(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
被覆電線に使用されている金属性の芯線表面には絶縁性の酸化被膜が形成されやすい。このため、被覆を除去するだけでは不十分であり、酸化被膜を除去した上で端子接続作業を行う必要がある。
【0003】
図6は、従来の電線先端部の磨き工具101を示している。磨き工具101には、下方に設けられた操作軸102に入力された回転力がカサ歯車103により伝達されて回転するハウジング109が設けられている。このハウジング109内には、チャンネル内捲ブラシ106が圧入固定されたブラシ受け105が備えられている。チャンネル内捲ブラシ106の中心部の開口径は、挿入される被覆電線120の導体120aの外径よりも少し小さい寸法に設定されている。
【0004】
この磨き工具101を用いると、酸化被膜が除去され、良好な接続状態を形成することができる。このような技術は例えば特許文献1に開示がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、芯線(導体120a)の表面に対してブラシの先端を確実に接触させるために、ブラシの中心部の開口径は、研磨対象の被覆電線の導体の外形より少し小さい寸法になるよう設計されている。そして、導体挿入時にブラシが撓み、これにより生じる弾性力によりブラシ先端が導体に押し付けられ、導体の表面が研磨される。
【0007】
このため、被覆電線(導体部分)の押し入れ抵抗が大きい。また、不用意に被覆電線を引き抜くと、ブラシの先端や芯線に損傷が生じ易い。
【0008】
そこで、本発明では、上記の課題を解決するために、ブラシや芯線に損傷を生じさせることなく、容易に芯線の挿入及び引き抜きができる回転研磨具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の回転研磨具は、ケーブルの中心軸周りに回転するブラシによりケーブルの表面を研磨する回転研磨具であって、ケーブルの挿通領域が形成され、挿通方向奥側に貫通孔が形成された本体と、挿通領域内にブラシの先端を侵入させる状態で配置された少なくとも1つのブラシ体と、一端に形成された頭部を外側に残して貫通孔に遊貫され、他端がブラシ体の挿通方向奥側に固定されている支持ピンと、本体に対してブラシ体を挿通領域側へ付勢する付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の回転研磨具は、上記構成に加え、付勢手段は、本体の内側とブラシ体との間に圧縮状態で支持ピンに外嵌されたスプリングであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の回転研磨具は、上記構成に加え、2つのブラシ体が、挿通領域を挟んで、互いにブラシを対向させるように配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の回転研磨具は、ブラシ体に対して、少なくとも、中心軸周りの回転方向逆側に、空隙が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、支持ピンが本体の貫通孔に遊貫されているので、貫通孔を中心として揺動可能であるとともに、貫通孔内を摺動可能である。これにより、支持ピンが固定されたブラシ体は、挿通領域に挿通されるケーブルの中心軸に直交する方向への進退と、貫通孔を中心とした揺動とからなる複合運動可能な状態で本体に連結されている。
【0014】
このため、ブラシ体は貫通孔を中心として揺動し、入口側を広げることができるので、ケーブルの挿通が容易である。また、挿通領域内にケーブルが完全に挿通され、挿通領域内に侵入していたブラシの先端が退避する際、支持ピンは貫通孔から外側へ突き出る。このとき、ブラシ体の運動方向は、ケーブルと略直交する方向に変わり、ブラシがケーブルに沿う方向に向くので良好な研磨姿勢を保つことができる。
【0015】
また、本発明によれば、支持ピンにスプリングが外嵌されているので、ケーブルに対して直交する方向へのブラシ体を挿通領域側へ戻す力が生じる。また、本体の貫通孔を中心として揺動したブラシ体を、挿通方向に沿った方向へ戻す力も生じる。このように、簡易な構成により、ケーブルの受け入れを容易にするとともに、ブラシ体の姿勢を良好な状態に保って安定した研磨作業を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、ブラシ体が対向配置されているので、ケーブルに対して直交する方向へのブラシ体の進退動及び、貫通孔を中心とするブラシ体の揺動における変位量が半分で済む。これにより、ケーブルの受け入れ及び研磨作業における柔軟性が向上する。
【0017】
また、本発明によれば、ブラシ体に対して、少なくとも、中心軸周りの回転方向逆側に、空隙が形成されているので、ケーブルを挿通後、回転研磨具を回転操作すると、ブラシ体の入口側が回転逆方向に取り残される形で傾斜する。これにより、撚り線の撚り合わせ方向に回転操作する場合、ブラシ体が撚り合わせ方向に沿うので、撚り線で形成された撚り溝に沿ってブラシがスムーズに摺接する。また、摺接するブラシからの反力を受けて、ケーブルを押し出す力が生じるので、回転研磨具の軸方向への摺動もスムーズに行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1に本発明の第1の実施の形態に係る回転研磨具1の全体斜視図を示す。また、
