特許第5965313号(P5965313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965313神経変性障害およびアルツハイマー病を処置し、正常な記憶を改善するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965313
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】神経変性障害およびアルツハイマー病を処置し、正常な記憶を改善するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160721BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160721BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20160721BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20160721BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C07K14/435
   C07K19/00
   C12P21/02 C
   A61K37/02
   A61P43/00 111
   A61P25/28
【請求項の数】15
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2012-510993(P2012-510993)
(86)(22)【出願日】2010年5月12日
(65)【公表番号】特表2012-526557(P2012-526557A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】US2010034610
(87)【国際公開番号】WO2010132609
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年5月10日
(31)【優先権主張番号】12/464,850
(32)【優先日】2009年5月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】デュージ,ナズニーン
(72)【発明者】
【氏名】シンガー,エス.,ジョナスン
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/123680(WO,A1)
【文献】 特表2001−521043(JP,A)
【文献】 J.Biol.Chem.,1998 Jun 26,273(26),p.16281-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
A61K 38/00
C07K 14/00
C12N 1/00
UniProt/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる単離ポリペプチド:
(i)DEEEDEEL(配列番号5)、
(ii)RRSLGHPEPLSNGRP(配列番号6)、
(iii)RRSLGHPEPLSNGRPQGNSRQVVEQDEEEDEELTLKYGAK(配列番号7)、ならびに
(iv)DEEEDEELTLKYGAK(配列番号17)。
【請求項2】
請求項1に記載されるポリペプチドからなる第1のドメインと、Fcドメインを含む第2のドメインとを含む単離ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載されるポリペプチドからなる第1のドメインと、精製用ペプチドを含む第2のドメインとを含む単離ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載されるポリペプチドからなる少なくとも2つのポリペプチドを含むオリゴマーポリペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載されるポリヌクレオチドが導入されている組換え宿主細胞。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが宿主細胞ゲノムに組み込まれている、請求項7に記載の組換え宿主細胞。
【請求項9】
請求項1に記載されるポリペプチドを発現させるための方法であって、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されている組換え宿主細胞を培養することを含む、上記方法。
【請求項10】
前記組換え宿主細胞が、前記ポリヌクレオチドからの前記ポリペプチドの発現を促進させる条件のもとで培養される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドを単離することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
Aβの産生を阻害するのに使用される、請求項1に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項13】
記憶を改善するために使用される、請求項1に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項14】
前記ペプチドがGo、Gs、Gi、GzおよびGqからなる群から選択されるGタンパク質の活性を阻害する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
PS−1および/またはPS−2を発現する細胞においてチロシンキナーゼのSrcファミリーのメンバーの活性を阻害する、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に神経変性障害の治療に関し、さらに詳しくは、β−アミロイド(Aβ)の産生に必要なポリペプチドの生理学的相互作用をモジュレートするように設計された、プレセニリン/Gタンパク質/c-src結合性ポリペプチド及び小分子薬剤の群に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、成人の中期から後期の間の進行性の記憶障害や認知及び知的低下を特徴とするヒトの中枢神経系の変性障害である。この疾患は種々の神経病理学的特徴を伴い、その主なものは脳中のアミロイドプラークの存在とニューロンの神経原線維変性である。この疾患の病因は複雑であるが、AD症例の約10%は家族性のようであり、常染色体優性形質として遺伝する。これらの遺伝型のADには、その突然変異体の一部がこの疾患に対する遺伝的感受性を付与する少なくとも4つの異なる遺伝子がある。アポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子のσ4(Cys112Arg)対立遺伝子多型は、人生の後期に発症する高比率の症例でADに関連している。65才以前に発症する非常に低比率の家族性症例は、第21染色体上のβ−アミロイド前駆体タンパク質(APP)の突然変異が関係している。早期発症AD症例の大部分が関係する第3の遺伝子座が最近、染色体14q24.3にマッピングされた。遺伝性の早期発症ADの大部分(70〜80%)は第14染色体にマッピングされ、タンパク質プレセニリン-1(PS1)内の20を超える異なるアミノ酸置換の1つが原因のようである。あまり一般的ではないが、第1染色体上の同様のADリスク遺伝子座は、タンパク質プレセニリン-2(PS2、PS1と相同性が高い)をコードする。mRNA検出に基づくと、プレセニリン類は、遍在的に発現されるタンパク質のようであり、これは、これらが多くのタイプの細胞に必要な通常のハウスキーピングタンパク質であることを示唆する。
【0003】
プレセニリン1は43〜45kDaのポリペプチドであり、プレセニリン2は53〜55kDaのポリペプチドである。プレセニリン類は、界面活性剤感受性の高分子量複合体として存在する内在性膜タンパク質である。プレセニリン以外に、複合体の3つのタンパク質成分が知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、プレセニリン類の活性をモジュレートする物質を同定するための方法及び組成物を提供する。従って、本明細書に示した方法及び組成物は、(1):β-APPの細胞外N末端ドメインとPS-1又はPS-2との結合を干渉することにより;又は(2):阻害物質として小ペプチド模倣分子を使用することにより、又はβ-APPもしくはPS分子の相互作用表面上のエピトープに対する抗体分子の小フラグメントを使用することにより、脳中のAβの産生をモジュレートするのに使用することができる。一態様において、ペプチドは、PS-1又は-2の可溶性N末端ドメインである。
【0005】
一実施形態において、プレセニリンGタンパク質結合型受容体(GPCR)活性をモジュレートする物質の同定方法が提供される。この方法は、a)プレセニリンへのGタンパク質の結合を可能にする条件下で、プレセニリン又はその断片とGタンパク質とを接触させるステップ;b)a)の前、同時、又は後に、プレセニリン又はその断片と、所与の物質とを接触させるステップ;c)Gタンパク質へのプレセニリン介在結合をモニターするステップ;及びd)この物質がGタンパク質へのプレセニリンの結合をモジュレートするかどうかを判定することによって、プレセニリンGタンパク質結合型受容体(GPCR)活性をモジュレートする物質を同定するステップ、を含む。いくつかの態様において、モジュレーションは、Gタンパク質へのプレセニリンの結合の阻害による。別の態様において、モジュレーションは、Gタンパク質へのプレセニリン結合を活性化することによる。プレセニリンはプレセニリン-1(PS1)又はプレセニリン-2(PS2)であることができる。Gタンパク質はG、G、G、G、又はGであることができる。
【0006】
本開示はさらに、アルツハイマー病を処置するか、または、アルツハイマー病の発症を阻害する方法であって、対象を上記で記載される方法によって特定される物質と接触させることを含む方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様において、前記物質は、天然のもしくは合成のポリペプチドもしくはオリゴペプチド、ペプチド模倣物、小有機分子、多糖、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、RNAiもしくはsiRNA、asRNA、又はオリゴヌクレオチドなどである。
【0008】
本明細書に記載の方法は、in vitro又はin vivoで行うことができる。いくつかの態様において、方法はさらに、プレセニリンとGタンパク質とを接触させる前、同時、又は後に、プレセニリンとβ-APPとを接触させることを含む。
【0009】
別の実施形態において、プレセニリン介在Srcタンパク質キナーゼ活性をモジュレートする物質の同定方法が提供される。この方法は、a)プレセニリンへのβ-APPの結合を可能にする条件下で、プレセニリン又はその断片とβ-APPとを接触させるステップ;b)a)の前、同時、又は後に、プレセニリン又はその断片と、所与の物質とを接触させるステップ;c)プレセニリン介在Srcタンパク質キナーゼ活性をモニターするステップ;及びd)この物質がプレセニリン介在Srcタンパク質キナーゼ活性をモジュレートするかどうかを判定するステップ、を含む。
【0010】
また神経変性障害を治療するための組成物及び方法、さらに詳しくはβ−アミロイド(Aβ)(アルツハイマー病(AD)における主要な神経毒性剤であるオリゴペプチド)の産生に必要なポリペプチドの生理学的相互作用をモジュレートするように設計された小分子薬剤及びプレセニリン/Gタンパク質/c-src結合性ポリペプチドの群が提供される。本開示は、ADの神経毒性を顕著に減少させるか、又はその発症を遅らせるか、又は該疾患の重症度を減少させる、程度に脳中のAβの量を低下させる方法並びに組成物を提供する。これらの方法及び組成物は、アルツハイマー病のシグナル伝達及び進行をモジュレートするために、また記憶を改善するために有用である。
【0011】
本開示はまた、PS-1もしくはPS-2と、Gタンパク質GoA及びGoBとの相互作用を阻害する小分子物質を用いてAβの産生を阻害する方法を提供する。PS-1又はPS-2の細胞質C末端及び他のドメインは、GoA及び/又はGoBとPSとの相互作用部位であること、及びこのGo-PS細胞間結合が、おそらくはこの結合プロセスの下流の結果を介して、以後のAβ産生に必要であることが証明されている。
【0012】
本開示は同様に、PS-1及び/又はPS-2を発現する細胞と、GoへのPS-1及び/又はPS-2結合の下流の結果(例えばホスホリパーゼCによるGo活性化)を干渉する物質とを接触させることにより、Aβの産生を阻害する方法を提供する。
【0013】
本開示はまた、チロシンキナーゼのSrcファミリーのメンバーの活性を干渉するように選択された小分子、ペプチド、又は抗体の使用により、Aβの産生を阻害する方法を提供する。
【0014】
本開示はまた、PS−1および/またはPS−2と、β−APPとの間における相互作用を妨害するために選択される小分子、ペプチドまたは抗体の使用によってAβの産生を阻害する方法を提供する。
【0015】
本発明はさらに、β-APPを発現するがPSを発現しない第1のトランスフェクトされた細胞種と混合した、PSを発現するがβ-APPを発現しない第2の細胞種からなる細胞培養系で、Aβ産生のインヒビターについてアッセイする方法を提供する。この混合細胞培養物に加えられる物質の阻害作用は、(a)PS-1及びPS-2とGoA及びGoBとの相互作用;又は(b)チロシンキナーゼのSrcファミリー;又は(c)β-APPのN末端ドメインとPS-1及び/又はPS-2のN末端ドメインとの相互作用、のいくつかの可能性のある下流の作用の活性から測定される。
【0016】
本開示は、プレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドのN末端フラグメントのアミノ酸配列から本質的になる単離ポリペプチドを提供する。1つの実施形態において、本発明の単離ポリペプチドは、(i)DEEEDEEL(配列番号5)、(ii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端のどちらかにおいてさらに含む配列番号5(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(iii)RRSLGHPEPLSNGRP(配列番号6)、(iv)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号6(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(v)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(iii)または(iv)の配列(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(vi)RRSLGHPEPLSNGRPQGNSRQVVEQDEEEDEELTLKYGAK(配列番号7)、(vii)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号7(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(viii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(vi)または(vii)からなる配列(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、および、(ix)非天然型アミノ酸またはD−アミノ酸を含む前記のいずれか(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)からなる群から選択されるアミノ酸配列から本質的になる。1つの実施形態において、上記ペプチドは長さにおいて約5個〜80個のアミノ酸のN末端フラグメントのアミノ酸配列を含み、かつ、アミノ酸1からアミノ酸80付近までの配列番号2または配列番号4に示されるような配列を有する。別の実施形態において、上記ペプチドは、精製またはオリゴマーの形成のために有用な第2のペプチドに連結することができる。本開示はまた、上記で特定された単離ポリペプチドのいずれか2つ以上を医薬的に許容され得るキャリアにおいて含む組成物を提供する。上記ペプチドはアセチル化またはグリコシル化されていてもよい。
【0017】
別の実施形態において、本開示は、プレセニリンまたはβ−APPと相互作用する少なくとも2つのペプチドを含むオリゴマーを提供する。これら少なくとも2つのペプチドは同じまたは異なっていてもよく、あるいは、直接に融合/連結されていてもよく、あるいは、連結ドメインまたは連結ペプチドによって融合/連結されていてもよい。
【0018】
本開示はまた、本明細書中に記載されるペプチドまたはオリゴマーをコードするヌクレオチド配列から本質的になる単離ポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは発現ベクターに組み込むことができる。本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターは宿主細胞にトランスフェクションまたは形質転換することができる。
【0019】
本開示は、上記および本明細書中に記載されるようなポリペプチドを発現させるための方法であって、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されている組換え宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。
【0020】
本開示はまた、Aβの産生を阻害する方法であって、細胞を、β−APPおよびプレセニリン−1(PS−1)および/またはプレセニリン−2(PS−2)の細胞間結合あるいはGタンパク質の活性化を妨害する妨害物質と接触させることを含む方法を提供する。1つの実施形態において、妨害物質は、プレセニリン−1またはプレセニリン−2のの細胞外ドメインを含む。別の実施形態において、細胞外ドメインは、PS−1またはPS−2あるいはそのオリゴマーのN末端領域を含む。さらに別の実施形態において、妨害物質は、PS−1またはPS−2の可溶性のN末端ドメインを含む。さらに別の実施形態において、妨害物質は、(i)DEEEDEEL(配列番号5)、(ii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端のどちらかにおいてさらに含む配列番号5(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(iii)RRSLGHPEPLSNGRP(配列番号6)、(iv)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号6(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(v)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(iii)または(iv)の配列(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(vi)RRSLGHPEPLSNGRPQGNSRQVVEQDEEEDEELTLKYGAK(配列番号7)、(vii)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号7(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(viii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(vi)または(vii)からなる配列(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、および、(ix)非天然型アミノ酸またはD−アミノ酸を含む前記のいずれか(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
