(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂R1と樹脂R3の合計量と樹脂R2との重量比((樹脂R1+樹脂R3)/樹脂R2)が、40/60〜90/10である、請求項1〜7いずれか記載のトナーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、特定の軟化点を有する3種の樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3からなる結着樹脂と、融点の異なる少なくとも2種のワックスを含有するワックスとを含有する混合物を二軸混練機で溶融混練する工程を含む、トナーの製造方法であり、それぞれの樹脂の軟化点とワックスの融点が特定の関係にある点に特徴を有しており、本発明の方法によりトナーの生産性を向上させるとともに、微粉の少ないトナーが得られるという効果を奏する。
【0011】
本発明の効果が奏される理由の詳細は明らかではないが、低温定着性を向上させる高軟化点の樹脂と低軟化点の樹脂及び低融点のワックスを含有するトナーの製造において、中間の軟化点を有する第三の樹脂を混合することで、軟化点の異なる樹脂同士の混和性がまず改善され、さらに、この中間の軟化点の樹脂の軟化点に近い融点のワックスを使用することで、両者の相溶性が向上し、それにより低融点のワックスの樹脂への相溶性も向上し、これらのワックスの樹脂への分散性も改善されると考えられる。これにより、二軸押出機等で溶融混練をする際、混練装置への原料供給速度を通常よりも高めることができ、粉砕粒子間の粒径や組成の偏りが抑制され、粗大粒子や微粉の生成が抑制されることにより、生産性が向上するものと推定される。
【0012】
[結着樹脂]
結着樹脂は、軟化点の異なる3種の樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3からなる。3種の樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3は、トナーの低温定着性を向上させる観点、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、非晶質樹脂であることが好ましい。
【0013】
樹脂R1の軟化点Tm(R1)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、145℃以上であり、148℃以上が好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、160℃以下であり、158℃以下が好ましく、152℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R1の軟化点Tm(R1)は、145〜160℃であり、好ましくは148〜158℃、より好ましくは148〜152℃である。
【0014】
樹脂R1のガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R1のガラス転移温度は、好ましくは50〜80℃であり、より好ましくは55〜75℃である。ガラス転移温度は、非晶質樹脂に特有の物性である。
【0015】
樹脂R2の軟化点Tm(R2)は、樹脂R1の軟化点Tm(R1)よりも低く、かつ樹脂R3の軟化点Tm(R3)よりも高いものであり、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、122℃以上であり、123℃以上が好ましく、125℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、145℃未満であり、143℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R2の軟化点Tm(R2)は、122℃以上145℃未満であり、好ましくは123〜143℃、より好ましくは125〜140℃、さらに好ましくは129〜135℃である。
【0016】
樹脂R2のガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、75℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R2のガラス転移温度は、好ましくは40〜75℃であり、より好ましくは50〜65℃である。
【0017】
樹脂R3の軟化点Tm(R3)は、樹脂R2の軟化点Tm(R2)よりも低いものであり、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、90℃以上であり、95℃以上が好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、122℃未満であり、115℃以下が好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R3の軟化点Tm(R3)は、90℃以上122℃未満であり、好ましくは95〜115℃である。
【0018】
樹脂R3のガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、70℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R3のガラス転移温度は、好ましくは40〜70℃であり、より好ましくは50〜65℃である。
【0019】
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、結着樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましいが、微粉を少なくする効果が損なわれない範囲において、ポリエステル以外の他の樹脂が含有されていてもよい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0020】
軟化点の異なる3種の樹脂、即ち樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3はいずれも非晶質ポリエステルであることが好ましく、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とを縮重合することにより得られる、非晶質ポリエステルであることがより好ましい。
【0021】
ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
【0022】
樹脂R1の吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R1の吸熱の最高ピーク温度は、好ましくは50〜80℃であり、より好ましくは60〜75℃である。
【0023】
樹脂R2の吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、45℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R2の吸熱の最高ピーク温度は、好ましくは45〜80℃であり、より好ましくは60〜70℃である。
