特許第5965235号(P5965235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965235金属めっき皮膜を有する半導体基材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965235
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】金属めっき皮膜を有する半導体基材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   C23C18/18
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-162165(P2012-162165)
(22)【出願日】2012年7月21日
(65)【公開番号】特開2014-19933(P2014-19933A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390036364
【氏名又は名称】清川メッキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】米沢 晋
(72)【発明者】
【氏名】高島 正之
(72)【発明者】
【氏名】金 在虎
(72)【発明者】
【氏名】夏目 昂司朗
(72)【発明者】
【氏名】清川 肇
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−115268(JP,A)
【文献】 特開2011−207916(JP,A)
【文献】 特開平10−270381(JP,A)
【文献】 特開2004−068117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−18/54
C23F 1/00− 4/04
H05K 1/09, 3/24
H01L 21/3205,
21/52,21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基材に金属めっきを施すことによって金属めっき皮膜を有する半導体基材を製造する方法であって、前記半導体基材としてシリコン基材およびシリコンカーバイド基材から選ばれた半導体基材を用い、純度が70%以上であり、温度が0〜100℃であるフッ素ガスを用い0.1〜60kPaの減圧下で当該フッ素ガスと半導体基材とを接触させて半導体基材の表面を改質させ、当該半導体基材水を必須成分として含有する3〜95℃の水性媒体とを10〜90分間接触させた後、当該半導体基材に金属めっきを施すことを特徴とする金属めっき皮膜を有する半導体基材の製造方法。
【請求項2】
表面が改質された半導体基材を製造する方法であって、前記半導体基材としてシリコン基材およびシリコンカーバイド基材から選ばれた半導体基材を用い、純度が70%以上であり、温度が0〜100℃であるフッ素ガスを用い0.1〜60kPaの減圧下で当該フッ素ガスと半導体基材とを接触させて半導体基材の表面を改質させた後、当該半導体基材と水を必須成分として含有する3〜95℃の水性媒体とを10〜90分間接触させることを特徴とする表面が改質された半導体基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属めっき皮膜を有する半導体基材およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、密着性に優れた金属めっき皮膜を有する半導体基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハを代表とする半導体基板の表面に撥水性または親水性を付与する表面改質方法として、界面活性剤を用いる方法が一般的である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。しかし、前記方法では、界面活性剤が不純物となって残留することが危惧される。
【0003】
不純物の混入を回避するために、界面活性剤を使用しない表面処理方法として、シリコン基板の表面をフッ酸で洗浄することによって酸化物層を除去して表面を撥水化させ、酸素、水などで再酸化させることにより、ごく薄い親水化層を形成させる表面処理方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、前記表面処理方法によれば、シリコン基板の表面には含酸素基のみが残るので親水性が付与されるが、シリコンの酸化物の表面は、ニッケル、銅などの金属めっき皮膜との化学的密着力が大きくないため、当該改質方法が施されたシリコン系半導体材料の表面は、めっき皮膜などとの密着性に劣るという欠点がある。
【0004】
一般に、半導体ウェハ上の再配線には、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法、無電解めっき法などが利用されている。これらの方法の中では、半導体との密着性に直接関与するシード層を形成させ、実用的な密着性を得るために、通常、スパッタリング法が用いられている。しかし、スパッタリング法には、ターゲットから叩き出された金属が飛翔し、基板に衝突することによって金属膜が形成されるため、物理的な衝突のためのエネルギーが密着性の向上に必要であるとともに、スパッタリングのためには真空プロセスを要するため、工業的生産性に劣るという欠点がある。
【0005】
一方、無電解めっき法は、プリント基板を大量生産することができる方法であるが、密着性を確保するためには、基板表面の粗化を行なう必要がある。通常、樹脂製のプリント基板では、過マンガン酸溶液などを用いて基板表面を粗化させ、基板と金属膜が混合する層を形成することにより、アンカー効果によって密着性が付与されている。しかし、半導体ウェハ上では、配線が非常に微細であることから、従来のエッチング法では、基板の粗化が大きすぎるため、正確なパターンを形成することができず、粗化を小さくした場合には、十分な密着性が付与されない。
【0006】
親水基を化学的に半導体の表面に導入し、めっき皮膜の密着性を改善させる方法として、酸素プラズマ、オゾン水などの酸素供給源となる化学種を半導体の表面と反応させることにより、当該半導体の表面を親水化させ、レジストなどの密着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献4、特許文献5および特許文献6参照)。しかし、前記方法は、あくまでも形成される樹脂皮膜と半導体表面との密着性を向上させる方法であり、金属めっき皮膜との密着性を向上させる方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−235036号公報
