特許第5965302号(P5965302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965302
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】屋根間の防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/40 20060101AFI20160721BHJP
   E04D 3/38 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   E04D3/40 Y
   E04D3/38 C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-275551(P2012-275551)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-118764(P2014-118764A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】津川 智紀
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−023551(JP,A)
【文献】 実開昭62−169119(JP,U)
【文献】 実開昭62−187018(JP,U)
【文献】 特開平08−105167(JP,A)
【文献】 実開平04−073128(JP,U)
【文献】 特開2009−097183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連接された勾配が異なる二枚の屋根間を防水する屋根間の防水構造において、
双方の屋根の各々は、野地板と、この野地板の上側に配置された屋根材とを有し、
高さが低い方の屋根の野地板に、高さが高い方の屋根の屋根材の上端と同一の高さになるスペーサを設け、当該スペーサの上部と前記高さが高い方の屋根の屋根材の上部とに双方の上部間を塞ぐシール部材を繋いだことを特徴とする屋根間の防水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根間の防水構造において、
前記スペーサを前記高さが低い方の屋根の屋根材の上部を覆うように形成したことを特徴とする屋根間の防水構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の屋根間の防水構造において、
前記シール部材の上面に、前記シール部材を覆うカバー材を設けたことを特徴とする屋根間の防水構造。
【請求項4】
請求項3に記載の屋根間の防水構造において、
前記カバー材で双方の屋根側部分の少なくとも一方を、前記スペーサの上部、あるいは前記スペーサおよび対応する屋根材の上部に引っ掛けるように形成したことを特徴とする屋根間の防水構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の屋根間の防水構造において、
前記カバー材で双方の屋根側部分の少なくとも一方を、締結材を用いて、対応する屋根材の上部に前記シール部材を介して固定したことを特徴とする屋根間の防水構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の屋根間の防水構造において、
前記双方の屋根の水下側に軒樋が配置される場合は、双方の屋根材を平板状に形成して、当該双方の屋根材の水下側の端部を対応する軒樋の上方に位置するように形成し、当該双方の水下側の端部に、対応する軒樋へ雨水を送る排水部を設けたことを特徴とする屋根間の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配の異なる二枚の屋根が連接された場合において、双方の屋根の端部間を防水するために使用される屋根間の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、勾配の異なる二枚の屋根が連接された場合において、双方の屋根間を防水するために防水構造が使用されている。この防水構造としては、例えば特許文献1に開示されている防水構造がある。
【0003】
