(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、該ハウジング内に収容される固定子鉄心と、前記ハウジング内における前記固定子鉄心の位置を固定するために前記ハウジング内に設けられた固定機構と、を備える回転電機であって、
前記ハウジングは筒状体であり、
前記固定機構は、
前記回転電機の回転軸の軸方向における前記固定子鉄心の端面と当接して前記ハウジングに対する前記固定子鉄心の前記軸方向における位置を位置決めする位置決め部と、
前記固定子鉄心が前記位置決め部によって位置決めされた際、前記固定子鉄心の前記ハウジングの内周面との対向面を前記軸方向と交差する交差方向に沿って押圧する第1押圧部と、
前記固定子鉄心が前記位置決め部によって位置決めされた際、前記固定子鉄心の前記軸方向において前記位置決め部と当接する側とは反対側の端面を前記軸方向に沿って押圧する第2押圧部と、を備え、
前記位置決め部は、前記内周面から前記ハウジングの内側に突出して形成された段差部であり、
前記第1押圧部は、前記内周面から前記ハウジングの内側に向かって延出し、前記交差方向に変位可能なバネ体であり、
前記第2押圧部は、前記内周面から前記ハウジングの内側に向かって延出し、前記軸方向に変位可能なバネ体であり、
前記第1押圧部及び前記第2押圧部は、弾性変形した状態で前記固定子鉄心と接触することにより前記固定子鉄心を押圧することを特徴とする回転電機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された回転電機のように、ハウジング302内において固定子鉄心301を固定するためにハウジング302の内周面の一部を削り起こしてストッパ(第2ストッパ304)を形成する場合、高度な加工技術を必要とすることになる。そのため、当該加工のために特殊な装置を準備しなければならなかったり、加工により切削屑が発生して歩留まりが低下したりする等の問題が発生する虞がある。
【0007】
また、回転電機のメンテナンス時に固定子鉄心301の点検を行う場合にはハウジング302内の固定子鉄心301を容易に取り出すことができ、点検後にハウジング302内の所定位置に固定子鉄心301を再度固定する際にも容易に固定子鉄心301を固定し得るようになっている方が望ましい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、より簡単な構造で固定子鉄心をハウジング内の所定位置に固定しておくことが可能な回転電機を提供することである。特に、ハウジングの内周面の一部を削り起こす等の特殊な加工技術を要さずに固定子鉄心をハウジング内に固定することが可能な回転電機を提供することである。
また、本発明の他の目的は、一度ハウジング内に固定された固定子鉄心をハウジングから容易に取り外し、その後に固定子鉄心を再びハウジング内に容易に固定することが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の回転電機によれば、ハウジングと、該ハウジング内に収容される固定子鉄心と、前記ハウジング内における前記固定子鉄心の位置を固定するために前記ハウジング内に設けられた固定機構と、を備える回転電機であって、前記固定機構は、前記回転電機の回転軸の軸方向における前記固定子鉄心の端面と当接して前記ハウジングに対する前記固定子鉄心の前記軸方向における位置を位置決めする位置決め部と、前記固定子鉄心が前記位置決め部によって位置決めされた際、前記固定子鉄心の前記ハウジングの内周面との対向面を前記軸方向と交差する交差方向に沿って押圧する第1押圧部と、前記固定子鉄心が前記位置決め部によって位置決めされた際、前記固定子鉄心の前記軸方向において前記位置決め部と当接する側とは反対側の端面を前記軸方向に沿って押圧する第2押圧部と、を備え、前記第1押圧部及び前記第2押圧部は、弾性変形した状態で前記固定子鉄心と接触することにより前記固定子鉄心を押圧することにより解決される。
【0010】
上記の構成において、ハウジング内に収容された固定子鉄心は、位置決め部と当接する位置に到達することで、位置決め部によって回転電機の回転軸の軸方向において位置決めされる。この時点で、固定子鉄心は、第1押圧部による押圧力により上記軸方向と交差する方向(例えば、固定子鉄心の径方向)において位置を固定される。さらに、第2押圧部による押圧力により固定子鉄心と上記の位置決め部との当接状態が確実に保持されるようになる。この結果、ハウジング内における固定子鉄心の位置が固定されるようになる。
以上のように本発明の回転電機であれば、ハウジング内における固定子鉄心の位置を容易に固定することが可能である。また、ハウジングの内周面を削り起こす等の加工が不要であるので、より簡易な構成で固定子鉄心をハウジング内に固定することができ、さらに、切削屑の発生による歩留まりの低下を抑制することが可能になる。
【0011】
また、
請求項1に係る回転電機において
は、前記ハウジングは筒状体であり、前記位置決め部は、前記内周面から前記ハウジングの内側に突出して形成された段差部であり、前記第1押圧部は、前記内周面から前記ハウジングの内側に向かって延出し、前記交差方向に変位可能なバネ体であり、前記第2押圧部は、前記内周面から前記ハウジングの内側に向かって延出し、前記軸方向に変位可能なバネ体であ
る。
以上の構成であれば、固定機構の構成が簡易になり、回転電機の構造、特に固定機構の構造が複雑化するのを抑制することが可能になる。
【0012】
また、
請求項2に係る回転電機において
は、前記第2押圧部が前記固定子鉄心から離れるように前記軸方向に弾性変形することにより、前記固定子鉄心の状態は、前記固定機構により前記ハウジング内における前記固定子鉄心の位置が固定された固定状態から、前記ハウジングから取り外し可能な非固定状態とな
る。
