(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部の少なくとも一方において、前記第1のバスバー側及び第2のバスバー側のいずれにもダミー電極が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の弾性波フィルタ。
前記入力側IDT電極部または出力側IDT電極部における第1のバスバーあるいは第2のバスバーに沿って配列されているダミー電極の群をダミー電極配列群と呼ぶとすると、ダミー電極配列群に属するダミー電極の長さ寸法は互に同一であり、
少なくとも一つのダミー電極配列群のダミー電極の長さ寸法は、他のダミー電極配列群のダミー電極の長さ寸法と異なることを特徴とする請求項2または3記載の弾性波フィルタ。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイスは、弾性表面波を利用したものであり、圧電基板上にIDT(インターディジタルトランスデューサ)と呼ばれる電極を入力側電極部及び出力側電極部として弾性波の伝搬方向に沿って配置し、これらの2つの電極部間にて電気信号と弾性波との間の電気―機械相互変換を行って周波数選択(帯域フィルタ)特性を持たせたものである。SAWデバイスの一つであるSAWフィルタは、高機能化、小型化が進められている各種通信機器例えば携帯電話等のバンドパスフィルタとして使用されており、近年のワイヤレスデータ通信の高速化、大容量化に伴い、周波数選択性が優れ、通過周波数帯がおいて減衰特性の平坦性が高いことが求められている。
【0003】
上記のように通過周波数帯を広帯域化する手法としては、例えばテーパー型IDT電極部を用いたフィルタが知られている。このフィルタは、
図13に示すように、圧電基板10上に、一方側のバスバー14aから他方側のバスバー14bに向かって電極指15及び反射電極16各々の幅寸法及び間隔寸法が広がるように配置されたテーパー型IDT電極部を入力側IDT電極部11及び出力側IDT電極部12として用いている。これらの電極11、12の間には例えばシールド電極をなす角型の金属膜36が配置される。
【0004】
このフィルタの電極指15及び反射電極16の幅寸法及び間隔寸法は所定の間隔で繰り返される周期単位λであり、伝搬される弾性波の波長に対応する。この周期単位λは弾性波の伝搬方向の沿って一定の周期となるように、また一方向のバスバー14aから他方側のバスバー14bに向かって波長の短いトラック(伝搬路)の弾性波から波長の長いトラックの弾性波まで伝搬するように、つまり通過周波数帯域が広くなるように構成されている。そのため、このフィルタでは、各電極の弾性波の伝搬方向における両端部において電極指15がバスバー14a〜14dに対して傾斜して接続されている。つまり当該端部における電極指15とバスバー14a〜14dとのなす角度が90°よりも小さくなっているので、弾性波の回折により弾性波が漏洩する。漏洩した弾性波がバスバー14a〜14dによって反射されることにより、通過周波数帯域内の減衰特性を劣化させるため、通過周波数帯域の端部にスプリアスが発生していた。
【0005】
近年の弾性表面波フィルタにおいては、通過周波数特性の一層の広帯域化が求められている。このためテーパー角が益々小さくなり回折効果の影響が大きくなってきている。従来はフィルタのインピーダンスを50Ω付近から外すことでスプリアスを抑えるようにしていたが、このようなフィルタでは挿入損失が劣化してしまう。また反射特性においても通過帯域全般での規格が厳しくなっているため、インピーダンスを外すこともできなくなってきている。
特許文献1にはテーパー型の電極について周波数特性の調整法が記載されているが、周波数帯域に出現するスプリアスの抑制については示唆されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部をテーパー型に構成した弾性波フィルタにおいて、通過帯域端に発生するスプリアスを抑制し、優れた通過特性を有する弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性波フィルタは、
