特許第5965289号(P5965289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965289
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】リモートプラズマCVD装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/505 20060101AFI20160721BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C23C16/505
   H01L21/31 C
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-236051(P2012-236051)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-84516(P2014-84516A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅充
(72)【発明者】
【氏名】陣田 敏行
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−167596(JP,A)
【文献】 特開昭60−030123(JP,A)
【文献】 特開2008−140945(JP,A)
【文献】 特開平11−293469(JP,A)
【文献】 特開平07−254566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室と連通する成膜処理室と、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室の間に配置されて、プラズマ状態のガスの通過を妨げ、ラジカル成分のガスを通過させる、プラズマ分離用のシールド部材と、
プラズマ発生室にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス導入部と、
成膜処理室に成膜用原料ガスを供給する成膜用原料ガス導入部とを備え、
未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するシールド部材供給部と、
使用済みのシールド部材を回収して収容するシールド部材回収部とを備え
前記シールド部材供給部は前記成膜処理室内若しくはプラズマ生成室内に配置されており、
前記シールド部材供給部を覆う隔離板が配置されている
リモートプラズマCVD装置。
【請求項2】
プラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室と連通する成膜処理室と、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室の間に配置されて、プラズマ状態のガスの通過を妨げ、ラジカル成分のガスを通過させる、プラズマ分離用のシールド部材と、
プラズマ発生室にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス導入部と、
成膜処理室に成膜用原料ガスを供給する成膜用原料ガス導入部とを備え、
未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するシールド部材供給部と、
使用済みのシールド部材を回収して収容するシールド部材回収部とを備え、
前記シールド部材供給部は前記成膜処理室内若しくはプラズマ生成室内に配置されており、
前記シールド部材供給部を覆う箱体を備え、
当該箱体には未使用のシールド部材を通過させる開口部が設けられている、
請求項1に記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項3】
前記シールド部材供給部を覆う箱体には与圧ガス導入部が備えられ、
当該箱体内の圧力が当該箱体の外側の圧力よりも高く設定されている、
請求項2に記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項4】
前記シールド部材回収部を覆う箱体を備え、
当該箱体には使用済みのシールド部材を通過させる開口部が設けられ、
当該箱体内にクリーニング用ガスを供給するクリーニング用ガス導入部を備え、
当該箱体内に前記使用済みのシールド部材と所定の間隔を隔てた位置に放電用電極を備え
前記放電用電極には高周波が印加されており、
当該箱体には、排気用ポートが備えられ、
当該箱体内の圧力が、当該箱体の外側の圧力と同じ又は当該箱体の外側の圧力よりも低く設定されている、
請求項2又は請求項3に記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項5】
前記シールド部材供給部を覆う箱体にクリーニング用ガスを供給するクリーニング用ガス導入部を備え、
