(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
確定速度間の区間において、区間始点の確定速度を初期値として進行方向加速度を積分した区間終点の結果と、区間終点の確定速度との差異を求め、該差異から求めた区間における位置に応じた誤差を、進行方向加速度の積分から除去することを特徴とする請求項2記載の軌道位置データ付与システム。
確定速度間の区間において、区間始点の確定速度を初期値として進行方向加速度を積分した区間終点の結果と、区間終点の確定速度との差異を求め、該差異から求めた区間における位置に応じた誤差を、進行方向加速度の積分から除去することを特徴とする請求項5記載の軌道位置データ付与方法。
【背景技術】
【0002】
軌道上を走行する車両においては、その軌道保守を行うために、軌道の状態を検査することが行われており、検査として、例えば、レールの傷、摩耗または変位、レール遊間量の検査、車両の動揺の検査などが、各種センサを用いて行われる。
【0003】
これらの検査を行う場合、センサを用いて取得される検査値データは、その検査値データがどこの軌道位置のデータであるかを表す軌道位置データとの対応付けがなされて、格納される必要がある。
【0004】
従来、軌道検測車のような検査専用車両では、軌道位置データを得るために車輪の回転から距離を計測するエンコーダや、地上子からの軌道位置データを受信可能な車上受信装置が装備されており、検査値データと軌道位置データとの対応付けが行えるようになっている。
【0005】
しかしながら、検査専用車両を用いずに、通常の営業車で検査値データを取得しようとすると、上記軌道位置データを取得するための装置が装備されていないために、軌道位置の決定が困難になる、という問題がある。
【0006】
このような問題を解決するためのものとして、特許文献1及び特許文献2に示すものが知られている。
【0007】
特許文献1では、軌道検測車で測定した列車動揺データと、営業車で測定した動揺データとの照合を行うために、営業車で測定した進行方向の加速度データを2重積分して距離にして軌道位置データである走行キロ程を求め、上下方向及び左右方向の加速度データに対して、軌道位置データとの照合を行っている。
【0008】
特許文献2の車両走行動揺解析システム及び方法では、GPSアンテナ及びGPS受信機を有し、GPSアンテナによりGPS受信機が受信するGPS信号により取得される位置情報に基づいて車両の位置情報を補正している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の構成では、進行方向の加速度データを2重積分しているが、加速度データに含まれるオフセットや誤差が積分により増大し、正確に照合を行うことが困難である、という問題がある。特許文献1では、かかる加速度データの誤差を補正するために、駅と駅との間で必ず発車と停止が行われ、加速度の総和が0になることから、サンプリングした加速度データを積算して、駅間の総和が0でないときには、この操作をサンプリング数で除して補正数とし、各サンプリングデータよりこれを減ずる補正を行っているが、駅と駅との間という長い距離に亘り一様に補正することになるために、補正が粗くなり、精度が悪いという、という問題がある。
【0011】
また、特許文献2の構成では、GPS信号により取得される位置情報は、ある範囲の誤差を持つ緯度経度情報であるために、GPS信号により取得される緯度経度情報を、軌道位置に対応付ける更なる照合作業が必要になる、という問題がある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、検査値データと軌道位置データとの対応付けをより正確に安定的に行うシステム及び方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明は、軌道上を走行する車両に設置されたセンサによって時系列的に取得される検査値データを、軌道位置データと対応付ける軌道位置データ付与システムであって、
前記検査値データと同期して、車両上に設置された角速度センサによってヨー角速度を表す角速度データを順次取得して検査値データと共に時系列的に保存するデータ記録装置と、
