特許第5965188号(P5965188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965188
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】光反射成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20160721BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20160721BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20160721BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08J5/00CFJ
   C08L71/12
   C08L25/12
   C08K5/101
   F21S8/10 381
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-83863(P2012-83863)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-213132(P2013-213132A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
(72)【発明者】
【氏名】古河 弘昭
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/134608(WO,A1)
【文献】 特開平10−235643(JP,A)
【文献】 特開2009−275126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00
C08K 5/101
C08L 25/12
C08L 71/12
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を成形して得られる光反射成形体であって、
前記樹脂組成物が、
ポリフェニレンエーテル(A)50〜95質量%と、
スチレン系樹脂(B)49.9〜0質量%と、
下記式(α)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)0.1〜5質量%と
前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、更に、融点200℃以上の熱安定剤(D)0.1〜5質量部
を含有し、
前記(B)成分が粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まず、
前記光反射成形体が表面に鏡面部分を有し、該鏡面部分の面積52.4mm2内に存在する白斑(直径30μm以上の窪みを有する突起物を指す)の個数が、30個以下である、光反射成形体。
【化1】
(式(α)中、Raは水素原子又はメチル基を示し、Rbは炭素数5〜22の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はシクロアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記(B)成分がゴム強化されていないスチレン系樹脂である、請求項1に記載の光反射成形体。
【請求項3】
前記(B)成分が、ポリスチレン及びスチレン−アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の光反射成形体。
【請求項4】
前記(B)成分がスチレン−アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)であり、該AS樹脂におけるアクリロニトリル(AN)含有量が5〜15質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【請求項5】
前記(C)成分が、ステアリルアクリレートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【請求項6】
前記(D)成分が、リン系熱安定剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【請求項7】
前記リン系熱安定剤が3,9−ビス(2,6−ジーter-ブチルー4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファピロ[5,5]ウンデカンである、請求項6に記載の光反射成形体。
【請求項8】
前記(D)成分が、ヒンダードフェノール系熱安定剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【請求項9】
前記樹脂組成物が、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、更に、スチレン系熱可塑性エラストマー(E)0.1〜25質量部を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の光反射成形体に用いる樹脂組成物の製造方法であって、
ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)とを含有する原料を、二軸押出機を用いて溶融混練する工程を含み、
前記原料の一部として、予め前記(A)成分の少なくとも一部と前記(C)成分とを、二軸押出機を用いて溶融混練して製造したマスターバッチ(MB)を用いる、光反射成形体用樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
自動車ランプリフレクター成形体として用いる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【請求項12】
自動車ランプエクステンション成形体として用いる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光反射成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ランプ周りの部品等、光を反射する樹脂製部品に用いられる材料として、主に、不飽和ポリエステル樹脂、バルクモールディングコンパウンド(BMC)等の熱硬化性樹脂、又はアルミニウム製材料が従来から広く使用されている。熱硬化性樹脂はアルミニウム製材料と比較して軽量である点で優れているが、それでも比重が2.0を超えるために一層の軽量化が求められている。また、熱硬化性樹脂に特有の、成形品の後処理作業の煩雑さや、粉塵などによる作業環境汚染などの問題もある。そのため、熱硬化性樹脂やアルミニウム製材料から、ダイレクトでアルミ蒸着が可能な、ポリエーテルイミドや高耐熱ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂への材料の転換が進んでいる。しかし、これらの熱可塑性樹脂でもまだ軽量性の面で不十分であり、環境・省エネルギー面の配慮から、更なる低比重の材料が望まれている。
【0003】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、機械的物性、電気的特性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性に優れると共に、低比重で、吸水性が低く、且つ寸法安定性が良好である等の多様な特性を有している。そのため、ポリフェニレンエーテル樹脂は、家電製品、OA機器、事務機、情報機器や自動車などの材料として、幅広く利用されている。また、高い耐熱性や剛性が要求される光反射成形体用途においても、今後、更にポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が高い比率で設計された樹脂組成物の需要が見込まれている。また、こうした用途においては、良好な成形流動性と、極めて高い光反射特性と、ダイレクトでのアルミ蒸着性とが要求される場合も少なくなく、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物からなる成形品が、良好な表面外観及び輝度感、更には、熱源近くの高温条件下で使用されることで樹脂材料から発せられる曇りガス成分(アウトガス)によるレンズ等の曇り(フォギング)が生じ難い特性を有すること等が期待されている。
【0004】
ポリフェニレンエーテル樹脂を含む熱可塑性樹脂の耐熱性及び、機械的物性を改良する方法としては、ガラス繊維、炭素繊維、マイカやタルク等の無機充填剤を添加する方法が一般的である。しかし上記の方法では、少量の無機充填剤の添加でも、樹脂が本来有する靭性や、成形品の表面光沢が著しく損なわれるため、上記の方法で得られた樹脂組成物は、使用できない用途が多く存在し、特に光反射成形体用途における適用は極めて困難である。
【0005】
ポリフェニレンエーテル樹脂に耐衝撃性を付与する方法として、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)の配合が広く行なわれているが、上述した無機フィラーを添加した場合と同様、少量のゴム強化ポリスチレンの配合であっても、得られる成形品の輝度感は損なわれる傾向にある。
