特許第5965213号(P5965213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965213銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法及び装置
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  • 特許5965213-銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965213
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C01G 3/02 20060101AFI20160721BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20160721BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20160721BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20160721BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C01G3/02
   C22B15/00 107
   C22B7/00 G
   C22B3/44 101A
   C02F1/62 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-118306(P2012-118306)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-245123(P2013-245123A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100093942
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 良二
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 琢也
(72)【発明者】
【氏名】小林 厚史
(72)【発明者】
【氏名】加納 一憲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利宏
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−012327(JP,A)
【文献】 特開2011−168856(JP,A)
【文献】 特開2010−105912(JP,A)
【文献】 特開2004−299974(JP,A)
【文献】 特開平08−002915(JP,A)
【文献】 特開2001−253710(JP,A)
【文献】 特開2010−046653(JP,A)
【文献】 特開2003−260475(JP,A)
【文献】 特開2002−115100(JP,A)
【文献】 米国特許第04490337(US,A)
【文献】 縄舟秀美ほか,含銅排水からのマラカイト生成に及ぼす沈殿条件の影響,金属表面技術,日本,社団法人金属表面技術協会,1979年,Vol.30, No.2,p.100-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G1/00−23/08
C22B1/00−61/00
C02F1/58−1/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅含有酸性廃液を、当該銅含有酸性廃液に対して中和当量以上の液量のアルカリ性溶液中に注加して混合し、酸化銅を主成分とする固形物を含有する懸濁液を生成し、当該懸濁液中から酸化銅を主成分とする固形物を分離して回収する方法であって、銅含有酸性廃液を注加するアルカリ性溶液の温度を55℃以上に設定し、アルカリ性溶液にアルカリ金属の炭酸塩の溶液を用い、
銅含有酸性廃液を中和するのに必要なアルカリ性溶液の量を予め求め、求めた量より多い量の前記アルカリ性溶液中に銅含有酸性廃液を間欠的に注加し、銅含有酸性廃液の積算の注加量が、前記アルカリ性溶液をpH7に中和するのに必要な銅含有酸性廃液量に対し、0.8当量となるように注加し、
