(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高さ方向に複数のメッシュ台を備える場合、上下方向に隣接するメッシュ台の間隔は、下方のメッシュ台に載置される圧粉磁心の上端から上方のメッシュ台までの距離が2mm以上となるように設定されている請求項5に記載の圧粉磁心の熱処理方法。
【背景技術】
【0002】
鉄やその合金、フェライトといった酸化物などの軟磁性材料からなる磁心と、この磁心に配置されるコイルとを備える磁気部品が種々の分野で利用されている。具体的には、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両に載置される車載部品、種々の電気機器の電源回路部品などに利用されるモータ、トランス、リアクトル、チョークコイルなどが挙げられる。
【0003】
上記磁気部品を交流磁場で使用する場合、磁心には、鉄損(概ね、ヒステリシス損と渦電流損との和)と呼ばれるエネルギー損失が生じる。渦電流損は作動周波数の2乗に比例するため、上記磁気部品が数kHz以上といった高周波数で使用される場合、鉄損が顕著になる。このように作動周波数が高い用途には、鉄や鉄基合金などの軟磁性金属粒子の外周に絶縁被覆を設けた被覆粒子の粉末を加圧成形した圧粉磁心を利用する。被覆粒子の粉末を用いることで、各被覆粒子の絶縁被覆が軟磁性金属粒子同士の接触を抑制し、圧粉磁心における渦電流損(つまり、鉄損)を効果的に低減できる。
【0004】
上記被覆粒子の粉末を用いた圧粉磁心の作製にあたっては、加圧成形により絶縁被覆が損傷しないようにする。例えば、特許文献1には、金型内周面に潤滑剤を塗布したり、被覆粒子の粉末に潤滑剤(以下、内部潤滑剤)を混ぜ込んだりして、加圧成形により圧粉磁心を作製することが開示されている。特に、内部潤滑剤を利用すれば、圧粉磁心内部での被覆粒子同士の摩擦を低減でき、被覆粒子の絶縁被覆の損傷を抑制できる。その結果として、絶縁被覆の損傷に起因する圧粉磁心の渦電流損の増加を抑制できる。
【0005】
上記圧粉磁心は、加圧成形後に、加圧成形の圧力によって圧粉磁心を構成する軟磁性粉末に導入された歪を取るために熱処理される。軟磁性粉末に導入された歪が圧粉磁心のヒステリシス損を増加させるからである。この熱処理によって、歪の除去と共に、圧粉磁心から内部潤滑剤を除去することもできる。このような歪取りのための熱処理には、例えば、特許文献2に記載されるメッシュベルト炉などの熱処理炉を利用することができる。メッシュベルト炉は、炉本体と、その内部に圧粉磁心を搬送するメッシュベルトと、を備える。当該メッシュベルトは、鋼帯などからなるコンベア部の表面に、格子網状のメッシュ部を形成した構成を備えている。このようなメッシュベルトの構成によって、炉本体内の雰囲気がメッシュベルト上に載置される圧粉磁心の全周面に接触できるようになっており、それによって圧粉磁心が均一的に熱処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の圧粉磁心の熱処理方法では、内部潤滑剤を用いて作製された圧粉磁心を熱処理炉で熱処理した際、圧粉磁心から内部潤滑剤を除去しきることができず、内部潤滑剤の残滓が圧粉磁心の表面に付着した状態となることがある。特に、圧粉磁心の載置面(熱処理炉において圧粉磁心が載置される台部に対向する面)において、残滓の付着が顕著である。これは、圧粉磁心が載置される台部がメッシュベルトであるメッシュベルト炉であっても生じる問題である。
【0008】