【特許文献2】特開平9−106081号公報
【特許文献3】特開2009−272411号公報
【特許文献4】特開2006−119292号公報
【特許文献5】特開2006−339363号公報
【特許文献6】特開2009−505381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、半導体基材に対する密着性に優れた金属めっき皮膜を有する半導体基材およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
なお、本明細書において、「金属めっき皮膜を有する半導体基材」とは、表面に金属めっき皮膜を有する半導体基材のみならず、表面に金属めっき皮膜を有する半導体基材からなる電子回路、各種電子材料、各種電子部品などを含む幅広い概念を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般に、シリコン、炭化シリコンなどの半導体基材の表面上には、電子回路パターンとして利用するために十分な密着性を有する金属めっき皮膜を形成することが困難であると考えられている。また、微小なダイヤモンドなどの炭素材料では、当該炭素材料を数kPaから数十kPaの圧力を有するフッ素ガスと120分間以内の時間で接触させることにより、その表面に親水性を付与することができることが知られている。しかし、シリコン、炭化シリコンなどからなる半導体基材が数kPaから数十kPaの圧力を有するフッ素ガスと120分間以内の時間で接触した場合には、その表面が疎水化することから、当該表面と金属めっき皮膜との密着性を向上させることが困難である。
【0011】
ところが、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、意外なことに、シリコン、炭化シリコンウェハなどの半導体基材の表面を数kPa程度の低いフッ素ガス圧力で120分間以内の時間で処理し、さらに水性媒体と接触させた場合には、驚くべきことに、当該半導体基材の表面に金属めっき皮膜、樹脂塗膜、接着剤層など(以下、便宜上「金属めっき皮膜など」という)を非常に強固に密着させることができるというまったく新しい事実が見出された。
【0012】
このように、本発明の製造方法によれば、前記半導体基材の表面に金属めっき皮膜などを強固に密着させることができるので、本発明の製造方法によって得られた表面が改質された半導体基材は、金属めっき皮膜によって表面に導電性が付与された半導体素子をはじめ、電子材料、電子部品(パーツ)などの幅広い用途に使用することが期待される。したがって、本発明の表面が改質された半導体基材は、斬新かつ画期的で産業上の利用価値が非常に高いものである。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)半導体基材に金属めっきを施すことによって金属めっき皮膜を有する半導体基材を製造する方法であって、前記半導体基材としてシリコン基材およびシリコンカーバイド基材から選ばれた半導体基材を用い、純度が70%以上であり、温度が0〜100℃であるフッ素ガスを用い0.1〜60kPaの減圧下で当該フッ素ガスと半導体基材とを接触させて半導体基材の表面を改質させ、当該半導体基材水を必須成分として含有する3〜95℃の水性媒体とを10〜90分間接触させた後、当該半導体基材に金属めっきを施すことを特徴とする金属めっき皮膜を有する半導体基材の製造方法、および
(2)表面が改質された半導体基材を製造する方法であって、前記半導体基材としてシリコン基材およびシリコンカーバイド基材から選ばれた半導体基材を用い、純度が70%以上であり、温度が0〜100℃であるフッ素ガスを用い0.1〜60kPaの減圧下で当該フッ素ガスと半導体基材とを接触させて半導体基材の表面を改質させた後、当該半導体基材と水を必須成分として含有する3〜95℃の水性媒体とを10〜90分間接触させることを特徴とする表面が改質された半導体基材の製造方
関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属めっき皮膜を有する半導体基材の製造方法によれば、半導体基材に対する密着性に優れた金属めっき皮膜を有する半導体基材を製造することができる。また、本発明の表面が改質された半導体基材の製造方法によれば、金属めっき皮膜、塗料、接着剤などに対する密着性に優れた表面を有する、表面が改質された半導体基材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)〜(c)は、それぞれ順に、比較例1のシリコンウェハの表面の電子顕微鏡写真、比較例2のシリコンウェハの表面の電子顕微鏡写真、実施例1のシリコンウェハの表面の電子顕微鏡写真である。
図2】(a)〜(c)は、それぞれ順に、比較例1のシリコンウェハの水との接触角の測定結果を示す図、比較例2のシリコンウェハの表面の水との接触角の測定結果を示す図、実施例1のシリコンウェハの水との接触角の測定結果を示す図である。
図3】(a)〜(c)は、それぞれ順に、比較例1のシリコンウェハについて碁盤目剥離試験を行なった結果を示す図、比較例2のシリコンウェハについて碁盤目剥離試験を行なった結果を示す図、実施例1のシリコンウェハについて碁盤目剥離試験を行なった結果を示す図である。
図4】(a)〜(c)は、それぞれ順に、比較例1のシリコンウェハのF1s電子に関するXPSの測定結果を示すグラフ、比較例2のF1s電子に関するXPSの測定結果を示すグラフ、実施例1のシリコンウェハのF1s電子に関するXPSの測定結果を示すグラフである。
図5】実験例1で得られたニッケルめっき層上に銅めっき層が積層された積層金属めっき皮膜を有するシリコンウェハの断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の表面が改質された半導体基材の製造方法は、前記したように、純度が70%以上のフッ素ガスを用い、0.1〜60kPaの減圧下で当該フッ素ガスと半導体基材とを接触させ、次いで当該半導体基材と水性媒体とを接触させることを特徴とする。また、本発明の金属めっき皮膜を有する半導体基材の製造方法は、前記したように、純度が70%以上のフッ素ガスを用い、0.1〜60kPaの減圧下で当該フッ素ガスと半導体基材とを接触させ、次いで当該半導体素子と水性媒体とを接触させた後、当該半導体基材に金属めっきを施すことを特徴とする。
