特許第5965236号(P5965236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965236
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】紙幣処理装置及び紙幣処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/00 20160101AFI20160721BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G07D7/00 J
   G07D1/00 321A
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-163651(P2012-163651)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-26307(P2014-26307A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正雄
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晋輔
(72)【発明者】
【氏名】森 唯
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−085443(JP,A)
【文献】 特開2001−273542(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106665(WO,A1)
【文献】 特開2002−367011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00
G07D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納している紙幣を一枚ずつ繰り出し可能に構成された収納部、
出金処理時に、前記収納部から繰り出した前記紙幣を払い出すように構成された出金部、
前記出金部に払い出す前に、前記収納部から繰り出した前記各紙幣に対し、予め設定された複数の識別要因についての識別を行うように構成された識別部、
前記複数の識別要因毎に、当該識別要因が、リジェクト対象紙幣か否かの判断に利用する判断要因であるか、又は、その判断に利用しない非要因であるかを設定するように構成された設定部、及び、
前記識別部による識別結果と、前記設定部による設定内容とに基づいて、前記収納部から繰り出した前記各紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定するよう構成された制御部、を備えている紙幣処理装置。
【請求項2】
入金処理時に、投入された前記紙幣を一枚ずつ繰り出すように構成された入金部をさらに備え、
前記識別部は、前記入金部から繰り出された前記各紙幣に対し、複数の前記識別要因についての識別を行い、
前記制御部は、前記識別部による識別結果と、前記設定部による設定内容とに基づいて、前記入金部から繰り出された前記各紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定し、
前記設定部は、前記出金処理時における設定内容と、前記入金処理時における設定内容とを、それぞれ個別に設定することが可能である請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記収納部は、前記入金処理時にリジェクト対象外紙幣であると決定された紙幣を収納し、
前記収納部に収納されている各紙幣について、前記入金処理時の識別結果を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記出金処理時に、前記判断要因には該当せずかつ、前記非要因に該当する紙幣については、前記記憶部に記憶されている識別結果を読み出すと共に、当該読み出した識別結果を、前記出金処理時に識別した識別結果として利用する請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記識別要因が、判断要因であるか、又は、非要因であるかを、手入力によって設定する操作部により構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
上位機において、前記識別要因が、判断要因であるか、又は、非要因であるかが設定され、
前記設定部は、前記上位機から送信された設定内容信号を受信する通信部により構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
複数の前記識別要因は、前記紙幣の枚数を認識可能な要因と、前記紙幣の枚数を認識不可能な要因とを含んでおり、
前記設定部は、前記複数の識別要因の内、前記紙幣の枚数を認識可能な要因を、非要因に設定することが可能な一方、前記紙幣の枚数を認識不可能な要因を、非要因に設定することができない請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記収納部の状態が正常であるか又は異常であるかを示すフラグが設定されており、
前記制御部は、前記フラグが正常を示しているときには、前記設定部によって設定された設定内容に従って、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する一方、前記フラグが異常を示しているときには、前記複数の識別要因の全てを判断要因として、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する請求項1〜6のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
ユーザに対する警告を行うように構成された警告部をさらに備え、
前記出金部は、前記出金処理時にリジェクト対象紙幣であると決定された紙幣を、前記リジェクト対象外紙幣と共に払い出すように構成され、
前記警告部は、前記出金部に前記リジェクト対象紙幣が払い出されたときに警告を行う請求項1〜7のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項9】
出金処理時に、収納部に収納している紙幣を一枚ずつ繰り出し、
前記収納部から繰り出した前記各紙幣に対し、予め設定された複数の識別要因についての識別を行い、
予め、前記複数の識別要因毎に、当該識別要因が、リジェクト対象紙幣か否かの判断に利用する判断要因であるか、又は、その判断に利用しない非要因であるかを設定しておき、
前記識別結果と、前記設定内容とに基づいて、前記収納部から繰り出した前記各紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する紙幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置及び紙幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入金処理時に紙幣に対する識別を行うと共に、その識別結果(金種及び/又は正損)に応じて、複数の収納部に振り分けて紙幣を収納する一方で、出金処理時には紙幣の識別を行わずに、収納部から繰り出した紙幣を、出金口に払い出す紙幣入出金機が記載されている。