銅含有酸性廃液の注加操作中も銅含有酸性廃液とアルカリ性溶液との反応液を55℃以上に維持するように管理することを特徴とする銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法。
【請求項2】
銅含有酸性廃液をアルカリ性溶液中に注加する操作中は、銅含有酸性廃液とアルカリ性溶液との反応液のpHが一時的にでも7以下に下がらないように管理することを特徴とする請求項1記載の銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法。
【請求項3】
銅含有酸性廃液に対して中和当量以上の液量で溶液温度が55℃以上のアルカリ性溶液と、前記アルカリ性溶液中に間欠的に注加される銅含有酸性廃液とを混合反応させ、反応液の温度を55℃以上に維持し、酸化銅を主成分とする固形物を含有する懸濁液を生成する混合反応槽と、
前記懸濁液から酸化銅を主成分とする固形物を分離する固液分離装置とを備え、
銅含有酸性廃液を注加するアルカリ性溶液は、アルカリ金属の炭酸塩の溶液からなり、前記銅含有酸性廃液の積算の注加量は、前記アルカリ性溶液をpH7に中和するのに必要な銅含有酸性廃液量に対し、0.8当量となる量であることを特徴とする銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法及び装置に関し、更に詳細には、例えば銅プリント基板を塩化第二銅エッチング液でエッチングする際に生じるエッチング廃液、電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液、多層プリント基板を生産する際の積層工程において基板表面の粗化処理で発生するエッチング廃液などの高濃度の銅イオンを含有する銅含有酸性廃液から銅を酸化銅として除去して回収する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅イオンを高濃度で含有する酸性の廃液(以下、「銅含有酸性廃液」という)としては、銅プリント基板を塩化第二銅エッチング液でエッチングする際に生じるエッチング廃液、電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液、多層プリント基板を生産する際の積層工程において基板表面の粗化処理で発生するエッチング廃液などが知られている。これらの廃液は、銅濃度が5〜20質量%(以下、単に「%」で示す)程度と高い一方で、共存する塩化物イオンや硫酸イオンの濃度も通常5〜30%と高い。
【0003】
このような銅含有酸性廃液を対象にした銅の回収処理方法としては、イオン化傾向の差を利用し、例えば鉄スクラップと反応させて金属銅を析出させて回収する方法が一部で行われている。しかしながら、この方法では廃液からの銅回収率が低いという問題がある。また、銅イオンとの反応により溶出した鉄イオンと残留した銅イオンとが含まれる廃液が残るため、この廃液の処理が別途必要になり効率的な処理方法とは言いがたい。
【0004】
ところで、銅含有酸性廃液を対象にした銅の回収処理方法では、例えば特許第4323668号(特許文献1)に開示されているように、回収した塩基性炭酸銅へ、銅含有酸性廃液中に大量に含まれる硫酸イオンや塩化物イオンなどの陰イオン類が混入しないようにする方法が開発されている。この方法は、回収された塩基性炭酸銅に陰イオン類が混入することによる悪影響を避けるためのものであり、特許文献1にも開示されているように回収した銅化合物の再利用に当たり陰イオン類の混入を低減することが求められている。
【0005】
本発明者らは、先に、特許第4199821号(特許文献2)にて銅含有酸性廃液と酸化剤とを混合した後、混合液をアルカリ剤溶液に添加することで、酸化銅を効率よく回収できる方法を提案した。この方法によれば、銅含有酸性廃液と酸化剤の混合液をアルカリ剤溶液中に滴下することで、酸化銅を主成分とする固形物が得られる。すなわちこの方法によれば、銅含有酸性廃液を酸化剤と共に、少量ずつアルカリ剤溶液に混合することで、適切な希釈効果を得ながら銅含有酸性廃液を中和し、銅含有酸性廃液に含まれる銅イオンを酸化し、酸化銅とすることができる。