前記データ記録装置で記録されたデータを解析するデータ解析装置とを備え、前記データ解析装置は、
前記保存した角速度データの中から規定条件を満足する角速度データの時系列的集合を抽出し、その時系列的集合を検出曲線として、軌道管理図の曲線線形図における曲線とマッチングさせる手段と、
検出曲線の代表のヨー角速度と、その検出曲線とマッチングされた曲線線形図における曲線の曲率半径とから速度を求め、それを検出曲線における確定速度とする手段と、
必要に応じて確定速度間を補間する速度を求め、これらの速度を積分して距離を求め、求めた距離を用いて、保存した検査値データと軌道管理図の軌道位置データとの対応付けを行う手段と、
を備える。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、確定速度間の前記速度の補間は、進行方向加速度を積分することにより行うことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、確定速度間の区間において、区間始点の確定速度を初期値として進行方向加速度を積分した区間終点の結果と、区間終点の確定速度との差異を求め、該差異から求めた区間における位置に応じた誤差を、進行方向加速度の積分から除去することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、軌道上を走行する車両に設置されたセンサによって時系列的に取得される検査値データを、軌道位置データと対応付ける軌道位置データ付与方法であって、
前記検査値データと同期して、車両上に設置された角速度センサによってヨー角速度を表す角速度データを順次取得して検査値データと共に時系列的に保存する工程と、
前記保存した角速度データの中から規定条件を満足する角速度データの時系列的集合を抽出し、その時系列的集合を検出曲線として、軌道管理図の曲線線形図における曲線とマッチングさせる工程と、
検出曲線の代表のヨー角速度と、その検出曲線にマッチングされた曲線線形図における曲線の曲率半径とから速度を求め、それを検出曲線における確定速度とする工程と、
必要に応じて確定速度間を補間する速度を求め、これらの速度を積分して距離を求め、求めた距離を用いて、保存した検査値データと軌道管理図の軌道位置データとの対応付けを行う工程と、
を備える。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、確定速度間の速度の補間は、進行方向加速度を積分することにより行うことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、確定速度間の区間において、区間始点の確定速度を初期値として進行方向加速度を積分した区間終点の結果と、区間終点の確定速度との差異を求め、該差異から求めた区間における位置に応じた誤差を、進行方向加速度の積分から除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヨー角速度を表す角速度データは、軌道管理図の曲線線形図と類似の変化傾向を持つために、規定条件を満足するヨー角速度の時系列的集合を曲線にマッチングすることができ、このマッチングを行うことにより、ヨー角速度と曲線の既知の曲率半径から、その曲線を通過したときの車両の速度を精度良く求めることができる。この精度の良い速度を確定速度とし、この確定速度を用いて距離を求めて、軌道位置データと対応付ければ、精度良く軌道位置データと検査値データとの対応付けを行うことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図において、軌道位置データ付与システム10は、大別して、車両上に設置されて角速度等を測定し、測定によって取得された該角速度データ等を記録するデータ記録装置12と、地上においてデータ記録装置12で記録されたデータを解析するデータ解析装置14及び充電器16と、に大別することができる。
【0023】
データ記録装置12は、さらに、センサ部20と、収録回路22と、バッテリ28とを備えて、可搬性を持った装置となっている。