以上の構成であれば、第2押圧部を弾性変形させることで、ハウジング内に固定された固定子鉄心をハウジングから取り外すことが可能になる。すなわち、上記の構成であれば、固定子鉄心がハウジングに対して着脱自在となる。したがって、固定子鉄心のメンテナンスを容易に行うことが可能となり、また、固定子鉄心及びハウジングのいずれか一方が不良となった場合には、当該不良となった一方だけを交換すればよく、不良となっていない他方を再利用することが可能となる。
【0013】
また、
請求項3に係る回転電機において
は、前記回転電機の回転方向において前記第1押圧部が設けられている位置とは反対側の位置に前記第2押圧部が設けられてい
る。
第1押圧部が固定子鉄心の側部、具体的にはハウジングの内周面との対向面を押圧したときに、その押圧力によって固定子鉄心が位置決め部から離間するように浮き上がろうとしても、第2押圧部が当該固定子鉄心の浮き上がりを抑制する。この際、上記の構成のように、回転電機の回転方向において第1押圧部が設けられている位置とは反対側の位置に第2押圧部が設けられていれば、固定子鉄心の浮き上がりをより効率的に抑制することが可能となる。
【0014】
また、
請求項4に係る回転電機において
は、前記第1押圧部及び前記第2押圧部は、樹脂材料
によって形成されてい
る。このように樹脂材料によって第1押圧部及び第2押圧部が形成されれば、成形性に優れるので各押圧部の形状の自由度が向上する。
さらに、
請求項5に係る回転電機において
は、前記ハウジング、前記第1押圧部及び前記第2押圧部は、樹脂材料
によって形成されており、かつ、一体化
された状態にある。このように第1押圧部、第2押圧部及びハウジングを樹脂材料で一体成形することで、部品点数の増加を抑えることができるともに、ハウジング全体の重量を軽量化することが可能になる。
【0015】
また、
請求項6に係る回転電機において
は、前記固定子鉄心の対向面には、前記内周面から遠ざかる向きに凹んだ凹部が形成されており、前記固定子鉄心が前記位置決め部によって位置決めされた際、前記第1押圧部は、前記第1押圧部の一部が前記凹部内に位置した状態で、前記凹部のうち最も前記内周面から遠ざかった領域を押圧す
る。
以上の構成のように、第1押圧部の一部を凹部内に位置させることにより、当該凹部が固定子鉄心をハウジング内の所定位置へ導く際のガイドとなり、固定子鉄心をハウジング内に固定する際の作業性が向上する。また、第1押圧部の一部が凹部内に位置していれば、固定子鉄心がハウジングに対して回転電機の回転方向に回ってしまうのを規制することが可能になる。
【0016】
また、
請求項7に係る回転電機において
は、前記固定機構は、前記固定子鉄心と接触した状態にある前記第1押圧部と前記交差方向に当接して、前記第1押圧部が前記固定子鉄心から離れるように前記交差方向に弾性変形するのを規制する第1規制ピンと、前記固定子鉄心と接触した状態にある前記第2押圧部と前記軸方向に当接して、前記第2押圧部が前記固定子鉄心から離れるように前記軸方向に弾性変形するのを規制する第2規制ピンと、を更に備え、前記第1規制ピン及び前記第2規制ピンの各々は、前記ハウジングに対して着脱自在であ
る。
以上の構成のように、固定子鉄心と接触した状態にある第1押圧部及び第2押圧部の各々に規制ピンを当接させることで各押圧部の変形、特に、固定子鉄心から離れるような変形を規制すれば、固定子鉄心の位置を強固に、且つ、安定的に固定しておくことが可能となる。反対に、規制ピンを取り外せば、各押圧部が規制ピンによる規制から解放されて変形自在となるため、固定子鉄心を自由にハウジングから取り出すことが可能となる。
【0017】
また、
請求項8に係る回転電機において
は、前記第1押圧部及び前記第2押圧部の各々は、前記内周面から前記ハウジングの内側に向かって延出した第1延出部と、該第1延出部の端部から折り返って前記内周面に向かって延出した第2延出部と、を有す
る。
以上の構成のように、第1押圧部及び第2押圧部の各々がハウジングの内周面から内側に向かって延出してから折り返されて内周面に向かうような形状になっているので、各押圧部と固定子鉄心との接触状態が良好に保持される。この結果、回転電機作動中の固定子鉄心の位置ずれを効果的に抑制することが可能となる。
【0018】
また、
請求項9に係る回転電機において
は、
前記第1押圧部が複数設けられており、
前記第2押圧部が前記第1押圧部と同じ個数だけ設けられており、前記第1押圧部及び前記第2押圧部は、前記回転電機の回転方向において交互に並ぶように設けられている。
以上の構成のように、複数の第1押圧部及び第2押圧部が回転電機の回転方向において交互に並ぶように設けられていれば、第1押圧部及び第2押圧部の各々の押圧力が固定子鉄心に対してバランスよく作用するようになり、ハウジング内における固定子鉄心の位置をより適切に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転電機であれば、ハウジング内における固定子鉄心の位置を容易に固定することが可能である。また、ハウジングの内周面を削り起こす等の加工が不要であるので、より簡易な構成で固定子鉄心をハウジング内に固定することができ、さらに、切削屑の発生による歩留まりの低下を抑制することが可能になる。
さらに、第2押圧部を弾性変形させることでハウジング内に固定された固定子鉄心をハウジングから取り外すことが可能になるので、固定子鉄心のメンテナンスの実施が容易になり、また、固定子鉄心及びハウジングのいずれか一方だけの交換も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る回転電機について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る回転電機の構造を示す断面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るハウジングとハウジング内に固定された状態の固定子鉄心を示す平面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る固定子鉄心の外縁部の拡大図である。
