【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1. http://www.rtri.or.jp/events/getsurei/2012/Getsu254.html 2. 鉄道総研月例発表会 新宿 工学院大学 アーバンテックホール 3. RRR,第69巻第7号,第39頁,財団法人研友社 4. 鉄道総研報告,第26巻第7号,第47頁,財団法人 研友社 5. 信号通信技術交流会 公益財団法人鉄道総合技術研究所 国立研究所 6. 信号通信技術交流会 公益財団法人鉄道総合技術研究所 国立研究所
【文献】
関清隆,最近の信号通信分野の研究開発,鉄道総研報告,日本,2012年 7月31日,vol. 26、no. 7,p. 1-4
【文献】
菅原宏之、川崎邦弘、中村一城、祗園昭宏,無線式列車制御システム用通信ネットワーク性能シミュレータの開発,鉄道総研報告,日本,2012年 7月31日,vol. 26、no. 7,p. 35-40
【文献】
関磬,隊列走行における車車間通信(エネルギーITSプロジェクト),情報処理学会研究報告,日本,2009年 6月12日,vol. 2009-ITS-37、no. 2,p. 1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地上に存在する無線基地局装置と走行車両内に存在する通信装置との無線通信の通信状況が良好と特定された前記走行車両の走行経路上の通信良好位置と、前記通信装置と前記無線基地局装置との間の無線通信環境条件と、前記無線基地局装置と前記通信装置が前記無線基地局装置を介して接続する通信先装置との間の有線通信環境条件とを、前記通信装置が前記無線基地局装置を介して前記通信先装置と通信した場合の仮想通信品質を前記走行経路上の地点ごとに算出するシミュレーション装置に入力し、
前記通信良好位置と、前記無線通信環境条件と、前記有線通信環境条件とを変更して、前記シミュレーション装置の算出結果に基づく前記仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、実際に前記通信装置が前記無線基地局装置を介して前記通信先装置と通信した場合の実通信品質の値毎の該実通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、が近くなる場合の前記通信良好位置と、前記無線通信環境条件と、前記有線通信環境条件とを特定し、
当該特定した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とに加えて、前記走行車両に取り付けられるアンテナ位置を前記シミュレーション装置に入力して得た該シミュレーション装置の算出結果に基づく、前記仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、前記走行車両内のコンピュータが処理する所望のアプリケーションプログラムに要求される仮想通信品質と該仮想通信品質が得られるべき前記走行経路上の経路割合と、に基づいて、前記アプリケーションプログラムの導入可否を判定する
ことを特徴とするアプリケーション導入可否判定方法。
特定した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とに加えて、前記走行車両に取り付けられるアンテナ位置を前記シミュレーション装置に入力して得た該シミュレーション装置の算出結果に基づく、前記仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、前記走行車両内のコンピュータが処理する所望のアプリケーションプログラムに要求される仮想通信品質が得られるべき前記走行経路上の経路割合と、に基づいて、前記アプリケーションプログラムに要求される仮想通信品質が得られるべき前記走行経路上の経路割合を満足するアプリケーションプログラムを導入可と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション導入可否判定方法。
地上に存在する無線基地局装置と走行車両内に存在する通信装置との無線通信の通信状況が良好と特定された前記走行車両の走行経路上の通信良好位置と、前記通信装置と前記無線基地局装置との間の無線通信環境条件と、前記無線基地局装置と前記通信装置が前記無線基地局装置を介して接続する通信先装置との間の有線通信環境条件とを入力して、前記通信装置が前記無線基地局装置を介して前記通信先装置と通信した場合の仮想通信品質を前記走行経路上の地点ごとに算出するシミュレーション部と、
前記通信良好位置と、前記無線通信環境条件と、前記有線通信環境条件とを変更した場合の、前記シミュレーション部の算出結果に基づく前記仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、実際に前記通信装置が前記無線基地局装置を介して前記通信先装置と通信した場合の実通信品質の値毎の該実通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、が近くなる場合の前記通信良好位置と、前記無線通信環境条件と、前記有線通信環境条件とを特定する条件特定部と、
前記条件特定部の特定した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とに加えて、前記走行車両に取り付けられるアンテナ位置を前記シミュレーション部に入力して得た該シミュレーション部の算出結果に基づく、前記仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす前記走行経路上の経路割合と、前記走行車両内のコンピュータが処理する所望のアプリケーションプログラムに要求される仮想通信品質と該仮想通信品質が得られるべき前記走行経路上の経路割合と、に基づいて、前記アプリケーションプログラムの導入可否を判定する導入可否判定部と、
を備えることを特徴とするアプリケーション導入可否判定システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態によるアプリケーション導入可否判定方法およびアプリケーション導入可否判定システムについて図面を参照して説明する。
図1は第1の実施形態によるアプリケーション導入可否判定方法の概要を示す図である。
この図において、符号1はシミュレーション装置である。より具体的には、シミュレーション装置1は、電車内に存在する通信装置が無線基地局装置2を介して通信先装置と通信した場合の仮想通信品質を走行経路上の地点ごとに算出する。
また符号2A,2B・・・はそれぞれ無線基地局装置である。無線基地局装置2A,2B・・・を総称して無線基地局装置2と呼ぶこととする。ここでより具体的には、無線基地局装置2は、通信事業者の提供する通信サービスを受けるユーザの保持する無線通信装置(携帯電話等)が、他の無線通信装置と通信するためにアクセスする中継装置である。
【0016】
また符号3は線路等の走行経路を示している。また符号4は走行経路3上を走行する電車(車両)を示している。電車4には各種通信品質を検出するための通信装置5が存在する。通信装置5はアプリケーション導入評価のために電車4に搭乗した評価者が保持するコンピュータであってよい。
また符号6は無線基地局装置2を介して電車4内の通信装置5と通信を行う通信先装置である。
【0017】
ここで、本実施形態によるアプリケーション導入可否判定方法では、まず、無線基地局装置2と通信装置5との無線通信の通信状況が良好と特定された電車の走行経路3上の通信良好位置と、通信装置5と無線基地局装置2との間の無線通信環境条件と、無線基地局装置2と通信先装置6との間の有線通信環境条件とを、シミュレーション装置1に入力する。