【0024】
樹脂R3の吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、40℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、樹脂R3の吸熱の最高ピーク温度は、好ましくは40〜80℃であり、より好ましくは55〜70℃である。
【0025】
2価のアルコールとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(I):
【0027】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20の2価のアルコールとして、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0028】
アルコール成分としては、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらにより好ましい。
【0029】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0030】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜8)エステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0031】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜8)エステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0032】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0033】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がより好ましい。
【0034】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜1.0重量部がより好ましい。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0035】
軟化点の異なる3種のポリエステルは、軟化点を調整する以外は、前記のアルコール成分及びカルボン酸成分を用い、同様に縮重合させて得ることができる。軟化点を調整する方法として、例えば、反応時間により分子量を調整する方法が挙げられる。反応時間を長くすると軟化点は高くなり、短くすると低くなる傾向がある。
【0036】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0037】
樹脂R1の量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂中、10〜50重量%が好ましく、20〜40重量%がより好ましく、20〜30重量%がさらに好ましく、20〜25重量%がさらにより好ましい。なお、本明細書において、単に「量」といえば、含有量と配合量の両者を意味する。
【0038】
樹脂R2の量は、トナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂中、5〜50重量%が好ましく、15〜45重量%がより好ましく、25〜40重量%がさらに好ましく、25〜35重量%がさらにより好ましく、25〜30重量%がさらにより好ましい。
【0039】
樹脂R3の量は、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂中、20〜80重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましく、50〜60重量%がさらに好ましく、50〜55重量%がさらにより好ましい。
【0040】
樹脂R1と樹脂R2の重量比(樹脂R1/樹脂R2)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、15/85〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜75/25がさらに好ましく、35/65〜60/40がさらにより好ましく、40/60〜55/45がさらにより好ましい。
【0041】
樹脂R2と樹脂R3の重量比(樹脂R2/樹脂R3)は、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、5/95〜80/20が好ましく、15/85〜60/40がより好ましく、30/70〜55/45がさらに好ましく、32/68〜55/45がさらにより好ましく、32/68〜50/50がさらにより好ましい。
【0042】
樹脂R1と樹脂R3の重量比(樹脂R1/樹脂R3)は、トナーの低温定着性を向上させる観点、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、1/99〜90/10が好ましく、5/95〜70/30がより好ましく、15/85〜60/40がさらに好ましく、25/75〜50/50がさらにより好ましく、30/70〜43/57がさらにより好ましい。
【0043】
樹脂R1と樹脂R3の合計量と樹脂R2との重量比((樹脂R1+樹脂R3)/樹脂R2)は、トナーの低温定着性を向上させる観点、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、40/60〜90/10が好ましく、50/50〜80/20がより好ましく、55/45〜75/25がさらに好ましく、70/30〜75/25がさらにより好ましい。
【0044】
[ワックス]
ワックスは、融点の異なる少なくとも2種のワックスW2及びワックスW3を含有する。
【0045】
ワックスW2の融点Mp(W2)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、121℃以上であり、123℃以上が好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、138℃以下であり、137℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ワックスW2の融点Mp(W2)は、121〜138℃であり、好ましくは121〜137℃、より好ましくは123〜135℃である。
【0046】
ワックスW3の融点Mp(W3)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、70℃以上であり、73℃以上が好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、95℃以下であり、85℃以下が好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ワックスW3の融点Mp(W3)は、70〜95℃であり、好ましくは73〜85℃である。