【0003】
入金処理時の識別に関して、特許文献2に記載された入出金機では、識別部による識別の結果、正常でないと判断されて返却された紙幣について、ユーザがその返却紙幣を目視して金種情報を手入力すると共に再投入が可能となるように構成している。再投入された紙幣については、当初の識別とはレベルを変更して識別を行うと共に、その識別結果と手入力された金種情報とが一致した場合に、手入力情報に基づいて紙幣を所定の収納部に収納するようにしている。このような処理は、入金処理時におけるリジェクト対象紙幣を減らすことができるという利点がある。
【0004】
また、前述した特許文献1にも記載されているが、入金処理時に紙幣の識別を行うと共に、出金取引の確実性を高めるべく、出金処理時にも、収納部から繰り出した紙幣の識別を行うことが知られている。
【0005】
例えば特許文献3に記載された入出金機では、出金処理時に、収納部から繰り出した紙幣について識別部により識別を行い、正常紙幣は出金口に払い出す一方、出金に適さないリジェクト対象紙幣を、出金口に払い出さないようにしている。つまり、この特許文献3に記載された入出金機では、リジェクト対象紙幣と判断した要因が、紙幣の斜行、重送、又は、連鎖等の特定の要因であるときには、紙幣を一時保留部に収納してしまうと、その後、一時保留部から再び紙幣を繰り出そうとする際に、ジャムや繰り出し異常が発生する可能性があるため、当該紙幣を回収カセットに収納するのに対し、そうした特定の要因ではなく、一時保留部からの再繰り出しも可能と判断されるリジェクト対象紙幣は、一時保留部に収納するようにしている。
【0006】
さらに、特許文献4には、出金処理時に、収納部に収納している紙幣の利用効率の向上と、出金処理に要する時間の短縮とを両立するために、収納部から繰り出した紙幣を識別した結果、リジェクト対象紙幣と判断されたときに、収納部に収納されている紙幣の残量が所定量以上であるときには、当該紙幣を回収カセットに収納する一方で、収納部に収納されている紙幣の残量が所定量未満であるときには、別の識別部によって再識別を行うことが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、出金処理時に、金種等の識別は可能な一方で、紙幣の斜行等に起因して、札長異常(形状異常)と識別される結果、無駄にリジェクト処理が行われることを回避するために、複数の通過センサの検出結果に基づき、斜行時でも紙幣の大きさを正確に測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−78949号公報
【特許文献2】特開2008−3665号公報
【特許文献3】特開2008−52477号公報
【特許文献4】特開2008−123258号公報
【特許文献5】特許第4694611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、出金処理時に紙幣の識別を行うことは出金取引の確実性の向上に有効である。ここで、出金処理時に収納部から繰り出す紙幣はそもそも、補充処理において、正常紙幣として収納部に収納した紙幣であったり、又は、循環式の入出金機においては、入金処理時に識別を行うことによって正常紙幣として収納している紙幣であったりする。このため、紙幣そのものは正常であるものの、出金処理時の識別において、リジェクト対象紙幣であると判定される場合があるが、そうした判定は、紙幣の斜行や連鎖等の搬送異常に、主に起因している。
【0010】
ところが、前述の通り、紙幣そのものは正常であることから、斜行や連鎖等によって出金処理時にリジェクト対象紙幣と判定されることは、誤判定、又は、不要なリジェクト判定ということもできる。出金処理時に、こうした誤判定等が頻繁に生じてしまうと、ユーザの使い勝手を損ねてしまうという問題もある。
【0011】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出金処理時におけるリジェクト対象紙幣を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に係り、収納している紙幣を一枚ずつ繰り出し可能に構成された収納部、出金処理時に、前記収納部から繰り出した前記紙幣を払い出すように構成された出金部、前記出金部に払い出す前に、前記収納部から繰り出した前記各紙幣に対し、予め設定された複数の識別要因についての識別を行うように構成された識別部、前記複数の識別要因毎に、当該識別要因が、リジェクト対象紙幣か否かの判断に利用する判断要因であるか、又は、その判断に利用しない非要因であるかを設定するように構成された設定部、及び、前記識別部による識別結果と、前記設定部による設定内容とに基づいて、前記収納部から繰り出した前記各紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定するよう構成された制御部、を備えている。
【0013】
この構成によると、出金処理時には、収納部は、収納している紙幣を繰り出すと共に、識別部は、繰り出した紙幣の識別を行う。識別部は、予め設定されている複数の識別要因について識別を行う。複数の識別要因には、例えば、紙幣が斜めに搬送される斜行、複数枚の紙幣が連なって搬送される連鎖、複数枚の紙幣が重なって搬送される重送、紙幣の金種が確定できない金種判定異常、等が含まれる。
【0014】
一方、設定部は、この複数の識別要因毎に、その識別要因がリジェクト対象紙幣か否かの判断に利用する判断要因であるか、又は、判断に利用しない非要因であるかを設定する。
【0015】
そうして、制御部は、識別部による識別結果と、設定部による設定内容とに基づいて、収納部から繰り出した紙幣がリジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する。具体的に、複数の識別要因の内の一部の要因のみが判断要因であると設定されている場合(言い換えると、一部の要因は非要因である)は、識別部による識別の結果、いずれかの識別要因に該当する紙幣であっても、当該識別要因が非要因であれば、リジェクト対象外紙幣と決定される。一方、当該識別要因が判断要因であれば、リジェクト対象であるかどうかを判断する紙幣と決定される。従って、単に紙幣の搬送に異常が生じているだけで、紙幣そのものは正常であることが保証できる識別要因を非要因に設定すれば、出金処理時の不要なリジェクト判定を減らすことが可能になる。このことは、出金取引の確実性を確保しつつも、ユーザの使い勝手を向上させる。
【0016】
前記紙幣処理装置は、入金処理時に、投入された前記紙幣を一枚ずつ繰り出すように構成された入金部をさらに備え、前記識別部は、前記入金部から繰り出された前記各紙幣に対し、複数の前記識別要因についての識別を行い、前記制御部は、前記識別部による識別結果と、前記設定部による設定内容とに基づいて、前記入金部から繰り出された前記各紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定し、前記設定部は、前記出金処理時における設定内容と、前記入金処理時における設定内容とを、それぞれ個別に設定することが可能である、としてもよい。
