(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内側充填部に充填される前記高濃度汚染物質は、前記放射性物質を含有する水の凝集沈殿処理に伴って発生した凝集沈殿汚泥であることを特徴とする請求項1または2記載の輸送・保管容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、放射性物質により汚染された地域の除染に伴って、放射性物質によって汚染された土または廃棄物である放射性汚染物質が発生している。除染が行われる地域では、放射性汚染物質が除去される。除去物は、容器内に充填されて、先ず「一時保管場所」へ運ばれる。その後、「仮置き場(3年程度)」に運ばれ、最後に「中間貯蔵施設(30年程度)」に運ばれる。
【0006】
ところが上記した従来の容器では、放射線を遮蔽するために鉛製の外側容器もしくはコンクリート製の遮蔽体を用いているため、収納される放射性汚染物質の量に対して容器全体の重量が増大してしまう。そのため、放射性汚染物質の保管は可能であったとしても、容器の輸送には適さない。そこで、放射性汚染物質の輸送および保管の両方に適している輸送・保管容器が求められている。
【0007】
本発明は、放射性汚染物質の輸送および保管の両方に適した輸送・保管容器を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の輸送・保管容器は、放射性物質を含有する放射性汚染物質が容器本体内に充填される輸送・保管容器であって、容器本体の側面部から離間するようにして容器本体内に配置された仕切り部と、仕切り部により包囲されて、所定の放射性汚染レベルを有する高濃度汚染物質が充填される内側充填部と、仕切り部と側面部との間に形成されて、高濃度汚染物質よりも低い放射性汚染レベルを有する低濃度汚染物質が充填される外側充填部と、容器本体内で仕切り部を位置決めすることにより、外側充填部における所定の充填厚さを確保する位置決め手段と、を備え
、容器本体は、所定の可撓性および強度を有し放射性汚染物質の充填により自立可能かつ揚重可能となるフレキシブルコンテナであることを特徴とする。
【0009】
この輸送・保管容器によれば、容器本体内に配置された仕切り部により包囲されて、高濃度汚染物質が充填される内側充填部が形成される。また、仕切り部と容器本体の側面部との間すなわち内側充填部の周囲に、低濃度汚染物質が充填される外側充填部が形成される。容器本体の側面部から離間するようにして配置された仕切り部は、位置決め手段によって位置決めされ、外側充填部における所定の充填厚さが確保される。この充填厚さは、仕切り部と容器本体の側面部との離間距離に相当する。このように、外側充填部における所定の充填厚さが確保されることで、内側充填部に高濃度汚染物質が充填されても、高濃度汚染物質からの放射線は、外側充填部に充填された低濃度汚染物質によって遮蔽される。よって、輸送・保管容器の側面部に近寄って作業員が作業を行ったとしても、作業員の被ばくが抑制される。このように、放射性汚染物質を高濃度汚染物質と低濃度汚染物質とに分類し、低濃度汚染物質で高濃度汚染物質を所定の充填厚さで包囲することにより、他の遮蔽部材(コンクリートや鉛など)を用いることなく、適切かつ安全な充填作業および保管が可能となる。さらに、容器本体内には、たとえば土、草木、または汚泥など比較的密度の低い物質が充填されるのみであって、密度の高い遮蔽部材(コンクリートや鉛など、容積に比して重量の大きい遮蔽部材)は充填されない。そのため、本発明の輸送・保管容器は、輸送にも適している。よって、輸送および保管の両方に適した輸送・保管容器が実現される。
容器本体として利用されるフレキシブルコンテナは自立可能であるため保管し易く、また揚重可能であるため輸送し易い。さらに、フレキシブルコンテナ自体が軽量であるため、輸送時の重量を最小限にでき、放射性汚染物質の輸送がより一層容易となり、また輸送効率も向上する。