【0018】
そして本実施形態によるアプリケーション導入可否判定方法では、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを変更して、シミュレーション装置1の算出結果に基づく仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合と、実際に通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の実通信品質の値毎の該実通信品質を満たす走行経路3上の経路割合と、が近くなる場合の通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを特定する。
【0019】
また本実施形態によるアプリケーション導入可否判定方法では、特定した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とに加えて、走行車両に取り付けられるアンテナ位置をシミュレーション装置1が入力する。そしてシミュレーション装置1がそれら入力した情報を用いて得た算出結果に基づく、仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合と、電車4内のコンピュータが処理する所望のアプリケーションプログラムに要求される仮想通信品質と該仮想通信品質が得られるべき走行経路3上の経路割合と、に基づいて、アプリケーションプログラムの導入可否を判定する。
【0020】
図2はアプリケーション導入可否判定方法のフローを示す図である。
次に、アプリケーション導入可否判定方法の詳細について説明する。
まず評価者は、パーソナルコンピュータ等の通信装置5を電車4に持ち込んで搭乗する。この通信装置5は、通信装置5と通信先装置6とが無線基地局装置2を介して通信した場合における走行経路上の各地点でのスループット(単位時間当たりのデータ送信量またはデータ受信量またはデータ送受信量)と、遅延時間とを測定するための通信品質測定プログラムを予め記憶しており、当該プログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行する。なお通信品質測定プログラムは、通信装置5に実行されることにより、当該通信装置5が、通信装置5と通信先装置6とが無線基地局装置2を介して通信した場合における走行経路上の各地点でのパケット損失率を測定することができるプログラムを含んでいてもよい。
【0021】
そして評価者の通信装置5の操作により、当該通信装置5は通信品質測定プログラムを実行する。この通信品質測定プログラムの実行により、通信装置5には通信品質測定部の機能が構成される。そして、通信装置5の通信品質測定部は、所定の通信プログラムを起動して通信先装置6との間での通信を行い、電車4の走行中、走行経路3上の各地点における通信品質を自動的に取得する(ステップS101)。本実施形態において通信品質は、スループットと遅延時間である。なお通信品質にパケット損失率が含まれるようにしてもよい。なお通信装置5の通信品質測定部は、所定の時間間隔またはユーザより入力された時間間隔またはユーザより入力された指定タイミングで、走行経路3上の原点を基準とした電車の走行位置(キロ程など)と、その電車の走行位置において測定した通信品質(スループットおよび遅延時間)とを対応付けて記憶部に記録していく(ステップS102)。なお遅延時間は、例えば、通信装置5通信先装置6宛てに送信情報を送信した時刻から、その送信情報に対応して通信先装置6から通信装置5へ応答情報が送信された場合の通信装置5において応答情報を受信した時刻までの、時刻差であってよい。また通信装置5は、各地点で通信可能な複数の無線基地局装置2の中からSNR(signal-noise ratio)に基づいて最適な無線基地局装置2を選択する機能を有していてよい。また通信装置5は、各地点のSNRに基づいて、自動的に無線基地局装置2と無線通信するにあたり、最適な変調方式、符号化方式を設定する機能を有していてよい。
【0022】
ここで通信装置5の通信品質測定部は、走行経路3上の原点を基準とした電車の走行位置(キロ程)を特定するに当たり、通信装置5に備わるGPS機能を用いて検出した位置情報と所定の走行距離算出式とを用いて特定してもよいし、ユーザからの入力を受け付けて特定するようにしてもよい。通信装置5の通信品質測定部は、走行経路3上の原点を基準とした電車4の走行位置(キロ程)を特定すると、当該特定した時刻において検出した通信品質の情報を、走行経路3上の原点を基準とした電車4の走行位置(キロ程)に対応付けて記憶部に記録する。なお通信装置5の通信品質測定部が、スループットの代わりに受信電力を測定するように通信装置5を構成してもよい。
【0023】
図3は通信装置による通信品質の計測結果を示す図であるである。
この図は、通信装置5が測定した通信品質の各位置(キロ程)における値を示している。
図3(a)で示すように通信装置5は通信品質としてスループットを測定してもよいし、
図3(b)で示すように通信品質として受信電力を測定してもよい。また
図3では示していないが、通信装置5は通信品質として遅延時間を測定してもよい。ここで評価者は、通信装置5の
図3で示すような計測結果に基づいて、地上に存在する無線基地局装置2と通信装置5との無線通信の通信状況が良好な走行経路3上の通信良好位置を推定する(ステップS103)。たとえばスループットが高いと計測できた位置は、通信良好位置と推定することができる。また受信電力が高いと計測できた位置は、通信良好位置と推定することができる。また遅延時間が短いと計測できた位置は、通信良好位置と推定することができる。なお本実施形態において評価者は、スループットに基づいて通信良好位置を推定する。
【0024】
図4は通信良好位置の推定結果を示す図である。
この図では、通信装置5の測定したスループットの各位置(キロ程)における値を示している。評価者は、
図4で示す通信装置5の計測結果に基づいて、通信品質の高い走行経路上の位置を通信良好位置と推定する。
なお、アプリケーション導入可否判定システムが通信良好位置推定装置を備え、当該通信良好位置推定装置が、通信装置5の計測した計測結果を受信または入力して、所定の処理により、通信品質の高い走行経路上の位置を通信良好位置と推定するようにしてもよい。またはシミュレーション装置1が、そのような通信良好位置推定装置の機能を備えるようにしてもよい。
【0025】
次にシミュレーション装置1は、
図4のように推定された通信良好位置と、通信装置5と無線基地局装置2との間の無線通信環境条件と、無線基地局装置2と通信装置5が無線基地局装置2を介して接続する通信先装置6との間の有線通信環境条件とを、入力する(ステップS104)。なお、シミュレーション装置1は、通信装置5以外の装置が行った通信良好位置や、無線通信環境条件や、有線通信環境条件の計算結果を取り込む機能を有しており、この機能からそれらの情報を入力してもよい。ここで、無線通信環境条件は、電車4の走行経路3上における所定間隔毎または指定位置毎の値であってよい。無線通信環境条件は、例えば、無線通信プロトコルや送信パケット数などの伝送条件、雑音値やシャドウイングによる損失等の伝搬環境条件、各無線基地局装置2の位置、各無線基地局装置2の無線信号(電波)の出力値等の基地局条件、電車4の走行に応じて変化する通信装置5の各位置、通信装置5の無線信号(電波)の出力値等の車上局条件が含まれてよい。また有線通信環境条件は、例えば、有線通信ネットワークの種別(インターネット等)等の情報が含まれてよい。
【0026】