本開示はまた、細胞を、プレセニリン−1および/またはプレセニリン2の細胞外ドメインを含むペプチドと接触させることを含む、Aβの産生を阻害する方法を提供する。別の実施形態において、上記細胞外ドメインは、PS−1またはPS−2あるいはそのオリゴマーのN末端領域を含む。さらに別の実施形態において、上記ペプチドは、PS−1またはPS−2の可溶性のN末端ドメインを含む。さらに別の実施形態において、上記ペプチドは、(i)DEEEDEEL(配列番号5)、(ii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端のどちらかにおいてさらに含む配列番号5(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(iii)RRSLGHPEPLSNGRP(配列番号6)、(iv)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号6(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(v)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(iii)または(iv)の配列(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(vi)RRSLGHPEPLSNGRPQGNSRQVVEQDEEEDEELTLKYGAK(配列番号7)、(vii)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号7(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、(viii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(vi)または(vii)からなる配列(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)、および、(ix)非天然型アミノ酸またはD−アミノ酸を含む前記のいずれか(ただし、当該ペプチドは細胞・細胞相互作用を阻害するか、または、Aβ産生を阻害するか、または、β−APPに結合する)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、上記方法は、医薬組成物における前記ペプチドのいずれか2つ以上の組合せを含む。
【0022】
本開示はまた、PS−1および/またはPS−2を発現する細胞を、PS−1および/またはPS−2のGタンパク質との相互作用を阻害する物質、あるいは、PS−1および/またはPS−2の活性を改変することによってGタンパク質の活性化を阻害する物質と接触させることによってAβの産生を阻害する方法を提供する。1つの実施形態において、物質は、GoA、GoB、Gおよび/またはGとともにPS−1および/またはPS−2のC末端テールドメインおよび/または他の細胞質ドメインと相互作用する。より具体的な実施形態において、PS−2の細胞内ループ3、または、PS−1およびPS−2のC末端領域(例えば、アミノ酸1〜20および/または21〜39、あるいは、そのような配列に対する少なくとも95%の同一性を有するペプチド)を含むペプチド。
【0023】
別の実施形態において本開示は、被験体の認知機能及び/又は記憶を改善する方法を提供する。この方法は、PS-1及び/又はPS-2とGタンパク質(GoA及びGoB)との相互作用を阻害する物質を投与することを含む。あるアプローチにおいてこの物質は、GoA及び/又はGoBと相互作用するPS-1及び/又はPS-2のC末端テイル及び/又は他の細胞質ドメインと相互作用する。この物質はまた、GoへのPS-1及び/又はPS-2結合の下流の結果(例えばホスホリパーゼCによるGo活性化)を干渉する場合がある。別のアプローチにおいてこの物質は、PS-1及び/又はPS-2を発現する細胞におけるチロシンキナーゼのSrcファミリーのメンバーの活性を阻害する。各場合にこの物質は、対照被験体と比較して、認知機能及び/又は記憶保持を改善する量で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、PS-1がGPCRであるかどうかを判定するための代表的試験を示す。GoがPS-1と相互作用するかどうかを判定するために、異なる細胞培養物の抽出物を分析した(必要な対照を含む)。各レーンで、特定の細胞抽出物をまずPS-1に対するモノクローナルAb(MAb)を用いて免疫沈降させた;次に免疫沈降物を溶解し、SDS-PAGE電気泳動にかけ、得られたゲルをGoに対する抗体(この抗体はGoA及びGoBの両方を認識する)を用いてウェスタンブロットした。レーン1は、トランスフェクトしていないES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞の抽出物の対照である。予想されたように、この抽出物は、PS-1に対するAbを用いてもGoA(又はGoB)は免疫沈降されないことを示した。レーン2はES細胞の抽出物であり、これはまずPS-1のみでトランスフェクトされ、GoAではトランスフェクトされていないものであった。GoAについてはタンパク質バンドは観察されず、すなわちこれは別の対照実験であった。レーン3は、PS-1とGoAの両方でトランスフェクトしたES細胞の抽出物である。この抽出物では、GoAはPS-1とともに免疫沈降され、これはPS-1がGoAに結合したがGoBには結合しなかったことを示す。C末端「テイル」(これは膜から水性細胞内コンパートメント中に突き出ている)のないPS-1(レーン4)をGoA(レーン6)とともにESダブルヌル細胞にトランスフェクトしても、PS-1テイルレスとともにGoAはほとんど又はまったく免疫沈降されず、これはPS-1のC末端ドメインがPS-1へのGoA結合の主要な領域であることを示している。
図2図2は、PS-1の代わりにPS-2を用いた図1と同様の実験のウェスタンブロットを示す。レーン2と4は、テイルレスPS-1と異なり、テイルレスPS-2は依然としてGoA(及びGoB)に結合することができ、従ってGoAとGoBの結合部位は、PS-1の場合のように(図1)、PS-2のC末端ドメインに限定されないことを示す。レーン1はトランスフェクトしていないES(PS-1-/-/PS-2-/-)である。レーン2はPS-2+GoAである。レーン3はテイルレスPS-2+GoAである。レーン4はPS-2+GoBである。レーン5はテイルレスPS-2+GoBである。
図3図3は、PS-1へのGoA結合を示す独立した手法を含む。GTPのアナログである[35S]-GTPγSはGタンパク質の活性部位に共有結合するが、これは百日咳毒素(PTx)であらかじめ反応させることでブロックされる。カラム2では、GoAへの35S取り込みの8倍増加があり(これはPS-1に対するAbで免疫沈降される)、GoBには取り込まれない(カラム4)。従ってPS-1はGoA(これは[35S]-GTPγSに反応してGタンパク質として同定される(カラム2))に結合するが、GoAより程度は小さいがGoBにも結合する(カラム4)。GoA及びGoBへの35Sの結合は、PTxで前処理すると阻止される(カラム3と5)。
図4図4は、PS-2及びGタンパク質GoAのcDNAでトランスフェクトされたES細胞の抽出物における35SGTPγS取り込みを示すグラフである。
図5図5は、固定化した細胞の免疫蛍光顕微鏡標識を示す。a)ヒトPS-1 N末端ドメインに対する1次ラットMab #1563(パネル1)とFITCコンジュゲート型抗ラットIgG 2次抗体とで、トランスフェクトされていない(固定化されているが透過処理していない)DAMI細胞の2重免疫蛍光顕微鏡標識は、内因性PS-1アミノ末端ドメインの細胞表面免疫標識を示す。パネル2は、同じ細胞が、β-APP細胞外ドメインに対するMab #348とTRITCコンジュゲート型抗マウスIgG 2次抗体で標識したとき、多量の細胞表面β-APPは発現しないことを示す。パネル3は、パネル1と2の細胞のNomarski画像を示す。b)β-APPでトランスフェクトした(固定化されているが透過処理していない)DAMI細胞の2重免疫蛍光顕微鏡標識は、β-APP細胞外ドメインに対するMab #348とTRITCコンジュゲート型2次抗体とで標識したとき、β−APPの細胞表面発現を示す(パネル2)。パネル1と3は、(a)のように処理された同じ細胞である。c)PS-1でトランスフェクトした(固定化されているが透過処理していない)DAMI細胞の免疫蛍光顕微鏡標識は、(a)に記載したものと同じ1次抗体と2次抗体とで標識したとき、細胞表面PS-1の高発現を示す(パネル1)がβ-APPの高発現は示さない(パネル2)。パネル3は、パネル1と2の細胞のNomarski画像を示す。これらの実験は、PS-1によるDAMI細胞のトランスフェクションはβ-APPの細胞表面発現を引き起こさないことを示す。d)β-APPでトランスフェクトした(固定化されているが透過処理していない)ES細胞(PS-1とPS-2についてダブルヌル)の免疫蛍光顕微鏡標識。細胞は、β-APP細胞外ドメインに対するMab #348とTRITCコンジュゲート型2次抗体とで標識したとき、β−APPの細胞表面発現を示す(パネル2)。パネル1は、ヒトPS-1 N末端ドメインに対する1次ラットMab #1563とFITCコンジュゲート型の適切な2次抗体とによる標識の結果を示し、これはESダブルヌル細胞の表面上のPS-1の予測された欠如を示している。パネル3は、パネル1と2の細胞のNomarski画像を示す。e)トランスフェクトしていない(固定化されているが透過処理していないES細胞(PS-1とPS-2についてダブルヌル)の免疫蛍光顕微鏡標識。細胞は、β-APP細胞外ドメインに対するMab #348とTRITCコンジュゲート型2次抗体とで標識したとき、内因性マウスβ−APPbの細胞表面発現を示す(パネル2)。パネル1と3はdのように標識した。これらのトランスフェクトしていないES細胞では、PS-1について細胞表面標識が観察されない(パネル1)。バー、20μm。
図6図6は、β-APPのみを発現するトランスフェクトES細胞と、PS-1のみを発現するトランスフェクトDAMI細胞とを混合した後数分以内に、細胞抽出物のELISA分析により検出すると、混合細胞培養物中に一過性のタンパク質チロシンリン酸化プロセスが発生することを示す。この活性は混合後約8〜10分でピークを示した(a)。25μgの精製可溶性β-APP(b)又は25μgのFLAGに融合したPS-1のN末端ドメインの精製ペプチド(c)の存在下で行った同じ実験は、(a)で観察された増加を示さなかった。しかしFLAGに融合したPS-2の非特異的N末端ドメインの精製ペプチド25μgの添加(d)は、(a)に非常によく似たタンパク質チロシンキナーゼ活性の一過性増加を生じた。
図7-1】図7のa−dは、チロシンリン酸化酵素活性の性質を調べるための実験を示す。合成ペプチドを用いるSrcファミリーキナーゼアッセイ。a及びb:混合後の時間の関数としての、別々にトランスフェクトしたDAMI細胞とのβ-APP:PS-1相互作用。β-APP:PS-1(a)と対照pcDNA3:PS-1(b)相互作用の両方について、Srcファミリー基質ペプチド{lys19}cdc2(6-20)-NH2(黒バー)と対照ペプチド{lys19Phe15}cdc2(6-20)NH2(白バー)と{lys19ser14val12}cdc2(6-20)NH2(灰色バー)とを使用して、Srcキナーゼ活性をアッセイした。c及びd:混合後の時間の関数としての、別々にトランスフェクトしたDAMI細胞とのβ-APP:PS-2相互作用。β-APP:PS-2(c)と対照pcDNA3:PS-2(d)相互作用の両方について、Srcファミリー基質ペプチド{lys19}cdc2(6-20)-NH2(黒バー)と対照ペプチド{lys19Phe15}cdc2(6-20)NH2(白バー)と{lys19ser14val12}cdc2(6-20)NH2(灰色バー)とを使用して、Srcキナーゼ活性をアッセイした。
図7-2】(図7−1の続き)
図8図8のa-bはチロシンキナーゼ活性の阻害を示す。β-APPとPS-1とで別々にトランスフェクトし、10μg/mlのハービマイシンA(a)及び10nM PP2(b)の存在下及び非存在下で混合したDAMI細胞のチロシンキナーゼ活性を、混合後の時間の関数として示すためのELISA。
図9図9のa-bは、混合細胞の抽出物中のβ-APP:PS-1細胞間相互作用:C-src活性を示す。a. ウェスタンイムノブロット。別々にトランスフェクトしたDAMI細胞の混合物とのβ-APP:PS-1相互作用。β-APPでトランスフェクトしたDAMI細胞をPS-1でトランスフェクトしたDAMI細胞と0〜12分混合した同じ実験からの、1次抗PTyrポリクローナル抗体(パネル1)及び抗pp60c-srcモノクローナル抗体(パネル2)を用いたウェスタンイムノブロット。パネル3:pp60c-src抗体を用いた対照pp60c-srcタンパク質の抗体標識。パネル4:β-APPでトランスフェクトしたESダブルヌル細胞をPS-1でトランスフェクトしたDAMI細胞と相互作用させた実験からの、パネル1と同様の1次抗PTyr抗体を用いたウェスタンイムノブロット。b.in vitroリン酸化タンパク質のオートラジオグラフィー。別々にトランスフェクトしたβ-APP及びPS-1 DAMI細胞混合物の混合後0〜12分での抽出物を、まずc-Srcに対する抗体で免疫沈降させ、次にγ32P-ATPによりin vitroでリン酸化した。自己リン酸化反応物をSDS-PAGEにかけ、次にオートラジオグラフィーを行った。
図10図10のa-bは、混合細胞の抽出物中のβ-APP:PS-2細胞間相互作用:C-Src活性を示す。a.ウェスタンイムノブロット。別々にトランスフェクトし混合したDAMI細胞の抽出物の、混合後の時間の関数としてのβ-APP:PS-2相互作用。パネル1及び2:β-APPとの細胞間相互作用において、PS-1でトランスフェクトした細胞の代わりにPS-2でトランスフェクトした細胞を使用し、細胞を1〜20分混合した以外は図7aと同じである。b. in vitroリン酸化タンパク質のオートラジオグラフィー。パートa.と同じ抽出物。β-APPとの細胞間相互作用においてPS-1でトランスフェクトしたDAMI細胞の代わりにPS-2でトランスフェクトしたDAMI細胞を使用した以外は5bと同じである。
図11図11のa-dは、混合細胞の抽出物中のβ-APP:PS-2細胞間相互作用:Lyn及びFynの活性を示す。a及びb. ウェスタンイムノブロット:β-APP:PS-2相互作用。β-APPでトランスフェクトしたDAMI細胞をPS-2でトランスフェクトしたDAMI細胞と0〜20分混合し、抽出物を作製した同じ実験からの、1次抗Lynポリクローナル抗体(a、パネル1)及び抗Fynポリクローナル抗体(b、パネル1)を用いたウェスタンイムノブロット。Lyn又はFynタンパク質の濃度に経時的変化は観察されなかった。パネル2:それぞれの抗体との対照Lyn(a)及びFyn(b)タンパク質の抗体標識。c及びd. in vitroリン酸化タンパク質のオートラジオグラフィー:β-APP:PS-2相互作用。β-APPとPS-2とを混合したトランスフェクト細胞の混合物の混合後0〜20分の抽出物を、まずLyn(c)及びFyn(d)に対する抗体で免疫沈降させ、次にγ32P-ATPによりin vitroでリン酸化した。自己リン酸化反応生成物をSDS-PAGEにかけ、次にオートラジオグラフィーを行った。
図12図12は、PSの細胞内ドメインを示す。
図13図13は、Aβ産生に対する細胞間β-APP:PS相互作用の効果を示す。
図14図14のA〜Cは、Aβの産生についての、特異的なβ−APP:PS媒介の細胞・細胞相互作用からのGタンパク質活性化結果を示す。(A)低密度および高密度のβ−APP:PS−1共培養における細胞内Gタンパク質の活性化を明らかにするための32S−GTPgS取り込み。Gaに対する抗体K−20による免疫沈殿の後での、β−APPオンリーのPS−1オンリー細胞との高密度での共培養における32S−GTPgS取り込み(レーン1)。レーン1は、基礎レベルを上回る32S−GTPgS取り込みにおける200%を超える増大を示す(下記参照)。レーン2:33%の増大を示す、より低い密度で培養されたときの同じ細胞。レーン3:PTxの存在下での高密度共培養は32S−GTPgS結合を基礎よりも38%低くした。レーン4:β−APPがベクターpcDNA3によって置き換えられた高密度共培養。レーン5:PS−1がpcDNA3によって置き換えられた高密度共培養。ともに、恐らくは、pcDNAトランスフェクション細胞に存在する内因性のマウスβ−APPまたはマウスPS−1の存在のために、低いレベルのGタンパク質活性化を示す。データが、β−APP:PS−1細胞間相互作用によって促進される活性化として示され、百分率として表される(この場合、0%が、非トランスフェクションESヌル細胞および非トランスフェクションAPP−/−線維芽細胞からの等量での抽出物を混合することによって調製されるコントロールにおける32S−GTPgS結合である)。(B)および(C)種々の細胞密度およびPTxの存在の有無でのPS−1:β−APP共培養におけるAβ産生。1.5×10個(レーン1およびレーン4)、0.3×10個(レーン2)および0.15×10個(レーン3)の最終的数での35S−metの存在下における、β−APPオンリーのPS−1オンリー細胞との共培養。PTx(500ng/ml)をレーン4における高密度培養に加えた。(B)それぞれの細胞抽出物の同等量(100μgのタンパク質)を、MAb 6E10により免疫沈殿し、bicene−trisゲルで電気泳動し、オートラジオグラフに供した。細胞あたりの産生されたAβの量が細胞密度の低下とともに低下した(B、レーン1対レーン2およびレーン3)。高密度培養におけるPTxの存在(B、レーン4)は、PTxを含有しない類似する培養(B、レーン1)において産生されるAβを完全に阻害した。(C)細胞培養の密度を写真撮影した。
図15図15のA〜Bは、β−APP:PS媒介の細胞・細胞相互作用の特異的な阻害はGタンパク質Gaの活性化およびAβ産生の両方を阻害することを示す。(A)PS−1ペプチド1−80の存在下におけるAβ産生を測定するためのELISA。β−APPオンリー発現細胞およびPS−1オンリー発現細胞の共培養を増大する量のペプチド1−80(0〜3μM)の存在下および非存在下で行った。Aβ産生をELISAによって求めた。Aβ産生がペプチド1−80によって用量依存的様式で阻害された。(B)PS−1ペプチド1−80の存在下におけるGタンパク質活性化を測定するためのGTPgSアッセイ。β−APPオンリー発現細胞およびPS−1オンリー発現細胞の共培養を増大する量のペプチド1−80(0〜3μM)の存在下および非存在下で上記(A)の場合のように行った。35S−GTPgSアッセイを、ペプチド1−80によって用量依存的様式で同様に阻害されたGタンパク質活性化の尺度として抽出物に対して行った。データがGタンパク質活性化の阻害として示され、百分率として表される(この場合、100%がペプチド1−80の非存在下でのβ−APP:PS−1共培養における35S−GTPgS結合である)。