熱処理後に圧粉磁心の載置面に付着した内部潤滑剤の残滓は、圧粉磁心の磁気特性を損なうものではないが、圧粉磁心が工業製品である以上、圧粉磁心の出荷前に拭き取っておく必要がある。この拭き取り作業は非常に煩雑で、圧粉磁心の生産性を低下させる。また、拭き取り作業中に誤って圧粉磁心の表面を傷付け、思わぬ圧粉磁心の磁気特性の低下を招く恐れもある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、内部潤滑剤を用いて作製された圧粉磁心を熱処理したとき、その圧粉磁心の載置面に内部潤滑剤の残滓が付着し難い圧粉磁心の熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、軟磁性金属粒子とその表面に形成される絶縁被覆とを有する被覆粒子の集合体である軟磁性粉末を内部潤滑剤と共に加圧成形することで得られた圧粉磁心を熱処理して、加圧成形時に軟磁性金属粉末に導入された歪を除去する圧粉磁心の熱処理方法に係る。そして、本発明圧粉磁心の熱処理方法は、熱処理を行なう熱処理炉内の台部の上に、底上げされたメッシュ台を設け、そのメッシュ台の上に、圧粉磁心を載置して熱処理を行なうことを特徴とする。なお、台部とは、従来技術で圧粉磁心が載置される部材であり、例えば、メッシュベルト炉であればメッシュベルト、バッチ炉であれば炉底面や棚面(台座面)である。
【0011】
上記本発明の構成とすることで、熱処理炉の台部とメッシュ台との間に、雰囲気の対流を生じさせる隙間を形成することができる。また、台部とメッシュ台との間に隙間を形成することで、メッシュ台のメッシュ孔を介してメッシュ台の厚み方向にも対流が生じる。その対流は、圧粉磁心の載置面を撫で、圧粉磁心を効果的に加熱すると共に、その加熱によって圧粉磁心から滲み出した内部潤滑剤を圧粉磁心の載置面から除去する。また、圧粉磁心の載置面から垂れた内部潤滑剤は、メッシュ台から台部に落ち、再び圧粉磁心に付着することがない。そのため、熱処理後の圧粉磁心の表面(載置面を含む)に内部潤滑剤の残滓が付着した状態となり難く、その結果、熱処理後の圧粉磁心の表面を拭き取る手間を低減でき、もって圧粉磁心の生産性を向上させることができる。
【0012】
本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、熱処理炉は、メッシュベルト炉である形態を挙げることができる。その場合、メッシュベルト炉に備わる圧粉磁心の台部であるメッシュベルト上に、底上げされたメッシュ台を設けると良い。
【0013】
メッシュベルト炉は、一度に大量の圧粉磁心を連続的に熱処理することに向いているため、圧粉磁心の生産性を向上させることができる。もちろん、メッシュ台を備えることで、大量の圧粉磁心を熱処理しても、その圧粉磁心に内部潤滑剤の残滓が付着した状態となり難い。
【0014】
本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、熱処理炉は、バッチ炉である形態を挙げることができる。その場合、バッチ炉に備わる炉底面を含む台部上に、底上げされたメッシュ台を設けると良い。バッチ炉の台部は、メッシュベルト炉と異なり、動かないため、台部上に設けられるメッシュ台も、そのメッシュ台の上に載置される圧粉磁心も熱処理の間に動かない。
【0015】
バッチ炉では、熱処理の間中、炉内雰囲気が密閉されているため、炉内雰囲気の温度が安定している。そのため、バッチ炉によれば、圧粉磁心の歪取りを確実に行なえるし、炉内雰囲気の温度を保つための追加のエネルギーが少なくて済む(つまり、エネルギー効率が良い)。
【0016】
本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、圧粉磁心の熱処理の間、熱処理炉内に不活性ガスを導入する形態を挙げることができる。
【0017】
熱処理炉内に不活性ガスを導入することで、圧粉磁心の構成材料に不要な化学反応が生じることを抑制できる。また、高温になる熱処理炉内に不活性ガスを導入すれば、熱処理炉内に大きな雰囲気の対流ができるので、圧粉磁心から滲み出た内部潤滑剤が圧粉磁心の表面から除去され易くなる。不活性ガスには、例えばN
2ガスやArガスなどを利用することができる。
【0018】