【0017】
前述したように、収納部に収納している紙幣は、基本的には正常紙幣であるから、出金処理時においては複数の識別要因の内の一部の要因について、リジェクト対象紙幣であるか否かの判断に利用しなくても出金取引の確実性を確保することができ、逆に一部の要因を非要因にすることによって、不要なリジェクト判定を回避することが可能になる。
【0018】
これに対し、入金処理時には、入金取引の確実性を確保すると共に、収納部に収納している紙幣が正常紙幣であることを保証するには、識別部が識別をする複数の識別要因の内の、できるだけ多くの要因又は全ての要因を、リジェクト対象紙幣であるか否かの判断に利用することが好ましい。従って、入金処理時における設定要因及び非要因の設定と、出金処理時における設定要因及び非要因の設定とを同じにするのではなく、個別に設定可能にすることで、入金処理時には入金取引の確実性を確保しつつ、収納部に収納している紙幣が正常紙幣であることの保証が可能になる一方、出金処理時には出金取引の確実性を確保しつつ、不要なリジェクト判定を回避することが可能になる。
【0019】
前記設定部は、前記識別要因が、判断要因であるか、又は、非要因であるかを、手入力によって設定する操作部により構成されている、としてもよい。
【0020】
また、上位機において、前記識別要因が、判断要因であるか、又は、非要因であるかが設定され、前記設定部は、前記上位機から送信された設定内容信号を受信する通信部により構成されている、としてもよい。
【0021】
これらの構成によれば、紙幣処理装置のユーザは、判断要因であるか非要因であるかの設定を、紙幣処理装置の操作部又は上位端末を通じて行うことが可能になる。
【0022】
複数の前記識別要因は、前記紙幣の枚数を認識可能な要因と、前記紙幣の枚数を認識不可能な要因とを含んでおり、前記設定部は、前記複数の識別要因の内、前記紙幣の枚数を認識可能な要因を、非要因に設定することが可能な一方、前記紙幣の枚数を認識不可能な要因を、非要因に設定することができない、としてもよい。
【0023】
つまり、紙幣の枚数を認識不可能な要因を非要因に設定してしまうと、枚数が認識できないにも拘わらず、リジェクト対象外紙幣として取り扱われるため、例えば出金処理時において払い出した紙幣の枚数が不確定になってしまう。逆に、紙幣の枚数を認識可能な要因を非要因に設定しても、例えば出金処理時において払い出した紙幣の枚数を確定することが可能である。従って、紙幣の枚数を認識可能な要因のみを、非要因に設定可能にすることは、紙幣の処理の適正化を確保しつつも、不要なリジェクト判定を回避することを可能にする。
【0024】
前記収納部の状態が正常であるか又は異常であるかを示すフラグが設定されており、前記制御部は、前記フラグが正常を示しているときには、前記設定部によって設定された設定内容に従って、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する一方、前記フラグが異常を示しているときには、前記複数の識別要因の全てを判断要因として、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する、としてもよい。
【0025】
ここで、収納部の状態が正常であるとは、収納部に収納されている紙幣の枚数とカウントした紙幣の枚数とが一致していることが保証でき、それによって収納部に収納している紙幣の管理ができていることを意味し、収納部の状態が異常であるとは、収納部に収納されている紙幣の枚数とカウントした紙幣の枚数とが一致していることが保証できずに、収納部に収納している紙幣の管理ができていないことを意味する。例えば紙幣を収納部に収納しようとしているときに、その紙幣の出入口付近においてジャムが発生し、それを手で取り除いたような場合は、当該取り除いた紙幣が収納部に収納されたと判断されているか、紙幣が収納部に収納されていないと判断されているかが不明になることから、「エラー」として収納部の状態が異常となる。また、テープ巻き取り式の収納部から紙幣を繰り出そうとしているときに、テープと紙幣との分離ができずに、テープ及び紙幣の再巻き取りを行ったような場合には、再巻き取りに伴い紙幣が重なり合ってしまう可能性があることから、「リトライ」として収納部の状態が異常となる。さらに、収納部が開けられたり、収納部が紙幣処理装置から一旦取り外されて再度装着されたりした場合も、当該収納部の状態が異常となる。
【0026】
前記の構成によると、フラグが、収納部の状態が異常であることを示しているときには、収納部に収納されている紙幣の管理ができていないことから、設定部によって複数の識別要因の一部が非要因に設定されていたとしても、全ての識別要因を判断要因として、リジェクト対象紙幣であるか、リジェクト対象外紙幣であるかの決定を行う。こうすることで、収納部に収納されている紙幣の管理ができていなくても、その収納部から繰り出した紙幣については、リジェクト対象紙幣であるか、リジェクト対象外紙幣であるかの決定が適確に行われる。その結果、出金取引の確実性を確保することが可能になる。
【0027】
前記紙幣処理装置は、ユーザに対する警告を行うように構成された警告部をさらに備え、前記出金部は、前記出金処理時にリジェクト対象紙幣であると決定された紙幣を、前記リジェクト対象外紙幣と共に払い出すように構成され、前記警告部は、前記出金部に前記リジェクト対象紙幣が払い出されたときに警告を行う、としてもよい。
【0028】
こうすることで、リジェクト対象紙幣もリジェクト対象外紙幣も共に出金部に払い出されるものの、リジェクト対象紙幣が出金部に払い出されたときには、警告部が警告を行うから、紙幣処理装置のユーザは、出金部に払い出された紙幣にリジェクト対象紙幣が含まれていることを確実に認識することが可能になり、違算の発生を未然に回避して出金取引の確実性が確保される。また、リジェクト対象紙幣もリジェクト対象外紙幣も共に出金部に払い出すことによって、リジェクト対象紙幣を収納する別途の収納部(例えば一時保留部)を省略することが可能になり、装置構成の簡略化が図られる。
【0029】
前記収納部は、前記入金処理時にリジェクト対象外紙幣であると決定された紙幣を収納し、前記紙幣処理装置は、前記収納部に収納されている各紙幣について、前記入金処理時の識別結果を記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記出金処理時に、前記判断要因には該当せずかつ、非要因に該当する紙幣については、前記記憶部に記憶されている識別結果を読み出すと共に、当該読み出した識別結果を、前記出金処理時に識別した識別結果として利用する、としてもよい。
【0030】
出金処理時に、収納部から繰り出した紙幣の識別を行った際に、識別要因に該当したときには、当該紙幣の金種等の情報の読み取りができない場合がある。この場合、当該識別要因が非要因であるとすれば、紙幣の情報が読み取れないにも拘わらず、リジェクト対象外紙幣として取り扱われて、出金部に払い出されることになる。
