち、螺旋羽根26は、直管部21のほぼ前側の半周壁部分21bのみに対して、ほぼ半周分またはそれより若干狭い範囲に亘って延設されるものとなる(前壁側整流部)。
【0076】
なお、螺旋羽根26の両端部については、コーナー部分をなくしてなだらかな形状とするために、
図6に示すような角取りを施すようにしても良い(角取部26a)。或いは、
図7(b)に示すように、螺旋羽根26全体に急激な形状変化がないようにするための徐変部26bを設けることにより、螺旋羽根26の全体を平面視で三日月型などとなるようにしても良い。なお、螺旋羽根26は、可能な限り直管部21における前側の半周壁部分21bの全域に亘って設けることが好ましいが、機能的に支障がない限りにおいて、若干短くすることも可能である(
図6参照)。反対に、螺旋羽根26は、直管部21における前側の半周壁部分21bを越えないようにすることが好ましいが、誤差や形状を整えるための若干のハミ出しなどについては許容されるものとする(
図7(b)参照)。
【0077】
(構成1−5)
そして、好ましくは、
図5に示すように、上記した整流部(としての螺旋羽根26)が、直管部21の内面の管軸と垂直な方向に対し、排水22の流れの下流側へ向けて傾斜する取付角度31を有して設けられるようにする。
【0078】
(補足説明1−5)
ここで、直管部21の内面に対する螺旋羽根26の取付角度31は、およそ50度〜70度の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、55度〜65度程度とする。これは、50度よりも小さくすると、排水22を案内する能力が低下すると共に、直管部21の軸線方向に対する螺旋羽根26の設置範囲が大きくなってしまうことによる。そして、70度よりも大きくすると、排水22に与える抵抗が大きくなり、また、粘性の高い固形物などが溜まる可能性が高くなることによる。
【0079】
(構成1−6)
更に好ましくは、上記した閉塞防止機構24(としての螺旋羽根26)が、直管部21の上流側に設けられる排水機器または排水配管に対して接続するのに最低必要となる接続用最小長さ32の範囲内に設置されるようにする。
【0080】
(補足説明1−6)
ここで、上流側の排水機器には、排水機器自体、および、排水機器と直管部21との間のジョイント部(例えば、
図24の接続ソケット5など)も含まれるものとする。この場合の接続用最小長さ32は、直管部21(より正確には、後述する直管部材36)の出口部(図中、下端部)からの長さである。或いは、後述するエルボ部材35の入口部からの長さである。これにより、直管部21の軸線方向に対する螺旋羽根26(整流部)の設置範囲(設置可能範囲)は、直管部21の出口部から接続用最小長さ32までの間の極く短い部分に限定されることになる。そして、直管部21の軸線方向に対する螺旋羽根26の周回ピッチは、上記設置範囲に応じた小さいものとされる。即ち、螺旋羽根26は、下流側へ向かって緩やかな勾配で旋回するものとなる。より具体的には、螺旋羽根26の勾配角度(旋回角度)は、45度以下とするのが好ましい。これは、勾配角度が45度よりも大きいと、螺旋羽根26が軸線方向に長くなってしまうため、接続用最小長さ32の範囲内に納めて直管部21を短くするのが難しくなると共に、排水22を効率的に大曲部23aの屈曲開始部25へ案内し難くなることによる。そして、より好ましい螺旋羽根26の勾配角度は、10度〜30度である。この範囲であれば、直管部21を短くする機能と、排水22を効率的に大曲部23aの屈曲開始部25へ案内する機能とを両立させることが可能となる。例えば、後述するような、トイレ用配管1(
図24参照)などの排水配管の場合、上記した接続用最小長さ32は、およそ100mm程度以下などとされる。これに対し、上記した螺旋羽根26の周回ピッチは、80mm程度以下とされる。
【0081】
(構成1−7)
上記した直管部21の上流側に設けられる排水機器が、
図1または
図3に示すような、床面53上に設置された便器54とされる。
【0082】
そして、直管部21および屈曲管部23が、便器54の排出口59に接続されると共に、床面53を貫通して床下空間52へ延び、更に、床下空間52に沿って横方向へ方向転換されるトイレ用配管64を構成するものとされる。
【0083】
(補足説明1−7)