本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、台部からのメッシュ台の底上げ高さは、2mm以上である形態を挙げることができる。
【0019】
底上げ高さが2mm以上あれば、台部とメッシュ台との間に十分な雰囲気の対流を生じさせることができる。その結果、圧粉磁心の載置面に内部潤滑剤の残滓が付着した状態となることを効果的に抑制できる。なお、メッシュ台の底上げ高さに上限はなく、熱処理炉の内部空間の高さを考慮して適宜選択すると良い。例えば、底上げ高さは30mm以下とすると良い。
【0020】
本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、メッシュ台に形成される各メッシュ孔の孔面積は、当該メッシュ台上に載置される圧粉磁心の載置面面積の1/100〜1/2である形態を挙げることができる。
【0021】
メッシュ孔面積は当然、メッシュ台の上に載せる圧粉磁心の載置面面積よりも小さくなければならない。メッシュ孔面積を圧粉磁心の載置面面積の1/100以上とすることで、熱処理炉内の雰囲気が圧粉磁心の載置面に十分に接触し、当該載置面の内部潤滑剤を効果的に除去することができる(より好ましくは1/60以上)。また、メッシュ孔面積を圧粉磁心の載置面面積の1/2以下とすることで、メッシュ台上での圧粉磁心の安定性を向上させることができる(より好ましくは1/4以下)。加えて、高重量物である圧粉磁心を載せても容易に撓まない強度をメッシュ台に持たせることができる。
【0022】
本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、メッシュ台の上方にさらに、圧粉磁心を載置する別のメッシュ台が設けられている形態を挙げることができる。
【0023】
高さ方向に複数のメッシュ台を積み上げることで、一度により多くの圧粉磁心の熱処理を行なうことができ、その結果として、圧粉磁心の生産性を向上させることができる。
【0024】
高さ方向に複数のメッシュ台を備える本発明圧粉磁心の熱処理方法の一形態として、上下方向に隣接するメッシュ台の間隔は、下方のメッシュ台に載置される圧粉磁心の上端から上方のメッシュ台までの距離が2mm以上となるように設定されている形態を挙げることができる。
【0025】
隣接するメッシュ台の間に上記の間隔を持たせることで、各メッシュ台の間に十分な雰囲気の対流を生じさせることができる。その結果、各メッシュ台に載置される圧粉磁心の載置面における内部潤滑剤を効果的に除去することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明圧粉磁心の熱処理方法によれば、内部潤滑剤を用いて作製された圧粉磁心を熱処理した際、その圧粉磁心の載置面に内部潤滑剤の残滓が付着した状態となり難い。その結果、熱処理後の圧粉磁心の載置面から内部潤滑剤の残滓を拭き取る作業を低減でき、圧粉磁心の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明圧粉磁心の熱処理方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
<実施形態1>
本発明圧粉磁心の熱処理方法の説明にあたって、まず初めに熱処理を行なう圧粉磁心の構成について説明する。その後、本発明圧粉磁心の熱処理方法を説明する。
【0030】
≪圧粉磁心≫
圧粉磁心は、軟磁性金属粒子の表面に絶縁被覆を施した被覆粒子の集合体である軟磁性粉末を加圧成形することで作製される。その加圧成形の際、軟磁性粉末に内部潤滑剤を混合し、被覆粒子同士が強く擦れ合うことを抑制し、各被覆粒子の絶縁被覆が損傷しないようにしている。
【0031】
[軟磁性金属粒子]
軟磁性金属粒子の材質は、鉄を50質量%以上含有するものが好ましい。例えば、純鉄(Fe)、その他、Fe−Si系合金,Fe−Al系合金,Fe−N系合金,Fe−Ni系合金,Fe−C系合金,Fe−B系合金,Fe−Co系合金,Fe−P系合金,Fe−Ni−Co系合金,及びFe−Al−Si系合金から選択される1種の鉄合金が挙げられる。特に、透磁率及び磁束密度の点から、99質量%以上がFeである純鉄が好ましい。
