(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定時間は、以前に前記一対の超音波送受信器間で送信側と受信側とを双方で変更して被測定流体の流れの方向に対して順方向及び逆方向のそれぞれで超音波ビームの送受信を行った際に、前記流量演算手段により計測された被測定流体の流れの方向に対して順方向及び逆方向それぞれの伝搬時間の和である
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波流量計。
【背景技術】
【0002】
例えば、都市ガス等のような被測定流体の流量測定は、被測定流体が流れる測定管の管壁に上流側と下流側とで互いの位置をずらして超音波送受信器(トランスデューサ)からなる超音波センサを配置し、この一対の上流側及び下流側の超音波送受信器間で送信側と受信側とを双方で変更して被測定流体の流れを横切るようにして超音波ビームの送受信を行うことによって、一対の超音波送受信器間での被測定流体の流れに沿った順方向での超音波ビームの伝搬時間と被測定流体の流れに逆らった逆方向での超音波ビームの伝搬時間とをそれぞれ計測し、双方の伝搬時間の差分から被測定流体の流速を求め、さらに求めた流速と測定管の流路断面積とから流体の体積流量を求めることによって行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このため、超音波流量計では、一対の超音波送受信器間で送信側の超音波送受信器から発信された超音波ビームが被測定流体を介して受信側の超音波送受信器によって受信されるまでの、被測定流体の流れ方向に対しての順方向及び逆方向それぞれの超音波ビームの伝搬時間の計測精度が高ければ高い程、被測定流体のより正確な流量計測が行える。
【0004】
図6は、超音波流量計の受信側の超音波送受信器で受信された超音波ビームの受信信号の説明図である。
同図において、縦軸は、受信側の超音波送受信器の受信出力である電圧Vを、横軸は、送信側の超音波送受信器による超音波ビームの発信時点を原点O(V=0,t=0)とした時間経過tを表わしている。
【0005】
図6(A)に示すように、受信側の超音波送受信器で受信された超音波ビームの受信信号Sgrには、駆動信号の入力によって駆動された送信側の超音波送受信器の、超音波振動子の固有周波数に基づいた所定の周期振動が生じている。
【0006】
図示の例では、送信側での超音波送受信器での超音波ビームの発信時点、すなわち駆動信号の入力による送信側の超音波送受信器の駆動開始時点を時点t=0とすると、受信側の超音波送受信器への超音波ビームの到達時点は、時点t=t0になる。そして、この時点t0を受信側の超音波送受信器の受信出力から直接検出することは、受信側の超音波送受信器の受信出力において、それ以前の超音波ビームが未だ到達していない状態(t0≦t<t0)に対しての超音波ビーム到達による出力変化開始時点を検出することに該当する。しかしながら、通常、超音波ビームが到達状態にない受信側の超音波送受信器の受信出力には、例えば流路内の音響的残響等による雑音も含まれているため、受信側の超音波送受信器の受信出力から超音波ビームの受信側への到達時点t=t0を直接検出することはS/N比の関係から実際的に困難である。
【0007】
そこで、受信側の超音波送受信器における超音波ビームの受信信号Sgrは、送信側の超音波送受信器による超音波ビームの発信に伴う超音波振動子の振動を反映して、
図6(A)に示すように、1波,2波,3波,・・・といった周期毎の信号波のピーク電圧が、始めは次第に大きくなり、最大値Vp(図中、×印で示す時点)になった後は次第に小さくなる波形で受信出力されることから、従来は、受信信号の第2波以降の、ピーク電圧がS/N比の関係から識別可能な電圧値になるn波目(図では2波目)の終了時点のゼロクロスポイント(図中、■印で示す時点tz)を検出して、超音波ビームの受信側への到達を本来の到達時点t0に対する所定の周期遅れΔT(図では、3/2周期遅れ)で検出する構成になっている。その際、n波目の検出は、例えば、受信側の超音波送受信器の出力がn波目のピーク電圧値とn-1波目のピーク電圧値との間になるように予め設定された電圧閾値Vthに対して、受信側の超音波送受信器の受信出力が超音波ビームの発信時点t=0から最初に到達した時点(図中、□印で示す時点tn)を検出することによって行っている。そのため、超音波ビームの受信側への到達時点t=t0(図中、●印で示す時点)は、時点tzがn波目の終了時点のゼロクロスポイントであることに誤りさえなければ、t0=tz−ΔTを演算することによって求めることができる。
【0008】
その際、超音波流量計では、受信した超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)のピーク時(図中、○印で示す時点)の電圧値Vpnが所定のゲイン調整用出力値Vajとなるように、例えば、今回の超音波ビームの受信信号Sgrのn波目(図では2波目)のピーク電圧値Vpnの、ゲイン調整用出力値Vajに対するずれを基に、この受信側の超音波送受信器が次回に受信側として再び作動する際の受信出力の増幅ゲイン(増幅率)を演算しておき、次回に受信側として再び作動する際には、当該演算された増幅率でこの受信側の超音波送受信器の受信出力を増幅するゲイン調整が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る超音波流量計の一実施の形態について、その構成及び作用を図面に基づき説明する。
