(54)【発明の名称】断熱効果を出力するためのコンピュータ、コンピュータに断熱効果を出力させるためのプログラム、およびコンピュータにおける断熱効果を出力するための方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0028】
<コンピュータ100の全体構成>
先ず、本実施の形態に係るコンピュータ100の構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係るコンピュータ100の構成を示すブロック図である。
【0029】
図2を参照して、本実施の形態に係るコンピュータ100には、少なくとも、出力部(以下、タッチパネルと表記する)120と、メモリ130と、プロセッサ(以下、CPUと表記する)110とを備える。
上記コンピュータ100には、さらに、メモリインターフェイス140と、通信インターフェイス150と、ボタン170とが含まれている。
【0030】
タッチパネル120には、ディスプレイ121と、ポインティングデバイス122とが含まれている。タッチパネル120は、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などのいずれのタイプであってもよい。タッチパネル120は、光センサ液晶を含んでもよい。
【0031】
タッチパネル120は、CPU110からの命令(信号)に基づいて、文字または画像を出力して表示する。たとえば、CPU110は、タッチパネル120に、外壁、窓、床、天井などの断熱仕様の組み合わせに対応付けて、体感温度、暖冷房費、二酸化炭素の排出量(CO2排出量)などの断熱効果の程度を出力して表示させる。また、CPU110は、プログラムに基づいて、タッチパネル120に各種のソフトウェアボタンを表示させたりする。
【0032】
タッチパネル120は、所定時間毎に外部の物体によるタッチパネル120へのタッチ操作を検知して、タッチ座標(接触座標)をCPU110に入力する。換言すれば、CPU110は、タッチパネル120から順次タッチ座標を取得する。CPU110には、タッチ座標に基づいて、ユーザからの命令が入力される。
【0033】
メモリ130は、各種のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、および/またはハードディスクなどによって実現される。メモリ130には、CPU110によって実行されるプログラムや、予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースや、input情報や、input情報に基づいてコンピュータ100(またはCPU110)で計算(処理)された断熱効果等の計算結果などが格納されている。なお、コンピュータ100(またはCPU110)で計算(処理)された途中の過程での、各数値、すなわち、隙間風換気回数n’や、室温Tiや、表面温度Thや、部屋Q値Q
Rなどが格納されていてもよい。
【0034】
予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとは、input情報の選択項目として出力するためのデータベースや、CPU110の計算によって使用される、各種熱伝導率データ、各部位相当隙間面積データ、地域別外気温データ、デグリアワーデータ、空調機器効率データ、電気料金データ、一次エネルギー換算係数データ、施工費データなどの他に、
図12に示す、建物情報の建築年と気密の程度(たとえば、C値)との対応関係のデータベース138や、
図16〜18に示す、劣化情報と気密の程度(たとえば、C値)との対応関係のデータベース1381〜1383などを示す。
【0035】
input情報とは、
図4に示す、改修前の建物の仕様や、改修メニューなどのことである。
ここで、改修とは、改修前(現在)の建物の部屋の一つまたは複数の部位の断熱仕様を、断熱効果の程度に基づいて、より好適な断熱仕様に変更することをいい、改築、新築、または住み替えによって、現在の建物の部屋の一つまたは複数の部位の断熱仕様を、上記のように付加、変更、補修、改造などをすることを含む。
(部屋の)部位とは、部屋を囲う壁(外壁、間仕切壁等)、窓、床、天井、開口部などのことである。本実施の形態においては、各部位の各種物性であって、部位を特定するために各種物性の記号に、部位を示すnを付して表す。
【0036】
改修前の建物の仕様とは、邸名、都道府県、市区町村、工務店名、担当者名、調査日等の基本情報や、構法、建築年、建物方位等の建物情報や、部屋情報、暖房設定温度、階数、床面積等の部屋情報や、部屋の各部位の開口部情報や、部屋の各部位の劣化情報や、部屋の各部位の断熱仕様などのことである。
【0037】
改修メニューとは、部屋の各部位の、改修により、より好適な断熱仕様へ変更する内容のことを示し、改修する部屋の各部位に取り付け可能な部材の種類、または断熱仕様を変更した仕様(断熱性の高い部材を追加した仕様または断熱性の高い部材に変更した仕様)のことをいい、具体的には、断熱性の高い部材の仕様、材質、規格、数量、メーカー、商品名、品番等や、それらの厚さ、大きさ、または積層あるいは複層等の使い方、取付方法、固定方法、加工方法などで表わされる。