ここで、直管部21は、ほぼ上下方向へ延びる縦管とされ、屈曲管部23は、排水22の流れをほぼ水平方向に変換するものとされる。直管部21の上端部は、接続ソケット(
図24の接続ソケット5参照)を介して便器54の排出口59に接続され、直管部21の中間部は、床面53に形成された開口部(床開口部など、
図24の開口部6参照)に貫通される。また、屈曲管部23の出口部(受口部34b)には、所要の排水勾配を有して横方向へ延びる横管(
図24の直管部10参照)が接続される。
【0084】
(構成1−8)
上記の他に、排水機器は、洗面台55、浴槽56、キッチン流台57、洗濯機58などとすることができる。そして、排水配管は、洗面用配管65、風呂用配管66、台所用配管67、洗濯機用配管68などとすることができる。
【0085】
(補足説明1−8)
そして、戸建住宅の場合、上記した各排水機器から、外部の排水枡69に接続されるまでの排水配管の途中に、上記した直管部21および屈曲管部23を少なくとも1つ有するものとすることができる。
【0086】
同様に、集合住宅の場合、上記した各排水機器から、各階層間を上下に貫通するように設置された排水縦管71の途中に、上記した直管部21および屈曲管部23を少なくとも1つ有するものとすることができる。
【0087】
更に、上記した直管部21は、ほぼ水平方向へ延びるものとされると共に、屈曲管部23は、排水22の流れをほぼ水平面内で方向転換するものとされても良い。
【0088】
以下、上記した配管構造を構築するための配管用部材34について説明する。
【0089】
(構成1−9)
図4〜
図9のいずれか(例えば、
図4参照)に示すように、上記した配管用部材34が、少なくとも上記直管部21の一部と上記閉塞防止機構24とを有する直管部材36とされる。
【0090】
この場合、直管部材36の出口部に、少なくとも上記屈曲管部23を有するエルボ部材35が設置されても良い。
【0091】
そして、上記した直管部材36とエルボ部材35とは、別部材として構成される。
【0092】
(補足説明1−9)
ここで、上記した「エルボ部材35」は、その入口部に、直管部材36と接続するための直線部分がある程度必要となることから、直管部21の一部を含むものとなる(出口部についても同様にある程度の直線部分が必要となる)。
【0093】
そして、エルボ部材35が直管部21の一部を含むことにより、「直管部材36」は、直管部21と同じかそれよりも若干短いものとなる。即ち、屈曲管部23とエルボ部材35、および、直管部21と直管部材36とは、全く同じにはならずに、若干長さや範囲が異なるものとなる。
【0094】
(構成1−10)
そして、
図5に示すように、別部材とされたエルボ部材35と直管部材36との接続部37は、外周面が面一となるように構成される(外周面一接続部)。
【0095】
(補足説明1−10)
ここで、「外周面が面一」とは、エルボ部材35と直管部材36との外径寸法がほぼ同一となって、外周面に施工の妨げとなるような凹凸形状部分がないことを言う。
【0096】
そのために、例えば、
図5に示すように、エルボ部材35(の入口部)と直管部材36(の出口部)との接続部37を、互いに嵌合(両嵌合)可能な、内周側段差部37aと外周側段差部37bとを有するものにする。この場合、エルボ部材35側が内周側に段差部を有する内周側段差部37aとされ、直管部材36側が外周側に段差部を有する外周側段差部37bとされているが、上記とは反対に、エルボ部材35側を外周側段差部37bとし、直管部材36側を内周側段差部37aとしても良い。或いは、
図7(a)に示すように、接続部37の一方の内周部に、他方の内周面に対して嵌合(片嵌合)可能な差込用凸縁部37cを突設するようにしても良い。
【0097】
そして、このような内周側段差部37aおよび外周側段差部37b、または、差込用凸縁部37cを形成するために、少なくとも接続部37については、他の部分よりも若干厚肉に構成するのが好ましい。そのために、直管部材36の内周面の軸線方向の全域(
図5)または一部(
図7)に対して、例えば、
図5に示すような、下流側に進むに従い厚肉になるテーパ状の縮径形状部37dを形成したり、
図7に示すような、クビレ状の内方膨出部37eを形成したりしても良い。内方膨出部37eは、内部を流れる排水22の抵抗が大きくならないようにするために、膨出量が配管用部材34の肉厚の倍程度以下に抑えられると共に、表面をなだらかな曲面形状とするのが好ましい。