【0006】
ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いてなる自動車ランプ部材に関する技術として、既に、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルとのブレンド物による、軽量性、耐熱性、流動性及び機械物性のバランスに優れた樹脂組成物について開示がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
比較的高濃度のポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物において、特定の安定剤を添加することによって、樹脂の耐熱老化性やフィルム成形品外観を改良した、自動車ランプ部品用途等に好適な樹脂組成物の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、ポリフェニレンエーテル樹脂を、ステアリルアクリレートのようなアクリル酸エステル等で変性することで、従来のポリフェニレンエーテル樹脂の熱安定性等を改良する技術についても開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−079540号公報
【特許文献2】特開2009−221387号公報
【特許文献3】特開平7−097442号公報
【特許文献4】特開平7−145282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の樹脂組成物は、液晶ポリエステルの添加によって、耐熱性と成形流動性とに優れる反面、一方では、結晶性ポリマーを添加することによって、成形品の輝度感が損なわれる恐れがあり、光反射成形体用途へ適用する材料としては、必ずしも十分ではなく、改良の余地がある。
【0011】
特許文献2に記載の樹脂組成物は、特定の安定剤を添加することによって、耐熱老化性は改善されるが、特許文献2には、アルミ蒸着後の成形体におけるフォギング性や白斑に関する記述や、その改良に関する記述は一切見られず、特許請求の範囲や実施例も、光反射成形体におけるアルミ蒸着後のフォギング性や白斑の改良に有効な技術についても検討されていない。従って、特許文献2は、光反射成形体用途における樹脂組成物の好ましい改良技術について示されたものではない。
【0012】
特許文献3及び4に記載の樹脂組成物は、ステアリルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物等でポリフェニレンエーテル樹脂を変性することで、従来のポリフェニレンエーテル樹脂と比較して、高温成形条件下における、成形品へのシルバー発生が抑制される等の効果が示されているが、特許文献3及び4には、アルミ蒸着後の成形体におけるフォギング性、白斑やその改良に関する記述は一切見られず、また、特許請求の範囲や実施例においても、光反射成形体への適用を示唆する記載が一切ない。従って、特許文献3及び4は、光反射成形体用途における樹脂組成物の好ましい改良技術について示されたものではない。
【0013】
更には、従来から提案されている、自動車ランプ部材等をはじめとする、光反射成形体向けのポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、様々な用途への展開が可能である反面、アルミ蒸着後の成形体表面に白斑(ポリフェニレンエーテル樹脂組成物特有の、微細なガスの抜けによって成形時に生じる直径30μm以上のクレーター形状の跡)が多数認められることから、輝度感には優れるものの、外観に劣り、光反射成形体用途へ適用する材料としては、やはり、必ずしも十分とは言えない。
【0014】
そこで、本発明は、低比重で、アルミ蒸着後の成形体表面の白斑が極めて少なく、アルミ蒸着外観に優れた光反射成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、ポリフェニレンエーテル50〜95質量%と、特定粒子径以上のゴム粒子を含まないスチレン系樹脂49.9〜0質量%と、特定の(メタ)アクリル酸エステル化合物0.1〜5質量%とを含有する樹脂組成物から形成され、成形体表面の鏡面部分における特定の面積内に存在する白斑(直径30μm以上のクレーター状の窪みを有する突起物を指す)が特定個数以下である光反射成形体により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明は、以下の通りである。
【0017】
[1]
樹脂組成物を成形して得られる光反射成形体であって、
前記樹脂組成物が、
ポリフェニレンエーテル(A)50〜95質量%と、
スチレン系樹脂(B)49.9〜0質量%と、
下記式(α)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)0.1〜5質量%と
を含有し、
前記(B)成分が粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まず、
前記光反射成形体が表面に鏡面部分を有し、該鏡面部分の面積52.4mm2内に存在する白斑(直径30μm以上の窪みを有する突起物を指す)の個数が、30個以下である、光反射成形体。
【0018】
【化1】
(式(α)中、Raは水素原子又はメチル基を示し、Rbは炭素数5〜22の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はシクロアルキル基を示す。)
[2]
前記(B)成分がゴム強化されていないスチレン系樹脂である、[1]に記載の光反射成形体。
【0019】
[3]
前記(B)成分が、ポリスチレン及びスチレン−アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の光反射成形体。
【0020】
[4]
前記(B)成分がスチレン−アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)であり、該AS樹脂におけるアクリロニトリル(AN)含有量が5〜15質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光反射成形体。
【0021】
[5]
前記(C)成分が、ステアリルアクリレートである、[1]〜[4]のいずれかに記載の光反射成形体。
【0022】
[6]
前記樹脂組成物が、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、更に、融点200℃以上の熱安定剤(D)0.1〜5質量部を含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の光反射成形体。
【0023】
[7]
前記(D)成分が、リン系熱安定剤である、[6]に記載の光反射成形体。
【0024】
[8]
前記(D)成分が、ヒンダードフェノール系熱安定剤である、[6]に記載の光反射成形体。
【0025】
[9]
前記樹脂組成物が、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、更に、スチレン系熱可塑性エラストマー(E)0.1〜25質量部を含有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の光反射成形体。
【0026】
[10]
[1]〜[9]のいずれかに記載の光反射成形体に用いる樹脂組成物の製造方法であって、
ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)とを含有する原料を、二軸押出機を用いて溶融混練する工程を含み、
前記原料の一部として、予め前記(A)成分の少なくとも一部と前記(C)成分とを、二軸押出機を用いて溶融混練して製造したマスターバッチ(MB)を用いる、光反射成形体用樹脂組成物の製造方法。
【0027】
[11]
前記樹脂組成物が、[10]に記載の製造方法で得られる樹脂組成物である、[1]〜[9]のいずれかに記載の光反射成形体。
【0028】
[12]
自動車ランプリフレクター成形体として用いる、[1]〜[9]及び[11]のいずれかに記載の光反射成形体。
【0029】
[13]
自動車ランプエクステンション成形体として用いる、[1]〜[9]及び[11]のいずれかに記載の光反射成形体。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、低比重で、アルミ蒸着後の成形体表面の白斑が極めて少なく、アルミ蒸着外観や、フォギング性にも優れた光反射成形体が得られ、該光反射成形体は、自動車のランプリフレクターやランプエクステンション成形体等の光反射成形体に良好に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0032】
[光反射成形体]
本実施の形態に係る光反射成形体は、樹脂組成物を成形して得られる光反射成形体(以下、単に「成形体」とも記す。)であって、前記樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル(A)50〜95質量%と、スチレン系樹脂(B)49.9〜0質量%と、下記式(α)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)0.1〜5質量%とを含有し、前記(B)成分が粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まず、前記光反射成形体が表面に鏡面部分を有し、該鏡面部分の面積52.4mm2内に存在する白斑(直径30μm以上の窪みを有する突起物を指す)の個数が、30個以下である。