図16図16のA〜Cは、β−APPの可溶性エクトドメイン(β−APPs)によるGタンパク質活性化を示す。(A)部分精製されたβ−APPsが、示されるβ−APPsの濃度でPS−1オンリーのAPP−/−線維芽細胞培養物に加えられた場合、35S−GTPgS取り込みが用量依存的様式で増大した(曲線1);類似する濃度のβ−APPsが、ほんの内因性レベルにすぎないPSを発現する非トランスフェクションAPP−/−線維芽細胞の培養物に加えられた場合には、予想されたように、35S−GTPgS取り込みにおけるほどほどにすぎない増大が生じた(曲線3);(β−APP抗体による前処理の後の)同等なβ−APPs枯渇調製物の添加は、PS−1によりトランスフェクションされたAPP−/−線維芽細胞に加えられたとき、35S−GTPgS取り込みにおける増大を全くもたらさなかった(曲線4)。無関係の抗体(ヤギ抗ラットIgG)により同様に処理されたβ−APPsの同等な調製物の添加は、非処理サンプルよりもわずかに低い値を示した(曲線2)。類似する濃度のβ−APPsは、非トランスフェクションES(PS−/−)の培養物に加えられたとき、35S−GTPgS取り込みにおける有意な増大を全く示さなかった(曲線5)。データが、β−APPsによって促進される刺激化として示され、百分率として表される(この場合、0%がβ−APPsの非存在下での35S−GTPgS結合である)。(B)部分精製されたβ−APPsのSDS−PAGEおよびウエスタンブロット。レーン1は、この研究で使用された部分精製β−APPs(矢印)のクーマシー染色ゲルを示す。レーン2は、β−APPsのバンドを示す、MAb348による同じ調製物のウエスタンブロットである。(C)MAb348により処理されたサンプルにおけるβ−APPsの枯渇を示すためのウエスタンブロット。レーン1:非処理サンプル;レーン2、図18Aで使用されるMAb処理サンプル。
図17図17のA〜Bは、ラットの膜における内因性Gタンパク質の活性化を示す。(A)可溶化されたラット海馬膜(100μg)に15分間加えられた増大する濃度(0〜400pM)のβ−APPsは35S−GTPgS取り込みを用量依存的様式で増大させた。(B)PS−1およびPS−1に対するポリクロナールAbの混合物により最初に前処理されたPS枯渇化ラット膜へのβ−APPsの同様な添加。PS枯渇化膜へのβ−APPsの添加は35S−GTPgS取り込みにおける増大を全く示さなかった。データが、β−APPsによって促進される刺激化として示され、百分率として表される(この場合、100%がβ−APPsの非存在下での35S−GTPgS結合である)。
図18図18のA〜Cは、ヒトPS−1細胞質ドメインに対するヒトGタンパク質Gの直接的な共役を示す。(A)様々なトランスフェクションES細胞の抽出物を最初に抗PS−1ループMAbにより免疫沈殿し、免疫沈殿物を電気泳動し、(GoAおよびGoBを認識する)G抗体K20によるウエスタンブロッティングに供した。レーン1:非トランスフェクションESヌル細胞;レーン2〜6、下記のcDNAによりトランスフェクションされたESヌル細胞:PS−1オンリー(レーン2)、PS−1およびGoAの両方(レーン3)、PS−1およびGoBの両方(レーン4)。(B)細胞質ループドメイン(1、2および3)および細胞質C−テールの場所を示す7−TM PS−1。(C)ラット脳のGタンパク質への35S−GTPgS結合に対するPS−1細胞質ペプチドフラグメントの影響。ペプチド(200μM)が、前処理されることなくインキュベーション混合物に含まれ、35S−GTPgSの蓄積が求められた。データが、ペプチドによって促進される活性化として示され、百分率として表される(この場合、100%がペプチドの非存在下での35S−GTPgS結合である)。レーン1、ペプチド非添加;レーン2、ループ1残基1〜16(ペプチドの一覧については表1を参照のこと);レーン3、ループ1残基17〜32;レーン4、ループ2;レーン5、ループ3;レーン6、C−テールの残基1〜20;レーン7、C−テールの残基21〜39。細胞質ループ3(レーン5)と、C−テールの最初の20個のアミノ酸を含むペプチドC(1−20)(レーン6)とのみが、ペプチドを伴わないサンプルを上回る35S−GTPgS結合の活性化における著しい200%の増大を促進した。
図19図19は、本開示の方法で単離されるポリペプチドのヘパリンアフィニティークロマトグラフィーを示す。
図20図20は、ペプチドおよびポリペプチドの分離のためのゲルろ過クロマトグラフィーを示す。
図21図21は、35S−GTPγS取り込みに対するGタンパク質ミニ遺伝子阻害剤の影響を示す。
図22図22は、Aβ産生に対するGタンパク質ミニ遺伝子阻害剤の影響を示す。
図23図23のA〜Cは、種々のGタンパク質についての様々な細胞内ドメインの存在下における35S−GTPγS取り込みを示す。(a)Gα、(b)G、および、(c)G
図24図24は、合成ペプチドの存在下におけるβ−APP:PS−1細胞間相互作用の後でのAβ産生の阻害を示す。β−APPオンリー細胞およびPS−1オンリー細胞の共培養時における0〜3μMのペプチド4、ペプチド7およびペプチド8のみの添加が、ELISAアッセイによって測定される場合、細胞・細胞相互作用およびAβ産生を阻害する。ペプチド4:(15−mer)RRSLGHPEPLSNGRP(配列番号6);ペプチド5:(15−mer)SNGRPQGNSRQVVEQ(配列番号15);ペプチド6:(15−mer)RQVVEQDEEEDEELT(配列番号16);ペプチド7:(15−mer)DEEEDEELTLKYGAK(配列番号17);ペプチド8:(15−mer)DEEEDEEL(配列番号5)。
図25図25は、図24のペプチドを使用するTgマウスにおけるインビボでのAβ産生を示す(1:残基1から残基80までの配列番号2;2:残基1から残基40までの配列番号2;3:残基41から残基80までの配列番号2(配列番号7);4:残基41から残基55までの配列番号2(配列番号6);8:残基63から残基73までの配列番号2(配列番号8);9:残基41から残基46までの配列番号2;および10:残基47から残基55までの配列番号2)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「この(the)」は、文脈上特に明記しない場合は複数形を含む。すなわち、例えば「タンパク質(a protein)」は複数のそのようなタンパク質を含み、「この細胞(the cell)」との言及は、当業者に公知の1つ又はそれ以上の細胞への言及を含む、などである。
【0026】
同様にまた、“or”(または、もしくは、あるいは)の使用は、別途言及される場合を除き、“and/or(および(ならびに)/または(もしくは、あるいは)”を意味する。同様に、“comprise”、“comprises”、“comprising”、“include”、“includes”および“including”は互いに交換可能であり、限定であることが意図されない。
【0027】
様々な実施形態の記載において、用語“comprising(含む)”が使用される場合、当業者は、いくつかの特定の場合において、実施形態が代替として、“consisting essentially of(から本質的になる)”または“consisting of(からなる)”の表現を使用して記載され得ることを理解するであろうことをさらに理解しなければならない。
【0028】
特に明記しない場合は、本明細書で使用するすべての技術及び科学用語は、本発明の属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様もしくは同等の方法及び材料は、開示された方法及び組成物の実施に使用できるが、方法、装置、及び材料の例は本明細書に記載される。
【0029】
上記の及び本文を通して記載される刊行物は、本出願の出願日前の開示を示すためにのみ提供されるものである。決して、先行の開示により本発明者らがかかる開示に先行する権利が無いことを、認めるものではない。
【0030】
本開示は、アルツハイマー病およびアルツハイマー型障害を処置するために、ならびに、プレセニリンのβ−APPとの相互作用によって調節されるニューロンの発達および活性のために有用な方法および組成物を提供する。本開示は、プレセニリン−1および/またはプレセニリン−2のβ−APPとの相互作用がAβの生成をもたらすことを明らかにする。さらに、プレセニリンは、β−APPと結合すると、Gタンパク質を活性化することを明らかにする。
【0031】
本開示は、β−アミロイド前駆体タンパク質(β−APP)と、PS−1またはPS−2とが、細胞間のシグナル伝達システムの成分であることを明らかにする。β−APPの1つまたは複数の形態が、PS−1またはPS−2のどちらかと、それらのそれぞれの細胞膜から突き出るそれらの細胞外ドメインを介して特異的に結合する。この結合は、神経の正常な生理学または発達にとって重要である細胞間のシグナル伝達事象をインビボで誘導する。この経細胞分子結合の副産物、小胞形成のプロセス、細胞内在化およびタンパク質分解的分解が開始され、これらにより、脳の様々な領域におけるAβの形成および細胞放出ならびにその遅い蓄積が生じる。
【0032】
本開示は、PS−1、PS−2およびβ−APPが細胞間のシグナル伝達において役割を果たすことを明らかにする。これら3つのタンパク質はこれまで、PSタンパク質が直接的または間接的のどちらかで関与するβ−APPからAβへのタンパク質分解的フラグメント化におけるそれらのそれぞれの役割について調べられている。加えて、一方の細胞表面におけるβ−APPの1つまたは複数の形態と、もう一方の細胞表面におけるPS−1(またはPS−2)とは、正常な生理学において役割を有する細胞間シグナル伝達システムの特異的なリガンド成分および受容体成分であるかもしれない。本開示は、PSタンパク質に対するβ−APPの細胞間表面結合が正常な生理学において機能して、シグナル伝達プロセスを接着性細胞の一方または両方の内部で誘導し、これにより、生物にとって重要な発達上の結果を最終的にはもたらすことを証明する。
【0033】
用語「アミロイドベータペプチド」は、アミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)からプロセシングされるアミロイドベータペプチドを意味する。最も一般的なペプチドには、アミロイドベータペプチド1−40、アミロイドベータペプチド1−42、アミロイドベータペプチド11−40およびアミロイドベータペプチド11−42が含まれる。他のあまり一般的でないアミロイドベータペプチド種が、x−42(この場合、xは2〜10および12〜17の範囲である)、および、1−y(この場合、yは24〜39および41の範囲である)として記載される。記載目的および技術上の目的のために、「x」は2〜17の値を有し、「y」は24〜41の値を有する。
【0034】
プレセニリンは、1つまたは複数の異なる予測アルゴリズムによって、あるいは、実験的タンパク質分解的溶解実験および溶解性アッセイなどによって特定され得る数のドメインを有する。プレセニリン−1(PS−1)は、下記で示されるような数のドメインを有する。これらのドメインは、このポリペプチドを発現する生物に依存して、どちらかの端部において1個のアミノ酸から5個のアミノ酸まで変化し得ることが認識される。1つの実施形態において、PS−1のN末端ドメインは配列番号2の残基x1から残基x2付近までを含む(ただし、x1は、配列番号2のアミノ酸1、アミノ酸2、アミノ酸3、アミノ酸4またはアミノ酸5を含み、x2は、配列番号2のアミノ酸79、アミノ酸80、アミノ酸81、アミノ酸82またはアミノ酸83を含む)。1つの実施形態において、N末端ドメインフラグメントは、長さにおいて5個〜81個の間のアミノ酸(例えば、長さにおいて5個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個または80個のアミノ酸)のペプチドを含む。そのようなペプチドフラグメント(例えば、可溶性フラグメント)はβAPP結合剤として有用であり、または、プレセニリン−1のN末端細胞外ドメインに対して特異的な抗体の開発のために有用である。N末端ドメインはさらに、アミノ酸82〜100を含む第1の膜貫通ドメイン(TM−1)のすべてまたはフラグメントを含むことができる。1つの実施形態において、TM−1ドメインは配列番号2のアミノ酸x2からアミノ酸x3付近までを含む(ただし、x2は、配列番号2のアミノ酸79、アミノ酸80、アミノ酸81、アミノ酸82またはアミノ酸83を含み、x3は、配列番号2のアミノ酸98、アミノ酸99、アミノ酸100、アミノ酸101またはアミノ酸102を含む)。プレセニリン−1の第1のTMドメインのフラグメントをさらに含むプレセニリン1のN末端フラグメントは、活性なGタンパク質ドメインを欠く膜結合型競合阻害剤を製造するために使用することができる。
【0035】
プレセニリン−1の第1の細胞質ループ1は配列番号2のアミノ酸x3からアミノ酸x4付近までを含む(ただし、x3は、配列番号2のアミノ酸98、アミノ酸99、アミノ酸100、アミノ酸101またはアミノ酸102を含み、x4は、アミノ酸130、アミノ酸131、アミノ酸132、アミノ酸133またはアミノ酸134を含む)。プレセニリン−1の第2の膜貫通ループ(TM−2)は配列番号2のアミノ酸x4からアミノ酸x5付近までを含む(ただし、x4は、配列番号2のアミノ酸130、アミノ酸131、アミノ酸132、アミノ酸133またはアミノ酸134を含み、x5は、配列番号2のアミノ酸152、アミノ酸153、アミノ酸154、アミノ酸155またはアミノ酸156を含む)。プレセニリン−1ポリペプチドはさらに、配列番号2のアミノ酸x5からアミノ酸x6付近までを含む第2の細胞外ドメイン(外質1)を含む(ただし、x5は、配列番号2のアミノ酸152、アミノ酸153、アミノ酸154、アミノ酸155またはアミノ酸156を含み、x6は、配列番号2のアミノ酸161、アミノ酸162、アミノ酸163、アミノ酸164またはアミノ酸165を含む)。プレセニリン−1はさらに、配列番号2のアミノ酸x6からアミノ酸x7付近までを含む第3の膜貫通ドメイン(TM−3)を含む(ただし、x6は、配列番号2のアミノ酸161、アミノ酸162、アミノ酸163、アミノ酸164またはアミノ酸165を含み、x7は、アミノ酸182、アミノ酸183、アミノ酸184、アミノ酸185またはアミノ酸186を含む)。プレセニリン−1は、配列番号2のアミノ酸x7からアミノ酸x8付近までを含む第2の細胞質ループ(ループ3/細胞質ループ2)を含む(ただし、x7は、配列番号2のアミノ酸182、アミノ酸183、アミノ酸184、アミノ酸185またはアミノ酸186を含み、x8は、配列番号2のアミノ酸192、アミノ酸193、アミノ酸194、アミノ酸195またはアミノ酸196を含む)。プレセニリン−1の第4の膜貫通ドメイン(TM−4)は一般には、配列番号2のアミノ酸x8からアミノ酸x9付近までを含むとして記述することができる(ただし、x8は、配列番号2のアミノ酸192、アミノ酸193、アミノ酸194、アミノ酸195またはアミノ酸196を含み、x9は、配列番号2のアミノ酸211、アミノ酸212、アミノ酸213、アミノ酸214またはアミノ酸215を含む)。プレセニリン−1は、配列番号2のx9付近からx10付近までを含む第3の細胞外ドメイン(ループ4/外質ループ2)を含む(ただし、x9は、配列番号2のアミノ酸211、アミノ酸212、アミノ酸213、アミノ酸214またはアミノ酸215を含み、x10は、配列番号2のアミノ酸217、アミノ酸218、アミノ酸219、アミノ酸220またはアミノ酸221を含む)。プレセニリン−1の第5の膜貫通ドメイン(TM−5)は一般には、配列番号2のアミノ酸x10からアミノ酸x11付近までを含むとして記述することができる(ただし、x10は、配列番号2のアミノ酸217、アミノ酸218、アミノ酸219、アミノ酸220またはアミノ酸221を含み、x11は、配列番号2のアミノ酸236、アミノ酸237、アミノ酸238、アミノ酸239またはアミノ酸240を含む)。プレセニリン−1はさらに、配列番号2のアミノ酸x11からアミノ酸x12までを含む第3の細胞質ループ(ループ5/細胞質3)を含む(ただし、x11は、配列番号2のアミノ酸236、アミノ酸237、アミノ酸238、アミノ酸239またはアミノ酸240を含み、x12は、配列番号2のアミノ酸241、アミノ酸242、アミノ酸243、アミノ酸244またはアミノ酸245を含む)。第6の膜貫通ドメイン(TM−6)が一般には、配列番号2のx12からx13付近までを含む配列によって示される(ただし、x12は、配列番号2のアミノ酸241、アミノ酸242、アミノ酸243、アミノ酸244またはアミノ酸245を含み、x13、配列番号2のアミノ酸260、アミノ酸261、アミノ酸262、アミノ酸263またはアミノ酸264を含む)。プレセニリン−1はさらに、配列番号2の配列x13〜x14付近を含む第3の細胞質ドメイン(ループ6/外質3)を含む(ただし、x13、配列番号2のアミノ酸260、アミノ酸261、アミノ酸262、アミノ酸263またはアミノ酸264を含み、x14は、配列番号2のアミノ酸405、アミノ酸406、アミノ酸407、アミノ酸408またはアミノ酸409を含む)。プレセニリン−1はさらに、配列番号2の配列x14〜x15付近を含む第7の膜貫通ドメイン(TM−7)を含む(ただし、x14は、配列番号2のアミノ酸405、アミノ酸406、アミノ酸407、アミノ酸408またはアミノ酸409を含み、x15は、配列番号2のアミノ酸427、アミノ酸428、アミノ酸429、アミノ酸430またはアミノ酸431を含む)。C末端の細胞質テール(C−テール/細胞質)は配列番号2の配列x15〜x16付近を含む(ただし、x15は、配列番号2のアミノ酸427、アミノ酸428、アミノ酸429、アミノ酸430またはアミノ酸431を含み、x16は、配列番号2のアミノ酸462、アミノ酸463、アミノ酸464、アミノ酸465、アミノ酸466またはアミノ酸467を含む)。
【0036】

プレセニリン−2(PS−2)は、下記で示されるような数のドメインを有する。これらのドメインは、このポリペプチドを発現する生物に依存して、どちらかの端部において1個のアミノ酸から5個のアミノ酸まで変化し得ることが認識される。1つの実施形態において、PS−2のN末端ドメインは配列番号4の残基x1から残基x2付近までを含む(ただし、x1は、配列番号4のアミノ酸1、アミノ酸2、アミノ酸3、アミノ酸4またはアミノ酸5を含み、x2は、配列番号4のアミノ酸85、アミノ酸86、アミノ酸87、アミノ酸88またはアミノ酸90を含む)。1つの実施形態において、N末端ドメインフラグメントは、長さにおいて5個〜87個の間のアミノ酸(例えば、長さにおいて5個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個または80個のアミノ酸)のペプチドを含む。そのようなペプチドフラグメント(例えば、可溶性フラグメント)はβAPP結合剤として有用であり、または、プレセニリン−2のN末端細胞外ドメインに対して特異的な抗体の開発のために有用である。N末端ドメインはさらに、アミノ酸87〜106を含む第1の膜貫通ドメイン(TM−1)のすべてまたはフラグメントを含むことができる。1つの実施形態において、TM−1ドメインは配列番号4のアミノ酸x2からアミノ酸x3付近までを含む(ただし、x2は、配列番号4のアミノ酸85、アミノ酸86、アミノ酸87、アミノ酸88またはアミノ酸90を含み、x3は、配列番号4のアミノ酸104、アミノ酸105、アミノ酸106、アミノ酸107またはアミノ酸108を含む)。プレセニリン−2の第1のTMドメインのフラグメントをさらに含むプレセニリン1のN末端フラグメントは、活性なGタンパク質ドメインを欠く膜結合型競合阻害剤を製造するために使用することができる。
【0037】