図4乃至6は、本発明の一実施形態に係る固定子鉄心をハウジング内に固定するときの手順を示す図である。なお、固定子鉄心の状態は、
図4、5、6の順に遷移する。
図7は、本発明の一実施形態に係る第1押圧部の形状についての説明図である。
図8及び9は、第1押圧部の形状についての変形例を示す図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る第2押圧部の形状についての説明図である。
図11及び12は、第2押圧部の形状についての変形例を示す図である。
【0022】
なお、以下では、本発明の一実施形態(以下では、本実施形態という)に係る回転電機として、電動オイルポンプ用のモータ(以下では、単にモータ)Mの構造を説明する。ただし、下記の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、当然ながら、本発明の回転電機は、電動オイルポンプ以外の用途に用いられるモータにも利用可能である。
【0023】
また、以下の説明中、特に断る場合を除き、各種の方向とは、モータMが完成した状態における方向を意味する。例えば、モータMの回転方向とは、完成状態のモータMにおける回転方向、より具体的にはロータの回転方向を示し、モータMの回転軸の軸方向とは、完成状態のモータM中に設けられている回転軸としてのシャフト5の軸方向を示す。
【0024】
本実施形態に係るモータMは、界磁体が固定子鉄心2の内側で回転するモータ構造、すなわち、インナーロータ型となっており、
図1に示すように、主要な構成機器については公知のインナーロータ型のモータと同様である。すなわち、本実施形態に係るモータMは、ハウジング1を備えており、ハウジング1の内部には固定子鉄心2が収容されて固定される。
【0025】
固定子鉄心2は、鉄心板を積層して構成され、幾分厚みを有する略環状体である。
図2に示すように、固定子鉄心2にはその径方向内側に向かって略T字状に突出したティース2aが複数設けられ、当該複数のティース2aが環状に並んでいる。ティース2aには、インシュレータ8を介してコイル9が巻回されている。また、固定子鉄心2の外周面には、
図2及び3に示すように、固定子鉄心2の径方向内側に凹んだ凹部2bが形成されている。ここで、固定子鉄心2の外周面は、固定子鉄心2がハウジング1内に収容された状態においてハウジング1の内周面に対向する対向面に相当する。したがって、上記の凹部2bは、ハウジング1の内周面から遠ざかる向きに凹んで形成されていることになる。
【0026】
なお、上記の凹部2bは、固定子鉄心2の外周に沿って等間隔に複数形成されており、以下では、凹部2bが固定子鉄心2の外周に沿って約120度間隔で3箇所形成されている構成について説明する。
【0027】
ハウジング1は、筒状体、特に略円筒状の部材であり、本実施形態ではプラスティックや熱可塑性樹脂等の樹脂材料からなる。これにより本実施形態に係るモータMは、金属製のハウジングを備える構成と比較してより軽量化されている。
【0028】
また、ハウジング1の両端は、開口端となっており、一方の開口端には制御基板6とヒートシンク10が嵌合されて同開口端を閉口している。ハウジング1のもう一方の開口端にはポンプユニット4とエンドプレート(不図示)が組み付けられて同開口端を閉口している。ポンプユニット4の各ポンプ要素は、モータMの回転子3の回転軸をなすシャフト5と一体回転可能に挿着されており、回転子3の回転に伴いオイルを送給する。回転子3は、軸方向における固定子鉄心2の高さと略同じ高さの円柱体をなし、その周面には永久磁石7が接着等によって設けられている。また、回転子3は、
図1に示すように、固定子鉄心2の内側に配置され、かかる状態でコイル9に励磁電流が流れると、回転子3及び永久磁石7がシャフト5と一体的に回転するようになる。
【0029】
一方で、本実施形態に係るモータMには、ハウジング1内に収容された固定子鉄心2の位置を固定する固定機構が備えられている。本実施形態に係る固定機構は、ハウジング1に対して固定子鉄心2の位置を固定する機構としては従来のものよりも構成が簡単であり、より容易な固定子鉄心2の取り付けを実現するものである。さらに、本実施形態に係る固定機構は、ハウジング1に対して着脱自在となるように固定子鉄心2を固定することが可能である。
以上の点において、本実施形態に係るモータMは、従来のモータ、特に、固定子鉄心2をハウジング1に固定して用いる形式のモータと異なり、より有効な構成になっている。
【0030】
以下では、固定機構の構造及び機能について説明する。
固定機構は、ハウジング1に設けられている。具体的に説明すると、
図2及び
図4乃至6に示すように、固定機構を構成する各要素、具体的には後述する位置決め部11、第1押圧部12及び第2押圧部13が、樹脂材料を用いて形成されており、かつ、ハウジング1と一体化している。このような構成により、ハウジング1とは別体をなす部材によって固定機構を構成した場合よりも、部品点数の増加を抑えることができる。また、固定機構の各部が樹脂材料からなり、かつ、ハウジング1と一体化しているので、ハウジング1全体の重量が軽量化されている。さらに、第1押圧部12及び第2押圧部13が樹脂材料によって形成されていることにより、成形性に優れるので各押圧部12,13の形状の自由度が向上する。
【0031】
