特許第5965240号(P5965240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965240
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ボールジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20160721BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16C11/06 N
   F16C11/10 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-172110(P2012-172110)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-31822(P2014-31822A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304039065
【氏名又は名称】カヤバ システム マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真成
(72)【発明者】
【氏名】火箱 義文
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−063625(JP,U)
【文献】 実開昭59−034117(JP,U)
【文献】 実開昭55−107625(JP,U)
【文献】 特開平11−101221(JP,A)
【文献】 特開平06−058321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/06
F16C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物とダンパーとを接合する部位に設けられ、ボールスタッドの先端部に設けた球状頭部を球受け内に相対回転可能な状態で収納するとともに、前記球受け内において前記球状頭部をホルダにより支持して前記ボールスタッドの軸線方向への相対変位を拘束することによって、前記球受けに対する前記ボールスタッドの任意の方向への揺動を許容しつつ軸線方向の相対変位を拘束する構成のボールジョイントであって、
前記ボールスタッドの軸線方向に直交しかつ前記球状頭部の中心を通る仮想の平面と前記球状頭部の周面との交線としての仮想円の位置に、前記球受けに対する前記球状頭部の相対回転を規制するための回転規制機構を設けてなり、
前記回転規制機構は、前記球状頭部の周面に形成された係合穴と、先端部が前記係合穴に挿入可能な断面円形の係合突部とされている規制ボルトにより構成されて、該規制ボルトが前記球受けの外側から該球受けに対して螺着されて前記係合突部が前記係合穴に挿入され、
前記係合穴はその中心が前記仮想円の円周上に形成されているとともに、該係合穴は前記ボールスタッドの軸線方向に長い長径を有する長穴として形成され、かつ該係合穴における前記仮想円の周方向に沿う短径が前記係合突部の径寸法と同等とされ、
前記係合穴に対して前記係合突部が挿入された状態において、該係合穴と該係合突部との係合により前記球受けに対する前記球状頭部の前記仮想円の周方向に沿う相対回転が拘束され、かつ前記係合突部に対する前記係合穴の相対変位が前記長径の範囲内において許容されることにより前記球受けに対する前記ボールスタッドの任意の方向への揺動が許容される構成とされ
軸力と回転トルクを伝達可能に構成されていることを特徴とするボールジョイント。
【請求項2】
請求項1記載のボールジョイントであって、
前記回転規制機構が前記仮想円の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられていることを特徴とするボールジョイント。
【請求項3】
請求項2記載のボールジョイントであって、
一対の前記回転規制機構が前記球状頭部の中心を挟んで対向配置されていることを特徴とするボールジョイント。
【請求項4】
請求項2記載のボールジョイントであって、