なお、説明中では、
図6(B)及び
図6(C)に示したように、超音波流量計において、本来、受信した超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)のピーク電圧値Vpnがゲイン調整用出力値Vajとなるようにゲイン調整によって演算された増幅率で、受信側の超音波送受信器の受信出力が増幅されている場合であっても、被測定流体の流速又は圧力等の変動によって、受信した超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)として、実際に受信した超音波ビームの受信信号Sgrのn+1波目(図では3波目)を又はn−1波目(図では1波目)を誤検出してしまう現象を、“一波跳び”と略称し、この“一波跳び”が生じているのを検出することを“一波跳び検出”と略称する場合がある。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る超音波流量計の全体構成図である。
図1において、超音波流量計1は、被測定流体が流れる測定流路11が形成された測定管路12の管壁に、測定流路11における被測定流体の流れ方向に沿って上流側と下流側とで互いの位置をずらして、超音波センサとしての超音波送受信器(トランスデューサ)13,14を配置してなる流量計本体10を有する。また、図示の例では、流量計本体10には、測定流路11に所在する被測定流体の圧力を検出するための圧力センサ16が設けられている。
【0022】
そして、一対の上流側及び下流側の超音波送受信器13,14間には、被測定流体を伝搬媒体とする超音波ビームの伝搬路15が形成される。伝搬路15は、被測定流体の流れる方向、この場合は測定流路11を形成された測定管路12の管軸方向に対して角度θだけ傾いている。
【0023】
ここで、超音波送受信器13,14それぞれは、駆動信号Sgdの入力によって被測定流体に臨む送受信面を超音波振動させて被測定流体中に超音波ビームを発信する一方、被測流定体中を伝搬してきた超音波ビームの受信で振動する送受信面の超音波振動を電気出力で取り出して、
図6に示したような超音波ビームの受信信号Sgrを出力する。
【0024】
なお、
図1に示した超音波流量計1では、超音波ビームの伝搬路15は、測定流路11を挟んで対向配置された一対の超音波送受信器13,14により、一対の超音波送受信器13,14間の直線状の直接伝搬路からなる超音波伝搬路を有する構成としたが、一方及び他方の超音波送受信器13,14の送受信面を臨ませた側と対向する側の測定管路12の管路面に反射させるV字反射方式の間接伝搬路からなる超音波伝搬路を有する構成や、一方の超音波送受信器13の送受信面より送受信される超音波ビームを測定管路12の管路面に複数回反射させて他方の超音波送受信器14の送受信面にて送受信させる複数回反射方式の間接伝搬路からなる超音波伝搬路を有する構成であってもよい。
【0025】
また、超音波流量計1には、予め定められた計測周期間隔で、一対の超音波送受信器13,14間で送信側と受信側とを双方で変更して被測定流体の流れを横切るようにして超音波ビームの送受信を行って、測定流路11の被測定流体の流れ方向に対して順方向AU及び逆方向ADそれぞれの超音波ビームの伝搬時間Tau,Tadを計測し、測定流路11を流れる被測定流体の流量Qを演算する流量計測演算装置20が備えられている。そして、流量計測演算装置20は、計測演算された流量Qを、図示せぬ表示器等に対して出力する。
【0026】
流量計測演算装置20は、上述した流量計測演算を行うために、図示の例では、流量計測演算制御部21,駆動信号出力部22,受信信号増幅部23,送受信側切替部24,ゲイン切替部25,順方向ゲインGau設定部26,逆方向ゲインGad設定部27を有する。
【0027】
流量計測演算制御部21は、CPU,メモリ等を備えた演算制御装置により構成され、流量計測演算装置20の他の各部の制御を行い、流量計測処理部31,一波跳び検出処理部32,設定ゲイン調整処理部33として機能する。
【0028】
流量計測演算制御部21は、流量計測処理部31として、超音波送受信器13,14間で送信側と受信側とを双方で変更して被測定流体の流れの方向に対して順方向及び逆方向のそれぞれで超音波ビームの送受信を行わせるとともに、この超音波送受信器13,14間での送信側と受信側との双方変更に応じて受信側になった超音波送受信器13(又は14)から出力され、受信信号増幅部23によって増幅されて供給される超音波ビームの受信信号Sgrを基に、被測定流体の流れの方向に対して順方向及び逆方向それぞれの伝搬時間Tau,Tadを計測し、当該両伝搬時間Tau,Tadから被測定流体の流量Qを演算する。
【0029】
流量計測演算制御部21は、一波跳び検出処理部32として、
図6(B)及び
図6(C)に示したような、受信した超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)として、実際に受信した超音波ビームの受信信号Sgrのn+1波目(図では3波目)を又はn−1波目(図では1波目)を誤検出してしまう“一波跳び”現象の発生を検出する。
【0030】
流量計測演算制御部21は、設定ゲイン調整処理部33として、一波跳び検出処理部32の検出結果に基づいて、流量計測中の通常のゲイン調整設定処理と、流量計測中における一波跳び発生時のゲイン調整設定処理とを選択的に行う。