【0017】
半導体基材としては、シリコン基材およびシリコンカーバイド基材が挙げられる。本発明の方法は、従来、基材と金属めっき皮膜、塗料、接着剤などとの密着性を向上させることが困難であるとされているシリコン基材およびシリコンカーバイド基材に対し密着性を顕著に向上させることができる。これらの半導体基材の表面には、酸化物被膜が形成されていてもよく、あるいは半導体基材にホウ素、リン、窒素などがドープされていてもよい。
【0018】
半導体基材の形態は、当該半導体基材の用途に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。半導体基材の形態としては、例えば、ウェハ、サファイアなどの基板上に形成された薄膜、所定形状に成形されたチップなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0019】
半導体基材の表面は、汚れが付着している場合には、あらかじめ洗浄されていてもよい。半導体基材の表面を洗浄する方法としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコールなどの水性有機溶媒を用いて洗浄する方法、界面活性剤を用いて洗浄する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0020】
半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際に用いられる装置には特に限定がないが、半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際に、フッ素ガスまたは反応中に生成する四フッ化ケイ素ガスが大気中に放出されることを防止する観点から、密閉式のバッチ式反応装置などの反応装置を用いることが好ましい。
【0021】
以下では、説明の便宜上、反応装置を用いて半導体基材とフッ素ガスとを接触させるときの一実施態様に基づいて説明するが、本発明は、かかる実施態様のみに限定されるものではない。
【0022】
反応装置を用いて半導体基材とフッ素ガスとを接触させる場合、反応装置内に半導体基材を入れた後、当該反応装置内にフッ素ガスを導入することが好ましい。この場合、半導体基材の表面が改質を促進させる観点から、反応装置内に半導体基材を入れ、反応装置内を脱気したり、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスで置換したりした後に、反応装置内にフッ素ガスを導入することが好ましい。
【0023】
反応装置内に入れられる半導体基材の大きさは、当該半導体基材の用途、反応装置の大きさなどによって異なるので、一概には決定することができない。したがって、半導体基材の大きさは、その用途、反応装置の大きさなどに応じて適宜調整すればよい。
【0024】
次に、反応装置内にフッ素ガスを導入することにより、半導体基材とフッ素ガスとを接触させる。その際、半導体基材の表面のうち少なくとも改質させる部分にフッ素ガスが接触するように反応装置内にフッ素ガスを導入することが好ましい。
【0025】
フッ素ガスの純度は、半導体基材の表面で密着性に優れた金属めっき皮膜などを形成させる観点から、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。したがって、本発明においては、フッ素ガスとして一般に市場において容易に入手することができるフッ素ガスを希釈せずにそのままの状態で用いることができる。なお、高純度(例えば、99%以上)のフッ素ガスを用いる場合には、必要により、フッ素ガスが所定の純度を有するように不活性ガスで当該フッ素ガスを希釈してもよい。前記不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの圧力は、0.1〜60kPaとなるように調整する。本発明においては、このように半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの圧力を0.1〜60kPaに調整する点にも1つの大きな特徴がある。
【0027】
従来、フッ素ガスまたはフッ素ガスと不活性ガスとの混合ガスは、そのガスの圧力が低い場合には基材表面をフッ素化させる効率が低下すると考えられているため、通常、常圧(大気圧:約101.3kPa)程度で用いられている。この従来の常識に反し、本発明では、大気圧よりも格段に低い圧力(0.1〜60kPa)下で半導体基材とフッ素ガスとを接触させるという操作が採られているとともに、純度が70%以上であるフッ素ガスが用いられているので、半導体基材の表面に強固に密着する金属めっき皮膜などを形成させることができる表面が改質された半導体基材を得ることができる。
【0028】
半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの圧力は、半導体基材の表面を効率よく改質させる観点から、0.1kPa以上、好ましくは0.3kPa以上、さらに好ましくは0.5kPa以上であり、半導体基材の表面の平坦性を維持するとともに当該半導体基材の表面上に密着性に優れた金属めっき皮膜などを形成させる観点から、60kPa以下、好ましくは30kPa以下、より好ましくは20kPa以下、より一層好ましくは10kPa以下、さらに好ましくは5kPa以下、さらに一層好ましくは2kPa以下、特に好ましくは1.5kPa以下である。
【0029】
半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの温度は、半導体基材を効率よく改質させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、安全性を高めるとともに過度なエッチングによって半導体基材表面の平坦性が損なわれることなどを防止する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。このように本発明においては、あえて加熱または冷却をしなくても、室温(常温)で半導体基材とフッ素ガスとを接触させることによって半導体基材を改質させることができるので、本発明の製造方法は、工業的生産性に優れた方法である。
【0030】