【0038】
図2に戻って、メモリインターフェイス140は、外部の記憶媒体141からデータを読み出す。換言すれば、CPU110は、メモリインターフェイス140を介して外部の記憶媒体141に格納されているデータを読み出して、当該データをメモリ130に格納する。逆に、CPU110は、メモリ130からデータを読み出して、メモリインターフェイス140を介して当該データを外部の記憶媒体141に格納する。
【0039】
なお、記憶媒体141としては、CD−ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk - Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスク、磁気テープ、カセットテープ、MO(Magnetic Optical Disc)、MD(Mini Disc)、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを除く)、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの、不揮発的にプログラムを格納する媒体が挙げられる。
【0040】
通信インターフェイス150は、アンテナおよびコネクタによって実現される。通信インターフェイス150は、有線通信あるいは無線通信によって他の装置との間でデータをやり取りする。換言すれば、CPU110は、通信インターフェイス150を介して、他の装置からプログラム、画像データ、テキストデータなどを受信したり、他の装置に画像データおよびテキストデータを送信したりする。
【0041】
ボタン170は、コンピュータ100の表面に配置される。コンピュータ100には、文字キー、テンキー、十字キー、決定キーなどの複数のボタンが配置されても良い。ボタン170は、ユーザからの命令などを受け付ける。ボタン170は、ユーザからの命令をCPU110に入力する。
【0042】
CPU110は、メモリ130あるいは記憶媒体141に記憶されているプログラムを実行することによって、コンピュータ100の各部を制御する。すなわち、CPU110は、メモリ130あるいは記憶媒体141に記憶されているプログラムを実行することによって、様々な処理を実行する。
【0043】
CPU110を備えるコンピュータ100は、改修前の部屋のinput情報に基づいて、STEP3の建物データベースのそれぞれの項目に対応付けてメモリに格納された物性データベースのそれぞれのデータに基づいて改修前の部屋の体感温度を計算する。また、コンピュータ100は、改修メニューに従った改修後のinput情報に基づいて、同様に改修後の部屋の体感温度を計算する。上記コンピュータ100は、体感温度だけではなく、暖冷房および/または二酸化炭素の排出量(CO
2排出量)を併せて計算してもよい。
【0044】
<動作概要>
次に、本実施の形態に係るコンピュータ100の動作概要について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施の形態に係るCPU110が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
図4を参照して、まず、CPU110には、タッチパネル120またはボタン170を介して、リフォームの営業担当者などのユーザから一のinput情報である改修前の建物の仕様が入力される(STEP1)。
同様に、CPU110には、タッチパネル120またはボタン170を介して、上記ユーザから他のinput情報である改修メニューが入力される(STEP2)。CPU110は、メモリ130に予め格納された建物データベースと、該建物データベースに関連付けられて予め格納された物性データベースから必要なデータを読み出す(STEP3)。
【0045】
これらのinput情報の内容は、たとえば
図5〜7に示される。input情報には、入力項目と選択項目とがあってもよい。
入力項目とは、入力するユーザによってその項目の内容を直接入力するものである。
また、選択項目とは、
図4のSTEP3に示す予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースの中から、ユーザが該当する内容を選択するものである。
CPU110は、メモリ130に予め格納された、予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースの中から必要なデータを読み出す(STEP3)。
【0046】
CPU110は、メモリ130の予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとを参照することによって、input情報、すなわち、改修前および改修メニューに従った改修後の入力データのそれぞれに基づいて、改修前、および改修メニューに従った改修後の隙間風換気回数n´を計算する(STEP4)。
【0047】
CPU110は、メモリ130の予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとを参照することによって、input情報および隙間風換気回数n´に基づいて、改修前、および改修メニューに従った改修後の室温Tiを計算する(STEP5)。