互いに平行な第1のバスバー及び第2のバスバーの一方から他方に向かう一の電極指と、この一の電極指に隣接し、第1のバスバー及び第2のバスバーの他方から一方に向かう他の電極指と、当該他の電極指に隣接する反射電極と、が電極の組になって、弾性波の伝搬方向を左右方向とすると、一の電極の組の左縁から当該一の組に隣接する他の組の左縁までを周期単位として、左右方向に沿って繰り返し配列されると共に、第2のバスバーから第1のバスバーに向かうにつれて電極指
及び反射電極の各々の幅寸法及び各々の間隔が狭くなる傾斜型電極部を、弾性波の伝搬方向に互いに離れて配置された入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部として構成した
弾性波フィルタにおいて、
前記入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部の少なくとも一方において、回折した弾性波のバスバーによる反射を抑制し、通過周波数帯域の端部のスプリアスを抑制するために、
前記電極の組の並びの高域側の端部と前記第1のバスバーとの間、及び前記電極の組の並びの低域側の端部と前記第2のバスバーとの間の少なくとも一方に、ダミー電極の組を電極の組に対応して設け、これにより一のダミー電極の組の左縁から当該一のダミー電極の組に隣接する他のダミー電極の組の左縁までを周期単位として、左右方向に沿って繰り返し配列したことと、
前記ダミー電極の組の各々は、前記一の電極指、前記他の電極指及び反射電極の各延長線上に位置するダミー電極からなることと、
各ダミー電極は、前記第1のバスバー及び第2のバスバーのうちの一方のバスバーに接続されていることと、
前記ダミー電極は、電極指の先端または反射電極の先端から離間して設けられるか、あるいは電極指または反射電極に接続されて設けられることと、
前記ダミー電極の組の周期単位の長さ寸法が前記電極の組の高域側の周期単位の長さ寸法以上であり、かつ前記電極の組の低域側の周期単位の長さ寸法以下に設定されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明の弾性波フィルタは、前記入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部の各々に前記ダミー電極が設けられ、
前記出力側IDT電極部のダミー電極群は、前記入力側IDT電極部のダミー電極群から見て弾性波の伝搬方向の延長線側に設けられていることを特徴としてもよい。
【0010】
あるいは本発明の弾性波フィルタは前記入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部の少なくとも一方において、前記第1のバスバー側及び第2のバスバー側のいずれにもダミー電極が設けられていることを特徴としてもよい。
【0011】
さらに本発明の弾性波フィルタは前記入力側IDT電極部または出力側IDT電極部における第1のバスバーあるいは第2のバスバーに沿って配列されているダミー電極の群をダミー電極配列群と呼ぶとすると、ダミー電極配列群に属するダミー電極の長さ寸法は互に同一であり、
少なくとも一つのダミー電極配列群のダミー電極の長さ寸法は、他のダミー電極配列群のダミー電極の長さ寸法と異なることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、テーパー型櫛型電極を形成した弾性波フィルタにおいて、入力側IDT電極部及び出力側IDT電極部の少なくとも一方において、各々の高域側と低域側に設けたバスバーのうちの一方のバスバーから伸びだす電極指の先端部と他方のバスバーとの間に、当該先端部から離れてダミー電極を設けている。そのため回折した弾性波のバスバーによる反射を抑制し、通過周波数帯域の端部のスプリアスを抑制することができ、通過周波数帯域の優れた弾性波フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一部を拡大した平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタについて得られた特性を示す特性図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタについて得られた特性を示す特性図である。