特許文献1に開示されている防水構造は、勾配の異なる二枚の屋根の隣接する端部にシール部材が被せられて施工されている。このシール部材によって端部間(屋根間)を塞いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−169119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の防水構造では、施工前にシール部材の折り曲げ加工を行う。この折り曲げ加工では平板状の部材の左右端部を折り曲げるが、このときに、高さが異なる双方の屋根の端部に被せることができるように左右端部を段違いに折り曲げなければならない。そのため、高い折り曲げ精度が必要となり、シール部材の加工に手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、シール部材の加工に手間をかけずに施工を行うことができる屋根間の防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような屋根間の防水構造を採用した。
【0008】
本発明は、連接された勾配が異なる二枚の屋根間を防水する屋根間の防水構造において、双方の屋根の各々は、野地板と、この野地板の上側に配置された屋根材とを有し、高さが低い方の屋根の野地板に、高さが高い方の屋根の屋根材の上端と同一の高さになるスペーサを設け、当該スペーサの上部と前記高さが高い方の屋根の屋根材の上部とに双方の上部間を塞ぐシール部材を繋いだことを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、スペーサを、高さが低い方の屋根の屋根材の上部を覆うように形成することが好ましい。
【0010】
また、本発明では、シール部材の上面に、シール部材を覆うカバー材を設けることが好ましい。
【0011】
また、本発明では、カバー材で双方の屋根側部分の少なくとも一方を、スペーサの上部、あるいはスペーサおよび対応する屋根材の上部に引っ掛けるように形成しても良い。
【0012】
また、本発明では、カバー材で双方の屋根側部分の少なくとも一方を、締結材を用いて、対応する屋根材の上部に前記シール部材を介して固定しても良い。
【0013】
また、本発明では、双方の屋根の水下側に軒樋が配置される場合は、双方の屋根材を平板状に形成して、双方の屋根材の水下側の端部を対応する軒樋の上方に位置するように形成し、双方の水下側の端部に、対応する軒樋へ雨水を送る排水部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の屋根間の防水構造では、高さが低い方の屋根の野地板に、高さが高い方の屋根の屋根材の上端と同一の高さになるスペーサを設け、当該スペーサの上部と高さが高い方の屋根の屋根材の上部とに上部間を塞ぐシール部材を繋いだ。したがって、シール部材に対して従来のように双方の屋根の隣接する端部の高さを意識した折り曲げ加工を行う必要がないので、折り曲げ加工に高い精度を必要としない。よって、本発明の屋根間の防水構造は、シール部材の加工に手間をかけずに施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態のユニット建物の分解斜視図である。
図2図1の2階建物ユニットの左側上部の斜視図である。
図3】同実施の形態の屋根間の防水構造を示す断面図である。
図4】同実施の形態の第1屋根材の斜視図である。
図5】同実施の形態の屋根間の防水構造の施工方法を示すフローチャートである。
図6】同実施の形態の屋根間の防水構造の施工方法を示す説明図である。
図7図6に続く説明図である。
図8】本発明の第2の実施の形態の屋根間の防水構造の斜視図である。
図9図8の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態のユニット建物1の分解斜視図である。このユニット建物1は、1階建物ユニット1aと2階建物ユニット1bとが上下に組み付けられて構成されている。
【0018】
2階建物ユニット1bは、四つの小建物ユニット202〜205が前後左右に連設して構成されている。各小建物ユニット202〜205の上面には、それぞれ屋根(第1屋根21、第2屋根31、第3屋根241、第4屋根251)が組み付けられる。各屋根は勾配が異なる。
【0019】
図2は、図1の2階建物ユニット1bの左側上部の斜視図である。本発明の屋根間の防水構造は、第1屋根21と第2屋根31の隣接する端部21a,31a間(S部)を防水するために使用される。このS部では、右側が水上側に設定され、左側が水下側に設定されている。また、第3屋根241と第4屋根251の隣接する端部間にも同様の屋根間の防水構造が使用される。本実施の形態では、第1屋根21と第2屋根31間の防水構造について説明する。