固定機構は、位置決め部11、第1押圧部12及び第2押圧部13によって構成されている。位置決め部11は、モータMの回転軸の軸方向(以下、単に軸方向という)における固定子鉄心2の一端面2sと当接して、ハウジング1に対する固定子鉄心2の軸方向における位置を位置決めするものである。本実施形態において、位置決め部11は、
図4乃至6に示すように、ハウジング1の内周面からハウジング1の内側に突出して形成された段差部である。
【0032】
より詳しく説明すると、ハウジング1の両端は、前述したように、いずれも開口端となっており、ハウジング1内には、両側の開口端をつなぐ略円柱形状の貫通孔が形成されている。一方、ハウジング1の両端のうち、制御基板6が取り付けられる側の開口端(以下、大径開口端)は、ポンプユニット4が組み付けられる側の開口端(以下、小径開口端)よりも幾分大径となっている。また、上記の貫通孔についても、大径開口端から小径開口端に向かって段階的に径が縮小されている。本実施形態では、上記の貫通孔の径が3段階で変化している。
【0033】
そして、軸方向において、貫通孔の中で最も径が小さい部分と2番目に径が小さい部分との境界位置に、ハウジング1の内周面が内側に突出して段差部1aを形成している。ここで、貫通孔の中で最も径が小さい部分の径は、固定子鉄心2の外径、厳密には、鉄心板の最外縁よりも小径となっている。また、貫通孔の中で2番目に径が小さい部分の径は、上記の固定子鉄心2の外径よりも僅かに大きくなっている。したがって、
図4乃至6に示すように、固定子鉄心2が大径開口端側からハウジング1内に挿入されて小径開口端側に向かうと、固定子鉄心2の軸方向の一端面2sが上記の段差部1aに当接され、軸方向において固定子鉄心2が段差部1aによって係止されるようになる。これにより、固定子鉄心2は、上記の段差部1aからなる位置決め部11によって軸方向において位置決めされることになる。
【0034】
なお、固定子鉄心2が位置決め部11によって位置決めされると、上記の貫通孔のうち、2番目に径が小さい部分の内側に固定子鉄心2の本体、すなわち、積層された複数の鉄心板が収容されるようになる。このとき、固定子鉄心2の、軸方向において位置決め部11と当接する側とは反対側の端面(以下、反対側端面2tとも言う)は、ハウジング1の内周面において、上記の貫通孔の中で最も径が大きい部分と2番目に径が小さい部分との境界位置に形成された段差部1bよりも幾分小径開口端側に位置している。
【0035】
第1押圧部12は、固定子鉄心2が位置決め部11によって位置決めされた際、固定子鉄心2の外周面、すなわち、ハウジング1の内周面との対向面を固定子鉄心2の径方向に沿って押圧するものである。ここで、固定子鉄心2の径方向とは、固定子鉄心2がハウジング1内に収容された状態においてハウジング1の径方向と一致する。そして、固定子鉄心2の径方向、及び、ハウジング1の径方向は、軸方向と交差する交差方向に相当する。
【0036】
本実施形態において、第1押圧部12は、ハウジング1の内周面からハウジング1の内側に向かって突出するように形成された部分である。本実施形態では、モータMの回転方向に沿って等間隔で複数の第1押圧部12が設けられている。以下では、モータMの回転方向に沿って約120度間隔で第1押圧部12が3つ形成されている構成について説明する。
【0037】
また、第1押圧部12は、前述したように樹脂材料からなるので可撓性を有し、さらにハウジング1の径方向に弾性を有する形状に形成されておりハウジング1の径方向に変位可能となっている。そして、第1押圧部12は、変位した際に生じる復元力によって固定子鉄心2の外周面を押圧する。
【0038】
より詳しく説明すると、
図4乃至6に示すように、第1押圧部12は、ハウジング1の内周面のうち、上記の貫通孔の中で2番目に径が大きい部分を取り囲む領域から突出した板バネ体である。この板バネ体からなる第1押圧部12は、爪状となっており、モータMの回転軸を通る平面で切断した際の断面が略J字状になっている。つまり、第1押圧部12は、
図7に示すように、ハウジング1の内周面からハウジング1内側に向かって延出した第1延出部12aと、第1延出部12aの端部から折り返ってハウジング1の内周面に向かって延出した第2延出部12bとを有する。
【0039】
第1延出部12aは、モータMの回転軸に対して傾いた方向に延出している。また、第1延出部12aと第2延出部12bとの接合部分、すなわち、第1押圧部12の折り返し部分は、軸方向において、位置決め部11よりも幾分大径開口端側に位置しており、ハウジング1の径方向において、位置決め部11をなす段差部1aの内縁よりも内側に突出している。
【0040】
そして、固定子鉄心2がハウジング1内に挿入されて位置決め部11との当接位置に向かう際、第1押圧部12は、第1延出部12aが固定子鉄心2の外周面に当接することで、
図5に示すようにハウジング1の径方向外側に押し退けられるように変位する。
【0041】
より具体的に説明すると、第1延出部12aの径方向内側に面する表面のうち、最もハウジング1の中央側にある領域、つまり、第1延出部12aと第2延出部12bとの接合部分周辺の領域が、固定子鉄心2の外周面と当接し、第1延出部12a及び第2延出部12bが径方向外側に向かうように弾性変形する。これにより、第1押圧部12が固定子鉄心2の外周面を押圧するようになり、固定子鉄心2の外周面のうち、第1押圧部12により押圧される領域とは反対側の領域が、ハウジング1内の所定箇所に押し付けられるようになる。この結果、ハウジング1の径方向における固定子鉄心2の位置が位置決めされるようになる。
【0042】
その後、固定子鉄心2が位置決め部11に当接して軸方向において位置決めされた時点で、第1押圧部12による押圧状態が維持されている。これにより、固定子鉄心2が、軸方向においては位置決め部11によって位置決めされ、ハウジング1の径方向においては第1押圧部12によって位置決めされるようになる。
【0043】