【0047】
ワックスW2、W3としては、融点が上述の範囲にあるものであればよく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、2種以上を混合して含有されていても良い。ワックスW2としては、ポリプロピレンワックスが好ましく、ワックスW3としては、パラフィンワックス及びカルナウバワックスが好ましい。
【0048】
ワックスW2の量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5.0重量部がより好ましく、0.3〜1.5重量部がさらに好ましく、0.4〜1.0重量部がさらにより好ましい。
【0049】
ワックスW3の量は、トナーの低温定着性を向上させる観点、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1.0〜5.0重量部がより好ましく、1.0〜3.0重量部がさらに好ましく、1.2〜2.0重量部がさらにより好ましい。
【0050】
ワックスW2とワックスW3の重量比(ワックスW2/ワックスW3)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、5/95〜60/40が好ましく、10/90〜55/45がより好ましく、15/85〜50/50がさらに好ましく、20/80〜40/60がさらにより好ましく、20/80〜30/70がさらにより好ましい。
【0051】
ワックスW2とワックスW3の合計量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.6〜15重量部が好ましく、1.0〜10重量部がより好ましく、1.5〜6.0重量部がさらに好ましく、1.5〜2.5重量部がさらにより好ましい。
【0052】
さらに、上記ワックスW2とワックスW3に加えて、微粉を少なくする効果が損なわれない範囲において、融点が138℃を超えるワックスW1が含有されていてもよい。ワックスW1の融点は、138℃を超えて、150℃以下が好ましく、140〜145℃がより好ましい。ワックスW1としては、脂肪酸アミドワックスが好ましい。
【0053】
ワックスW1の量は、トナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5.0重量部以下がより好ましい。
【0054】
ワックスW1、W2及びW3の合計量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.6〜15重量部が好ましく、1.0〜10重量部がより好ましく、1.5〜6.0重量部がさらに好ましく、1.5〜2.5重量部がさらにより好ましい。
【0055】
[関係式]
トナーの微粉を少なくする観点から、樹脂R1〜R3の軟化点Tm(R1)、Tm(R2)及びTm(R3)は、式(1)及び(2):
Tm(R1)−Tm(R2)>5 (1)
Tm(R2)−Tm(R3)>20 (2)
を満たす。この関係を満たすことにより、溶融混練工程における樹脂R1と樹脂R3の混和性が樹脂R2により向上する。
【0056】
また、樹脂R2の軟化点Tm(R2)とワックスW2の融点Mp(W2)は、トナーの微粉を少なくする観点から、式(3):
Mp(W2)+13>Tm(R2)>Mp(W2)−10 (3)
を満たす。式(3)は、好ましくは
Mp(W2)+13>Tm(R2)>Mp(W2)−8
であり、より好ましくは
Mp(W2)+10>Tm(R2)>Mp(W2)−8
である。この関係を満たすことにより、樹脂R2とワックスW2の相溶性が向上し、これにより、ワックスW2及びワックスW3の、樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3からなる結着樹脂への分散性が向上する。
【0057】
さらに、Mp(W2)及びMp(W3)は、トナーの耐高温及び低温オフセット性を向上させる観点、トナーの画質耐久性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、式(4):
Mp(W2)−Mp(W3)>40 (4)
を満たすことが好ましい。式(4)は、より好ましくは
Mp(W2)−Mp(W3)>45
であり、さらに好ましくは
Mp(W2)−Mp(W3)>50
であり、さらにより好ましくは
Mp(W2)−Mp(W3)>55
である。
【0058】
本発明の方法により得られるトナーは、さらに、着色剤、荷電制御剤等を含有していてもよい。
【0059】
[着色剤]
本発明において、着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。本発明の方法は、生産性を高くすることができる観点から、高い生産量を必要とする黒色トナーの製造に用いることが好ましい。同様の観点から、着色剤にカーボンブラックを用いることが好ましい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0060】
[荷電制御剤]
荷電制御剤として、負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれも用いることができる。
【0061】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、ベンジル酸ホウ素錯体等が挙げられる。含金属アゾ染料としては、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-28」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体としては、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-82」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-85」(以上、オリエント化学工業社製)等が挙げられる。ベンジル酸ホウ素錯体としては、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0062】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。ニグロシン染料としては、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等が挙げられる。トリフェニルメタン系染料としては、例えば3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料が挙げられる。4級アンモニウム塩化合物としては、例えば「ボントロンP-51」、「ボントロンP-52」(以上、オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」「COPY CHARGE PSY」(以上、クラリアント社製)等が挙げられる。ポリアミン樹脂としては、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等が挙げられる。イミダゾール誘導体としては、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
