特許第5965241号(P5965241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965241シリコーン処理蛍光体、シリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物およびこれらの組成物で封止されてなる発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965241
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】シリコーン処理蛍光体、シリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物およびこれらの組成物で封止されてなる発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20160721BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20160721BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20160721BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20160721BHJP
   C08G 77/44 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20160721BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20160721BHJP
【FI】
   C09K11/08 G
   C09K11/02 Z
   C09K11/08 Z
   C09K11/08 A
   C08L83/05
   C08L83/07
   C08G77/44
   H01L33/50
   H01L33/56
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-175091(P2012-175091)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-34594(P2014-34594A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】一柳 典克
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 貴雄
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−112945(JP,A)
【文献】 特開2011−137143(JP,A)
【文献】 特開2007−332259(JP,A)
【文献】 特開2005−187797(JP,A)
【文献】 特開2012−117029(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/063707(WO,A1)
【文献】 特開2011−042759(JP,A)
【文献】 特開2013−177553(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0253502(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/133138(WO,A1)
【文献】 特開2009−173759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/08
C08G 77/44
C08L 83/05
C08L 83/07
C09K 11/02
H01L 33/50
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)と蛍光体を混合して得られるシリコーン処理蛍光体であって、
前記シリコーン(S)成分が、
多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンであることを特徴とするシリコーン処理蛍光体
【請求項2】
前記シリコーン(S)成分が、蛍光体100重量部に対し0.75〜500重量部であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項3】
前記シリコーン(S)成分が、蛍光体100重量部に対し0.75〜30重量部であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項4】
前記シリコーン(S)成分が、アルケニル基またはヒドロシリル基を有するシリコーンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項5】
前記多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンが、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)と、をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項6】
前記(b)成分が、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項7】
前記(b)成分が、分子末端にヒドロシリル基またはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、請求項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項8】
前記(a)成分が、
式[ARSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項9】
前記(a)成分が、
式[BRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項10】
前記多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水素原子、または、他の多面体構造ポリシロキサンと連結している基;Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【化1】
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位、もしくは、下記一般式(3)で表される構造であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位、もしくは、下記一般式(3)で表される構造であり、同一であっても異なっていてもよい。;ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子またはアルケニル基である。;Rは、アルキル基またはアリール基;
−[CH−R(3)
(lは2以上の整数;Rは有機ケイ素化合物を含有する基)}]
を構成単位とすることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項11】
前記シリコーン(S)成分がアリール基を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項12】
前記蛍光体が互いに異なる発光ピークを有する2種以上の蛍光体であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体を、シリコーン系硬化性組成物に配合して得られることを特徴とするシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物。
【請求項14】
無機フィラーを含有することを特徴とする請求項13に記載のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物
【請求項15】
請求項13または14に記載のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物により封止されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項1〜11に記載のシリコーン(S)成分と蛍光体を混合することを特徴とするシリコーン処理蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコーン処理蛍光体、同蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物およびこれらの組成物で封止されてなる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を用いた発光装置は、長寿命、低消費電力、耐衝撃性、高速応答性、軽薄短小化の実現等の特徴を有しており、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末等のバックライト、車載照明、屋内外広告、屋内外照明等、多方面への展開が飛躍的に進んでいる。