なお、本実施形態では、ハウジング1の内周面のうち、第1押圧部12と対向する部分には、
図7に示すように、矩形状の開口を有する窪み1cが形成されている。この窪み1cは、第1押圧部12の第1延出部12aがハウジング1の径方向外側に変位する際の逃げスペースとなっている。このように本実施形態では、逃げスペースとしての窪み1cが形成されていることにより、第1押圧部12は、適切に弾性変形することが可能になる。
【0044】
また、上述したように、第1押圧部12は、ハウジング1の径方向内側に延出する第1延出部12aと、第1延出部12aの端部から折り返って径方向外側に延出する第2延出部12bとによって構成される。つまり、第1押圧部12は、折り返し形状となっており、容易には固定子鉄心2との当接状態を解除しないようになっている。これにより、第1押圧部12と固定子鉄心2の外周面との接触状態が良好に保持されるので、モータ作動中の固定子鉄心2の位置ずれ、主にハウジング1の径方向の位置ずれを効果的に抑制することが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態では、固定子鉄心2がハウジング1内の所定位置に配置された際、3つ設けられた第1押圧部12の各々は、固定子鉄心2の外周面に形成された凹部2b内に一部分が嵌まり込んだ状態にある。
【0046】
具体的に説明すると、ハウジング1内に固定子鉄心2が挿入されるとき、モータMの回転方向において、固定子鉄心2の外周面において軸方向に一様に形成された凹部2bと第1押圧部12の形成位置とが一致するように固定子鉄心2が挿入される。そして、固定子鉄心2が位置決め部11との当接位置に向かう途中で、各第1押圧部12の折り返し部分の周辺部が、固定子鉄心2に形成された凹部2bのうち、対応する凹部2b内に嵌まり込むようになる。これにより固定子鉄心2は、各第1押圧部12にガイドされながら位置決め部11との当接位置に向かうようになる。最終的に固定子鉄心2が位置決め部11により位置決めされると、第1押圧部12は、凹部2bのうち最も径方向内側の領域、換言すると、ハウジング1の内周面から最も遠ざかった領域を押圧するようになる。
【0047】
以上のように、第1押圧部12の一部を凹部2b内に位置させることにより、凹部2bが固定子鉄心2をハウジング1内の所定位置へ導く際のガイドとなって、固定子鉄心2をハウジング1内に固定する際の作業性が向上する。また、第1押圧部12の一部が凹部2b内に位置していれば、固定子鉄心2がハウジング1に対してモータMの回転方向に回ってしまうのを規制することが可能になる。なお、本実施形態において、凹部2bは、軸方向に一様に形成されることとしたが、一様に形成される構成に特に限定されるものではなく、固定子鉄心2の外周面の一部に形成されていればよい。
【0048】
以上のような第1押圧部12が位置決め部11に当接した状態の固定子鉄心2の外周面を押圧することにより、固定子鉄心2は、軸方向及びハウジング1の径方向の各方向において位置決めされる。なお、第1押圧部12の形状については、
図7に示す形状に限定されるものではなく、固定子鉄心2が位置決め部11に当接した状態において固定子鉄心2の外周面を押圧するように弾性変形するものであれば、他の形状であってもよい。例えば、
図8に示すように、ハウジング1の内周面から円弧面状に突出した第1押圧部112でもよい。
図8に示す第1押圧部112では、ハウジング1の径方向において最も中央側に位置する部分を境界として、大径開口端側の部分が第1延出部112aに相当し、小径開口端側の部分が第2延出部112bに相当する。そして、第1延出部112aと第2延出部112bとの接合部分の、径方向内側に面する部分が、固定子鉄心2の外周面を押圧する。
【0049】
また、第1押圧部12の形状については
図7や8に図示された形状以外にも考えられ、例えば、
図9に示すように、端部が渦巻き状に巻回した形状の第1押圧部212でもよい。
図9に示す第1押圧部212では、ハウジング1の内周面から突出して最も径方向内側の位置に至るまでの略J字状の部分が第1延出部212aに相当し、当該径方向内側の位置から折り返って円弧状に屈曲している部分が第2延出部212bに相当する。そして、第1延出部212aと第2延出部212bとの接合部分周辺の、径方向内側に面する部分が、固定子鉄心2の外周面を押圧する。
【0050】
第2押圧部13は、固定子鉄心2が位置決め部11によって位置決めされた際、固定子鉄心2の反対側端面2tを軸方向に沿って押圧するものである。第2押圧部13は、第1押圧部12と同様に、ハウジング1の内周面から突出するように形成された部分である。また、第2押圧部13は、前述したように樹脂材料からなるので可撓性を有し、さらに軸方向に弾性を有する形状に形成されており軸方向に変位可能となっている。そして、第2押圧部13は、変位した際に生じる復元力によって固定子鉄心2の反対側端面2tを押圧する。
【0051】
より詳しく説明すると、
図4乃至6に示すように、第2押圧部13は、ハウジング1の内周面のうち、上記の貫通孔の中で最も径が大きい部分を取り囲む領域から突出した板バネ体である。この板バネ体からなる第2押圧部13は、爪状となっており、
図7に図示した第1押圧部12と同様にモータMの回転軸を通る平面で切断した際の断面が略J字状になっている。つまり、第2押圧部13についても、第1押圧部12と同様、ハウジング1の内周面からハウジング1内側に向かって延出した第1延出部13aと、第1延出部13aの端部から折り返ってハウジング1の内周面に向かって延出した第2延出部13bとを有する。
【0052】