【0098】
上記した「施工の妨げとなるような凹凸形状部分」とは、例えば、現場に設けられた既存の開口部(
図24の開口部6など参照)に通らない大きさの凹凸形状部分という意味である。これに対し、施工の妨げにならないような模様程度の小さな凹凸形状部分などは許容される。
【0099】
なお、
図8に示すように、エルボ部材35の入口部に、接続部37として、直管部材36の出口部を収容可能な受口部38を設けることによって、エルボ部材35と直管部材36との外径寸法が異なるようにすることも、構造的には可能である。
【0100】
(構成1−11)
図9に示すように、上記した直管部材36が、閉塞防止機構24を設ける接続用最小長さ32の部分よりも上流側に、長さ調節のために切断可能な切断代部41を有するようにする。
【0101】
(補足説明1−11)
ここで、「切断代部41」は、接続用最小長さ32の1〜2倍程度にされることが好ましい。この切断代部41は、
図9以外の配管用部材34に対しても設けることができるのは勿論である。なお、切断代部41は、構造的には、
図9のものより長くすることも、反対に、短くすることも可能である。
【0102】
加えて、エルボ部材35と直管部材36との間に対し、周方向位置決定部42を設けることができる。周方向位置決定部42は、例えば、互いに嵌合合致可能な位置決定用凸部42aと、位置決定用凹部(図示せず)とを有するものとされる。この場合、直管部材36に位置決定用凸部42aが設けられ、エルボ部材35に位置決定用凹部が設けられているが、直管部材36に位置決定用凹部を設け、エルボ部材35に位置決定用凸部42aを設けるようにしても良い。上記した周方向位置決定部42は、周方向に1箇所または2箇所以上の複数箇所設けることができる。また、上記した周方向位置決定部42は、
図9以外の配管用部材34に対しても設けることができるのは勿論である。このように、別部材とされたエルボ部材35と直管部材36との間に周方向位置決定部42を設けることにより、周方向に対する整流部の位置精度を上げて、整流効果を最大限に発揮させることができるようになる。
【0103】
(構成1−12)
上記とは別に、
図10〜
図14のいずれかに示すように、配管用部材34を、直管部21と屈曲管部23とを一体に有する直管一体型エルボ部材43を設け、この直管一体型エルボ部材43に対して、上記した整流部(としての螺旋羽根26)を一体または別体に備えるようにすることもできる。この場合には、螺旋羽根26は、別体に構成されたもの(別付整流部材44)とされている。
【0104】
(補足説明1−12)
ここで、直管一体型エルボ部材43は、例えば、
図4または
図7の直管部材36とエルボ部材35とを一体化したような構造のものとされる。直管部21は、少なくとも上記した接続用最小長さ32を有するものとされている。但し、螺旋羽根26を取付けることができるのであれば、直管部21に対して上記した切断代部41を一体に設けるようにしても良い。また、直管部21と屈曲管部23との境界部周辺は、外周面が面一とされる。なお、図面の都合上、符号を省略している構成については、
図4〜
図9のものと同様とする。
【0105】
そして、上記した別付整流部材44は、閉塞防止機構24の整流部として、上記した螺旋羽根26を備えると共に、この螺旋羽根26を直管一体型エルボ部材43(の直管部21)に対して取付けるための取付部45が一体に設けられたものとされる。これに対し、直管一体型エルボ部材43には、必要に応じて、取付部45に対する被取付部46が設けられる。取付部45と被取付部46とは、接着などによって固定される。
【0106】
(構成1−13)
そして、より具体的には、例えば、
図10では、取付部45は、螺旋羽根26の外周中央部に一体形成された差込状取付部45aとされている。そして、被取付部46は、直管一体型エルボ部材43(の直管部21の周壁面)における螺旋羽根26の設置位置に形成された取付用穴部46aとされている。この差込状取付部45aおよび取付用穴部46aは、直管部21の周方向へ延びる細長形状のものとされている。このような構成によれば、直管部21に対して支障なく別付整流部材44を取付けることができる。
【0107】
(構成1−14)
また、例えば、