当該箱体内には、前記未使用のシールド部材と所定の間隔を隔てた位置に放電用電極を備え、
当該放電用電極が高周波印加部に接続されており、
当該箱体内部には、排気用ポートが備えられ、
当該箱体内の圧力が、当該箱体の外側の圧力と同じ又は当該箱体の外側の圧力よりも低く設定されている、
請求項4に記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室との間には、開口部を有する隔壁が備えられ、
前記開口部の外側には、前記開口部を跨ぐ位置に一対で配置された搬送ローラを備え、
前記シールド部材は、前記一対の搬送ローラに押し当てられることでアース接地される、
請求項1〜5のいずれかに記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項7】
前記シールド部材が、導電性材料を複数列に並べて配置されており、
前記複数列に並べられたシールド部材の未使用部分を前記シールド部材供給部から繰り出しながら、
前記複数列に並べられたシールド部材の使用済み部分を前記シールド部材回収部で回収する、
請求項1〜6のいずれかに記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項8】
前記シールド部材が、導電性材料を網状の平板で構成されている、
請求項7に記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項9】
プラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室と連通する成膜処理室と、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室の間に配置されて、プラズマ状態のガスの通過を妨げ、ラジカル成分のガスを通過させる、プラズマ分離用のシールド部材と、
プラズマ発生室にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス導入部と、
成膜処理室に成膜用原料ガスを供給する成膜用原料ガス導入部とを備え、
未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するシールド部材供給部と、
使用済みのシールド部材を回収して収容するシールド部材回収部とを備え、
前記シールド部材が、1本のワイヤーを複数回、折り返し配置して構成されており、
前記シールド部材供給部からは前記1本のワイヤーの未使用部分が繰り出され、前記シールド部材回収部では前記1本のワイヤーの使用済み部分が回収される、
リモートプラズマCVD装置。
【請求項10】
前記シールド部材が、1本のワイヤーを複数回、折り返し配置して構成されており、
前記シールド部材供給部からは前記1本のワイヤーの未使用部分が繰り出され、前記シールド部材回収部では前記1本のワイヤーの使用済み部分が回収される、
請求項1〜のいずれかに記載のリモートプラズマCVD装置。
【請求項11】
前記シールド部材が、ワイヤーを交差させて格子状にしたもので構成されている、
請求項9または請求項10に記載のリモートプラズマCVD装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リモートプラズマCVD装置に用いられるシールド部材の交換機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板やプラスチックフィルムなどの成膜対象物の表面に半導体化合物やシリコン化合物などの薄膜を形成するために、プラズマCVD装置が用いられている。さらに、プラズマダメージを低減するために、リモートプラズマCVDと呼ばれる技術が用いられている。リモートプラズマCVD装置では、プラズマ発生室で発生した反応ガスの内、ラジカル成分のみを通過させ、それ以外の電子やイオンをプラズマチャンバー内に封じ込めるために、シールド部材(メッシュプレートとも呼ぶ)が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、チャンバ内壁全体をドライクリーニング可能にした、リモートプラズマCVD装置も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平621393号公報
【特許文献2】特開平11−162967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リモートプラズマCVD装置では、成膜対象物に成膜物質による薄膜が形成されるのと同様に、シールド部材の表面にも成膜物質が徐々に蓄積される。そして、リモートプラズマCVD装置を長時間稼働し続け、シールド部材に薄膜形成用材料が蓄積し続けると、シールド部材の開口部面積が減少し、ラジカル成分のガスの通過レートが低下し、所定時間当たりに成膜できる膜厚が薄くなる。
【0006】