【0024】
センサ部20は、例えば車両の進行方向の加速度a
x、車両の左右方向の加速度a
y、車両の上下方向の加速度a
z、車両のロール角変化であるロール角速度r
r、車両のピッチ角変化であるピッチ角速度r
p、車両のヨー角変化であるヨー角速度r
yを検出する。例えば、センサ部20は、3軸の加速度と2軸の角速度を出力するマイクロ慣性センサ(東京計器株式会社製「MESAG」)を2個直交して配置することにより、これらの3つの加速度及び3つの角速度を検出することができる。またはセンサ部20は、3個の加速度計と3個の角速度計とから構成することもできる。
【0025】
図2に示すように、収録回路22は、メモリ32と、角速度データを含む検査値データをメモリ32に格納する制御部34と、マーキング部36と、入力部38とを備える。必要に応じてセンサ部20と制御部34との間にA/D変換器を設けることができる。
【0026】
メモリ32は、データ記録装置12と一体または別体となった任意の記録媒体とすることができ、一定周期毎の角速度データを含む検査値データを時系列的に格納する。マーキング部36は、手動で操作可能であり、この操作が行われたときに、メモリ32にセンサ部20からのデータと対応付けられて後述の測定基準データとしてのマーキングデータが格納される。入力部38は、測定/記録の開始、終了/記録の終了の指令及び後述の測定基準データを入力するためのものである。尚、前記制御部34、マーキング部36及び入力部38の少なくとも一部は、キーボード、マウスといった入力手段を備えたノート型パソコンのような携帯型コンピュータで構成することもできる。
【0027】
この例では、データ記録装置12は、軌道位置データを付与するための機能と、軌道保守のために必要な検査を行う機能とを兼用しており、検査装置も兼ねている。センサ部20から得られる検査値データは、動揺測定を行うものとして使用される。データ記録装置12が軌道位置データを付与するための機能のみを持つ場合には、センサ部20は、少なくとも1つの角速度データのみ、または少なくとも1つの角速度データと進行方向の加速度データのみを出力するものであってもよい。
【0028】
データ解析装置14は、CPUを有するコンピュータで構成され、データ解析装置14に格納された軌道位置データ付与プログラムを実行することにより、コンピュータであるデータ解析装置14は、
図3に示すように、処理区間決定処理手段140、角速度データ集合抽出手段142、マッチング手段144、速度演算手段146、速度補間手段150、検査値データ対応付け処理手段152、として機能する。またデータ解析装置14は、メモリ32がセットされることによって、またはメモリ32のデータがダウンロードされることによって、データ保存手段としても機能する。このデータ解析装置14を構成するコンピュータは、データ記録装置12の一部を構成するコンピュータと同じものであってもよく、または別のものであってもよい。
【0029】
また、データ解析装置14には、軌道の曲線線形データと軌道位置データとしてのキロ程との対応付けが記録された曲線線形テーブル42、軌道の曲線毎にその曲率半径との対応付けが記録された曲線テーブル44、軌道上の停車場データその他既定物データと軌道位置データとしてのキロ程との対応付けが記録された既定物テーブル46及び検査値データと軌道位置データとしてのキロ程とを対応付けたデータ出力テーブル48が格納される。曲線線形テーブル42及び曲線テーブル44は、既存の軌道管理図を元にそれぞれ作成されるものである。
【0030】
図4(a)は、軌道管理図の曲線線形図の一例であり、軌道管理図の曲線線形図は、横軸がキロ程、中立線より上側が右カーブ(軌道の起点から終点に向かって右カーブ)、下側が左カーブ(軌道の起点から終点に向かって左カーブ)を表す。
【0031】
軌道管理図の曲線線形図、曲線線形テーブル42及び曲線テーブル44で用いられる記号BTC、BCC、ECC、ETC、BIT、EIT、BRT、PRT、ERTの意味は、
図5(a)〜(c)に示す通りであり、これらの記号は旋回変化点を表す。これらの旋回変化点は、いずれも曲線線形図において、屈曲点として表わされる。
【0032】