図11では、取付部45は、直管一体型エルボ部材43の入口部の端面に対して当接状態で固定可能な環状取付部45bとされ、この環状取付部45bは直管一体型エルボ部材43の内面(直管部21の前側の半周壁部分21b)に沿って螺旋羽根26の設置位置まで(図中下方へ)延びる延長支持部45cによって螺旋羽根26と連結されている。この場合、環状取付部45bは、直管一体型エルボ部材43の入口部と内外径がほぼ同一のものとされている。延長支持部45cは、直管一体型エルボ部材43の内面との間に大きな段差が生じないような三日月状断面を有するものとされている。なお、特に図示しないが、直管一体型エルボ部材43の内面に、被取付部(46)として、収容溝部を設けて、上記した延長支持部45cを収容溝部の内部に、内周面一状態となるように収容しても良い。このような構成によれば、直管部21に対して支障なく別付整流部材44を取付けることができる。
【0108】
また、例えば、
図12では、取付部45は、配管用部材34(直管一体型エルボ部材43)の出口部、または、出口部に設けられた受口部34bの管停止面34cに対し当接係止状態で収容固定可能な環状取付部45dとされ、この環状取付部45dは直管一体型エルボ部材43の内面(小曲部23b)に沿って螺旋羽根26の設置位置まで屈曲しつつ(図中横方向および上方向へ)延びる延長支持部45eによって螺旋羽根26と連結とされている。この場合、環状取付部45dは、その外径が受口部34bの内径とほぼ同一のものとされている。延長支持部45eは、直管一体型エルボ部材43の内面との間に段差が生じないような三日月状断面を有するものとされている。なお、特に図示しないが、直管一体型エルボ部材43の内面に、被取付部(46)として、収容溝部を設けて、上記した延長支持部45eを収容溝部の内部に、内周面一状態となるように収容しても良い。また、環状取付部45dには、設置上の必要性に応じて、環状取付部45dを周方向に分断する切込部45fを設けて変形し易くなるようにしても良い。このような構成によれば、直管部21に対して支障なく別付整流部材44を取付けることができる。
【0109】
(構成1−15)
また、例えば、
図13では、取付部45は、直管一体型エルボ部材43の入口部から挿入して、前側の半周壁部分21bの螺旋羽根26よりも上流側の部分の少なくとも一部を構成する部分円筒面状の半周壁状取付部45g(周壁状取付部)とされている。そして、被取付部46は、直管一体型エルボ部材43の内周面に形成されて、半周壁状取付部45gを内周面一状態に収容可能な収容凹部46gとされている。このような構成によれば、直管部21に対して支障なく別付整流部材44を取付けることができる。
【0110】
また、例えば、
図14では、取付部45は、直管一体型エルボ部材43の入口部から挿入して、直管部21の螺旋羽根26よりも下流側の部分を構成する円筒状の全周壁状取付部45h(周壁状取付部)とされている。全周壁状取付部45hには、設置上の必要性に応じて、軸線方向へ延びて全周壁状取付部45hを周方向に分断する切込部45iを設けて変形し易くなるようにしても良い。そして、被取付部(46)は、直管一体型エルボ部材43の内面そのものとしても良いが、
図13と同様に直管一体型エルボ部材43の内面に対して全周壁状取付部45hを内周面一状態に収容可能な収容凹部を形成するようにしても良い。この場合、全周壁状取付部45hは、屈曲管部23によって、挿入位置を規制されることになるので、特に、ストッパなどの停止用部材を設けなくても最適位置に停止されることとなる。但し、ストッパを設けても良いことは勿論である。このような構成によれば、直管部21に対して支障なく別付整流部材44を取付けることができる。
【0111】
(構成1−16)
更に、上記した取付部45と被取付部46との間には、周方向に対する位置決定部(周方向位置決定部42)が設けられる。但し、取付部45と被取付部46とがそれ自体で周方向位置決定部42としての機能を有する場合もあるので(例えば、
図10、
図12、
図13)、この場合には、特に、専用の周方向位置決定部42を設ける必要はない。
【0112】
例えば、
図11では、取付部45としての環状取付部45bと、被取付部46としての直管一体型エルボ部材43の入口部との間(接着面)に対し、互いに嵌合合致可能な嵌合凸部42cと嵌合凹部42dとからなる周方向位置決定部42が設けられている。なお、この嵌合凸部42cと嵌合凹部42dとは、凹凸を逆に設けても良い。また、この嵌合凸部42cと嵌合凹部42dとは、可能であれば、