【0032】
軟磁性金属粒子は、その平均粒径dが1μm以上70μm以下であることが好ましい。平均粒径dが1μm以上であることで、流動性に優れる上に、圧粉磁心におけるヒステリシス損の増加を抑制でき、70μm以下であることで、圧粉磁心における渦電流損を効果的に低減できる。特に、平均粒径dが50μm以上であると、ヒステリシス損の低減効果を得易い上に、粉末を取り扱い易い。上記平均粒径dは、粒径のヒストグラム中、粒径の小さい粒子からの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径(質量)をいう。
【0033】
[絶縁被覆]
絶縁被覆は、例えば、Fe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr及び希土類元素(Yを除く)などから選択された1種以上の金属元素の酸化物、窒化物、炭化物などの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などで構成することができる。また、絶縁被覆は、例えば、リン化合物、ケイ素化合物(シリコーン樹脂など)、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物から選択された1種以上の化合物で構成しても良い。その他、絶縁被覆は、金属塩化合物、例えば、リン酸金属塩化合物(代表的には、リン酸鉄やリン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなど)、ホウ酸金属塩化合物、ケイ酸金属塩化合物、チタン酸金属塩化合物などで構成しても良い。
【0034】
上記絶縁被覆の厚さは、10nm以上1μm以下とすることが好ましい。10nm以上であると、軟磁性金属粒子間の絶縁を確保でき、1μm以下であると、絶縁被覆の存在により、圧粉磁心における軟磁性粉末の含有割合の低下を抑制できる。
【0035】
[内部潤滑剤]
内部潤滑剤は、液体潤滑剤でも良いし、潤滑剤粉末からなる固体潤滑剤でも良い。特に、軟磁性粉末との混合し易さを考慮して、内部潤滑剤は、固体潤滑剤とすることが好ましい。固体潤滑剤としては、軟磁性粉末に均一的に混合し易く、圧粉磁心の成形時、被覆粒子間で十分に変形可能であり、得られた圧粉磁心に熱処理を施した際、この加熱により除去し易いものを利用することが好ましい。例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸を固体潤滑剤として利用することができる。その他、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドを利用することもできる。
【0036】
上記内部潤滑剤の好ましい混合量、即ち、被覆軟磁性粉末を100としたときに、その被覆軟磁性粉末に混合する内部潤滑剤の混合量は、0.4質量%〜0.8質量%とすることが好ましい。また、内部潤滑剤を構成する固体潤滑剤は、最大径が20μm以下の固体潤滑剤であることが好ましい。この大きさの固体潤滑剤であれば、内部潤滑剤粒子が、被覆軟磁性粒子の間に入り込み易く、被覆軟磁性粒子間の摩擦を効果的に低減して、被覆軟磁性の絶縁被覆の損傷を効果的に防止できる。内部潤滑剤を被覆軟磁性粉末に混合する場合、ダブルコーン型混合機やV型混合機を利用すると良い。
【0037】
[加圧成形]
圧粉磁心の加圧成形には、筒状のダイと、そのダイの上下の開口部に挿入される上パンチおよび下パンチとを備える公知の金型を用いると良い。このような金型を用いる場合、ダイに下パンチを挿入し、そのダイと下パンチとで囲まれるキャビティに上述した軟磁性粉末と内部潤滑剤を含む混合粉末を入れる。そして、ダイに上パンチを挿入し、上パンチと下パンチとの間で軟磁性粉末を加圧すると良い。ここで、ダイの内周面にも潤滑剤を塗布すると、圧粉磁心の外周面における絶縁被覆の損傷を効果的に抑制することができる。