【
図5】他の実施の形態に係る弾性波フィルタについて得られた減衰特性を示す特性図である。
【
図6】他の実施の形態に係る弾性波フィルタについて得られた減衰特性を示す特性図である。
【
図7】他の実施の形態に係る弾性波フィルタについて得られた減衰特性を示す特性図である。
【
図8】他の実施の形態に係る弾性波フィルタについて得られた減衰特性を示す特性図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係るIDT電極部の構成の一例を示す説明図である。
【
図13】従来の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の弾性波フィルタについて、
図1、
図2を参照して説明する。本発明の弾性波フィルタは入力側IDT電極部11および出力側IDT電極部12を備えており、例えばLiNbO
3(リチュームナイオベート)などの圧電基板10上に形成されている。これらのIDT電極部11,12は弾性波の伝搬方向に沿って間隔をおいて設けられており、IDT電極部11,12間には、接地電位に接続された角型のシールド電極36が配置されている。この弾性波フィルタは例えば圧電基板10上に全面に亘って金属膜、例えばアルミニウムを成膜して、次いでこの金属膜上に積層したマスク層を介して上記の電極以外の領域をエッチングするフォトリソグラフィーにより形成される。なお図中の35はIDT電極部を介して圧電基板10の端部領域に伝搬する不要な弾性波を吸収するための吸音材(ダンパー)である。
【0015】
入力側IDT電極部11において14a、14bは夫々一方側のバスバー、他方側のバスバーであり、互いに弾性波の伝搬方向に沿って平行になるように、
図1中の夫々一方及び他方に形成されている。また、一方側のバスバー14bは接地されており、他方側のバスバー14aは入力ポート31に接続されている。
図1中の15は上記入力側IDT電極部11に設けられた、各々のバスバー14a,14bから互いに交互に櫛歯状となるように伸びだす電極指である。ここで、この入力側IDT電極部11においては、入力側IDT電極部11から出力側IDT電極部12に向かう方向を順方向とし、また出力側IDT電極部12においては、出力側IDT電極部12から入力側IDT電極部11に向かう方向を順方向、入力側IDT電極部11から出力側IDT電極部12に向かう方向を逆方向とする。
【0016】
この入力側IDT電極部11には、当該入力側IDT電極部11における逆方向に伝搬しようとする弾性波を出力側IDT電極部方向11に向けて反射するために、電極指15の長さ方向に沿うように、一方側のバスバー14aから他方側のバスバー14bに向かって伸びる反射電極16が複数箇所に設けられている。従って、このIDT電極部は一方向性電極(SPUDT:Single Phase Uni−Directional Transducer)例えばDART(Distributed Acoustic Reflection Transducer)として構成されている。
【0017】
図2に示すようにこれらの電極指15及び反射電極16の配列パターンは、一方のバスバー14a及び他方のバスバー14bの各々から伸ばされて、互いに隣り合うように形成された一対の電極指15と、これらの電極指15に隣接するように一方のバスバー14aから伸びる1つの反射電極16と、が1組になって所定の周期単位λで弾性波の伝搬方向に沿って周期的に繰り返されるように配置されている。この弾性波フィルタでは、
図2に示すように各電極指15は周期単位λに対して、λ/8の幅寸法を持つように構成され、反射電極16は、3λ/8の幅寸法になるように構成される。各々の電極指15および反射電極16の間隔寸法は夫々λ/8になるように構成されている。
【0018】
また、電極指15及び反射電極16は、一方のバスバー14aから他方のバスバー14bに向かうにつれて、各々の間隔寸法と幅寸法とが、徐々に広がるように設定される。従って、これら間隔寸法及び幅寸法に応じた周期単位λのトラックをTrの群が、一方のバスバー14aと他方のバスバー14bとの間に形成され、周期単位λが最も狭いトラックTr1と、周期単位λが最も広いトラックTr2とによりフィルタの通過帯域が決定される。なお、