【0063】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.2〜5重量部が好ましい。
【0064】
本発明では、トナー材料として、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0065】
<トナーの製造方法>
本発明の方法は、結着樹脂とワックスを含有する混合物を、二軸混練機で、供給量を軸の単位断面積あたり1.3〜5.0kg/hr・cm
2で溶融混練する工程を含む。該溶融混練工程の後、さらに、粉砕工程及び分級工程を含むことが好ましい。
【0066】
結着樹脂、ワックスを含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0067】
二軸混練機とは、二本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機であり、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、軸の回転方向が同方向に回転できるタイプが好ましい。市販品としては、生産性を向上させる観点から高速での二軸の噛み合わせが良好な、池貝鉄工社製二軸押出機PCMシリーズが好ましい。
【0068】
二軸混練機への混合物の供給量は、生産性を向上させる観点から、軸の単位断面積あたり1.3kg/hr・cm
2以上であり、1.5kg/hr・cm
2以上が好ましく、2.0kg/hr・cm
2以上がより好ましい。また、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、及びトナーの微粉を少なくする観点から、軸の単位断面積あたり5.0kg/hr・cm
2以下であり、4.5kg/hr・cm
2以下が好ましく、4.0kg/hr・cm
2以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、二軸混練機への混合物の供給量は、1.3〜5.0kg/hr・cm
2であり、好ましくは1.5〜4.5kg/hr・cm
2、より好ましくは2.0〜4.0kg/hr・cm
2である。
【0069】
二軸混練機での溶融混練は、バレル設定温度(混練機内部壁面の温度)、二軸の軸回転の周速、及び原料供給速度を調整することで行う。バレル設定温度は、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、及び生産性を向上させる観点から、80〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。
【0070】
二軸の軸回転の周速は、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、及び生産性を向上させる観点から、0.1〜1m/secが好ましい。
【0071】
得られた樹脂混練物は、粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕し、分級する。
【0072】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、樹脂混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕、分級工程時の生産性を向上させるために、樹脂混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0073】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
【0074】
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
【0075】
分級工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0076】
本発明におけるトナーは、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子をトナー母粒子として、さらにシリカ等の無機微粒子や、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂微粒子等の外添剤と混合する工程を含む方法により得られるものであってもよい。
【0077】
粉砕物や分級工程後に得られたトナー粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を有する攪拌装置を用いることが好ましく、より好適な攪拌装置として、ヘンシェルミキサーが挙げられる。
【0078】
本発明の方法により得られるトナーは、微粉が少ないという特徴を有する。本発明において、微粉量は、微粉砕物中の3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量で表され、45個数%以下である時を「微粉が少ない」とする。微粉量は少ない方が好ましく、38個数%以下がより好ましい。微粉量が少ない方が、ワックス、着色剤、荷電制御剤等の結着樹脂中での分散性が向上していることを示しており、また、微粉砕後の分級工程が効率よく行えることで、生産性を向上させる観点から好ましい。
【0079】
本発明の方法により得られるトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【0080】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の製造方法、或いは使用を開示する。
【0081】
<1> 結着樹脂とワックスを含有する混合物を二軸混練機で溶融混練する工程を含む、トナーの製造方法であって、
前記結着樹脂が、軟化点の異なる3種の樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3からなり、
樹脂R1の軟化点Tm(R1)が145〜160℃、樹脂R2の軟化点Tm(R2)が122℃以上145℃未満、樹脂R3の軟化点Tm(R3)が90℃以上122℃未満であり、
前記ワックスが、融点の異なる少なくとも2種のワックスW2及びワックスW3を含有し、
ワックスW2の融点Mp(W2)が121〜138℃、ワックスW3の融点Mp(W3)が70〜95℃であり、
Tm(R1)、Tm(R2)、Tm(R3)及びMp(W2)が、式(1)〜(3):
Tm(R1)−Tm(R2)>5 (1)
Tm(R2)−Tm(R3)>20 (2)