複数対の前記回転規制機構が前記球状頭部の中心を挟んでそれぞれ対向配置されていることを特徴とするボールジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の部材どうしを揺動自在に接合するためのボールジョイント、特に建物等の構造物に対して慣性質量ダンパー等の制震ダンパーを設置するために用いて好適なボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ユニバーサルジョイントの一種であるボールジョイントは各種の部材どうしを任意の方向に揺動自在(相対回転自在)にピン接合するための汎用の接合部品であって、車両用のサスペンション機構を始めとして各種分野で多用されている。
【0003】
この種のボールジョイントは、建物等の構造物に対して制震ダンパーを設置するに際して、従来一般的に用いられているクレビスに代えて用いられることもあり、そのためのボールジョイントとして特許文献1に示されるものが提案されている。
図5(a)、(b)は、制震ダンパー1としてのオイルダンパーを特許文献1に示されるボールジョイント3を用いて制震対象の構造物の構造体2(ブレースや柱、梁等)に対して設置した状態を示すものである。
【0004】
図5に示すボールジョイント3は、その詳細を(b)に示すように、ボールスタッド4の先端部に設けた球状頭部5を球受け6内に収納してホルダ7により回転自在に支持したうえで、球受け6の後部にプレート8を装着した構成のもので、制震ダンパー1の一端側のロッド1aをボールスタッド4に対して連結するとともに球受け6を構造体2に対して固定することにより、そのボールジョイント3を介して制震ダンパー1を構造体2に対して接合するようにしたものである。
【0005】
この場合、図5(a)に示すように制震ダンパー1の軸線方向(X方向)に作用する軸力Fxはボールジョイント3を介して(より具体的には、ロッド1aからボールスタッド4の球状頭部5、ホルダ7,プレート8を介して)、構造体2に対して伝達されることにより制震ダンパー1の軸方向変位は確実に拘束され、したがって制震ダンパー1は支障なく作動する。
【0006】
しかし、ダンパー軸方向と直交する2方向(Y方向およびZ方向)の力(Fy、Fz)が制震ダンパー1に作用すると、それに追随して球受け6内において球状頭部5が任意の方向に回転することによりボールスタッド4は球受け6に対して任意の方向に揺動し、したがってボールジョイント3に対する制震ダンパー1の揺動は拘束されることなく許容され、その揺動トルクは構造体2に対してほとんど伝達されず、したがって制震ダンパー1や接合部に曲げモーメントがほとんど生じない。
また、ダンパー軸まわりに回転トルクTが作用した場合には、ボールスタッド4が制震ダンパー1とともに回転するとともに球受け6内における球状頭部5の回転が拘束されないことから、大きな回転トルクTが構造体2に対して伝達されることはない。
【0007】
したがって、このようなボールジョイント3を用いて制震ダンパー1を構造体2に対して接合することにより、制震ダンパー1に対して軸力以外の無用な力やトルクが作用することを抑制できる。
しかも、上記のボールジョイント3を用いて接合することにより、従来一般的なクレビスを用いて接合する場合に比べて接合部での軸力伝達が確実かつ効率的になされるので、接合部の構造の小型化と簡略化を図ることができるし、さらに接合部のガタ(組み立てのために必要となる最少限の隙間)を小さくできるので微小変形の段階から制震ダンパーを確実かつ効率的に作動させることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−121141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、制震ダンパーを構造体に対してボールジョイントを用いて接合することはクレビスを用いて接合する場合に比較して有利ではあるが、それはオイルダンパーのように軸力により作動する形式の制震ダンパーの場合に限られる。
すなわち、たとえば慣性質量ダンパーのようにダンパー軸まわりの回転トルクが生じる形式の制震ダンパー、換言すると制震対象の構造体との間でトルク伝達がなされることで作動する形式のダンパーの場合には、それを上記のボールジョイント3を用いて構造体2に対して接合した場合にはダンパー全体が構造体2に対して回転(空転)してしまうおそれがあり、そうなると有効に作動し得ないものとなって無意味であることは自明である。
【0010】