そして、シミュレーション装置1はそれら入力した情報を用いて、通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の仮想通信品質を走行経路3上の地点ごとに算出する(ステップS105)。
ここで、シミュレーション装置1は、入力した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを用いて通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の仮想通信品質を走行経路上の地点ごとに算出する機能を予め有しているものとする。当該機能は、例えば、ネットワークシミュレータ“ns−3”(http://www.nsnam.org/)を利用する。なおシミュレーション装置1は仮想通信品質を走行経路上の地点ごとに算出する機能であれば、それ以外の公知の技術を用いてよい。
【0027】
図5は仮想通信品質の算出結果と実通信品質の計測結果とに基づく場所率のグラフを示す図である。
図5のグラフでは、シミュレーション装置1の算出結果に基づく仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を実線で示している。また
図5のグラフでは、実際に通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の実通信品質の値毎の該実通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を点線で示している。
【0028】
そして評価者は、
図5で示すグラフにおいて実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内であるかを判定する(ステップS106)。そして評価者は、
図5で示すグラフにおいて実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内でない場合には、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件の各情報のうちの何れか1つまたは複数の情報の値を変更する(ステップS107)。そしてユーザの操作に基づいて、シミュレーション装置1が、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件の各情報のうちの何れか1つまたは複数の情報の値が変更された場合の、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件の組み合わせの情報を入力する。そして、シミュレーション装置1は、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件の組み合わせの情報が変更される度に、仮想通信品質を算出する。
【0029】
そして評価者は、仮想通信品質毎に得られた
図5で示すグラフに基づいて、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内となるまで、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件の各情報のうちの何れか1つまたは複数の情報の値を変更して、シミュレーション装置1へ入力する。そして、評価者は、仮想通信品質毎に得られた
図5で示すグラフに基づいて、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内となった場合、つまり、実通信品質と仮想通信品質とが近くなった場合には、実通信品質に近くなった場合の仮想通信品質の算出結果を算出した時の通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件を特定する(ステップS108)。
【0030】
なお
図5では通信品質が遅延である場合のグラフの例を示している。しかしながら、遅延の他に仮想通信品質としてスループットをシミュレーション装置1が算出している場合には、仮想通信品質(スループット)の値毎の該仮想通信品質(スループット)を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)のグラフを用いて、ステップS106において実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内であるかを判定するようにしてもよい。またステップS106において、仮想通信品質が遅延とスループットの場合の複数のグラフを用いて、実通信品質と仮想通信品質の誤差が全て所定の誤差以内であるかを判定するようにしてもよい。
【0031】
そして評価者は、1つまたは複数の通信品質(スループット、遅延、受信電力など)について特定した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを入力する。この時、評価者は、特定した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とのうち、無線通信環境条件に含まれる、電車4の走行に応じて変化する通信装置5の各位置や通信装置5の無線信号(電波)の出力値等の車上局条件を、電車4の走行に応じて変化する電車4に取り付けられるアンテナについての位置や無線信号の出力値等に変更して、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件を入力する。そして、シミュレーション装置1は、1つまたは複数の通信品質(スループット、遅延、受信電力など)について入力した通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを用いて、1つまたは複数の通信品質についての仮想通信品質を算出する(ステップS109)。
【0032】
そして評価者は、電車4に取り付けられるアンテナについての位置を変化させた場合の、通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを1つまたは複数の通信品質について入力する。そして、シミュレーション装置1は、アンテナ位置について変更後の通信良好位置と、無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを用いて、アンテナ位置が変更される度に、1つまたは複数の通信品質についての仮想通信品質を算出して出力する。
【0033】
次に評価者は、アンテナ位置を変更するたびにシミュレーション装置1において算出された、1つまたは複数の通信品質についての場所率(仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)を用いて、アプリケーションプログラムの導入可否を判定する。より具体的には、評価者はステップS109の出力結果に基づいて、1つまたは複数の通信品質について
図5で示すようなアンテナ位置毎の場所率のグラフを作成する(ステップS110)。そして、評価者は、作成したグラフに基づいて、アプリケーションプログラムに要求される仮想通信品質が得られるべき走行経路上の経路割合を満足するアプリケーションプログラムを導入可と判定する(ステップS111)。
【0034】
図6は2つの通信品質についての仮想通信品質の算出結果に基づく場所率のグラフを示す図である。
図6において(c)は、仮想通信品質がスループットである場合のシミュレーション装置1の算出結果に基づく場所率(仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)を示すグラフである。
また