しかしながら、本発明者らの実験によれば、この方法で回収された酸化銅中の塩素含有率は190mg/kgであり、塩基性炭酸銅を再利用する場合と同様に回収酸化銅の用途によってはさらなる塩素含有率の低減が求められる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4323668号公報
【特許文献2】特許第4199821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、銅含有酸性廃液を処理して酸化銅を効率よく回収するとともに、回収された酸化銅中の陰イオン含有率を低減することができる銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法は、銅含有酸性廃液を、当該銅含有酸性廃液に対して中和当量以上の液量のアルカリ性溶液中に注加して混合し、酸化銅を主成分とする固形物を含有する懸濁液を生成し、当該懸濁液中から酸化銅を主成分とする固形物を分離して回収する方法であって、銅含有酸性廃液を注加するアルカリ性溶液の温度を55℃以上に設定し、アルカリ性溶液にアルカリ金属の炭酸塩の溶液を用い、銅含有酸性廃液を中和するのに必要なアルカリ性溶液の量を予め求め、求めた量より多い量の前記アルカリ性溶液中に銅含有酸性廃液を間欠的に注加し、銅含有酸性廃液の積算の注加量が、前記アルカリ性溶液をpH7に中和するのに必要な銅含有酸性廃液量に対し、0.8当量となるように注加し、銅含有酸性廃液の注加操作中も銅含有酸性廃液とアルカリ性溶液との反応液を55℃以上に維持するように管理することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、処理対象である銅含有酸性廃液の中和当量に対して過剰量のアルカリ性溶液が供給された混合反応槽中に、銅含有酸性廃液を徐々に注加し混合することで酸化銅を主成分とする固形物を生成させることができ、塩素含有率の低い酸化銅を主成分とする固形物を生成することができる。
また、アルカリ性溶液を加温することにより、酸化銅中の塩素含有率を下げることができる。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、銅含有酸性廃液をアルカリ性溶液中に注加する操作中は、銅含有酸性廃液とアルカリ性溶液との反応液のpHが一時的にでも7以下に下がらないように管理することを特徴とする。
銅含有酸性廃液とアルカリ性溶液との反応中は、常に反応液のpHが7以下にならないように管理することにより、処理液中に生成した酸化銅から銅がCu2+の形態で再溶解することを抑制することができる。
【0013】
本発明の銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収装置は、銅含有酸性廃液に対して中和当量以上の液量で溶液温度が55℃以上のアルカリ性溶液と、前記アルカリ性溶液中に間欠的に注加される銅含有酸性廃液とを混合反応させ、反応液の温度を55℃以上に維持し、酸化銅を主成分とする固形物を含有する懸濁液を生成する混合反応槽と、前記懸濁液から酸化銅を主成分とする固形物を分離する固液分離装置とを備え、銅含有酸性廃液を注加するアルカリ性溶液は、アルカリ金属の炭酸塩の溶液からなり、前記銅含有酸性廃液の積算の注加量は、前記アルカリ性溶液をpH7に中和するのに必要な銅含有酸性廃液量に対し、0.8当量となる量であることを特徴とする。
【0015】
本発明の酸化銅の回収装置を用いることにより、処理対象である銅含有酸性廃液の中和当量に対して過剰量のアルカリ性溶液が供給された混合反応槽中に、銅含有酸性廃液を徐々に注加し混合することで酸化銅を主成分とする固形物を生成させることができ、塩素含有率の低い酸化銅を主成分とする固形物を生成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、銅イオンの含有濃度が5〜20%という高濃度の銅含有酸性廃液を希釈することなく直接処理することができ、酸化銅を主成分とする生成物を回収できると同時に、回収した酸化銅を主成分とする生成物に含まれる塩化物イオンなどの陰イオン濃度を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法を実施する回収装置の一態様を示す模式図である。