【0031】
ここで、流量計測中の通常のゲイン調整処理とは、被測定流体の計測中に、
図6に示したような、受信した超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)のピーク時(図中、○印で示す時点)の電圧値Vpnが所定のゲイン調整用出力値Vajとなるように、今回の超音波ビームの受信信号Sgrのn波目(図では2波目)のピーク電圧値Vpnの、ゲイン調整用出力値Vajに対するずれを基に、この受信側の超音波送受信器13(又は14)が次回に受信側として再び作動する際の受信出力の増幅ゲイン(増幅率)Ga(Gau,Gad)を演算するゲイン調整設定処理を指す。
【0032】
流量計測演算制御部21は、流量計測中に、一波跳び検出処理部32によって一波跳びが検出された場合や、超音波流量計1の自動又はマニュアルリセット操作が入力された場合は、設定ゲイン調整処理部33として、上述した流量計測中の通常のゲイン調整処理に代えて、流量計測中の通常のゲイン調整処理とは異なる手順により、受信出力の増幅ゲイン(増幅率)Ga(Gau,Gad)を演算する。
【0033】
流量計測演算制御部21には、一波跳び検出処理部32に関連して、圧力センサ16による被測定流体の圧力計測値も入力される。なお、図示の例では、被測定流体の圧力を計測するため、流量計本体10は、圧力センサ16が設けられた構成としたが、流量計本体10には圧力センサ16を設けずに、流量計本体10に配管接続される被測定流体の移送管に備えられた圧力センサを利用するようにしてもよい。
【0034】
駆動信号出力部22は、流量計測演算制御部21から供給される、送信側の超音波送受信器に超音波ビームを発振させるための駆動信号を増幅して、送受信側切替部24に出力する。
【0035】
受信信号増幅部23は、送受信側切替部24を介して選択的に供給される、受信側の超音波送受信器からの受信出力を、ゲイン切替部25を介して接続された、順方向ゲインGau設定部26又は逆方向ゲインGad設定部27のいずれか一方に設定されている増幅ゲインGau又はGadにより増幅して、流量計測演算制御部21に出力する。
【0036】
送受信側切替部24は、流量計測演算制御部21から供給される接続指示に基づいて、駆動信号出力部22,受信信号増幅部23それぞれに接続される超音波送受信器を超音波送受信器13,14間で切り替える。
【0037】
ゲイン切替部25は、送受信側切替部24の場合と同様に、流量計測演算制御部21から供給される接続指示に基づいて、受信信号増幅部23に接続されるゲイン設定部を順方向ゲインGau設定部26と逆方向ゲインGad設定部27との間で切り替える。
【0038】
送受信側切替部24及びゲイン切替部25それぞれに対する接続指示は、例えば、流量計測処理部31による被測定流体の流れの方向に対しての順方向の伝搬時間Tau若しくは逆方向の伝搬時間Tadの計測種別に応じて、又は設定ゲイン調整処理部33による順方向ゲインGau若しくは逆方向ゲインGadの調整種別に応じて、流量計測演算制御部21から供給される。
【0039】
順方向ゲインGau設定部26は、流量計測演算制御部21から供給される、設定ゲイン調整処理部33によって設定若しくは調整された順方向ゲインGauを格納する。逆方向ゲインGad設定部27は、流量計測演算制御部21から供給される、設定ゲイン調整処理部33によって設定若しくは調整された逆方向ゲインGadを格納する。
【0040】
次に、流量計1の、流量計測演算制御部21が流量計測処理部31,一波跳び検出処理部32,設定ゲイン調整処理部33として実行する機能について、
図2〜
図5に基づいて説明する。以下、説明にあたって、ステップS10をS10のように記し、ステップの記載を省略する。
【0041】
図2は、流量計測演算制御部が流量計測処理部として実行する流量計測処理のフローチャートである。
流量計測演算制御部21は、予め定められた計測周期間隔で流量計測処理を実行する。
【0042】
超音波流量計1において、流量計測演算制御部21による流量計測処理が実行開始されると、まず、S10では、流量計測演算制御部21は、例えば、超音波ビームの送信側を被測定流体の流れ方向の上流側の超音波送受信器13とし、受信側を被測定流体の流れ方向の下流側の超音波送受信器14とするように、送受信側切替部24及びゲイン切替部25を切り替え、超音波送受信器13,14間で被測定流体の流れ方向に対する順方向での超音波ビームの送受信を行う。そして、流量計測演算制御部21は、順方向ゲインGau設定部26に格納されている順方向ゲインGauで受信信号増幅部23が増幅した超音波ビームの受信信号Sgrを基に、
図6(A)で説明したように、所定のn波目(図では2波目)の終了時点のゼロクロスポイント(図中、■印で示す時点tz)を検出して、被測定流体の流れの方向に対しての順方向の伝搬時間Tauを計測する。
【0043】
次に、S20では、流量計測演算制御部21は、超音波ビームの送信側を被測定流体の流れ方向の下流側の超音波送受信器14とし、受信側を被測定流体の流れ方向の上流側の超音波送受信器13とするように送受信側を双方で変更するように、送受信側切替部24及びゲイン切替部25を切り替え、超音波送受信器13,14間で被測定流体の流れ方向に対する逆方向での超音波ビームの送受信を行う。そして、流量計測演算制御部21は、逆方向ゲインGad設定部27に格納されている逆方向ゲインGadで受信信号増幅部23が増幅した超音波ビームの受信信号Sgrを基に、所定のn波目(図では2波目)の終了時点のゼロクロスポイントtzを検出して、被測定流体の流れの方向に対しての逆方向の伝搬時間Tadを計測する。