【0048】
CPU110は、メモリ130の予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとを参照することによって、input情報および室温Tiに基づいて、改修前、および改修後の表面温度Thを計算する(STEP6)。
【0049】
CPU110は、室温Tiと表面温度Thとに基づいて、改修前、および改修メニューに従った改修後の体感温度Ttを算出する。CPU110は、改修前、および改修メニューに従った改修後の体感温度をディスプレイ121に表示させる(STEP7)。
【0050】
CPU110は、メモリ130の予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとを参照することによって、input情報および隙間風換気回数n´に基づいて、改修前、および改修メニューに従った改修後の部屋の熱損失係数Q値(Q
R)を算出する(STEP8)。
【0051】
CPU110は、メモリ130の予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとを参照することによって、input情報および部屋のQ値に基づいて、改修前、および改修メニューに従った改修後の暖冷房負荷Lを算出する(STEP9)。
【0052】
CPU110は、暖冷房負荷Lに基づいて、改修前、および改修メニューに従った改修後の暖冷房費M[円/年]を計算する(STEP10)。
【0053】
CPU110は、暖冷房負荷Lに基づいて、二酸化炭素の排出量(CO2排出量)[kg−CO
2/年]を算出する(STEP11)。
【0054】
CPU110は、メモリ130の予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースとを参照することによって、改修メニューに従った改修後の仕様に基づいて施工費を算出する(STEP12)。
【0055】
図1は、本実施の形態に係るコンピュータ100のディスプレイ121に、改修前の建物の部屋の少なくとも1つの部位の断熱仕様及び改修前の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報と、改修メニュー及び改修メニューに従った改修後の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報と、を対応付けて出力表示された表示画面を示すイメージ図である。
【0056】
そして、
図1に示すように、コンピュータ100は、客に、改修前の部屋の断熱効果(体感温度、暖冷房費、二酸化炭素の排出量)の程度と、改修メニューに従った改修後の部屋の断熱効果の程度との違いが解るように、改修前の部屋の断熱効果の程度と、改修前の部屋の断熱効果の程度に対する、改修メニューに従った改修後の部屋の断熱効果の程度との差分と、をディスプレイ121に表示させる。
本実施の形態においては、複数の部位に渡る改修を考慮して、コンピュータ100は、改修前の複数の部位の仕様の組み合わせに対応する断熱効果の程度と、改修前の部屋の断熱効果の程度に対する、改修メニューに従った改修後の複数の部位の仕様の複数種類の組み合わせそれぞれの断熱効果の程度の差分と、をディスプレイ121に表示させる。
【0057】
なお、コンピュータ100は、客に、差分ではなく、改修前の部屋の断熱効果の程度と、改修メニューに従った改修後の部屋の断熱効果の程度そのものとをディスプレイ121に表示させてもよい。また、コンピュータ100は、改修前の複数の部位の仕様の組み合わせに対応する断熱効果の程度と、改修メニューに従った改修後の複数の部位の仕様の複数種類の組み合わせそれぞれの断熱効果の程度そのものと、をディスプレイ121に表示させてもよい。
【0058】
<主に体感温度を取得するためのCPU110の処理>
以下では、主に体感温度を取得するためのCPU110の処理について詳述する。具体的には、本実施の形態に係るCPU110は、メモリ130に記憶されているプログラムに基づいて、以下の処理を実行する。
【0059】
図5は、入力データ(input情報)を示す第1のイメージ図である。
図6は、入力データ(input情報)を示す第2のイメージ図である。
図7は、入力データ(input情報)を示す第3のイメージ図である。
【0060】
図5〜
図7を参照して、CPU110には、タッチパネル120およびボタン170を介してinput情報(改修前の建物の仕様や、改修メニューなど)が入力される。なお、これらのinput情報は既にメモリ130に格納されている場合があり、この時は、同じデータ(内容、値)であれば、input情報の入力が省略されてもよい。
【0061】
CPU110は、入力されたデータに基づいて、後述するように、建物の部屋の各部位の、改修前の断熱仕様の組み合わせの体感温度と、より好適な断熱仕様の組み合わせの体感温度と、を計算する。具体的には、CPU110は、以下のようにして、体感温度を計算する。
【0062】