【0020】
図3は、第1屋根21と第2屋根31間の防水構造を示す断面図である。第1屋根21は、下から上へ配置された第1野地板22、第1ルーフィング23、第1屋根材24を備えている。第2屋根31は、下から上へ配置された第2野地板32、第2ルーフィング33、第2屋根材34を備えている。また、図示しないが、双方の野地板22,32はそれぞれ垂木で支持されている。各垂木はそれぞれ垂木受けで支持されており、垂木受けは梁に結合されている。
【0021】
第1野地板22は、第2野地板32よりも低い位置に配置されている。第1ルーフィング23は、第2野地板32の第1野地板22との隣接側の端部の上面から野地板22,32間を塞いで第1野地板22の上面に配置されている。
【0022】
第2ルーフィング33は、第1ルーフィング23に重ねて配置されている。具体的には第2ルーフィング33は、第1野地板22の第2野地板32との隣接側の端部の上面側から野地板22,32間を塞いで第2野地板32の上面側に配置されている。
【0023】
第1屋根材24は平板状に形成されており、第2屋根材34よりも低い位置に配置されている。図4を用いて第1屋根材24の構成を説明する。この第1屋根材24は、二枚の面材241,242と、面材241,242を結合するアンカークリップ243と、面材241,242間の目地部を止水する目地カバー部材244とを備えている。
【0024】
二枚の面材241,242は平板状に形成されている。左側の面材241の左右端には略直角に折り曲げられた端部2411,2411が形成されている。右側の面材242は第2屋根材34(図2参照)と隣接する側の面材である。この右側の面材242の左右端には、左側の面材241と同様に略直角に折り曲げられた端部2411,25が形成されている。
【0025】
アンカークリップ243は、上方が開口された断面略コ字形に形成されている。アンカークリップ243の左右端部2431,2431は外側に折り曲げられている。このアンカークリップ243は、面材241,242の対向する端部2411,2411間に挿入される。このときに左右端部2431,2431が端部2411,2411に係合して面材241,242が結合される。
【0026】
また、アンカークリップ243の底部にはビス孔2432が形成されている。このビス孔2432にはビス(図示せず)が挿入される。ビス孔2432に挿入されたビスは野地板22を貫通し、垂木(図示せず)にねじ込まれる。これによって、アンカークリップ243は野地板22に圧着され、面材241,242が野地板22に固定される。
【0027】
目地カバー部材244は、下方が開放された長手方向略円筒形に形成されている。この目地カバー部材244の左右下端部2441,2441は外側に折り曲げられている。左右下端部2441,2441は、面材241,242の対向する端部2411,2411に係合される。これにより目地カバー部材244は、対向する端部2411,2411に嵌着される。
【0028】
目地カバー部材244の内部には防水材245が取り付けられている。この防水材245は目地カバー部材244で押圧されて、対向する端部2411,2411に強固に密着・接着される。これにより、対向する端部2411,2411間とアンカークリップ243とが水密になり、面材241,242間の目地部が止水される。
【0029】
次に、図3を用いて、第1屋根材24(図4の右側の面材242)の第2屋根材34と隣接する側の端部25について説明する。この端部25は上方且つ内側へL字状に折り曲げられており、垂直部25aと、水平部25bとを備えている。
【0030】
垂直部25aは、第1屋根材24の基部24aにおいて、第2屋根材34との隣接側の端から上方へ垂直に折り曲げられて形成されている。なお、基部24aは、ルーフィング23,33を介して第1野地板22の上面に配置される部分である。水平部25bは、垂直部25aの上端から内側へ水平に折り曲げられて形成されている。
【0031】
第2屋根材34は平板状に形成されている。第2屋根材34の構成は第1屋根材24と同様の構成なので説明を省略する。第2屋根材34の第1屋根材24と隣接する側の端部35は上方且つ内側へL字状に折り曲げられており、垂直部35aと、水平部35bとを備えている。
【0032】