図6Aに示すように、曲線線形テーブル42では、曲線線形図の各旋回変化点とキロ程との対応付けが一レコードとして記録されている。各レコードは、さらにページ、方向、曲率半径R(m)、カントC(mm)及びスラックS(mm)のフィールドを持つ。ページは、軌道管理図のページを表し、方向は、Rが右カーブ、Lが左カーブを表し、曲率半径Rは、終点方向の曲率半径を表す。曲率半径R、カントC及びスラックSは、旋回変化点が円弧曲線始点BCC及び次の円弧曲線の始点EITの場合に、その点からの軌道の曲率半径、カント及びスラックとして、該当するレコードに記録される。
【0033】
図6Bに示すように、曲線テーブル44では、各曲線を識別する曲線IDと曲率半径、その他、曲線の特徴値の対応付けが一レコードとして記録されている。曲線IDは、少なくとも停車場間で連番とすることができる。
図5(b)に示すように途中で曲線が変わる曲線については、1つの曲線とみなして、曲率半径は、曲線中央の曲率半径を代表させることができる。また、
図5(c)の場合には、向きが変化するところを境とした2つの曲線として扱うことができる。
【0034】
図6Cに示すように、既定物テーブル46では、停車場名とキロ程との対応付けが一レコードとして記録されている。記号は、INが停車場のホームの起点側のキロ程、Cが停車場の代表キロ程、OUTが停車場のホームの終点側のキロ程を表している。尚、既定物テーブル46には、停車場以外の既定物の情報を記録することもでき、例えば既定物として、トンネル、橋、ATS(地上子)のキロ程との対応付けを含めることができる。
【0035】
以上の曲線線形テーブル42及び曲線テーブル44は1つのテーブルとして構成することも可能であり、既定物テーブル46もこれらのテーブルに吸収させて構成することも可能であり、また、これらのうちのいずれかのテーブルは省略することも可能である。
【0036】
以上のように構成される軌道位置データ付与システム及び軌道位置データ付与方法の手順を説明する。
【0037】
1.測定前の準備
予め、データ記録装置12のバッテリ28を充電器16により充電し、データ記録装置12には、記録可能な容量を持つメモリ32をセットしておく。
【0038】
2.車両上での測定
角速度データを含む検査値データを取得するために、データ記録装置12を車両に運び、車両の任意の場所、例えば床上や座席に、データ記録装置12を設置する。このときに、センサ部20の方向と車両の座標とを一致させるようにして設置する必要がある。測定前に入力部38から測定開始地点の測定基準データとしてのキロ程及び/または停車場名の入力を行う。
【0039】
データ記録装置12は、入力部38からの測定/記録開始指令の入力があると、測定及び記録を開始し、車両の停止/走行に関係なく、一定周期でセンサ部20からのデータを時系列的にメモリ32に格納し、入力部38からの測定/記録終了指令の入力があると、測定及び記録を終了する。測定後に入力部38から測定終了地点の測定基準データとしてのキロ程及び/または停車場名の入力を行う。
【0040】
この例では、メモリ32に記録される検査値データは、進行方向加速度データ、左右方向加速度データ、上下加速度データ、ロール角速度データ、ピッチ角速度データ、ヨー角速度データであり、これらは同期して記録される。また、メモリ32には、測定基準データとしての測定開始地点及び測定終了地点のキロ程及び/または停車場名が記録される。即ち、この時点で、各角速度データを含む検査値データは、共通のデータID(または通し番号)と対応付けられ、データIDは、前記一定周期を一定キロ程とする暫定的なキロ程と実質的に対応付けられていることになる。測定開始地点及び測定終了地点の測定基準データもデータIDと対応付けられる。
【0041】
好ましくは、測定中に、既定物テーブル46に格納した停車場等の既定物を停車または通過するときには、作業者がマーキング部36を操作する。これによって、上記メモリ32に、上記センサ部20で得られる角速度データを含む検査値データと同期して、データIDと対応付けられて測定基準データとしてのマーキングデータが記録される。
【0042】