【0038】
加圧成形の圧力は、390MPa以上1500MPa以下とすることが好ましい。390MPa以上とすることで、軟磁性粉末を十分に圧縮することができ、圧粉磁心の相対密度を高められ、1500MPa以下とすることで、軟磁性粉末を構成する被覆粒子同士の接触による絶縁被覆の損傷を抑制できる。700MPa以上1300MPa以下がより好ましい圧力である。
【0039】
≪圧粉磁心の熱処理方法≫
加圧成形することで作製された圧粉磁心の軟磁性金属粒子には、歪が導入される。この歪は、圧粉磁心のヒステリシス損を増加させる要因となるため、圧粉磁心を熱処理することによって除去する。この熱処理に、本発明圧粉磁心の熱処理方法を用いる。
【0040】
[熱処理炉]
本発明圧粉磁心の熱処理方法に利用する熱処理炉の一例を
図1に基づいて説明する。
図1に示す熱処理炉は、炉本体2と、その炉本体2に熱処理対象の圧粉磁心9を導入するメッシュベルト3と、を備えるメッシュベルト炉1である。このメッシュベルト炉1の従来と異なる点は、従来技術で圧粉磁心9を載置する台部となるメッシュベルト3の上に底上げされたメッシュ台4を設けることで、メッシュベルト3とメッシュ台4との間に所定の隙間を形成し、当該隙間に雰囲気の対流を生じさせることができるように構成したことにある。
【0041】
炉本体2は、その内部の雰囲気を所望の温度に加熱する加熱手段を備える。また、炉本体2の内部を不活性ガス雰囲気(例えば、N
2ガスやArガスなど)とすることができるように、当該不活性ガスを導入するガス導入管を備える。ガス導入管から導入する不活性ガスはある程度加熱された状態であることが好ましい。加熱手段による内部雰囲気の温度調節を行ない易いからである。
【0042】
炉本体2による熱処理の温度は、高いほどヒステリシス損を低減できるが、高過ぎると絶縁被覆の構成材料が熱分解されることがあるため、当該構成材料の熱分解温度未満の範囲で選択する。代表的には、熱処理の温度は400℃〜700℃、保持時間は30分以上60分以下とすることが挙げられる。絶縁被覆がリン酸鉄やリン酸亜鉛などの非晶質リン酸塩からなる場合、上記加熱温度は500℃程度までが好ましく、金属酸化物やシリコーン樹脂などの耐熱性に優れる絶縁材料からなる場合、550℃以上、更に600℃以上、特に650℃以上に加熱温度を高められる。
【0043】
一方、メッシュベルト3は、図示しないローラで炉本体2に送り出される鋼帯30と、その鋼帯30の表面に取り付けられるメッシュ部31と、を備えるコンベア状の部材である。従来技術では、このメッシュベルト3(メッシュ部31)が、圧粉磁心9を載置する台部となる。既に述べたように、本実施形態のメッシュベルト炉1は、メッシュベルト3上に、底上げされたメッシュ台4が備わっており、熱処理する圧粉磁心9は、メッシュベルト3上ではなく、このメッシュ台4上に載置される。
【0044】
メッシュ台4は、その厚さ方向に貫通する複数の孔を備える部材であって、本実施形態では剛性を有する線材を格子状に編んだ部材である。メッシュ台4に複数の孔を形成することで、このメッシュ台4上に圧粉磁心9を載置したとき、圧粉磁心9の載置面(メッシュ台4に対向する面)に、炉本体2の雰囲気が接触し易くなる。
【0045】
メッシュ台4の材質としては、圧粉磁心9の熱処理雰囲気によって軟化しないものを利用する。例えば、ステンレスなどの鋼をメッシュ台4の材質として利用することができる。
【0046】
メッシュ台4の実質部分の寸法(即ち、孔以外の部分の寸法であって、本実施形態では、線材の線径)は、圧粉磁心9の重みでメッシュ台4が曲がらないように設定する。例えば、鋼線を格子状に編み込んだメッシュ台4であれば、その鋼線の線径を約0.5mm以上とすれば良い。なお、鋼線が太すぎると、メッシュ台4の孔が小さくなるので、鋼線の太さは3mm以下とすることが好ましい。