図2】本発明の銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法を実施する回収装置の別の一態様を示す模式図である。
図3】実施例1における銅エッチング廃液と炭酸ナトリウム水溶液の中和曲線を示すグラフである。
図4】実施例2における銅エッチング廃液と炭酸ナトリウム溶液及び水酸化ナトリウム溶液の中和曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の銅含有酸性廃液からの酸化銅の回収方法(以下、「本発明の回収方法」という)による処理プロセスでは、処理対象の銅含有酸性廃液の中和当量に対して過剰量のアルカリ性溶液が供給された混合反応槽中に、銅含有酸性廃液を徐々に注加するというものである。すなわち、銅含有酸性廃液をアルカリ性溶液中に注加して混合することで酸化銅を主成分とする固形物を含有する懸濁液を生成させるというものである。
【0019】
本発明の回収方法においては、基本的に銅含有酸性廃液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液との中和を、中和点よりアルカリ側で実施することが重要である。従って、本発明の回収方法を実施するには、アルカリ金属の炭酸塩水溶液が過剰の状態、例えば、中和量に対して1.2倍程度過剰な状態で中和を行うことが必要であり、アルカリ金属の炭酸塩水溶液に銅含有酸性廃液(および酸化剤)を徐々に、十分に撹拌しつつ加えていく必要がある。また、アルカリ金属の炭酸塩水溶液を中和当量より過剰に供給し、反応中は常にpHが7以下にならないようにすることが必要である。
また、アルカリ剤としてアルカリ金属の炭酸塩水溶液とアルカリ金属の水酸化物水溶液の混合物を用いる場合においても、同様に中和反応を中和点よりアルカリ側で実施することが重要である。
従って、本発明の回収方法を実施するに当たっては、処理する銅含有酸性廃液や、使用するアルカリ剤について予め実験を行い、処理すべき銅含有酸性廃液量に対して必要なアルカリ剤量を調べておくことが好ましい。
【0020】
本発明の回収方法で処理対象となる銅含有酸性廃液としては、銅をイオン状態で含有する酸性廃液であり、銅含有酸性廃液中の銅イオン濃度や陰イオン濃度は特に制約されない。本発明の回収方法で特に好適に処理できる銅含有酸性廃液の具体例として、銅プリント基板を塩化第二銅エッチング液でエッチングする際に生じるエッチング廃液、電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液、多層プリント基板を生産する際の積層工程において基板表面の粗化処理で発生するエッチング廃液などの銅含有酸性廃液であり、銅イオン濃度が高く、塩化物イオン濃度や硫酸イオン濃度などの陰イオン濃度の高い廃液が挙げられる。
【0021】
また、本発明の回収方法でのアルカリ性溶液の調製に利用されるアルカリ剤としては、アルカリ金属の炭酸塩水溶液、例えば炭酸ナトリウム水溶液、アルカリ金属の水酸化物水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液を使用することができる。具体的なアルカリ剤の選定においては、銅含有酸性廃液中に共存する可能性がある陰イオンと沈降性の塩を形成しないことに留意する必要がある。
一方、使用するアルカリ剤の量は、処理対象の銅含有酸性廃液の銅イオン濃度、陰イオン濃度および液量によって決定される。従って、予め小スケールの実験を行って、処理すべき銅含有酸性廃液を中和するのに必要なアルカリ剤量を予め求め、実際の処理では、予め求めた量に基づいて必要なアルカリ剤量を決めると良い。
【0022】
なお、アルカリ剤として固体状のアルカリを使用する場合は、廃液量の増加を抑制できる利点がある。固体状のアルカリ剤を用いる場合、固体状のアルカリ剤を水等で予め溶解させてから混合反応槽に供給しても良く、混合反応槽内に固体状のまま供給して混合反応槽で溶解させても良い。更に、固体状のアルカリ剤を溶解させる水としては固液分離により固形物から分離された分離液、分離された固形物の洗浄処理で生じた洗浄処理排水等を用いることもできる。一方、アルカリ剤としてアルカリ性溶液を用いる場合は、使用するアルカリ剤量の制御が容易である点や、薬剤の補充が容易であり溶解操作が不要であるなどの取り扱い面での利点がある。