半導体基材とフッ素ガスとを接触させるのに要する時間は、半導体基材の表面が改質されるのに要する時間であり、半導体基材の種類、半導体基材とフッ素ガスとを接触させる際のフッ素ガスの圧力およびその温度などによって異なるので一概には決定することができない。半導体基材とフッ素ガスとを接触させるのに要する時間は、半導体基材の表面を十分に改質させる観点から、通常、1分間〜1時間程度であるが、要求される金属めっき皮膜などとの密着強度を考慮して適宜決定することが好ましい。このように、本発明によれば、半導体基材とフッ素ガスとを短時間で接触させることによって半導体基材を改質させることができる点でも、本発明の製造方法は、工業的生産性に優れた方法である。
【0031】
半導体基材とフッ素ガスとを接触させた後には、安全性を向上させる観点から、不活性ガスを反応装置内に導入し、反応装置内の内部雰囲気を不活性ガスで置換することが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0032】
次に、フッ素ガスによって改質された半導体基材を反応装置から取り出した後、水性媒体と接触させることにより(リンシング)、当該半導体基材の表面に親水性が付与される。
【0033】
本明細書にいう水性媒体は、水を含有する媒体を意味する。水性媒体としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル;アセトニトリル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒;その他界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水性媒体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
水性媒体における水の含有率は、金属めっき皮膜などとの密着強度を向上させる観点から、好ましくは0.1容量%以上、より好ましくは0.3容量%以上である。
【0035】
半導体基材と水性媒体とを接触させる方法としては、例えば、水性媒体に半導体基材を浸漬する方法、水性媒体で半導体基材の表面を洗浄する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
半導体基材と水性媒体とを接触させる際の水性媒体の温度は、半導体基材の表面に効率よく親水性を付与するとともに水性媒体の取扱い性を向上させる観点から、好ましくは3〜95℃、より好ましくは5〜90℃、さらに好ましくは常温である。また、半導体基材と水性媒体とを接触させる時間は、水性媒体の温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは10〜90分間程度、より好ましくは15〜80分間程度である。
【0037】
以上のようにして半導体基材と水性媒体とを接触させることにより、表面が改質された半導体基材が得られる。得られた表面が改質された半導体基材には、例えば、金属めっき処理、塗料、接着剤などによる処理などを施すことができる。
【0038】
一般に、半導体素子の表面には、化学結合が可能な官能基が存在していないことから、接着剤を用いて他の基材を強固に接着させることが困難であったり、塗料を塗布しても形成された塗膜が容易に剥がれたりすると考えられている。これに対して、本発明の製造方法によって得られた表面が改質された半導体基材は、接着剤を介して他の基材と強固に接着させることができるのみならず、塗料を塗布しても形成された塗膜を強固に固定することができるので、例えば、金属めっき皮膜、塗膜、接着剤層、蒸着膜などを当該半導体基材の表面に好適に形成させることができる。
【0039】
また、従来、半導体基材の表面には、一般に半導体素子を形成するために、金属めっき皮膜が形成されるが、半導体基材と金属めっき皮膜などとの密着性が劣ることから、半導体基材の表面に凹凸を形成させるなどの半導体基材の表面に煩雑な表面加工を施すことが考えられている。しかし、このような表面加工を半導体基材の表面に施したとしても、もともと半導体基材の表面と金属めっき皮膜などとの密着強度が低いため、形成された金属めっき皮膜などが容易に剥がれることがある。
【0040】
これに対して、本発明の製造方法では、前記したような煩雑な表面加工を必要とせずに、金属めっき皮膜などとの密着性に優れた表面が改質された半導体基材を得ることができる。前記表面が改質された半導体基材は、金属めっき皮膜などとの密着性に優れていることから、金属めっき皮膜などとの強い密着強度が要求される種々の用途に好適に使用することができる。また、表面が改質された半導体基材の表面上に金属めっき皮膜を形成した場合には、さらにその金属めっき皮膜上に無電解めっき法、電解めっき法などのめっき法で同種または異種の金属めっき皮膜を形成することにより、積層構造を有するめっき皮膜を形成することができる。
【0041】
本発明の金属めっき皮膜を有する半導体基材は、前記のようにして得られた表面が改質された半導体基材に金属めっき皮膜を形成させることによって製造することができる。
【0042】
金属めっきに用いられるめっき材料は、特に限定されず、本発明の目的が阻害されない範囲内で種々のめっき材料を用いることができる。したがって、本発明においては、めっき材料として、水系めっき浴などの一般に使用されているめっき材料、より具体的には、例えば、スルファミン酸ニッケル水溶液などを用いることができる。
【0043】
また、半導体基材に金属めっきを施す方法としては、例えば、表面が改質された半導体基材にめっき浴中で無電解めっきを施す方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
金属めっきのめっき浴に用いられる金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0045】
金属めっき皮膜の厚さは、その用途に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、通常、好ましくは0.1〜100μm程度、より好ましくは0.5〜50μm程度である。
【0046】
また、本発明の表面が改質された半導体基材は、塗膜との密着性にも優れていることから、各種塗料を適用させるための半導体基材としても好適に使用することができる。塗料としては、例えば、アクリル系水性塗料などの水性塗料をはじめ、各種レジストなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0047】