図2には回転研磨具1の立体分解図を示す。ただし、
図1には、説明の便宜のため、
図2に示した蓋部3は省略して示している。また、
図1では、回転研磨具1の本体2の上半分を破断した状態で示している。
【0021】
先ず、
図1を参照して、この回転研磨具1の本体2の内部中央には、ケーブル20が挿通可能な挿通領域10が形成されている。この挿通領域10を挟んで、本体2の挿通方向奥側の壁には、対向する位置に貫通孔2aが形成されている。
【0022】
また、挿通方向奥側には、挿通領域10に延設されて連結筒部2bが形成されている。この連結筒部2bには、回転研磨具1をケーブル20の中心軸21周りに回転させるための回転駆動装置が連結されるが、ここではその構成を省略している。挿入されるケーブル20は、
図1に示されているように、被覆が除去された状態で矢印12の方向へ挿通される。
【0023】
図1、
図2を参照して、貫通孔2aには、支持ピン6の一端6a側に形成された頭部6cが、本体2の外側に突出するようにして貫通配置されている。そして、回転研磨具1に挿通されるケーブル20に略直交する方向に延びる他端6b側は、本体2の内側でブラシ体4の奥側へ接続されている。ここで、貫通孔2aの開口径は、孔内で支持ピン6が軸振れ可能となるように、支持ピン6の外径よりもかなり大き目に形成されており、支持ピン6は遊貫状態となっている。
【0024】
この支持ピン6には、スプリング8(付勢手段)が外嵌されている。このスプリング8は、本体2の内壁とブラシ体4との間において圧縮状態で配置されているので、ブラシ体4は挿通領域10側へ付勢されて安定保持される。
【0025】
ブラシ体4の位置は、外力が加わらない状態では、ブラシ4aの先端が挿通領域10内に一部侵入する形で保持されている。
【0026】
このような構成により、支持ピン6が自身の長手方向に移動して貫通孔2a内を摺動する場合、ブラシ4aの挿通領域10への侵入深さが変化する。また、貫通孔2aを支点として支持ピン6が揺動(軸振れ)する場合は、ブラシ体4の入口側が揺動し、挿通領域10の入口側を開閉することができる。すなわち、これら貫通孔2a内の摺動と、貫通孔2aを支点とする揺動とは複合的に行うことができるので、蛇が卵を呑み込むように、柔軟にケーブル20を挿通させることが可能となる。
【0027】
次に、このケーブル20の挿通時におけるブラシ体4の動作について、
図3を用いて説明する。
図3は、ケーブル20が回転研磨具1に挿入配置される過程を示しており、
図3(a)にはケーブル20が未挿入の状態、
図3(b)にはケーブル20の先端がブラシ体4の入口側に僅かに掛かった状態、
図3(c)にはケーブル20の先端がブラシ体4の奥側を通過して連結筒部2bまで進んだ状態が表わされている。
【0028】
図3(a)から分かるように、ケーブル20の挿通前の状態では、ブラシ4aの先端は挿通領域10内へ侵入した配置となっており、対向するブラシ体4の間隔はケーブル20の外径よりも小さくなっている。
【0029】
この状態から
図3(b)の状態へ移行すると、対向するブラシ体4はそれぞれ、挿入さ
れるケーブル20の先端により、挿通領域10内から排除され、貫通孔2aを中心にして揺動する。これにより、ブラシ体4の入口側の間隔は広がり、ケーブル20の先端が挿通領域10内に進入する。
【0030】
そして、ケーブル20がさらに奥側へ進入すると、
図3(b)の状態で広がったブラシ体4の入口側の間隔を戻すように支持ピン6が元の角度に戻りつつ、奥側の間隔を広げるように支持ピン6の頭部6c(
図2参照)が本体2の外側へ突出する。このようにして、
図3(c)に示すように、ケーブル20が奥側まで挿通され、ブラシ体4のブラシ4aの全体がケーブル20の表面に接する状態で姿勢が安定する。
【0031】
図3(c)の段階では、ケーブル20が挿通方向奥側(連結筒部2b側)へ進むので、貫通孔2aを中心としたブラシ体4の揺動は抑えられ、ケーブル20の長手方向に対するブラシ体4の平行状態が良好に保持される。また、収縮したスプリング8によりケーブル20の表面に対して研磨のために十分な圧力が加えられる。
【0032】
一般に、精度良く研磨を行うためには、ブラシの先端をケーブルの表面に対して適度な圧力で押し付ける必要がある。そこでこの圧力を得るために、挿通されるケーブルの外径よりもブラシの先端で形成される空間の方が狭くなるように設計される。これにより、ケーブル挿入時にブラシの弾性反発力に基づく圧力が得られる。しかし、この結果、ケーブルの挿通が困難になっている場合が多い。
【0033】
これに比べて、本実施の形態に係る構成では、上述の複合動作によりブラシ体4の角度を変化させながら挿通領域10から退避させ、ケーブル20を柔軟に受け入れることができるので、作業効率が向上する。
【0034】
また、ケーブル20を柔軟に受け入れることができるので、芯線に不要な力が加わらず、撚り合わせが崩れることを防止することも可能である。
【0035】
さらに、挿通状態のケーブル20を引き抜く際には、ケーブル20の先端位置が、長手方向において支持ピン6(貫通孔2a)の位置を通過し、入口側へ近づくと、貫通孔2aを支点にしてブラシ体4が容易に揺動できる。このように、回転研磨具1の外へ完全に抜け出る前の段階でケーブル20が解放されるので、撚り線の撚り合わせに損傷が生じることを防止できる。