【0010】
本発明の輸送・保管容器は、放射性物質を含有する放射性汚染物質が容器本体内に充填される輸送・保管容器であって、容器本体の側面部から離間するようにして容器本体内に配置された仕切り部と、仕切り部により包囲されて、所定の放射性汚染レベルを有する高濃度汚染物質が充填される内側充填部と、仕切り部と側面部との間に形成されて、高濃度汚染物質よりも低い放射性汚染レベルを有する低濃度汚染物質が充填される外側充填部と、容器本体内で仕切り部を位置決めすることにより、外側充填部における所定の充填厚さを確保する位置決め手段と、を備え、仕切り部は、高濃度汚染物質を投入するための開口部と開口部を閉止する閉止部とを有する袋体であることを特徴とする。
【0011】
また、上記輸送・保管容器において、内側充填部に充填される高濃度汚染物質は、放射性物質を含有する水の凝集沈殿処理に伴って発生した凝集沈殿汚泥である。放射性物質を含有する水の凝集沈殿処理に伴って発生した凝集沈殿汚泥には、放射性物質が濃縮されて含まれる。そのため、凝集沈殿汚泥の放射性汚染レベルは、他の放射性汚染物質に比して特に高い。内側充填部に凝集沈殿汚泥を充填し、外側充填部に低濃度汚染物質を充填することにより、凝集沈殿汚泥からの放射線を確実に遮蔽でき、除染作業およびその後の輸送を安全かつ効率的に進めることができる。
【0012】
また、上記輸送・保管容器において、仕切り部は、容器本体内に立設される筒状部であり、位置決め手段は、筒状部に接合されると共に側面部に向けて延びる板状部である。この構成によれば、筒状部内の内側充填部に高濃度汚染物質を充填し、板状部によって筒状部が位置決めされ、外側充填部の充填厚さが確保される。よって、簡易な構成により、輸送および保管の両方に適した輸送・保管容器が実現される。
【0013】
また、上記輸送・保管容器において、仕切り部は、高濃度汚染物質を投入するための開口部と開口部を閉止する閉止部とを有する袋体である。この場合、袋体の開口部から高濃度汚染物質を投入し、閉止部によって開口部を閉止する。さらにこの袋体が容器本体の中心部に位置するように位置決めすれば、高濃度汚染物質からの放射線が確実に遮蔽される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、輸送および保管の両方に適した輸送・保管容器が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1(a)に示されるように、輸送・保管容器1は、放射性物質を含有する放射性汚染物質が充填されて、放射性汚染物質を保管するためのものである。輸送・保管容器1に充填される放射性汚染物質は、放射性物質により環境汚染が生じた地域における除染により発生する、土壌などの除去物である。すなわち、放射性汚染物質は、剥ぎ取られた表土、湖沼などから除去された底泥、剪定された枝葉、除草された草、落ち葉、焼却灰、放射性物質含有水の浄化処理に伴って排出される汚泥などである。放射性物質としては、たとえば放射性セシウム(
137Cs)が挙げられる。
【0018】
輸送・保管容器1は、放射性汚染物質の保管のみならず、放射性汚染物質が充填された状態で輸送されるのにも適している。放射性汚染物質が充填された輸送・保管容器1は、除染場所から放射性汚染物質の一時保管場所へ輸送される。また、輸送・保管容器1は、一時保管場所において保管された後、仮置き場に輸送され、最後に中間貯蔵施設に輸送される。
【0019】
輸送・保管容器1は、放射性汚染物質が充填される容器本体2と、容器本体2の側面部2aから離間するようにして容器本体2内に配置される筒状の仕切り部3とを備える。仕切り部3内には、所定の放射性汚染レベルを有する高濃度汚染物質が充填される内側充填部4が形成されている。仕切り部3と側面部2aとの間には、高濃度汚染物質よりも低い放射性汚染レベルを有する低濃度汚染物質が充填される外側充填部5が形成されている。