したがって、その種のダンパーについては従来一般的なクレビスを用いて構造体に対する相対回転を確実に拘束する状態で堅固に設置せざるを得ず、クレビスに代えてボールジョイントを用いることによる上述したような利点は期待できないことになる。
【0011】
なお、特殊な構造のボールジョイントとして、たとえば特開2010−203600号公報、特開2008−286342号公報、特開2010−196847号公報、特開2001−323944号公報に示されるように、球状頭部と球受けとの間の摩擦力の調節により揺動トルクと回転トルクを両立するようにしたものや、球状頭部と球受けとの間に適宜の係合部やストッパーの類を設けることにより回転方向や揺動を規制するように構成したもの等も提案されている。
しかし、それらはいずれも車両用のサスペンション機構に用いることを想定したもので、構造が複雑に過ぎたり、逆に簡易に過ぎて十分な強度や機能を発揮し得ないものでしかなく、いずれにしても十分なトルク伝達性能や十分な耐力を有するものではない。したがって、そのようなものをたとえば大規模な建物等の構造物に対して大容量の制震ダンパーを設置する場合、特に大きなトルクを確実に伝達する必要のある慣性質量ダンパーを設置するような場合にはそのまま適用できるものではない。
【0012】
上記事情に鑑み、本発明は特許文献1に示されるボールジョイントの基本構成を踏襲しつつそれに回転トルクの伝達を可能とするための改良を加えることにより、トルク伝達により作動する形式の制震ダンパーを設置するためのものとしても好適に採用可能となる有効適切な構造のボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、構造物とダンパーとを接合する部位に設けられ、ボールスタッドの先端部に設けた球状頭部を球受け内に相対回転可能な状態で収納するとともに、前記球受け内において前記球状頭部をホルダにより支持して前記ボールスタッドの軸線方向への相対変位を拘束することによって、前記球受けに対する前記ボールスタッドの任意の方向への揺動を許容しつつ軸線方向の相対変位を拘束する構成のボールジョイントであって、前記ボールスタッドの軸線方向に直交しかつ前記球状頭部の中心を通る仮想の平面と前記球状頭部の周面との交線としての仮想円の位置に、前記球受けに対する前記球状頭部の相対回転を規制するための回転規制機構を設けてなり、前記回転規制機構は、前記球状頭部の周面に形成された係合穴と、先端部が前記係合穴に挿入可能な断面円形の係合突部とされている規制ボルトにより構成されて、該規制ボルトが前記球受けの外側から該球受けに対して螺着されて前記係合突部が前記係合穴に挿入され、前記係合穴はその中心が前記仮想円の円周上に形成されているとともに、該係合穴は前記ボールスタッドの軸線方向に長い長径を有する長穴として形成され、かつ該係合穴における前記仮想円の周方向に沿う短径が前記係合突部の径寸法と同等とされ、前記係合穴に対して前記係合突部が挿入された状態において、該係合穴と該係合突部との係合により前記球受けに対する前記球状頭部の前記仮想円の周方向に沿う相対回転が拘束され、かつ前記係合突部に対する前記係合穴の相対変位が前記長径の範囲内において許容されることにより前記球受けに対する前記ボールスタッドの任意の方向への揺動が許容される構成とされ、軸力と回転トルクを伝達可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のボールジョイントであって、前記回転規制機構が前記仮想円の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のボールジョイントであって、一対の前記回転規制機構が前記球状頭部の中心を挟んで対向配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項2記載のボールジョイントであって、複数対の前記回転規制機構が前記球状頭部の中心を挟んでそれぞれ対向配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のボールジョイントは基本的には特許文献1に示されるボールジョイントに対して回転規制機構を付加した構成であり、したがって本発明のボールジョイントを用いて制震ダンパーを構造体に対して接合することにより、実質的に従来のボールジョイントを用いる場合と同様にボールジョイントに対する制震ダンパーの各方向への揺動を支障なく許容しつつ、ダンパー軸線まわりの回転については回転規制機構により確実に拘束し得るものとなる。