垂直部35aは、第2屋根材34の基部34aにおいて、第1屋根材24との隣接側の端から上方に垂直に折り曲げられて形成されている。また垂直部35aは、第1屋根材24の垂直部25aよりも高い位置に配置されている。なお、基部34aは、ルーフィング23,33を介して第2野地板32の上面に配置される部分である。水平部35bは、垂直部35aの上端から内側へ水平に折り曲げられて形成されている。
【0033】
次に、屋根21,31間の防水構造を説明する。この防水構造は、スペーサ4、シール部材5(止水材)、カバー材6を備えている。
【0034】
スペーサ4は、双方の屋根21,31間に配置されて第1野地板22に固定されており、この状態でスペーサ4の上端が第2屋根材34の上端と同一の高さになるように形成されている。言い換えるとスペーサ4は、第2屋根材34と勾配且つ高さが同じなるように形成されている。
【0035】
また、スペーサ4は、平板状で第1屋根材24の上部を覆うように形成されている。スペーサ4の構造を具体的に説明する。スペーサ4は、水平に延びる基部41と、基部41の左端から上方且つ内側へL字状に折り曲げられたL字部42とを備えている。
【0036】
基部41は、第1屋根材24の下側に配置され、双方のルーフィング23、33を介して第1野地板22にビス9で固定されている。基部41の左側部41a(外側部)は双方の屋根21,31間に位置している。
【0037】
L字部42は、基部41の左側部41aから上方に延びる垂直部42aと、垂直部42aの上端から第1屋根21の内側へ延びる水平部42bとを備えている。
【0038】
垂直部42aは、第2屋根材34と同一の高さになるように形成されている。水平部42bは、第1屋根材24の水平部25bを覆うように接触して形成されている。
【0039】
シール部材5は平板状に形成されている。このシール部材5は、スペーサ4の水平部42bと、第2屋根材34の水平部35bとに接着して双方の水平部42b、35bを繋いで双方の水平部42b、35b間を塞いでいる。
【0040】
カバー材6は、シール部材5の上面にシール部材5を覆うように設けられている。このカバー材6は平板状に形成されており、シール部材5の上面に配置された基部61と、基部61の左右端(双方の屋根側端)から下方に折り曲げられた左折曲部62および右折曲部63とを備えている。
【0041】
基部61の左側部分(第2屋根31側部分)は、ブラインドリベット7を用いて、第2屋根材34の水平部35bにシール部材5を介して固定されている。水平部35bの内面にはブラインドリベット7との間にコーキング材8が入れられている。
【0042】
右折曲部63(第1屋根21側部分)は、スペーサ4および第1屋根材24の水平部42b、水平部25bに引っ掛けるようにL字状に形成されている。
【0043】
次に、図5図7を用いて防水構造の施工方法を説明する。
【0044】
(ステップS1、図6の(a))
最初に、双方の野地板22,32の上面にルーフィング23,33を配置する。配置方法を説明すると、まず、第1野地板22の上面に第1ルーフィング23を配置し、第2野地板32の上面に第2ルーフィング33を配置する。
【0045】
このときに、第1ルーフィング23の第2ルーフィング33と隣接する端部23aを第2野地板32の方へ出す。また、第2ルーフィング33の第1ルーフィング23と隣接する端部33aを第1野地板22の方へ出す。
【0046】
続いて、第1ルーフィング23の端部23aを第2ルーフィング33の下へもぐりこませ、第2ルーフィング33の端部33aを第1ルーフィング23の上に重ねる。最後に第2ルーフィング33の端部33aと第1ルーフィング23との継ぎ目をテープ(図示せず)で塞いで双方のルーフィング23,33を固定する。
【0047】
(ステップS2、図6の(b))
次に、第2屋根材34の組み付けを行う。まず、第2屋根材34の基部34aをルーフィング23,33を介して第2野地板32の上面に配置する。この状態で、基部34aを固定部材(図示せず)で第2野地板32に固定する。
【0048】
(ステップS3、図6の(c))
次に、スペーサ4の組み付けを行う。まず、スペーサ4の垂直部42aを双方の野地板22,32間に配置して第2屋根材34の垂直部35aと対向させる。この状態で基部41をルーフィング23,33を介して第1野地板22の上面にビス9で固定する。これによりスペーサ4の上端と第2屋根材34の上端が同一の高さになる。
【0049】
(ステップS4、図7の(d))
次に、第1屋根材24の組み付けを行う。まず、第1屋根材24をスペーサ4の内側に配置する。この状態で、基部24aを固定部材(図示せず)で第1野地板22に固定する。これにより、第1屋根材24の水平部25bはスペーサ4で覆われる。