第1延出部13aは、モータMの回転軸に対して傾いた方向に延出している。また、第1延出部13aと第2延出部13bとの接合部分、すなわち、第2押圧部13の折り返し部分は、ハウジング1の径方向において、上記の貫通孔の中で最も径が大きい部分と2番目に径が小さい部分との境界位置に形成された段差部1bの内縁よりも内側に突出している。換言すると、第2押圧部13の折り返し部分は、ハウジング1の径方向において、ハウジング1内の固定子鉄心2の移動経路に差し掛かっている。
【0053】
さらに、第2延出部13bのうち、軸方向において小径開口端側を向く面は、上記の貫通孔の中で最も径が大きい部分と2番目に径が小さい部分との境界位置に形成された段差部1bよりも幾分小径開口端側に位置している。
【0054】
固定子鉄心2がハウジング1内に挿入されて位置決め部11との当接位置に向かう際、第2押圧部13は、固定子鉄心2に押し退けられることにより、
図5、6に示すように第1延出部13a及び第2延出部13bが軸方向に変位するように弾性変形する。そして、固定子鉄心2が位置決め部11に当接すると、第2押圧部13は、第2延出部13bが固定子鉄心2の反対側端面2tと当接した状態になり、第2延出部13bにて反対側端面2tを軸方向に沿って押圧するようになる。
【0055】
以上のように、第2押圧部13が弾性変形して固定子鉄心2の反対側端面2tを押圧する結果、固定子鉄心2と位置決め部11との当接状態が確実に保持され、軸方向における固定子鉄心2の位置を強固に固定することが可能になる。
ここで、第2押圧部13は、前述したように弾性を有しているので、例えば、固定子鉄心2を構成する鉄心板の厚みにバラツキが生じたとしても、当該バラツキに応じて変形量を変えることで固定子鉄心2との当接状態を確保することが可能になる。すなわち、本実施形態であれば、鉄心板の厚みにバラツキが生じたとしても、第2押圧部13の弾性変形により当該バラツキを吸収することが可能である。
【0056】
なお、本実施形態では、ハウジング1の内周面のうち、第2押圧部13と対向する部分には、
図10に示すように、矩形状の開口を有する窪み1dが形成されている。この窪み1dは、第2押圧部13の第1延出部13aがハウジング1の径方向外側に変位する際の逃げスペースとなっている。
【0057】
また、上述したように、第2押圧部13は、ハウジング1の径方向内側に延出する第1延出部13aと、第1延出部13aの端部から折り返って径方向外側に延出する第2延出部13bとによって構成される。つまり、第2押圧部13は、折り返し形状となっており、第2延出部13bが固定子鉄心2の反対側端面2tと当接(詳しくは、腹当たり)するので、容易には固定子鉄心2との当接状態を解除しないようになっている。これにより、第2押圧部13と固定子鉄心2の反対側端面2tとの接触状態が良好に保持されるので、モータ作動中の固定子鉄心2の位置ずれ、主に軸方向の位置ずれを効果的に抑制することが可能となる。
【0058】
さらに、本実施形態では、第2押圧部13がモータMの回転方向に沿って等間隔で複数、より詳しくは、第1押圧部12と同じ個数だけ設けられている。より具体的に説明すると、本明細書にて説明する実施形態では、モータMの回転方向に沿って約120度間隔で第2押圧部13が3つ形成されている。そして、本実施形態では、第1押圧部12及び第2押圧部13がモータMの回転方向において交互に並ぶように設けられている。これにより、第1押圧部12及び第2押圧部13の各々の押圧力が固定子鉄心2に対してバランスよく作用するようになり、ハウジング1内における固定子鉄心2の位置をより適切に固定することが可能となる。
【0059】
また、第2押圧部13は、モータMの回転方向において第1押圧部12が設けられている位置とは反対側の位置、特に本実施形態では約180度ずれた位置に設けられている。これにより、固定子鉄心2の位置をより適切に固定することが可能になる。より具体的に説明すると、第1押圧部12が固定子鉄心2の外周面を押圧する際、その押圧力によって固定子鉄心2が位置決め部11から離間するように浮き上がる可能性がある。これに対して、第2押圧部13が固定子鉄心2の反対側端面2tを押圧するので、当該押圧によって固定子鉄心2の浮き上がりを抑制することが可能である。特に、本実施形態では、モータMの回転方向において第1押圧部12が設けられている位置とは反対側の位置に第2押圧部13が設けられていることにより、固定子鉄心2の浮き上がりをより効率的に抑制することが可能となる。
【0060】
ところで、上述したように、第2押圧部13が弾性変形することで、第2押圧部13の第2延出部13bが固定子鉄心2の反対側端面2tに当接し、当該反対側端面2tを押圧するようになる。一方、操作者(ユーザ)が手で押す等して、第2押圧部13が固定子鉄心2から離れるように第2押圧部13を強制的に弾性変形させた場合、固定子鉄心2は、第2押圧部13による押圧から解放される。つまり、上記の場合には、固定子鉄心2の状態は、ハウジング1内における位置が固定された固定状態から、ハウジング1から取り外し可能な非固定状態となる。
【0061】
以上のように、ハウジング1内の固定子鉄心2の位置を固定した後であっても、第2押圧部13を弾性変形させて固定子鉄心2の状態を非固定状態とすれば、固定子鉄心2をハウジング1から取り外すことが可能である。つまり、本実施形態において、固定子鉄心2は、ハウジング1に対して着脱自在に固定される。このような構成により、固定子鉄心2のメンテナンスを容易に行うことが可能となり、また、固定子鉄心2及びハウジング1のいずれか一方が不良となった場合には、当該不良となった一方だけを交換すればよく、不良となっていない他方を再利用することが可能となる。
【0062】
なお、第2押圧部13の形状については、
図10に示す形状に限定されるものではなく、固定子鉄心2が位置決め部11に当接した状態において固定子鉄心2の反対側端面2tを押圧するように弾性変形するものであれば、他の形状であってもよい。例えば、
図11に示すように、端部が渦巻き状に巻回した形状の第2押圧部113でもよい。