本実施の形態においては、CPU110には、タッチパネル120またはボタン170を介して、ユーザから、対象となる基本情報、建物情報、部屋情報、開口部情報、劣化情報、断熱仕様が入力される。CPU110は、建物の部屋の各種のinput情報に基づいて、各部位の相当隙間面積αAnと床面積Sとから求められるC値(=ΣαAn/S)、工法、地域、建築年、劣化係数、空調温度Ta(たとえば、18度にデフォルト設定)、外気温度Toから、室温Tiを計算する。
C値とは、断熱効果の程度を計算するために必要な気密の程度を示す数値のことである。
なお、他の英文字に付されるnは、部屋の部位を数字にて特定する記号である。
【0063】
ここで、
図3は、U値データベース133を示すイメージ図である。U値とは熱貫流率のことである。
図3を参照して、U値データベース133は、部屋の各部位の、改修前および改修メニューに従った改修後の仕様(各部位の構成要素の組み合わせ)とU値との対応関係を格納する。CPU110は、U値データベース133を参照することによって、改修前の仕様に対するU値および客に提案する改修メニューに対するU値を取得することができる。
【0064】
図8は、放射温度(≒表面温度Th)の計算方法を示すイメージ図である。
図8に示すように、CPU110は、上記U値データベース133(
図3)を参照して、部屋の各部位の熱貫流率Un値を取得する。CPU110は、部屋の各部位について、以下の式(1)に基づいて熱貫流量qnを計算する。
qn=Un×(Ti−To)…(1)
CPU110は、以下の式(2)に基づいて、屋内表面の総合熱伝達率αi(=9.3)から表面温度Thnを計算する。
Thn=Ti−qn/αi…(2)
CPU110は、以下の式(3)に基づいて、表面温度Th(≒放射温度)を計算する。つまり、部屋の各部位の表面温度Thnを各部位の面積Snで加重平均する。
Th=Σ(各部位のThn×各部位の面積Sn)/Σ(各部位の面積Sn)…(3)
CPU110は、以下の式(4)に基づいて、室温Tiと放射温度(≒表面温度Th)とから部屋の体感温度Ttを計算する。
部屋の体感温度Tt≒(室温Ti+放射温度)/2…(4)
【0065】
さらに、本実施の形態においては、CPU110は、部屋毎の、改修前の断熱仕様の場合の暖冷房費と、改修メニューに従ってより好適な断熱仕様に変更した場合の暖冷房費と、を計算する。
【0066】
また、CPU110は、input情報等に基づいて、部屋毎の、改修前の断熱仕様の場合の二酸化炭素の排出量と、改修メニューに従ってより好適な断熱仕様に変更した場合の二酸化炭素の排出量と、を計算する。
【0067】
図9は、対象となる部屋の熱損失係数Q
R値の計算方法を示すイメージ図である。
図9を参照して、CPU110は、対象となる部屋のQ
R値を計算する。より詳細には、CPU110は、以下の式(5)に基づいて、床から逃げる熱量Q
Fと、壁から逃げる熱量Q
Wと、換気によって逃げる熱量Q
Vと、開口部から逃げる熱量Q
Gと、天井から逃げる熱量Q
Cと、間仕切りから逃げる熱量Q
Pと、部屋の床面積S
Rとから、部屋のQ
R値を計算する。
Q
R=(Q
F+Q
W+Q
V+Q
G+Q
C+Q
P)/S
R…(5)
ここで、Q
F=U
F×S
Fである。Q
W=U
W×S
Wである。Q
V=0.35×n×Vである。Q
G=U
G×S
Gである。Q
C=U
C×S
Cである。Q
P=U
P×S
Pである。CPU110は、熱貫流率(U値)データベース133(
図3)を参照して、各部位のU値を取得する。ここで、nは換気回数であり、Vは部屋情報より算定する気積である。
【0068】
CPU110は、部屋のQ
R値に基づいて、暖冷房費と二酸化炭素の排出量とを計算する。なお、部屋のQ
R値に基づいて、暖冷房費と二酸化炭素の排出量とを計算する技術は、公知であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0069】
図1に戻って、CPU110は、改修前の部屋の断熱効果(体感温度、暖冷房費、二酸化炭素の排出量)の程度と、改修前の部屋の断熱効果の程度に対する、改修メニューに従った改修後の部屋の断熱効果の程度の差分と、を対応付けてディスプレイ121に表示させる。より詳細には、CPU110は、改修前の断熱仕様の組み合わせに対する部屋の断熱効果の程度と、改修前の体感温度に対する、改修メニューの複数の組み合わせに対する部屋の断熱効果の程度のそれぞれとの差分と、を対応付けてディスプレイ121に表示させる。
【0070】
ただし、CPU110は、改修前の部屋の断熱効果の程度と、改修メニューに従った改修後の部屋の断熱効果の程度そのものと、を対応付けてディスプレイ121に表示させてもよい。より詳細には、CPU110は、改修前の断熱仕様の組み合わせに対する部屋の断熱効果の程度と、改修メニューの複数の組み合わせに対する部屋の断熱効果の程度そのものと、を対応付けてディスプレイ121に表示させてもよい。
【0071】
<変形例(自動で複数の改修メニューを選択)>
上記の実施の形態においては、CPU110が、自動的に、窓の断熱仕様が変更された場合の断熱効果の程度と、窓の断熱仕様と外壁の断熱仕様とが変更された場合の断熱効果の程度と、窓の断熱仕様と外壁の断熱仕様と床の断熱仕様とが変更された場合の断熱効果の程度とを計算するものであった。しかしながら、CPU110は、各部位の改修メニューが1種類とは限らない。本変形例においては、CPU110は、各部位においての複数種類の改修メニューに対する体感温度を計算する。