図6において(d)は、仮想通信品質が遅延時間である場合のシミュレーション装置1の算出結果に基づく場所率(仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)を示すグラフである。
【0035】
このようなグラフに基づいて評価者は、
(1)VideoCD伝送サービスを行うアプリケーションプログラム
(2)ブロードバンド用配信動画の伝送サービスを行うアプリケーションプログラム
(3)ナローバンド用配信動画の伝送サービスを行うアプリケーションプログラム
の3つのアプリケーションプログラムそれぞれに要求される通信品質を、ステップS109でシミュレーション装置1が算出した1つまたは複数の通信品質についてのアンテナ位置毎の仮想通信品質に基づく場所率(仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)は満足するかについて判定する。
【0036】
ここで、
図6(c)で示すように、
(1)のアプリケーションプログラムについては、1.8Mbpsのスループットq1で少なくとも40%(0.4)の場所率の通信品質を満たすよう要求されているとする。
また(2)のアプリケーションプログラムについては、0.5Mbpsのスループットq2で少なくとも90%(0.9)の場所率の通信品質を満たすよう要求されているとする。
また(3)のアプリケーションプログラムについては、0.3Mbpsのスループットq3で少なくとも98%(0.98)の場所率の通信品質を満たすよう要求されているとする。
【0037】
またステップS110で作成されたグラフが、
図6(c)で示すように、(ii)アンテナ位置が電車4の屋根上に位置する場合と、(ii)アンテナ位置が電車4の運転台に位置する場合と、(iii)アンテナ位置が電車の客室空間に位置する場合と、のそれぞれの場合においてシミュレーション装置1で算出された仮想通信品質に基づく場所率を示すとする。この場合、評価者は、(1),(2),(3)の3つのアプリケーションプログラムそれぞれに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足するかについて判定する。
【0038】
つまり、
図6(c)より(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q1(スループットq1)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値は、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q1(スループットq1)が示す場所率より高い。したがって評価者は、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0039】
また
図6(c)より(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q2(スループットq2)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値は、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q2(スループットq2)が示す場所率より高い。したがって評価者は、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0040】
また
図6(c)より(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q3(スループットq3)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値は、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q3(スループットq3)が示す場所率より高い。したがって評価者は、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0041】
したがって
図6(c)の場合、評価者は、(1),(2),(3)それぞれのアプリケーションプログラムに要求される通信品質を全て、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0042】
また
図6(d)で示すように、
(1)のアプリケーションプログラムについては、100msの遅延時間q4で少なくとも75%(0.75)の場所率の通信品質を満たすよう要求されているとする。
また(2)のアプリケーションプログラムについては、210msの遅延時間q5で少なくとも90%(0.9)の場所率の通信品質を満たすよう要求されているとする。
また(3)のアプリケーションプログラムについては、520msの遅延時間q6で少なくとも98%(0.98)の場所率の通信品質を満たすよう要求されているとする。
【0043】
またステップS110で作成されたグラフが、
図6(d)で示すように、(i)アンテナ位置が電車4の屋根上に位置する場合の場所率と、(ii)アンテナ位置が電車4の運転台に位置する場合の場所率と、(iii)アンテナ位置が電車の客室空間に位置する場合の場所率とを示すとする。なお
図6(d)においては(i),(ii),(iii)の各アンテナ位置での場所率のグラフはほぼ一致していることを示している。そして評価者は、(1),(2),(3)の3つのアプリケーションプログラムそれぞれに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足するかを判定する。
【0044】
つまり
図6(d)より、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q4(遅延時間q4)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値は、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q4(遅延時間q4)が示す場所率より低い。したがって評価者は、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足しないと判定する。
【0045】
また
図6(d)より、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q5(遅延時間q5)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値は、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q5(遅延時間q5)が示す場所率より低い。したがって評価者は、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足しないと判定する。
【0046】
また
図6(d)より、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q6(遅延時間q6)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値は、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q6(遅延時間q6)が示す場所率より高い。したがって評価者は、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0047】
したがって
図6(d)の場合、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は全て満足すると判定する。
【0048】
ここで、