【0020】
仕切り部3は、容器本体2内で位置決めされている。容器本体2の位置決めにより、外側充填部5における所定の充填厚さd、すなわち仕切り部3と側面部2aとの間の水平方向の距離が確保されている。この充填厚さdの値は、たとえば、内側充填部4に充填される高濃度汚染物質の汚染レベル若しくは内側充填部4の容積等により適宜設定される。
【0021】
上述したように、放射性汚染物質の種類は様々であり、それぞれの種類や排出場所によって、放射性汚染レベルも様々である。放射性汚染レベルとは、たとえば表面線量率(μSv/h)の値によって決められる汚染の度合いである。なお、表面線量率の他にも、表面汚染密度(cmp、Bq/m
2)或いは放射能濃度(Bq/kg)等の値によって放射性汚染レベルが決められてもよい。内側充填部4に充填される高濃度汚染物質と、外側充填部5に充填される低濃度汚染物質との仕分け方については後述する。
【0022】
輸送・保管容器1への放射性汚染物質の充填方法について説明する。以下の説明では、輸送・保管容器1として輸送・保管容器1Aを用いる場合を例に挙げて説明する。
図2〜
図4に示されるように、輸送・保管容器1Aの容器本体2としては、具体的には、クロスタイプのフレキシブルコンテナ6が用いられる。フレキシブルコンテナ6は、大型土のう袋、フレキシブルコンテナバッグ、若しくは略してフレコン等とも呼ばれる袋体である。フレキシブルコンテナ6は、たとえばポリエチレンからなる。フレキシブルコンテナ6は、所定の可撓性および強度を有しており、放射性汚染物質の充填により自立可能かつ揚重可能である。ここでいう自立可能とは、形状を保持できることを意味する。また揚重可能とは、吊り下げが可能であることを意味する。フレキシブルコンテナ6は、透水性を有してもよいし、不透水性であってもよい。
【0023】
まず、
図2(a)に示されるように、畳まれた状態のフレキシブルコンテナ6を用意する。次に、
図2(b)に示されるように、フレキシブルコンテナ6を広げる。次に、
図2(c)に示されるように、フレキシブルコンテナ6の上部の開口部6bを通じて、高濃度汚染物質容器20をフレキシブルコンテナ6内に入れる。
【0024】
図5に示されるように、高濃度汚染物質容器20は、たとえばポリエチレン製の容器である。高濃度汚染物質容器20は、フレキシブルコンテナ6内に立設される円筒状の筒状部21と、筒状部21の下端に溶着によって接合される円板状の底板部(板状部)22とからなる。底板部22は、フレキシブルコンテナ6の底部6c上に載置され、筒状部21は、フレキシブルコンテナ6の内部で起立する。筒状部21の高さは、内部に放射性汚染物質が充填された場合のフレキシブルコンテナ6の高さよりも低い。
【0025】
高濃度汚染物質容器20の筒状部21は、フレキシブルコンテナ6の側面部6aから離間して配置される。輸送・保管容器1Aの仕切り部3に相当する。また、高濃度汚染物質容器20の底板部22は、筒状部21の下端から側面部6aに向けて水平方向に延びている。高濃度汚染物質容器20において、筒状部21と底板部22とは同心状に配置されている。底板部22は、フレキシブルコンテナ6内で筒状部21を位置決めする位置決め手段に相当する。
【0026】
高濃度汚染物質容器20内には、高濃度汚染物質Hが充填される柱状の内側充填部4が形成される。高濃度汚染物質容器20の周囲、すなわち高濃度汚染物質容器20と側面部6aとの間には、低濃度汚染物質が充填される筒状の外側充填部5が形成される。筒状部21が直立しており、筒状部21と側面部6aとの間には、所定の離間距離dが形成される。
【0027】