図12のものなどに対して設けるようにしても良い。
【0113】
このように、別部材とされた整流部(別付整流部材44)と直管部材36(直管一体型エルボ部材43)との間に周方向位置決定部42を設けることにより、周方向に対する整流部の位置精度を上げて、整流効果を最大限に発揮させることができるようになる。
【0114】
(構成1−17)
ここで、上記したような、直管部21と屈曲管部23とを有する配管構造は、屈曲管部23を有さない直管部21のみの配管構造に対しても適用することが可能である。
【0115】
即ち、上記した閉塞防止機構24を備えた配管構造は、排水配管の直線部分に対して適用しても良い。例えば、排水配管の直線部分の中央部などに上記した閉塞防止機構24を1箇所設けたり、或いは、排水配管の直線部分に(一定間隔や所要間隔などを有して)上記した閉塞防止機構24を複数箇所設けたりすることができる。排水配管の直線部分は、ほぼ上下方向へ延びるもの(縦管)であるのが好ましいが、状況によっては、ほぼ水平方向へ延びるもの(横管)などとすることもできる。排水配管の直線部分が横管である場合には、整流部は、横管の上部などに対して設けるようにする。
【0116】
より具体的には、上記した
図4〜
図9の直管部材36と同様の直管部材(図示せず)を設けて、この直管部材の内部に、整流部としての螺旋羽根26を一体に設けるようにすることも可能である。なお、螺旋羽根26の構成については、上記したものと同じとすることができる。
【0117】
また、上記した
図10〜
図14の直管一体型エルボ部材43の直管部21の部分と同様の直管部材(図示せず)を設けて、この直管部材の内部に、整流部としての螺旋羽根26を備えた別付整流部材44を取付可能に構成することも可能である。なお、別付整流部材44の構成については、上記したものと同じである。
【0118】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0119】
図1、
図2に示すような戸建住宅の排水システムでは、便器54、洗面台55、浴槽56、キッチン流台57などの各排水機器からの排水22は、それぞれトイレ用配管64、洗面用配管65、風呂用配管66、台所用配管67などの排水配管を介して、個別に、または、排水ヘッダー70によって合流された後に、基礎51の外部に設けられた排水枡69へと流下される。
【0120】
同様に、
図3に示すような集合住宅の排水システムでは、便器54、洗面台55、浴槽56、キッチン流台57などの各排水機器からの排水22は、それぞれトイレ用配管64、洗面用配管65、風呂用配管66、台所用配管67などの排水配管を介して建物の共用スペースなどに設けられた排水縦管71へと流下される。
【0121】
このような排水配管では、例えば、
図1、
図3中の屈曲部分Aなどにおいて、直管部21内を流れてきた排水22は、屈曲管部23で方向転換されて流下されることになる。
【0122】
この際、直管部21に閉塞防止機構24を備えることによって、屈曲管部23の出口部が部分的に排水22で塞がれることにより直管部21内に負圧が発生する不具合が防止される。
【0123】
この場合、直管部21の前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22は、直管部21の屈曲管部23との接続部37近傍に設けた閉塞防止機構24の整流部によって進路を途中で変更され、屈曲管部23の大曲部23aへ向けて案内されることで、大曲部23aに沿ってスムーズに方向転換されるようになる。
【0124】
以って、直管部21の前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22がそのまま屈曲管部23の小曲部23bに到達して小曲部23bを曲りきれずに屈曲管部23の出口部周辺で滞留したり、更に大曲部23aに沿って一部逆流(跳ね戻り)したりすることによって、屈曲管部23の出口部が部分的に排水22で塞がれて(部分的に満管状態となって、或いは、屈曲管部23の出口部が水膜で塞がれて)、空気の通路が失われ、直管部21内に負圧が生じるような不具合の発生が防止される。
【0125】
ここで、上記作用を確実に行なわせて、排水配管内部の負圧発生を確実に防止し、排水性能(搬送性能)を向上させるためには、閉塞防止機構24がどのようなものであるのかが極めて重要になる。そこで、閉塞防止機構24の構造を細部に至るまで見直して高度に洗練されたものにする必要がある。