図11に示す第2押圧部113では、ハウジング1の内周面から突出して最も径方向内側の位置に至るまでの略J字状の部分が第1延出部113aに相当し、当該径方向内側の位置から折り返って円弧状に屈曲している部分が第2延出部113bに相当する。そして、第2延出部113bのうち、小径開口端側を向いた部分が固定子鉄心2の反対側端面2tを押圧する。
【0063】
また、
図10や
図11では、第2押圧部13の形状として、ハウジング1の内周面から径方向内側に延出してから折り返って内周面に向かう方向に更に延出する形状について説明したが、
図12に示すように、折り返されていない形状であってもよい。なお、
図12に示す第2押圧部213は、ハウジング1の内周面から径方向内側に延出しつつ、軸方向において小径開口端側に向かって伸びており、さらに、先端部が幾分大径開口端側に向かうように円弧状に反り返っている。そして、第2押圧部213のうち、反り返った部分が、固定子鉄心2の反対側端面2tを押圧する。
【0064】
以上までに説明してきた位置決め部11、第1押圧部12及び第2押圧部13により固定機構が構成されるが、固定機構は、さらに、固定子鉄心2の位置を固定する目的から各押圧部12,13による押圧状態を保持するための部材を備えている。具体的に説明すると、
図6に示すように、第1規制ピン21及び第2規制ピン22が備えられている。これらの規制ピン21,22は、固定子鉄心2と接触した状態にある押圧部12,13が固定子鉄心2から離れるように弾性変形するのを規制するものである。これにより、各押圧部12,13は、固定子鉄心2と当接して固定子鉄心2の所定部位を押圧する状態で維持されるようになる。
【0065】
より詳しく説明すると、第1規制ピン21は、第1押圧部12毎に設けられた略円柱状のピンであり、固定子鉄心2が位置決め部11に当接した状態において、第1押圧部12の第1延出部12aとハウジング1の内周面に挟まれた位置に配置される。かかる位置に配置されることにより、第1規制ピン21は、固定子鉄心2と接触した状態にある第1押圧部12の第1延出部12aとハウジング1の径方向に当接するようになる。この結果、第1規制ピン21は、第1延出部12aが径方向外側に向かうように第1押圧部12が弾性変形するのを規制することになる。
【0066】
同様に、第2規制ピン22は、第2押圧部13毎に設けられた略円柱状のピンであり、固定子鉄心2が位置決め部11に当接した状態において、第2押圧部13の第1延出部13aとハウジング1の内周面に挟まれた位置に配置される。かかる位置に配置されることにより、第2規制ピン22は、固定子鉄心2と接触した状態にある第2押圧部13の第1延出部13aと軸方向に当接するようになる。この結果、第2規制ピン22は、第2延出部13bが固定子鉄心2の反対側端面2tから離れるように第2押圧部13が弾性変形するのを規制することになる。
【0067】
以上のように、上記2種類の規制ピン21,22によって、各押圧部12,13が固定子鉄心2から離れるように弾性変形するのを規制することにより、ハウジング1における固定子鉄心2の位置を強固に、且つ、安定的に固定しておくことが可能となる。この結果、例えば、モータMの回転に伴ってモータM各部に振動が発生し、当該振動に起因して各押圧部12,13が意図せずに弾性変形するために固定子鉄心2に位置ずれが生じるのを防止することが可能である。
【0068】
さらに、本実施形態において、各規制ピン21,22は、ハウジング1に対して着脱自在となっており、固定子鉄心2が位置決め部11に当接して各押圧部12,13から押圧された状態になってからハウジング1の所定位置に取り付けられる。一方で、各規制ピン21,22は、部品交換等のために固定子鉄心2がハウジング1から抜き出す際に取り外される。そして、各規制ピン21,22が取り外されることで、各押圧部12,13が規制ピン21,22による規制から解放されて変形自在となり、固定子鉄心2を自由にハウジング1から抜き出せるようになる。
【0069】
なお、各規制ピン21,22を取り付けるための取り付け機構については、特に図示しないが、例えば、ハウジング1の内周面の所定領域に設けられたピン嵌め込み用の穴や突起によって構成されることとしてもよい。あるいは、押圧部12,13側にピン嵌め込み用の穴や突起が設けられていることとしてもよい。さらには、ピン嵌め込み用の穴や突起以外の構造、例えば、各規制ピン21,22の所定部位に係合する鉤爪がハウジング1の内周面若しくは押圧部12,13に形成されることとしてもよい。
【0070】
次に、以上までに説明してきた構成の下で固定子鉄心2をハウジング1に対して組み付ける際の手順について説明する。
固定子鉄心2は、ハウジング1に収容されるにあたり、
図4に示すようにハウジング1の大径開口端からハウジング1内に挿入され、軸方向に沿って小径開口端側に向けて動かされる。この際の固定子鉄心2の姿勢は、ハウジング1内に収容されているときの姿勢と略同様である。
【0071】
ハウジング1内に挿入された固定子鉄心2は、先ず、各第2押圧部13と当接して
図5に示すように各第2押圧部13を押し退ける。そして、固定子鉄心2が小径開口端側に向かって更に進行すると、固定子鉄心2に形成された凹部2bに、各第1押圧部12の折り返し部分の周辺部が嵌まり込むようになる。その後、更なる固定子鉄心2の進行に伴い、固定子鉄心2は、凹部2bのうち最も径方向内側にある領域にて第1押圧部12と当接し、
図5に示すように当該第1押圧部12をハウジング1の径方向外側に押し退ける。これにより、各第1押圧部12は、ハウジング1の径方向に弾性変形して固定子鉄心2の外周面を径方向内側に押圧するようになる。
【0072】