図1では、電極指15及び反射電極16の幅寸法については、図示の困難性のため一定として示している。
【0019】
この実施の形態ではトラックTr1からトラックTr2の区間の外側のバスバー14a、14b側の部位に、夫々のバスバー14a,14bからトラックTrの方向に櫛歯状に伸ばされるダミー電極13を設ける。この弾性波フィルタは、トランスバーサル型の弾性波フィルタとして構成されるため、弾性波フィルタの設けられている電極指15及び反射電極16の部位の規格及び配列パターンは変更せず、
図9に示す従来型の弾性波フィルタの電極指15及び反射電極16と同一の構成となる。なお、以後トラックTr1側に位置する一方のバスバー14aを高域側のバスバー14a、トラックTr2側に位置する他方のバスバー14bを低域側のバスバー14bと呼ぶことにする。
【0020】
ダミー電極13は、例えば従来型の弾性波フィルタから、高域側及び低域側のバスバー14a,14bの位置を、平行に離間した隙間に設ける。ダミー電極13は各々の電極指15および反射電極16に対して、高域側、低域側のバスバー14a,14bに1つづつ設けられる。
また電極指15、反射電極16にはテーパーがつけられているため、夫々高域側と低域側では幅寸法が異なる。それゆえ高域側と低域側では、設置されるダミー電極13の幅寸法が異なり、入力側IDT電極部11における高域側のダミー電極13は、最短周期に対応する電極指15及び反射電極16の最小幅寸法に設定され、一方低域側のダミー電極13は電極指15及び反射電極16の最大幅寸法で設定される。ダミー電極13は夫々のバスバー14a、14bから電極指15、反射電極16に向かって伸びるように設けられるが、ダミー電極13にはテーパーは設けられず、またバスバー14a、14bから直交するように伸ばされ、同じバスバー14a(14b)に設置されているダミー電極13の長さはすべて同一となる。
【0021】
この例では、入力側IDT電極部11の反射電極16は、高域側のバスバー14aに設置したダミー電極13から連続して、低域側のバスバー14bに向かって伸び、先端側が低域側のダミー電極13と隙間を介して離間するように設けられる。電極指15は、第1の電極指15と第2の電極指15とが交互に配列され、第1の電極指15は、高域側のダミー電極13から連続して、低域側のバスバー14bに向かって伸び、先端が低域側のダミー電極13と隙間を介して配置される。また第2の電極指15は、低域側のダミー電極13から連続して、高域側のバスバー14bに向かって伸び、先端が高域側のダミー電極13と隙間を介して配置される。こうして電極指15が櫛歯状に配列され、反射電極16と交互に配置された電極指15とで一周期の単位を構成し、同様の周期が繰り返されることとなる。
【0022】
出力側IDT電極部12の電極指15及び反射電極16、各々の幅寸法及び間隔寸法は、前述の入力側IDT電極部11と同様に形成されている。出力側のIDT電極部12は
図1に示すように一方側(一方)にバスバー14c及び他方側にバスバー14dを備えている。一方のバスバー14cは接地されており、他方側のバスバー14dは出力ポート32に接続されている。出力側IDT電極部12は、入力側IDT電極部と同様に弾性波の伝搬方向に沿って、周期単位λが一定となり、また一方側のバスバー14cから他方側のバスバー14dに向かって、周期単位λがトラックTr1からトラックTr2まで広がる配列パターンとなるように配置された電極指15及び反射電極16を備えている。出力側IDT電極部12では、反射電極16は他方側のバスバー14dから伸びだしている。出力側IDT電極部12にも、入力側IDT電極部11と同様に電極指15及び反射電極16の配列パターンに合わせてダミー電極13が設けられる。
【0023】