【0047】
メッシュ台4に形成される各メッシュ孔の孔面積は、圧粉磁心9の載置面面積の1/100〜1/2とすることが好ましい。各メッシュ孔の孔面積を圧粉磁心9の載置面面積の1/100以上とすることで、炉本体2内の雰囲気が圧粉磁心9の載置面に十分に接触し、当該載置面の内部潤滑剤を効果的に除去することができる。また、当該孔面積を圧粉磁心9の載置面面積の1/2以下とすることで、メッシュ台4上での圧粉磁心9の安定性を向上させることができる。加えて、高重量物である圧粉磁心9を載せても容易に撓まない強度をメッシュ台4に持たせることができる。より好ましい孔面積は、圧粉磁心9の載置面面積の1/60〜1/4である。
【0048】
上記メッシュ台4は、支持部材5によってメッシュベルト3(即ち、台部)から底上げされている。支持部材5の材質は、熱処理温度で軟化しない物であれば特に限定されず、例えば、アルミナやムライトといったセラミックスなどを利用することができる。また、メッシュ台4を構成する線材を部分的に盛り上げて、その盛り上げた部分をメッシュベルト3に向けて配置することで、メッシュ台4をメッシュベルト3から底上げしても良い。
【0049】
支持部材5によるメッシュ台4の底上げ高さは、2mm以上とすることが好ましい。メッシュ台4の底上げ高さは例え僅かであっても、メッシュベルト3とメッシュ台4との間に雰囲気の対流を生じさせることができる。しかし、メッシュ台4の底上げ高さを5mm以上とすることで、メッシュベルト3とメッシュ台4との間に十分な雰囲気の対流を生じさせ、その雰囲気の対流が圧粉磁心9の載置面を確実に撫でるようにすることができる。その結果、圧粉磁心9の載置面に内部潤滑剤の残滓が付着した状態となり難い。
【0050】
[熱処理手順]
図1を参照して説明したメッシュベルト炉1を用いて圧粉磁心9を熱処理する。圧粉磁心9の熱処理にあたっては、圧粉磁心9は決してメッシュベルト3上に直接載置せず、メッシュ台4上に載置する。そして、炉本体2内の雰囲気を加熱し、メッシュベルト3を動作させて、メッシュ台4に載置された状態の圧粉磁心9を炉本体2内に搬入する。
【0051】
炉本体2内に導入された圧粉磁心9は、炉本体2内の雰囲気に加熱され、圧粉磁心9を構成する軟磁性金属粒子に導入された歪が除去される。同時に、その加熱によって、圧粉磁心9の内部に含まれる内部潤滑剤が溶解し、圧粉磁心9の表面に滲み出す。ここで、圧粉磁心9の載置面以外の面は、雰囲気に直接触れているので、それらの面に滲み出た内部潤滑剤は蒸散する。また、圧粉磁心9の載置面に滲み出た内部潤滑剤も、圧粉磁心9を載置するメッシュ台4が底上げられているため、雰囲気の対流により蒸散する。
【0052】
以上説明した本発明圧粉磁心の熱処理方法によれば、圧粉磁心9の表面(載置面を含む)に内部潤滑剤の残滓が付着した状態となり難い。そのため、熱処理後の圧粉磁心9の表面を拭う作業を軽減でき、その分だけ圧粉磁心9の生産性を向上させることができる。また、圧粉磁心9の表面を拭う作業に伴う圧粉磁心9の表面損傷を低減でき、圧粉磁心9の歩留りを向上させることができる。
【0053】
<変形実施形態>
実施形態1では、焼き網状のメッシュ台を用いたが、当該メッシュ台は、剛性を有する板材にパンチ孔を形成したパンチングメタル状の構成としても良い。ここで、パンチングメタル状のメッシュ台の場合、メッシュ台と圧粉磁心とが面接触する部分が多くなる。そこで、メッシュ台のうち、パンチ孔以外の部分に凹凸をつけるなどして、メッシュ台と載置面との接触面積を小さくすると良い。
【0054】
<実施形態2>
実施形態2では、メッシュ台4の上にさらに別のメッシュ台40を配置したメッシュベルト炉1’を用いた圧粉磁心の熱処理方法を
図2に基づいて説明する。
【0055】
図2に示すメッシュベルト炉1’では、
