特許第5965226号(P5965226)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965226
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】熱処理炉用トレー
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/00 20060101AFI20160721BHJP
   C04B 35/83 20060101ALI20160721BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C21D1/00 F
   C04B35/52 E
   F27D3/12 S
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-150352(P2012-150352)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-12872(P2014-12872A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222842
【氏名又は名称】東洋炭素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126963
【弁理士】
【氏名又は名称】来代 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100131864
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 正憲
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 俊行
(72)【発明者】
【氏名】平岡 利治
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 信孝
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−123219(JP,A)
【文献】 特開2003−073728(JP,A)
【文献】 特開2003−207279(JP,A)
【文献】 特開平09−264672(JP,A)
【文献】 特開2004−107705(JP,A)
【文献】 実開平04−013653(JP,U)
【文献】 実開昭57−102556(JP,U)
【文献】 特開2002−194423(JP,A)
【文献】 特表2002−532840(JP,A)
【文献】 特表2006−527351(JP,A)
【文献】 特開平02−205620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00
F27D 3/00−5/00
C04B 35/52−35/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化炭素複合材から成る複数の板材を格子状に組み合わせて構成されるトレー本体と、
前記トレー本体を外囲する方形状の炭素繊維強化炭素複合材から成る外枠と、
を備え、
前記外枠の周囲4辺部のうち少なくとも一対の対向する辺部の外側面には突起部が存在せず、
前記外枠は4つの板材が組み合わされて構成されており、該外枠を構成する4つの板材のうち一対の対向する板材は、該板材に対向するトレー本体の最も外側に配置される板材に締結具によって固定されていることを特徴とする熱処理炉用トレー。
【請求項2】
前記外枠の周囲4辺部全ての外側面には突起部が存在しない請求項に記載の熱処理炉用トレー。
【請求項3】
前記外枠の周囲4辺部は、他部材の直線状端縁に接触した際に、周囲4辺部の延設方向全体において接触しながら摺動可能となされている請求項1又は2に記載の熱処理炉用トレー。
【請求項4】
前記トレー本体及び外枠は、上下両面において同一高さに揃えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理炉用トレー。
【請求項5】
前記上下両面は、いずれか少なくとも一方の面が他部材の直線状端縁に接触した際に、上下両面の延設方向全体において接触しながら摺動可能となされている請求項に記載の熱処理炉用トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属やセラミック等の各種の材料を熱処理する高温炉、特に油焼入れ熱処理炉に用いられる被熱処理材を載置する熱処理炉用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱処理炉用トレーとして多く用いられていたのは金属製トレーである。しかし、金属製トレーには以下のような欠点がある。即ち、熱処理炉では800℃以上の高温での熱処理を行うが、金属製トレーは、高温強度が不十分なため、使用中に変形や亀裂が発生し易く、寿命が短い。また、重量が重いため、熱容量が大きくなり、操炉の消費電力も多くなる。
【0003】