【0044】
次に、S30では、流量計測演算制御部21は、S10,S20で計測した順方向の伝搬時間Tauと逆方向の伝搬時間Tadとの差分から被測定流体の流速qを求め、さらに求めた流速qと、測定管路12の管軸方向に対して垂直な流路断面積とから流体の体積流量Qを求める。
【0045】
次に、S40では、流量計測演算制御部21は、一波跳び検出処理部32として一波跳び検出処理を行い、今回の、超音波ビームの送信側を被測定流体の流れ方向の下流側の超音波送受信器14とし、受信側を被測定流体の流れ方向の上流側の超音波送受信器13とした場合の、S10,S20で示した順方向及び逆方向それぞれの伝搬時間Tau,Tadの計測において、受信した超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)として、実際に受信した超音波ビームの受信信号Sgrのn+1波目(図では3波目)又はn−1波目(図では1波目)を誤検出してしまう、いわゆる“一波跳び”の検出を行う。
【0046】
次に、S50では、流量計測演算制御部21は、S40で順方向及び逆方向それぞれの伝搬時間Tau,Tadの計測(S10,S20)において“一波跳び”が検出されなかった場合は、S30で演算した流量Qを、図示せぬ表示器等に対して出力する。
【0047】
次に、S60では、流量計測演算制御部21は、設定ゲイン調整処理部33として、流量計測中の通常のゲイン調整設定処理を行う。すなわち、流量計測演算制御部21は、今回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S10,S20で示した順方向,逆方向それぞれの伝搬時間Tau,Tadの計測時にそれぞれ取得した、超音波送受信器14,13それぞれの順方向ゲインGau設定部26,逆方向ゲインGad設定部27それぞれに格納されていた順方向ゲインGau,逆方向ゲインGadで受信信号増幅部23により増幅された、各超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(図では2波目)のピーク電圧値Vpnを基に、このピーク電圧値Vpnが所定のゲイン調整用出力値Vajとなるように、このピーク電圧値Vpnのゲイン調整用出力値Vajに対するずれを基にして、次回の計測周期で超音波送受信器14,13が受信側として再び作動する際の順方向設定ゲインGau,逆方向設定ゲインGadを演算する。
【0048】
次に、S70では、流量計測演算制御部21は、S60で演算した順方向設定ゲインGau,逆方向設定ゲインGadを、順方向ゲインGau設定部26,逆方向ゲインGad設定部27に更新格納する。
【0049】
したがって、流量計測演算制御部21が、予め定められた計測周期間隔で実行する流量計測処理では、S40に示した一波跳び検出処理で一波跳びが生じていないことが確認されている間は、S60で説明した流量計測中の通常のゲイン調整設定処理によって、受信信号増幅部23が取得する順方向設定ゲインGau,逆方向設定ゲインGadは、計測周期毎にフィードバック調整され、所定のゲイン調整用出力値Vajを基準とする最適なゲインに保持される。
【0050】
次に、流量計測演算制御部21が、流量計測処理のS40で一波跳び検出処理部32として実行する一波跳び検出処理について、
図3,
図4に基づき説明する。
【0051】
図3,
図4は、流量計測演算制御部が一波跳び検出処理部として実行する一波跳び検出処理のフローチャートである。
流量計測演算制御部21による一波跳び検出処理が実行開始されると、まず、S401では、流量計測演算制御部21は、今回(この場合はn回目)の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S10で計測された順方向の伝搬時間Tauと、S20で計測された逆方向の伝搬時間Tadとを加算し、その絶対値|Tau+Tad|が所定時間と略等しくなっているか否かを判別する。
【0052】
ここで、同一計測周期での流量計測処理により計測された順方向の伝搬時間Tauと逆方向の伝搬時間Tadとの加算は、被測定流体の流れによる伝搬時間の短縮分及び遅延分を相殺することと等価であり、その所定時間は、被測定流体の流れがないときの伝搬時間Tの2倍の値に該当する。
【0053】
そこで、流量計測演算制御部21は、超音波ビームの伝搬する距離をL、音速をCとすると、被測定流体の流れがないときの伝搬時間Tは時間L/Cとなるから、絶対値|Tau+Tad|が所定時間と略等しくなっておらず、その許容誤差範囲から逸脱している場合は、順方向の伝搬時間Tauの計測時又は逆方向の伝搬時間Tadの計測時の少なくともいずれかにおいて一波跳びが発生していると推定し、一波跳びの発生を検出する。
【0054】
なお、上記S401では、流量計測演算制御部21は、絶対値|Tau+Tad|が所定時間と略等しくなっていない場合には一波跳びの発生を検出しているが、これに代えて、又はこれと併せて、S402に示すようにして、一波跳びを検出するようにしてもよい。
【0055】
S402では、被測定流体の順方向AUの超音波ビームの伝達時間Tauと逆方向ADの超音波ビームの伝達時間Tadとの時間差|α+β|の異常により、一波跳びを検出する。
【0056】