尚、測定中に、停車場に停車するときに、マーキングデータを記録する代わりに、測定基準データとして、その停車場のキロ程及び/または停車場名を入力部38を用いて記録することとしてもよい。
【0043】
3.地上での処理
測定終了後に、地上において、データ解析装置14による軌道位置データ付与プログラムにより、メモリ32に記録されたデータに対して処理を行う。
【0044】
3−1 処理区間決定処理
軌道位置データ付与処理を行う処理区間を決定し、処理区間に対応するメモリ32に記録された角速度データであるヨー角速度データを読み出す。
【0045】
この処理区間の決定は、任意の方法・手段により決定することができるが、例えば、この処理区間は、以下のように決定することができる。
【0046】
・処理区間を測定開始地点と測定終了地点の間、即ち、測定区間全体とすることができる。この場合には、メモリ32に記録されている測定開始地点と測定終了地点のキロ程を読み出し処理基準開始キロ程及び処理基準終了キロ程とする。
【0047】
・測定区間全体が長い場合には、メモリ32に記録された複数の測定基準データの任意の2つの測定基準データの間を処理区間とし、順次、処理区間を掃引していくことが好ましい。2つの測定基準データ間としては、例えば、隣合う停車場間とすることが考えられる。選択された2つの測定基準データがメモリ32でキロ程として記録されている場合には、それらのキロ程を処理基準開始キロ程及び処理基準終了キロ程とする。
【0048】
以上の各例において、測定開始地点、測定終了地点または測定基準データがメモリ32で停車場名として記録されている場合には、既定物テーブル46を参照し、キロ程に変換したものを処理基準開始キロ程及び処理基準終了キロ程とする。尚、既定物テーブル46の停車場名のIN、C、OUTのいずれに対応するキロ程に変換するかは、データ記録装置12が設置された車両の位置とホームとの関係に応じて予め決まる。一般的には、データ記録装置12が車両の先頭付近、中間付近、最後尾付近に設置された場合には、その停車場のOUT、C、INのキロ程をそれぞれ読み出せばよい。勿論、停車場以外の既定物を処理区間の開始または終了とすることもできる。
【0049】
・または、処理区間は予め決められた距離(例えば、1km、5km等)毎の区間とすることが考えられる。この場合、当然ながら、メモリ32に記録されたヨー角速度には距離の情報がないから、暫定的に対応付けられたキロ程を用いてメモリ32から読み出す範囲を決定する。より具体的には、測定開始地点と測定終了地点とのキロ程の差により求めた暫定的な測定距離Lをデータ数で割り算したものを隣り合うデータID間の暫定的な距離として、予め決められた距離に対応するヨー角速度データを読み出すこととしてもよい。
【0050】
どのように処理区間を決定するかは、予めシステムで決められたものとするか、作業者による選択によって決定することにしてもよい。
【0051】
3−2 角速度データの抽出
図4に示すように、曲線線形図とヨー角速度のグラフは、非常に類似する変化傾向を持つ。メモリ32に記録された処理区間に対応する角速度データであるヨー角速度のデータを読み出し、曲線に対応するデータを見つけるために、規定条件を満足するデータの抽出を行う。規定条件としては、その絶対値が所定の閾値Ythを超えて、所定データ数、連続して閾値Ythを超えたこととすることができ、この規定条件を満足したヨー角速度の時系列的データ集合を、1つの曲線に対応するデータとみなすことができる。以下、この時系列的データ集合を検出曲線という。
【0052】
3−3 曲線のマッチング
検出曲線が曲線テーブル44のどの曲線に対応するかを求めるために、検出曲線と曲線テーブルの曲線とのマッチングを行う。マッチングの条件は、曲線の順番が逆転することはないこと、曲線の方向、その他、曲線の特徴値の類似度等とすることができる。マッチングが行われると、検出曲線が、曲線テーブル44の曲線IDと対応付けられる。
【0053】
3−4 速度の計算
検出曲線の代表ヨー角速度を決定する。ここでは、車両が曲線を走行する際に、曲率半径が一定の部分を一定の速度で走行するものとする。そして、この速度を求めるために、代表ヨー角速度を任意の方法で決定するが、例えば、以下のように決めることができる。