Mp(W2)+13>Tm(R2)>Mp(W2)−10 (3)
を満たし、
二軸混練機への混合物の供給量が軸の単位断面積あたり1.3〜5.0kg/hr・cm
2である、トナーの製造方法である。
【0082】
<2> Mp(W2)及びMp(W3)が式(4):
Mp(W2)−Mp(W3)>40 (4)
を満たし、式(4)は、より好ましくは
Mp(W2)−Mp(W3)>45
であり、さらに好ましくは
Mp(W2)−Mp(W3)>50
であり、さらにより好ましくは
Mp(W2)−Mp(W3)>55
である、前記<1>に記載のトナーの製造方法。
【0083】
<3> 樹脂R1、樹脂R2及び樹脂R3がいずれも非晶質ポリエステルである、前記<1>又は<2>に記載のトナーの製造方法。
【0084】
<4> 樹脂R2の軟化点Tm(R2)は、123℃以上が好ましく、125℃以上がより好ましく、143℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、123〜143℃が好ましく、125〜140℃がより好ましく、129〜135℃がさらに好ましい、前記<1>〜<3>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0085】
<5> ワックスW2の融点Mp(W2)は、123℃以上が好ましく、137℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、121〜137℃が好ましく、123〜135℃がより好ましい、前記<1>〜<4>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0086】
<6> 樹脂R2の軟化点Tm(R2)とワックスW2の融点Mp(W2)は、好ましくは
Mp(W2)+13>Tm(R2)>Mp(W2)−8
であり、より好ましくは
Mp(W2)+10>Tm(R2)>Mp(W2)−8
である、前記<1>〜<5>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0087】
<7> 樹脂R1と樹脂R2の重量比(樹脂R1/樹脂R2)は、15/85〜90/10であり、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜75/25がさらに好ましく、35/65〜60/40がさらにより好ましく、40/60〜55/45がさらにより好ましい、前記<1>〜<6>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0088】
<8> 樹脂R2と樹脂R3の重量比(樹脂R2/樹脂R3)は、5/95〜80/20であり、15/85〜60/40がより好ましく、30/70〜55/45がさらに好ましく、32/68〜55/45がさらにより好ましく、32/68〜50/50がさらにより好ましい、前記<1>〜<7>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0089】
<9> 樹脂R1と樹脂R3の重量比(樹脂R1/樹脂R3)は、1/99〜90/10であり、5/95〜70/30がより好ましく、15/85〜60/40がさらに好ましく、25/75〜50/50がさらにより好ましく、30/70〜43/57がさらにより好ましい、前記<1>〜<8>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0090】
<10> 樹脂R1と樹脂R3の合計量と樹脂R2との重量比((樹脂R1+樹脂R3)/樹脂R2)は、40/60〜90/10であり、50/50〜80/20がより好ましく、55/45〜75/25がさらに好ましく、70/30〜75/25がさらにより好ましい、前記<1>〜<9>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0091】
<11> 樹脂R2の量は、結着樹脂中、5〜50重量%であり、15〜45重量%がより好ましく、25〜40重量%がさらに好ましく、25〜35重量%がさらにより好ましく、25〜30重量%がさらにより好ましい、前記<1>〜<10>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0092】
<12> ワックスW2の量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、0.2〜5.0重量部がより好ましく、0.3〜1.5重量部がさらに好ましく、0.4〜1.0重量部がさらにより好ましい、前記<1>〜<11>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0093】
<13> ワックスW2とワックスW3の重量比(ワックスW2/ワックスW3)は、5/95〜60/40であり、10/90〜55/45がより好ましく、15/85〜50/50がさらに好ましく、20/80〜40/60がさらにより好ましく、20/80〜30/70がさらにより好ましい、前記<1>〜<12>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0094】
<14> 樹脂R3の軟化点Tm(R3)は、95℃以上が好ましく、115℃以下が好ましく、95〜115℃が好ましい、前記<1>〜<13>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0095】
<15> 樹脂R1の軟化点Tm(R1)は、148℃以上が好ましく、158℃以下が好ましく、152℃以下がより好ましく、148〜158℃が好ましく、148〜152℃がより好ましい、前記<1>〜<14>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0096】
<16> ワックスW3の融点Mp(W3)は、73℃以上が好ましく、85℃以下が好ましく、73〜85℃が好ましい、前記<1>〜<15>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0097】
<17> 融点が138℃を超えて、150℃以下であり、好ましくは140〜145℃であるワックスW1を含有する、前記<1>〜<16>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0098】
<18> 非晶質ポリエステルが、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とを縮重合することにより得られ、前記アルコール成分が、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは実質的に100モル%含有する非晶質ポリエステルである、前記<3>〜<17>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0099】