次に、
図3(a)に示されるように、高濃度汚染物質容器20の筒状部21の上端にキャップ23を装着する。このキャップ23は、筒状部21内の空間すなわち内側充填部4に低濃度汚染物質が入るのを防止するためのものである。次に、
図3(b)に示されるように、外側充填部5に低濃度汚染物質Lを充填する。低濃度汚染物質Lを充填する高さは、筒状部21の上端よりも低い高さとする。
【0028】
次に、
図4(a)に示されるように、キャップ23を一旦取り外し、筒状部21内すなわち内側充填部4に高濃度汚染物質Hを充填する。そして、容器本体21にキャップ23を装着する。さらに、キャップ23が埋まる程度に低濃度汚染物質Lを充填する。次に、
図4(b)に示されるように、閉止部6eによって開口部6bを閉止する。そして、
図4(c)に示されるように、クレーン等のフックをループ部6fに引っ掛け、フレキシブルコンテナ6を吊り上げる。
【0029】
フレキシブルコンテナ6に放射性汚染物質を充填する際の、高濃度汚染物質Hと低濃度汚染物質Lとの仕分け方について説明する。
図6に示されるように、放射性汚染物質には、放射性汚染レベルが高いものと低いものとがある。このような放射性汚染レベルの分布は、過去の除染工事の実績から得てもよいし、実際の除染対象地区からサンプリングを行うことにより把握してもよい。
【0030】
ここで、放射性汚染レベルの分布に応じて、所定の閾値を設定し、その閾値よりも高い放射性汚染レベルの物質を高濃度汚染物質Hとし、その閾値よりも低い放射性汚染レベルの物質を低濃度汚染物質Lとすることができる。たとえば、
図6に示した例の場合、表面線量率が10μSv/hよりも高い放射性汚染レベルの物質を高濃度汚染物質Hとし、表面線量率が10μSv/hよりも低い放射性汚染レベルの物質を低濃度汚染物質Lとすることができる。また、表面線量率が20μSv/hよりも高い放射性汚染レベルの物質を高濃度汚染物質Hとし、表面線量率が20μSv/hよりも低い放射性汚染レベルの物質を低濃度汚染物質Lとすることもできる。また、図示は省略するが、表面線量率15μSv/hを閾値としてもよい。
【0031】
また、2箇所の汚染物質(たとえば汚染土壌等)において濃度が異なる場合に、放射性汚染レベルの高い方を高濃度汚染物質Hとし、放射性汚染レベルの低い方を低濃度汚染物質Lとしてもよい。すなわち、放射性汚染レベルが相対的に高い方を高濃度汚染物質Hとし、放射性汚染レベルが相対的に低い方を低濃度汚染物質Lとしてもよい。また、
図6に示されるような度数分布で表した場合に、放射性汚染レベルが低い順から見て最初の山よりも右側に外れた汚染物質を高濃度汚染物質Hとして扱うこともできる。
【0032】
図6に示す例では、10μSv/h付近をピークとする最初の山があり、表面線量率が100μSv/h以上の汚染物質は最初の山から外れている。この場合、表面線量率が100μSv/h以上の汚染物質を高濃度汚染物質Hとして扱うこととしてもよい。
【0033】
また、表面線量率の平均値に対して標準偏差σの3倍を加えた値を閾値としてもよい。
【0034】
高濃度汚染物質Hとして輸送・保管容器1Aの内側充填部4に充填されるのが好適な物質としては、たとえば、放射性物質を含有する水の凝集沈殿処理に伴って発生した凝集沈殿汚泥が挙げられる。放射性物質を含有する水とは、たとえば除染に用いた洗浄水である。内側充填部4に充填される凝集沈殿汚泥は、沈殿分離の直後に排出される沈殿汚泥でもよいし、濃縮機等によって濃縮された凝集汚泥でもよい。また、脱水機等によって脱水された凝集汚泥であってもよい。
【0035】
低濃度汚染物質Lとして輸送・保管容器1Aの外側充填部5に充填されるのが好適な物質としては、土壌や土砂が挙げられる。たとえば、土壌には遮蔽能力があり、例えば、厚さ30cmで98%の遮蔽率、15cmで86%の遮蔽率、10cmで74%の遮蔽率、5cmで51%の遮蔽率があると言われている。このように、土壌は、外側充填部5に充填される低濃度汚染物質Lとして適している。