【0031】
一方で、入金処理時にリジェクト対象外紙幣であると決定されて、収納部に収納された紙幣は全て、金種等の情報の読み取りが正常に行われている。そこで、入金処理時に読み取った紙幣に関する情報を記憶部に記憶しておき、出金処理時に情報を読み取ることができなかった紙幣については、入金処理時に読み取った情報を利用することにより、リジェクト対象外紙幣として取り扱われる紙幣の全てについて、金種等の情報が得られるようになる。このことは、出金金額の確定を可能にし、出金取引の確実性を高める上で有利になる。
【0032】
ここに開示する技術はまた、紙幣処理方法に係り、この紙幣処理方法は、出金処理時に、収納部に収納している紙幣を一枚ずつ繰り出し、前記収納部から繰り出した前記各紙幣に対し、予め設定された複数の識別要因についての識別を行い、予め、前記複数の識別要因毎に、当該識別要因が、リジェクト対象紙幣か否かの判断に利用する判断要因であるか、又は、その判断に利用しない非要因であるかを設定しておき、前記識別結果と、前記設定内容とに基づいて、前記収納部から繰り出した前記各紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかを決定する。
【0033】
こうすることで、前記と同様に、出金処理時の不要なリジェクト判定を減らすことが可能になり、出金取引の確実性を確保しつつも、ユーザの使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、前記の紙幣処理装置及び紙幣処理方法によると、出金処理時の不要なリジェクト判定が減り、出金取引の確実性を確保しつつも、ユーザの使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】紙幣処理装置の概略斜視図である。
図2】紙幣処理装置の内部構造を示す概略図である。
図3】紙幣処理装置の動作制御に係る構成を示す図である。
図4】紙幣処理装置における入金処理の動作説明図である。
図5】紙幣処理装置における出金処理の動作説明図である。
図6】識別要因と、判断要因及び非要因との設定内容を例示する図である。
図7】(a)紙幣の斜行を例示する図、(b)紙幣の連鎖を例示する図、(c)札長異常を例示する図、(d)紙幣の重送を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、紙幣処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態の説明は例示である。図1は、紙幣入出金機(以下、単に入出金機という)1の外観を示している。この入出金機1は、例えば銀行のテラーカウンターに設置されかつ、この入出金機1を挟んだ左右二人のテラーによって共用で使用される。このため、この入出金機1は、基本的には左右対称に構成されている。
【0037】
この入出金機1は、詳しくは後述するが、入金口211に投入された紙幣を収納部3に収納する入金処理、及び、収納部3に収納している紙幣を出金口231に払い出す出金処理を少なくとも実行する。この入出金機1は、いわゆる循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出す紙幣には、入金処理時に収納部3に収納した紙幣が含まれる。
【0038】
入出金機1は、図1及び2に示すように、上側の処理部11と、下側の金庫部13とに大別される。処理部11を構成する筐体111内には、入金口211を有する入金部21と、出金口231を有する出金部23と、紙幣の識別を行う識別部25と、入金部21、出金部23及び識別部25を相互に連結するループ搬送路411を含む処理部側搬送部41と、が配設されている。一方、金庫部13を構成する筐体131内には、複数の(図例では8個の)巻き取り方式の収納モジュール31を含んで構成された収納部3と、処理部側搬送部41のループ搬送路411と各収納モジュール31とを互いに接続する搬送路431を含む金庫部側搬送部43と、が配設されている。ここで、金庫部13を構成する筐体131は、処理部11を構成する筐体111とは異なり、その内部に格納している収納部3等を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成された防護筐体131である。防護筐体131の前面には、金庫部13を開閉するための開閉扉133や電子錠1331が設けられている。
【0039】
入金部21の入金口211は、前述したように、例えば入金処理の際に入金する紙幣を投入するための口である。入金口211は、処理部側筐体111の上面において上向きに開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。入金部21はまた、入金口211に投入された複数枚の紙幣を、一枚ずつ、ループ搬送路411に繰り出す繰り出し機構を備えている。
【0040】
出金部23の出金口231は、前述したように、例えば出金処理の際に紙幣を払い出すための口である。出金口231は、入金口211よりも装置手前側(図2の紙面右側)の、処理部側筐体111における上面から前面にかけての位置でかつ、斜め上方に向かって開口している。この出金口231も、入金口211と同様に、複数枚の紙幣を一度に保持可能に構成されている。
【0041】
識別部25は、ループ搬送路411上に配設されて、そのループ搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損等を識別するように構成されている。識別部25が識別する識別要因については、後で詳述する。
【0042】
処理部側搬送部41は、処理部側筐体111内においてエンドレスに設けられたループ搬送路411を備えている。紙幣は、このループ搬送路411に沿って図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。このループ搬送路411は、図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。ループ搬送路411は、その搬送路に沿って、紙幣と紙幣との間に所定間隔を隔てた状態で、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。
【0043】
ループ搬送路411と入金口211との間は、投入路413によって互いに接続されており、入金口211に投入された紙幣は、この投入路413を通ってループ搬送路411まで搬送される。
【0044】
ループ搬送路411にはまた、払出路415が、紙幣の搬送方向を切り替える分岐機構417を介して接続されている。払出路415の先端は、出金口231に接続されている。分岐機構417は、ループ搬送路411を時計回り方向及び反時計回り方向に搬送されている紙幣を、そのままループ搬送路411上で搬送させるか、払出路415に引き込むかを切り替えるように動作する。この構成によって、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣は、分岐機構417の動作制御によって選択的に、払出路415を通って出金口231に搬送される。