【0050】
(ステップS5、図7の(e))
次に、シール部材5の組み付けを行う。組み付け方法は、シール部材5を、スペーサ4の水平部42bと第2屋根材34の水平部35bとに接着して双方の水平部42b、35bを繋ぐ。これにより、双方の水平部42b、35b間はシール部材5で塞がれる。
【0051】
(ステップS6、図7の(e)〜(f))
最後に、カバー材6の組み付けを行う。まず、カバー材6の右折曲部63を、スペーサ4および第1屋根材24の水平部42b、25bに引っ掛けて、カバー材6全体でシール部材5に被せる。次に、基部61の左側部分を第2屋根材34の水平部35bにシール部材5を介してブラインドリベット7で固定する。最後に、水平部35bの内面でブラインドリベット7との間にコーキング材8を入れる。この結果、カバー材6は、シール部材5を覆った状態になる。
【0052】
以上説明したように本実施の形態の屋根21,31間の防水構造では、第1野地板22に、第2屋根材34の上端と同一の高さになるスペーサ4を設け、スペーサ4の上部(水平部42b)と第2屋根材34の上部(35b)とに上部間を塞ぐシール部材5を繋いだ。
【0053】
したがって、シール部材5に対して従来のように双方の屋根21,31の隣接する端部21a,31aの高さを意識した折り曲げ加工を行う必要がないので、折り曲げ加工に高い精度を必要としない。よって、本実施の形態の屋根21,31間の防水構造は、シール部材5の加工に手間をかけずに施工を行うことができる。
【0054】
また、スペーサ4を第1屋根材24の上部を覆うように形成したので、スペーサ4と第1屋根材24の間に雨水が浸入するのを防ぐことができる。よって、本実施の形態の屋根21,31間の防水構造は、防水機能を高めることができる。
【0055】
また、シール部材5の上面にカバー材6を設けたので、屋根21,31間に雨水が浸入するのを確実に防ぐことができる。よって、本実施の形態の屋根21,31間の防水構造は、防水機能をより高めることができる。
【0056】
また、カバー材6の第1屋根21側部分(右折曲部63)をスペーサ4および第1屋根材24の上部(水平部42b,25b)に引っ掛けるように形成したので、カバー材6の取付作業を容易に行うことができる。
【0057】
さらに、カバー材6の第2屋根31側部分(基部61の左側部分)を、ブラインドリベット7を用いて、第2屋根材34の上部(水平部135b)にシール部材5を介して固定した。これによりカバー材6をシール部材5に密着させることが可能になり、屋根21,31間に雨水が浸入するのをより確実に防ぐことができる。よって、本実施の形態の屋根21,31間の防水構造は、防水機能をより高めることができる。
【0058】
(第2の実施の形態)
図8は本発明の第2の実施の形態の屋根121,131間の防水構造の斜視図である。図9図8の分解斜視図である。
【0059】
まず、屋根121,131の構成を説明する。右側の屋根121を第1屋根121と称し、左側の屋根131を第2屋根131と称する。
【0060】
第1屋根121は、下から上へ配置された第1野地板122、第1ルーフィング(図示せず)、第1屋根材124を備えている。第2屋根131は、下から上へ順に配置された第2野地板132、第2ルーフィング(図示せず)、第2屋根材134を備えている。
【0061】
第1野地板122は、第2野地板132よりも低い位置に配置されている。双方の野地板122,132の水下側にはそれぞれ軒樋11,12が配置されている。双方の野地板122,132はそれぞれ垂木(図示せず)で支持されている。各垂木はそれぞれ垂木受け160,170で支持されており、垂木受け160,170は梁161,171に結合されている。第1ルーフィングと第2ルーフィングは、第1の実施の形態のルーフィング23,33と同様に配置されているので詳しい説明は省略する(図3参考)。
【0062】
第1屋根材124は平板状の部材から形成されており、第2屋根材134よりも低い位置に配置されている。この第1屋根材124の水下側の端部126は軒樋11の上方に位置するように形成されている。
【0063】
第1屋根材124の第2屋根材134と隣接する端部125は、基部124aから上方且つ内側へL字状に折り曲げられている。これにより、端部125は、基部124aから上方へ垂直に折り曲げられた垂直部125aと、垂直部125aの上端から内側へ水平に折り曲げられた水平部125bとを備えている。なお、基部124aは、双方のルーフィングを介して第1野地板122の上面に配置される部分である。