そのため、シールド部材を定期的に交換する必要があるが、シールド部材を交換する時は、チャンバーを大気開放し、成膜作業を中断しなければならず、シールド部材の交換頻度が多いことから、装置稼働率が上がらない要因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、リモートプラズマCVD装置において、シールド部材の交換のために大気開放する頻度を少なくし、装置稼働率を上げることを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
プラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室と連通する成膜処理室と、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室の間に配置されて、プラズマ状態のガスの通過を妨げ、ラジカル成分のガスを通過させる、プラズマ分離用のシールド部材と、
プラズマ発生室にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス導入部と、
成膜処理室に成膜用原料ガスを供給する成膜用原料ガス導入部とを備え、
未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するシールド部材供給部と、
使用済みのシールド部材を回収して収容するシールド部材回収部とを備え
前記シールド部材供給部は前記成膜処理室内若しくはプラズマ生成室内に配置されており、
前記シールド部材供給部を覆う隔離板が配置されている
リモートプラズマCVD装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
プラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室と連通する成膜処理室と、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室の間に配置されて、プラズマ状態のガスの通過を妨げ、ラジカル成分のガスを通過させる、プラズマ分離用のシールド部材と、
プラズマ発生室にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス導入部と、
成膜処理室に成膜用原料ガスを供給する成膜用原料ガス導入部とを備え、
未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するシールド部材供給部と、
使用済みのシールド部材を回収して収容するシールド部材回収部とを備え、
前記シールド部材供給部は前記成膜処理室内若しくはプラズマ生成室内に配置されており、
前記シールド部材供給部を覆う箱体を備え、
当該箱体には未使用のシールド部材を通過させる開口部が設けられている、
リモートプラズマCVD装置。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
前記シールド部材供給部を覆う箱体には与圧ガス導入部が備えられ、
当該箱体内の圧力が当該箱体の外側の圧力よりも高く設定されている、
請求項2に記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
前記シールド部材回収部を覆う箱体を備え、
当該箱体には使用済みのシールド部材を通過させる開口部が設けられ、
当該箱体内にクリーニング用ガスを供給するクリーニング用ガス導入部を備え、
当該箱体内に前記使用済みのシールド部材と所定の間隔を隔てた位置に放電用電極を備え
前記放電用電極には高周波が印加されており、
当該箱体には、排気用ポートが備えられ、
当該箱体内の圧力が、当該箱体の外側の圧力と同じ又は当該箱体の外側の圧力よりも低く設定されている、
請求項2又は請求項3に記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
前記シールド部材供給部を覆う箱体にクリーニング用ガスを供給するクリーニング用ガス導入部を備え、
当該箱体内には、前記未使用のシールド部材と所定の間隔を隔てた位置に放電用電極を備え、
当該放電用電極が高周波印加部に接続されており、
当該箱体内部には、排気用ポートが備えられ、
当該箱体内の圧力が、当該箱体の外側の圧力と同じ又は当該箱体の外側の圧力よりも低く設定されている、
請求項4に記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室との間には、開口部を有する隔壁が備えられ、
前記開口部の外側には、前記開口部を跨ぐ位置に一対で配置された搬送ローラを備え、
前記シールド部材は、前記一対の搬送ローラに押し当てられることでアース接地される、
請求項1〜5のいずれかに記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、
前記シールド部材が、導電性材料を複数列に並べて配置されており、