【0003】
LEDでは、一般に、一種または複数種の蛍光体を硬化性樹脂に分散させた蛍光体含有組成物で発光素子を封止するなどの方法により、発光素子から発される青色光や紫外光と、蛍光体がそれらを吸収して発する光とを足し合わすことで、白色光をはじめとする任意の発光色を得ている。しかし、蛍光体の分散むら等の理由により、個々のLED間に生じる色度ばらつきが課題となっており、これは例えば、LEDを用いたディスプレイや照明などの製造において、発光むらを抑えるためにLEDを選別する必要を生じさせ、生産性や歩留まりの低下といった課題につながることから、LED間の色度ばらつきの抑制が望まれていた。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1では、蛍光体を特定の粘度のエポキシ樹脂中に分散させた組成物を使用することにより、蛍光体の分散性を向上させている。しかしながら、その色度ばらつき抑制への効果は十分なものでなく、また、エポキシ樹脂を使用していることから、過酷な条件下での耐光性が課題となった。
【0005】
また、特許文献2では、特定のシランカップリング剤を分散剤として組成物に配合することで蛍光体の分散性を向上させている。しかしながら、その色度ばらつき抑制への効果は十分なものではなく、さらなる改善が望まれるものであった。
【0006】
また、特許文献3では、特定の水酸基濃度を有するシリカを組成物に配合することで、蛍光体の分散性を向上させている。しかしながら、その色度ばらつき抑制への効果は十分なものではなく、また、シリカの分散不良による過剰な光散乱により、発光効率低下や色度変化が課題となる場合もあった。
【0007】
一方、多面体構造を有するポリシロキサンで構成された組成物は、その特異的な化学構造から、優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示すことが知られており、例えば、特許文献4において、多面体構造を有するポリシロキサン系変性体を用いた組成物が開示されている。この組成物は、成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性、接着性等に優れており、LED封止剤として用いることもできる。しかしながら、蛍光体と併用してLEDを作成した場合の、色度ばらつき抑制については検討の余地が残されていた。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、LEDの個体間の色度ばらつきを抑制するシリコーン処理蛍光体を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】

【特許文献1】特開2008−198961号公報
【特許文献2】特開2007−111694号公報
【特許文献3】特開2008−50593号公報
【特許文献4】WO08/133138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
LEDの個体間の色度ばらつきを抑制するシリコーン処理蛍光体、シリコーン処理蛍光体を含有するシリコーン系硬化性組成物およびこれらの組成物で封止されてなる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーンと蛍光体を混合して得られるシリコーン処理蛍光体により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
【0013】
1).重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)と蛍光体を混合して得られるシリコーン処理蛍光体。
【0014】
2).前記シリコーン(S)成分が、蛍光体100重量部に対し0.75〜500重量部であることを特徴とする1)に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0015】
3).前記シリコーン(S)成分が、蛍光体100重量部に対し0.75〜30重量部であることを特徴とする1)に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0016】
4).前記シリコーン(S)成分が、アルケニル基またはヒドロシリル基を有するシリコーンであることを特徴とする1)〜3)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0017】
5).前記シリコーン(S)成分が、多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンであることを特徴とする1)〜4)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0018】
6).前記多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンが、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)と、をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることを特徴とする5)に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0019】
7).前記(b)成分が、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、6)に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0020】
8).前記(b)成分が、分子末端にヒドロシリル基またはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、6)に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0021】
9).前記(a)成分が、
式[AR12SiO−SiO3/2]a[R23SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、6)〜8)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0022】
10).前記(a)成分が、
式[BR12SiO−SiO3/2]a[R23SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、6)〜8)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0023】
11).前記(A)成分が、
[XR32SiO−SiO3/2]a[R43SiO−SiO3/2]b
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;R3は、アルキル基またはアリール基;R4は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水素原子、または、他の多面体構造ポリシロキサンと連結している基;Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0024】
【化1】
【0025】
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位、もしくは、下記一般式(3)で表される構造であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位、もしくは、下記一般式(3)で表される構造であり、同一であっても異なっていてもよい。;ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子またはアルケニル基である。;Rは、アルキル基またはアリール基;
−[CH2]l−R5 (3)
(lは2以上の整数;R5は有機ケイ素化合物を含有する基)}]
を構成単位とすることを特徴とする6)〜10)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0026】
12).前記シリコーン(S)成分がアリール基を有することを特徴とする1)〜11)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0027】
13).前記蛍光体が互いに異なる発光ピークを有する2種以上の蛍光体であることを特徴とする1)〜12)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体。
【0028】
14).1)〜13)のいずれか1項に記載のシリコーン処理蛍光体を、シリコーン系硬化性組成物に配合して得られることを特徴とするシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物。
【0029】
15).無機フィラーを含有することを特徴とする14)に記載のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物