さらに、前記表面が改質された半導体基材は、接着剤を介して被着体と強固に接着することができる。被着体としては、例えば、樹脂基材、金属材料、ガラス基材、木材、セラミック基材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記表面が改質された半導体基材と被着体とを接着させる際に用いられる接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。接着剤は、被着体の種類に応じて適宜選択して用いることが好ましい。
【0048】
以上説明したように、本発明の表面が改質された半導体基材の製造方法によれば、金属めっき皮膜、塗膜、接着剤などに対する密着性に優れた表面を有する表面が改質された半導体基材を製造することができる。また、本発明の金属めっき皮膜を有する半導体基材の製造方法によれば、半導体基材に対する密着性に優れた金属めっき皮膜を有する半導体基材を製造することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
参考例
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は34°であることが確認された。また、このシリコンウェハの表面を電子顕微鏡で観察したところ、その表面は平滑であることが確認された。
【0051】
実施例1
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0052】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0053】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0054】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真を図1(c)に示す。図1(c)に示された結果から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果を図2(c)に示す。図2(c)に示された結果から、水の接触角は7°であることが確認された。
【0055】
実施例2
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0056】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0057】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で10分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0058】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は9°であることが確認された。
【0059】
実施例3
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0060】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0061】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で120分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0062】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は10°であることが確認された。
【0063】
実施例4
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0064】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0065】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を13.3kPaに調整した後、室温(約23℃)で10分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0066】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は13°であることが確認された。
【0067】
実施例5
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0068】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0069】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を50.5kPaに調整した後、室温(約23℃)で10分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0070】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は25°であることが確認された。
【0071】
実施例6
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0072】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0073】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0074】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水50容量%とエタノール50容量%とからなるエタノール水溶液150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は6°であることが確認された。
【0075】
実施例7
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0076】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0077】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0078】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水10容量%とエタノール90容量%とからなるエタノール水溶液150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は8°であることが確認された。
【0079】
実施例8