そこで、上記のような金属製トレーの欠点を解消したものとして炭素繊維強化炭素複合材(以下、C/C材と称する)製の熱処理炉用トレーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなC/C材製熱処理炉用トレーの典型的な従来例を図5及び図6に示す。図5及び図6において、50は熱処理炉用トレーであって、多数のC/C材製板材51A,51Bが格子状に組み合わされて構成されている。即ち、縦方向に配列された板材51Aには、その上端部に切欠き52が長手方向に間隔をあけて形成されており、横方向に配列された板材51Bには、その下端部に切欠き52が長手方向に間隔をあけて形成されており、板材51Aの切欠き52と板材51Bの切欠き52とが嵌合して格子状に組み合わされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2526160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来例の熱処理炉用トレー50では構造上から、熱処理炉用トレー50の外周面から板材51A,51Bの先端部が突出する形状となっている。換言すれば、熱処理炉用トレー50の外周面に突起部が存在している。
このような突起部が存在していると、熱処理を行う際に当該突起部が炉内物に引っ掛かり、作業に支障をきたすという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、トレー外周面に突起部が存在しないようにして、作業を円滑に行うことを可能にした熱処理炉用トレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明に係る熱処理炉用トレーは、炭素繊維強化炭素複合材から成る複数の板材を格子状に組み合わせて構成されるトレー本体と、前記トレー本体を外囲する方形状の炭素繊維強化炭素複合材から成る外枠と、を備え、前記外枠の周囲4辺部のうち少なくとも一対の対向する辺部の外側面には突起部が存在しないことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、外枠の周囲4辺部のうち少なくとも一対の対向する辺部の外側面には突起部が存在しないので、熱処理を行う際に当該突起部が炉内物に引っ掛かり、作業に支障をきたすという問題が低減され、熱処理作業を円滑に行うことを可能になる。
【0009】
本発明において、前記外枠の周囲4辺部全ての外側面には突起部が存在しない構成であるのが好ましい。
このような構成であれば、熱処理を行う際に当該突起部が炉内物に引っ掛かり、作業に支障をきたすという問題が完全に解消され、より熱処理作業を円滑に行うことを可能になる。
【0010】
本発明において、前記外枠は4つの板材が組み合わされて構成されており、該外枠を構成する4つの板材のうち一対の対向する板材は、該板材に対向するトレー本体の最も外側に配置される板材に締結具によって固定されている構成であるのが好ましい。
このような構成であれば、外枠とトレー本体とが強固に固定されるので、熱処理炉用トレー全体の強度が向上する。
【0011】
本発明において、前記外枠を構成する一対の対向する板材と、残りの一対の対向する板材とは、4隅で嵌合して連結固定されている構成であるのが好ましい。
このような構成であれば、接着剤等を用いることなく外枠を構成する板材同士を連結固定することができる。
【0012】
本発明において、前記外枠の周囲4辺部は、他部材の直線状端縁に接触した際に、周囲4辺部の延設方向全体において接触しながら摺動可能に構成されるのが好ましい。
この様な構成であれば、例えば炉内への出し入れにおいてトレーが炉壁に接触した場合、周囲4辺部が接触しながらでもトレーを前後に動かすことができ、作業時において生じる支障を最低限に留めることができる。
【0013】
本発明において、前記トレー本体及び外枠は、上下両面において同一高さに揃えられている構成であるのが好ましい。
この様な構成であれば、上下両面においても突起部分が生じないので、外側面に突起部が無い事と相俟って、突起部が炉内物に引っ掛かる問題を効果的に解決することができる。
【0014】
また本発明において、前記上下両面は、いずれか少なくとも一方の面が他部材の直線状端縁に接触した際に、上下両面の延設方向全体において接触しながら摺動可能に構成されているのが好ましい。
この様な構成であれば、例えば炉内への出し入れにおいてトレーが炉壁に接触した場合、上下両面のいずれか一方の面が接触しながらでもトレーを前後に動かすことができ、作業時において生じる支障を最低限に留めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外枠の周囲4辺部のうち少なくとも一対の対向する辺部の外側面には突起部が存在しないので、熱処理を行う際に当該突起部が炉内物に引っ掛かり、作業に支障をきたすという問題が低減され、熱処理作業を円滑に行うことを可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る熱処理炉用トレーの斜視図。
図2】実施の形態に係る熱処理炉用トレーの平面図。
図3】実施の形態に係る熱処理炉用トレーの正面図。
図4】実施の形態に係る熱処理炉用トレーの側面図。
図5】従来例の熱処理炉用トレーの斜視図。
図6】従来例の熱処理炉用トレーの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は実施の形態に係る熱処理炉用トレーの斜視図、図2は実施の形態に係る熱処理炉用トレーの平面図、図3は実施の形態に係る熱処理炉用トレーの正面図、図4は実施の形態に係る熱処理炉用トレーの側面図である。熱処理炉用トレー1は、金属やセラミック等の各種の材料を熱処理する高温炉、特に油焼入れ熱処理炉に用いられる被熱処理材を載置する熱処理炉用トレーである。熱処理炉用トレー1は、トレー本体2と、トレー本体2を外囲する方形状の外枠3とを備える。外枠3の外側面には突起部が存在しない構成とされている。