16).14)または15)に記載のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物により封止されてなることを特徴とする発光装置。
【0030】
17).1)〜12)に記載のシリコーン(S)成分と蛍光体を混合することを特徴とするシリコーン処理蛍光体の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
LEDの個体間の色度ばらつきを抑制するシリコーン処理蛍光体、シリコーン処理蛍光体を含有するシリコーン系硬化性組成物およびこれらの組成物で封止されてなる発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
本発明のシリコーン処理蛍光体は、後述の重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)と蛍光体を混合することにより得られる。(S)成分とあらかじめ混合した蛍光体を、後述のシリコーン系硬化性組成物に配合してLEDの封止に使用することにより、未処理の蛍光体を同じシリコーン系硬化性組成物に配合してLEDの封止に使用した場合に比べ、得られるLEDの個体間の色度ばらつきを抑制することが出来る。
【0034】
<蛍光体>
本発明のシリコーン処理蛍光体を得るために用いる蛍光体は、発光素子の発する光を吸収して異なる波長の光を発生するものであれば特に限定されず、一般に公知の蛍光体を用いることができ、本発明の発光装置に求められる発光色を得るために任意のものを選択することができる。具体的に、例えば、黄色蛍光体としては、(Y,Gd)3Al512;Ce等のYAG系蛍光体、Tb3Al512;Ce等のTAG系蛍光体、CaGa24;Eu等の硫化物系蛍光体、(Sr,Ca,Ba)2SiO4;Eu等のシリケート系蛍光体、Ca−α−Sialon;Eu等のオキシナイトライド系蛍光体が挙げられ、緑色蛍光体としては、Y3(Al,Ga)512;Ce,SrGa24;Eu、(Ba,Sr)2SiO4;Eu、Ca3Sc2Si312;Ce、CaSc24;Ce、β−Sialon;Eu、(Sr,Ba)Si222;Eu、Ba3Si6122;Eu等が挙げられ、赤色蛍光体としては(Ca,Sr)2Si58;Eu、CaAlSiN3;Eu等のナイトライド系蛍光体、(Sr,Ca)S;Eu、(Sr,Ba)3SiO5;Eu、K2SiF6;Mn等が挙げられ、青色蛍光体としては、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2;Eu、(Ba,Sr)MgAl1017;Eu、SrSi9Al19ON31;Eu、(Sr,Ba)3MgSi28;Eu等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら蛍光体は1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。得られるLEDの発光効率の観点からは1種を、演色性の観点からは2種以上の蛍光体を併用することが好ましい。
【0035】
本発明に用いる蛍光体の粒径には特に制限はないが、中央粒径(D50)が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。中央粒径(D50)が小さいと、蛍光体が励起光を十分に吸収出来ない場合や組成物中で蛍光体が凝集してしまう場合があり、中央粒径(D50)が大きいと、蛍光体に分散むらが生じる場合や封止の際にディスペンサー等の閉塞が生じる場合がある。また蛍光体の粒度分布(QD)は、組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上あり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。また、蛍光体の形状は、特に限定されず、任意の形状のものを用いることが可能である。
【0036】
<重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)>
本発明に用いられる、重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)は、重量平均分子量が1,000以上200,000以下のシリコーンであれば特に限定されないが、1200以上180,000以下がより好ましく、1500以上150,000以下がさらに好ましい。(S)成分の重量平均分子量が小さいと本発明の効果が十分に得られない場合があり、(S)成分の分子量が大きいと高粘度となり、蛍光体とシリコーンを均一に混合することが困難になったり、蛍光体が凝集したりする場合がある。
【0037】
本発明に用いられる(S)成分の使用量は、蛍光体100重量部に対し0.75〜500重量部であることが好ましく、0.75〜200重量部であることがより好ましく、0.75〜100重量部であることがさらに好ましい。(S)成分の使用量が少ないと本発明の効果が十分に得られない場合があり、(S)成分の使用量が多いとシリコーン処理蛍光体を配合する後述のシリコーン系硬化性組成物の硬化性や硬化後の諸物性に悪影響を与える場合がある。さらに、(S)成分の経時変化を考慮すると、(S)成分の使用量は蛍光体100重量部に対し0.75〜30重量部であることが好ましく、0.75〜25重量部であることがより好ましく、0.75〜20重量部であることがさらに好ましい。使用量が少ないと上述のとおり本発明の効果が十分に得られない場合があり、使用量が多いと(S)成分がペースト状となり、経時で(S)成分の下部と上部に蛍光体の濃淡が出来てしまう場合があり、後述のシリコーン系硬化性組成物への配合前に再混合の手間が必要となる場合がある。
【0038】
本発明に用いられる(S)成分は、アルケニル基またはヒドロシリル基を有するシリコーンであることが好ましい。アルケニル基またはヒドロシリル基を有することにより、後述のシリコーン系硬化性組成物と反応し、樹脂骨格中に取り込まれることが可能となり、封止後の(S)成分のブリードアウトを抑制することが出来る。
【0039】
本発明に用いられる(S)成分は、多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンであることが本発明の効果をさらに高めることから好ましい。
【0040】
<多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーン>
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンとしては、公知の多面体構造ポリシロキサンを広く使用することができ、一般式[R6SiO3/2]aや一般式[R63SiO−SiO3/2]a(R6は任意の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい;aは6〜24の整数)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサンが例示されるが、その構造中に[R62SiO2/2]単位や[R63SiO1/2]単位を含む部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンであってもよい。
【0041】
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンは、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)と、をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることが、色度ばらつきの抑制、ハンドリング性、耐熱性、耐光性、ガスバリア性等の点から好ましい。
【0042】
<アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本発明に用いられるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、分子中にアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式
[R7SiO3/2x[R8SiO3/2y
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;R7はアルケニル基および/またはヒドロシリル基、または、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する基;R8は、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基および/またはヒドロシリル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができる。
【0043】