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0080】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0081】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0082】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水0.5容量%とエタノール99.5容量%とからなるエタノール水溶液150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は10°であることが確認された。
【0083】
実施例9
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0084】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0085】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0086】
次に、このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水0.5容量%とエタノール99.5容量%とからなるエタノール水溶液150mL中に浸漬し、60分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンウェハを製造した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は7°であることが確認された。
【0087】
実施例10
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンカーバイドウェハを用いた。このチップ状シリコンカーバイドウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0088】
次に、このチップ状シリコンカーバイドウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0089】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンカーバイドウェハとを接触させ、チップ状シリコンカーバイドウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンカーバイドウェハを反応管から取り出した。
【0090】
次に、このチップ状シリコンカーバイドウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mL中に浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理することにより、表面が改質されたチップ状シリコンカーバイドウェハを製造した。このチップ状シリコンカーバイドウェハの電子顕微鏡写真の結果から、このチップ状シリコンカーバイドウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。また、このチップ状シリコンカーバイドウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果から、水の接触角は7°であることが確認された。
【0091】
比較例1
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。このチップ状シリコンウェハの表面の電子顕微鏡写真を図1(a)に示す。図1(a)に示された結果から、このチップ状シリコンウェハの表面は平滑であることが確認された。また、このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果を図2(a)に示す。図2(a)に示された結果から、水の接触角は34°であることが確認された。
【0092】
比較例2
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0093】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0094】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で60分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。
【0095】
以上のようにして表面が改質されたチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真を図1(b)に示す。図1(b)に示された結果から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果を図2(b)に示す。図2(b)に示された結果から、水の接触角は40°であることが確認された。
【0096】
比較例3
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0097】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0098】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を1.33kPaに調整した後、室温(約23℃)で10分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は50°であることが確認された。
【0099】
比較例4
半導体基材として、チップ状(縦:10mm、横:10mm、厚さ:1mm)に切断したシリコンウェハを用いた。このチップ状シリコンウェハを300mL容量のビーカーに入れた超純水150mLに浸漬し、30分間超音波洗浄機で処理した。
【0100】
次に、このチップ状シリコンウェハをニッケル製の反応管(内径:20mm、長さ:250mm)内に入れた後、当該反応管内の不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が0.1Pa以下となるまで減圧した。
【0101】