【0036】
以上説明した輸送・保管容器1Aおよび輸送・保管容器1Aへの充填方法によれば、フレキシブルコンテナ6内に配置された筒状部21により包囲されて、高濃度汚染物質Hが充填される内側充填部4が形成される。また、筒状部21とフレキシブルコンテナ6の側面部6aとの間すなわち内側充填部4の周囲に、低濃度汚染物質Lが充填される外側充填部5が形成される。フレキシブルコンテナ6の側面部6aから離間するようにして配置された筒状部21は、底板部22によって位置決めされ、外側充填部5における所定の充填厚さdが確保される。この充填厚さdは、筒状部21とフレキシブルコンテナ6の側面部6aとの離間距離dに相当する。このように、外側充填部5における所定の充填厚さdが確保されることで、内側充填部4に高濃度汚染物質Hが充填されても、高濃度汚染物質Hからの放射線は、外側充填部5に充填された低濃度汚染物質Lによって遮蔽される。よって、輸送・保管容器1Aの側面部に近寄って作業員が作業を行ったとしても、作業員の被ばくが抑制される。このように、放射性汚染物質を高濃度汚染物質Hと低濃度汚染物質Lとに分類し、低濃度汚染物質Lで高濃度汚染物質Hを所定の充填厚さdで包囲することにより、コンクリートや鉛等の他の遮蔽部材を用いることなく、適切かつ安全な充填作業および保管が可能となる。さらに、フレキシブルコンテナ6内には、たとえば土、草木、または汚泥など比較的密度の低い物質が充填されるのみであって、密度の高い遮蔽部材(コンクリートや鉛など、容積に比して重量の大きい遮蔽部材)は充填されない。そのため、輸送・保管容器1Aは、輸送にも適している。よって、輸送および保管の両方に適した輸送・保管容器1Aが実現される。
【0037】
フレキシブルコンテナは、本来、放射性物質の運搬用に開発されたものではないため、遮蔽機能を有していない。つまり、除染業務などにおいては放射性セシウムが含まれている土壌等が対象となるため、作業員は除染に加え、除染除去物の収集後の運搬・保管時にも外部被ばくを被るおそれがあった。そのため、従来、作業員の外部被ばくを低減するためには、作業員の作業時間を減らすしか手段がなかった。なお、近年「放射線遮蔽シート」が開発され、このようなシートを用いれば遮蔽機能を有するフレキシブルコンテナが作成できるともいわれるが、実際の遮蔽効果は、1mmの厚さで遮蔽率は約3%であり、シートのコストや重量を考慮に入れると、適用する価値があまり無いと言える。
【0038】
これに対し、輸送・保管容器1Aでは、フレキシブルコンテナ6内の外側充填部5に低濃度の除去物を充填し、内側充填部4に高濃度の除去物を充填し、外側充填部5の充填厚さdを確保することで、特殊な遮蔽シートや遮蔽部材を用いなくとも放射線の被ばくレベルを十分に低減することができる。放射性汚染物質は、通常、除染場所から一時保管場所へ、一時保管場所から仮置き場へ、そして仮置き場から中間貯蔵施設へ輸送される。輸送・保管容器1Aによれば、輸送・保管容器1Aの表面での空間線量率を低減でき、除染業務に係る作業員全ての外部被ばく量の低減に寄与できる。なお、輸送・保管容器1Aでは、筒状部21すなわち内側充填部4がフレキシブルコンテナ6の上下端の近くまで延在するが(
図4(b)参照)、このような構造であっても、作業員が接近するのはフレキシブルコンテナ6の側面部6a付近であるため、作業員が被ばくすることはない。
【0039】
また、輸送・保管容器1Aによれば、容器本体として利用されるフレキシブルコンテナ6は自立可能であるため保管し易く、また揚重可能であるため輸送し易い。さらに、フレキシブルコンテナ6自体が軽量であるため、輸送時の重量を最小限にでき、放射性汚染物質の輸送がより一層容易となり、また輸送効率も向上する。すなわち、充填作業、設置作業、および運搬作業のいずれにおいても、ハンドリングがよくなる。また、汎用製品を利用するので、コストを大幅に低減することができる。