【0019】
(トレー本体2の構成)
トレー本体2は、炭素繊維強化炭素複合材(C/C材)から成る多数の長尺状の板材44A,4Bを格子状に組み合わせて構成されている。具体的に説明すると、トレー本体2は、縦方向に平行に配列される複数個(本実施の形態では9個)の板材4Aと横方向に平行に配列される複数個(本実施の形態では7個)の板材4Bと、縦方向に平行に配列される複数個(本実施の形態では2個)の安全棒5とを備え、これら板材4Aと板材4Bとが格子状に組み合わされてトレー本体2を構成している。尚、本実施の形態では、トレー本体2の強度を向上させるために、縦方向に平行に配列される複数個(本実施の形態では2個)の安全棒5が備えられているが、安全棒5はトレー本体2に必須の構成部材ではなく、本発明に係るトレー本体としては、安全棒5のない構成であってもよい。
【0020】
次いで、板材4A,板材4Bの具体的に構成について説明する。板材4Aは、その上端部に長手方向に間隔をあけて複数の切欠き6aが形成されている。また、板材4Aの長手方向の両端面には、嵌合凸部7aがそれぞれ形成されている。板材4Aのうち最前列に位置する板材4A1及び最後列に位置する板材4A2には、長手方向両端側にボルト30が挿入する挿入孔11aが形成されている。また、板材4Bは、板材4Aと同様に、その下端部に長手方向に間隔をあけて複数の切欠き6bが形成されている。また、板材4Bの長手方向の両端面には、嵌合凸部7bがそれぞれ形成されている。更に、板材4Bには、安全棒5が挿入する挿入孔12aが形成されている。
【0021】
(外枠3の構成)
外枠3は、炭素繊維強化炭素複合材から成る一対の長尺状の板材10Aと、炭素繊維強化炭素複合材から成る一対の長尺状の板材10Bとが組み合わされて構成されている。板材10Aの長手方向両端部には、上下一対の蟻溝15がそれぞれ形成されている。また、板材10Aには、各板材4Bの嵌合凸部7bが嵌り込む嵌合孔16A、及び、ボルト30が挿入する挿入孔17が形成されている。一方、板材10Bの長手方向両端部には、蟻溝15に嵌り込む嵌合凸部18が形成されている。また、板材10Bには、各板材4Aの嵌合凸部7aが嵌り込む嵌合孔16Bが形成されている。
【0022】
(熱処理炉用トレー1の作製)
上記構成の熱処理炉用トレー1は以下のようにして作製される。
先ず、トレー本体2を以下のようにして組み立てる。即ち、複数の板材4Aを縦方向に所定の間隔をあけて配置し、安全棒5を板材4Bの挿入孔12aに挿入してトレーの形状の固定化を図る。次いで、横方向に所定の間隔をあけて複数の板材4Bを装着する。具体的には、複数の板材4Aの各切欠き6aに、複数の板材4Bの各切欠き6bを嵌め込む。このような嵌め込みにより、炭素繊維強化炭素複合材から成る多数の長尺状の板材4A,4Bを格子状に組み合わせて構成されるトレー本体2が作製される。
【0023】
次いで、トレー本体2に外枠3を取り付ける。具体的に以下のようにして行う。即ち、板材4Bの嵌合凸部7bに板材10Aの各嵌合孔16Aを嵌め込み、板材10Aをトレー本体2に取り付ける。また、同様に、板材4Aの嵌合凸部7aに板材10Bの各嵌合孔16Bを嵌め込み、板材10Bをトレー本体2に取り付ける。尚、嵌合凸部7bが嵌合孔16Aに嵌合した状態では、嵌合凸部7bの先端は嵌合孔16A内に存在しており、板材10Aの外側面から突出しない構成となっている。同様に、嵌合凸部7aが嵌合孔16Bに嵌合した状態では、嵌合凸部7aの先端は嵌合孔16B内に存在しており、板材10Bの外側面から突出しない構成となっている。
【0024】
そして、トレー本体2に板材10A,板材10Bを取り付けると共に、蟻溝15に嵌合凸部18を嵌め込む。これにより、外枠3がトレー本体2に取り付けられることになる。そして、最終的には、ボルト30を板材10Aの挿入孔17、板材4A1の挿入孔11aに順次挿入させ、2つのナット31で固定する。同様に、ボルト130を板材10Aの挿入孔17、板材4A2の挿入孔11aに順次挿入させ、2つのナット31で固定する。尚、ボルト30の頭部は、挿入孔17に没入した状態となっており、板材10Aの外側面に突出しない構成となっている。このようにして、外周面に突起部が存在しない熱処理炉用トレー1が作製される。
【0025】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、熱処理炉用トレーは、外枠の周囲4辺部全ての外側面には突起部が存在しないように構成されていが、外枠の周囲4辺部のうち一対の対向する辺部の外側面には突起部が存在しない構成としてもよい。
【0026】
(2)上記実施の形態では、ボルトとナットを用いて外枠の板材10Aをトレー本体の板材4Aに固定したが、ボルトとナット以外の締結具によって固定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、金属やセラミック等の各種の材料を熱処理する高温炉、特に油焼入れ熱処理炉に用いられる被熱処理材を載置する熱処理炉用トレーに適用される。
【符号の説明】
【0028】
1:熱処理炉用トレー1
2:トレー本体
3:外枠
4A,4B:トレー本体2を構成する板材
10A,10B:外枠3を構成する板材
15:蟻溝
18:嵌合凸部
30:ボルト
17,11a:挿入孔
31:ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6