したがって、回転慣性質量ダンパーのようにトルク伝達が前提となる形式の制震ダンパーを設置する場合については、従来のボールジョイントに代えて本発明のボールジョイントを用いることにより、そのような制震ダンパーを支障なく作動せしめることが可能であることはもとより、その種の制震ダンパーをクレビスを用いる場合に比べて合理的に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態であるボールジョイントを示すもので、(a)は側断面図、(b)は平面図((a)におけるb−b線視図)、(c)は正断面図((a)におけるc−c線視図)、(d)は正面図((a)におけるd−d線視図)である。
図2】同、要部拡大図であって、(a)は正断面図(図1(c)におけるIIa部の拡大図)、(b)は断面図((a)におけるb−b線視図)、(c)は平断面図((a)におけるc−c線視図)である。
図3】同、各方向の揺動および回転の状況についての説明図である。
図4】同、変形例を示す図である。
図5】従来のボールジョイントを用いて制震ダンパーを構造体に接合する場合の説明図であり、(a)は全体模式図、(b)はボールジョイントの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図3を参照して本発明の実施形態であるボールジョイント10について説明する。本実施形態のボールジョイント10は、図5(b)に示した従来のボールジョイント3の基本構成を踏襲したものであるので、それと共通する構成要素については同一符号を付してある。
【0020】
本実施形態のボールジョイント10は、基本的には従来のものと同様に制震ダンパー1を構造物に対して設置するために用いられるもので、制震ダンパー1のロッド1aが連結されるボールスタッド4の先端部に設けた球状頭部5を球受け6内に相対回転可能な状態で収納するとともに、球受け6内において球状頭部5をホルダ7により支持してボールスタッド4の軸線方向への相対変位を拘束することによって、球受け6に対するボールスタッド4の任意の方向への揺動を許容しつつ軸線方向の相対変位を拘束する構成としたものである。
【0021】
上記の基本構成に加えて、本実施形態のボールジョイント10では、特に回転慣性質量ダンパーのように構造体との間でトルク伝達がなされることで作動する形式の制震ダンパーを設置する際に適用することを可能とするべく、球受け6に対するボールスタッド4の各方向への揺動はそのまま拘束することなく許容しつつも、球受け6に対する球状頭部5の軸線まわりの相対回転を拘束するための回転規制機構11を設け、以てトルク伝達を可能に構成したことを主眼とする。
【0022】
なお、以下の説明では、図1に示すようにボールスタッド4の軸線方向をX方向としてそのまわりの回転をX軸まわりの回転という。また、X方向に直交して球状頭部5の中心を通りかつ後述する対の回転規制機構11どうしを結ぶ方向をY方向としてそのまわりの回転をY軸まわりの回転という。さらに、X方向およびY方向の双方に直交する方向をZ方向としてそのまわりの回転をZ軸まわりの回転という。特に、図1では便宜的にX方向およびY方向が互いに直交する水平方向となり、Z方向が鉛直方向となるようにボールジョイント10の姿勢を規定している。
【0023】
本実施形態のボールジョイント10では、ボールスタッド4の軸線方向(X方向)に直交しかつ球状頭部5の中心を通る仮想の平面と球状頭部5の周面との交線としての仮想円を想定して、その仮想円の位置(すなわち球状頭部5において軸直交断面が最大になる位置)に、球受け6に対する球状頭部5の相対回転(X軸まわりの回転)を拘束するための回転規制機構11を設けている。
【0024】
回転規制機構11は、球状頭部5の周面に形成された係合穴12と、先端部が係合穴12に挿入可能な断面円形の係合突部13aとされている規制ボルト13により構成されていて、その規制ボルト13が球受け6の外側から球受け6に対して螺着されることで係合突部13aが係合穴12に挿入され、それにより球状頭部5の回転が規制されるようになっている。
【0025】
係合穴12は、その中心位置が上記の仮想円の円周上に合致する位置に形成されているとともに、ボールスタッド4の軸線方向(X方向)に長い長径を有する長穴として形成され、かつそれに直交するZ方向に沿う短径の寸法は規制ボルト13の先端部の係合突部13aの径寸法と同等とされている。