図1で説明した実施形態1のメッシュベルト炉1に備わるメッシュ台4の上に、さらに別のメッシュ台40を設けた。追加で設けたメッシュ台40の材質・形状は、下段のメッシュ台4と同じで良い。また、その上段のメッシュ台40を支える支持部材50の材質も、下段のメッシュ台4を支える支持部材5と同じで良い。
【0056】
ここで、上段のメッシュ台40の底上げ高さ(下段のメッシュ台4からの高さ)は、次のように決定することが好ましい。まず、下段のメッシュ台4上に載置される圧粉磁心9の載置高さ、即ち、下段のメッシュ台4上に圧粉磁心9を置いたときの下段のメッシュ台4表面から圧粉磁心9の上端までの高さを把握しておく。形状・高さの異なる複数の圧粉磁心9を熱処理する場合、最も大きな載置高さを把握しておく。そして、その把握した『載置高さ』+2mmを、上段のメッシュ台40の底上げ高さ(メッシュ台4からメッシュ台40までの距離)とする。そうすることで、上段のメッシュ台40の上に載置された圧粉磁心9の載置面に、炉内雰囲気を十分に接触させることができる。
【0057】
以上説明した多段に積み上げたメッシュ台4,40を備え、かつ各メッシュ台4,40の下に所定の隙間を設けたメッシュベルト炉1’を使用すれば、一度に大量の圧粉磁心9を熱処理することができ、しかも各圧粉磁心9の表面に内部潤滑剤の残滓が付着した状態とならないようにすることができる。
【0058】
なお、メッシュ台を3段以上重ねる場合、高さ方向に隣接するメッシュ台の間隔は、上述した1段目のメッシュ台と2段目のメッシュ台との間隔を決定した理屈と同じ理屈で決定すると良い。
【0059】
<試験例>
図1を参照して説明した実施形態1のメッシュベルト炉1を用いて実際に圧粉磁心の熱処理を行なった。その際、メッシュ台4上に圧粉磁心を載置すると共に、メッシュ台4が設けられていないメッシュベルト3上に直接圧粉磁心を載置しておいた。そうすることで、メッシュ台4上に載置して熱処理する本発明熱処理方法で熱処理された圧粉磁心と、メッシュベルト3上に直置きして熱処理する従来熱処理方法で熱処理された圧粉磁心と、を同一の熱処理条件で熱処理できる。
【0060】
≪熱処理した圧粉磁心≫
・軟磁性粉末…平均粒径d=50μmの純鉄の表面に、化成処理により燐酸金属塩化合物からなる絶縁層(厚さ:20nm以下程度)を被覆した被覆粒子の集合体
・内部潤滑剤…平均粒径16μmのステアリン酸亜鉛有機複合体
・混合割合…軟磁性粉末を100としたとき、上記内部潤滑材が0.6質量%となるように混合
・加圧条件…700MPa
・最終寸法…縦30mm×横30mm×厚さ20mmの直方体
【0061】
≪圧粉磁心の熱処理条件≫
・雰囲気…N
2ガス
・熱処理温度…400℃
・熱処理時間…30分
・メッシュ台4の各メッシュ孔の孔面積…25mm
2(正方形)
・メッシュ台4の高さ…メッシュベルト3の表面から5mm
【0062】
≪試験結果≫
以上説明した条件で熱処理した圧粉磁心の表面状態の写真を
図3,
図4に示す。
図3は、メッシュ台上に載置して熱処理する本発明熱処理方法で熱処理した圧粉磁心の写真、
図4は、メッシュベルト上に直置きして熱処理する従来熱処理方法で熱処理した圧粉磁心の写真である。
図3、
図4ともに、(A)が上面、(B)が下面(つまり、載置面)である。
【0063】
図3に示すように、本発明熱処理方法で熱処理した圧粉磁心は、上面および下面とも光沢があり、内部潤滑剤の残滓の付着が殆どなかった。
【0064】
一方、
図4に示すように、従来熱処理方法で熱処理した圧粉磁心は、
図4(A)に示す上面には光沢があるものの、
図4(B)に示す下面(載置面)には内部潤滑剤の残滓が斑に付着していた。そのため、この圧粉磁心は、その表面を丁寧に拭わなければ出荷可能な状態とならない。その丁寧に拭う作業は煩雑である上、圧粉磁心の表面を傷付ける恐れがあるので注意が必要である。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、圧粉磁心を熱処理するための熱処理炉は、バッチ炉であっても構わない。