【0033】
【化2】
(式(α)中、Raは水素原子又はメチル基を示し、Rbは炭素数5〜22の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はシクロアルキル基を示す。)
《樹脂組成物》
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(A)50〜95質量%と、上記特定のスチレン系樹脂(B)49.9〜0質量%と、上記式(α)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)0.1〜5質量%とを含有する。
【0034】
本発明者らは、上記の樹脂組成物を使用することにより、低比重で、良好な耐熱性と流動性とのバランスを有して、成形体光沢面の輝度感にも優れて、更にはアルミ蒸着後の成形体表面の白斑が極めて少なく、アルミ蒸着外観や、フォギング性にも優れた光反射成形体が得られることを見出した。以下、上記の樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。
【0035】
<ポリフェニレンエーテル(A)>
本実施の形態に用いるポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、0.25〜0.55dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.25〜0.45dl/gで、さらに好ましくは0.30〜0.42dl/gであり、特に好ましくは0.30〜0.40dL/gの範囲である。ポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、十分な機械物性の観点から0.25dl/g以上が好ましく、成形加工性と成形体の輝度感との観点から0.55dl/g以下が好ましい。なお、本実施の形態において、還元粘度は、クロロホルム溶媒を用いて30℃で、0.5g/dl溶液で測定し、得られた値である。
【0036】
ポリフェニレンエーテル(A)は、下記式(1)の〔a〕又は〔b〕を繰り返し単位とし、構成単位が一般式(1)の〔a〕又は〔b〕からなる単独重合体(ホモポリマー)、あるいは共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
【化4】
上記式(1)の〔a〕及び〔b〕中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、並びにハロゲン原子及び水素原子などの一価の残基であることが好ましい。但し、かかる場合、R5及びR6が同時に水素原子である場合を除く。また、前記アルキル基のより好ましい炭素数は1〜3であり、前記アリール基のより好ましい炭素数は6〜8であり、前記一価の残基の中でもより好ましくは水素原子である。なお、上記(1)の〔a〕及び〔b〕における繰り返し単位数については、ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布により様々であるため、特に制限されることはない。
【0039】
ポリフェニレンエーテル(A)の単独重合体としては、以下に制限されないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル及びポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられ、中でも原料入手の容易性や加工性の観点からポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
【0040】
ポリフェニレンエーテル(A)の共重合体としては、以下に制限されないが、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、及び2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。中でも、原料入手の容易性と加工性の観点から2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、物性改良の観点から2,6−ジメチルフェノール90〜70質量%と2,3,6−トリメチルフェノール10〜30質量%との共重合体がより好ましい。
【0041】
ポリフェニレンエーテル(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0042】
また、ポリフェニレンエーテル(A)は、本実施の形態に所望の効果を逸脱しない限度で、他の種々のフェニレンエーテル単位を部分構造として含んでいてもよい。かかるフェニレンエーテル単位としては、以下に制限されないが、例えば、特開平01−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位が挙げられる。
【0043】
また、ポリフェニレンエーテルの主鎖中にジフェノキノン等が少量結合していてもよい。さらに、ポリフェニレンエーテルの一部又は全部を、アシル官能基とカルボン酸、酸無水物、酸アミド、イミド、アミン、オルトエステル、ヒドロキシ及びカルボン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種以上とを含む官能化剤と反応(変性)させることにより官能化ポリフェニレンエーテルとしてもよい。
【0044】
ポリフェニレンエーテル(A)の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、好ましくは2.0〜5.5であり、より好ましくは2.5〜4.5、さらにより好ましくは3.0〜4.5である。該Mw/Mn値は、樹脂組成物の成形加工性の観点から2.0以上が好ましく、樹脂組成物の機械物性の観点から5.5以下が好ましい。
【0045】
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ポリスチレン換算分子量から得られる。
【0046】
ポリフェニレンエーテル(A)の残留揮発分は、成形体の表面外観改良の観点から0.3質量%(3000ppm)以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%(1000ppm)以下である。ここで、前記残留揮発分が0.3質量%以下であるポリフェニレンエーテルは、以下に制限されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル重合後の乾燥温度や乾燥時間を調節することによって、好適に製造できる。前記乾燥温度として、40〜200℃が挙げられ、好ましくは80〜180℃、より好ましくは120〜170℃である。前記乾燥温度は、乾燥効率の観点から40℃以上が好ましく、溶融による焼け付きや劣化防止の観点から200℃以下が好ましい。
【0047】
前記乾燥時間として、例えば、0.5〜72時間が挙げられ、好ましくは2〜48時間、より好ましくは6〜24時間である。ポリフェニレンエーテル(A)の残留揮発分を比較的短時間で除去しようとする場合は、高温でポリフェニレンエーテル(A)を乾燥させることが好ましい。かかる場合には、熱による劣化を防止するため、窒素雰囲気中での乾燥や真空乾燥機による乾燥が好適である。
【0048】
重合後の乾燥によって、ポリフェニレンエーテル(A)の残留揮発分を低減させ、上記した残留揮発分の範囲内にするためには、重合に悪影響を及ぼさず、環境にも殆ど悪影響を及ぼさず、且つ比較的沸点が低くて揮発させやすい重合溶剤を予め用いて重合させることが好ましい。前記重合溶剤としては、以下に制限されないが、例えばトルエンが挙げられる。より具体的に説明すると、公知の重合方法により、還元粘度が上記の範囲内であるポリフェニレンエーテルを重合した後、得られたポリマーを、真空乾燥機などを用いて十分に乾燥することによって、残留揮発分が上記の範囲内であるポリフェニレンエーテルを製造できる。なお、上記した好ましい重合溶剤以外のものを使用しても、乾燥を十分に行なうことにより、残留揮発分が上記の範囲内であるポリフェニレンエーテルを製造することができる。
【0049】
本実施の形態に用いるポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中において、50〜95質量%の範囲内であり、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは65〜85質量%の範囲内である。ポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、本用途に要求される耐熱性の観点から、50質量%以上必要であり、成形体の外観及び輝度感保持の観点から、95質量%以下である。
【0050】
<スチレン系樹脂(B)>