図6(c)を用いて評価者は、通信品質がスループットの場合には、(1),(2),(3)それぞれのアプリケーションプログラムに要求される通信品質を全て、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定している。
他方、
図6(d)を用いて評価者は、通信品質が遅延時間の場合には、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質のみを、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定している。
ここで評価者は、いずれのアンテナ位置の場合の遅延時間についての通信品質を満足しないアプリケーションプログラム(1),(2)は導入不可と判定し、いずれのアンテナ位置の場合でも遅延時間についての通信品質を満足するアプリケーションプログラム(3)を導入可と判定する。
【0049】
以上、本発明の第1の実施形態について説明したが、上述の処理によれば、評価者は、シミュレーション装置1が算出した仮想通信品質に基づく場所率のグラフと、サービス用のアプリケーションプログラムに要求された通信品質とを比較するだけで、走行車両に設置される情報処理装置で動作するサービス用のアプリケーションプログラムによって要求される通信品質より、走行車両に設置される情報処理装置が外部の情報処理装置と通信する際の通信品質が高い状態となっているかの評価を行うことができる。
また、評価者は、シミュレーション装置1が算出した仮想通信品質に基づく場所率のグラフと、サービス用のアプリケーションプログラムに要求された通信品質とを比較するだけで、走行車両に設置される情報処理装置が外部の情報処理装置と通信する際の仮想通信品質を用いて、どのアプリケーションプログラムが満足に動作するのかの評価を簡易に行うことができる。
【0050】
<第2の実施形態>
第1の実施形態においては、電車4に設置される情報処理装置が外部の情報処理装置と通信する際の仮想通信品質を用いて、どのアプリケーションプログラムが満足に動作するのかの評価を評価者が行う場合の例について説明した。しかしながら、この評価をアプリケーション導入可否判定システムが自動的に評価するようにしてもよい。
【0051】
図7はアプリケーション導入可否判定システムの機能ブロック図である。
この図で示すように、アプリケーション導入可否判定システム10は、制御部100、通信良好位置推定部101、シミュレーション部102、場所率算出部103、誤差判定部104、条件特定部105、導入可否判定部106の各構成を備えている。これらの各構成部は、アプリケーション導入可否判定システムのコンピュータ装置が、記憶部107に記録されている導入可否判定プログラムを実行することによりアプリケーション導入可否判定システム10に構成される。なお、記憶部107は導入可否判定プログラムの他、当該導入可否判定プログラムの実行に基づいて行う処理に利用される各種情報を記憶している。
【0052】
図8はアプリケーション導入可否判定システムの処理フローを示す図である。
次に、アプリケーション導入可否判定システム10の処理の詳細について順を追って説明する。
ここで、アプリケーション導入可否判定システム10を用いて導入可否判定の処理を行わせる前提として、評価者は、パーソナルコンピュータ等の通信装置5を電車4に持ち込んで搭乗する。そして、第1の実施形態と同様に、評価者は通信装置5を操作して通信品質測定プログラムを実行する。
【0053】
この通信品質測定プログラムの実行により、通信装置5には通信品質測定部の機能が構成される。そして、通信装置5の通信品質測定部は、所定の通信プログラムを起動して通信先装置6との間での通信を行い、電車4の走行中、走行経路3上の各地点における複数の通信品質を自動的に取得する。本実施形態においても、通信品質は、スループットと遅延時間であるとする。なお通信装置5の通信品質測定部は、所定の時間間隔またはユーザより入力された時間間隔またはユーザより入力された指定タイミングで、走行経路3上の原点を基準とした電車4の走行位置(キロ程など)と、その電車の走行位置において測定した通信品質(スループットおよび遅延時間)とを対応付けて記憶部に記録していく。なお通信装置5の通信品質測定部が、スループットの代わりに受信電力を測定するように通信装置5を構成してもよい。
【0054】
そして、通信装置5は、アプリケーション導入可否判定システム10へ、記憶部に記録した走行位置とその位置で測定した複数の通信品質(スループットおよび遅延時間)との対応関係を示す情報を送信する。これにより、アプリケーション導入可否判定システム10の制御部100は、通信装置5から受信した情報を記憶部107に記録する(ステップS201)。なお、通信装置5が記憶部107に記録した走行位置とその位置での複数の通信品質(スループットおよび遅延時間)との対応関係の情報を、評価者がUSBメモリ等の記録媒体に格納し、当該評価者がアプリケーション導入可否判定システム10の記憶部107にコピーする操作を行うようにしてもよい。
【0055】
そして評価者からの処理開始の指示に基づいて、または通信装置5からの情報送信の完了通知などに基づいて、アプリケーション導入可否判定システムの制御部100が、複数の通信品質(スループットおよび遅延時間)についての通信良好位置推定処理の開始を検出する。そして制御部100は、通信良好位置推定部101に処理の開始を指示する。通信良好位置推定部101は処理の開始の指示を受けると、通信装置5の
図3で示すような計測結果に基づいて、地上に存在する無線基地局装置2と通信装置5との無線通信の通信状況が良好な走行経路3上の通信良好位置を、複数の通信品質(スループットおよび遅延時間)について推定する(ステップS202)。
【0056】
より具体的には、例えば通信良好位置推定部101は、走行位置(キロ程)と通信品質との対応関係の情報を用いて、通信品質の値が第1閾値以上の情報に対応付けられた走行位置(キロ程)の情報のうち、電車4の走行方向に所定範囲内の先の他の走行位置(キロ程)までに記録された通信品質の値との差が第2閾値以上の走行位置(キロ程)を通信良好位置と推定してよい。なお第1閾値は、この閾値以上の通信品質を採用すると判定するための閾値である。また第2閾値は、例えば通信品質のピークを測定するための閾値である。または走行位置(キロ程)と通信品質との対応関係に基づいて表示画面に
図3で示すようなグラフを出力し、評価者からグラフにおける1つまたは複数の通信良好位置の特定を受け付けてもよい。また通信良好位置推定部101は、他の処理方法によって、自動的に通信良好位置を特定するようにしてもよい。
【0057】
そして制御部100は、通信良好位置推定部101による複数の通信品質(スループットおよび遅延時間)についての通信良好位置の推定が完了すると、表示画面に通信良好位置の完了を出力すると共に、条件情報の入力を促す情報を出力する(ステップS203)。そして、評価者の情報入力の操作に基づいて、制御部100は、通信装置5と無線基地局装置2との間の無線通信環境条件と、無線基地局装置2と通信装置5が無線基地局装置2を介して接続する通信先装置6との間の有線通信環境条件と、の入力を受け付ける(ステップS204)。
【0058】