前記アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造シロキサン系化合物(a)の合成方法としては、例えば、R9SiXa3(式中R9は、上述のR7、R8を表し、Xaは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、R9SiXa3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、合成する方法も知られている。さらには、前記トリシラノール化合物に、1官能性シランおよび/または2官能性シランを反応させることにより、部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンを合成することもできる。
【0044】
その他の多面体構造シロキサン系化合物(a)の合成方法としては、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下、加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩を得、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するシリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより合成することができる。また、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることも可能である。
【0045】
本発明に用いられるアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の好ましい例としては、具体的に例えば、以下の式で表されるアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物
[AR12SiO−SiO3/2]a[R23SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体構造ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)が例示される。
【0046】
このような(a)成分を用いる場合、後述の(b)成分としてヒドロシリル基を有する化合物を用いることにより、例えば、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、ヒドロシリル化反応によって多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を得ることができる。この際、前記多面体構造シロキサン系化合物(a)のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数の多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と複数のヒドロシリル基を有する化合物(b)が反応していても良い。また、必要に応じて後述のアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)を反応させてもよい。
【0047】
本発明におけるヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の好ましい例としては、具体的に例えば、
[BR12SiO−SiO3/2]a[R23SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体構造ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)が例示される。
【0048】
このような(a)成分を用いる場合、後述の(b)成分としてアルケニル基を有する化合物を用いることにより、例えば、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、ヒドロシリル化反応によって多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を得ることができる。この際、前記多面体構造シロキサン系化合物(a)の水素原子は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数の多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と複数のアルケニル基を有する化合物(b)が反応していても良い。また、必要に応じて後述のアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)を反応させてもよい。
【0049】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0050】
1は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR1としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0051】
2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR2としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0052】
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上が好ましく、3以上がさらに好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
【0053】
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
【0054】
<ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)>
本発明に用いられる、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)は、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物であれば特に限定はなく、(a)成分と反応して色度ばらつきの抑制、ハンドリング性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変生体(A)を得るための成分である。
【0055】
本発明に用いられるヒドロシリル基を有する化合物(b)としては、具体的に例えば、ヒドロシリル基(Si原子に直結した水素原子)を有するものであり、(a)成分のアルケニル基と反応して、一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの式で表される反応性官能基Xを形成するものが挙げられる(この場合、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である)。
【0056】
前記、ヒドロシリル基を有する化合物(b)としては、ヒドロシリル基含有シロキサン化合物、具体的に例えば、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられ、さらには、工業的入手性や反応させる際の反応性が良好である等の観点からヒドロシリル基を含有する環状シロキサンが好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが例示される。
【0058】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0059】
本発明に用いられるアルケニル基を有する化合物(b)としては、具体的に例えば、アルケニル基を有するものであり、(a)成分のヒドロシリル基と反応して、一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの式で表される反応性官能基Xを形成するものが挙げられる(この場合、YあるいはZの少なくとも1つはアルケニル基である)。
【0060】
前記、アルケニル基を有する化合物(b)としては、アルケニル基含有シロキサン化合物、具体的に例えば、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられる。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルジビニルトリシロキサンなどが例示される。
【0062】
アルケニル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0063】
<アルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)>
本発明に用いられる1分子中にアルケニル基またはヒドロシリル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)は、前述のアルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)が有する、ヒドロシリル基またはアルケニル基と反応してキャップすることにより、多面体構造ポリシロキサン変生体(A)の架橋密度を制御してハンドリング性を向上させたり、(A)成分に新たな基を導入したりするための成分である。