・検出曲線のうちの中央のデータに対応するヨー角速度を代表ヨー角速度とする。
・検出曲線のうちの中央のデータから前後所定数のデータに対応するヨー角速度の平均値をとって代表ヨー角速度とする。平均をとるデータ数である所定数は、検出曲線を構成する全データ数に応じて可変とすることができ、所定の割合数とすることができる。
【0054】
こうして検出曲線の代表ヨー角速度Y0が決定されると、マッチングされた曲線の曲率半径Rcを曲線テーブル44より読み出し、速度VをV=Y0×Rcから求める。これによって、各検出曲線に対応して、この曲線を通過したときの車両の速度が求められる。ヨー角速度の精度は高く、得られる速度は精度のよいものとなるので、この速度を確定速度とする。確定速度は、例えば、次の時点の速度とすることができる(
図7参照)。
【0055】
・確定速度は、検出曲線の中心点における速度とする。即ち、抽出されたヨー角速度の時系列的データ集合の中央のデータに対する速度とする(
図7(b))。
・確定速度は、抽出されたヨー角速度の時系列的データ集合全てのデータに対する速度とする(
図7(c))。
【0056】
3−5 速度補間
以上で求められた確定速度に対して、確定速度間の速度を必要に応じて補間により求める。補間の方法としては、次の方法が考えられる。
・進行方向の加速度の積分を用いる方法
隣り合う確定速度間は、センサ部20から得られる進行方向の加速度a
xの積分値で補間する。
【0057】
図8を参照しながらこの方法について詳細に説明する。
【0058】
図8において、V
0とV
nはそれぞれ隣り合う確定速度とし、その間の区間で進行方向の加速度a
xを積分していくと、積分区間終点における積分値は理想的にはV
nになるはずである。
【0059】
しかしながら、加速度データはオフセットを持っているから積分することにより誤差が拡大する。即ち、速度V
aは、
V
a=V
0+ΣAcc+Σoffset (ここで、Acc:真の加速度、offset:加速度オフセット)
となる。
【0060】
積分区間終点でのオフセットの積分値をOFF
nとすると、加速度積分による積分区間終点の速度V
anは、
V
an=V
n+OFF
n
となる。この加速度積分による積分区間終点速度V
anと確定速度V
nとの差異となるオフセットの積分値OFF
nから求めた区間の位置に応じたオフセット分を除去して、V
0〜V
n間を補間した速度V
i(iは、積分区間開始からデータIDがi番目であることを表す)は、i番目のオフセット分をOFF
iとすれば、
V
i=V
ai−OFF
i
=V
ai−OFF
n×i/n
=V
ai+(V
n−V
an)×(ID
i−ID
0)/(ID
n−ID
0)
と表すことができる。
【0061】
ここで、V
aiは、加速度積分により得られたi番目の速度であり、
V
ai=V
a(i−1)+T
s×(a
x(i−1)+a
xi)/2
と表すことができる。ここで、V
a0=V
0であり、a
xiは、i番目の進行方向の加速度を表し、T
sはサンプリングタイムである。
・GPS信号を用いる方法
データ記録装置12にGPS受信機を設けて、GPS受信機から得られる速度(GPS速度という)を検査値データとして他の検査値データと同期して取り込みメモリ32に格納している場合に、そのGPS速度を用いて補間することが考えられる。
・均等に按分する方法
確定速度間は等加速度または等減速度で速度が線形的に変化するとして補間する方法である。センサ部からの検査値を用いずに補間することができるので、処理が簡単となる。
【0062】
3−6 距離の算出
次に、確定速度及び補間された速度V
iを順次積分することにより、距離、即ちキロ程を求めることができる。具体的には、速度V
iを用いて、
D
i=D
(i−1)+T
s×(V
(i−1)+V
i)/2
により求めることができる。
【0063】
積分区間としては、処理区間と一致させることができ、または、処理区間内に、メモリ32に記録された測定基準データとしてのマーキングデータがある場合等、キロ程が確定している地点がある場合には、そのキロ程が確定している地点間を積分区間とする。そして、初期値を積分区間始点のキロ程とし、積分を行ったときの積分区間終点の距離が、実際のキロ程と差異がある場合には、さらに補正を行なってもよい。補正は、例えば、積分区間の実際の距離をD