【0064】
また、水下側の端部126の先端部127は、基部124aから上方且つ外側へL字状に折り曲げられている。これにより先端部127は、基部124aから上方へ垂直に折り曲げられた垂直部127aと、垂直部127aの上端から外側へ水平に折り曲げられた水平部127bとを備えている。水平部127bの下端にはフランジ部127cが形成されている。
【0065】
また、水下側の端部126の第2屋根材134と隣接する側と反対側の端には切り欠き128(排水部)が設けられている。この切り欠き128は、水下側から長さ方向にL字状に切り欠かれて形成されている。切り欠き128の下端にはフランジ128aが形成されている。また、この反対側の端には切り欠き128よりも水上側にフランジ128bが起立して形成されている。
【0066】
第2屋根材134は平板状の部材から形成されている。この第2屋根材134の水下側の端部136は軒樋12の上方に位置するように形成されている。
【0067】
水下側の端部136の先端部137は、基部134aから上方且つ外側へL字状に折り曲げられている。これにより先端部137は、基部134aから上方へ垂直に折り曲げられた垂直部137aと、垂直部137aの上端から外側へ水平に折り曲げられた水平部137bとを備えている。水平部137bの下端にはフランジ部137cが形成されている。基部134aは、双方のルーフィングを介して第2野地板132の上面に配置される部分である。
【0068】
水下側の端部136の第1屋根材124と隣接する端部138は、基部134aから反対側にL字状に折り曲げられた第1折曲部139と、基部134aから水上側にL字状に折り曲げられた第2折曲部140とを備えている。これにより水下側の端部136の第1屋根材124と隣接する側の端はL字状に形成されている。
【0069】
第1折曲部139は、基部134aから幅方向に上方へ垂直に折り曲げられた垂直部139aと、垂直部139aの上端から外側方(第1屋根材124の方)へ水平に折り曲げられた水平部139bとを備えている。水平部139bの下端にはフランジ部139cが形成されている。
【0070】
第2折曲部140は、基部134aから長さ方向に上方へ垂直に折り曲げられた垂直部140aと、垂直部140aの上端から水下側へ水平に折り曲げられた水平部140bとを備えている。水平部140bの下端にはフランジ部140cが形成されている。
【0071】
双方の垂直部139a,140aは、先端部137の垂直部137aと連続して形成されている。双方の水平部139b,140bは、先端部137の水平部137bと連続して形成されている。双方のフランジ部139c、140cは、先端部137のフランジ部137cと連続して形成されている。
【0072】
水下側の端部136の第1屋根材124と隣接する側と反対側の端には切り欠き130(排水部)が設けられている。この切り欠き130は、基部134aの水下側の端から長さ方向に端部136の半分までL字状に切り欠かれて形成されている。
【0073】
また、第2屋根材134において第2折曲部140よりも水上側にある端部135は、基部134aから上方且つ内側へL字状に折り曲げられている。これにより、この端部135は、基部134aから上方へ垂直に折り曲げられた垂直部135aと、垂直部135aの上端から内側へ水平に折り曲げられた水平部135bとを備えている。
【0074】
ここで、双方の屋根材124,134の隣接する端部125,135は、第1屋根材124の端部135の方が低い位置に配置されている。
【0075】
次に、屋根121,131間の防水構造を説明する。この防水構造は、第1の実施の形態と同様に、スペーサ104、シール部材105、カバー材106を備えている。
【0076】
スペーサ104は、双方の屋根121,131の間に配置されて第1野地板122に固定されており、この状態でスペーサ104の上端が第2屋根材134の水平部135bの上端と同一の高さになるように形成されている。言い換えるとスペーサ104は、第2屋根材134と勾配且つ高さが同じなるように形成されている。
【0077】
また、スペーサ104は、平板状で第1屋根材124の上部を覆うように形成されている。スペーサ104の構造は、第1の実施の形態のスペーサ4と同様に、水平に延びる基部141と、基部141の左端から上方且つ内側へL字状に折り曲げられたL字部142とを備えている。
【0078】