そして、制御部100はシミュレーション部102に対してシミュレーションの処理の開始を指示する。するとシミュレーション部102は、推定された通信良好位置と、入力された無線通信環境条件および有線通信環境条件とを用いて、通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の複数の仮想通信品質(スループットおよび遅延時間)を走行経路上の地点ごとに算出する(ステップS205)。ここで、シミュレーション部102は、通信良好位置推定部101において推定した通信良好位置と、評価者から入力した無線通信環境条件および有線通信環境条件とを用いて、通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の複数の仮想通信品質(スループットおよび遅延時間)を走行経路上の地点ごとに算出する機能を予め有しているものとする。当該機能は、例えば、ネットワークシミュレータ“ns−3”(http://www.nsnam.org/)を利用してよい。またはその他のネットワークシミュレータの技術を利用してよい。なお、シミュレーション部102は、走行経路上の地点ごとに算出した1つまたは複数の仮想通信品質の情報と走行経路上の地点(キロ程)の情報との対応関係を、記憶部107に記録していく。シミュレーション部102は、キロ程の原点から評価者より指定されたキロ程、または予め定められたキロ程までの複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)についての仮想通信品質の情報の算出を終了すると、制御部100へ処理終了を通知する。すると制御部100は場所率算出部103へ処理の開始を指示する。
【0059】
次に場所率算出部103は、シミュレーション部102の算出結果である複数の仮想通信品質(スループットと遅延時間)の情報と、その仮想通信品質の算出した走行経路上の地点(キロ程)の情報との対応関係を記憶部107から読み取る。そして場所率算出部103は、仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を、1つまたは複数の仮想通信品質(スループットと遅延時間)について算出する(ステップS206)。場所率算出部103は、例えば、所定の品質範囲に含まれる仮想通信品質を算出した地点の数を、仮想通信品質を算出した全ての地点の数で除することにより、その所定の品質範囲に含まれる仮想通信品質についての場所率として算出すことができる。この時、所定の品質範囲に含まれる仮想通信品質の場所率を、所定の品質範囲に属する代表の仮想通信品質の場所率として算出するようにしてもよい。そして、場所率算出部103は、品質範囲をずらしながら、重複せずに連続する複数の異なる品質範囲毎に、代表の仮想通信品質についての場所率を算出する処理を、複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について行う。また場所率算出部103は、当該複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について、品質範囲毎の代表の仮想通信品質とその仮想通信品質の場所率とを対応付けて記憶部107に記録する。
【0060】
また場所率算出部103は、通信装置5から入力した走行位置(キロ程など)とその電車4の走行位置において測定した実通信品質(スループットと遅延時間)との対応関係の情報を記憶部107から読み取る。そして場所率算出部103は、実通信品質の値毎の該実通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を、1つまたは複数の仮想通信品質(スループットと遅延時間)について算出する(ステップS207)。この時、場所率算出部103は、上述の仮想通信品質についての場所率の算出と同様の処理により、重複せずに連続する複数の異なる品質範囲毎に、実通信品質(例えば代表の実通信品質)についての場所率を算出し、代表の実通信品質とその実通信品質の場所率とを対応付けて記憶部107に記録する処理を、複数の実通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について行う。また場所率算出部103は、当該複数の実通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について、品質範囲毎の代表の実通信品質とその実通信品質の場所率とを対応付けて記憶部107に記録する。場所率算出部103は、全ての品質範囲について場所率の算出を、複数の実通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について終了すると、制御部100に処理の完了を通知する。すると制御部100は、誤差判定部104に処理の開始を指示する。なお、仮想通信品質についての場所率を算出する場合の“重複せずに連続する複数の異なる品質範囲”それぞれと、実通信品質についての場所率を算出する場合の“重複せずに連続する複数の異なる品質範囲”それぞれは、対応する品質範囲の値が一致しているものとする。
【0061】
次に誤差判定部104は、1つまたは複数の実通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について、仮想通信品質とその仮想通信品質の場所率との対応関係と、実通信品質とその実通信品質の場所率との対応関係の情報を記憶部107から読み取る。そして、誤差判定部104は、仮想通信品質とその仮想通信品質の場所率との対応関係と、実通信品質とその実通信品質の場所率との対応関係との誤差判定を、通信装置5が計測した1つまたは複数の通信品質(スループット、遅延時間)毎に行う(ステップS208)。この誤差判定は、通信装置5が計測した1つの通信品質(例えば、スループット)についてのみ行ってもよいし、複数の通信品質について行ってもよい。
【0062】
この誤差判定の処理において誤差判定部104は、例えば、値が対応する仮想通信品質と実通信品質についての各場所率の値に基づいて、実通信品質についての場所率を基準に、その基準となる実通信品質の場所率の10%の誤差範囲内に仮想通信品質の場所率の値が含まれるかを判定する。そして誤差判定部104は、実通信品質についての場所率を基準に、その場所率の10%の誤差範囲内に仮想通信品質の場所率の値が含まれる場合には、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内であると判定する。また誤差判定部104は、実通信品質についての場所率を基準に、その場所率の10%の誤差範囲内に仮想通信品質の場所率の値が含まれない場合には、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内でないと判定する。そして誤差判定部104は、誤差以内であるか否かの情報を制御部100へ出力する。なお、この誤差判定の処理を、通信装置5が計測した複数の通信品質(スループット、遅延時間)毎に行う場合には、全ての通信品質の種別について、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内であるか否かを判定する。
【0063】
次に制御部100は、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内でない場合、通信良好位置推定部101へ通信良好位置の変更要求を行う。すると通信良好位置推定部101はステップS202で推定した通信良好位置を変更する処理を、1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について行う(ステップS209)。例えばこの処理を自動的に行う場合、通信良好位置推定部101は、ステップS202で1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について推定された通信良好位置のうちの何れか1つの通信良好位置を選択する。ステップS202で1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について推定された通信良好位置のうち、当該選択した通信良好位置のみを他の通信良好位置へと変更する処理を1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について行う。