【0064】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0065】
本発明に用いられるアルケニル基を1個有する有機珪素化合物(a’)としては、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンであることが好ましい。このような(a’)成分が、1分子中にアルケニル基を1個有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられる。
【0066】
また(a’)成分がポリシロキサンである場合、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサン、アルケニル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
【0067】
(a’)成分が、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
【0068】
分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位、SiO1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0069】
(a’)成分が、アルケニル基を1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0070】
これら(a’)成分である、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明に用いられるヒドロシリル基を1個有する有機珪素化合物(a’)としては、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンであることが好ましい。このような(a’)成分が、1分子中にヒドロシリル基を1個有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシラン、トリエチルシラン、ジエチルフェニルシラン、エチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシランが好ましい例として挙げられる。
【0072】
また(a’)成分がポリシロキサンである場合、ヒドロシリル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を1個有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
【0073】
(a’)成分が、ヒドロシリル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
【0074】
分子末端にヒドロシリル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位、SiO1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのハイドロジメチルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0075】
(a’)成分が、ヒドロシリル基を1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ハイドロ−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロ−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロ−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロ−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0076】
これら(a’)成分である、1分子中にヒドロシリル基を1個有する有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)>
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)、(a)成分と反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じて1分子中にアルケニル基またはヒドロシリル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)とをヒドロシリル化反応させることにより得られる。
【0078】
(A)成分を得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、(a’)成分を用いずに(a)成分と(b)成分のみを反応させても良いし、予め(a)成分と(b)成分を反応させた後、(a’)成分を反応させても良いし、予め(a’)成分と(b)成分を反応させた後、(a)成分を反応させても良いし、予め(a)成分と(a’)成分を反応させた後、(b)成分を反応させても良いし、(a)成分と(a’)成分を共存させて(b)成分と反応させても良いし、(a’)成分と(b)成分を共存させて(a)成分と反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(a’)成分と(b)成分のみが反応し、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a)成分と(b)成分を反応させ、未反応の(b)成分を留去した後、(a’)成分を反応させる方法が好ましい。また、反応の簡便さからは、(a)成分と(a’)成分を共存させて(b)成分と反応させる方法、または、(a’)成分と(b)成分を共存させて(a)成分と反応させる方法が好ましい。
【0079】
こうして得られた(A)成分には、(a)成分のアルケニル基および/またはヒドロシリル基が一部残存していてもよい。
【0080】
(b)成分の添加量は、(a)成分が有する(b)成分と反応するアルケニル基またはヒドロシリル基1個に対し、ヒドロシリル基またはアルケニル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行する場合があり、添加量が多いと、得られる(A)成分の貯蔵安定性等の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0081】
(a’)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分が有する(a’)成分と反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基1個に対し、アルケニル基またはヒドロシリル基の数が0.6個以下になるように用いることが好ましい。(a’)成分の使用により前述の効果が得られるが、添加量が多いと得られる硬化後の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0082】
(A)成分の合成時に用いる後述のヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a)成分、(b)成分、及び(a’)成分が有するアルケニル基1モルに対して10-1〜10-10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になる恐れがあり、また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0083】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0084】
このような(A)成分は、温度20℃において液状とすることも可能である。多面体構造ポリシロキサン変性体を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0085】
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の好ましい例としては、具体的に例えば、式
[XR32SiO−SiO3/2]a[R43SiO−SiO3/2]b
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;R3は、アルキル基またはアリール基;R4は、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0086】
【化2】
【0087】
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位、もしくは、下記一般式(3)で表される構造であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位、もしくは、下記一般式(3)で表される構造であり、同一であっても異なっていてもよい。;ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子またはアルケニル基である。;Rは、アルキル基またはアリール基;