前記複数列に並べられたシールド部材の未使用部分を前記シールド部材供給部から繰り出しながら、
前記複数列に並べられたシールド部材の使用済み部分を前記シールド部材回収部で回収する、
請求項1〜6のいずれかに記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、
前記シールド部材が、導電性材料を網状の平板で構成されている、
請求項7に記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、
プラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室と連通する成膜処理室と、
前記プラズマ発生室と前記成膜処理室の間に配置されて、プラズマ状態のガスの通過を妨げ、ラジカル成分のガスを通過させる、プラズマ分離用のシールド部材と、
プラズマ発生室にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス導入部と、
成膜処理室に成膜用原料ガスを供給する成膜用原料ガス導入部とを備え、
未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するシールド部材供給部と、
使用済みのシールド部材を回収して収容するシールド部材回収部とを備え、
前記シールド部材が、1本のワイヤーを複数回、折り返し配置して構成されており、
前記シールド部材供給部からは前記1本のワイヤーの未使用部分が繰り出され、前記シールド部材回収部では前記1本のワイヤーの使用済み部分が回収される、
リモートプラズマCVD装置である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、
前記シールド部材が、1本のワイヤーを複数回、折り返し配置して構成されており、
前記シールド部材供給部からは前記1本のワイヤーの未使用部分が繰り出され、前記シールド部材回収部では前記1本のワイヤーの使用済み部分が回収される、
請求項1〜のいずれかに記載のリモートプラズマCVD装置である。
【0018】
請求項11に記載の発明は、
前記シールド部材が、ワイヤーを交差させて格子状にしたもので構成されている、
請求項9または請求項10に記載のリモートプラズマCVD装置である。

【発明の効果】
【0019】
リモートプラズマCVD装置において、シールド部材の交換のために大気開放する頻度を少なくし、装置稼働率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を具現化する形態の一例を示す側面図である。
図2】本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図である。
図3】本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図である。
図4】本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図である。
図5】本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図である。
図6】本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図である。
図7】本発明に用いられるシールド部材を具現化する一例を示す平面図である。
図8】本発明に用いられるシールド部材を具現化する別の一例を示す平面図である。
図9】本発明に用いられるシールド部材を具現化する別の一例を示す平面図である。
図10】本発明に用いられるシールド部材を具現化する別の一例を示す平面図である。
図11】本発明に用いられるシールド部材を具現化する別の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明を具現化する形態の一例を示す側面図である。
本発明にかかるプラズマCVD装置1(つまり、リモートプラズマCVD装置)は、プラズマ発生室2と、成膜処理室3と、シールド部材4と、プラズマ発生用原料ガス導入部21と、成膜用原料ガス導入部31と、シールド部材供給部41と、シールド部材回収部45とを備えている。
【0022】
プラズマ発生室2は、内部にプラズマ状態のガスG2を発生させるものである。
プラズマ発生室2の内部を減圧状態にし、内部に高周波を印可し、外部からプラズマ発生用原料ガスG1を導入することで、内部にプラズマ状態のガスG2を発生させている。
具体的には、プラズマ発生室2は、堅牢な箱体20で構成され、箱体20の上部には開口部Hが設けられている。
【0023】
さらに、プラズマ発生室2には、プラズマ発生用原料ガス導入部21と、高周波発生部22とを備えている。
プラズマ発生用原料ガス導入部21は、プラズマ発生室2の箱体20内にプラズマ発生用原料ガスG1を供給するものである。
【0024】