kとし、積分区間始点から積分区間終点までの積分によって求められた距離をD
nとすると、積分区間内の積分によって求められた距離D
iの補正後の距離D
i’を、
D
i’=D
i×D
k/D
n
とすることで行ってもよい。
【0064】
3−7 軌道位置データ−検査値データとの対応付け処理
こうして、キロ程とデータIDとが対応付けられると、この対応関係をデータ出力テーブル48に格納する。データ出力テーブル48は、
図6Dに示すフィールドを持つことができ、これによって、データIDとそれに対応するキロ程が、データIDに対応する検査値データと対応付けられたことになる。また、求めた速度もキロ程と対応付ける。
【0065】
3−8 繰り返し処理
順次、以上の処理3−1〜3−7を、処理区間を変えて行う。通常、最初に決定された処理区間の始点は測定開始地点となり、最後に決定された処理区間の終点は測定終了地点となる。すべての処理区間について処理を行い、データIDに対してキロ程を対応付けることで、処理を終了する。
【0066】
こうして作成されたデータ出力テーブル48により、検査値データである加速度データ及び角速度データに対してキロ程が付与されたことになる。
【0067】
以上の処理によれば、ヨー角速度を利用することにより、キロ程との照合を行うことができる。ヨー角速度は、曲線線形図と類似の変化傾向を持つために、精度良くキロ程と検査値データとの照合を行うことができる。また、ヨー角速度は、他の角速度に比較して曲線に対する感度が高いために、曲線における速度を正確に求めることができる。測定基準データとなる停車場間には、通常複数の曲線が存在しており、その曲線の度に正確な速度とすることができるから、キロ程との対応付けの精度を上げることができる。
【0068】
3−9 キロ程精度向上処理2
以上の例では、ヨー角速度は、センサ部20のヨー角速度出力を座標変換せずに使用しており、座標変換しなくてもヨー角速度のグラフにおいて、屈曲点の位置が精度良く現れるが、さらに精度を向上させるためには、データ解析装置14またはデータ記録装置12に、ヨー角速度、ロール角速度、ピッチ角速度の3軸の角速度を用いてまた必要に応じて加速度を用いて、公知の座標変換を行い車体系からその車両外の座標系に変換を行う処理を行う手段を設けることも可能である。
【0069】
4. 比較
図9(a)は、ヨー角速度と曲線線形図との対応付けを行う前の、検査値、即ち、ヨー角速度とキロ程とを暫定的に対応付けた場合の例であり、
図9(b)は、曲線の速度を確定速度として用いてキロ程と対応付けた場合の例である。図中矩形の部分は、実際の曲線に対応する。また、
図9中、二点鎖線は速度を表す。
図9(a)の速度は、確定速度を用いずに、加速度の積分により求めたものである。
図9(b)に示される対応付けは、
図9(a)に比較して、精度良く対応付けられていることが分かる。
【0070】
5. 測定基準データについて
測定基準データとしては、前述のように、マーキング部36または入力部38から直接手動により入力されるキロ程のデータ、または、停車場、橋、トンネルといった既定物の通過したことを表すデータとする他に、別途のセンサにより自動的に通過したことを検出したことを表すデータとすることもできる。または、他のATSやデーターデポ(登録商標)(東京計器レールテクノ株式会社製)といった軌道に沿って間隔をあけて配置された地上子の通過を自動的に検知するデータとすることもできる。または、測定基準データとしては、データ記録装置12にGPS受信機を設けて、GPS受信機から得られる位置データとすることもできる。この場合、位置データと軌道上のキロ程との対応テーブルを別途設けるとよい。
【0071】
6. 検査値について
尚、以上の説明例では、検査値データは、ヨー角速度及び進行方向の加速度を検出するセンサによって検出されるデータと共通または同一であったが、これに限るものではなく、検査値データは、別のセンサによって検出される別の測定値のデータとすることもできる。