−[CH2]l−R5 (3)
(lは2以上の整数;R5は有機ケイ素化合物を含有する基)}]が例示される。
【0088】
本発明に用いられる(A)成分の合成時に用いるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化触媒として公知のものを選択でき、特に制限はない。
【0089】
具体的に例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0090】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0091】
また、本発明に用いられる(A)成分には硬化遅延剤を使用してもよい。硬化遅延剤は、ヒドロシリル化反応性の調整あるいは(A)成分の貯蔵安定性の改良のために用いることができる成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0092】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0093】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0094】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0095】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0096】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0097】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0098】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0099】
<重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)が含有するアリール基>
本発明に用いられる重量平均分子量が1,000以上200,000以下であるシリコーン(S)はアリール基を有していることが本発明の効果をさらに高めることから好ましい。(S)成分のアリール基含量は、本発明のシリコーン処理蛍光体を配合するシリコーン系硬化性組成物のアリール基含量と大きく異なると、シリコーン処理蛍光体の凝集が起こる場合があることから、シリコーン系硬化性組成物のアリール基含量に近いことが好ましく、任意の値を取ることが出来るが、あえて例示するならば、好ましくは1×10-5〜1×10-2mol/g、より好ましく2×10-5〜8×10-3mol/g、さらに好ましくは5×10-5〜6×10-3mol/gはである。
【0100】
シリコーン系硬化性組成物のアリール基含量(mol/g)/(S)成分のアリール基含量(mol/g)の比は、0.01〜100、好ましくは、0.1〜10、さらに好ましくは0.3〜5である。
【0101】
<シリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物>
本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物は、本発明のシリコーン処理蛍光体をシリコーン系硬化性組成物に配合して得られる。本発明のシリコーン系処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を発光装置の封止に用いることで、未処理の蛍光体を配合したシリコーン系硬化性組成物用いる場合に比べ、得られる発光装置の色度ばらつきが抑制される。
【0102】
本発明のシリコーン処理蛍光体を配合するシリコーン系硬化性組成物には、一般に公知のシリコーン系硬化性組成物を任意に用いることができ、得られる発光装置に耐熱性や耐クラックなどの信頼性が求められる場合はメチルシリコーン系硬化性組成物を、得られる発光装置にガスバリア性が求められる場合はフェニルシリコーン系硬化性組成物やエポキシシリコーン系硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0103】
本発明に用いられるシリコーン系硬化性組成物の粘度は、特に制限はないが、温度23℃において1Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは2Pa・s〜200Pa・sである。粘度が低いと、蛍光体配合後に蛍光体の分散が悪化してしまう恐れがあり、粘度が高いと、組成物のハンドリング性が懸念される。
【0104】
シリコーン系硬化性組成物に配合するシリコーン処理蛍光体の量には特に制限は無く、発光装置に求める発光色を得るために任意の量を使用することができるが、あえて例示するならば、硬化性組成物中にシリコーン処理蛍光体が好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。量が少ないと、蛍光体による波長変換が不十分となり、目的とする発光色が得られない場合があり、量が多いと、得られる硬化性組成物のハンドリング性が低下したり、光学的な干渉作用により蛍光体の利用効率が低くなる可能性がある。
【0105】
シリコーン処理蛍光体をシリコーン系硬化性組成物に混合・分散する方法としては、蛍光体結晶構造に損傷を与えずシリコーン処理蛍光体を均一に分散することが可能な方法であれば特に制限はなく、例えば遊星式撹拌脱泡装置、プラネタリーミキサー、トリミックス、カッターロール、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、2本ロール、ニーダー、ビーズミル等、従来公知の方法を用いることが出来る。上記の中でも特に、遊星式撹拌脱泡装置、カッターロールなど分散にあたり発熱の少ないものや混合機由来の金属磨耗粒子の混入が少ないものが好ましく、なかでも遊星式撹拌脱泡装置が蛍光体の損傷少なく脱泡しながら混合・分散できるので好ましい。これらの混合・分散方法は、一種のみ行ってもよく、また二種以上を組み合わせて行ってもよい。混合・分散時間は、蛍光体が硬化性組成物に均一に分散し、かつ、作業性に問題がなければ特に制限はないが、例えば、遊星攪拌ミキサーを用いた場合は、好ましくは10秒以上1時間以内、より好ましくは30秒以上30分以内、さらに好ましくは1分以上20分以内である。混合・分散時間が短いと、蛍光体が硬化性組成物中に均一に分散しない場合があり、混合・分散時間が長いと作業性が悪化する。
【0106】
シリコーン処理蛍光体を含有するシリコーン系硬化性組成物は、上述の混合・分散後、好ましくは4時間以内、より好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2時間以内に発光素子の封止に使用されることが好ましい。ここで発光素子の封止とは、発光素子を実装したリフレクターに蛍光体含有硬化性組成物を注入することや、基盤に実装したLEDを、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、蛍光体含有硬化性組成物で直接封止することなどが例示される。混合・分散から成形までの時間が長いと、硬化性組成物中の蛍光体の分散が均一でなくなり得られる発光装置の色度ばらつきが大きくなる恐れがある。
【0107】
シリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高いと、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低いと硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
【0108】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及び反応性基の量、その他、硬化性組成物の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0109】
また、本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物には、必要に応じて接着性付与剤、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
<無機フィラー>
本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物は、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを用いることで、蛍光体の分散性が改善されるとともに、発光装置を封止後の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
【0110】