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、成形加工性及び成形体の外観、輝度感を向上させる観点から、スチレン系樹脂(B)(以下、単に「(B)成分」と言うこともある)を、49.9〜0質量%含有する。該(B)成分の含有量は、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜35質量%の範囲内である。スチレン系樹脂(B)の含有量は、本用途に要求される耐熱性の観点から、49.9質量%以下であり、成形体の輝度感及び成形流動性改良等の観点から、3質量%以上が好ましい。
【0051】
また、本実施の形態に用いる樹脂組成物にスチレン系樹脂(B)を含有させる場合、該スチレン系樹脂(B)は、粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まない。
【0052】
スチレン系樹脂(B)としては、ポリスチレン及びスチレン−アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0053】
本実施の形態に用いるスチレン系樹脂(B)には、耐衝撃性等の改良の観点から、ブタジエン、イソプレン等の重合体からなるゴム粒子を含んでいてもよいが、その場合、スチレン系樹脂(B)中におけるゴム粒子の分散粒子径(以下、単に「粒子径」とも記す。)は1.0μm未満である。該ゴム粒子の分散粒子径は、好ましくは0.8μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。成形体の十分な輝度感保持の観点から、本実施の形態に用いるスチレン系樹脂(B)は、上述したとおり、粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まない。また、スチレン系樹脂(B)中に粒子径1.0μm未満のゴム粒子が含まれる場合、スチレン系樹脂(B)中におけるゴム粒子の平均粒子径は0.01〜0.6μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.6μmであり、さらにより好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0054】
なお、本実施の形態において、ゴム粒子の分散粒子径は、原料であるスチレン系樹脂中あるいは、樹脂組成物中の、分散ゴム粒子を、透過型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。また、本実施の形態において、ゴム粒子の平均粒子径は、原料であるスチレン系樹脂中あるいは、樹脂組成物中の、分散ゴム粒子を、透過型電子顕微鏡で観察し、その観察視野内から無差別に抽出した分散ゴム粒子200個の粒子径を数平均して算出した値とする。
【0055】
このような(B)成分を、ポリフェニレンエーテル(A)へ添加することによって、ポリフェニレンエーテル(A)の有する耐熱性を極力損なわせずに、成形時の溶融流動性を改良して、なおかつ成形体の外観や輝度感を改良することが可能である。
【0056】
スチレン系樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。本実施の形態において、スチレン系樹脂(B)を2種以上併用する場合、いずれのスチレン系樹脂(B)も粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まない。
【0057】
〔ゴム強化されていないスチレン系樹脂〕
本実施の形態に使用する(B)成分は、ゴム強化されていないスチレン系樹脂であることが好ましい。
【0058】
本実施の形態に使用する、ゴム強化されていないスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、又はスチレン系化合物と該スチレン系化合物と共重合可能な化合物とを、ブタジエン、イソプレン等からなるゴム質重合体の非存在下で重合して得られる合成樹脂である。スチレン系化合物とは、下記式(2)で表される化合物を意味する。
【0059】
【化5】
上記式(2)中、Rは水素、低級アルキル又はハロゲンであり、Zはビニル基、水素原子、ハロゲン及び低級アルキル基よりなる群から選択される1種以上であり、pは0〜5の整数である。
【0060】
上記式(2)で表される具体例としては、以下に制限されないが、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレートやエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物;無水マレイン酸等の酸無水物などが挙げられ、スチレン系化合物と共に使用される。
【0061】
中でも、好ましいゴム強化されていないスチレン系樹脂は、スチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂である。
【0062】
上記のAS樹脂に占めるアクリロニトリル(AN)単位の含有量としては、得られる成形体の表面外観を改良し、且つポリフェニレンエーテルとの十分な混和性を確保するという観点から、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは5〜12質量%、更により好ましくは、7〜10質量%である。AS樹脂に占めるAN単位含有量を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、AS樹脂を製造する際のANの仕込み量を調整する方法が挙げられる。
【0063】
ゴム強化されていないスチレン系樹脂としては、アクリロニトリル(AN)単位含有量5〜15質量%のスチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂であることがより好ましい。
【0064】
本実施の形態に使用する、ゴム強化されていないスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0065】
本実施の形態に使用する、ゴム強化されていないスチレン系樹脂の、樹脂組成物全体の内に占める割合は、3〜40質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5〜35質量%であり、さらにより好ましくは10〜35質量%の範囲内である。ゴム強化されていないスチレン系樹脂は、成形体の外観改良と成形流動性改良の観点から、3質量%以上の配合が好ましく、十分な耐熱性の観点から、40質量%以下の配合が好ましい。
【0066】
<(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)>
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、良好な耐熱性と流動性とのバランスの付与及び、アルミ蒸着後の成形体表面の外観改良(白斑の低減)の観点から、下記式(α)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)を、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)50〜95質量%、スチレン系樹脂(B)49.9〜0質量%に対して、0.1〜5質量%含有する。なお、本実施の形態において、「アクリル酸エステル化合物」と「メタクリル酸エステル化合物」とをまとめて「(メタ)アクリル酸エステル化合物」とも標記する。
【0067】
【化6】
(式(α)中、Raは水素原子又はメチル基を示し、Rbは炭素数5〜22の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はシクロアルキル基を示す。)
本実施の形態に用いる樹脂組成物において、前記(C)成分の含有量は、好ましくは0.5〜4質量%であり、より好ましくは1〜3質量%である。
【0068】
本実施の形態に用いる樹脂組成物において、前記(C)成分の含有量は、本用途に要求される十分な白斑低減の観点から、0.1質量%以上が好ましく、成形体の外観保持(シルバー発生抑制)の観点から、5質量%以下が好ましい。
【0069】
上記式(α)中、Rbで示された基おける炭素数は12〜20であることが好ましい。成形体の表面外観改良(白斑低減)の観点から、上記式(α)中、Rbで示された基おける炭素数は5以上であり、樹脂組成物の十分な熱安定性保持の観点から、該炭素数は22以下である。
【0070】
本実施の形態に使用するアクリル酸エステル化合物の具体例としては、イソオクチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート等が挙げられる。
【0071】
本実施の形態に使用するメタクリル酸エステル化合物の具体例としては、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
【0072】
本実施の形態に使用する(C)成分の中でも、十分な性能付与の観点から特に好ましいのは、ステアリルアクリレートである。
【0073】
上記(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0074】
<熱安定剤(D)>