すなわち、被測定流体が流れていない場合における超音波送受信器13,14間の超音波ビームの伝達時間をTとすると、被測定流体が流れている場合における超音波送受信器13,14間の超音波ビームの伝達時間Tau,Tadはそれぞれ、
Tau=T−α
Tad=T+β
と見なすことができる。この場合、α,βそれぞれは、被測定流体の順方向AU,逆方向ADそれぞれの流れにより生じた時間である。
【0057】
そこで、上記式より、超音波送受信器13,14間の超音波ビームの伝達時間Tau,Tadの時間差をとると、
|Tau−Tad|=|T−α−(T+β)|=|α+β|
となる。
ここで、時間差|α+β|は、被測定流体の流速を表す値部分になる。
【0058】
したがって、流量計測演算制御部21は、例えば、この時間差|α+β|が所定時間(例えば、超音波ビームの受信信号Sgrの振動周期)よりも大きくなった場合、前回演算された時間差|α+β|(n-1)と今回演算された時間差|α+β|(n)との差が所定時間差以上異なった場合、等の時間差|α+β|の値の異常時には、一波跳びの発生を検出する。
【0059】
次に、S403では、流量計測演算制御部21は、前回(この場合は‘n−1’回目)の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S30で演算された流量Q(n-1)から、今回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S30で演算された流量Q(n)を減算し、その絶対値|Q(n-1)−Q(n)|が所定変動量ΔQよりも小さくなっているか否かを判別する。
【0060】
そして、流量計測演算制御部21は、絶対値|Q(n-1)−Q(n) |が所定変動量ΔQよりも小さくなっておらず、前回の計測周期と今回の計測周期とで被測定流体の流速に大きな変動が生じている場合は、今回の計測周期での順方向の伝搬時間Tauの計測時又は逆方向の伝搬時間Tadの計測時の少なくともいずれかにおいて、一波跳びが発生していると推定し、一波跳びの発生を検出する。
【0061】
次に、S404では、流量計測演算制御部21は、前回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、被測定流体の圧力を計測する圧力センサ16から取得した被測定流体の圧力値P(n-1)から、今回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、圧力センサ16から取得した被測定流体の圧力値P(n) を減算し、その絶対値|P(n-1)−P(n)|が所定変動量ΔPよりも小さくなっているか否かを判別する。
【0062】
そして、流量計測演算制御部21は、絶対値|P(n-1)−P(n)|が所定変動量ΔPよりも小さくなっておらず、前回の計測周期と今回の計測周期とで被測定流体の圧力に大きな変動が生じている場合は、今回の計測周期での順方向の伝搬時間Tauの計測時又は逆方向の伝搬時間Tadの計測時の少なくともいずれかにおいて、一波跳びが発生していると推定し、一波跳びの発生を検出する。
【0063】
そして、S401〜S404のいずれかで、流量計測演算制御部21は、一波跳びの発生を検出した場合は、設定ゲイン調整処理部33として、S800で示した設定ゲインGau・Gad調整処理を実行する。
【0064】
一方、S401〜S404のいずれでも、一波跳びの発生が検出されない場合は、流量計測演算制御部21は、まずS405に示す処理を行う。
【0065】
S405では、流量計測演算制御部21は、前回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S10で計測された順方向の伝搬時間Tau(n-1)から、今回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S10で計測された順方向の伝搬時間Tau(n) を減算し、その絶対値|Tau(n-1)−Tau(n)|が所定時間差ΔTaよりも大きくなっているか否かを判別する。
【0066】
そして、流量計測演算制御部21は、S405で絶対値|Tau(n-1)−Tau(n)|が所定時間差ΔTaよりも大きくなっている場合は、S406の処理を行う。
【0067】
S406では、流量計測演算制御部21は、内部にFIFO(First-In First-Out、先入先出)メモリ等により構成され、最新所定回数分(例えばn回分)の計測周期毎の流量計測処理の実行それぞれについての順方向の伝搬時間Tauの計測時における一波跳びの発生の兆候(可能性)を先入れ先出しで記憶する一波跳び発生兆候フラグ記憶部(図示省略)Fauに、今回の計測周期で実行した伝搬時間Tauの計測が一波跳びの発生の可能性があることを示すデータとして、フラグFau(n)=1を記憶する。
【0068】
これに対し、流量計測演算制御部21は、絶対値|Tau(n-1)−Tau(n)|が所定時間差ΔTa以下になっている場合は、S407の処理を行う。
【0069】
S407では、流量計測演算制御部21は、発生兆候フラグ記憶部(図示省略)Fauに、今回の計測周期で実行した伝搬時間Tauの計測が一波跳びの発生の可能性がないことを示すデータとして、フラグFau(n)=0を記憶する。
【0070】
したがって、流量計測演算制御部21の発生兆候フラグ記憶部Fauには、最新所定回数分(例えばn回分)の計測周期毎の伝搬時間Tauの計測それぞれについて、一波跳びの発生の可能性の有・無が、フラグFau(n)=1又はフラグFau(n)=0で、随時、更新蓄積されていることになる。