【0023】
本発明の回収方法では、アルカリ金属の炭酸塩としては、入手しやすいことから炭酸ナトリウムが好ましい。炭酸ナトリウムを用いる場合は、粉体などの固体や水溶液を利用できる。炭酸ナトリウム水溶液を用いる場合は、濃度は特に限定されないが、例えば15重量%程度の濃度の炭酸ナトリウム水溶液が利用できる。また、アルカリ金属の水酸化物としては、入手のしやすさから水酸化ナトリウムが好ましい。炭酸ナトリウムと同様に水酸化ナトリウムでも、フレーク(薄片)などの固体や水溶液を利用できる。水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合の濃度は特に限定されないが、例えば25重量%の水酸化ナトリウム水溶液が利用できる。
【0024】
銅含有酸性廃液と酸化剤の混合液をアルカリ剤に添加すると、銅含有酸性廃液中の銅イオンから酸化銅を主成分とする沈殿物が生成する。反応終了後、この沈殿物は洗浄工程に移送される。銅含有酸性廃液には銅イオンの他にアニオンとして塩化物イオンや硫酸イオンが含まれる。このため、銅含有酸性廃液をアルカリ剤に添加すると、銅含有酸性廃液中のアニオンがアルカリ剤中のカチオンと反応して塩を形成する。
本反応では、不溶性の塩を形成しないように銅含有酸性廃液に対するアルカリ剤を選定しているため、反応終了時点において塩は溶解状態で酸化銅を含む沈殿物のスラリー中に存在する。酸化銅は有価物なので回収するが、酸化銅を含む沈殿物のスラリーをこのまま乾燥するだけでは酸化銅に塩が残留し、回収した酸化銅の品質低下の原因となる。
回収した酸化銅中の不純物を除去するため、酸化銅のスラリーは洗浄工程に移送し、不純物を洗浄する。
【0025】
以上のことを踏まえ、プリント基板製造工程から排出される酸性の銅エッチング廃液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液として炭酸ナトリウム水溶液を用いる場合を例にとり、銅含有酸性廃液の処理について以下に説明する。
【0026】
本発明の回収方法による処理プロセスにおいては、まず、処理すべき銅エッチング廃液の中和当量を超える量の炭酸ナトリウム水溶液を準備し、混合反応槽に入れる。次いで、銅含有酸性廃液を酸化剤と混合した後、混合液を混合反応槽中に少量ずつ注加して行く。この注加は、連続的でも間欠的でもかまわないが、好ましくは間欠的に行う。
【0027】
本発明の回収方法において、炭酸ナトリウム水溶液と銅エッチング廃液の混合では、銅エッチング廃液中の銅イオンは酸化剤の存在下、速やかに酸化銅へ変化する。
ここで、反応開始時におけるアルカリ剤の温度を55℃以上とし、注加操作中も反応槽内の温度を55℃以上に保つことで回収される酸化銅に含まれる不純物としての塩素含有率が低減する。
【0028】
なお、反応中に銅エッチング廃液の注加量が、混合反応槽内の炭酸ナトリウム水溶液の中和当量を超えると、混合反応槽内の懸濁液のpHが7未満となり、銅がCu2+の形態で再溶解し、処理水中の銅濃度が上昇する。銅エッチング廃液(銅含有酸性廃液)から銅を除去・回収することが本発明の目的であるため、このような現象は好ましくない。そのため、銅含有酸性廃液の注加、混合に当たり、反応系内において、一時的にでもまた部分的にでもpHが中和点より酸性側にならないように管理することも重要である。具体的には、反応中、混合反応槽のpHを測定し、反応中の液のpH値を7より高く、好ましくは8以上に維持するよう管理することで、銅がCu2+の形態で再溶解することを抑制することが望ましい。
【0029】
本発明の回収方法を実施するための中和、回収処理装置(以下、「本発明の回収装置」という)としては、アルカリ金属の炭酸塩の水溶液の供給手段、銅含有酸性廃液(及び酸化剤)の注加手段および銅含有酸性廃液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液との混合手段を有し、アルカリ金属の炭酸塩水溶液と銅含有酸性廃液を反応させてアルカリ性懸濁液を生成する混合反応槽と、当該アルカリ性懸濁液より酸化銅を主成分とする固形物と高濃度塩水とに分離する固液分離装置とを備えた装置が挙げられる。