高周波発生部22は、プラズマ発生室2の箱体20内にプラズマを発生させるものである。このため、プラズマ発生室2では、プラズマ発生用原料ガスG1として、例えば酸素ガスを外部から導入することで、箱体20内部がプラズマ状態となり、酸素分子が活性化しラジカル成分が発生する。また、酸素イオンが発生すると共に、電子が放出される。
【0025】
成膜処理室3は、プラズマ発生室2で発生させたガスの内、詳細を後述するラジカル成分のガスG3と、成膜用原料ガスG4とを反応させて、成膜対象物となる基板Kに成膜Aを行うものである。
具体的には、成膜処理室3は、堅牢な箱体30で構成され、箱体30の下部には開口部Hが設けられている。さらに、成膜処理室3の箱体30には、成膜用原料ガス導入部31と、基板保持台32と、ロードロックゲート33と、真空ポンプ35とを備えている。
【0026】
成膜用原料ガス導入部31は、成膜処理室3の箱体30内に成膜用原料ガスを供給するものである。
基板保持台32は、基板Kを保持するものである。
ロードロックゲート33は、基板Kの出し入れのために開閉を行うものである。矢印34に示す方向に基板Kが移動し、受け渡しされる。
【0027】
なお、プラズマ発生室2と成膜処理室3とは連通しており、成膜処理室3には真空ポンプ35が接続されている。真空ポンプ35は、成膜処理室3並びにプラズマ発生室2の内部を減圧状態にするものである。
【0028】
シールド部材4は、プラズマ分離用として用いられるものであり、プラズマ発生室2で発生したプラズマ状態のガスG2が、直接、成膜処理室3側に流出しないようにするものである。具体的には、シールド部材4は、細い金属ワイヤーが複数並べられたものや、金網状のもので構成され、連通するプラズマ発生室2と成膜処理室3の間、つまり開口部H付近に配置されている。さらに、シールド部材4は、シールド部材供給部41の巻出用ローラ42や、シールド部材回収部45の巻取用ローラ46を通じてアース接地されている。そのため、イオン化したガスや電子はメッシュを通り抜けることができず、一方、電気的に中性なラジカル成分のガスG3が、シールド部材4を通過し、成膜処理室3内に流入する。
【0029】
成膜処理室3内では、ラジカル成分のガスG3と、成膜用原料ガス導入部31から導入されたガスG4とが反応し、所望の成膜Aが基板Kに堆積される。
【0030】
このとき、プラズマ発生用原料ガスG1を酸素とし、成膜用原料ガスG4をHMDS(ヘキサメチルジシラザン)とすれば、成膜Aとして酸化シリコン(SiO)が生成される。
【0031】
[巻出・巻取機構]
シールド部材4は、シールド部材供給部41から供給され、シールド部材回収部45にて回収される。
シールド部材供給部41は、未使用のシールド部材を予め収容し必要に応じて供給するものである。具体的には、巻出用ローラ42に予め未使用のシールド部材を巻き付けて収容し、必要に応じて未使用のシールド部材を巻き出して供給するようにしておく。
シールド部材回収部45は、使用済みのシールド部材を回収して収容するものである。
具体的には、巻取用ローラ46に使用済みのシールド部材を巻き付けて収容し、必要に応じて使用済みのシールド部材を巻き取って回収するようにしておく。
【0032】
なお、図1ではシールド部材4、シールド部材供給部41、シールド部材回収部45が成膜処理室3の箱体30内に配置されている形態を例示したが、上述の形態においては、シールド部材4等が、プラズマ発生室2の箱体20内に配置されていても良い。
【0033】
[別の一例]
図2は、本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図であり、上述の形態とは異なる別の一例を示している。図2に示す形態のプラズマCVD装置1bは、上述したプラズマCVD装置1をベースとしつつ、シールド部材供給部41が成膜処理室3の箱体30内に配置されている例である。さらに、シールド部材供給部41を覆う隔離板が、シールド部材供給部41と基板Kとの間に配置されている。この形態あれば、隔離板43が、成膜Aによる堆積物が基板Kのみならず未使用のシールド部材にも付着することを防止する。そのため、シールド部材4の交換頻度を減らすことができるので、装置稼働率を上げることができる。
【0034】
なお、本発明を具現化するにあたって、シールド部材供給部41とシールド部材回収部45とをプラズマ発生室2の箱体20側に配置した形態としても良い。この形態の場合、図2に示した様な、シールド部材供給部41が成膜処理室3の箱体30内に配置されている例と比べて、未使用のシールド部材4に成膜Aが付着する量は少ない。しかし、成膜用原料ガスG4が僅かではあるが、シールド部材4を通過することもあり、シールド部材供給部41をプラズマ発生室2の箱体20側に配置した場合であっても、未使用のシールド部材4に成膜Aが付着する可能性がある。そのため、さらにシールド部材供給部41を覆う隔離板を配置しておくことが好ましい。そうすることで、未使用のシールド部材4に成膜Aが付着するのを防ぐことができる。