固定子鉄心2が更に進行し、軸方向において位置決め部11と当接する位置に到達すると、固定子鉄心2が段差部1aによって係止される結果、軸方向において固定子鉄心2が位置決めされるようになる。このとき、第2押圧部13は、第2延出部13bが固定子鉄心2の反対側端面2tと当接した状態になっており、第2延出部13bにて反対側端面2tを軸方向に沿って押圧している。
【0073】
以上のような状態に至ると、固定子鉄心2は、位置決め部11により軸方向において位置決めされるとともに、各押圧部12,13の押圧力により軸方向及びハウジング1の径方向において固定される。最終的に、
図6に示すように各押圧部12,13に対して規制ピン21,22が取り付けられ、かかる作業が終了した時点でハウジング1に対する固定子鉄心2の組み付けが完了する。
【0074】
本実施形態では、上記の手順によりハウジング1内における固定子鉄心2の位置を固定することができるため、当該位置の固定をより容易に行うことが可能である。また、位置決め部11や押圧部12,13を形成するにあたり、ハウジング1の内周面を削り起こす等の加工が不要であるので、より簡易な構成で固定子鉄心2をハウジング1内に固定することができる。さらに、ハウジング1を削る作業が不要になる結果、切削屑の発生による歩留まりの低下を抑制することが可能になる。
【0075】
上記の構成は、特に、自動車外装部品等のように雨水や埃等に曝される環境の下で用いられるモータMにおいて特に有効である。より分かり易く説明すると、雨水や埃等に曝される環境の下で用いられる場合にハウジング1の内周面を削り起こして位置決め部11等を形成すると、削られた部分からハウジング内に水分や埃が侵入してしまう虞がある。これに対して、本実施形態の構成であれば、位置決め部11等を設けるにあたりハウジング1を削り起こさないので、ハウジング内への水分や埃の侵入を回避することが可能である。
【0076】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、主として本発明の回転電機について説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0077】
また、上記の実施形態では、位置決め部11が、ハウジング1の内周面に形成された段差部1aからなることとした。さらに、上記の実施形態では、第1押圧部12が、ハウジング1の内周面から延出してハウジング1の径方向に変位可能な板バネからなり、第2押圧部13が、ハウジング1の内周面から延出して軸方向に変位可能な板バネからなることとした。このような構成であれば、固定機構の構成が簡易になり、モータMの構造、特に固定機構の構造が複雑化するのを抑制することが可能になる。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、位置決め部11は、段差部1a以外の構造、例えば、ハウジング1の内周面から突出した突起によって構成されることとしてもよい。また、第1押圧部12及び第2押圧部13の各々については、板バネ以外の材料、例えば、ゴム等のその他の弾性体により構成されることとしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、第1押圧部12及び第2押圧部13が、それぞれ、複数設けられており、モータMの回転方向において交互に並ぶように配置されていることとした。これにより、固定子鉄心2に作用する押圧力がバラスよく分布するようになる。ただし、これに限定されるものではなく、第1押圧部12及び第2押圧部13は、それぞれ、少なくとも1個以上設けられていればよく、また、各押圧部12,13の配置位置については任意に設定することが可能である。
【0079】
また、上記の実施形態では、第1押圧部12及び第2押圧部13が樹脂材料によって成形されていることとした。さらに、上記の実施形態では、第1押圧部12及び第2押圧部13が、ハウジング1と一体成形されていることとした。これにより、より高弾性な押圧部12,13を好適な形状で形成することが可能になる。また、部品点数の増加が抑えられ、ハウジング1全体の重量が軽量化する。ただし、これに限定されるものではなく、第1押圧部12及び第2押圧部13がハウジング1と別体をなしていることとしてもよい。また、各押圧部12,13の材質についても、樹脂材料以外の材質、例えば、金属材料からなることとしてもよい。なお、ハウジング1とは別体をなす押圧部12,13をハウジング1に対して取り付ける方式としては、溶着や接着による取り付ける方式、ハウジング1に設けられた差し込み穴に差し込む方式、ハウジング1に設けられた係合部に押圧部12,13に設けられた係合部を引っ掛ける方式等が挙げられる。
【0080】
また、上記の実施形態では、固定子鉄心2の外周面には周方向に沿って一定間隔毎に凹部2bが設けられていることとしたが、固定子鉄心2の外周面に凹部2bが設けられていないこととしてもよい。
また、上記の実施形態では、固定子鉄心2の位置が固定された状態において各押圧部12,13の弾性変形を規制する規制ピン21,22が設けられていることとしたが、当該規制ピン21,22が設けられていないこととしてもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、固定子鉄心2の内側で界磁体が回転するインナーロータ型のモータMを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、本発明に係る固定子鉄心2の固定構造は、固定子鉄心2の外側で界磁体が回転するアウタロータ型のモータに対しても適用可能である。
【0082】
また、上記の実施形態では、本発明の回転電機の一例として電動機、より具体的にはオイルポンプ用モータを挙げて、固定子鉄心2の固定構造について説明した。ただし、当該固定構造が適用できる回転電機は、電動機に限らず、固定子鉄心2がハウジング1内に固定されて構成される発電機、例えばオルタネータにも本発明は適用可能である。