次に上述実施の形態の作用について説明する。入力ポート31を介して入力側IDT電極部11に高周波信号が入力されると、弾性波である弾性表面波(SAW)が発生する。この弾性波は入力側IDT電極部11において、その波長の長さに対応する周期単位λが形成されたトラックTrにて順方向に向かって伝搬していく。そして、各々のトラックTrにおいて弾性波は、入力側IDT電極部11から出力側IDT電極部12に向かって伝搬していく(互いに交差する電極指15間の領域を通過する)につれて、次第に各々の周期単位λに対応する波長の弾性波が強められて、あるいは各々の周期単位λとは異なる波長の弾性波が弱められていくことになる。
【0024】
従って、出力側IDT電極部12に向かって伝搬していくにつれて、各々のトラックTrでは通過周波数帯域であるメインローブ(絶対帯域)が狭まっていくことになる。その後弾性波は例えば出力側IDT電極部12において出力ポート32を介して取り出されて、機械―電気相互変換が行われて電気信号である高周波信号として取り出される。
【0025】
既述のように(
図9参照)テーパー型IDT電極部では、電極指15がバスバー14a〜14dに対して直角に接続されていないため電極指15の端部から漏出した弾性波がバスバー14a〜14dによって反射され、通過周波数帯域の減衰特性に影響を与えてしまう。本発明の弾性波フィルタでは電極指15とバスバー14a〜14dの間にダミー電極13を設けており、回折した弾性波がバスバー14a〜14dによって反射されることを抑制している。
【0026】
弾性波フィルタの減衰特性に出現するスプリアスの位置や大きさは、
図3、
図4に示すように、弾性波フィルタによって異なる。即ち、高域側(Tr1側)と低域側(Tr2側)では周期単位λは異なっており、どちらのトラック側で弾性波の回折及びバスバーによる反射が強く起こるかによってスプリアスの出現する位置が変わる。このため設計された弾性波フィルタによって、ダミー電極13をIDT電極部11、12の高域側のバスバー14a、14cに設けるべきか、低域側のバスバー14b、14dに設けるべきかが異なってくる。
【0027】
例えば
図3に示すように通過周波数帯の低域側の端部にスプリアスが出現する弾性波フィルタの場合には、入力側IDT電極部11及び出力側IDT電極部12のトラックTr2側(低域側)にダミー電極13を設けることで、低域側に発生していたスプリアスを抑制することができる。一方高域側の端部にスプリアスの出現する弾性波フィルタの場合には、入力側IDT電極部11及び出力側IDT電極部12のトラックTr1側(高域側)にダミー電極13を設けることにより、
図4に示すように通過周波数帯の高域側に発生していたスプリアスを抑制することができる。
【0028】
上述の実施の形態によれば、テーパー型(傾斜型)の両IDT電極部11,12の各々の高周波側及び低周波側に設けられたバスバー14a〜14dのいずれにも,既述のようにダミー電極13を設けている。そのため回折により漏出した弾性波のバスバー14a〜14dによる反射を抑制することができ、弾性波の通過周波数帯域内にスプリアスが発生するのを抑制することができる。
【0029】
ここで本発明の発明者は設置するダミー電極13の長さを変化させたところ、長さによって、通過周波数帯域に発生するスプリアスを抑制する効果が異なることを見出した。ダミー電極17の長さを伸ばした弾性波フィルタを設計した所、スプリアスの抑制の効果が異なった。
図5には、夫々1λ、3λ、5λの長さのダミー電極13を設けた場合の、減衰特性を示す特性図を、
図6には夫々の条件で発生しているスプリアスの大きさ(通過帯域内にて減衰量の極大値がある場合の極大損失と極小損失との差のうち最大の値)を表す特性図を示す。ダミー電極17の長さを、夫々1λ、3λ、5λに設定したときに出現するスプリアスの大きさは、夫々0.62dB、0.53dB、0.59dBであり、ダミー電極17の設置する長さによって、抑制の効果が異なっていることが分かる。
【0030】
また
図7は、夫々1λ、3λ、5λの長さのダミー電極13を設けた際の減衰特性を示す特性図を、
図8は
図7中の夫々の長さのダミー電極13を設けた際の減衰量30dBにおける減衰特性の周波数幅を示す。ダミー電極13の長さを夫々1λ、3λ、5λに設定したときの、減衰量30dBの周波数幅は34.28MHz、34.23MHz、33.39MHzとなっている。
図5、