したがって、規制ボルト13の先端部の係合突部13aは係合穴12に対してZ方向にはガタつくことなくほぼ密接状態で挿入されたうえで、X方向には係合穴12の長径の範囲内で相対変位可能な状態で係合穴12に対して係合したものとなる。
【0026】
図2に係合穴12と係合突部13aとの係合状態を詳細に示す。係合穴12の長径(図2では長穴長径としている)をDとし、規制ボルト13の先端部の係合突部13aの径(図2ではボルト先端径としている)をφとしたとき、係合穴12の短径(図2では長穴短径としている)は≒φとする。この場合、係合穴12と係合突部13aとの間には、長径Dと係合突部13aの径φとの差分の隙間が確保され、通常時には(b)、(c)に示すように係合突部13aの両側にそれぞれ(D−φ)/2 に相当する隙間が可動代として確保され、その隙間の範囲内で係合穴12と係合突部13aとのX方向の相対変位は許容されるようになっている。
【0027】
なお、係合穴12の形成位置では球状頭部5の球面とボールスタッド4の軸線方向とがほぼ平行となっているので、その位置では球状頭部5から球受け6に対する軸力の伝達は殆どない(接触面の圧縮応力度はほぼ0)から、その位置に係合穴12を形成することによる断面欠損は問題にはならない。
【0028】
上記構成の回転規制機構11を設けたことにより、係合穴12に対して係合突部13aが挿入された状態においては、係合突部13aに対する係合穴12のZ方向の相対変位は拘束され、したがって球受け6に対する球状頭部5の仮想円の周方向に沿う相対回転、すなわち球受け6に対するボールスタッド4のX軸まわりの回転は係合穴12と係合突部13aとの係合により確実に拘束されるが、球受け6に対するボールスタッド4の各方向への揺動に対しては、係合突部13aに対して係合穴12が長径Dの範囲内において変位することにより拘束されることなく許容されることになる。
【0029】
すなわち、図3(a)に示すように球受け6に対する球状頭部5のX軸まわりの回転は回転規制機構11により(より具体的には規制ボルト13の先端部の係合突部13aによる支圧耐力により)確実に拘束される。
【0030】
しかし、図3(b)に示すようにY軸まわりの回転は規制ボルト13が回転中心となって拘束されることなく自由に許容される。
【0031】
さらに、図3(c)に示すようにZ軸まわりの回転は、長穴として形成した係合穴12の長径Dの範囲内に規制されるもののその範囲内では拘束されることなく許容される。したがって、その可動代の範囲内で、図1(b)に示すように球受け6に対するボールスタッド4のZ軸まわりの回転、つまりはボールジョイント10に対する制震ダンパーのY方向への揺動が拘束されることなく許容される。
勿論、図3(b)に示すY軸まわりの回転と図3(c)に示すZ軸まわりの回転が同時に生じた場合には、それに追随して係合穴12が係合突部13aに対して任意の方向に傾斜しつつ長径Dの範囲内で変位するから、ボールスタッド4の任意の方向への揺動は支障なく許容される。
【0032】
なお、回転規制機構11の具体的な寸法例を挙げれば、球状頭部5の径を190mmφ、係合穴12の長径Dと係合突部13aの径φとの差としての可動代を4mm(片側2mm)としたとき、Y方向に許容される揺動範囲Δθ(図1(a)参照)は Δθ=2/(190/2)=0.021rad となるから、各種の制震ダンパーを構造物に対して設置する場合に必要とされる1/50程度の変形角を支障なく確保でき、十分な変形追従性能を確保し得るものとなる。
【0033】
上記構成のボールジョイント10を用いて制震ダンパーを制震対象の構造物の構造体に対して接合することにより、実質的には図5に示した従来のボールジョイント3を用いる場合と同様に各方向への揺動を支障なく許容し得ることに加えて、回転規制機構11を設けたことでダンパー軸線まわりの回転については確実に拘束し得るものとなる。
したがって、回転慣性質量ダンパーのようにトルク伝達が前提となる形式の制震ダンパーを設置する場合については、従来のボールジョイント3に代えて本発明のボールジョイント10を用いることにより、そのような制震ダンパーを支障なく作動せしめることが可能であることはもとより、その種の制震ダンパーをクレビスを用いる場合に比べて合理的に設置することが可能となる。
【0034】