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、樹脂組成物の熱安定性、並びに成形体の表面外観及び輝度感を向上させる観点から、さらに熱安定剤(D)を含有することが好ましい。
【0075】
本実施の形態に用いる樹脂組成物において、(D)成分の含有量は、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部であり、さらにより好ましくは0.2〜2質量部の範囲内である。該(D)成分の含有量は、十分な成形体外観改良の観点から、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以下が好ましい。
【0076】
本実施の形態に使用する(D)成分の熱安定剤の融点は、200℃以上であることが好ましく、210〜310℃であることがより好ましく、220〜270℃であることがさらに好ましい。
【0077】
なお、本実施の形態において、(D)成分の融点は、融点測定器 型式:B−545(柴田科学社製)により測定した値である。
【0078】
本実施の形態に使用する(D)成分の熱安定剤としては、熱安定効果の観点から、ヒンダードフェノール系、リン系の熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、具体的には、3,3‘,3“,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a‘,a“−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。リン系熱安定剤としては、具体的には、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0079】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(E)>
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、樹脂組成物の耐衝撃性をさせる観点から、さらにスチレン系熱可塑性エラストマー(E)を含有することが好ましい。本実施の形態に用いる樹脂組成物において、(E)成分の含有量は、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜25質量部の割合であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20質量部であり、さらにより好ましくは1〜15質量部の範囲内である。
【0080】
該(E)成分の含有量は、耐衝撃性付与の観点から、0.1質量部以上が好ましく、十分な耐熱性、剛性保持の観点から、25質量部以下が好ましい。
【0081】
スチレン系熱可塑性エラストマー(E)とは、スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを有するブロック共重合体(以下、「スチレンブロック−共役ジエン化合物ブロック共重合体」とも記す。)の水素添加物である。前記共役ジエン化合物ブロックは、熱安定性の観点から、少なくとも水素添加率50%以上で水素添加されたものが好ましい。該水素添加率はより好ましくは80%以上、更により好ましくは95%以上である。
【0082】
スチレン系熱可塑性エラストマー(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0083】
前記共役ジエン化合物ブロックとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン・ブチレン)、ポリ(エチレン・プロピレン)及びビニル−ポリイソプレンが挙げられる。前記共役ジエン化合物ブロックは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
ブロック共重合体を構成する繰り返し単位の配列の様式は、リニアタイプでもラジアルタイプでもよい。また、ポリスチレンブロック及びゴム中間ブロックにより構成されるブロック構造は二型、三型及び四型のいずれであってもよい。中でも、本実施の形態に所望の効果を十分に発揮し得る観点から、好ましくは、ポリスチレン−ポリ(エチレン・ブチレン)−ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体である。なお、共役ジエン化合物ブロック中に30質量%を超えない範囲でブタジエン単位が含まれてもよい。
【0085】
また、本実施の形態に用いる樹脂組成物において、(E)成分として、スチレン系熱可塑性エラストマーに、カルボニル基やアミノ基などの官能基を導入してなる、官能化されたスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることも可能である。
【0086】
前記カルボニル基は、不飽和カルボン酸又はその官能的誘導体で変性することにより導入される。不飽和カルボン酸又はその官能的誘導体の例としては、以下に制限されないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、及びエンド−シス−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、並びにこれらジカルボン酸の無水物、エステル化合物、アミド化合物及びイミド化合物、更にはアクリル酸及びメタクリル酸、並びにこれらモノカルボン酸類のエステル化合物及びアミド化合物が挙げられる。中でも、成形体の表面外観を保持し、且つ耐衝撃性を付与する観点から、好ましくは無水マレイン酸である。
【0087】
上記のアミノ基は、イミダゾリジノン化合物やピロリドン化合物などをスチレン系熱可塑性エラストマーと反応させることにより導入させる。
【0088】
本実施の形態に用いる樹脂組成物において、成形体光沢改良及び一層の耐衝撃性付与と、成形体の層剥離防止との観点から、(E)成分として、結合スチレン量が45〜80質量%のスチレン−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物を含有することが好ましい。
【0089】
<その他>
本実施の形態に用いる樹脂組成物には、成形体の輝度感保持の観点から、強化剤としての無機フィラーは含まないことが好ましい。強化剤としての無機フィラーとしては、一般的に、熱可塑性樹脂の補強に用いられるものであり、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0090】
本実施の形態に用いる樹脂組成物には、成形体の輝度感保持の観点から、結晶性ポリマーを含まないことが好ましい。結晶性ポリマーとしては、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0091】
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、軽量化による環境負荷低減メリットと、十分な性能(耐熱性、機械強度、成形体外観等)を保持した材料設計との兼ね合いの観点から、比重が1.00〜1.12の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.04〜1.10の範囲内であり、さらに好ましくは1.05〜1.08の範囲内である。
【0092】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施の形態に用いる樹脂組成物は、例えば、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分、必要に応じて前記(D)成分等の他の成分を含有する原料を、溶融混錬することにより製造することができる。本実施の形態の光反射成形体に用いる樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されないが、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを含有する原料を、二軸押出機を用いて溶融混練する工程を含み、前記原料の一部として、予め、前記(A)成分の少なくとも一部と前記(C)成分とを二軸押出機により溶融混練して製造したマスターバッチ(MB)を用いることが好ましい。このような製造方法で得られる樹脂組成物は、よりいっそうの成形体の白斑低減の観点から好ましい。
【0093】
また、本実施の形態の所望の効果を十分に発揮し得る樹脂組成物を大量且つ安定的に得るという観点から、二軸押出機を用いることが好適である。一例として、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、L/D=44);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いた場合に、シリンダー温度270〜340℃、スクリュー回転数150〜450rpm、及びベント真空度11.0〜1.0kPaの条件で溶融混練する方法が挙げられる。
【0094】
本実施の形態に用いる樹脂組成物を、より大型(スクリュー径40〜90mm)の二軸押出機を用いて製造する際に注意すべきは、押出樹脂ペレット中に押出時に生じた、前記(A)成分から生じるゲルや炭化物が混入することで、成形体の表面外観や輝度感を低下させる原因となる場合もある。そこで、前記(A)成分を最上流(トップフィード)の原料投入口から投入して、最上流投入口におけるシューター内部の酸素濃度を3容量%以下に設定しておくことが好ましい。該酸素濃度はより好ましくは1容量%以下である。