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0111】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、平均粒径が0.005〜50μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。同様に、BET比表面積についても、特に限定されるものでないが、ガスバリア性の観点から、70m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましく、さらに200m2/g以上であることが特に好ましい。
【0112】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して、0.01〜100重量部、よりこの好ましくは、0.3〜50重量部、さらに好ましくは、0.5〜30重量部である。無機フィラーの添加量が多いと、流動性が悪くなる場合があり、無機フィラーの添加量が少ないと、所望の物性が得られない場合がある。
【0113】
無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。ただし、混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
【0114】
<発光装置>
本発明の発光装置は、発光素子を本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物で封止して得られる。発光素子を硬化性組成物で封止する方法としては、特に限定されないが、例えば、リフレクターに発光素子を実装し、硬化性組成物を注入・硬化して封止してもよいし、リフレクターを用いずに、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、基盤に実装した発光素子を硬化性組成物で直接封止してもよい。ここで、リフレクターや基盤としては、特に限定されず、汎用されているもの等を用いることができる。また、発光素子としては、特に限定されず、LEDの発光素子として汎用されているもの等を用いることができ、放射した光により蛍光体を励起できるものであれば良く、例えば、青色光発光素子や紫外光発光素子などが挙げられる。本発明の発光装置においては、1つの発光装置あたりに複数個の同一または異なる種類の発光素子を実装してもよい。
【0115】
本発明のシリコーン処理蛍光体を用いた発光装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的に、例えば、受発光デバイス、液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0116】
次に本発明の蛍光体を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0117】
<重量平均分子量>
合成したシリコーンの重量平均分子量は、東ソー製 HLC−8220GPC(カラム:TSKgel SuperHZM−N(4本)+同HZ1000(1本) 内径4.6mm×15cm、溶媒:トルエン、流速:0.35ml/min)により測定した。なお、市販シリコーンの重量平均分子量についてはカタログ値を参照した。
【0118】
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
【0119】
ジメチルビニルクロロシラン1149g、トリメチルシリクロリド830gおよびヘキサン1400mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基を4個有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1178.2)を白色固体として760g得た。
【0120】
(製造例2)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.0gをトルエン20.0gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)1.27μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン20.36g、トルエン20.36gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール7.1μl、マレイン酸ジメチル1.65μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体17.5g(重量平均分子量:2400)を得た。
【0121】
(製造例3)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.0gをトルエン20.0gに溶解させ、ビニルジフェニルメチルシラン6.67g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.50μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン8.17g、トルエン8.17gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール2.8μl、マレイン酸ジメチル0.65μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、フェニル基を有する液状の多面体構造ポリシロキサン変性体24.2g(重量平均分子量:3200)を得た。
【0122】
(実施例1)
100mlプラカッブに、Intematix社製シリケート系黄色蛍光体 EY4750 5.00g、製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体0.263gを順に加えて混合し、そのまま、さらにThinky社製 あわとり練太郎 ARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0123】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.737g、東レダウシリコーン社製フェニルシリコーン OE6630(A/B=1/4(wt/wt))のA剤0.993g、B剤3.971gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0124】
さらに別途、ジェネライツ社製12mil×13mil角 青色LEDチップ(品番:B1213AAA0 S46B/C−19/20)を実装したエノモト社製リフレクター(品番:TOP LED 1−IN−1)を準備し、ここに得られた硬化性組成物を、サンエイテック社製ディスペンサー 1500シリーズ、サンエイテック社製3ccバレル−ピストンセット(品番:SH09CP−B)、サンエイテック社製チップ(品番:SH23−B)を用いて注入した。続いて、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、180℃×1時間の条件のステップキュアで硬化した。得られた本発明の発光装置を、大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その発光色の色度を測定し、測定したサンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0125】
(実施例2)
蛍光体と混合するシリコーンとして、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変生体を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0126】
(実施例3)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有フェニルシリコーン PDV−2331を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0127】
(実施例4)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有フェニルシリコーン PDV−2335を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0128】
(実施例5)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有フェニルシリコーン PDV−1625を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0129】
(実施例6)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有フェニルシリコーン PDV−1641を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0130】
(実施例7)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有フェニルシリコーン PDV−0525を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0131】