図6に示したように、ダミー電極13の長さを変更した場合、スプリアス抑制の効果は変化している。一方で、ダミー電極13の長さを変えることよって
図7、
図8に示すように通過周波数帯域の幅が変動している。したがって弾性波フィルタの設計条件によって設けるべき、ダミー電極13の最適な長さは異なっており、予めシミュレーションや、実際に弾性波フィルタを駆動することにより決定する必要がある。
【0031】
このため弾性波フィルタに設けるダミー電極13の長さ寸法を変えてもよく、例えば
図9に示すように、入力側IDT電極部11の高域側のダミー電極13をL2の長さのダミー電極を設け、入力側IDT電極部11の低域側のダミー電極13及び出力側IDT電極部12の高域側、低域側のダミー電極13の長さをL1に設定してもよく、あるいは
図10に示すように入力側IDT電極部11の高域側のダミー電極13を出力側IDT電極部12の低域側にL2の長さのダミー電極13を設け、入力側IDT電極部11の低域側のダミー電極13及び出力側IDT電極部12の高域側のダミー電極の長さをL1に設定してもよい。
【0032】
前述のように高域側のバスバー14a、14cにダミー電極13を設けることにより、周波数と減衰特性との関係図を示す特性図(
図4)において、通過帯域の高域側のスプリアスが抑えられる。また低域側のバスバー14b,14dにダミー電極13を設けることにより通過帯域の低域側のスプリアスが抑えられる。そのため入力側、出力側の両方のIDT電極部11、12にダミー電極を設けることに限らず、入力側あるいは出力側の一方にダミー電極13を設けた場合にも反射の抑制により、このような効果は得られる。例えば
図11に示すように入力側、出力側のIDT電極部11、12の高域側のバスバー14a,14cにダミー電極13を設け、低域側のバスバー14b,14dにダミー電極13を設けない構成や入力側、出力側のIDT電極部11、12低域側のバスバー14b,14dにダミー電極13を設け、高域側のバスバー14a、14cにダミー電極13を設けない構成などであってもよい。
【0033】
また入力側のIDT電極部11の高域側及び低域側のバスバー14a、14bにダミー電極13を設け、出力側のIDT電極部12にはダミー電極13を設けない構成や、例えば入力側のIDT電極部11の高域側のバスバー14aにダミー電極13を設け、入力側のIDT電極部11の低域側のバスバー14b及び出力側のIDT電極部12の高域側及び低域側のバスバー14c、14dにダミー電極13を設けない構成であってもスプリアスを抑える効果がある。
【0034】
またダミー電極13は配列群の中で長さ寸法が揃っている必要は無く、幅寸法が揃っている必要も無い。さらに、ダミー電極13の幅寸法によって、通過周波数特性に与える影響は変化するため、弾性波フィルタの減衰特性に発生するスプリアスに合わせてダミー電極13の形状を変化させてもよく、例えば
図12に示すように、設置するダミー電極13の形状を矩形とすることに代えて、長さ方向にテーパー設けて、幅寸法が変わる台形のダミー電極18や側縁が曲線で構成されたダミー電極であってもよい。テーパー型の電極部を持つ弾性波フィルタにおいては、電極指15及び反射電極16の周期単位λにより、伝搬される波長が決定され、電極指15及び反射電極16の配列パターンが示す周期単位λの範囲が通過周波数帯域になる。このためテーパーを設けたダミー電極18を設置する場合には、ダミー電極18の周期単位λは、設置したIDT電極部の電極指15及び反射電極16が構成する最大周期単位(
図12に示すd2)を超える周期単位λであるか、あるいは最小周期単位(
図12に示すd1)未満の周期単位λの配列パターンを含む場合には、通過周波数帯域の高域側、または低域側の周波数帯の減衰特性に影響が出る。そのためダミー電極18の配列領域においては、当該フィルタの通過帯域の外の周期単位帯域λが成立することを避けなければならない。従って
図8に示すように、ダミー電極18の配列領域における最大周期単位をd3、最小周期単位をd4とすると、d1≦d4≦d3≦d2に設定する必要がある。即ちダミー電極におけるバスバーと平行な幅寸法は、Tr1における電極指15の幅寸法以下であり、Tr2における電極指15の幅寸法以上であることが必要である。