【0072】
CPU110に、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから改修前の壁の断熱仕様が入力されると、壁・床種類データベース131を参照して、壁についての複数の改修メニューが選択される。CPU110は、U値データベース133を参照して、改修前の各部位の断熱仕様に対するU値を取得することによって、改修前の断熱効果の程度を計算する。そして、CPU110は、U値データベース133を参照して、壁の複数種類の改修メニューに対する改修メニューに従った改修後の断熱効果の程度を計算する。
図1に示すように、CPU110は、それらの断熱効果の程度を比較可能な形式でディスプレイ121に表示させる。
【0073】
あるいは、CPU110に、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから改修前の床の断熱仕様が入力されると、壁・床種類データベース131を参照して、床についての複数の改修メニューが選択される。CPU110は、U値データベース133を参照して、改修前の各部位の断熱仕様に対するU値を取得することによって、改修前の断熱効果の程度を計算する。そして、CPU110は、U値データベース133を参照して、床の複数種類の改修メニューに対する改修メニューに従った改修後の断熱効果の程度を計算する。
図1に示すように、CPU110は、それらの体感温度を比較可能な形式でディスプレイ121に表示させる。
【0074】
あるいは、CPU110に、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから改修前の開口部の断熱仕様が入力されると、開口部種類データベース132を参照して、開口部についての複数の改修メニューが選択される。CPU110は、U値データベース133を参照して、改修前の各部位の仕様に対するU値を取得することによって、断熱効果の程度を計算する。そして、CPU110は、U値データベース133を参照して、開口部の複数種類の改修メニューに対する改修メニューに従った改修後の断熱効果の程度を計算する。
図1に示すように、CPU110は、それらの断熱効果の程度を比較可能な形式でディスプレイ121に表示させる。
【0075】
<変形例(地域と等級から)>
上記の実施の形態においては、CPU110が、タッチパネル120またはボタン170を介して、現在(改修前)の部屋の仕様を受け付けるものであった。すなわち、営業担当者などのユーザは、現在(改修前)の部屋の仕様を調べたり入力したりする必要があった。しかしながら、CPU110が自動的に現在(改修前)の部屋の仕様を特定するものであってもよい。たとえば、少なくとも建物の地域(基本情報)と建築年(建物情報)とに基づいて、CPU110が自動的に現在(改修前)の部屋の仕様を特定するものであってもよい。
【0076】
図2に戻って、メモリ130は、壁等級データベース135、床等級データベース136、天井等級データベース137、年代データベース138、を記憶する。
【0077】
図12は、年代データベース138を示すイメージ図である。
図12を参照して、年代データベース138は、建築年別に、建物の等級とC値とを格納する。
【0078】
図13は、壁等級データベース135を示すイメージ図である。
図13を参照して、壁等級データベース135は、建物の等級と建物の地域(基本情報)とに応じた壁の断熱材の種類を格納する。
【0079】
図14は、床等級データベース136を示すイメージ図である。
図14を参照して、床等級データベース136は、建物の等級と建物の地域(基本情報)とに応じた床の断熱材の種類を格納する。
【0080】
図15は、天井等級データベース137を示すイメージ図である。
図15を参照して、天井等級データベース137は、建物の等級と建物の地域(基本情報)とに応じた天井の断熱材の種類を格納する。
【0081】
CPU110には、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから、対象となる建物の建築年(建物情報)と地域(基本情報)とが入力される。CPU110は、年代データベース138を参照して、建物の等級を特定する。CPU110は、壁等級データベース135を参照することによって、建物の等級と建物の地域(基本情報)とから、当該建物の壁に使用されている断熱材の種類(壁の断熱仕様)を把握することができる。CPU110は、床等級データベース136を参照することによって、建物の等級と建物の地域(基本情報)とから、当該建物の床に使用されている断熱材の種類(床の断熱仕様)を把握することができる。CPU110は、天井等級データベース137を参照することによって、建物の等級と建物の地域(基本情報)とから、当該建物の天井に使用されている断熱材の種類(天井の断熱仕様)を把握することができる。
【0082】
<変形例(自動で改修メニューを選択)>