【0045】
ループ搬送路411上にはまた、第1−第3の分岐機構419,4111,4113が設けられている。第1−第3の分岐機構419−4113はそれぞれ、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。分岐機構の具体的な構成は、国際公開第2009/034758号に例示されている。
【0046】
より具体的に、第1の分岐機構419は、ループ搬送路411と金庫部側搬送部43の搬送路431との接続位置に設けられている。第1の分岐機構419は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的に、金庫部側搬送部43の搬送路431に送って、収納部3に収納させるか、又は、収納部3から繰り出されかつ、金庫部側搬送部43の搬送路431に沿って搬送されてきた紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
【0047】
また、第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411と接続路4115との接続位置に設けられている。接続路4115は、詳しくは後述するが、図2においては仮想的に示す一時保留部51と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、接続路4115に送って一時保留部51に収納させるか、又は、一時保留部51から繰り出した紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
【0048】
さらに、第3の分岐機構4113は、ループ搬送路411とカセット接続路4117との接続位置に設けられている。カセット接続路4117は、詳しくは後述するが、図2において仮想的に示す回収カセット53と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第3の分岐機構4113は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的にカセット接続路4117に送り、それを回収カセット53に収納するように動作する。
【0049】
収納部3は、前述したように、図例では第1−第8の巻き取り方式(言い換えると、テープ式)の収納モジュール31−1−31−8を含んで構成されている。ここで、以下の説明において、各々の収納モジュールを総称する場合には、符号「31」を付し、第1、第2、第3…の、各々の収納モジュールを区別する場合には、符号「31−1、31−2、31−3…」を付す。尚、収納モジュール31の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。8個の収納モジュール31は、この例では、装置の奥行き方向(図2の紙面左右方向)に4個並んで1列を構成すると共に、その列が上下方向に2列を構成するように積み重ねられている。
【0050】
この巻き取り方式の収納モジュール31は、特開2000−123219号公報に例示されるように、概略矩形箱状の筐体内に、紙幣をガイドする一枚のテープ、ガイド部材、及び、紙幣と共にテープを巻き取るリールを備えて構成されるか、又は、国際公開2011/036782号に例示されるように、筐体内に、紙幣を挟む2枚のテープ、及び、紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るリールを備えて構成される。いずれの構成においても、巻き取り方式の収納モジュール31は、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。各収納モジュール31は、紙幣を互いに所定間隔を隔てながらリールに巻き取る。各収納モジュール31にはまた、筐体の内外を連通するように形成された出入口の近傍に、紙幣の通過を検知する検知センサが設けられている。
【0051】
金庫部側搬送部43の搬送路431は、処理部側搬送部41のループ搬送路411と同様に、ローラ、ベルト及びガイドの組み合わせによって構成されており、この搬送路431もまた、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。搬送路431は、ループ搬送路411上の第1の分岐機構419から、鉛直下向きに延びると共に、その下端部において、奥行き方向の手前側(図2の紙面右側)及び奥側(図2の紙面左側)のそれぞれに分岐している。入出金機1の奥側に向かって延びる分岐路は、上下に積み重ねられた2列の収納モジュール31の間に配設されている。各収納モジュール31は、この分岐路上に設けられた各振分機構433を介して分岐路に接続されている。各振分機構433は、後述する制御部513によって駆動制御され、そのことにより、紙幣が、識別部25によって識別された金種及び/又は正損等に応じて複数の収納モジュール31に振り分けられて収納されることになる。
【0052】
この入出金機1では、紙幣を一時的に保留する一時保留部51、及び、金庫部13の防護筐体131内に着脱可能に取り付けられる回収カセット53が、オプションで装着されるように構成されている。
【0053】
一時保留部51は、図2に二点鎖線で示すように、処理部側筐体111内における、奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に装着される。一時保留部51は、前述したように、接続路4115を介して、第2の分岐機構4111に接続される。一時保留部51は、この例では、前述した収納モジュール31と同様に、2枚のテープを利用した巻き取り方式であり、紙幣の順番を入れ替えることなく、先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。
【0054】
回収カセット53は、図2に二点鎖線で示すように、防護筐体131内における、奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に、着脱可能に装着される。回収カセット53は、前述したように、カセット接続路4117を介して、ループ搬送路411上の第3の分岐機構4113に接続されている。回収カセット53は、巻き取り式の収納モジュール31や一時保留部51とは異なり、その内部に昇降する集積台を備えかつ、この集積台上に紙幣を重ねて収納するように構成されている。これにより、回収カセット53に収納された紙幣は、そこから繰り出すことはできない。回収カセット53には、例えば入金処理時に入金口211に投入された紙幣の内、収納部3に収納しきれなかったオーバーフロー紙幣が収納される。また、出金処理時等に識別不可であったリジェクト対象紙幣が、この回収カセット53に収納される場合がある。従って、回収カセット53が未装着のときには、オーバーフロー紙幣やリジェクト対象紙幣は、出金口231に払い出される。
【0055】