反応管内にフッ素ガス(純度:99.7%)を導入し、反応管内のフッ素ガスの圧力を13.3kPaに調整した後、室温(約23℃)で10分間静置することにより、フッ素ガスとチップ状シリコンウェハとを接触させ、チップ状シリコンウェハの表面を改質させた。その後、このチップ状シリコンウェハを反応管から取り出した。このチップ状シリコンウェハの電子顕微鏡写真から、このチップ状シリコンウェハの表面には微細な凹凸が形成されていることが確認された。このチップ状シリコンウェハに水滴径が約1mmの水滴を滴下し、接触角計〔協和界面科学(株)製、品番:DM−701〕を用いて室温(約25℃)における水の接触角を測定した。その結果、水の接触角は63°であることが確認された。
【0102】
実験例1
各実施例、各比較例および参考例のチップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハにセンシタイジング(感応化処理)を施すために、塩酸および蒸留水を混合することによって得られた酸性水溶液100mLに塩化第一スズ約5gを添加し、溶解させた溶液を調製した。
【0103】
前記で得られた溶液に、各実施例、各比較例および参考例のチップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハを約5分間浸漬させ、その表面にスズイオン(Sn2+)を存在させた。その後、前記チップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハを蒸留水中に浸漬することによって水洗した。
【0104】
チップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハにアクチベーション(活性化処理)を施すために、塩酸および蒸留水を混合することによって得られた酸性水溶液100mLに塩化パラジウム約0.03gを添加し、溶解させた溶液を調製した。この溶液に、前記で水洗されたチップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハを約5分間浸漬させ、その表面に金属パラジウムのコロイド状微細粒子を担持させた。
【0105】
なお、本発明は、この実験例1で採用したセンシタイジングおよびアクチベーションに限定されるものではなく、例えば、表面改質されたチップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハに、反応性を有するイオンを吸着させるなどの活性化処理を施してもよい。また、塩化パラジウムを含む溶液は、塩化パラジウムを添加して溶解させた溶液であってもよく、例えば、塩化パラジウムと塩化第一スズを添加して混合し、溶解させた溶液であってもよい。
【0106】
以上のようにしてパラジウム微粒子が担持されたチップ状シリコンウェハおよびチップ状シリコンカーバイドウェハは、その表面上に存在するパラジウム微粒子を有するので、当該パラジウム微粒子を核にしい還元反応によってニッケルが析出することから、ニッケルめっき皮膜を形成させることができる。
【0107】
次に、硫酸ニッケル(II)23.7g/L、塩化ニッケル(II)59.4g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物26.4g/L、塩化アンモニウム98.4g/Lおよび還元剤として次亜リン酸ナトリウム8.9g/Lからなる水溶液を調製し、アンモニア水を用いてpHを9〜10に調整することにより、めっき浴を得た。得られためっき浴の温度を45℃に調整し、このめっき浴に、パラジウム微粒子が担持されたチップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハを30分間浸漬することにより、チップ状シリコンウェハまたはチップ状シリコンカーバイドウェハの表面上にニッケルめっき皮膜(めっき皮膜の厚さ:1μm)が形成された試料を作製した。
【0108】
次に、各試料を用いて金属めっき皮膜の密着性を以下の方法にしたがって調べた。
〔金属めっき皮膜の密着性〕
試料の金属めっき皮膜が形成されている面に、セロハン粘着テープ〔ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標)〕を貼付し、セロハン粘着テープにカッターナイフで傷を入れ、半導体基材に達する1mm×1mm×100個の碁盤目を形成し、その上にセロハン粘着テープを貼り付けた後、急激にセロハン粘着テープを引き剥がし、碁盤目の剥離状態を観察し、残存している碁盤目の数をカウントし、その数を表1に記載した。当該残存している碁盤目の数が多いほど、金属めっき皮膜の密着性に優れている。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示された結果から、各実施例で得られたニッケルめっき皮膜が形成された試料は、いずれも、各比較例で得られたニッケルめっき皮膜が形成された試料と対比して、金属めっき皮膜の剥離がほとんど認められず、金属めっき皮膜の密着性に優れていることがわかる。
【0111】
実験例2
硫酸銅200g/L、硫酸45g/Lからなる水溶液に塩化ナトリウム水溶液を適宜加えて塩化物イオン濃度を60ppmとした水溶液を調製し、25℃に調整し、めっき浴とした。
【0112】
実験例1において、実施例1のチップ状シリコンウェハを用いて製造されたニッケルめっき皮膜が形成された試料をこのめっき浴に浸漬し、リードをとって陰極とした。この試料の面積の2倍の面積を有する銅板を当該めっき浴に陰極と接触しないようにして浸漬し、リードをとって陽極とした。陰極の電流密度を2A/dm2とし、銅めっき皮膜の厚さが0.5μmとなるように設定した電気量を通電し、試料の表面のニッケルめっき層上にさらに銅めっき層が積層された積層金属めっき皮膜が形成された試料を作製した。得られた試料の断面の電子顕微鏡写真を図5に示す。図5において、符号1〜4は、それぞれ順に銅メッキ層、ニッケルめっき層、フッ素化によって形成された層およびシリコン基板である。
【0113】
次に、前記で得られた積層金属めっき皮膜が形成された試料の金属めっき皮膜の密着性を実験例1と同様にして調べた。その結果、残存している碁盤目の数が100個であったことから、金属めっき皮膜の密着性に優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の表面が改質された半導体基材は、金属めっき皮膜などとの密着性に優れた表面状態を有することから、金属めっき皮膜を有する半導体基板として好適に使用することができる。また、本発明の表面が改質された半導体基材は、塗料や接着剤との密着性にも優れていることから、塗料や接着剤などを適用するための半導体基材として使用することが期待されるものである。
図4
図1
図2
図3
図5