【0095】
酸素濃度の調節は、原料貯蔵ホッパー内を十分に窒素置換して、原料貯蔵ホッパーから押出機原料投入口までの、フィードラインの途中を空気の出入りがないようにテープを貼って塞ぐなどして密閉性を向上させた上で、窒素フィード量の調節、ガス抜き口の開度を調節することで可能である。押出中における、ゲルや炭化物発生低減の観点から、シューター内部の酸素濃度は3容量%以下が好ましい。
【0096】
[光反射成形体の製造方法]
本実施の形態の光反射成形体は、上述の樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0097】
前記樹脂組成物を用いて光反射成形体を製造する場合の成形方法としては、以下に制限されないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形及び圧空成形が好適に挙げられ、特に成形体の外観及び輝度感の観点から、射出成形がより好適に用いられる。
【0098】
本実施の形態の光反射成形体の用途としては、プロジェクターや各種照明器具等の光源反射部品や、自動車のランプリフレクター部品や、自動車ランプエクステンション部品等が挙げられる。中でも、本実施の形態の光反射成形体は、自動車ランプリフレクター成形体や自動車ランプエクステンション成形体として用いることが好ましく、特に、自動車ランプエクステンション成形体として用いることが好ましい。
【0099】
ここで、自動車ランプエクステンション成形体とは、自動車の前照灯の光源ビームの後方にある光反射部品であるリフレクターと、ランプ前面カバーとの間に存在する比較的大型の光反射部品である。自動車ランプエクステンション成形体は、リフレクターほどの高い耐熱性は必要とされないが、成形体光沢面の良好な輝度感やアルミ蒸着後の表面外観、耐熱性と成形流動性との十分なバランス特性、軽量性(低比重の材料であること)等がよりいっそう高いレベルで要求される。
【0100】
本実施の形態の光反射成形体の成形温度は、例えば、シリンダー設定温度(最高温部)270〜340℃の範囲から選ばれ、280〜330℃が好ましく、290〜320℃がさらに好ましく、300〜320℃がさらにより好ましい。該成形温度は、十分な成形流動性の観点から270℃以上が好ましく、樹脂組成物の熱安定性の観点から340℃以下が好ましい。
【0101】
本実施の形態の光反射成形体の平均厚みは、0.8〜3.2mmの範囲から選ばれることが好ましい。該平均厚みは、1.0〜3.0mmがより好ましく、1.2〜2.5mmがさらにより好ましく、1.2〜2.0mmが特により好ましい。該平均厚みは、軽量性の観点から3.2mm以下が好ましく、十分な成形性と強度保持の観点から0.8mm以上が好ましい。
【0102】
本実施の形態の光反射成形体は、金型表面の表面粗さを極めて小さいレベル(平均表面粗度0.2μm以下)までダイヤモンドペースト等で磨き上げた鏡面成形金型を用いて成形されることが好ましい。鏡面成形金型の磨き番手は、#1000以上が好ましく、#2000以上がより好ましく、さらには#5000以上が特に好ましい。十分な鏡面外観発現の観点から、磨き番手は、#1000以上が好ましい。
【0103】
本実施の形態の光反射成形体は表面に鏡面部分を有し、該光反射成形体の鏡面部分の光沢値は、光源から発せられる光の十分な反射性と、十分な物性(耐熱性、機械強度、成形体外観等)を保持した材料設計との兼ね合いの観点から、測定角20°で測定した時に90〜140%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、90〜140%の範囲内であり、さらにより好ましくは100〜140%の範囲内である。
【0104】
本実施の形態の光反射成形体は、成形後に、その成形体表面の一部又は全部にアルミ蒸着処理が施されることが好ましい。本実施の形態に係る光反射成形体には、アルミ蒸着前に、成形体表面を活性化させることによって、アルミ膜の密着性を高められることから、予めプラズマ処理を行なうことが好ましい。また、アルミ蒸着後の成形体表面には、酸化等による外観や輝度感の低下を防止するため、プラズマ重合処理によって、二酸化珪素重合膜のコーティングを施すことが好ましい。
【0105】
本実施の形態に係る光反射成形体における、鏡面部分の一定面積(52.4mm2内に存在する白斑(直径30μm以上のクレーター状の窪みを有する突起物を指す)の個数は、良好な成形体外観保持の観点から、30個以下であり、好ましくは25個以下であり、より好ましくは20個以下であり、更により好ましくは10個以下である。
【0106】
上述した特定の樹脂組成物を用いることにより、該白斑の個数が前記範囲内である光反射成形体を得ることができる。具体的には、特に(C)成分を特定量配合することにより、該白斑の個数が前記範囲内である光反射成形体を得ることができる。
【0107】
なお、本実施の形態において、上記白斑の個数は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る光反射成形体は、成形する際に、一部、リワーク(リサイクル)材(一度成形された成形体の破砕物等)を配合して、成形することも可能である。リワーク(リサイクル)材の配合割合は、0〜40質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜25質量%であり、さらにより好ましくは5〜15質量%であり、特により好ましくは5〜10質量%の範囲内である。十分な物性及び外観保持の観点から、40質量%以下の配合とすることが好ましい。
【0109】
本実施の形態に係る光反射成形体における、フォギング性(熱源近くの高温条件下での使用において、樹脂材料から発せられる曇りガス成分によるレンズ等の曇りが生じ難い特性)は、ISO6452に準拠した装置を用いて、樹脂組成物ペレット又は成形体を用いて測定される。試料20g、170℃、24時間の試験条件で測定を行なった場合のフォギング性(試験後ガラス板のヘイズ値)は1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下である。
【実施例】
【0110】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。実施例及び比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
【0111】
[物性の測定方法]
1.白斑(直径30μm以上のクレーター)の個数
実施例及び比較例で得られたアルミ蒸着平板のアルミニウム蒸着面中央部(鏡面部分)をデジタルマイクロスコープ(型式:VHX1000、キーエンス社製)により、40倍の拡大写真を撮影した。1撮影視野(面積:52.4mm2)内に存在する直径30μm以上のクレーター状の窪みを有する突起物(成形時にガスが抜けた跡)の個数をアルミ蒸着平板5枚分すべてにおいてカウントした合計を5で割って、1撮影視野当たりの平均個数を算出した。該平均個数を白斑の個数とした。
【0112】
2.比重
実施例及び比較例で成形した、アルミ蒸着前の成形平板を一部、適当な大きさに切り出したサンプルの比重についてアルファーミラージュ社製の電子比重計SD−200Lを用いて測定した。
【0113】
3.アルミ蒸着平板のアルミニウム蒸着面の外観(目視)
実施例及び比較例で得られたアルミ蒸着平板のアルミニウム蒸着面の外観を、目視で観察し、以下のランクに応じて○〜×で評価した。
【0114】
(ランク)
◎:目視では白斑が認められず外観が極めて良好なもの。
○:目視では白斑が殆ど認められず外観が良好なもの。
×:白斑が多数認められて目立ち、外観不良が明らかであるもの。
【0115】
上記ランクにおいて、◎及び○のものが本用途においてより好適に使用可能であると判定した。
【0116】
4.フォギング性
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の押出樹脂ペレット20gをガラス製サンプル瓶の中に入れて、サンプル瓶の口の上に、サンプル瓶の口を完全に覆うように、ガラス板を載せ、内温170℃に設定したオーブン中に24時間放置した後、サンプル瓶の口を覆っていた部分のガラス板の曇りをヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0117】
評価基準としては、数値が低い値である程、アウトガスによる曇りの発生が少ないため、フォギング性に優れると判定した。
【0118】
[原材料]
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(PPE−1)還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.40dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた(以下、「PPE−1」ということもある)。
(PPE−2)還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.35dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた(以下、「PPE−2」ということもある)。