尚、図示は省略するが、防護筐体131内の空きスペースには、回収カセット53が配設される代わりに、巻き取り式の収納モジュール31が、さらに追加して装着される場合がある。追加の収納モジュール31は、例えば2個のモジュールが上下に積み重ねられて配設される場合があり、これら2個の収納モジュール31はそれぞれ、搬送路431の下端から奥行き方向の手前側に延びる分岐路に対し、前述した振分機構を介して接続される。
【0056】
図3は、入出金機1の動作制御に係る構成を示している。入出金機1は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部513を備えている。制御部513には、前述した入金部21、出金部23、第1−第nの収納モジュール31を含む収納部3、処理部側搬送部41、及び金庫部側搬送部43が、信号の送受信可能に接続されている。これらの各部21,23,3,41,43は、図示は省略するが、例えば搬送路を搬送されている紙幣を検知するといった機能を有する各種のセンサを含んでおり、各種センサの検知信号は制御部513に入力される。制御部513は、入力された検知信号等に基づいて制御信号を出力し、各部21,23,3,41,43は、その制御信号に従って動作をする。
【0057】
制御部513にはまた、識別部25が接続されており、識別部25は、識別結果を制御部513に提供する。さらに、図1等では図示を省略するが、テラー等の、この入出金機1を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分としての操作部55、入出金機1が、例えばLANやシリアルバスを通じて、図示を省略する上位機及びその他の機器との間で信号の送受信を行うための通信部57、及び、各種の情報を記憶するための、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成される記憶部59がそれぞれ、入出金機1に接続されている。
【0058】
記憶部59は、入出金機1が収納している紙幣の金種別枚数又は金額である在高を少なくとも記憶する。また、記憶部59は、収納モジュール31毎の在高、及び、各収納モジュール31に収納されている紙幣の情報(金種及び正損等)も記憶する。
【0059】
前述したように、オプション機器である一時保留部51や回収カセット53が、この入出金機1に装着されるときには、それらの機器51,53もまた、制御部513に接続されることにより、制御部513が出力する制御信号に従って動作をする。また、入出金機1には、各種の情報を表示するための、例えばフラットパネルディスプレイからなる表示部511がオプション機器として装着可能に構成されており、この表示部511もまた、制御部513に接続される。
【0060】
制御部513は、通信部57を通じて受けた上位機からの指令、及び/又は、操作部55を通じて受けた各種の指令に応じて、各部21,23,25,3,41,43,51,53,55,57,59,511の動作を制御する。このことにより、入出金機1は、以下に説明する入金処理及び出金処理を含む、各種処理を行う。入出金機1において実行した各種の処理の履歴は、記憶部59にログとして記憶される。
【0061】
(入金処理)
入金処理は、入出金機1に紙幣を入金(収納)する処理であり、入金口211に投入された紙幣は、識別部25による識別結果と、予め設定された収納割当とに従って、いずれかの収納モジュール31に収納される。より詳細に、入出金機1は、入金処理の際には、次のように動作する。すなわち、入金する紙幣を入金口211に投入した状態で、例えば上位機及び/又は操作部55の操作によって入金処理の開始コマンドを、入出金機1に入力する。図4に矢印で示すように、入金部21の繰り出し機構は、入金口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、その紙幣の識別を行うと共に、計数を行う。処理部側搬送部41はまた、識別部25によって正常に識別された紙幣(この紙幣を、リジェクト対象紙幣の対の名称として正常紙幣と呼ぶ)を、図4に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から、第1の分岐機構419を通って金庫部側搬送部43の搬送路431へと搬送する。金庫部側搬送部43は、識別部25による識別結果、及び、予め設定された収納割当に従って、各紙幣を所定の収納モジュール31に収納する。すなわち、各紙幣は、金種別や正損別に応じて、いずれかの収納モジュール31に収納される。
【0062】
一方、処理部側搬送部41は、識別部25において真偽の識別ができない紙幣等、入出金機1がそのまま受け入れることができないリジェクト対象紙幣を、図4に破線の矢印で示すように、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、リジェクト対象紙幣は、出金口231に払い出される。尚、入金処理時に発生したリジェクト対象紙幣は、入金口211に再度投入され、識別部25による識別が、もう一度行われることになる。入金処理時の識別及びリジェクト対象紙幣の判断に関しては、後で詳述する。
【0063】
また、入金処理時に、収納モジュール31が満杯になることに起因して収納できなくなった紙幣(つまり、オーバーフロー紙幣)も、出金口231に払い出される。尚、図示は省略するが、入出金機1に回収カセット53が装着されているときには、オーバーフロー紙幣は、回収カセット53に収納される。
【0064】
制御部513は、入金処理の終了後に、記憶部59に記憶している、各収納モジュール31の在高を更新する。制御部513はまた、入金処理の終了後に、各収納モジュール31に収納されている紙幣の情報(金種及び正損等)も更新する。
【0065】
(出金処理)
出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を払い出す処理である。具体的には、上位機及び/又は操作部55において、出金金額を指定して最小構成枚数の金種と枚数を自動的に指定するか、又は、金種と枚数を直接指定する、所定の出金操作を行うことによって出金処理は開始する。収納部3は、図5に実線の矢印で示すように、指定された金種の紙幣を、それが収納されている収納モジュール31から、指定された枚数だけ繰り出す。金庫部側搬送部43は、繰り出された紙幣を、搬送路431を介して、処理部側搬送部41のループ搬送路411へと搬送する。処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送し、識別部25が識別を行った後に、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、出金口231に各紙幣が払い出される。制御部513は、出金処理の終了後に、記憶部59に記憶している、各収納モジュール31の在高を更新すると共に、各収納モジュール31に収納されている紙幣の情報も更新する。つまり、収納モジュール31から繰り出した紙幣の情報を消去する。
【0066】