【0071】
S408では、流量計測演算制御部21は、前回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S20で計測された逆方向の伝搬時間Tad(n-1)から、今回の計測周期での流量計測処理の実行に係り、S20で計測された逆方向の伝搬時間Tad(n) を減算し、その絶対値|Tad(n-1)−Tad (n)|が所定時間差ΔTdよりも大きくなっているか否かを判別する。
【0072】
そして、流量計測演算制御部21は、S408で絶対値|Tad(n-1)−Tad(n)|が所定時間差ΔTdよりも大きくなっている場合は、S409の処理を行う。
【0073】
S409では、流量計測演算制御部21は、内部にFIFO(First-In First-Out、先入先出)メモリ等により構成され、最新所定回数分(例えばn回分)の計測周期毎の流量計測処理の実行それぞれについての逆方向の伝搬時間Tadの計測時における一波跳びの発生の兆候(可能性)を先入れ先出しで記憶する一波跳び発生兆候フラグ記憶部(図示省略)Fadに、今回の計測周期で実行した伝搬時間Tadの計測が一波跳びの発生の可能性があることを示すデータとして、フラグFad(n)=1を記憶する。
【0074】
これに対し、流量計測演算制御部21は、絶対値|Tad(n-1)−Tad(n)|が所定時間差ΔTd以下になっている場合は、S410の処理を行う。
【0075】
S410では、流量計測演算制御部21は、発生兆候フラグ記憶部(図示省略)Fadに、今回の計測周期で実行した伝搬時間Tadの計測が一波跳びの発生の可能性がないことを示すデータとして、フラグFad(n)=0を記憶する。
【0076】
したがって、流量計測演算制御部21の発生兆候フラグ記憶部Fadには、最新所定回数分(例えばn回分)の計測周期毎の伝搬時間Tadの計測それぞれについて、一波跳びの発生の可能性の有・無が、フラグFad(n)=1又はフラグFad(n)=0で、随時、更新蓄積されていることになる。
【0077】
S411では、流量計測演算制御部21は、発生兆候フラグ記憶部Fau,Fad毎に、最新所定回数分(例えばn回分)の計測周期毎の伝搬時間Tau,Tadの計測それぞれにおいて、一波跳びの発生の可能性があるとしてフラグFau (n)=1,Fad(n)=1が記憶されている計測周期が幾つ分あるかを計数演算する。
【0078】
S412では、流量計測演算制御部21は、発生兆候フラグ記憶部Fau,Fad毎に、計数演算した計測周期の数(すなわち、流量計測処理の実行回数)であるFauフラグ回数又はFadフラグ回数を、予め設定されている所定回数Nと比較し、Fauフラグ回数及びFadフラグ回数の両方ともが所定回数Nよりも小さい場合は、一波跳びが発生していないと推定し、一波跳び検出処理を終了させて、
図2で説明した流量計測処理のS50で示した流量Qの出力処理に移行する。
【0079】
これに対し、流量計測演算制御部21は、S412で、Fauフラグ回数又はFadフラグ回数のいずれかが所定回数Nよりも大きい場合は、一波跳びが発生していると推定し、一波跳びの発生を検出する。
【0080】
流量計測演算制御部21は、S412で一波跳びの発生を検出した場合は、設定ゲイン調整処理部33として、S800で示した設定ゲインGau・Gad調整処理を実行する。
【0081】
このように、流量計測演算制御部21は、上述したように一波跳び検出処理部32として、S401,S402,S403,S404,S405〜S412といった一波跳び検出処理を実行することによって、本来、被測定流体の流量計測中は認識できなかった一波跳びの発生を、被測定流体の時間的或いは物理的な変動から多面的に検出することができ、超音波流量計による被測定流体の正確な流量計測を保証することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、流量計測演算制御部21は、一波跳び検出処理において、一波跳びの発生を検出した場合は、そのまま、S800で示した設定ゲインGau・Gad調整処理の実行に移行するようにしたが、その移行に当たって、一波跳び検出報知信号を出力するように構成し、現場若しくは管理所の作業員に、超音波流量計1が一波跳びの発生状態になっていることを報知するように構成してもよい。
【0083】
次に、流量計測演算制御部21が、一波跳び検出処理のS800で設定ゲイン調整処理部33として実行する設定ゲインGau・Gad調整処理について、
図5に基づき説明する。
【0084】
設定ゲインGau・Gad調整処理は、流量計測演算制御部21が設定ゲイン調整処理部33として実行する、
図2でS60で説明した流量計測中の通常のゲイン調整設定処理とは異なり、超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(
図6では2波目)、及びそのn波目のピーク電圧値Vpnを、流量計測中の超音波ビームの受信信号Sgrから識別して取得することができないことから、次に説明するように、異なる手順で行われる。
【0085】
図5は、流量計測演算制御部が設定ゲイン調整処理部として実行する設定ゲインGau・Gad調整処理のフローチャートである。
図5中、S801〜S812に示した各処理は、設定ゲインGau,設定ゲインGadそれぞれの調整処理毎に行われ、ここでは、設定ゲインGauを調整・設定する場合について説明し、設定ゲインGadを調整・設定する場合も、この設定ゲインGauを調整・設定する場合と同様なので、その詳細は説明省略する。