【0040】
また、放射性物質を含有する水の凝集沈殿処理に伴って発生した凝集沈殿汚泥には、放射性物質が濃縮されて含まれる。そのため、凝集沈殿汚泥の放射性汚染レベルは、他の放射性汚染物質に比して特に高い。内側充填部4に高濃度汚染物質Hとしての凝集沈殿汚泥を充填し、外側充填部5に低濃度汚染物質Lを充填することにより、凝集沈殿汚泥からの放射線を確実に遮蔽でき、除染作業およびその後の輸送を安全かつ効率的に進めることができる。
【0041】
また、筒状部21内の内側充填部4に高濃度汚染物質Hを充填し、底板部22によって筒状部21が位置決めされ、外側充填部5の充填厚さdが確保される。よって、簡易な構成により、輸送および保管の両方に適した輸送・保管容器が実現される。
【0042】
また、輸送・保管容器1Aの外側充填部5に土を配置しているため、保管時に積載荷重が作用したり、運搬時に保管容器が変形した際などに、内側充填部4に充填された土以外の鋭利な解体物質によってフレキシブルコンテナ6が破損したりすることが防止される。
【0043】
なお、フレキシブルコンテナ6が透水性であっても、土壌中等に吸着している放射性セシウムは溶出し難いため、放射性物質が漏出することはなく、安全性は保たれる。
【0044】
次に、他の実施形態について説明する。
図1(b)に示されるように、容器本体2の中心部にのみ設けられて、上下端まで延在しない仕切り部13を用いた輸送・保管容器10とすることもできる。この場合、仕切り部13の上方には上部充填高さd1が確保され、仕切り部13の下方には下部充填高さd2が確保される。仕切り部13内の内側充填部14は、上下左右を外側充填部15によって包囲される。
【0045】
図7(a)〜(d)に示されるように、輸送・保管容器10の具体例としての輸送・保管容器10Aでは、輸送・保管容器1Aと同様、フレキシブルコンテナ6を用い、仕切り部13として、袋体30が用いられる。袋体30の材質は、フレキシブルコンテナ6と同じである。袋体30は、高濃度汚染物質Hを投入するための開口部30aと、開口部30aを閉止する閉止部30bとを有する。
【0046】
輸送・保管容器10Aに放射性汚染物質を充填する場合、まずフレキシブルコンテナ6の底部に低濃度汚染物質Lを充填し、その後、袋体30に入れた低濃度汚染物質Lを低濃度汚染物質L上に載置し、最後に再度、袋体30の側方および上方に低濃度汚染物質Lを充填する。最初に低濃度汚染物質Lを充填する高さは、必要となる下部充填高さd2に応じて設定する。輸送・保管容器10Aでは、袋体30を包囲する低濃度汚染物質L自体が位置決め手段に相当する。
【0047】
このような輸送・保管容器10Aおよび輸送・保管容器10Aへの充填方法によれば、輸送・保管容器1Aと同様の作用効果が奏される。さらには、フレキシブルコンテナ6の上下に作業員が接近する場合であっても、安全性が確保される。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。たとえば、高濃度汚染物質容器20の筒状部21は、円筒状である場合に限られず、角筒状であってもよい。底板部22は、円板状である場合に限られず、矩形板状であってもよい。
【0049】
仕切り部の態様は、高濃度汚染物質容器20の筒状部21や袋体30に限られない。フレキシブルコンテナ6(容器本体2)内に予め固定される、または後装着できる仕切り部であってもよい。また、内側充填部4に充填される高濃度汚染物質Hは、凝集沈殿汚泥に限られない。外側充填部5に充填される低濃度汚染物質Lは、土壌や土砂に限られない。低濃度汚染物質Lは、土以外の解体物等であってもよい。