ここで、図5に示すように、一時保留部51や回収カセット53が装着されていない入出金機1においては、出金処理時に、識別部25による識別が不可であった等の理由によりリジェクト対象紙幣と判断された紙幣は、正常紙幣と共に、出金口231に払い出すことになる。出金処理時にリジェクト対象紙幣が発生したときには、上位機及び/又は表示部511に、その旨(エラーメッセージ)が表示され、それによって、オペレータは、出金口231に払い出された紙幣に、リジェクト対象紙幣が含まれていることを認識することができる。こうすることで、違算の発生が未然に回避される。尚、出金処理時における識別及びリジェクト対象紙幣の判断に関しても、後で詳述する。
【0067】
(精査処理)
精査処理は、収納モジュール31に収納している紙幣を確定させるための処理であり、基本的には、収納モジュール31内に収納している紙幣を全て繰り出し、その後、繰り出した紙幣について、一枚一枚識別を行いながら、元の収納モジュール31に戻すことを行う。
【0068】
精査処理は、例えば、収納モジュール31が装置から取り外されて、そこに設けられている扉が一旦開けられたことを検知したときに行われる。これは、収納モジュール31が開けられたときには、収納モジュール31内に収納されている紙幣の枚数等が不確定になり、収納モジュール31に収納されている紙幣の現物枚数と、入出金機1の記憶部59が記憶している在高とが不一致になるためである。また、収納モジュール31が交換された場合にも精査処理が行われる。
【0069】
また、入金処理時に収納モジュール31の出入口付近において紙幣のジャムが生じたとき(エラー時)にも精査処理が行われる。これは、エラー時に、収納モジュール31の出入口付近に設けたセンサが紙幣の通過を検知していたにも拘わらず、出入口付近においてジャムとなった紙幣が例えば手で取り除かれたり、逆に、センサが紙幣の通過を検知していないにも拘わらず、ジャムとなった紙幣が手で収納モジュール31内に収納されたりすることで、収納モジュール31内に収納されている紙幣の枚数等が不確定になるためである。
【0070】
さらに、出金処理時にリトライが発生したときにも精査処理が行われる。このリトライとは、巻き取り式の収納モジュール31から紙幣を繰り出そうとしたときに、紙幣とテープとの分離ができなかったため、リールを巻き直してもう一度、紙幣の繰り出しを行うことであり、リールを巻き直した際に、紙幣同士が重なり合ってしまう可能性があり、収納モジュール31から繰り出した紙幣の枚数が不確定、言い換えると、収納モジュール31内に収納している紙幣の枚数が不確定になるためである。
【0071】
こうした現物枚数と在高との不一致の状態は、収納モジュール31内の紙幣の管理ができず、収納モジュール31が正常でない(異常である)と言い換えることができる。尚、上位機等において精査処理の実行が指定された場合も、精査処理は行われる。こうした精査処理は、個々の収納モジュール31について個別に行われる場合と、全ての収納モジュール31について、順次行われる場合とがある。
【0072】
制御部513は、精査処理が必要な状況を検知したときには、通常は正常とされている「フラグ」を異常にする。フラグは、精査処理が必要な収納モジュール31について、精査処理が実行されるまで異常のままに保持され、精査処理が実行されれば、フラグは正常に切り替えられる。
【0073】
精査処理における入出金機1の動作としては、先ず、図5に示す出金処理と同様に、精査処理の対象である収納モジュール31から、紙幣を一枚ずつ繰り出し、識別部25において識別を行った後に、搬送部41は、繰り出された紙幣を出金口231に払い出す。そうして、収納モジュール31内の紙幣が全て繰り出されて当該収納モジュール31は空になる。
【0074】
精査対象の収納モジュール31内に収納されている紙幣の全てが出金口231に払い出されれば、その繰り出された紙幣の全てが入金口211に投入され、図4に示す入金処理と同様に、その入金口211から紙幣が一枚ずつ繰り出され、ループ搬送路411を通じて識別部25に搬送される。そうして、識別部25において識別が行われた後に、正常紙幣は、元の収納モジュール31、つまり、精査対象の収納モジュール31に収納される。
【0075】
こうして、収納モジュール31に収納している紙幣の金種及び枚数が確定し、当該収納モジュール31について、記憶部59内に記憶されている在高及び紙幣の情報のそれぞれが更新される。尚、入金口211から収納モジュール31に紙幣を搬送しているときに発生したリジェクト対象紙幣は、出金口231に搬送されて、そこに払い出される。
【0076】
(入金処理時及び出金処理時の識別及びリジェクト判定)
前述したように、この入出金機1は循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出される紙幣には、入金処理時に収納モジュール31に収納された紙幣が含まれる。入金処理時には、識別部25における識別が行われることで、各収納モジュール31に収納されている紙幣は、基本的にはリジェクト対象紙幣ではない正常紙幣である。また、ここでの説明は省略するが、補充処理において収納モジュール31に収納される紙幣もまた、基本的にはリジェクト対象紙幣ではない正常紙幣である。
【0077】
一方でこの入出金機1では、出金取引の確実性をより高める観点から、前述の通り、出金処理時にも識別部25による識別を行うが、その識別の際に、リジェクト対象紙幣であると判定される場合がある。各収納モジュール31から繰り出される紙幣そのものは、正常であるため、出金処理時にリジェクト対象紙幣であると判定される原因は主に、搬送異常にある。つまり、図7(a)に例示するように、搬送路4に沿って紙幣BNを搬送している際に紙幣BNが斜めに搬送される場合(斜行)、同図(b)に2つ例示するように、複数の紙幣BNが所定の間隔を隔てないで搬送される場合(連鎖)、同図(c)に例示するように、複数の紙幣BNの一部が重なる等して、識別した金種に対し紙幣の大きさが対応しない場合(札長異常)、及び、同図(d)に例示するように、複数の紙幣BNが重なって搬送される場合(重送)等においてリジェクト対象紙幣であると判定され得る。
【0078】
これらの搬送異常の内でも、図7(a)に例示する斜行、図7(b)に例示する連鎖、図7(c)に例示する札長異常等は、紙幣の枚数は確定することが可能である一方で、紙幣そのものは正常であるから、これをリジェクト対象紙幣と判定することは、誤判定又は不要なリジェクト判定ということができる。出金処理時に、こうした誤判定等が頻繁に生じてしまうと、ユーザの使い勝手を損ねてしまうという問題もある。
【0079】
そこで、この入出金機1では、出金処理時においては、識別部25で識別を行う複数の識別要因の内、一部の要因については、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかの判断に利用しないことで、出金取引の確実性は確保しつつも、不要なリジェクト判定が発生することを回避するようにしている。
【0080】