プレセニリン−2の第1の細胞質ループ1は配列番号4のアミノ酸x3からアミノ酸x4付近までを含む(ただし、x3は、配列番号4のアミノ酸104、アミノ酸105、アミノ酸106、アミノ酸107またはアミノ酸108を含み、x4は、配列番号4のアミノ酸136、アミノ酸137、アミノ酸138、アミノ酸139またはアミノ酸140を含む)。プレセニリン−2の第2の膜貫通ループ(TM−2)は配列番号4のアミノ酸x4からアミノ酸x5付近までを含む(ただし、x4は、配列番号4のアミノ酸136、アミノ酸137、アミノ酸138、アミノ酸139またはアミノ酸140を含み、x5は、配列番号4のアミノ酸158、アミノ酸159、アミノ酸160、アミノ酸161またはアミノ酸162を含む)。プレセニリン−2ポリペプチドはさらに、配列番号4のアミノ酸x5からアミノ酸x6付近までを含む第2の細胞外ドメイン(外質1)を含む(ただし、x5は、配列番号4のアミノ酸158、アミノ酸159、アミノ酸160、アミノ酸161またはアミノ酸162を含み、x6は、配列番号4のアミノ酸167、アミノ酸168、アミノ酸169、アミノ酸170またはアミノ酸171を含む)。プレセニリン−2はさらに、配列番号4のアミノ酸x6からアミノ酸x7付近までを含む第3の膜貫通ドメイン(TM−3)を含む(ただし、x6は、配列番号4のアミノ酸167、アミノ酸168、アミノ酸169、アミノ酸170またはアミノ酸171を含み、x7は、配列番号4のアミノ酸187、アミノ酸188、アミノ酸189、アミノ酸190またはアミノ酸191を含む)。プレセニリン−2は、配列番号4のアミノ酸x7からアミノ酸x8付近までを含む第2の細胞質ループ(ループ3/細胞質ループ2)を含む(ただし、x7は、配列番号4のアミノ酸187、アミノ酸188、アミノ酸189、アミノ酸190またはアミノ酸191を含み、x8は、配列番号4のアミノ酸198、アミノ酸199、アミノ酸200、アミノ酸201またはアミノ酸202を含む)。プレセニリン−2の第4の膜貫通ドメイン(TM−4)は一般には、配列番号4のアミノ酸x8からアミノ酸x9付近までを含むとして記述することができる(ただし、x8は、配列番号4のアミノ酸198、アミノ酸199、アミノ酸200、アミノ酸201またはアミノ酸202を含み、x9は、配列番号4のアミノ酸217、アミノ酸218、アミノ酸219、アミノ酸220またはアミノ酸221を含む)。プレセニリン−2は、配列番号4のx9付近からx10付近までを含む第3の細胞外ドメイン(ループ4/外質ループ2)を含む(ただし、x9は、配列番号4のアミノ酸217、アミノ酸218、アミノ酸219、アミノ酸220またはアミノ酸221を含み、x10は、配列番号4のアミノ酸223、アミノ酸224、アミノ酸225、アミノ酸226またはアミノ酸227を含む)。プレセニリン−2の第5の膜貫通ドメイン(TM−5)は一般には、配列番号4のアミノ酸x10からアミノ酸x11付近までを含むとして記述することができる(ただし、x10は、配列番号4のアミノ酸223、アミノ酸224、アミノ酸225、アミノ酸226またはアミノ酸227を含み、x11は、配列番号4のアミノ酸242、アミノ酸243、アミノ酸244、アミノ酸245またはアミノ酸246を含む)。プレセニリン−2はさらに、配列番号4のアミノ酸x11からアミノ酸x12までを含む第3の細胞質ループ(ループ5/細胞質3)を含む(ただし、x11は、配列番号4のアミノ酸242、アミノ酸243、アミノ酸244、アミノ酸245またはアミノ酸246を含み、x12は、配列番号4のアミノ酸247、アミノ酸248、アミノ酸249、アミノ酸250またはアミノ酸251を含む)。第6の膜貫通ドメイン(TM−6)が一般には、配列番号4のx12からx13付近までを含む配列によって示される(ただし、x12は、配列番号4のアミノ酸247、アミノ酸248、アミノ酸249、アミノ酸250またはアミノ酸251を含み、x13、配列番号4のアミノ酸266、アミノ酸267、アミノ酸268、アミノ酸269またはアミノ酸270を含む)。プレセニリン−2はさらに、配列番号4の配列x13〜x14付近を含む第3の細胞質ドメイン(ループ6/外質3)を含む(ただし、x13、配列番号4のアミノ酸266、アミノ酸267、アミノ酸268、アミノ酸269またはアミノ酸270を含み、x14は、配列番号4のアミノ酸385、アミノ酸386、アミノ酸387、アミノ酸388またはアミノ酸389を含む)。プレセニリン−2はさらに、配列番号4の配列x14〜x15付近を含む第7の膜貫通ドメイン(TM−7)を含む(ただし、x14は、配列番号4のアミノ酸385、アミノ酸386、アミノ酸387、アミノ酸388またはアミノ酸389を含み、x15は、配列番号4のアミノ酸407、アミノ酸408、アミノ酸409、アミノ酸410またはアミノ酸411を含む)。C末端の細胞質テール(C−テール/細胞質)は配列番号4の配列x15〜x16付近を含む(ただし、x15は、配列番号4のアミノ酸407、アミノ酸408、アミノ酸409、アミノ酸410またはアミノ酸411を含み、x16は、配列番号4のアミノ酸443、アミノ酸444、アミノ酸445、アミノ酸446、アミノ酸447またはアミノ酸448を含む)。
【0038】

当業者は、これらのドメインの境界がおおよそであること、また、そのようなドメインの正確な境界が、例えば、膜貫通ドメインの境界として、本明細書中で予測される境界から1個〜5個のアミノ酸において異なり得ることを認識する。
【0039】
プレセニリンポリペプチドの細胞質テールドメイン(ならびに他の細胞質ドメイン)のほとんどのC末端残基がGタンパク質との相互作用に関与すると考えられ、その結果、そのような残基の置換は、このポリペプチドについて、変化したGタンパク質活性化機能またはGタンパク質結合機能あるいはそのような機能の喪失に関連する可能性がある。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「β−APP結合性のポリペプチドまたはペプチド」には、ヒトプレセニリン−1(配列番号2)、変化体(例えば、プレセニリン−2;配列番号4)および種ホモログ(例えば、マウスプレセニリン−1など)、ならびに、これらのプレセニリンポリペプチドおよびそれらの種ホモログのフラグメントが含まれる。本開示のプレセニリンポリペプチドは、他のプレセニリンファミリーポリペプチドの生物学的な活性および機能と一致する生物学的な活性および機能を有する。プレセニリンファミリーのポリペプチドが、発達を通して、ニューロン細胞を含む様々な細胞タイプにおいて発現する。このポリペプチドファミリーに関連する典型的な生物学的活性または生物学的機能が、β−APP結合、Gタンパク質活性化およびAβペプチド形成である。β−APP結合活性が、プレセニリンポリペプチドのN末端ドメインおよび細胞外ループに関して見出される。Gタンパク質活性化が、プレセニリンポリペプチドのC末端の細胞質テールドメインおよび他の細胞質ドメインに関連する。
【0041】
プレセニリンポリペプチド(例えば、ヒトプレセニリン−1など)はヘテロタイプな結合活性を有する;これらの結合活性のそれぞれがプレセニリンポリペプチドの細胞外ループドメインに関連する。従って、ヘテロタイプな結合を必要とする使用のためには、本開示のプレセニリンポリペプチドは、少なくとも1つの細胞外ループドメインを有し、かつ、少なくとも1つのそのような結合活性を示すプレセニリンポリペプチドを含む。プレセニリンポリペプチドはまた、プレセニリンポリペプチドの細胞質ドメイン(細胞質テールドメインを含む)に関連するGタンパク質結合活性を有する。従って、Gタンパク質活性化またはGタンパク質結合を必要とする使用のためには、本開示のプレセニリンポリペプチドは、細胞質テールドメインを有し、かつ、Gタンパク質結合活性を示すプレセニリンポリペプチドを含む。本開示のプレセニリンポリペプチドはさらに、本開示の1つまたは複数のプレセニリンポリペプチドの少なくとも1つの細胞外ループドメインおよび/または細胞質テールドメインを含むオリゴマーまたは融合ポリペプチド、ならびに、ヘテロタイプな結合活性および/またはGタンパク質ドメイン結合活性を有する、これらのポリペプチドのいずれかのフラグメントを含む。ヒトプレセニリン−1および種ホモログおよび他のプレセニリンファミリーポリペプチドのこの結合活性またはこれらの結合活性は、例えば、酵母ツーハイブリッドアッセイで、あるいは、プレセニリンポリペプチドと、1つのβ−APPおよび/またはGタンパク質ドメイン含有結合パートナーとの間での結合を測定するインビトロアッセイ(この場合、プレセニリンポリペプチドまたはその結合パートナーのどちらかが、結合が検出され得るように、放射性タンパク質、蛍光タンパク質または生物発光タンパク質により標識される)で求めることができる。
【0042】
用語「ヒトプレセニリンポリペプチド活性」は、本明細書中で使用される場合、β−APPの結合および相互作用、ならびに、Gタンパク質の結合または活性化を含む。本開示のプレセニリンポリペプチドならびにこれらのポリペプチドのフラグメントおよび他の誘導体がこれらの活性を示す程度を、標準的なアッセイ方法によって求めることができる。例示的なアッセイが本明細書中に開示される;当業者は、他の類似するタイプのアッセイが、本開示のプレセニリンポリペプチドおよび他のプレセニリンファミリーメンバーの生物学的活性を測定するために使用され得ることを理解する。
【0043】
ヒトプレセニリン−1を含むプレセニリンポリペプチドの生物学活性の1つの側面が、このポリペプチドファミリーのメンバーは、例えば、β−APPに対する細胞外ループドメイン結合、および、Gタンパク質ドメイン含有ポリペプチドに対する細胞質テールドメイン結合により、特定の結合パートナーと、例えば、ヘテロタイプなポリペプチド(β−APPを含む)およびGタンパク質ドメイン含有ポリペプチドなどと結合できることである。用語「結合パートナー」には、本明細書中で使用される場合、リガンド、受容体、基質、抗体、他のプレセニリンポリペプチド、そして、結合パートナーおよびヒトプレセニリン−1ポリペプチドまたはヒトプレセニリン−2ポリペプチドの特定の部分の間での接触または近接によりヒトプレセニリン−1ポリペプチドと相互作用する何らかの他の分子が含まれる。本開示のプレセニリンポリペプチドの細胞外N末端ドメインおよびループドメインはヘテロタイプなポリペプチドに結合するので、N末端の80アミノ酸のフラグメントおよび/または1つもしくは複数の細胞外ループドメインを含む誘導体ポリペプチドは、ヒトプレセニリン−1ポリペプチドの残部から別個のフラグメントとして、または、例えば、免疫グロブリンFcドメインに融合される可溶性ポリペプチドとして発現されるとき、本開示のプレセニリンポリペプチドがその結合パートナー(例えば、β−APP)に結合することを乱すことが予想される。1つまたは複数の結合パートナーに結合することによって、別個の細胞外ドメインポリペプチドは、生来的なヒトプレセニリン−1ポリペプチドによる結合を妨げ、優性ネガティブ様式でて作用して、その結果、本開示のプレセニリンポリペプチドがヘテロタイプなポリペプチド(例えば、β−APP)に結合することにより媒介される生物学的活性を阻害し、それにより、1つの局面では、Aβの形成を妨げる。ヒトプレセニリン−1および他のプレセニリンファミリーポリペプチドの生物学的活性およびパートナー結合特性は、標準的な方法によって、また、本明細書中に記載されるそのようなアッセイによってアッセイすることができる。
【0044】
本明細書中に記載されるように、プレセニリン−1およびプレセニリン−2は、活性化されたとき、Aβペプチドの産生を引き起こすGPCR関連膜貫通タンパク質であることが示されている。従って、プレセニリン−1およびプレセニリン−2は、記憶修正を含めて、アルツハイマー病の発達および障害が関連づけられる状態および障害に関与する。本開示のプレセニリンポリペプチドと、それらの基質、リガンド、受容体、結合パートナーおよび/または他の相互作用ポリペプチドとの間における相互作用を阻止または阻害することが、本開示の1つの局面であり、そのような相互作用を阻止または阻害することにより、これらの疾患および状態をヒトプレセニリン−1活性およびヒトプレセニリン−2活性の阻害剤の使用により処置または改善するための方法が提供される。そのような阻害剤またはアンタゴニストの例が下記においてより詳しく記載される。
【0045】
1つの実施形態において、プレセニリン−1またはプレセニリン−2のポリペプチドまたはポリヌクレオチドが、正常な記憶ならびにアルツハイマー病の発達および進行において役割を果たす。1つの実施形態において、本開示の方法および組成物では、プレセニリンのβ−Appとの相互作用およびGタンパク質の活性化を妨げるペプチド、ペプチド模倣体、小分子または他の物質を含むプレセニリン−1活性またはプレセニリン−2活性のアンタゴニストが含まれる。
【0046】
ヒトプレセニリン−1ポリペプチドは、(a)配列番号2に示されるような配列を有し、(b)十分な程度のアミノ酸同一性またはアミノ酸類似性を、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を含むプレセニリン−1ポリペプチドに対して共有し、(c)特定の構造的ドメインを配列番号2のプレセニリン−1ポリペプチドと共有する可能性があるポリペプチドとして当業者によって特定され、(d)プレセニリンポリペプチドと共通する生物学的活性を有し、および/または、(e)配列番号2に示されるような配列を有するプレセニリン−1ポリペプチドに特異的に同様に結合する抗体に結合するポリペプチドである。ヒトプレセニリン−2ポリペプチドは、(a)配列番号4に示されるような配列を有し、(b)十分な程度のアミノ酸同一性またはアミノ酸類似性を、配列番号4に示されるようなアミノ酸配列を含むプレセニリン−2ポリペプチドに対して共有し、(c)特定の構造的ドメインを配列番号4のプレセニリン−2ポリペプチドと共有する可能性があるポリペプチドとして当業者によって特定され、(d)プレセニリンポリペプチドと共通する生物学的活性を有し、および/または、(e)配列番号4に示されるような配列を有するプレセニリン−2ポリペプチドに特異的に同様に結合する抗体に結合するポリペプチドである。本開示のプレセニリンポリペプチドは、天然に存在する供給源から単離することができ、または、組換えプレセニリンポリペプチドが、天然に存在するプレセニリンポリペプチドと同じ構造を有するように組換え製造することができ、または、天然に存在するプレセニリンポリペプチドとは異なる構造を有するように製造することができる。どのようなタイプの変化(例えば、しかし、限定されないが、例えば、1個〜10個またはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換;ポリペプチドのグリコシル化状態における変化;その三次元構造または自己会合状態を変化させるための折り畳みまたは異性化;および、他のポリペプチドまたは分子とのその会合への変化)であれ、そのような変化によっていずれかのヒトプレセニリン−1ポリペプチドまたはヒトプレセニリン−2ポリペプチドに由来するポリペプチドもまた、本開示のプレセニリンポリペプチドである。従って、本開示によって提供されるポリペプチドには、本明細書中に記載される本開示のプレセニリンポリペプチドのアミノ酸配列と類似し、しかし、修飾が生来的にもたらされるか、または、意図的な操作により導入されるアミノ酸配列によって特徴づけられるポリペプチドが含まれる。本開示のプレセニリンポリペプチドと共通する生物学的活性を共有するポリペプチドは、プレセニリン−1活性を有するポリペプチドである。プレセニリンポリペプチドファミリーのメンバーによって示される生物学的活性の例には、限定されないが、β−APPおよびGタンパク質の活性化が含まれる。
【0047】
単離されたポリペプチドまたはペプチドは、アミノ酸の所定配列を含み、前記アミノ酸配列に加えて、ポリペプチドまたはペプチドのどちらかの末端または両方の末端に共有結合により連結されるさらなる物質を有し得る分子(この場合、前記さらなる物質は、ポリペプチドのどちらかの末端、それぞれの末端または両方の末端に共有結合により連結される1個〜10個、10個〜20個、20個〜30個、または、40個〜50個の間のさらなるアミノ酸である)を示し、そのようなポリペプチドはその天然の状態から取り出されるか、あるいは、分子生物学またはペプチド合成の技術を使用して組換え製造される。
【0048】
本開示は、本開示のプレセニリンポリペプチドの全長型形態および成熟型形態の両方を提供する。全長型ポリペプチドは、最初に翻訳されたときのポリペプチドの完全な一次アミノ酸配列を有するポリペプチドである。全長型ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、cDNA分子の完全なオープンリーディングフレーム(「ORF」)の翻訳によって得ることができる。いくつかの全長型ポリペプチドがただ1つの遺伝子座によってコードされる場合があり、これは、多数のmRNA形態が、選択的スプライシングによって、または、多数の翻訳開始部位の使用によってその遺伝子座から産生される場合である。ポリペプチドの「成熟型形態」は、翻訳後のプロセシング工程(例えば、シグナル配列の切断、または、プロドメインを除くためのタンパク質分解的切断など)を受けているポリペプチドを示す。特定の全長型ポリペプチドの多数の成熟型形態を、例えば、多数の部位でのシグナル配列の切断によって、または、ポリペプチドを切断するプロテアーゼの示差的調節によって製造することができる。そのようなポリペプチドの成熟型形態を、全長型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子の好適な哺乳動物細胞または他の宿主細胞における発現によって得ることができる。ポリペプチドの成熟型形態の配列はまた、シグナル配列またはプロテアーゼ切断部位の特定により全長型形態のアミノ酸配列から決定することができる。本開示のプレセニリンポリペプチドにはまた、転写後または翻訳後のプロセシング事象(例えば、短縮されたが、生物学的に活性なポリペプチド、例えば、ポリペプチドの天然に存在する可溶性形態をもたらし得る代わりのmRNAプロセシングなど)から生じるポリペプチドが含まれる。本開示に同様に包含されるものが、タンパク質分解のためであると考えられる変化体、例えば、ポリペプチドからの1つまたは複数の末端アミノ酸(一般には1個〜5個の末端アミノ酸)のタンパク質分解的除去に起因する、異なるタイプの宿主細胞で発現されるときのN末端またはC末端における違いなどである。
【0049】
本開示はさらに、生来的パターンのグリコシル化を伴うか、または伴わない本開示のプレセニリンポリペプチドを含む。酵母発現システムまたは哺乳動物発現システム(例えば、COS−1細胞またはCHO細胞)において発現されるポリペプチドは、発現システムの選定に依存して、分子量およびグリコシル化パターンが生来的ポリペプチドと類似し得るか、または、著しく異なり得る。細菌発現システム(例えば、E.coliなど)における本開示のポリペプチドの発現は非グリコシル化分子をもたらす。さらに、ある特定の調製物はポリペプチドの多数の示差的にグリコシル化された化学種を含むことができる。グリコシル基は、従来の方法により、具体的には、グリコペプチダーゼを利用する方法により除くことができる。一般には、本開示のグリコシル化ポリペプチドはモル過剰のグリコペプチダーゼ(Boehringer Mannheim)とインキュベーションすることができる。
【0050】