【0119】
<スチレン系樹脂(B)>
(GPPS)ゼネラルパーパスポリスチレン(ポリスチレン680〔登録商標〕、PSジャパン社製、以下、「GPPS」ということもある)を用いた。なお、ゼネラルパーパスポリスチレンはゴム成分を含まないポリスチレン、すなわちゴム強化されていないポリスチレンである。
(AS)スチレン−アクリロニトリル樹脂
以下のように製造したスチレン−アクリロニトリル樹脂を用いた。
【0120】
アクリロニトリル4.7質量部、スチレン73.3質量部、エチルベンゼン22質量部、重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート0.02質量部よりなる混合液を、2.5リットル/時間の流速で、容量5リットルの完全混合型反応機に連続的に供給し、142℃で重合を行って重合液を得た。
【0121】
得られた重合液を連続してベント付き押出機に導き、260℃、40Torrの条件下で未反応モノマー及び溶剤を除去し、ポリマーを連続して冷却固化し、細断して粒子状のスチレン−アクリロニトリル樹脂(以下、「AS」ということもある)を得た。
【0122】
このスチレン−アクリロニトリル樹脂について、赤外吸収スペクトル法により組成分析したところ、アクリロニトリル単位9質量%及びスチレン単位91質量%であった。また、このスチレン−アクリロニトリル樹脂のメルトフローレートは、78g/10分(ASTM D 1238準拠、220℃、10kg荷重で測定)であった。
【0123】
(HIPS−1)
数平均粒子径が0.2μmで、最大粒子径が0.6μmであるゴム粒子を含むゴム強化ポリスチレン(HIPS−1)を用いた。
【0124】
(HIPS−2)
数平均粒子径が0.8μmで、最大粒子径が1.3μmであるゴム粒子を含むゴム強化ポリスチレン(HIPS−2)を用いた。
【0125】
なお、本実施例において、ゴム強化ポリスチレンに含まれるゴム粒子の数平均粒子径及び最大粒子径は、ゴム強化ポリスチレンを透過型電子顕微鏡で10000倍拡大観察し、その観察視野内から無差別に抽出したゴム粒子200個の粒子径を測定し、これらの各測定値における最大値を最大粒子径とし、これらの測定値の数平均値を数平均粒子径とした。
【0126】
<アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(C)>
(ステアリルアクリレート)商品名:STA〔登録商標〕、大阪有機化学工業社製を用いた(以下、「ステアリルアクリレート」ということもある)。
(ラウリルアクリレート)商品名:LA〔登録商標〕、大阪有機化学工業社製を用いた(以下、「ラウリルアクリレート」ということもある)。
(ベンジルアクリレート)商品名:V#160〔登録商標〕、大阪有機化学工業社製を用いた(以下、「ベンジルアクリレート」ということもある)。
(ステアリルメタクリレート)商品名:S〔登録商標〕、新中村化学工業社製を用いた(以下、「ステアリルメタクリレート」ということもある)。
(STA−MB)ステアリルアクリレートマスターバッチ
以下のように製造した、ステアリルアクリレートマスターバッチを用いた。
【0127】
PPE−1を80質量%とステアリルアクリレート20質量%とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、L/D=44のZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給して、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、ベント真空度7.998kPa(60Torr)で溶融混練して、ステアリルアクリレートマスターバッチを得た(以下、「STA−MB」ということもある)。
【0128】
<熱安定剤成分(D)>
(D−1)融点242℃のヒンダードフェノール系熱安定剤
化学名:3,3‘,3“,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a‘,a“−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(商品名:Irganox1330〔登録商標〕、BASF社製)を用いた(以下、「D−1」ということもある)。
【0129】
(D−2)融点235℃のリン系熱安定剤
化学名:3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:アデカスタブPEP−36〔登録商標〕、アデカ社製)を用いた(以下、「D−2」ということもある)。
【0130】
なお、熱安定剤の融点は、融点測定器 型式:B−545(柴田科学社製)により、測定した。
【0131】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(E)>
(エラストマー1)結合スチレン量33%、数平均分子量Mn246,000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=1.07の、スチレンブロック−水素添加されたブタジエンブロック−スチレンブロックの構造を有し、ブタジエンブロック部分の水素添加率が99.9%である、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いた(以下、「エラストマー1」ということもある)。
(エラストマー2)結合スチレン量60%、数平均分子量Mn83,800、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=1.20の、スチレンブロック−水素添加されたブタジエンブロック−スチレンブロックの構造を有し、ブタジエンブロック部分の水素添加率が99.9%である、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いた(以下、「エラストマー2」ということもある)。
【0132】
[比較例1]
PPE−1を80質量%とGPPS20質量%とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、L/D=44のZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数250rpm、ベント真空度7.998kPa(60Torr)で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。
【0133】
得られた樹脂組成物のペレットを、120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物を、金型表面を#5000で磨き上げた寸法100mm×100mm×2mm厚みのフィルムゲート鏡面金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度320℃、金型温度120℃、射出圧力(ゲージ圧70MPa)、射出速度(パネル設定値)85%で成形して成形平板を得た。さらにこの得られた成形平板を真空状態下の蒸着装置内に設置し、該装置内に不活性ガス及び酸素を導入し、チャンバー内をプラズマ状態にして、成形平板表面を活性化させるプラズマ処理を行ない、真空下の蒸着装置内で成形平板のアルミニウム蒸着を行なった。さらに、アルミニウム蒸着面の保護膜として、プラズマ重合処理を行ない、二酸化珪素重合膜を形成させてアルミ蒸着平板を得た。該アルミ蒸着平板において、アルミニウム膜厚は80nm、二酸化珪素膜厚は50nmであった。
【0134】
得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0135】
参考例1
原料として、PPE−1を80質量%と、ステアリルアクリレート0.5質量%と、GPPS19.5質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0136】
参考例2
原料として、PPE−1を80質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、GPPS19質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0137】
参考例3
原料として、PPE−1を80質量%と、ラウリルアクリレート1質量%と、GPPS19質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0138】
参考例4
原料として、PPE−1を80質量%と、ベンジルアクリレート1質量%と、GPPS19質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0139】
参考例5
原料として、PPE−1を80質量%と、ステアリルメタクリレート1質量%と、GPPS19質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0140】
参考例6
原料として、PPE−1を80質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、HIPS−1を19質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。