基部141は、第1屋根材124の下側に配置され、双方のルーフィング(図示せず)を介して第1野地板122にビス(図示せず)で固定されている。基部141の左側部41a(外側部)が双方の屋根21,31間に位置している。
【0079】
L字部142は、基部141の左側部141aから上方に延びる垂直部142aと、垂直部142aの上端から第1屋根121の内側へ延びる水平部142bとを備えている。
【0080】
垂直部142aは、第2屋根材134と同一の高さになるように形成されている。水平部142bは、第1屋根材124の水平部125bを覆うように接触して形成されている。
【0081】
シール部材105は平板状に形成されている。このシール部材105は、スペーサ104の水平部142bと、第2屋根材134の水平部135bとに接着して双方の水平部142b,135bを繋いで双方の水平部142b、135b間を塞いでいる。
【0082】
カバー材106は、シール部材105の上面にシール部材105を覆うように設けられている。このカバー材106は平板状に形成されており、シール部材105の上面に配置された基部161と、基部161の左右端(双方の屋根側端)から下方に折り曲げられた左折曲部162および右折曲部163とを備えている。
【0083】
基部61の左側部分(第2屋根131側部分)は、ブラインドリベット(図示せず)を用いて、第2屋根材134の水平部135bにシール部材105を介して固定されている。水平部135bの内面にはブラインドリベットとの間にコーキング材(図示せず)が入れられている。
【0084】
右折曲部163(第1屋根121側部分)は、スペーサ104および第1屋根材124の水平部142b,125bに引っ掛けるようにL字状に形成されている。
【0085】
次に、防水構造の施工方法を説明する。この施工方法の流れは、第1の実施の形態で説明した施工方法の流れと同じである。第1の実施の形態で使用した図5のフローチャートを用いて施工方法の内容を説明する。
【0086】
(ステップS1)
最初に、双方の野地板122,132の上面に双方のルーフィングを配置する。この配置方法は第1の実施の形態で説明した方法と同じなので説明を省略する。
【0087】
(ステップS2)
次に、第2屋根材134の組み付けを行う。まず、第2屋根材134の基部134aを双方のルーフィングを介して第2野地板132の上面に配置する。このときに、水下側の端部136を軒樋12の上方に位置させる。この状態で、基部134aを固定部材(図示せず)により第2野地板132に固定する。
【0088】
(ステップS3)
次に、スペーサ104の組み付けを行う。まず、スペーサ104の垂直部142aを双方の野地板122,132間に配置して第2屋根材134の垂直部135aと対向させる。この状態で基部141を双方のルーフィングを介して第1野地板122の上面にビス9で固定する。これによりスペーサ104の上端と第2屋根材34の上端が同一の高さになる。
【0089】
(ステップS4)
次に、第1屋根材124の組み付けを行う。まず、第1屋根材124をスペーサ104の内側に配置する。このときに、水下側の先端部127を第2屋根材134の水下側の端部136の第2折曲部140の先端と合わせ、水下側の端部126を軒樋11の上方に位置させる。この状態で、基部124aを固定部材(図示せず)で第1野地板122に固定する。これにより、第1屋根材124の水平部25bはスペーサ104で覆われる。
【0090】
(ステップS5)
次に、シール部材105の組み付けを行う。組み付け方法は、シール部材105を、スペーサ104の水平部142bと第2屋根材134の水平部135bとに接着して双方の水平部142b,135bを繋ぐ。これにより、双方の水平部142b、135b間はシール部材で塞がれる。
【0091】
(ステップS6)
最後に、カバー材106の組み付けを行う。まず、カバー材106の右折曲部163を、スペーサ104の水平部142bおよび第1屋根材124の水平部125bに引っ掛けて、カバー材106全体でシール部材105に被せる。この状態で、基部161の左側部分を第2屋根材134の水平部135bにシール部材105を介してブラインドリベットで固定する。最後に、水平部135bの内面でブラインドリベットとの間にコーキング材を入れる。この結果、カバー材106は、シール部材105を覆った状態になる。
【0092】
以上説明したように本実施の形態の屋根121,131間の防水構造では、第1野地板122に、第2屋根材134の上端と同一の高さになるスペーサ104を設け、スペーサ104の上部(水平部142b)と第2屋根材134の上部(135b)とに上部間を塞ぐシール部材105を繋ぐようにした。