本開示のプレセニリンポリペプチドの種ホモログ(例えば、プレセニリン−1のヒト形態およびマウス形態)、および、それらをコードするポリヌクレオチドの種ホモログが本開示によって包含される。本明細書中で使用される場合、「種ホモログ」は、与えられたポリペプチドまたはポリペプチドの起源生物種とは異なる起源生物種を有し、しかし、当業者によって求められるように、著しい配列類似性をその与えられたポリペプチドまたはポリペプチドに対して有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。種ホモログは、好適なプローブまたはプライマーを、本明細書中に提供されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドから作製し、所望される生物種から得られる好適な核酸源をスクリーニングすることによって単離および特定することができる。本開示はまた、本開示のプレセニリンポリペプチドの対立遺伝子変化体、および、それらをコードするポリヌクレオチド、すなわち、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列における違いが遺伝的多型(集団内における個体間の対立遺伝子変化)のためであると考えられる、そのようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドの天然に存在する代替形態を包含する。
【0051】
本開示のプレセニリンポリペプチドのフラグメントは線状形態であり得るか、または、知られている方法を使用して、例えば、H.U.Saragovi他、Bio/Technology、10、773〜778(1992)、および、R.S.McDowell他、J.Amer.Chem.Soc.、114、9245〜9253(1992)に記載されるように環化することができる(これらはともに参照により本明細書中に組み込まれる)。本開示のポリペプチドおよびポリペプチドフラグメント、ならびに、それらをコードするポリヌクレオチドは、プレセニリン−1ポリペプチドの長さの少なくとも25%(例えば、少なくとも50%、または、少なくとも60%、または、少なくとも70%、または、少なくとも80%)であるアミノ酸配列長さまたはヌクレオチド配列長さを有するポリペプチドおよびポリヌクレオチドを含み、かつ、プレセニリン−1ポリヌクレオチドまたはプレセニリン−1コードポリヌクレオチドとの少なくとも60%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、または、少なくとも99%、または、少なくとも99.5%)を有する(この場合、配列同一性は、配列ギャップを最小限にしながら、重なりおよび同一性を最大にするようにアラインメントされたときのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって求められる)。本開示において同様に含まれるものが、少なくとも8個、または、少なくとも10個、または、少なくとも15個、または、少なくとも20個、または、少なくとも30個、または、少なくとも40個の連続するアミノ酸を典型的には含むセグメントを含有またはコードするポリペプチドおよびポリペプチドフラグメント、ならびに、それらをコードするポリヌクレオチドである。そのようなポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントはまた、本開示のプレセニリンポリペプチドのいずれかのどのようなそのようなセグメントとも少なくとも70%の配列同一性(あるいは、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%、または、少なくとも99.5%)を共有するセグメントを含有することができる(この場合、配列同一性は、配列ギャップを最小限にしながら、重なりおよび同一性を最大にするようにアラインメントされたときのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって求められる)。パーセント同一性を目視調査および数学的計算によって求めることができる。代替において、2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列のパーセント同一性を、Devereux他(Nucl.Acids Res.、12:387、1984)によって記載され、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータープログラム(バージョン6.0)を使用して配列情報を比較することによって求めることができる。GAPプログラムのための典型的な初期設定されているパラメーターには、下記が含まれる:(1)SchwartzおよびDayhoff編、Atlas of Polypeptide Sequence and Structure(National Biomedical Research Foundation、353頁〜358頁、1979)によって記載されるような、ヌクレオチドのための単項比較行列(これは、同一については1の値を含有し、非同一については0の値を含有する)、および、GribskovおよびBurgess(Nucl.Acids Res.、14:6745、1986)の加重比較行列;(2)各ギャップについての3.0のペナルティーおよび各ギャップにおける各記号についてのさらなる0.10のペナルティー;および(3)末端ギャップについてはペナルティーがない。配列比較の当業者によって使用される他のプログラムもまた使用することができる;例えば、National Library of Medicineのウエブサイト(ncbi.nlm.nih.gov/gorf/wblast2.cgi)を介して使用のために入手可能なBLASTNプログラム(バージョン2.0.9)、または、UW−BLAST2.0アルゴリズムなど。UW−BLAST2.0のための標準的な初期設定されているパーメーター環境が下記のインターネットウエブページに記載される:blast.wustl.edu/blast/README.html#References。加えて、BLASTアルゴリズムはBLOSUM64アミノ酸スコア化行列を使用しており、使用され得る選択可能なパラメーターが下記の通りである:(A)(Wootton&Federhen(Computers and Chemistry、1993)のSEGプログラムによって決定されるような)低い組成的複雑度を有する質問配列のセグメント(同様にまた、Wooton JCおよびFederhen S、1996、Analysis of comositionally biased regions in sequence datebases、Methods Enzymol.、266:554〜71を参照のこと)、または、(Claverie&States(Computers and Chemistry、1993)のXNUプログラムによって決定されるような)短い周期性の内部反復からなるセグメントを隠すためのフィルターの包含;(B)データベース配列に対する一致を報告するための統計学的有意性閾値、または、E−スコア(一致が、KarlinおよびAltschul(1990)の確率論的モデルに従って、単に偶然によって見出される予想確率;一致と見なされる統計学的有意性がこのE−スコア閾値よりも大きいならば、その一致は報告されない);典型的なE−スコア閾値の値が、0.5、または、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または、1e−100である。
【0052】
本開示はまた、本開示のプレセニリンポリペプチドの可溶性形態で、これらのポリペプチドの特定のフラグメントまたはドメインを含むもの、具体的には、本開示の7−TMモデルに基づく細胞外ドメインあるいは本開示の7−TMモデルに基づく細胞外ドメインの1つまたは複数のフラグメントを含む本開示のプレセニリンポリペプチドの可溶性形態を提供する。可溶性ポリペプチドは、可溶性ポリペプチドが発現される細胞から分泌され得るポリペプチドである。そのような形態では、ポリペプチドが、このポリペプチドを発現する細胞から完全に分泌されるように、ポリペプチドの細胞内ドメインおよび膜貫通ドメインの一部またはすべてが欠失される。本開示のポリペプチドの細胞内ドメインおよび膜貫通ドメインは、そのようなドメインを配列情報から決定するための知られている技術に従って特定することができる。本開示の可溶性プレセニリンポリペプチドにはまた、可溶性プレセニリン−1ポリペプチドが細胞から分泌され得るならば、膜貫通領域の一部を含み、かつ、典型的には、ヒトプレセニリン−1活性(例えば、β−APPに結合できること、または、β−APPと相互作用できること)を保持するそのようなポリペプチドが含まれる。本開示の可溶性プレセニリンポリペプチドにはさらに、少なくとも1つのプレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドの細胞外部分と、プレセニリン−1活性またはプレセニリン−2活性を有するフラグメントとを含むオリゴマーまたは融合ポリペプチドが含まれる。分泌された可溶性ポリペプチドは、所望のポリペプチドを発現する無傷な細胞を、例えば、遠心分離によって培養培地から分離し、培地(上清)を所望のポリペプチドの存在についてアッセイすることによって特定することができる(また、その不溶性の膜結合対応物から区別することができる)。所望のポリペプチドが培地に存在することは、そのポリペプチドが細胞から分泌されたこと、従って、このポリペプチドの可溶性形態であることを示す。可溶性ポリペプチドは細胞から分泌されるので、組換え宿主細胞からのポリペプチドの精製が容易になる。そのうえ、可溶性ポリペプチドは一般に、非経口投与のために、また、多くの酵素的手順のために膜結合型形態よりも好適である。
【0053】
本開示の別の局面において、ポリペプチドは、プレセニリン−1ポリペプチドドメインの様々な組合せ(例えば、細胞質テールドメインおよび細胞外ループドメイン、または、細胞質テールドメインおよび細胞質ループドメインなど)を含む。従って、本開示のポリペプチド、および、それらをコードするポリヌクレオチドには、ドメイン(例えば、細胞質テールドメイン)の2コピー以上、ドメイン(例えば、細胞外ループドメイン)の2コピー以上、または、各ドメインの少なくとも1コピーを含むか、またはコードするポリペプチドまたはポリヌクレオチドが含まれ、これらのドメインはそのようなポリペプチドの内部において任意の順序で示され得る。
【0054】
ペプチド配列またはDNA配列におけるさらなる修飾を、知られている技術を使用して当業者によって行うことができる。ポリペプチド配列における目的とする修飾には、選択されたアミノ酸の変化、置換、取替え、挿入または欠失が含まれ得る。例えば、システイン残基の1つまたは複数を欠失させて、または、別のアミノ酸により取り替えて、分子の立体配座を変化させることができる(折り畳みまたは再生のときの誤った分子内ジスルフィド架橋の形成を妨げることを伴い得る変化)。そのような変化、置換、取替え、挿入または欠失のための技術が当業者には広く知られている(例えば、米国特許第4,518,584号を参照のこと)。別の一例として、ポリペプチドの細胞外ドメインにおけるN−グリコシル化部位を改変して、グリコシル化を不可能にすることができ、このことは、哺乳動物発現システムおよび酵母発現システムにおける炭水化物低下アナログの発現を可能する。真核生物ポリペプチドにおけるN−グリコシル化部位が、アミノ酸トリプレットAsn−X−Y(式中、Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり、YはSerまたはThrである)によって特徴づけられる。これらのトリプレットをコードするヌクレオチド配列に対する適切な置換、付加または欠失により、Asn側鎖における炭水化物残基の結合の防止がもたらされる。ただ1つだけのヌクレオチドの変化が、例えば、Asnが、異なるアミノ酸によって取り替えられるように選ばれた場合、N−グリコシル化部位を不活性化するために十分である。代替において、SerまたはThrを別のアミノ酸(例えば、Alaなど)により取り替えることができる。ポリペプチドにおけるN−グリコシル化部位を不活性化するための知られている手順には、米国特許第5,071,972号および欧州特許第276,846号に記載される手順が含まれる(これらは本明細書によって参照により組み込まれる)。本開示の範囲内であるさらなる変化体には、他の化学的成分(例えば、グリコシル基、脂質、リン酸基およびアセチル基など)との共有結合コンジュゲートまたは凝集コンジュゲートを形成することによってその誘導体を作製するために修飾され得るポリペプチドが含まれる。共有結合による誘導体を、そのような化学的成分をアミノ酸側鎖上の官能基に、あるいは、ポリペプチドのN末端またはC末端において連結することによって調製することができる。結合した診断剤(検出可能な物質)または治療剤を含むコンジュゲートがこの場合には意図される。好ましくは、そのような変化、置換、取替え、挿入または欠失は、ポリペプチドまたはその実質的等価体の所望される活性を保持する。一例が、天然型形態が結合するのと本質的に同じ結合親和性で結合する変化体である。結合親和性は従来の手順によって測定することができ、例えば、米国特許第5,512,457号に記載されるように、また、本明細書中に示されるように測定することができる。
【0055】
他の誘導体には、例えば、N末端融合物またはC末端融合物としての組換え培養における合成などによる、他のポリペプチドまたはポリペプチドとの本発明のポリペプチドの共有結合コンジュゲートまたは凝集コンジュゲートが含まれる。融合ポリペプチドの様々な例がオリゴマーに関連して下記において議論される。さらに、融合ポリペプチドは、精製および特定を容易にするために付加されるペプチドを含むことができる。そのようなペプチドには、例えば、米国特許第5,011,912号、および、Hopp他、Bio/Technology、6:1204、1988に記載されるポリHisまたは抗原性の特定用ペプチドが含まれる。1つのそのようなペプチドがFLAG(登録商標)ペプチドであり、これは非常に抗原性であり、発現した組換えポリペプチドの迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする特異的なモノクローナル抗体によって可逆的に結合されるエピトープを提供する。4E11と称されるマウスハイブリドーマは、米国特許第5,011,912号(これは本明細書によって参照により組み込まれる)に記載されるように、ある種の二価金属カチオンの存在下でFLAG(登録商標)ペプチドと結合するモノクローナル抗体を産生する。4E11ハイブリドーマ細胞株は、American Type Culture Collectionにアクセション番号HB9259で寄託されている。FLAG(登録商標)ペプチドと結合するモノクローナル抗体が、Eastamn Kodak Co.、Scientific Imaging Systems Division(New Haven、Conn.)から入手可能である。
【0056】
本開示によって包含されるものが、プレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチド、あるいは、本開示のプレセニリンポリペプチドの1つまたは複数のフラグメント、あるいは、本明細書中に開示されるような本開示のプレセニリンポリペプチドの誘導体形態または変化体形態のいずれかを含有するオリゴマーまたは融合ポリペプチドである。特定の実施形態において、オリゴマーは本開示の可溶性プレセニリンポリペプチドを含む。オリゴマーは、ダイマー、トリマーまたはより高次のオリゴマーを含めて、共有結合により連結されたマルチマーまたは非共有結合的に連結されたマルチマ−の形態が可能である。本開示の1つの局面において、オリゴマーはポリペプチド成分の結合能力を保持しており、従って、二価、三価などの結合部位を提供する。代替となる実施形態において、本開示は、ポリペプチドに融合されるペプチド成分との間における共有結合性または非共有結合性の相互作用を介してつながれる本開示の多数のプレセニリンポリペプチドを含むオリゴマーに関する。この場合、そのようなペプチドは、オリゴマー化を促進するという特性を有する。ロイシンジッパー、および、抗体に由来するある種のポリペプチドが、下記においてより詳しく記載されるように、結合されたポリペプチドのオリゴマー化を促進し得る。
【0057】
本開示のプレセニリンポリペプチドの変化体が、膜貫通ドメインを含むように構築される実施形態において、本開示のプレセニリンポリペプチドの変化体は膜貫通ポリペプチドを形成する。本開示の膜貫通プレセニリンポリペプチドは、そのリガンドが知られている受容体ポリペプチドの細胞外ドメインと融合することができる。そのような融合ポリペプチドはその後、膜貫通プレセニリン−1ポリペプチドによって誘発される細胞内シグナル伝達経路を制御するために操作することができる。細胞膜をまたぐ本開示のプレセニリンポリペプチドはまた、細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストと融合することができ、あるいは、プレセニリン−1の細胞内影響をさらに調節するために細胞接着分子と融合することができる。本開示の別の局面において、インターロイキンを、プレセニリン−1ポリペプチドフラグメントと、他の融合ポリペプチドドメインとの間に置くことができる。
【0058】
免疫グロブリンに基づくオリゴマー。本開示のポリペプチドまたはそのフラグメントは、ポリペプチド結合部位の結合価を増大させることを含めて、多くの目的のために免疫グロブリンなどの分子に融合することができる。例えば、プレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドのフラグメントを、(a)免疫グロブリンのFc部分に直接に、または、リンカーペプチドを介して融合することができ、あるいは、(b)別のプレセニリン−1ポリペプチドに直接に、または、リンカーペプチドを介して融合することができる。ポリペプチドの二価形態については、そのような融合はIgG分子のFc部分に対してであり得る。他の免疫グロブリンイソ型もまた、そのような融合を生じさせるために使用することができる。例えば、ポリペプチド−IgM融合は本開示のポリペプチドの十価形態を生じさせるであろう。用語「Fcポリペプチド」には、本明細書中で使用される場合、Fc領域のCHドメインのいずれかまたはすべてを含む、抗体のFc領域から構成されるポリペプチドの天然型形態およびムテイン形態が含まれる。ダイマー化を促進するヒンジ領域を含有するそのようなポリペプチドの短縮型形態もまた含まれる。有用なFcポリペプチドは、ヒトIgG1抗体に由来するFcポリペプチドを含む。1つの代替として、オリゴマーが、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを使用して調製される。抗体由来ポリペプチドの様々な部分(Fcドメインを含む)に融合されるある種の異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドの調製が、例えば、Ashkenazi他(PNAS USA、88:10535、1991)、Byrn他(Nature、344:677、1990)、そして、HollenbaughおよびAruffo(「免疫グロブリン融合ポリペプチドの構築」、Current Protocols in Immunology、増刊4、10.19.1頁〜10.19.11頁、1992)によって記載されている。免疫グロブリンに基づくオリゴマーの調製および使用のための方法がこの分野では広く知られている。本開示の1つの実施形態が、本開示のポリペプチドを抗体に由来するFcポリペプチドに融合することによって作製される2つの融合ポリペプチドを含むダイマーに関する。ポリペプチド/Fc融合ポリペプチドをコードする遺伝子融合物が適切な発現ベクターに挿入される。ポリペプチド/Fc融合ポリペプチドが、組換え発現ベクターにより形質転換された宿主細胞において発現させられ、このポリペプチド/Fc融合ポリペプチドは、酷似する抗体分子を組み立てることを可能にし、そのとき、鎖間のジスルフィド結合がFc成分の間で形成して、二価分子を生じさせる。1つの好適なFcポリペプチドがPCT出願公開WO93/10153(これは本明細書によって参照により組み込まれる)に記載されており、これは、N末端のヒンジ領域からヒトIgG1抗体のFc領域の生来的C末端にまで及ぶ一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドが、米国特許第5,457,035号およびBaum他(EMBO J.、13:3992〜4001、1994)に記載されるFcムテインである(これらは参照により本明細書中に組み込まれる)。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変化し、アミノ酸20がLeuからGluに変化し、かつ、アミノ酸22がGlyからAlaに変化していることを除いて、国際公開WO93/10153に示される生来的Fc配列のアミノ酸配列と同一である。このムテインは、Fc受容体に対する低下した親和性を示す。Fc成分を含む上記で記載される融合ポリペプチド(およびそれから形成されるオリゴマー)は、ポリペプチドAカラムまたはポリペプチドGカラムでのアフィニティークロマトグラフィーによる容易な精製という利点を提供する。他の実施形態において、本開示のポリペプチドは抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の代わりに使用することができる。融合ポリペプチドが抗体の重鎖および軽鎖の両方により作製されるならば、プレセニリン−1の細胞外領域を4つもの多く有するオリゴマーを形成することが可能である。