【0141】
[比較例2]
原料として、PPE−1を80質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、GPPS10質量%と、HIPS−2を9質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表1に示す。得られたアルミ蒸着平板の鏡面には曇りが見られ、外観が明らかに十分ではない結果であったため、白斑数のカウントは実施しなかった。
【0142】
[比較例3]
原料として、PPE−1を60質量%と、GPPS35質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を3質量%とを、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表2に示す。
【0143】
参考例7
原料として、PPE−1を60質量%と、ステアリルアクリレート2質量%と、GPPS33質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を3質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表2に示す。
【0144】
参考例8
原料として、PPE−1を60質量%と、ステアリルアクリレート4質量%と、GPPS31質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を3質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表2に示す。
【0145】
[比較例4]
原料として、PPE−1を60質量%と、ステアリルアクリレート6質量%と、GPPS29質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を3質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物から成形平板を得た。得られた成形平板等の物性測定結果を下記表2に示す。
【0146】
尚、成形により得られた平板成形片には、多数のシルバー発生が認められたため、アルミ蒸着及び白斑数のカウントは実施していない。
【0147】
参考例9
原料として、PPE−2を60質量%と、ステアリルアクリレート2質量%と、GPPS33質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を3質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表2に示す。
【0148】
参考例10
原料として、PPE−1を90質量%と、ステアリルアクリレート2質量%と、GPPS4質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を2質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表3に示す。
【0149】
参考例11
原料として、PPE−1を90質量%と、ステアリルアクリレート2質量%と、AS4質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を2質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表3に示す。
【0150】
参考例12
原料として、PPE−1を82質量%と、STA−MB10質量%と、AS4質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を2質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表3に示す。
【0151】
参考例13
原料として、PPE−2を70質量%と、GPPS21質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を6質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表4に示す。
【0152】
参考例14
原料として、PPE−2を70質量%と、GPPS20質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を6質量%と、イルガノックス565〔登録商標〕(融点94℃のヒンダードフェノール系熱安定剤。BASF社製)1質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表4に示す。
【0153】
[実施例15]
原料として、PPE−2を70質量%と、GPPS20質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を6質量%と、D−1(熱安定剤)1質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表4に示す。
【0154】
[実施例16]
原料として、PPE−2を70質量%と、GPPS20質量%と、ステアリルアクリレート1質量%と、エラストマー1を2質量%と、エラストマー2を6質量%と、D−2(熱安定剤)1質量%とを用いた以外は、比較例1の場合と同様にして樹脂組成物を得て、該樹脂組成物からアルミ蒸着平板を得た。得られたアルミ蒸着平板等の物性測定結果を下記表4に示す。
【0155】
【表1】
表1に示すように、参考例1〜5のアルミ蒸着平板は、いずれも(C)成分が配合された樹脂組成物を用いることで、(C)成分を配合していない樹脂組成物を用いた比較例1のアルミ蒸着平板と比べて、鏡面部分の白斑が著しく低減し、外観に優れ、フォギング性も改良されて、光反射成形体として好適に使用できることがわかった。
【0156】
また、参考例6のアルミ蒸着平板は、樹脂組成物に配合した(B)成分が粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含まないため、樹脂組成物に配合した(B)成分が粒子径1.0μm以上のゴム粒子を含む場合の比較例2のアルミ蒸着平板と比べて、外観に優れて、光反射成形体として好適に使用できることがわかった。
【0157】
【表2】
表2に示すように、参考例7〜9のアルミ蒸着平板は、(C)成分であるステアリルアクリレートがいずれも規定量の配合された樹脂組成物を用いることによって、(C)成分を配合していない樹脂組成物を用いた比較例3のアルミ蒸着平板と比べて、鏡面部分の白斑が著しく低減し、外観に優れ、フォギング性も改良されて、光反射成形体として好適に使用できることがわかった。
【0158】
一方、(C)成分を配合していない樹脂組成物を用いた比較例3のアルミ蒸着平板は、鏡面部分に多数の白斑が認められて、外観が不十分であった。(C)成分であるステアリルアクリレートの配合量が規定量を上回る樹脂組成物を用いた比較例4のアルミ蒸着平板は、多数のシルバー発生が認められ、またフォギング性も劣るため、光反射成形体として、不十分であることがわかった。
【0159】
【表3】
表3に示すように、参考例10〜12のアルミ蒸着平板は、いずれも(C)成分であるステアリルアクリレートが規定量、配合された樹脂組成物を用いることで、鏡面部分の白斑が著しく低減し、光反射成形体として好適に使用できることがわかった。また、参考例10参考例11とのアルミ蒸着平板を比較すると、参考例11のアルミ蒸着平板は、参考例10で配合された(B)成分のGPPSを、ASに置き換えたことで、更に、鏡面部分の白斑が低減された。また、参考例1112とのアルミ蒸着平板を比較すると、参考例12のアルミ蒸着平板は、予め、(A)成分と(C)成分であるステアリルアクリレートとを溶融混練して作製したマスターバッチ(MB)を原材料として用いることで、直接、ステアリルアクリレートを配合した樹脂組成物を用いた参考例11のアルミ蒸着平板と比べて、更に、成形体表面の白斑が低減されることがわかった。
【0160】
【表4】
表4に示すように、参考例13〜14及び実施例15〜16のアルミ蒸着平板は、いずれも(C)成分であるステアリルアクリレートが規定量、配合された樹脂組成物を用いることで、鏡面部分の白斑が著しく低減し、光反射成形体として好適に使用できることがわかった。また、参考例14のアルミ蒸着平板は、(D)成分以外の熱安定剤を配合した樹脂組成物を用いることで、熱安定剤を配合しない樹脂組成物を用いた参考例13のアルミ蒸着平板と比べて、むしろ逆に白斑が増加し、フォギング性も低下する傾向であることがわかった。これに対して、実施例15及び16のアルミ蒸着平板は、(D)成分の熱安定剤を配合した樹脂組成物を用いることで、参考例13のアルミ蒸着平板と比べて、更に鏡面部分の白斑が低減されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の光反射成形体は、低比重で、良好な耐熱性と流動性とのバランスを有して、アルミ蒸着後の成形体表面(鏡面部分)の白斑が極めて少なく、フォギング性も良好で、アルミ蒸着外観にも優れることから、自動車ランプリフレクター成形体、自動車ランプエクステンション成形体等の光反射成形体として有効に使用することが可能である。