【0030】
本発明の回収装置の一態様を図1に模式的に示す。図1に示すように、本発明の回収装置は、銅含有酸性廃液1と酸化剤2とを混合する混合槽11と、銅含有酸性廃液1と酸化剤2との混合液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液3とを混合して反応させる混合反応槽12と、混合反応槽12における反応終了後のアルカリ性懸濁液4が供給される固液分離装置13とを備えている。
【0031】
図1に示す本発明の回収装置では、銅含有酸性廃液1と酸化剤2とは、混合槽11に供給されて混合槽11内で混合される。そして、銅含有酸性廃液1と酸化剤2の混合液は、アルカリ金属の炭酸塩水溶液3が供給された混合反応槽12に少量ずつ注加される。混合反応槽12においてアルカリ金属の炭酸塩水溶液3と銅含有酸性廃液とが反応してアルカリ性懸濁液が生成される。反応終了後、アルカリ性懸濁液4は固液分離装置13に移送され、固液分離装置13において固液分離・洗浄後、酸化銅を主成分とする固形物5が回収される。また、固液分離装置13から洗浄排水6が排出される。
【0032】
また、本発明の回収方法を実施するための別の回収装置としては、アルカリ金属の水酸化物の水溶液の供給手段、アルカリ金属の炭酸塩の水溶液の供給手段、銅含有酸性廃液(及び酸化剤)の注加手段、および銅含有酸性廃液とアルカリ剤(アルカリ金属の水酸化物とアルカリ金属の炭酸塩)の水溶液との混合手段を有し、アルカリ剤の水溶液と銅含有酸性廃液とを反応させてアルカリ性懸濁液を生成する混合反応槽と、当該アルカリ性懸濁液より酸化銅を主成分とする固形物と高濃度塩水とに分離する固液分離装置とを備えた装置が挙げられる。
【0033】
本発明の回収装置の別の一態様を図2に模式的に示す。図2に示す態様においては、アルカリ金属の炭酸塩水溶液とアルカリ金属の水酸化物水溶液との混合液7が混合反応槽12に供給される。すなわち、銅含有酸性廃液1と酸化剤2の混合液は、アルカリ金属の炭酸塩水溶液とアルカリ金属の水酸化物水溶液との混合液7が供給された混合反応槽12に少量ずつ注加される。混合反応槽12において、アルカリ金属の炭酸塩水溶液とアルカリ金属の水酸化物水溶液との混合液7と、銅含有酸性廃液とが反応してアルカリ性懸濁液が生成される。反応終了後、アルカリ性懸濁液4は固液分離装置13に移送され、固液分離装置13において固液分離・洗浄後、酸化銅を主成分とする固形物5が回収される。また、固液分離装置13から洗浄排水6が排出される。それ以外の構成は図1とほぼ同じである。
【0034】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、銅含有酸性廃液として塩化銅エッチング廃液(以下、銅エッチング廃液という)、アルカリ剤として炭酸ナトリウム水溶液を用いた。処理終了(反応終了)時点の混合反応槽内のpH値を7より高くするため、使用する15重量%炭酸ナトリウム水溶液をpH7に中和するのに必要な銅エッチング廃液量に対し、銅エッチング廃液の積算の注加量が0.8当量となる量の銅エッチング廃液を最終的に混合反応槽に供給することとした。また、炭酸ナトリウム水溶液を中和するために必要な銅エッチング廃液の混合反応槽への注加操作は、8回に分けて行った。
【0035】
<予備試験>
処理の前に、処理する予定の銅エッチング廃液量に対する必要最低限の15重量%炭酸ナトリウム水溶液の量を求めるため、中和処理試験を行った。15重量%炭酸ナトリウム水溶液に銅エッチング廃液を少量ずつ添加し、銅エッチング廃液の添加量に対するpHを測定したところ、図3に示すような中和曲線が得られた。図3において、横軸は15重量%炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ剤1mあたりの銅エッチング廃液の添加量(m)を示し、縦軸はpHを示す。図3より1mの15重量%炭酸ナトリウム水溶液を中和してpH7とするための銅エッチング廃液量を求めると、図3中の太い点線で示すように約0.2mであった。この結果より、実施例1では、使用する銅エッチング廃液と15重量%炭酸ナトリウム水溶液を混合してpH7とするための混合比率は、容積比で0.2:1であるとした。