【0059】
代替において、オリゴマーは、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)の有無にかかわらず、本開示の多数のプレセニリンポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。好適なペプチドリンカーの中には、米国特許第4,751,180号および同第4,935,233号(これらは本明細書によって参照により組み込まれる)に記載されるペプチドリンカーがある。所望されるペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチド配列を、いずれかの好適な従来技術を使用して、間に、かつ、本開示のプレセニリンポリペプチドと同じ読み枠で挿入することができる。例えば、ペプチドリンカーをコードする化学合成されたオリゴヌクレオチドを配列間に連結することができる。特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、ペプチドリンカーによって隔てられる2つから4つまでの本開示の可溶性プレセニリンポリペプチドを含む。好適なペプチドリンカー、他のポリペプチドとのそれらの組合せ、および、それらの使用が当業者によって広く知られている。
【0060】
本開示のオリゴマーを調製するための別の方法が、ロイシンジッパーの使用を伴う。ロイシンジッパードメインは、ロイシンジッパードメインが見出されるポリペプチドのオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、最初、いくつかのDNA結合ポリペプチドにおいて見出され(Landschulz他、Science、240:1759、1988)、以降、様々な異なるポリペプチドにおいて見出されている。知られているロイシンジッパーの中には、ダイマーまたはトリマーを形成する天然に存在するペプチドおよびその誘導体がある。ジッパードメイン(これはまた、本明細書中ではオリゴマー化ドメインまたはオリゴマー形成ドメインとして示される)は、繰り返されるヘプタッド反復(これは多くの場合、他のアミノ酸が割り込む4個〜5個のロイシン残基を有する)を含む。ロイシンジッパーの使用、および、ロイシンジッパーを使用するオリゴマーの調製がこの分野では広く知られている。
【0061】
ポリペプチド活性を全部的または部分的に保持することが予想されるであろう、従って、スクリーニングまたは他の免疫学的方法論のために有用であり得る、ポリペプチドの配列の他のフラグメントおよび誘導体もまた、当業者は本明細書中の開示を考慮して作製することができる。そのような改変が本開示によって包含される。
【0062】
本開示は、β−APPに結合し、全長の生来型のプレセニリン−1またはプレセニリン−2とのβ−APP相互作用を妨げることによってADを処置するために有用な可溶性ペプチドフラグメントを提供する。別の実施形態において、この可溶性ペプチドフラグメントは、Aβ産生を阻害することによってADを処置するために有用である。そのような可溶性フラグメントは、本明細書中に記載されるようなプレセニリンの7−TMモデルに基づいて特定および開発することができ、上記で特定される細胞外(外質)ドメイン、本開示のフラグメントおよびコンジュゲートされた外質フラグメントのいずれかを含むことができる。有用なフラグメントは下記の配列(これらに限定されない)を含む:(i)DEEEDEEL(配列番号5)からなる配列、(ii)ペプチドがβ−APPに結合することができる限り、1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端のどちらかにおいてさらに含む配列番号5からなる配列、(iii)配列RRSLGHPEPLSNGRP(配列番号6)、(iv)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号6からなる配列、(v)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(iii)または(iv)からなる配列、(vi)配列RRSLGHPEPLSNGRPQGNSRQVVEQDEEEDEELTLKYGAK(配列番号7)、(vii)1個〜5個の保存的アミノ酸置換をさらに含む配列番号7からなる配列、(viii)1個〜50個のさらなるアミノ酸をN末端またはC末端においてさらに含む(vi)または(vii)からなる配列、および、(ix)ペプチドがβ−APPと相互作用することができるか、または、β−APPに結合することができる限り、非天然型アミノ酸またはD−アミノ酸を含む前記のいずれか。本開示は、80アミノ酸のN末端フラグメントに含まれるPS−1ドメインが、β−APP発現細胞およびPS−1発現細胞の共培養物に加えられたとき、Aβの産生を特異的に阻害することを明らかにする。これらのペプチドはすべてが、Aβ産生をβ−APPトランスジェニックマウスにおいて阻害する。本開示はさらに、細胞・細胞相互作用が阻害されるならば、Gタンパク質活性化およびAβ産生の両方もまた阻害されることを明らかにする。
【0063】
本開示はまた、β−APPおよびPS−1またはPS−2の相互作用によって誘導されるGタンパク質活性化の阻害剤を提供する。例えば、Gタンパク質活性化が(β−APP:PS−1共培養におけるPTxの存在によって)阻害されるならば、Aβ産生もまた阻害される。従って、本開示は、Gタンパク質活性化およびGoA結合のために要求されるPS−1の細胞内ドメインの配列を提供する。1つの実施形態において、本開示は、PS−1の最初の20アミノ酸を含むC末端テール配列(N−KKALPALPISITFGLVFYFA−COOH;配列番号8)を提供する。加えて、本開示では、PS−1の細胞内ループ3(KYLPE;配列番号2のアミノ酸239〜243)(これは、PS−2における対応するドメインに対する同一性を有する)、および、例えば、N−MALVFIKYLPE−COOH(配列番号9)を含めて、Go結合と結合するペプチドが特定される。
【0064】
本開示に包含されるものが、本開示のそのようなプレセニリンポリペプチドまたはプレセニリンペプチドをコードするポリヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドは、ゲノム分子またはcDNA分子を好適な供給源から単離することを含めて、いくつかの方法で特定することができる。ポリヌクレオチドの単離のためのプローブまたはプライマーとして、あるいは、データベース検索のための質問配列として使用されるための、本明細書中に記載されるアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列を、アミノ酸配列からの「逆翻訳」によって、または、コードするDNA配列が特定されているポリペプチドとのアミノ酸同一性の領域を特定することによって得ることができる。広く知られているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手順を、ヒトのプレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチド、あるいは、ヒトのプレセニリン−1ポリペプチドフラグメントまたはプレセニリン−2ポリペプチドフラグメントの所望される組合せをコードするDNA配列を単離および増幅するために用いることができる。DNAフラグメントの組合せの所望される末端を規定するオリゴヌクレオチドが、5’プライマーおよび3’プライマーとして用いられる。このようなオリゴヌクレオチドはさらに、DNAフラグメントの増幅された組合せを発現ベクターに挿入することを容易にするために制限エンドヌクレアーゼのための認識部位を含有することができる。様々なPCR技術が、Saiki他、Science、239:487(1988);Recombinant DNA Methodlogy、Wu他編、Academic Press,Inc.、San Diego(1989)、189頁〜196頁;およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Innis他編、Academic Press,Inc.(1990)に記載される。
【0065】
本開示のポリヌクレオチド分子には、一本鎖形態および二本鎖形態の両方でのDNAおよびRNA、ならびに、対応する相補的配列が含まれる。DNAには、例えば、cDNA、ゲノムDNA、化学合成されたDNA、PCRによって増幅されたDNA、および、それらの組合せが含まれる。本開示のポリヌクレオチド分子には、全長型の遺伝子またはcDNA分子、ならびに、それらのフラグメントの組合せが含まれる。本開示のポリヌクレオチドはヒト起源に由来し得るが、本開示では、非ヒト種に由来するポリヌクレオチドも同様に含まれる。
【0066】
「単離(された)ポリヌクレオチド」は、天然に存在する供給源から単離されたポリヌクレオチドの場合には、ポリヌクレオチドが単離された生物のゲノムに存在する隣接する遺伝子配列から分離されているポリヌクレオチドである。テンプレートから酵素的または化学的に合成されたポリヌクレオチド、例えば、PCR生成物、cDNA分子またはオリゴヌクレオチドなどの場合には、そのようなプロセスから生じるポリヌクレオチドが単離オリゴヌクレオチドであることが理解される。単離ポリヌクレオチドは、別個のフラグメントの形態でのポリヌクレオチド、または、より大きいポリヌクレオチド構築物の成分としてのポリヌクレオチドを示す。1つの実施形態において、本開示は、混入している内因性物質を実質的に含まないある種の単離ポリヌクレオチドに関連する。このようなポリヌクレオチドは好ましくは、実質的に純粋な形態で、かつ、標準的な生化学的方法(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning.A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))に概略される方法など)によるその成分ヌクレオチド配列の特定、操作および回収を可能する量または濃度で少なくとも1回は単離されるDNAまたはRNAから得られたものである。そのような配列は典型的には、真核生物の遺伝子には典型的に存在する内部の非翻訳配列またはイントロンによって中断されないオープンリーディングフレームの形態で提供および/または構築される。非翻訳DNAの配列がオープンリーディングフレームの5’側または3’側に存在し得るが、この場合、非翻訳DNAの配列はコード領域の操作または発現を妨害しない。
【0067】
本開示のプレセニリンポリペプチドを作製するための方法が下記において記載される。本開示のポリペプチドおよびフラグメントの発現、単離および精製が、下記の方法(これらに限定されない)を含めて、いずれかの好適な技術によって達成され得る。本開示の単離された核酸は発現制御配列(例えば、pDC409ベクター(Giri他、1990、EMBO J.、13:2821)または誘導体のpDC412ベクター(Wiley他、1995、Immunity、3:673)など)に作動可能に連結することができる。pDC400シリーズのベクターは、一過性の哺乳動物発現システム(例えば、CV−1細胞または293細胞など)のために有用である。代替において、本開示の単離された核酸は、pDC312ベクター、pDC316ベクターまたはpDC317ベクターなどの発現ベクターに連結することができる。pDC300シリーズのベクターはすべてが、SV40の複製起点、CMVプロモーター、アデノウイルスの三部分リーダー、ならびに、SV40のポリAシグナルおよび終結シグナルを含有し、安定的な哺乳動物発現システム(例えば、CHO細胞またはその誘導体など)のために有用である。他の発現制御配列およびクローニング技術もまた、ポリペプチドを組換えにより製造するために使用することができる(例えば、pMT2発現ベクターまたはpED発現ベクター(Kaufman他、1991、Nucleic Acids Res、19:4485〜4490;およびPouwels他、1985、Cloning Vectors.A Laboratory Manual、Elsevier、New York)、および、GATEWAYベクター(Life Technologies;Rockville、Md)など)。本開示の単離された核酸は、attB配列がその側面に配置される場合、本開示の単離された核酸を含有するGATEWAYシステムのためのエントリーベクターを提供するGATEWAYベクター(例えば、attP配列を含有するpDONR201など)とインテグラーゼ反応により組み換えられ得る。このエントリーベクターはさらに、他の好適に調製された発現制御配列(例えば、上記のpDC400シリーズおよびpDC300シリーズの発現制御配列など)と組み換えられ得る。多くの好適な発現制御配列がこの分野では知られている。組換えポリペプチドを発現させる一般的な方法がまた、Kaufman、1990、Methods in Enzymology、185、537〜566に記載される。本明細書中で使用される場合、「作動可能に連結される(された)」は、適切な分子(例えば、ポリメラーゼなど)が存在するとき、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが発現されるような様式で、本開示のポリヌクレオチドと、発現制御配列とが、構築物、ベクターまたは細胞の中に位置することを意味する。本開示の1つの実施形態として、少なくとも1つの発現制御配列が、組換え宿主細胞またはその子孫において、本開示のポリヌクレオチドに対して作動可能に連結される。この場合、ポリヌクレオチドおよび/または発現制御配列は、例えば、形質転換またはトランスフェクションによって、あるいは、いずれかの他の好適な方法によって宿主細胞に導入されている。本開示の別の実施形態として、少なくとも1つの発現制御配列が、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して作動可能に連結されるように組換え宿主細胞のゲノムに組み込まれる。本開示のさらなる実施形態において、少なくとも1つの発現制御配列が、インビトロまたは組換え宿主細胞でのどちらであっても、トランス物質(例えば、転写因子など)の作用を介して本開示のポリヌクレオチドに対して作動可能に連結される。
【0068】
加えて、適切なシグナルペプチド(生来的または異種)をコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチドまたはリーダーの選定は、様々な要因、例えば、組換えポリヌクレオチドが産生されることになる宿主細胞のタイプなどに依存し得る。例示するために、哺乳動物宿主細胞において機能的である異種のシグナルペプチドの例には、米国特許第4,965,195号に記載されるインターロイキン−7(IL−7)に対するシグナル配列;Cosman他、Nature、312:768(1984)に記載されるインターロイキン−2受容体に対するシグナル配列;欧州特許第367,566号に記載されるインターロイキン−4受容体のシグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載されるI型インターロイキン−1受容体のシグナルペプチド;および、欧州特許第460,846号に記載されるII型インターロイキン−1受容体のシグナルペプチドが含まれる。シグナルペプチド(分泌リーダー)に対するDNA配列を、DNAが最初に転写され、mRNAが、シグナルペプチドを含む融合ポリペプチドに翻訳されるように本開示のポリヌクレオチドに読み枠を合わせて融合することができる。意図された宿主細胞において機能的であるシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を促進させる。シグナルペプチドは、ポリペプチドが細胞から分泌されるとき、ポリペプチドから切断される。当業者はまた、シグナルペプチドが切断される位置が、コンピュータープログラムによって予測される位置と異なり得ること、そして、組換えポリペプチドを発現させる際に用いられる宿主細胞のタイプのような要因に従って変わり得ることを認識する。ポリペプチド調製物は、2つ以上の部位でのシグナルペプチドの切断から生じる異なるN末端アミノ酸を有するポリペプチド分子の混合物を含むことができる。
【0069】
DNAを哺乳動物細胞に導入するための確立された方法が記載されている(Kaufman、1990、Large Scale Mammalian Cell Culture、15頁〜69頁)。市販されている試薬、例えば、Lipofectamine脂質試薬(Gibco/BRL)またはLipofectamine−Plus脂質試薬などを使用するさらなるプロトコルを、細胞をトランスフェクションするために使用することができる(Felgner他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413〜7417)。加えて、エレクトロポレーションを、従来の手順を使用して、例えば、Sambrook他(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第1巻〜第3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)における手順などを使用して哺乳動物細胞をトランスフェクションするために使用することができる。安定な形質転換体の選抜を、この分野で知られている方法を使用して、例えば、細胞毒性薬物に対する抵抗性などを使用して行うことができる。Kaufman他(Meth.in Enzymology、185:487〜511、1990)は、いくつかの選抜スキーム、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)抵抗性などを記載する。DHFR選抜のための好適な株が、DHFRが欠損しているCHO株DX−B11であり得る(UrlandおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216〜4220、1980)。DHFRのcDNAを発現するプラスミドをDX−B11株に導入することができ、このプラスミドを含有する細胞のみを、適切な選択培地において成長させることができる。発現ベクターに組み込むことができる選択マーカーの他の例には、抗生物質(例えば、G418およびヒグロマイシンBなど)に対する抵抗性を与えるcDNAが含まれる。ベクターを保有する細胞を、これらの化合物に対する抵抗性に基づいて選抜することができる。
【0070】