【0126】
この実施例では、より狭いスペースへの設置が可能で、しかも、より高い排水性能(搬送性能)が得られるような高機能な配管構造を得るために、閉塞防止機構24を以下のようにしている。
【0127】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0128】
(効果1)
排水機器と排水枡69または排水縦管71との間を接続する排水配管の途中に閉塞防止機構24を設けることにより、排水配管の内部に負圧が発生し難くなるようにすることができる。特に、排水配管の屈曲部分Aにおける、直管部21の屈曲管部23との接続部近傍に上記した閉塞防止機構24を設けることにより、閉塞防止機構24を最も負圧が発生し易い場所に効率的に配置することができる。
【0129】
そして、閉塞防止機構24を、排水22の流れを整える整流部とすることにより、直管部21の前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22を、狭いスペースの中で無理なく大曲部23a(の屈曲開始部25)へ向かう流れ(旋回流)に方向転換することができるので、流れを大きく乱すことなく最も効率的且つスムーズに屈曲管部23の大曲部23aへ向けて案内することが可能となる。よって、直管部21を大幅に短縮することが可能となり、直管部21が床下空間52に設けられる場合には、床ふところ深さを圧縮することができる。
【0130】
しかも、閉塞防止機構24の整流部を、直管部21の内壁に沿い、少なくとも螺旋の一部を構成するように延びる螺旋羽根26とすることにより、直管部21の前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22が大曲部23a(の屈曲開始部25)へ向かう旋回流となり、この旋回流の中心部には、必要な空気芯(空気通路)が確保されるので、直管部21内に、空気の通路が失われることによる負圧が発生しないようにすることも可能となる。
【0131】
以って、より狭いスペースに設置が可能で、且つ、より高い排水性能(搬送性能)が得られるような高機能な配管構造を実現することが可能となる。
【0132】
更に、閉塞防止機構24の整流部を、排水22の流れを屈曲管部23の大曲部23aの屈曲開始部25へ向かうように調整可能な螺旋羽根26とすることにより、屈曲開始部25をピンポイントに狙って、排水22の流れを屈曲開始部25へ向け高精度に案内させることが可能となる。よって、直管部21を最大限に短縮することが可能となる。
【0133】
(効果2)
また、閉塞防止機構24の整流部としての螺旋羽根26が、直管部21の後側の半周壁部分21aに、排水22を流すのに最低限必要な円形断面の最低必要通路部27を確保した残りの部分に設けられることにより、後側の半周壁部分21a寄りの部分に排水22の流れを確保すると共に、排水22を屈曲管部23の大曲部23aへ向かわせるのに必要な最低必要通路部27を確保することができると共に、螺旋羽根26が最低必要通路部27内に存在しないようにして、螺旋羽根26が直管部21における詰まりの原因となるのを防止することができる。
【0134】
なお、螺旋羽根26に案内された排水22は、慣性によって、螺旋羽根26の延長軌跡にほぼ沿うように屈曲管部23の大曲部23aの屈曲開始部25へ向けて流れることとなるので、螺旋羽根26の一部が後側の半周壁部分21aで欠落していても特に支障はない。
【0135】
(効果3)
そして、閉塞防止機構24の整流部としての螺旋羽根26が、前側の半周壁部分21bを越えて後側の半周壁部分21aへハミ出さないようにすることにより、直管部21の後側の半周壁部分21aに沿って流れてきた排水22に対しては、流れを妨げることなく、屈曲管部23の大曲部23aへ向けてそのまま流すようにすることが可能となる。
【0136】
これに対し、前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22は、螺旋羽根26によってほぼ全てを屈曲管部23の大曲部23aへ向けて方向転換させることが可能となる。これにより、螺旋羽根26の周方向に対する設置範囲を、整流効果が最大限に得られるように最適化することが可能となる。
【0137】
(効果4)