【0035】
[別の一例]
図3は、本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図であり、上述の形態とは異なる別の一例を示している。図3に示す形態のプラズマCVD装置1cは、上述したプラズマCVD装置1をベースとしつつ、シールド部材供給部41が成膜処理室3の箱体30内に配置されている例である。さらに、シールド部材供給部41を覆う箱体44を備え、箱体44には、未使用のシールド部材を通過させる開口部44hが設けられている。この形態であれば、箱体44が、シールド部材供給部4を全体的に覆うため、ラジカル成分のガスG3と成膜用原料ガスG4の回り込みによって未使用のシールド部材に成膜Aが付着することを防止する。そのため、シールド部材4の交換頻度をさらに減らすことができるので、装置稼働率をさらに上げることができる。
【0036】
なお、箱体44の開口部44hの形状は、未使用のシールド部材が通過するのに十分であって、極力狭いこと、例えば、未使用のシールド部材の幅と厚み分の開口部寸法であることが好ましい。そうすれば、箱体44内部に成膜Aが堆積するのを防ぐこともできる。さらに、この形態において、箱体44の内部に搬送ローラ48aを、巻取用ローラ46側に搬送ローラ48bを配置し、シールド部材4と、開口部44hとの隙間を所定間隔に規制できるようにしても良い。そうすれば、開口部44hと未使用のシールド部材との擦れがなく、開口部の摩耗を防ぐことができる。そのため、開口部44hからラジカル成分のガスG3と成膜用原料ガスG4の流入を防ぎ、未使用のシールド部材4に成膜Aが付着するのを防ぐ効果を長く維持することができる。
【0037】
また、本発明を具現化するにあたって、シールド部材供給部41,箱体44,搬送ローラ48及びシールド部材回収部45をプラズマ発生室2の箱体20側に配置した形態としても良い。
【0038】
[別の一例]
図4は、本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図であり、上述の形態とは異なる別の一例を示している。図4に示す形態のプラズマCVD装置1dは、上述したプラズマCVD装置1cをベースとしつつ、シールド部材供給部41を覆う箱体44には、与圧ガス導入部24が備えられている。さらに箱体44内の圧力が、箱体44の外側の圧力(図4の形態であれば、成膜処理室3内の圧力)よりも高く設定されている。
【0039】
なお、箱体44内の圧力を、箱体44の外側の圧力よりも高く設定する具体的手段として、下記が例示できる。
1)与圧ガス導入部24は、プラズマ発生用原料ガス導入部21から分岐させ、プラズマ発生用原料ガスG1を供給する。箱体44は開口部44hのみが出口であり、箱体44の外側は、真空ポンプ35で減圧されている。そのため、箱体44内の圧力は、箱体44の外側よりも高く設定できる。
2)与圧ガス導入部24は、プラズマ発生用原料ガス導入部21とは独立したものとし、箱体44内に導入するガスの圧力を、箱体44の外側よりも高く設定して導入する。
【0040】
上述の形態であれば、シールド部材供給部41を覆う箱体44内部の圧力が、箱体44の外側よりも高く設定しておけば、箱体44内部に成膜Aが堆積するのことを防止できる。そのため、未使用のシールド部材に堆積物が付着することを防止し、シールド部材4の交換頻度をさらに減らすことができるので、装置稼働率をさらに上げることができる。なお、与圧ガス導入部24から箱体44内に導入するガスは、不活性状態のプラズマ発生用原料ガスG1とすれば、成膜用原料ガスG4が箱体44内に流入することを防止しつつ、成膜処理室3で生成される成膜Aの品質にも影響を及ぼさないので好ましい。
【0041】
[クリーニング機能]
図5は、本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図であり、上述の形態とは異なる別の一例を示している。図5に示す形態のプラズマCVD装置1eは、上述したプラズマCVD装置1cをベースとしつつ、シールド部材回収部45を覆う箱体51を備え、箱体51には使用済みのシールド部材を通過させる開口部51hが設けられている。さらに、箱体51にクリーニング用ガスG6を供給するクリーニング用ガス導入部52を備え、箱体51内に使用済みのシールド部材と所定の間隔を隔てた位置に放電用電極53を備え、放電用電極53には高周波が印加されている。放電用電極53は、高周波容量結合型プラズマ(いわゆるCCP:Capacitivery Coupled Plasma)を発生させるものを例示しているが、他のプラズマ方式を用いたものでも良い。
【0042】
さらに、箱体51には排気用ポート54が備えられており、箱体51内で使用済みシールド部材に付着した堆積物は、クリーニング用ガスG6との反応により生成された生成物として箱体51に漂い、排気ポート54から外部へ排気される。そのため、使用済みのシールド部材を、再び未使用状態に戻すことができる。