【0036】
<処理操作>
予備試験の結果に従い、5リットル(L)のビーカーに15%重量炭酸ナトリウム水溶液を3.1L添加し、マグネティックスターラーで撹拌しながら、80℃になるまで加熱した。炭酸ナトリウム水溶液の温度が80℃に達した後、銅エッチング廃液62.5mLと30wt%過酸化水素水16mLとを混合し、この混合液を5リットルのビーカー内を撹拌しながら、3分間かけて炭酸ナトリウム水溶液に添加した。混合液の注加終了後は5リットルのビーカーを撹拌しながら3分間放置した。その後、再び、銅エッチング廃液と過酸化水素水との混合液を5リットルのビーカーに注加し、3分間放置する操作を計8回繰り返した。この8回の注加操作中、5リットルのビーカーは常時撹拌し、ビーカー中の反応液の温度を、80〜90℃に維持した。
【0037】
8回目の注加操作が終了した後、撹拌を更に30分間継続し、反応を終了した。以上の操作により、やや褐色を帯びた黒色の固形物を含む懸濁液を生成した。この懸濁液を約12時間放置した後、上澄液を分離した。
黒色固形物は洗浄・乾燥後、X線結晶回折分析を行い酸化銅であることを確認した。また、この酸化銅の塩素含有率を測定したところ、酸化銅1kgあたり67mgであった。
【0038】
<実施例2>
実施例2では、アルカリ剤として15重量%炭酸ナトリウム水溶液と25重量%水酸化ナトリウム水溶液との混合液を用いた。実施例1と同様に処理終了(反応終了)時点の混合反応槽内のpH値を7より高くするため、使用するアルカリ剤をpH7に中和するのに必要な銅エッチング廃液量に対し、銅エッチング廃液の積算の注加量が0.8当量となる量の銅エッチング廃液を最終的に混合反応槽に供給することとした。また、アルカリ剤を中和するために必要な銅エッチング廃液の混合反応槽への注加操作は、8回に分けて行った。
【0039】
<予備試験>
処理の前に、処理する予定の銅エッチング廃液量に対する必要最低限のアルカリ剤の量を決めるため、中和処理試験を行った。15重量%炭酸ナトリウム水溶液と25重量%水酸化ナトリウム水溶液とのそれぞれに銅エッチング廃液を少量ずつ添加し、銅エッチング廃液の添加量に対するpHを測定したところ、図4に示すような中和曲線が得られた。図4において、横軸はアルカリ剤(15重量%炭酸ナトリウム水溶液と25重量%水酸化ナトリウム水溶液)1mあたりの銅エッチング廃液の添加量(m)を示し、縦軸はpHを示す。図4より1mの15重量%炭酸ナトリウム水溶液を中和してpH7とするための銅エッチング廃液量を求めると図4中の太い点線で示すように約0.2m、1mの25重量%水酸化ナトリウム水溶液を中和してpH7とするための銅エッチング廃液量を求めると約1.15mであった。
【0040】
実施例2では、処理対象となる銅エッチング廃液の75%がアルカリ剤中の炭酸ナトリウムと反応し、銅エッチング廃液の25%がアルカリ剤中の水酸化ナトリウムと反応するような15重量%炭酸ナトリウム水溶液と25重量%水酸化ナトリウム水溶液との混合比率とした。
【0041】
<処理操作>
予備試験の結果に従い、5リットル(L)のビーカーに15重量%炭酸ナトリウム水溶液を2.3L、25重量%水酸化ナトリウム水溶液を140mL添加し、マグネティックスターラーで混合・撹拌しながら、80℃になるまで加熱した。この混合アルカリ剤の温度が80℃に達した後、銅エッチング廃液62.5mLと30wt%過酸化水素水16mLとを混合し、この混合液を、5リットルのビーカー内を撹拌しながら3分間かけてアルカリ剤水溶液に注加した。混合液の注加終了後は5リットルのビーカーを撹拌しながら3分間放置した。その後、再び、銅エッチング廃液と過酸化水素水との混合液を5リットルのビーカーに注加し、3分間放置する操作を計8回繰り返した。この8回の注加操作中、5リットルのビーカーは常時撹拌し、ビーカー中の反応液の温度を、80〜90℃に維持した。
【0042】
8回目の注加操作が終了した後、撹拌を更に30分間継続し、反応を終了した。以上の操作により、やや褐色を帯びた黒色の固形物を含む懸濁液を生成した。この懸濁液を約12時間放置した後、上澄液を分離した。