代替において、遺伝子産物を相同的組換え技術または「遺伝子ターゲティング」技術により得ることができる。そのような技術では、外因性の転写制御エレメント(例えば、CMVプロモーターなど)をゲノム上の特定の事前に決められた部位に導入することが、目的とする内因性ポリヌクレオチド配列の発現を誘導するために用いられる。宿主染色体または宿主ゲノムへの組み込み位置は、遺伝子の知られている位置および配列を考慮して、当業者によって容易に決定され得る。1つの実施形態において、本開示ではまた、外因性の転写制御エレメントを増幅可能な遺伝子と併せて導入することが、再度ではあるが、宿主細胞からの遺伝子そのものの単離を必要とすることなく、増大した量の遺伝子産物を生じさせるために意図される。相同的組換えまたは遺伝子ターゲティングの実施が、Schimke他(「体細胞性哺乳動物細胞における遺伝子の増幅」、Methods in Enzymology、151:85〜104(1987))によって、同様にまた、Capecchi他(「新しいマウス遺伝学。ゲノムを遺伝子ターゲティングによって変化させる」、TIG、5:70〜76(1989))によって説明される。
【0071】
数多くのタイプの細胞が、ポリペプチドを発現させるための好適な宿主細胞として作用し得る。哺乳動物宿主細胞には、例えば、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL1651)(Gluzman他、Cell、23:175、1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL10)細胞株、McMahan他(EMBO J.、10:2821、1991)によって記載されるような、アフリカミドリザルの腎臓細胞株CV1に由来するCV1/EBNA細胞株(ATCC CCL70)、ヒト腎臓293細胞、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換された霊長類細胞株、正常な二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養に由来する細胞株、初代外植片、HL−60細胞、U937細胞、HaK細胞またはJurkat細胞が含まれる。代替において、ポリペプチドを下等真核生物(例えば、酵母など)または原核生物(例えば、細菌など)において産生させることが可能であり得る。潜在的に好適な酵母株には、異種ポリペプチドを発現することができるサッカロミセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)株、カンジダ(Candida)またはいずれかの酵母株が含まれる。潜在的に好適な細菌株には、異種ポリペプチドを発現することができる大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)またはいずれかの細菌株が含まれる。ポリペプチドが酵母または細菌において作製されるならば、機能的なポリペプチドを得るために、それらにおいて産生されるポリペプチドを、例えば、適切な部位のリン酸化またはグリコシル化によって修飾することが必要である場合がある。そのような共有結合性結合を、知られている化学的方法または酵素的方法を使用して達成することができる。ポリペプチドはまた、本開示の単離ポリヌクレオチドを1つまたは複数の昆虫発現ベクターにおける好適な制御配列に作動可能に連結し、昆虫発現システムを用いることによって製造することができる。バキュロウイルス/昆虫細胞発現システムのための材料および方法が、例えば、Invitrogen(San Diego、Calif.、米国)からキット形態(MaxBac(登録商標)キット)で市販されている。そのような方法は、SummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)、そして、LuckowおよびSummers、Bio/Technology、6:47(1988)に記載されるように(これらは参照により本明細書中に組み込まれる)、この分野では広く知られている。本明細書中で使用される場合、本開示のポリヌクレオチドを発現することができる昆虫細胞は「形質転換される」。無細胞翻訳システムもまた、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド構築物に由来するRNAを使用してポリペプチドを製造するために用いることができる。本開示の単離ポリヌクレオチドを、典型的には、少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されて含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」である。
【0072】
本開示のポリペプチドまたはペプチドは、形質転換された宿主細胞を、組換えポリペプチドを発現させるために好適な培養条件のもとで培養することによって調製することができる。生じた発現ポリペプチドはその後、知られている精製プロセス(例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーなど)を使用してそのような培養物から(例えば、培養培地または細胞抽出物から)精製することができる。ポリペプチドの精製はまた、ポリペプチドに結合する物質を含有するアフィニティーカラム;コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−toyopearl(登録商標)またはチバクロムブルー3GA Sepharose(登録商標)のようなアフィニティー樹脂での1回または複数回のカラム工程;フェニルエーテル、ブチルエーテルまたはプロピルエーテルのような樹脂を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィーを伴う1回または複数回の工程;あるいは、イムノアフィニティークロマトグラフィーを含むことができる。代替において、本開示のポリペプチドはまた、精製を容易にする形態で発現させることができる。例えば、本開示のポリペプチドは、融合ポリペプチドとして、例えば、マルトース結合ポリペプチド(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)またはチオレドキシン(TRX)の融合ポリペプチドなどとして発現させることができる。そのような融合ポリペプチドの発現および精製のためのキットが、New England BioLab(Beverly、Mass.)、Pharmacia(Piscataway、N.J.)およびInvitrogenからそれぞれ市販されている。ポリペプチドはまた、エピトープによりタグ化し、続いて、そのようなエピトープに対する特異的な抗体を使用することによって精製することができる。1つのそのようなエピトープ(「Flag」)が、Kodak(New Haven、Conn.)から市販されている。最後に、疎水性のRP−HPLC媒体(例えば、ペンダント状メチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲル)を使用する1回または複数回の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)工程を、ポリペプチドをさらに精製するために用いることができる。様々な組合せにおける前記精製工程のいくつかまたはすべてを、実質的に均一な単離された組換えポリペプチドを提供するためにもまた用いることができる。そのように精製されたポリペプチドは、他の哺乳動物ポリペプチドを実質的に含んでおらず、「精製(された)ポリペプチド」として本開示に従って定義される;本開示のそのような精製ポリペプチドには、本開示のプレセニリンポリペプチド、フラグメント、変化体および結合パートナーなどに結合する精製された抗体が含まれる。本開示のポリペプチドはまた、トランスジェニック動物の産物として、例えば、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する体細胞または生殖細胞によって特徴づけられるトランスジェニック体のウシ、ヤギ、ブタまたはヒツジの乳汁の成分として発現させることができる。
【0073】
発現ポリペプチドをアフィニティー精製するために、本開示のポリペプチド結合ポリペプチド(例えば、本開示のポリペプチドに対して作製されたモノクローナル抗体など)を含むアフィニティーカラムを利用することもまた可能である。これらのポリペプチドは、アフィニティーカラムから、従来の技術を使用して、例えば、高塩溶出緩衝液において取り出し、その後、使用のために、より低い塩緩衝液に透析することができ、あるいは、利用されたアフィニティーマトリックスに依存して、pHまたは他の成分を変化させることによって取り出すことができ、あるいは、アフィニティー成分の天然に存在する基質(例えば、本開示に由来するポリペプチドなど)を使用して競合的に取り出すことができる。本開示のこの局面では、ポリペプチド結合ポリペプチド、例えば、本開示の抗ポリペプチド抗体、または、本開示のポリペプチドと相互作用し得る他のポリペプチドなどを、固相担体に、例えば、本開示のポリペプチドをその表面に発現する細胞の特定、分離または精製のために好適なカラムクロマトグラフィーマトリックスまたは類似する基体などに結合させることができる。本開示のポリペプチド結合ポリペプチドの固相含有表面への付着を多くの技術によって達成することができる。例えば、磁気マイクロスフェアをこれらのポリペプチド結合ポリペプチドにより被覆することができ、磁場によりインキュベーション容器に保持することができる。細胞混合物の懸濁物が、そのようなポリペプチド結合ポリペプチドを表面に有する固相と接触させられる。本開示のポリペプチドをその表面に有する細胞が、固定されたポリペプチド結合ポリペプチドに結合し、その後、結合していない細胞が洗い流される。このアフィニティー結合方法は、溶液からのそのようなポリペプチド発現細胞の精製、スクリーニングまたは分離のために有用である。正選択された細胞を固相から遊離させる様々な方法がこの分野では知られており、これらには、例えば、酵素の使用が包含される。そのような酵素は好ましくは細胞に対して非毒性かつ非傷害性であり、細胞表面結合パートナーを切断することに向けられる。代替において、本開示のポリペプチド発現細胞を含有することが疑われる細胞の混合物を最初に、ビオチン化された本開示のポリペプチド結合ポリペプチドとインキュベーションすることができる。インキュベーション期間は、本開示のポリペプチドに対する十分な結合を保証するために、継続期間において典型的には少なくとも1時間である。生じた混合物はその後、アビジン被覆ビーズが充填されるカラムに通され、それによって、アビジンに対するビオチンの大きい親和性により、ビーズに対するポリペプチド結合細胞の結合がもたらされる。アビジン被覆ビーズの使用はこの分野では知られている(例えば、Berenson他、J.Cell.Biochem.、10D:239、1986を参照のこと)。非結合物の洗浄および結合した細胞の放出が、従来の方法を使用して行われる。
【0074】
ポリペプチドはまた、知られている従来の化学的合成によって製造することができる。本開示のポリペプチドを合成的手段によって構築するための方法が当業者には知られている。合成的に構築されたポリペプチドは、一次、二次または三次の構造的特徴および/または立体配座的特徴を生来型ポリペプチドと共有することにより、ポリペプチド活性を含めて、生来型ポリペプチドと共通する生物学的特性を有することができる。従って、合成的に構築されたポリペプチドは、治療化合物のスクリーニングにおいて、また、抗体を開発するための免疫学的プロセスにおいて、天然の精製されたポリペプチドに代わる生物学的に活性な代用物または免疫学的な代用物として用いることができる。
【0075】
純度の所望される程度は、ポリペプチドの意図される使用に依存する。比較的高い程度の純度が、例えば、ポリペプチドがインビボ投与されることになるときには所望される。そのような場合、ポリペプチドは、他のポリペプチドに対応するポリペプチドバンドがSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分析のときに全く検出可能でないように精製される。ポリペプチドに対応する多数のバンドが、示差的のグリコシル化および示差的な翻訳後プロセシングなどに起因してSDS−PAGEによって視覚化され得ることが当業者によって認識される。本開示のポリペプチドは、SDS−PAGEによる分析のときにただ1つだけのポリペプチドバンドによって示されるように、実質的に均一に精製される。ポリペプチドバンドは、銀染色、クーマシーブルー染色または(ポリペプチドが放射能標識されるならば)オートラジオグラフィーによって視覚化することができる。
【0076】
本開示のプレセニリンポリペプチドを中和するか、あるいは、プレセニリン−1遺伝子またはプレセニリン−2遺伝子の発現を(転写または翻訳のどちらかで)阻害するか、あるいは、プレセニリンのβ−APPとの相互作用を阻害するどのような方法も、記憶および/またはアルツハイマー病の発症もしくは進行を修正するために使用することができる。特定の実施形態において、アンタゴニストは、細胞表面に発現される結合パートナーに対する少なくとも1つのプレセニリンポリペプチドの結合を阻害し、それにより、本開示のそのようなプレセニリンポリペプチドが細胞に結合することによって誘導される生物学的活性を阻害する。本開示のいくつかの他の実施形態において、アンタゴニストは、例えば、プレセニリン−1またはプレセニリン−2のmRNA転写物の翻訳を阻害または防止するための広く知られているアンチセンス法またはリボザイム法;プレセニリン−1遺伝子の転写を阻害するための三重らせん法;あるいは、プレセニリン−1遺伝子もしくはプレセニリン−2遺伝子またはそれらの内因性のプロモーターもしくはエンハンサーエレメントを不活性化または「ノックアウト」するための標的化された相同的組換えを使用して、内因性のプレセニリン−1遺伝子発現またはプレセニリン−2遺伝子発現のレベルを低下させるために設計することができる。そのようアンチセンス型、リボザイム型および三重らせん型のアンタゴニストを、損なわれていないか、または、適切であるならば、変異しているかのどちらかのプレセニリン−1遺伝子活性またはプレセニリン−2遺伝子活性を低下させるか、または阻害するために設計することができる。そのような分子の製造および使用のための技術が当業者には広く知られている。
【0077】
アンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNA分子は、標的化されたmRNAにハイブリダイゼーションし、ポリペプチド翻訳を妨げることによってmRNAの翻訳を直接に阻止するように作用する。アンチセンス法は、プレセニリン−1のmRNAに対して相補的であるオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNAのどちらか)の設計を伴う。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、相補的な標的遺伝子mRNA転写物に結合し、翻訳を妨げる。絶対的な相補性が好ましいが、絶対的な相補性は要求されない。ポリヌクレオチドの一部分に対して「相補的な」配列は、本明細書中で示される場合、このポリペプチドとハイブリダイゼーションすることができ、これにより、安定な二重鎖(または、必要に応じて、三重鎖)を形成するための十分な相補性を有する配列を意味する。従って、二本鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAのただ1つだけの鎖を試験することができ、または、三重鎖形成をアッセイすることができる。ハイブリダイゼーションする能力は、相補性の程度と、アンチセンス核酸の長さとの両方に依存する。メッセージの5’末端に対して相補的であるオリゴヌクレオチド、例えば、5’非翻訳配列から、AUG開始コドンを含めて、AUG開始コドンに至るまで相補的であるオリゴヌクレオチドは、翻訳を阻害することにおいて最も効率的に働くにちがいない。しかしながら、プレセニリン−1またはプレセニリン−2の遺伝子転写物の5’側または3’側の翻訳されない非コード領域のどちらかに対して相補的なオリゴヌクレオチを、内因性のプレセニリン−1mRNAまたはプレセニリン−2mRNAの翻訳を阻害するためのアンチセンス法において使用することができる。mRNAの5’非翻訳領域に対して相補的なオリゴヌクレオチはAUG開始コドンの相補体を含まなければならない。アンチセンス核酸は長さが少なくとも6ヌクレオチドでなければならず、典型的には、長さが6ヌクレオチドから約50ヌクレオチドにまで及ぶ。具体的な局面において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、または、少なくとも50ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であれ、DNAまたはRNA、あるいは、それらのキメラ混合物または誘導体または修飾されたものが可能である。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性およびハイブリダイゼーションなどを改善するために、塩基成分、糖成分またはリン酸骨格において修飾することができる。オリゴヌクレオチドは他の付属基を含むことができる:例えば、ペプチド(例えば、宿主細胞受容体をインビボで標的化するために)、または、細胞膜を横断する輸送を容易にする物質(例えば、Letsinger他、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、86:6553〜6556;Lemaitre他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.、84:648〜652;PCT公開番号WO88/09810(1988年12月15日公開)を参照のこと)、あるいは、ハイブリダイゼーション誘引切断剤またはインターカレーティング剤(例えば、Zon、1988、Pharm.Res.、5:539〜549を参照のこと)。アンチセンス分子は、ヒトのプレセニリン−1転写物またはプレセニリン−2転写物をインビボで発現する細胞に送達されなければならない。数多くの方法が、アンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAを細胞に送達するために開発されている;例えば、アンチセンス分子を組織誘導部位または細胞誘導部位に直接に注入することができ、あるいは、所望の細胞を標的化するために設計される改変されたアンチセンス分子(例えば、標的細胞表面に発現される受容体または抗原と特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結されるアンチセンス)を全身投与することができる。しかしながら、内因性mRNAの翻訳を抑制するために十分なアンチセンス分子の細胞内濃度を達成することは多くの場合、困難である。従って、1つの取り組みでは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なpolIIIプロモーターまたはpolIIプロモーターの制御下に置かれる組換えDNA構築物が利用される。そのような構築物を、標的細胞をトランスフェクションするために使用することにより、内因性のプレセニリン−1遺伝子転写物との相補的な塩基対を形成し、それにより、プレセニリン−1またはプレセニリン−2のmRNAの翻訳を妨げる一本鎖RNAの十分な量の転写がもたらされる。例えば、ベクターを、ベクターが細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を行わせるにインビボで挿入することができる。そのようなベクターは、ベクターが、所望のアンチセンスRNAを産生するために転写され得る限り、エピソームに留まり得るか、または、染色体に組み込まれ得る。そのようなベクターは、この分野では標準的である組換えDNA技術によって構築することができる。ベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現のために使用される、この分野で知られているプラスミド、ウイルス性またはその他が可能である。