具体的には図6に示すように、識別部25において識別を行う識別要因として、前記の「斜行」「連鎖」「重送(多重搬送)」「札長異常」「対象外金種」「金種判定異常(不確定)」等の複数の要因が予め設定されている。尚、図6は識別要因の例示であり、これら以外の要因を含んでいてもよい。ここで、「対象外金種」とは、所定金種が収納されている収納モジュール31から繰り出された紙幣であるのに、当該所定金種であると確定することができないことであり、「金種判定異常」とは、金種を確定することができないことである。
【0081】
識別部25において識別をする複数の識別要因のそれぞれについて、当該識別要因を、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるか(つまり、正常紙幣であるか)の判断に利用するか(判断要因)、又は、利用しないか(非要因)、を設定可能に構成されている。このような設定は、ユーザが、入出金機1における操作部55を手動操作することによって行うことが可能であり、その設定内容は記憶部59に記憶される。設定時には、入出金機1の表示部511に設定用画面を表示してもよい。また、通信部57を介して入出金機1に接続される上位機において、ユーザが手動操作することによって設定を行うことも可能である。上位機において設定した内容は、上位機から通信部57に設定内容信号として送信され、通信部57が受信した信号に基づいて、記憶部59に設定内容が記憶される。従って、入出金機1における操作部55又は通信部57が設定部に相当する。
【0082】
図6に示す例では、入金処理時には、「斜行」「連鎖」「札長異常」「重送」「対象外金種」及び「金種判定異常」の全ての識別要因が、判断要因に設定されている(図6においては、判断要因に設定することを「リジェクト」と記している)。つまり、これらの識別要因のいずれが該当しても、当該紙幣はリジェクト対象紙幣と判断される。
【0083】
これに対し出金処理時には、「斜行」「連鎖」「札長異常」「重送」「対象外金種」及び「金種判定異常」の識別要因の内、「重送」及び「対象外金種」は、判断要因に設定する一方で、残りの「斜行」「連鎖」「札長異常」及び「金種判定異常」は、判断要因でない(つまり、非要因である)としている(図6においては、非要因に設定することを「OK」と記している)。従って、出金処理時には、「重送」又は「対象外金種」に該当する紙幣は、リジェクト対象紙幣と判断されるのに対し、「斜行」「連鎖」「札長異常」又は「金種判定異常」に該当する紙幣は、リジェクト対象外紙幣、つまり正常紙幣と判断される。こうして出金処理時には、識別要因の内の一部の要因を非要因とすることで、判断要因の数が減るから、リジェクト対象紙幣と判定されることが減少することになる。
【0084】
ここで、非要因とすることが可能な識別要因は、紙幣の枚数を特定することが可能な要因である。つまり、「重送」は、識別部25を通過する際に検出した紙幣の厚みが1枚以上の厚みを有していることを識別しているが、こうした「重送」は、紙幣の枚数を特定することができない。そのため、「重送」と識別された紙幣をそのまま出金口231に払い出してしまうと、出金口231に払い出された紙幣の枚数が不確定になってしまう。これは、違算の発生を招く。従って、紙幣の枚数を特定することができない識別要因は、非要因とすることができず、紙幣の枚数を特定することができる識別要因のみが、非要因に設定することが可能に構成されている。
【0085】
さらに、図6の例では、「対象外金種」も非要因に設定することができない。これは、「対象外金種」は所定金種が収納されている収納モジュール31から繰り出された紙幣であるのに、当該所定金種であると確定することができないため、リジェクト対象紙幣でないとして、そのまま出金口231に払い出してしまうと、出金金額を特定することができなくなり、違算に繋がる危険性があるためである。
【0086】
また、図6の例では、「金種判定異常(不確定)」については、非要因であると共に、入金処理時の識別結果を、出金処理時の識別結果として置き換えるように設定している。前述の通り、「金種判定異常(不確定)」は、出金処理時に、金種を確定することができないことに相当するが、入金処理時には正常に識別が行われて金種等が特定されていることから、入金処理時の識別結果をそのまま利用することが可能である。そこで、識別部25において、金種判定異常と識別された紙幣については、記憶部59に記憶されている紙幣の情報(つまり入金処理時の識別結果に基づいて記憶した情報)を読み出し、当該情報を、出金処理時に識別した識別結果に置き換える。こうすることで、出金処理時に金種情報等が得られなかった紙幣を、リジェクト対象外紙幣として出金口231に払い出したときでも、出金金額の確定をすることができ、出金取引の確実性が高まる。
【0087】
図6の例ではさらに、出金処理時の設定として、収納モジュール31の正常/異常を示す、前述のフラグによって、その設定内容が変更されるように構成されている。前述したように、エラー時やリトライの発生等によって、収納モジュール31の状態を示すフラグが異常を示しているときには、全ての識別要因を判断要因とする。これはフラグが異常を示しているときには、収納モジュール31内に収納されている紙幣の枚数が不確定であると共に、紙幣の管理ができていない状態であり、収納モジュール31内に収納されている紙幣は、基本的に正常紙幣であるという前提条件が崩れるためである。フラグが異常を示している収納モジュール31から繰り出した紙幣については、全ての識別要因を判断要因とする。このことによって、収納モジュール31から繰り出した紙幣について、リジェクト対象紙幣であるか否かの決定が適確に行われるから、出金取引の確実性が確保される。
【0088】
ここで、前記のフラグは、収納モジュール31毎に設定されることから、一つの出金処理(一取引)においても、正常フラグである収納モジュール31から繰り出した紙幣については、正常フラグ時の判断要因/非要因の設定内容に従って、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかの決定を行えばよく、異常フラグである収納モジュール31から繰り出した紙幣についてのみ、異常フラグ時の設定内容(図例では、全て判断要因)に従って、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかの決定を行えばよい。
【0089】
また、出金処理の途中において、正常フラグであった収納モジュール31においてリトライが発生することに伴い、当該収納モジュール31について異常フラグが立った時には、その異常フラグが立った後において、異常フラグ時の設定内容(図例では、全て判断要因)に従って、リジェクト対象紙幣であるか、又は、リジェクト対象外紙幣であるかの決定を行えばよい。
【0090】
尚、ここの開示する技術は、入出金機に適用する他に、出金機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 入出金機(紙幣処理装置)
21 入金部
23 出金部
25 識別部
3 収納部
31 収納モジュール
511 表示部(警告部)
513 制御部
55 操作部(設定部)
57 通信部(設定部)
59 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7