【0093】
したがって、第1の実施の形態と同様にシール部材105に対して従来のように双方の屋根21,31の隣接する端部121a,131aの高さを意識した折り曲げ加工を行う必要がないので、折り曲げ加工に高い精度を必要としない。よって、本実施の形態の屋根121,131間の防水構造は、シール部材155の加工に手間をかけずに施工を行うことができる。
【0094】
また、スペーサ104を第1屋根材124の上部を覆うように形成したので、スペーサ104と第1屋根材124の間に雨水が浸入するのを防ぐことができる。よって、本実施の形態の屋根121,131間の防水構造は、防水機能を高めることができる。
【0095】
また、シール部材105の上面にカバー材106を設けたので、屋根121,131間に雨水が浸入するのを確実に防ぐことができる。よって、本実施の形態の屋根121,131間の防水構造は、防水機能をより高めることができる。
【0096】
また、カバー材106の第1屋根21側部分(右折曲部163)をスペーサ104および第1屋根材124の上部(水平部142b,125b)に引っ掛けるように形成したので、カバー材106の取付作業を容易に行うことができる。
【0097】
さらに、カバー材106の第2屋根131側部分(基部161の左側部分)を、ブラインドリベット7を用いて、第2屋根材134の上部(水平部135b)にシール部材105を介して固定した。これによりカバー材106をシール部材105に密着させることが可能になり、屋根121,131間に雨水が浸入するのをより確実に防ぐことができる。よって、本実施の形態の屋根121,131間の防水構造は、防水機能をより高めることができる。
【0098】
さらに本実施の形態では、双方の屋根材124,134の水下側の端部126,136をそれぞれ軒樋11,12の上方に位置するように形成した。さらに、双方の端部126,136に軒樋11,12へ雨水を送る切り欠き128,130を設けた。これにより、屋根材124,134を流れる雨水を軒樋11,12に効率良く送ることが可能になるので、雨水の排出を効率良く行うことができる。
【0099】
以上、本発明にかかる実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0100】
例えば、第2の実施の形態では、屋根材124,134の水下側の端部127,137に本発明の排水部として切り欠き128,130を設けたが、その他に穴や排水管を水下側の端部に設けても良い。
【0101】
また、第1の実施の形態と第2の実施の形態では、カバー材の双方の屋根側部分の一方を、スペーサおよび対応する屋根材の上部に引っ掛けるように形成したが、双方の屋根側部分をスペーサおよび双方の屋根材の上部に引っ掛けるように形成しても良い。また、スペーサの上部が屋根材の上部よりも水平方向に長い場合は、スペーサの上部に引っ掛けるように形成しても良い。
【0102】
また、第1の実施の形態と第2の実施の形態では、締結材を用いてカバー材の双方の屋根側部分の他方を対応する屋根材の上部にシール部材を介して固定したが、双方の屋根側部分を双方の屋根材にシール部材を介して固定しても良い。
【0103】
また、第1の実施の形態と第2の実施の形態では、スペーサを双方の屋根材間に配置したが、第1屋根材の内側に配置して第2屋根材の上端と同一の高さになるように形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように本発明の屋根間の防水構造では、シール部材の加工に手間をかけずに施工を行うことができる。したがって、本発明の屋根間の防水構造を、屋根間の防水構造の技術分野で十分に利用できる。
【符号の説明】
【0105】
4、104 スペーサ
5、105 シール部材
6、106 カバー材
11、12 軒樋
21、121 第1屋根
24、124 第1屋根材
25b,125b 第1屋根材の水平部(上部)
31、131 第2屋根
34、134 第2屋根材
35b、135b 第2屋根材の水平部(上部)
42b、142b スペーサの水平部(上部)
63、163 右折曲部
126 第1屋根材の水下側の端部
128 第1屋根材の切り欠き(排水部)
130 第2屋根材の切り欠き(排水部)
136 第2屋根材の水下側の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9