<19> 樹脂R1のガラス転移温度は、50〜80℃であり、55℃以上がより好ましく、75℃以下がより好ましく、55〜75℃がより好ましい、前記<1>〜<18>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0100】
<20> 樹脂R2のガラス転移温度は、40〜75℃であり、50℃以上がより好ましく、65℃以下がより好ましく、50〜65℃より好ましい、前記<1>〜<19>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0101】
<21> 樹脂R3のガラス転移温度は、40〜70℃であり、50℃以上がより好ましく、65℃以下がより好ましく、50〜65℃がより好ましい、前記<1>〜<20>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0102】
<22> 樹脂R1の吸熱の最高ピーク温度は、50〜80℃であり、60℃以上がより好ましく、75℃以下がより好ましく、60〜75℃がより好ましい、前記<1>〜<21>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0103】
<23> 樹脂R2の吸熱の最高ピーク温度は、45〜80℃であり、60℃以上がより好ましく、70℃以下がより好ましく、60〜70℃がより好ましい、前記<1>〜<22>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0104】
<24> 樹脂R3の吸熱の最高ピーク温度は、40〜80℃であり、55℃以上がより好ましく、70℃以下がより好ましく、55〜70℃がより好ましい、前記<1>〜<23>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0105】
<25> 樹脂R1の量は、結着樹脂中、10〜50重量%であり、20〜40重量%がより好ましく、20〜30重量%がさらに好ましく、20〜25重量%がさらにより好ましい、前記<1>〜<24>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0106】
<26> 樹脂R3の量は、結着樹脂中、20〜80重量%であり、30〜70重量%がより好ましく、50〜60重量%がさらに好ましく、50〜55重量%がさらにより好ましい、前記<1>〜<25>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0107】
<27> ワックスW3の量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部であり、1.0〜5.0重量部がより好ましく、1.0〜3.0重量部がさらに好ましく、1.2〜2.0重量部がさらにより好ましい、前記<1>〜<26>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0108】
<28> ワックスW2及びW3の合計量は、結着樹脂100重量部に対して、0.6〜15重量部であり、1.0〜10重量部がより好ましく、1.5〜6.0重量部がさらに好ましく、1.5〜2.5重量部がさらにより好ましい、前記<1>〜<27>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0109】
<29> ワックスW1、W2及びW3の合計量は、結着樹脂100重量部に対して、0.6〜15重量部であり、1.0〜10重量部がより好ましく、1.5〜6.0重量部がさらに好ましく、1.5〜2.5重量部がさらにより好ましい、前記<1>〜<28>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0110】
<30> 二軸混練機への混合物の供給量は、軸の単位断面積あたり、1.5kg/hr・cm
2以上が好ましく、2.0kg/hr・cm
2以上がより好ましく、4.5kg/hr・cm
2以下が好ましく、4.0kg/hr・cm
2以下がより好ましく、1.5〜4.5kg/hr・cm
2が好ましく、2.0〜4.0kg/hr・cm
2がより好ましい、前記<1>〜<29>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0111】
<31> 二軸混練機で溶融混練する工程において、バレル設定温度は、80〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい、前記<1>〜<30>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0112】
<32> 二軸混練機で溶融混練する工程において、二軸の軸回転の周速は、0.1〜1m/secが好ましい、前記<1>〜<31>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0113】
<33> ワックスW2が、ポリプロピレンワックスであり、ワックスW3が、パラフィンワックス又はカルナウバワックスである、前記<1>〜<32>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0114】
<34> ワックスW1が、脂肪酸アミドワックスである、前記<17>〜<33>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0115】
<35> トナーが黒色トナーである、前記<1>〜<34>のいずれか記載のトナーの製造方法。
【0116】
<36> 黒色トナーの着色剤がカーボンブラックである、前記<35>に記載のトナーの製造方法。
【0117】
<37> 着色剤の含有量が、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい、前記<36>に記載のトナーの製造方法。
【0118】
<38> 前記<1>〜<37>に記載のトナーの製造方法により得られる電子写真用トナー。
【実施例】
【0119】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0120】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/minで測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0121】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0122】
〔ワックスの融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで測定し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0123】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0124】