黒色固形物は洗浄・乾燥後、X線結晶回折分析を行い酸化銅であることを確認した。また、この酸化銅の塩素含有率を測定したところ、酸化銅1kgあたり50mg未満であった。
【0043】
<比較例1>
比較例1では、銅エッチング廃液とアルカリ剤として25重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いた。処理操作はアルカリ剤以外は実施例1及び2と同様に実施した。25重量%水酸化ナトリウム水溶液と銅エッチング廃液の量比は、実施例1及び2と同様にあらかじめ中和処理試験を行い中和曲線を求め、中和曲線のデータから決定した。
【0044】
<処理操作>
2リットル(L)のビーカーに25重量%水酸化ナトリウム水溶液を540mL添加し、マグネティックスターラーで混合・撹拌しながら、80℃になるまで加熱した。この水酸化ナトリウム水溶液の温度が80℃に達した後、銅エッチング廃液62.5mLと30wt%過酸化水素水16mLとを混合し、この混合液を、2リットルのビーカー内を撹拌しながら3分間かけて水酸化ナトリウム水溶液に注加した。混合液の注加終了後は2リットルのビーカーを撹拌しながら3分間放置した。その後、再び、銅エッチング廃液と過酸化水素水との混合液を2リットルのビーカーに注加し、3分間放置する操作を計8回繰り返した。この8回の注加操作中、2リットルのビーカーは常時撹拌し、ビーカー中の反応液の温度を、80〜90℃に維持した。
【0045】
8回目の注加操作が終了した後、撹拌を更に30分間継続し、反応を終了した。以上の操作により、やや褐色を帯びた黒色の固形物を含む懸濁液を生成した。この懸濁液を約12時間放置した後、上澄液を分離した。
黒色固形物は洗浄・乾燥後、X線結晶回折分析を行い酸化銅であることを確認した。また、この酸化銅の塩素含有率を測定したところ、酸化銅1kgあたり91mgであった。
比較例1において生成した酸化銅の塩素含有率は、実施例1及び2の酸化銅と比較するとやや高い傾向が見られたことから、回収される酸化銅の塩素含有率を低減するためにはアルカリ金属の炭酸塩をアルカリ剤として用いることが有効であることを確認できた。
【0046】
<比較例2>
比較例2ではアルカリ剤を加温しなかった点以外は、比較例1と同様に操作した。
<処理操作>
2リットル(L)のビーカーに25重量%水酸化ナトリウム水溶液を540mL添加し、マグネティックスターラーで混合・撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液の温度は約25℃であった。銅エッチング廃液62.5mLと30wt%過酸化水素水16mLとを混合し、この混合液を、2リットルのビーカー内を撹拌しながら3分間かけて水酸化ナトリウム水溶液に注加した。混合液の注加終了後は2リットルのビーカーを撹拌しながら3分間放置した。その後、再び、銅エッチング廃液と過酸化水素水との混合液を2リットルのビーカーに注加し、3分間放置する操作を計8回繰り返した。この8回の注加操作中、2リットルのビーカーは常時撹拌した。すべての注加操作が終了した時点での、ビーカー中の反応液の温度は約50℃であった。
【0047】
8回目の注加操作が終了した後、撹拌を更に30分間継続し、反応を終了した。以上の操作により、やや褐色を帯びた黒色の固形物を含む懸濁液が生成した。この懸濁液を約12時間放置した後、上澄液を分離した。
黒色固形物は洗浄・乾燥後、X線結晶回折分析を行い酸化銅であることを確認した。また、この酸化銅の塩素含有率を測定したところ、酸化銅1kgあたり180mgであった。
比較例2において生成した酸化銅の塩素含有率は、実施例1及び2、比較例1の酸化銅と比較すると高い傾向が見られたことから、回収される酸化銅の塩素含有率を低減するためには反応開始時と注加操作中の混合反応槽内の温度を高くすることが有効であることを確認できた。
【0048】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 銅含有酸性廃液
2 酸化剤
3 アルカリ金属の炭酸塩水溶液
4 アルカリ性懸濁液
5 固形物
6 洗浄排水
7 アルカリ金属の炭酸塩水溶液とアルカリ金属の水酸化物水溶液
11 混合槽
12 混合反応槽
13 固液分離装置
図1
図2
図3
図4