なお、本発明のボールジョイント10においては、上記実施形態のように対の回転規制機構11を球状頭部5の中心を挟んで対向配置することが現実的であり好ましいが、必ずしもそうすることはなく、本発明の回転規制機構11によって球受け6に対する球状頭部5のX軸まわりの回転を拘束しつつ各方向への揺動を許容するためには、原理的にはその回転規制機構11は少なくとも1箇所に設ければ良い。
しかし、上記実施形態のように球状頭部5の中心を挟んで対向する位置にそれぞれ回転規制機構11を対向配置してそれらの回転規制機構11を一対として回転を拘束するようにすれば、全体としてバランスが良く、また双方の回転規制機構11がY軸まわりの回転に対する明確な回転中心となるので、そのように構成することが好ましく現実的である。
【0035】
また、回転規制機構11によるトルク抵抗力は規制ボルト13の本数に比例するから、伝達トルクが特に大きいような場合にはたとえば図4に示すように多数ないし複数対の回転規制機構11を設けることも考えられる。
図4は上記実施形態のように一対の回転規制機構11を設けることに加えてさらに二対の回転規制機構11をほぼ等間隔で設置した場合の例であり、この場合は6本の規制ボルト13の全体で回転を拘束することになるから、個々の規制ボルト13の所要支圧耐力はそれを単一で用いる場合の1/6で済むことになる。
【0036】
本発明のボールジョイントを用いて制震ダンパーを構造体に対して接合することにより得られる効果を以下に列挙する。
(1)従来のボールジョイントは任意の回転に追随するユニバーサルジョイントなので、慣性質量ダンパー等のようにトルクを処理しなければならない装置の接合部に適用するとダンパー本体が回転してしまうおそれがあった。それに対し、本発明のボールジョイントではダンパー軸方向まわりの回転は拘束してトルクを伝達でき、しかもダンパー軸直交方向の回転(揺動)は拘束せずに曲げモーメントがほとんど生じない接合部とできる。
【0037】
(2)従来のボールジョイントと比較すると、単に軸まわりの回転防止用のピンとしての規制ボルトおよびそれを挿入する係合穴を追加しただけなのでローコストに実用化できる。
また、規制ボルトの先端部の係合突部を係合穴に挿入してその支圧耐力でトルクを処理するので、力学的に明快な抵抗メカニズムとなる。
なお、この点に関しては、特開2010-203600号公報に示されるボールジョイントのように球状頭部と球受けとの間の摩擦抵抗によりトルクを処理したり、あるいは上記実施形態における規制ボルトの先端部を球状頭部の表面に押圧してそこでの摩擦抵抗でトルクを処理することも考えられなくはないが、そのような場合には摩擦抵抗により軸直交まわりの回転(揺動)も阻害することになるので好ましくない。したがって、あくまで本発明のように係合突部を係合穴に対して摩擦抵抗を生じないような緩挿状態で挿入して規制ボルトの支圧耐力でトルクを処理することにより、ダンパー軸まわりの回転のみを拘束して他の方向の揺動は許容する構成とすることが望ましい。
【0038】
(3)従来の接合部でもクレビスを使用することで軸まわりの回転を拘束できるが、クレビスを用いる場合にはボールジョイントによる場合に比べて接合部の所要長が大きくならざるを得ないし、現場施工性についてもクレビスに比べてボールジョイントの方が接合部のガタが小さく作業性も良くなるので、これら点において本発明のボールジョイントはクレビスに比べて優れている。
一例を挙げると、1200kNのダンパーをクレビスにより接合する場合にはクレビスを含めた所要全長が1685mmにもなるが、同仕様のダンパーを本発明のボールジョイントにより接合する場合にはボールジョイントを含めた所要全長は1360mmで済み、約20%の小型化を実現できる。
【0039】
(4)接合部に作用するトルク(ダンパー軸まわりの回転力)が大きい場合には、回転規制機構を複数設けて回転防止用の規制ボルトの本数を増やすことにより、ボルト本数に比例するトルク抵抗力を確保することで容易に対応できる。但し、複数の回転規制機構を設ける場合には、それらの全てを球状頭部における軸直交断面が最大になる位置(球状頭部の中心を通る軸直交断面の位置)の円周上に配置する必要があることは当然である。
【符号の説明】
【0040】
1 制震ダンパー
1a ロッド
4 ボールスタッド
5 球状頭部
6 球受け
7 ホルダ
8 プレート
10 ボールジョイント
11 回転規制機構
12 係合穴
13 規制ボルト
13a 係合突部
図1
図2
図3
図4
図5