【0043】
このとき、クリーニング用ガスG6としては、CF,C,NF等のフッ素系ガスを使用することが好ましい。そうすることで、堆積物が分解され、外部へ排気可能となる。
【0044】
また、箱体51内の圧力は、導入するクリーニング用ガスG6と、排気ポート54から外部へ排気させるガスの圧力や流量を調節し、箱体51の外側の圧力と同じか、箱体51の外側の圧力よりも低く設定されている。より具体的には、箱体51の外側や箱体51内部の圧力変動があっても、箱体51内部の圧力は、箱体51の外側の圧力よりも高くならず、箱体51の外側と同じか、箱体51内部の方がやや低い状態で維持されるように、設定しておく。そうすることで、ラジカル成分のガスG3と成膜用原料ガスG4が流入して、箱体51内部やシールド部材4に成膜Aが堆積することを防ぎ、クリーニング用ガスG6や除去された堆積物が成膜処理室3へ流出することを防ぐことができる。
【0045】
このため、一度使用済みとなったシールド部材を、矢印とは逆の方向に巻出・巻取を行って(つまり、図示したシールド部材回収部45側から、未使用状態に戻したシールド部材を供給し、シールド部材供給部41側で使用済みのシールド部材を回収するようにして)、シールド部材4を再度使用することができる。
【0046】
[別の一例]
図6は、本発明を具現化する形態の別の一例を示す側面図であり、上述の形態とは異なる別の一例を示している。図6に示す形態のプラズマCVD装置1fは、上述したプラズマCVD装置1eをベースとしつつ、シールド部材供給部41を覆う箱体56を備え、箱体56には未使用のシールド部材を通過させる開口部56hが設けられている。さらに箱体56にクリーニング用ガスG6を供給するクリーニング用ガス導入部57を備え、箱体56内に未使用のシールド部材と所定の間隔を隔てた位置に放電用電極58を備え、放電用電極58には高周波が印加されている。さらに、箱体56には、排気用ポート59が備えられいる。また、箱体56内の圧力は、導入するクリーニング用ガスG6と、排気ポート59から外部へ排気させるガスの圧力や流量を調節し、箱体56の外側の圧力と同じか、箱体56の外側の圧力よりも低く設定しておく。より具体的には、箱体56の外側や箱体56内部の圧力変動があっても、箱体56内部の圧力は、箱体56の外側の圧力よりも高くならず、箱体56の外側と同じか、箱体56内部の方がやや低い状態で維持されるように、設定しておく。そうすることで、ラジカル成分のガスG3と成膜用原料ガスG4が流入して、箱体56内部やシールド部材4に成膜Aが堆積することを防ぎ、クリーニング用ガスG6や除去された堆積物が成膜処理室3へ流出することを防ぐことができる。
【0047】
そのため、使用済みのシールド部材を、シールド部材回収部41側に回収された場合だけでなく、シールド部材供給部41側に回収された場合でも、未使用状態に戻すことができる。そうすることで、シールド部材を交換する頻度が極めて少なくなり、装置稼働率をより一層上げることができる。
【0048】
[搬送ローラー・アース接地]
上述の各プラズマCVD装置1〜1fにおいて、シールド部材4は、
プラズマ発生室2と成膜処理室3との間には、開口部Hを有する隔壁が備えられ、開口部Hの外側には、開口部Hを跨ぐ位置に一対で配置された搬送ローラ48(48a,48b)を備え、シールド部材4は、一対の搬送ローラ48(48a,48b)に押し当てられることでアース接地されることが好ましい。そうすることで、シールド部材4のアース接地が、巻出用ローラ42や巻取用ローラ46を通じてアース接地するよりも、確実となる。
【0049】
[シールド部材]
図7は、本発明に用いられるシールド部材を具現化した一例を示す側面図である。
本発明に用いられるシールド部材4を具現化する一例として、図7に示すような、複数のワイヤWが所定の間隔で平行に並べられている、ストライプ状のシールド部材4aが例示できる。
【0050】
開口部Hの両側の開口部Hを跨ぐ位置に、シールド部材供給部41の巻出用ローラ42と、シールド部材回収部45の巻取用ローラ46が配置されている。巻出用ローラ42と、巻取用ローラ46には、ストライプ状のシールド部材4aが巻き付けられている。
【0051】
[別の一例]
図8は、本発明に用いられるシールド部材を具現化した別の一例を示す側面図である。
本発明に用いられるシールド部材4を具現化する別の一例として、図8に示すような、複数のワイヤWが所定の間隔で格子状に並べられている、メッシュ状のシールド部材4bが例示できる。メッシュ状のシールド部材4bは、いわゆる金網のように複数のワイヤーを格子状に編んだものが例示できる。
【0052】
開口部Hの両側の開口部Hを跨ぐ位置に、シールド部材供給部41の巻出用ローラ42と、シールド部材回収部45の巻取用ローラ46が配置されており、巻出用ローラ42と、巻取用ローラ46には、メッシュ状のシールド部材4bが巻き付けられている。