本実施の形態においては、CPU110には、タッチパネル120またはボタン170を介して、改修前の部屋の断熱仕様と、改修メニューの断熱仕様とが共に入力されるものであった。すなわち、営業担当者などのユーザは、コンピュータ100に、改修前の部屋の各部位の断熱仕様と、改修メニューの各部位の断熱仕様とを入力する必要があった。
【0083】
しかしながら、CPU110に、ユーザから改修前の部屋の各部位の断熱仕様と、改修後の部屋の断熱効果の程度を示す情報が入力されることによって、CPU110自身が改修メニューの断熱仕様を選択してもよい。
【0084】
前記のように、メモリ130には、CPU110によって実行されるプログラムや、予め格納されておくべき建物データベースと、建物データベースに関連付けられる物性データベースの他に、input情報や、input情報に基づいてコンピュータ100(またはCPU110)で計算(処理)された断熱効果等の計算結果が格納されている。
【0085】
すなわち、過去に遡って、改修前の建物の部屋の少なくとも1つの部位の断熱仕様及び改修前の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報と、改修メニュー及び改修メニューに従った改修後の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報とが格納されている。
【0086】
図10は、壁・床種類データベース131を示すイメージ図である。
図10を参照して、壁・床種類データベース131は、改修によって壁および床に取り付け可能な部材の種類を複数含む。
【0087】
図11は、開口部種類データベース132を示すイメージ図である。
図11を参照して、開口部種類データベース132は、改修によって開口部に取り付け可能な部材の種類を複数含む。
【0088】
CPU110に、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから改修前の壁の断熱仕様と、改修後の部屋の断熱効果の程度を示す情報が入力されると、メモリ130に格納された、過去の、改修前の建物の部屋の少なくとも1つの部位の断熱仕様及び改修前の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報と、改修メニュー及び改修メニューに従った改修後の建物の部屋の断熱効果の程度を示す情報(以下、過去に格納された情報と略す)と、壁・床種類データベース131を参照して、壁の改修メニューが選択される。
同様に、ユーザから改修前の床の断熱仕様と、改修後の部屋の断熱効果の程度を示す情報が入力されると、過去に格納された情報と壁・床種類データベース131を参照して、床の改修メニューが選択される。
同様に、ユーザから改修前の開口部の断熱仕様と、改修後の部屋の断熱効果の程度を示す情報が入力されると、過去に格納された情報と開口部種類データベース132を参照して、開口部の改修メニューが選択される。
【0089】
CPU110は、U値データベース133を参照して、改修前の各部位の仕様に対するU値を取得することによって、断熱効果の程度を示す情報を計算する。そして、CPU110は、U値データベース133を参照して、窓がグレードアップされた場合の断熱効果の程度を示す情報を計算する。CPU110は、U値データベース133を参照して、窓と外壁とがグレードアップされた場合の断熱効果の程度を示す情報を計算する。CPU110は、U値データベース133を参照して、窓と外壁と床とがグレードアップされた場合の断熱効果の程度を示す情報を計算する。
【0090】
ただし、CPU110は、材料の抵抗値(R値)[m
2・K/W]に基づいて、U値を計算してもよい。この場合CPU110は、熱伝導率[W/mK]と厚み[mまたはmm]とに基づいて、R値を計算してもよい。
【0091】
図1に示すように、CPU110は、それらの体感温度を比較可能な形式でディスプレイ121に表示させる。
【0092】
<変形例(C値を建築年、劣化情報、測定値から)>
上記の実施の形態においては、CPU110が、タッチパネル120またはボタン170を介して、相当隙間面積αAnと床面積Sとの入力、またはC値の入力を受け付けるものであった。すなわち、ユーザは、対象となる部屋の、相当隙間面積αAnおよび床面積S、またはC値を調べる必要があった。しかしながら、CPU110は、少なくとも建物の建築年に基づいて、改修前の部屋のC値を特定してもよい。これによって、ユーザが対象となる部屋の、相当隙間面積αAnおよび床面積S、またはC値を測定することなく、CPU110が室温Tiを簡易に計算することができる。
【0093】
より詳細には、CPU110には、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから、対象となる建物の建築年が入力される(
図5参照)。CPU110は、年代データベース138を参照して、建物のC値を特定する。CPU110は、C値を利用して体感温度を計算する。
【0094】
あるいは、CPU110は、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから劣化情報の入力を受け付けて(
図7を参照。)、公知の方法によって当該劣化情報からC値を計算してもよい。