【0064】
より具体的には、通信良好位置推定部101は、ステップS202で推定された通信良好位置のうちから、選択した1つの通信良好位置について測定した走行位置(キロ程)に基づいて、その走行位置に近い他の走行位置で測定した第1閾値以上の他の通信品質を、記憶部107に記録されている情報の中から検索する。そして通信良好位置推定部101は、その検索した通信品質の値と、当該通信品質を測定した走行位置(キロ程)との位置関係について電車4の走行方向に所定範囲内の先の他の走行位置(キロ程)までに記録された通信品質の値との差が、第3閾値(第2閾値>第3閾値)以上の走行位置(キロ程)を記憶部107に記録されている情報から特定する。そして通信良好位置推定部101は、その特定した走行位置(キロ程)を新たな通信良好位置として、ステップS202で推定された通信良好位置のうちの選択した1つの通信良好位置と置き換える。そして通信良好位置推定部101は変更後の通信良好位置を記憶部107に記録する処理を、1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について行う。
【0065】
または通信良好位置を変更する処理の別の例としては、通信良好位置推定部101が、走行位置(キロ程)と通信品質との対応関係に基づいて表示画面に
図3で示すようなグラフを出力する。そして通信良好位置推定部101は、評価者からグラフにおける変更後の1つまたは複数の通信良好位置の特定を受け付けて、その特定された位置の情報を、無線基地局装置2と通信装置5との無線通信の通信状況が良好な走行経路3上の新たな通信良好位置と推定するようにしてもよい。
【0066】
また制御部100は、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内でない場合、条件情報の再入力を促す情報を表示画面に出力する。そして、評価者の情報入力の操作に基づいて、制御部100は、通信装置5と無線基地局装置2との間の無線通信環境条件と、無線基地局装置2と通信装置5が無線基地局装置2を介して接続する通信先装置6との間の有線通信環境条件との再入力を受け付ける(ステップS210)。制御部100はその再入力を受け付けた情報を記憶部107に記録する。
【0067】
そして制御部100は、再入力を受け付けると、変更後の通信良好位置と、再入力された無線通信環境条件と、有線通信環境条件とを含む条件情報を、シミュレーション部102へ出力する。また制御部100は、シミュレーション部102へ処理の再開を指示する。するとシミュレーション部102は、1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について、それら再入力および変更した条件情報を用いて、通信装置5が無線基地局装置2を介して通信先装置6と通信した場合の仮想通信品質を走行経路3上の地点ごとに算出する(ステップS211)。そして実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内でない場合には、アプリケーション導入可否判定システム10は、ステップS205からステップS210の処理を繰り返す。
【0068】
他方、制御部100は、ステップS208において実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内であると判定した場合、条件特定部105へ処理の開始を指示する。すると、条件特定部105は、1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)について、実通信品質と仮想通信品質の誤差が所定の誤差以内であると特定した場合の仮想通信品質の算出に用いた条件情報を記憶部107から読み取って特定する(ステップS212)。
【0069】
次に条件特定部105は、表示画面に電車4におけるアンテナ位置と当該アンテナ位置における無線信号の出力値の変更入力を促す画面を出力する。すると評価者は、当該画面において電車4に取り付けられるアンテナ位置を入力する。次に条件特定部105は、ステップS212において特定した条件情報の無線通信環境条件に含まれる車上局条件について、通信装置5の各位置と通信装置5の無線信号(電波)の出力値等を、電車4に取り付けられるアンテナについての位置とそのアンテナによる無線信号の出力値に変更する(ステップS213)。そして、条件特定部105は、特定した条件情報による仮想通信品質のシミュレーションをシミュレーション部102へ処理を指示する。そしてシミュレーション部102は、ステップS212において特定された条件情報に含まれる通信良好位置と、有線通信環境条件と、ステップS213において変更された無線通信環境条件とを用いて、1つまたは複数の通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)についての仮想通信品質を算出する(ステップS214)。
【0070】
そして、次に場所率算出部103が、ステップS206の処理と同様に、シミュレーション部102がステップS214において算出した仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を、1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットと遅延時間)について算出する(ステップS215)。
【0071】
また条件特定部105は、電車4に取り付けられるアンテナの位置とその位置における無線信号の出力値の情報について、上述の変更入力を促す画面を複数回、画面に出力して入力を受け付ける。そして入力を受け付けるたびに、条件情報の無線通信環境条件に含まれる車上局条件について、通信装置5の各位置と通信装置5の無線信号(電波)の出力値等を、電車4に取り付けられるアンテナについての位置とそのアンテナによる無線信号の出力値に変更し、それら特定した条件情報による仮想通信品質のシミュレーションをシミュレーション部102へ処理を指示する。そしてシミュレーション部102は、ステップS214の処理として、ステップS212において特定した条件情報に含まれる通信良好位置と、有線通信環境条件と、変更された無線通信環境条件とを用いて、1つまたは複数の通信品質の種別(スループットおよび遅延時間)についての仮想通信品質を算出する。
【0072】
また場所率算出部103が、ステップS215の処理としてステップS206の処理と同様に、シミュレーション部102において変更された無線通信環境条件を用いて算出された仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を、1つまたは複数の仮想通信品質の種別(スループットと遅延時間)について算出する。
【0073】
そして制御部100はシミュレーション部102における処理が終了すると、導入可否判定部106へ処理の開始を指示する。ここで、上述の処理によって、場所率算出部103が、
図6(c)、
図6(d)で示すような各アンテナ位置における、仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合(場所率)を、仮想通信品質の種別(スループットと遅延時間)ごとに算出している。そして、導入可否判定部106は、
(1)VideoCD伝送サービスを行うアプリケーションプログラム
(2)ブロードバンド用配信動画の伝送サービスを行うアプリケーションプログラム
(3)ナローバンド用配信動画の伝送サービスを行うアプリケーションプログラム