樹脂製造例1〔樹脂A、H〕
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及び重合禁止剤を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて反応させた。さらに210℃にて無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させた後、40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、表1に示す物性を有する非晶質ポリエステルを得た。
【0125】
樹脂製造例2〔樹脂B、D、E、F、G、J、K〕
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及び触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃で4時間かけて反応させた。さらに210℃にて無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応させて、表1に示す物性を有する非晶質ポリエステルを得た。
【0126】
樹脂製造例3〔樹脂C、I〕
表1に示す原料モノマー及び触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で3時間かけて反応させた後、40kPaに減圧を行い、所望の軟化点に達するまで反応させて、表1に示す物性を有する非晶質ポリエステルを得た。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例及び比較例に用いたワックスの融点を表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
実施例1〜19、比較例1〜11
表3、4に示す所定量の結着樹脂及びワックス、カーボンブラック「Regal 330」(キャボット社製)4.0重量部、及び荷電制御剤「T-77」(保土谷化学工業社製)0.5重量部をヘンシェルミキサーにて混合した。得られた混合物を同方向回転二軸押出機PCM-30(池貝鉄工社製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm
2)を使用して、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)にて、混合物供給速度 10kg/hr(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/hr・cm
2)の条件で溶融混練を行い、樹脂混練物を得た。
【0131】
得られた樹脂混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン社製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物をDS2型気流分級機(日本ニューマチック社製)を用いて体積中位粒径が8.0μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕を行なった。得られた微粉砕物をDSX2型気流分級機(日本ニューマチック社製)を用いて体積中位粒径が8.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、トナーを得た。
【0132】
実施例20
実施例1において、二軸押出機への混合物供給速度を20kg/hr(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 2.83kg/hr・cm
2)とした以外は、実施例1と同様の条件で溶融混練を行い、樹脂混練物を得た。
得られた樹脂混練物を実施例1と同様に粗粉砕、微粉砕を行い、分級処理してトナーを得た。
【0133】
実施例21
実施例1において、同方向回転二軸押出機PCM-45(池貝鉄工社製、軸の直径 4.4cm、軸の断面積 15.9cm
2)を使用して、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.46m/sec)、混合物供給速度 50kg/hr(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 3.14kg/hr・cm
2)とした以外は、実施例1と同様の条件で溶融混練を行い、樹脂混練物を得た。
得られた樹脂混練物を実施例1と同様に粗粉砕、微粉砕を行い、分級処理してトナーを得た。
【0134】
実施例22
実施例1において、同方向回転二軸押出機PCM-63(池貝鉄工社製、軸の直径 6.2cm、軸の断面積 31.2cm
2)を使用して、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.65m/sec)、混合物供給速度 120kg/hr(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 3.85kg/hr・cm
2)とした以外は、実施例1と同様の条件で溶融混練を行い、樹脂混練物を得た。
得られた樹脂混練物を実施例1と同様に粗粉砕、微粉砕を行い、分級処理してトナーを得た。
【0135】
試験例
下記の方法により、微粉砕物中の3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)を測定した。
【0136】
測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させて分散液を得る。
分散条件:前記分散液5mLに、微粉砕物10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から、3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)を求める。数値の小さい方が、微粉量が少ないことを示す。
【0137】
実施例1〜22及び比較例1〜11の各トナーについて、上記の方法により微粉砕物中の3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)を測定した。結果を表3〜表5に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
以上の結果より、比較例1〜11と対比して、実施例1〜22のトナーは、微粉砕物の3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)が少ないことから、微粉が少ないトナーであることが分かる。また、表5より、生産性を高めるため混練機への原料供給速度を高めた場合にも、3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)が少ないことから、微粉が少ないトナーであることが分かる。