更に、閉塞防止機構24の整流部としての螺旋羽根26が、直管部21の内面の管軸と垂直な方向に対し、排水22の流れの下流側へ向けて傾斜する取付角度31を有して設けられることにより、前側の半周壁部分21bに沿って流れてきた排水22を大曲部23aへ向けて方向転換させる際に、螺旋羽根26が排水22に与える抵抗を少なくして、騒音の発生を抑制することができるようになると共に、螺旋羽根26の上流側の面と直管部21の内面とのコーナー部分に排水22や排水22に含まれる固形物が溜まるのを防止することができる。
【0138】
(効果5)
そして、閉塞防止機構24を、接続用最小長さ32の範囲内に設置することにより、直管部21の上流側に接続される排水機器に対して閉塞防止機構24が干渉されないようにすることができる。以って、排水配管に閉塞防止機構24が設置できない不具合をなくし、排水配管を確実に高機能化することが可能となる。
【0139】
(効果6)
更に、直管部21の上流側に設けられる排水機器が床面53上に設置された便器54であり、直管部21および屈曲管部23が、便器54の排出口59に接続されると共に、床面53を貫通して床下空間52へ延び、更に、床下空間52に沿って横方向へ方向転換されるトイレ用配管64を構成することにより、一気に大量の汚水が流される(瞬間最大流量が大きい)ようになっている近年の節水型の便器54に接続され、しかも、より狭小化されている近年の住宅の床下空間52内に配設されることで、内部に負圧が発生され易くなっている過酷な状況下の排水配管であっても、効果的に負圧の発生を防止して、いわゆる自己サイホン現象による便器54の封水の減少を確実に抑制することができるようになる。
【0140】
(効果7)
また、直管部の上流側に設けられる排水機器が、洗面台55、浴槽56、キッチン流台57、洗濯機58の少なくともいずれかであり、直管部21および屈曲管部23が、洗面用配管65、風呂用配管66、台所用配管67、洗濯機用配管68の少なくともいずれかを構成することにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0141】
(効果8)
また、少なくとも直管部21の一部に、閉塞防止機構24を一体または別体に有する直管部材36を設けることにより、部分的な閉塞による負圧の発生が起こり難い排水配管を容易且つ確実に構築することが可能となる。
【0142】
そして、直管部材36の出口部に、(少なくとも屈曲管部23を有する)エルボ部材35を設けることにより、最も部分的な閉塞が発生し易い箇所の1つである屈曲部分Aを、容易且つ確実に閉塞し難くすることができる。よって、排水配管を容易に高機能化することが可能となる。
【0143】
更に、上記した直管部材36とエルボ部材35とを別部材として構成することにより、エルボ部材35および直管部材36のそれぞれの形状を単純化できるため、生産性を向上すると共に、製造コストを下げることができる。
【0144】
また、既設配管に対して、上記エルボ部材35および直管部材36を取付けることで、既設配管の性能向上を図ることができる。
【0145】
(効果9)
そして、エルボ部材35と直管部材36との接続部37の外周面が面一となるように構成されたことにより、現場に設けられた既存の開口部(床開口部など)に対し、容易にエルボ部材35や直管部材36を通して設置することができるようになるので、施工性を向上することができる。
【0146】
なお、構造的には、
図8に示すように、エルボ部材35の入口部に、直管部材36の出口部を収容可能な受口部34bを設けることにより、エルボ部材35と直管部材36との外径寸法が異なるようにすることもできる。この場合には、必要に応じて、現場に設けられた既存の開口部(床開口部など)を拡げることによって、問題なく使用することができる。
【0147】
(効果10)
更に、上記した直管部材36が、閉塞防止機構24を設ける接続用最小長さ32の部分よりも上流側に、長さ調節のために切断可能な切断代部41を有することにより、現場の状況に合わせて切断代部41を切断して用いることで、一種類の直管部材36で幅広く対応することが可能となる。
【0148】
(効果11)
加えて、屈曲管部23と直管部21とを一体に有する直管一体型エルボ部材43に対して閉塞防止機構24を備えた別付整流部材44を取付可能に構成したことにより、別付整流部材44の形状や構造が単純化できるため、生産性を向上すると共に、製造コストを下げることができる。