【0036】
加えて、本実施の形態に係る回転研磨具1の構成によれば、径の異なるケーブルに対しても同様に表面研磨を行うことができ、幅広く適用することが可能である。すなわち、従来は、ケーブルの挿入により撓ませたブラシの弾性反発力のみを利用して表面研磨を行う構成が殆どであったが、上記回転研磨具1では、ブラシ4aの弾性反発力とスプリング8の反発力とが合成された力により適度な圧力を得ることができる。このため、比較的径の大きいケーブルを挿入した場合であっても、スプリング8が収縮することにより過度な反発力を吸収することができ、適度な圧力が生じるように緩衝材として作用する。
【0037】
なお、上記の実施の形態では、本体2内に1対のブラシ体4を対向配置した構成を例として示したが、挿通領域10の片側を閉じておけば、1つのブラシ体4で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、上記の実施の形態では、付勢手段として支持ピン6の周りにスプリング8を嵌めた構成を例として示したが、貫通孔2aを中心とした支持ピン6の揺動、及び貫通孔2a内の支持ピン6の摺動が可能な付勢手段であれば、スプリング以外の付勢手段でも良く、さらに、支持ピン6に外嵌されない構成であっても良い。
【0039】
また、上記の実施の形態では、挿通領域10が、円筒の一部を形成する曲面で形成されている構成を例として示したが、これに限らず、ケーブル20をガイドできる構成であれば、例えば、複数の線材で構成されたガイドであっても構わない。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、ここでは、第1の実施の形態に示した回転研磨具1と同一の部材及び同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0041】
図4は、本実施の形態に係る回転研磨具51を、ケーブル20の挿通方向入口側から見た側面図を示している。ここでは説明の便宜のため、本体52の入口側を塞ぐ蓋部3(
図2を参照)は省略している。
【0042】
図4(a)には、第1の実施の形態において
図3(b)に示したように、ケーブル20(二点鎖線の円)の先端が挿通領域10に挿入され、一対のブラシ体4の入口側の間が押し広げられた状態を示されている。また、
図4(b)には、
図4(a)の状態において、回転研磨具51を反時計回り方向へ回転させた状態が示されている。
【0043】
図4(a)から分かるように、本実施の形態の回転研磨具51と第1の実施の形態の回転研磨具1とは本体52の空間の形状が異なっている。
【0044】
具体的には、ブラシ体4と本体52の内側との間に形成される隙間のうち、ケーブル20に対する回転研磨具51の回転方向の逆側において、他の隙間よりも大きな空隙22が形成されている。これにより、
図4(a)に示すような、挿入されたケーブル20の先端とブラシ4aの入口側とが当接した状態において、
図4(b)に示すように、回転研磨具51を反時計回りの方向へ回転させると、ケーブル20との間の摩擦力の作用によりブラシ体4の入口側が時計回りの方向へ残るように引き摺られて傾斜する。
【0045】
この
図4(b)の状態を支持ピン6側から見た様子を
図5に示す。
図5から分かるように、回転研磨具51はケーブル20の線の撚り方向に回転操作されるので、ブラシ体4は撚り線の方向に沿った方向へ傾く。
【0046】
このような構成により、表面研磨が必要な領域まで、一旦ケーブル20を奥側まで挿通させた後、回転研磨具51を回転させると、撚り線を構成する個々の線の隙間に形成された螺旋状の溝に沿ってブラシ4aの先端が摺接移動する。これにより、螺旋状の溝を押し進むブラシ4aの先端からの反力により、ケーブル20には、回転研磨具51から押し出される向き(入口側)へ力が働く。
【0047】
すなわち、回転研磨具51を回転操作することにより、ケーブル20の長手方向に沿った推進力が生じるので、ケーブル20の長手方向への送り動作がサポートされ、表面研磨を行うことが容易になり、作業効率が向上する。
【0048】
また、第1の実施の形態において
図1に示した回転研磨具1と同様に、ケーブル20の挿入が容易になる効果も得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、1対のブラシ体4を備えた構成を例として示したが、挿通領域の片側を塞いでいれば、一つのブラシ体で構成していても同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、第2の実施の形態では、2つのブラシ体4のそれぞれが、回転研磨具51の回転方向に対して逆方向へ揺動可能となるように空隙22が形成された構成を例として示したが、2つのブラシ体4のうち、少なくとも一方に対して空隙22が形成されていれば、同様の効果を得ることができる。さらに、空隙22は、ブラシ体4に対して回転研磨具51の回転方向逆側のみではなく、両側へ形成されていても構わない。
【0051】
また、上記各実施の形態では、貫通孔2aが円形の穴で形成されている例を示したが、挿通方向に延びる長穴で形成されていれば、ブラシ体4の入口が開く方向への揺動が容易になる。