(実施例8)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有フェニルシリコーン PDV−0325を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0132】
(実施例9)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有メチルシリコーン DMS−V22を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0133】
(実施例10)
蛍光体と混合するシリコーンとして、Gelest社製 両末端ビニル基含有メチルシリコーン DMS−V25を使用した以外は、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0134】
(実施例11)
100mlプラカッブに、EY4750 5.00g、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体1.25gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0135】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.875g、OE6630のA剤0.965g、B剤3.860gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0136】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0137】
(実施例12)
100mlプラカッブに、EY4750 5.00g、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体0.155gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0138】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.722g、OE6630のA剤0.996g、B剤3983gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0139】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0140】
(実施例13)
100mlプラカッブに、EY4750 10.00g、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体0.075gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0141】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.705g、OE6630のA剤0.999g、B剤3.995gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0142】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0143】
(実施例14)
実施例2と同様の操作を行い、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変生体で処理された本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0144】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.737g、日本アエロジル社製 シリカ R380S 0.100g、OE6630のA剤0.993g、B剤3.971gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明の無機フィラーを含有するシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0145】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0146】
(比較例1)
100mlプラカップに、EY4750 0.700g、OE6630のA剤1.000g、B剤4.000gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0147】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0148】
(比較例2)
100mlプラカッブに、EY4750 5.00g、クラリアント社製 1,1,7,7−テトラメチル−3,3,5,5−テトラフェニル−1,7−ジビニルテトラシロキサン、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体0.263gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、シリコーン処理蛍光体を得た。
【0149】
得られたシリコーン処理蛍光体を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0150】
(参考例1)
100mlプラカッブに、EY4750 10.00g、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体0.050gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、シリコーン処理蛍光体を得た。
【0151】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.704g、OE6630のA剤0.999g、B剤3.995gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、シリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0152】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0153】
(実施例15)
100mlプラカッブに、電気化学工業社製オキシナイトライド系緑色蛍光体 GR240 4.00g、三菱化学社製ナイトライド系赤色蛍光体 BR102C 1,00g、製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体0.263gを順に加えて混合し、そのまま、さらにThinky社製 あわとり錬太郎 ARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0154】
別途、100mlプラカップに、得られたシリコーン処理蛍光体0.632g、OE6630のA剤0.994g、B剤3.975gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0155】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0156】
(実施例16)
100mlプラカッブに、GR240 4.00g、BR102C 1.00g、PDV−1625 0.263gを順に加えて混合し、そのまま、さらにThinky社製 あわとり錬太郎 ARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、本発明のシリコーン処理蛍光体を得た。
【0157】
得られたシリコーン処理蛍光体を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0158】
(比較例3)
100mlプラカップに、シリコーンで処理していないGR240 0.480g、シリコーンで処理していないBR102C 0.120g、OE6630のA剤1.000g、B剤4.000gを順に加えて混合し、そのまま、さらにARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物を得た。
【0159】
得られた硬化性組成物を用い、実施例1と同じ操作と評価を行い、サンプル32個の発光色の色度の標準偏差を表1に記載した。
【0160】
【表1】
【0161】
表1に示すように、本発明のシリコーン処理蛍光体を用いることで、得られる発光装置の色度ばらつきを抑制出来ることが明らかである。また、(S)成分として多面体構造ポリシロキサン骨格を有するシリコーンを用いた場合(実施例1、2、11〜13)、(S)成分としてフェニル基を有するシリコーンを用いた場合(実施例3〜8)、およびシリカを用いた場合(実施例14)にさらに高い効果が得られることがわかる。また、複数種の蛍光体を用いる場合でも、本発明のシリコーン処理蛍光体を用いることで、得られる発光装置の色度ばらつきを抑制出来ることが明らかである(実施例15、16)。