の3つのアプリケーションプログラムそれぞれに要求される通信品質を、場所率算出部103が算出した、1つまたは複数の通信品質についてのアンテナ位置毎の仮想通信品質に基づく場所率(仮想通信品質の値毎の該仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)は満足するかについて判定する。
【0074】
より具体的には、導入可否判定部106は、
図6(c)の(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q1(スループットq1)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値が、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q1(スループットq1)が示す場所率より高いかを判定する。そしてYesの場合、導入可否判定部106は、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0075】
また導入可否判定部106は、
図6(c)より(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q2(スループットq2)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値が、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q2(スループットq2)が示す場所率より高いかを判定する。そしてYesの場合には、導入可否判定部106は、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0076】
また導入可否判定部106は、
図6(c)より(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q3(スループットq3)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値が、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q3(スループットq3)が示す場所率より高いかを判定する。そしてYesの場合には、導入可否判定部106は、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質(場所率)を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0077】
次に導入可否判定部106は、アプリケーションプログラムに要求される通信品質(場所率)を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定したアプリケーションプログラムを特定する。今、(1),(2),(3)の全てのアプリケーションプログラムについて、アプリケーションプログラムに要求される通信品質(場所率)を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定した場合、導入可否判定部106は、(1),(2),(3)の全てのアプリケーションプログラムを特定する。
【0078】
そして次に導入可否判定部106は、特定したアプリケーションプログラムの情報を用いて、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q4(遅延時間q4)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値が、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q4(遅延時間q4)の示す場所率より高いかを判定する。そしてNoの場合、導入可否判定部106は、(1)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足しないと判定する。
【0079】
また導入可否判定部106は、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q5(遅延時間q5)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値が、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q5(遅延時間q5)の示す場所率より高いかを判定する。そしてNoの場合、導入可否判定部106は、(2)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足しないと判定する。
【0080】
また導入可否判定部106は、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質q6(遅延時間q6)に基づく場所率(仮想通信品質を満たす走行経路3上の経路割合)の値が、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質q6(遅延時間q6)の示す場所率より高いかを判定する。そしてYesの場合、導入可否判定部106は、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質を、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0081】
そして導入可否判定部106は、このような場合、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質のみを、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定する。
【0082】
ここで、導入可否判定部106は、通信品質がスループットの場合には、(1),(2),(3)それぞれのアプリケーションプログラムに要求される通信品質を全て、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定している。
他方、導入可否判定部106は、通信品質が遅延時間の場合には、(3)のアプリケーションプログラムに要求される通信品質のみを、(i),(ii),(iii)で示すアンテナ位置毎の仮想通信品質は満足すると判定している。
したがって導入可否判定部106は、いずれのアンテナ位置の場合でも遅延時間についての通信品質を満足しないアプリケーションプログラム(1),(2)は導入不可と判定し、いずれのアンテナ位置の場合でも遅延時間についての通信品質を満足するアプリケーションプログラム(3)を導入可と判定する(ステップS216)。
【0083】
以上、本発明の第2の実施形態について説明したが、上述の処理によれば、アプリケーション導入可否判定システムを用いて、走行車両に設置される情報処理装置で動作するサービス用のアプリケーションプログラムによって要求される通信品質より、走行車両に設置される情報処理装置が外部の情報処理装置と通信する際の通信品質が高い状態となっているかの評価を行うことができる。
また、上述の処理によれば、アプリケーション導入可否判定システムを用いて、どのアプリケーションプログラムが満足に動作するのかの評価を簡易に行うことができる。
【0084】
なお、上述のアプリケーション導入可否判定システム10、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0085】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。