【0086】
流量計測演算制御部21による設定ゲインGau・Gad調整処理の中、設定ゲインGauの調整処理が実行開始されると、S801では、流量計測演算制御部21は、順方向ゲインGau設定部26に初期ゲインとして最低ゲインGLを格納する。
【0087】
次に、S802では、流量計測演算制御部21は、超音波ビームの送信側を被測定流体の流れ方向の上流側の超音波送受信器13とし、受信側を被測定流体の流れ方向の下流側の超音波送受信器14とするように、送受信側切替部24及びゲイン切替部25を切り替え、超音波送受信器13,14間で被測定流体の流れ方向に対する順方向での超音波ビームの送受信を行う。
【0088】
これにより、下流側の超音波送受信器14による超音波ビームの受信出力は、受信信号増幅部23によって、順方向ゲインGau設定部26に格納されている順方向ゲインGau、この場合はS801で格納されている最低ゲインGLで増幅され、この最低ゲインGLで増幅された下流側の超音波送受信器14の超音波ビームの受信出力に含まれる、
図6(A)で説明したような、所定の周期振動が生じている超音波ビームの受信信号Sgrが、流量計測演算制御部21に供給される。
【0089】
次に、S803では、流量計測演算制御部21は、この入力された超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vp(
図6(A)中、×印で示す時点)を計測する。なお、未だこの時点では、この最大値Vpを含む信号波が超音波ビームの受信信号Sgrに含まれた何番目の波に該当するのかは、不明である。
【0090】
次に、S804では、流量計測演算制御部21は、この取得した超音波ビームの受信信号Sgrの最大値(最大ピーク電圧)Vpが、予め設定された初期ゲイン調整用電圧値Vaji(
図6(A)では、Vmxに相当)に達しているか否かを確認する。この初期ゲイン調整用電圧値Vajiは、流量計測処理中の通常のゲイン調整設定処理(
図2、S60,S70)で用いられるゲイン調整用出力値Vajとは、別途に予め設定された電圧値である。すなわち、ゲイン調整用出力値Vajは、超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(
図6では2波目)が識別できた上で所定のn波目に対して用いられるゲイン調整用電圧値であるが、初期ゲイン調整用電圧値Vajiは、超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(
図6では2波目)が未だ識別されていない状態で、何番目の波であるかとは無関係に識別可能な、受信信号Sgrの最大値Vpに対して用いられるゲイン調整用電圧値である。例えば、初期ゲイン調整用電圧値Vajiは、n波目(
図6では2波目)のピーク電圧値Vpnを、超音波ビームの伝搬時間Tauの計測処理で所定のn波目(
図6では2波目)を識別するために用いる予め設定された電圧閾値Vthと、通常のゲイン調整設定処理でこの識別したn波目(
図6では2波目)のピーク電圧値Vpnの調整のために用いるゲイン調整用出力値Vajとの間の値になるように調整した場合に対応する、超音波ビームの受信信号Sgrの最大ピーク電圧Vpの電圧値に設定されている。言い換えれば、超音波ビームの受信信号Sgrの最大ピーク電圧Vpの電圧値を初期ゲイン調整用電圧値Vajiに調整するように初期ゲインを調整すれば、所定のn波目(
図6では2波目)のピーク電圧値Vpnが、n波目のピーク電圧値Vpnとn−1波目のピーク電圧値Vpn-1との間になるように予め設定された電圧閾値Vthと、通常のゲイン調整設定処理で用いられるゲイン調整用出力値Vajとの間の値になるように調整されることになる。
【0091】
次に、S805では、流量計測演算制御部21は、S804で超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達していない場合は、順方向ゲインGau設定部26に現在格納されている順方向ゲインGauの値よりも調整単位で1段階分だけアップした増幅率を、順方向ゲインGau設定部26に更新格納し、S802〜S804に示した処理を行う。
【0092】
したがって、流量計測演算制御部21は、下流側の超音波送受信器14による超音波ビームの受信出力に含まれる超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが予め設定された初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達するまでは、順方向ゲインGau設定部26に格納される順方向ゲインGauの値を、S802で示した超音波ビームの送受信毎、逐次1段階分だけアップされることになる。なお、本実施例では、順方向ゲインGauの調整を所定の調整単位ずつアップさせることにより、超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiとなるように調整するように構成しているが、これに代えて、超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpと初期ゲイン調整用電圧値Vajiとから、最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiとなるような順方向ゲインGauを演算して得た増幅率を用いて順方向ゲインGauの調整を行うようにしてもよい。