【0095】
図16は、劣化情報データベース1381を示すイメージ図である。
図16を参照して、劣化情報データベース1381は、劣化の程度とC値との対応関係を格納する。CPU110は、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから劣化の程度の入力を受け付けて、劣化情報データベース1381を参照することによって、劣化の程度からC値を計算する。
【0096】
図17は、部位別点数データベース1382を示すイメージ図である。
図18は、合計劣化情報データベース1383を示すイメージ図である。
図17を参照して、部位別点数データベース1382は、部位毎の劣化の程度と点数との対応関係を格納する。
図18を参照して、合計劣化情報データベース1383は、点数の合計とC値との対応関係を格納する。
【0097】
図17および
図18を参照して、CPU110は、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから部位毎の劣化の程度の入力を受け付けて、部位別点数データベース1382を参照することによって、部位毎の点数を取得する。CPU110は、合計劣化情報データベース1383を参照することによって、点数の合計からC値を計算する。
【0098】
なお、ユーザは、気密の程度を測定によって求めてもよい。この場合、CPU110は、タッチパネル120またはボタン170を介してユーザから気密測定値の入力を受け付けて、公知の方法によって当該気密測定値からC値を計算する。
【0099】
[その他の実施の形態]
なお、本実施の形態においては、コンピュータ100が、断熱効果の程度を示す情報として、改修前の断熱仕様に対する体感温度、暖冷房費、二酸化炭素の排出量と、改修メニューに従った改修後の断熱仕様に対する体感温度、暖冷房費、二酸化炭素の排出量と、を対応付けて出力するものであった。しかしながら、コンピュータ100は、断熱効果の程度を示す情報として、改修前の断熱仕様に対する室温Tiと、改修メニューに従った改修後の断熱仕様に対する室温Tiと、を対応付けて出力してもよい。あるいは、コンピュータ100は、断熱効果の程度を示す情報として、改修前の断熱仕様に対する表面温度Thと、改修メニューに従った改修後の断熱仕様に対する表面温度Thと、を対応付けて出力してもよい。
【0100】
その他、断熱効果としては、建物の部屋の各部位の断熱仕様に応じた断熱の効果として表わされる指標であれば限定されるものではなく、たとえば、気密性能や、換気回数や、温熱環境6要素(空気温度、湿度、放射、気流、着衣量、活動量)、温熱環境評価指数であるPMV(Predicted Mean Vote;予測温冷感申告;ISO7730(1994))・PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied;予測不快者率;ISO7730(1994))、上下温度(分布)等の快適性や、アレルギーの改善、ヒートショックリスク低減、喘息の改善等の健康性などが挙げられる。
【0101】
また、本実施の形態においては、コンピュータ100が、同一の建物の同一の部屋に関して、改修前の断熱仕様に対する断熱効果と、改修メニューに従った改修後の断熱仕様に対する断熱効果と、を対応付けて出力するものであった。しかしながら、コンピュータ100は、上記の実施の形態と同様に、コンピュータ100が、既存建物などの第1の建物の部屋の断熱仕様に対する断熱効果と、新築建物などの第2の建物の対応する部屋の断熱仕様に対する断熱効果と、を対応付けて出力してもよい。
【0102】
また、本発明は、システムまたは装置にプログラムを供給することによって達成される場合にも適用できることはいうまでもない。そして、本発明を達成するためのソフトウェアによって表されるプログラムを格納した記憶媒体を、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(またはCPUまたはMPU(Micro Processing Unit))が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の効果を享受することが可能となる。
【0103】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0104】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(Operation System)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されてもよい。
【0105】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードおよび/またはコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードおよび/または機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されてもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。