【0053】
[別の一例]
図9は、本発明に用いられるシールド部材を具現化した別の一例を示す側面図である。
本発明に用いられるシールド部材4を具現化する別の一例として、図9に示すような、複数の開口部を有する打ち抜きの金属シート4cが例示できる。複数の開口部を有する打ち抜きの金属板4cは、いわゆるパンチングメタル(Perforated sheets、Perforated metal等とも呼ばれるもの)を箔状にしたものが例示できる。
【0054】
開口部Hの両側の開口部Hを跨ぐ位置に、シールド部材供給部41の巻出用ローラ42と、シールド部材回収部45の巻取用ローラ46が配置されており、巻出用ローラ42と、巻取用ローラ46には、複数の開口部を有する打ち抜きの金属シート4cが巻き付けられている。
【0055】
[別の一例]
図10は、本発明に用いられるシールド部材を具現化した別の一例を示す側面図である。
本発明に用いられるシールド部材4を具現化する別の一例として、図10に示すような、1本のワイヤWsを複数折り返し、それぞれのワイヤWsが所定の間隔でストライプ状に並べられている、1本のワイヤをストライプ状にしたシールド部材4dが例示できる。
【0056】
1本のワイヤWsをストライプ状にしたシールド部材4dは、巻出側リール61に予め未使用のワイヤを巻き付けておき、巻き出された1本のワイヤWsを複数の折返しローラ62を経由させて張り巡らせ、巻取側リール63に巻き付けた状態で、シールド部材として機能する。そして、ワイヤ表面に堆積物が溜まれば、巻出側リール61から未使用部分のワイヤーを巻出ながら、使用済み部分のワイヤーを巻取側リール63にて回収する。なお、折返しローラ62は、自由に回転する形態のフリーローラとしても良いし、巻出側リール61や巻取側リール63の回転と同調するようにしても良い。
【0057】
[別の一例]
図11は、本発明に用いられるシールド部材を具現化した別の一例を示す側面図である。
本発明に用いられるシールド部材4を具現化する別の一例として、図11に示すような、1本のワイヤを複数折り返し、さらにワイヤーを2方向に交差し、それぞれのワイヤーが所定の間隔でメッシュ状に並べられ、1本のワイヤを格子状にしたシールド部材4eが例示できる。
【0058】
1本のワイヤWsを格子状にしたシールド部材4eは、巻出側リール65に予め未使用のワイヤーを巻き付けておき、巻き出されたワイヤーを複数の折返しローラ66(66a,66b)を経由させて張り巡らせ、交差折返し用ローラ67にて90度向きを変え、再び複数の折返しローラ68(68a,68b)を経由させて張り巡らせ、巻取側リール69に巻き付けた状態で、シールド部材として機能する。そして、ワイヤー表面に堆積物が溜まれば、巻出側リール65から未使用部分のワイヤーを巻出ながら、使用済み部分のワイヤーを巻取側リール69にて回収する。なお、折返しローラ66,68や、交差折返し用ローラ67は、自由に回転する形態のフリーローラとしても良いし、巻出側リール65や巻取側リール69と協調して回転するようにしても良い。
【0059】
[他の実施形態]
上述の説明では、本発明に係るプラズマCVD装置において、成膜対象物となる基板Kが、いわゆる枚葉方式で入れ替えて成膜を行う形態を図示した。しかし、この形態には限定されず、例えば、ロール・トゥ・ロール方式による連続成膜形態であっても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 プラズマCVD装置
2 プラズマ発生室
3 成膜処理室
4 シールド部材
4a ストライプ状のシールド部材
4b メッシュ状のシールド部材
4c 開口板のシールド部材
4d 1本のワイヤをストライプ状にしたシールド部材
4e 1本のワイヤを格子状にしたシールド部材
20 箱体
21 プラズマ発生用原料ガス導入部
22 高周波発生部
24 与圧ガス導入部
30 箱体
31 成膜用原料ガス導入部
32 基板保持台
33 ロードロックゲート
34 矢印
35 真空ポンプ
41 シールド部材供給部
42 巻出用ローラ
43 隔離板
44 箱体
44h 開口部
45 シールド部材回収部
46 巻取用ローラ
48a 搬送ローラ
48b 搬送ローラ
51 箱体
51h 開口部
52 クリーニングガス導入部
53 放電用電極
54 排気ポート
56 箱体
56h 開口部
57 クリーニングガス導入部
58 放電用電極
59 排気ポート
61 巻出側リール
62 折返しローラ
63 巻取側リール
65 巻出側リール
66 折返しローラ
67 交差折返し用ローラ
68 折返しローラ
69 巻取側リール
G1 プラズマ発生用原料ガス
G2 プラズマ状態のガス
G3 ラジカル成分のガス
G4 成膜用原料ガス
G6 クリーニング用ガス
A 成膜(堆積物)
H 開口部
K 基板(成膜対象物)
W ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11