【0093】
そして、流量計測演算制御部21は、S804で超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達したのを確認した場合は、その確認が被測定流体の時間的或いは物理的な変動が生じてスポット的に調整されたものであるのか否かを、S806以下の処理で確認する。
【0094】
まず、S806では、流量計測演算制御部21は、この確認に備えて、内部のメモリにそれぞれ形成されている送受信回数カウンタCn及び到達回数カウンタCmそれぞれの、カウント値Cn,Cmを零リセットする。
【0095】
ここで、送受信回数カウンタCは、超音波送受信器13,14間で被測定流体の流れ方向に対する順方向での超音波ビームの送受信回数を計数するためのもので、到達回数カウンタCmは、所定回数Nの超音波ビームの送受信において超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達した回数を計数するためのものである。
【0096】
S807では、流量計測演算制御部21は、超音波送受信器13,14間で被測定流体の流れ方向に対する順方向での超音波ビームの送受信を行わせる。
【0097】
S808では、流量計測演算制御部21は、この超音波ビームの送受信によって取得した超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが、予め設定された初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達しているか否かを確認する。
【0098】
S809では、流量計測演算制御部21は、超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達している場合は、到達回数カウンタCmのカウント値Cmをインクリメントする。
【0099】
S810では、流量計測演算制御部21は、送受信回数カウンタCnのカウント値Cnをインクリメントする。
【0100】
S811では、流量計測演算制御部21は、送受信回数カウンタCnのカウント値Cnが所定回数Nに達したか否かを確認する。この確認により、流量計測演算制御部21は、所定回数Nの、超音波送受信器13,14間で被測定流体の流れ方向に対する順方向での超音波ビームの送受信が行われていない場合は、S807〜S811に係る、順方向ゲインGau設定部26に更新格納されている順方向ゲインGauの値の確認処理を繰り返す一方、所定回数Nの送受信が行われて順方向ゲインGauの値の確認処理が終了したならば、その順方向ゲインGauの値の評価を行う。
【0101】
S812では、流量計測演算制御部21は、その評価を、到達回数カウンタCmのカウント値Cmの値が、所定回数Nの送受信を行って、所定回数M以上、超音波ビームの受信信号Sgrの最大値Vpが初期ゲイン調整用電圧値Vajiに達している否かに基づいて行う。
【0102】
そして、流量計測演算制御部21は、到達回数カウンタCmのカウント値Cmが所定回数Mよりも低く、順方向ゲインGau設定部26に更新格納されている順方向ゲインGauの値の更なる調整を必要とする場合は、再びS805に戻って順方向ゲインGauの値を微調整する。一方、到達回数カウンタCmのカウント値Cmが所定回数Mよりも高い場合は、先にS805で順方向ゲインGau設定部26に更新格納された順方向ゲインGauの値で、その調整・設定を完了する。
【0103】
以上、設定ゲインGauを調整・設定する場合について説明したが、設定ゲインGadを調整・設定する場合も、この設定ゲインGauを調整・設定する場合と同様な手順で調整・設定が流量計測演算制御部21により行われる。この場合、設定ゲインGauの調整・設定の完了によって、設定ゲインGadの調整・設定を連続して行うようにしてもよいし、設定ゲインGau及び設定ゲインGadそれぞれの調整・設定を、両者で超音波ビームの送受信が重畳することがないようにして並行して行うようにしてもよい。
【0104】
そして、流量計測演算制御部21は、設定ゲインGau及び設定ゲインGadそれぞれの調整・設定が完了したならば、
図2のS40に示した一波跳び検出処理において‘一波跳びあり’の場合として表わしたように、流量計測処理を再開する。
【0105】
これにより、本実施の形態の超音波流量計1では、一波跳びが生じていることを検出したならば、流量計測中の通常のゲイン調整設定処理とは異なる、超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目(
図6では2波目)、及びそのn波目のピーク電圧値Vpnを、流量計測中の超音波ビームの受信信号Sgrから識別して取得することができないことを前提とした設定ゲインGau・Gad調整処理を自動的に行って、設定ゲインGau,Gadが不正確であることに伴う伝搬時間Tau,Tadの誤計測や、延いては被測定流体の流量Qの誤計測を防止して、被測定流体の正確な流量Qが計測できるようになる。
【0106】
本実施の形態に係る超音波流量計1は、以上説明したとおりであるが、一波跳びが生じていることを、被測定流体の時間的或いは物理的な変動によって検出し、流量計測演算制御部21が、超音波ビームの受信信号Sgrの所定のn波目の検出に依存しない設定ゲインGau・Gad調整処理を行うものであるならば、その具体的構成は上記説明したものに限らず、種々の変形例が適用可能である。