【0078】
プレセニリン−1またはプレセニリン−2のmRNA転写物を触媒的に切断するために設計されるリボザイム分子もまた、プレセニリン−1またはプレセニリン−2のmRNAの翻訳を妨げ、それにより、本開示のプレセニリンポリペプチドの発現を阻害するために使用することができる(例えば、PCT国際公開WO90/11364(1990年10月4日公開)、米国特許第5,824,519号を参照のこと)。本開示において使用することができるリボザイムには、下記のものが含まれる:ハンマーヘッドリボザイム(HaseloffおよびGerlach、1988、Nature、334:585〜591)、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以降、「Cech型リボザイム」)、例えば、自然界ではテトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)に存在するRNAエンドリボヌクレアーゼ(これは、IVS、または、L−19 IVS RNAとして知られている)、これは、Thomas Cechおよび共同研究者らによって広範囲に記載されている(国際特許出願公開番号WO88/04300;BeenおよびCech、1986、Cell、47:207〜216)。アンチセンス法の場合のように、リボザイムは、(例えば、改善された安定性および標的化などのために)改変されたオリゴヌクレオチドから構成されることが可能であり、また、ヒトプレセニリン−1ポリペプチドをインビボで発現する細胞に送達されなければならない。典型的な送達方法は、リボザイムを強力かつ構成的なpolIIプロモーターまたはpolIIIプロモーターの制御下でコードするDNA構築物を使用することを伴い、その結果、トランスフェクションされた細胞が、内因性のプレセニリン−1メッセージまたはプレセニリン−2メッセージを破壊し、かつ、翻訳を阻害するために、十分な量のリボザイムを発現する。リボザイムは、アンチセンス分子とは異なり、触媒的であるので、より少ない細胞内濃度が効率のために要求される。
【0079】
代替において、内因性のプレセニリン−1遺伝子発現またはプレセニリン−2遺伝子発現を、標的遺伝子の調節領域(例えば、標的遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的化して、プレセニリン−1遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成することによって低下させることができる(一般的には、Helene、1991、Anticancer Drug Des.、6(6):569〜584;Helene他、1992、Ann.N.Y.Acad.Sci.、660、27〜36;およびMaher、1992、Bioassays、14(12):807〜815を参照のこと)。
【0080】
本開示のアンチセンス核酸、リボザイム分子および三重らせん分子は、DNA分子およびRNA分子を合成するためにこの分野で知られているいずれかの方法によって調製することができる。これらには、この分野では広く知られている、オリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを化学合成するための技術、例えば、固相ホスホルアミダイト化学合成などが含まれる。オリゴヌクレオチドは、この分野では知られている標準的な方法によって、例えば、自動化されたDNA合成装置(例えば、Biosearch、および、Applied Biosystemsなどから市販されているものなど)の使用によって合成することができる。例として、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドをStein他(1988、Ncul.Acids Res.、16:3209)の方法によって合成することができる。メチルホスホナートオリゴヌクレオチドを制御細孔ガラスポリマー担体の使用によって調製することができる(Sarin他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:7448〜7451)。代替において、RNA分子を、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロ転写およびインビボ転写によって作製することができる。そのようなDNA配列は、好適なRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼのプロモーターなど)が組み込まれる広範囲の様々なベクターに組み込むことができる。代替において、アンチセンスRNAを、使用されるプロモーターに依存して構成的または誘導的に合成するアンチセンスDNA構築物を、細胞株に安定的に導入することができる。
【0081】
本明細書中に開示されるポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子の高まった発現、低下した発現または改変された発現を有する生物が提供される。遺伝子発現における所望される変化を、遺伝子から転写されるmRNAと結合し、かつ/または、遺伝子から転写されるmRNAを切断するアンチセンス核酸またはリボザイムの使用により達成することができる(AlbertおよびMorris、1994、Trends Pharmacol.Sci.、15(7):250〜254;Lavarosky他、1997、Biochem.Mol.Med.、62(1):11〜22;および、Hampel、1998、Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.、58:1〜39;これらのすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)。本明細書中に開示されるポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子の多数コピーを有するトランスジェニック動物で、形質転換細胞およびその子孫において安定に維持される遺伝子構築物による細胞の形質転換によって作製されるトランスジェニック動物が提供される。遺伝子発現レベルの増大または低下をもたらす改変された遺伝子制御領域を有するトランスジェニック動物、あるいは、遺伝子発現の時間的パターンまたは空間的パターンを変化させるトランスジェニック動物もまた提供される(例えば、欧州特許番号0649464号B1を参照のこと。これは参照により本明細書中に組み込まれる))。加えて、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子が、対応する遺伝子への外因性配列の挿入により、あるいは、対応する遺伝子のすべてまたは一部の欠失により部分的または完全に不活性化されている生物が提供される。部分的または完全な遺伝子不活性化を、転移エレメントを挿入し、その後、その不正確な切り出しを行うことにより達成することができ(Plasterk、1992、Bioassays、14(9):629〜633;Zwaal他、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90(16):7431〜7435;Clark他、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91(2):719〜722;これらのすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)、または、正/負の遺伝的選抜戦略によって検出することができる相同的組換えにより達成することができる(Mansour他、1988、Nature、336:348〜352;米国特許第5,464,764号、同第5,487,992号、同第5,627,059号、同第5,631,153号、同第5,614,396号、同第5,616,491号および同第5,679,523号;これらのすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)。変化した遺伝子発現を有するこれらの生物は真核生物であり、典型的には哺乳動物である。そのような生物は、対応する遺伝子を伴う障害を研究するための非ヒトモデルの開発のために、また、対応する遺伝子のポリペプチド産物と相互作用する分子を特定するためのアッセイシステムの開発のために有用である。
【0082】
本開示のプレセニリンポリペプチド自身もまた、プレセニリン−1またはプレセニリン−2の生物学的活性をインビトロ手順またはインビボ手順で阻害することにおいて用いることができる。本開示に包含されるものが、融合ポリペプチドのフラグメントまたは成分として発現されるとき、生来的なプレセニリン−1ポリペプチド機能またはプレセニリン−2ポリペプチド機能の「優性ネガティブ」阻害剤として作用する本開示のプレセニリンポリペプチドの細胞外ループドメインである。例えば、本開示の精製されたポリペプチドドメインを、内因性の結合パートナーに対する本開示のプレセニリンポリペプチドの結合を阻害するために使用することができる。そのような使用は、β−APPとのプレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドの相互作用を効果的に阻止し、プレセニリン−1ポリペプチド活性またはプレセニリン−2ポリペプチド活性を阻害するであろう。本開示のさらに別の局面では、上皮細胞および/または内皮細胞において発現されるプレセニリン−1結合パートナーまたはプレセニリン−2結合パートナーの可溶性形態が、内因性のプレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドに結合し、その活性化を競合的に阻害するために使用される。さらに、本開示のプレセニリンポリペプチドに結合する抗体は、プレセニリン−1またはプレセニリン−2の活性を阻害し、アンタゴニストとして、または、アゴニストとして作用することができる。例えば、本開示のプレセニリンポリペプチドの1つまたは複数のエピトープ、あるいは、本開示のプレセニリンポリペプチドの保存された変化体のエピトープ、あるいは、プレセニリン−1ポリペプチドのペプチドフラグメントを特異的に認識する抗体を、プレセニリン−1ポリペプチド活性またはプレセニリン−2ポリペプチド活性を阻害するために本開示において使用することができる(例えば、アンタゴニスト抗体)。アゴニスト抗体は本開示のプレセニリンポリペプチドまたは結合パートナーに結合し、プレセニリン−1またはプレセニリン−2の活性を、構成的な細胞内シグナル伝達(または「リガンド模倣」)を生じさせることによって、あるいは、プレセニリン−1ポリペプチド活性またはプレセニリン−2ポリペプチド活性の生来的阻害剤の結合を妨げることによって増大させる。プレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドに結合する抗体には、ポリクロナール抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト抗体(これはまた、「完全ヒト」抗体と呼ばれる)、ヒト化抗体またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および、上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれるが、これらに限定されない。代替において、精製および改変された本開示のプレセニリンポリペプチドは、本開示のプレセニリンポリペプチドと、膜に結合していないプレセニリン−1結合パートナーまたはプレセニリン−2結合パートナーとの間における相互作用を調節するために投与することができる。そのような取り組みは、ヒトプレセニリン−1により影響を受ける生物活性を改変するための代替方法を可能にする。
【0083】
本開示のポリペプチドは、細胞、無細胞調製物、化学ライブラリーおよび天然産物混合物からアンタゴニストおよびアゴニストを特定するために使用することができる。アンタゴニストおよびアゴニストは、本開示のポリペプチドの天然型または改変型の物質、リガンド、酵素、受容体などであり得るか、あるいは、本開示のポリペプチドの構造的模倣体または機能的模倣体であり得る。本開示の潜在的なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドまたはその結合パートナーに結合し、その結合部位を占拠し、これにより、本発明のポリペプチドまたはその結合パートナーを、それらの天然の結合パートナーに結合するために利用できなくさせ、従って、正常な生物学的活性を妨げる小分子、ペプチドおよび抗体が含まれ得る。潜在的なアゴニストには、本発明のポリペプチドまたはその結合パートナーに結合し、本開示のポリペプチドの結合によって引き起こされる生物学的影響と同じ生物学的影響または高まった生物学的影響を誘発する小分子、ペプチドおよび抗体が含まれる。本開示のポリペプチドのペプチドアゴニストおよびペプチドアンタゴニストは、知られている方法に従って特定および利用することができる(例えば、国際公開WO00/24782および同WO01/83525を参照のこと;これらは参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0084】
治療剤開発のための1つの取り組みがペプチドライブラリースクリーニングである。タンパク質リガンドのその受容体との相互作用は多くの場合、比較的大きい境界で生じる。しかしながら、ヒト成長ホルモンおよびその受容体について明らかにされるように、境界におけるほんの数個の重要な残基のみが結合エネルギーのほとんどに寄与するにすぎない(Clackson他、1995、Science、267:383〜386)。タンパク質リガンドの大部分は結合エピトープを正しいトポロジーにおいて単に示すだけであるか、または、結合に関係しない機能を果たすだけである。従って、ほんの「ペプチド」的長さ(2個〜90個のアミノ酸)にすぎない分子が、受容体タンパク質、または、それどころか、大きいタンパク質リガンド(例えば、本開示のポリペプチドなど)の結合パートナーに結合することができる。そのようなペプチドは、大きいタンパク質リガンドの生物活性を模倣することができ(「ペプチドアゴニスト」)、または、競合的阻害により、大きいタンパク質リガンドの生物活性を阻害することができる(「ペプチドアンタゴニスト」)。本開示のポリペプチドの例示的なペプチドアゴニストおよびペプチドアンタゴニストは、天然に存在する分子のドメインを含むことができ、または、ランダム化配列を含むことができる。用語「ランダム化(された)」は、ペプチド配列を示すために使用される場合、(例えば、ファージディスプレー法またはRNA−ペプチドスクリーニングによって選択される)完全にランダムな配列、および、天然に存在する分子の1つまたは複数の残基が、天然に存在する分子におけるその位置に現れないアミノ酸残基によって取り替えられる配列を示す。ファージディスプレーペプチドライブラリーが、そのようなペプチドアゴニストおよびペプチドアンタゴニストを特定することにおける強力な方法として現れている。例えば、Scott他、1990、Science、249:386;Devlin他、1990、Science、249:404;米国特許第5,223,409号;米国特許第5,733,731号;米国特許第5,498,530号;米国特許第5,432,018号;米国特許第5,338,665号;米国特許第5,922,545号;国際公開WO96/40987;および国際公開WO98/15833を参照のこと(これらのそれぞれがその全体において参照により組み込まれる)。そのようなライブラリーでは、ランダムペプチド配列が繊維状ファージのコートタンパク質との融合によって呈示される。典型的には、呈示されたペプチドが受容体の抗体固定化細胞外ドメインに対してアフィニティー溶出される。保持されたファージは、アフィニティー精製および再増殖を連続して繰り返すことによって濃縮することができる。最もよく結合するペプチドを、1つまたは複数の構造的に関連するペプチドファミリーにおける重要な残基を特定するために配列決定することができる。ペプチド配列はまた、どの残基がアラニンスキャニングによって、または、DNAレベルでの変異誘発によって安全に取り替えられ得るかを示唆し得る。変異誘発ライブラリーを、最も良い結合体の配列をさらに最適化するために作製し、スクリーニングすることができる(Lowman、1997、Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.、26:401〜412)。可溶性ペプチドの混合物をスクリーニングするための別の生物学的取り組みでは、有利な治療特性を有するペプチドについて検索するために、酵母が発現および分泌のために使用される(Smith他、1993、Mol.Pharmacol.、43:741〜748)。以降、この方法および関連する方法は「酵母に基づくスクリーニング」として示される。ペプチドライブラリーはまた、lacリプレッサーのカルボキシル末端に融合し、E.coliにおいて発現させることができる。E.coliに基づく別の方法では、ペプチドグリカン会合リポタンパク質(PAL)との融合によって細胞の外膜表面における呈示が可能である。以降、これらの方法および関連する方法はまとめて「E.coliディスプレー」として示される。別の方法において、ランダムRNAの翻訳がリボソーム放出の前に停止させられ、これにより、それらの会合したRNAが依然として結合しているポリペプチドのライブラリーがもたらされる。この方法および関連する方法はまとめて「リボゾームディスプレー」として示される。他の方法では、RNAに連結されるペプチドが用いられる;例えば、PROfusion技術、Phylos,Inc.(例えば、RobertsおよびSzostak、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12297〜12303を参照のこと)。以降、この方法および関連する方法はまとめて「RNA−ペプチドスクリーニング」として示される。ペプチドが、安定な非生物学的材料(例えば、ポリエチレンロッドまたは溶媒透過性樹脂など)に固定化される化学的に誘導されたペプチドライブラリーが開発されている。別の化学的に誘導されたペプチドライブラリーでは、ホトリソグラフィーが、ガラススライドに固定化されるペプチドをスキャンするために使用される。以降、これらの方法および関連する方法はまとめて「ケミカルペプチドスクリーニング」として示される。ケミカルペプチドスクリーニングは、D−アミノ酸および他の非天然アナログの使用、ならびに、非ペプチド要素の使用を可能にすることにおいて好都合であり得る。生物学的方法および化学的方法の両方が、WellsおよびLowman、1992、Curr.Opin.Biotechnol.、3:355〜362において総説される。
【0085】
知られている生物活性ペプチドの場合には、有利な治療特性を有するペプチドリガンドの合理的設計を達成することができる。そのような取り組みでは、ペプチド配列に対する段階的変化が行われ、ペプチドの生物活性または予測される生物物理学的特性(例えば、溶液構造)に対する置換の影響が求められる。以降、これらの技術はまとめて「合理的設計」として示される。1つのそのような技術において、ただ1つだけの残基がアラニンにより一度に取り替えられる一連のペプチドが作製される。この技術は一般に「アラニンウォーク」または「アラニンスキャン」と呼ばれる。2つの残基(これらは連続しているか、または、間隔を置いて離れている)が取り替えられるとき、それは「二重アラニンウォーク」と呼ばれる。生じたアミノ酸置換は、有利な治療特性を有する新しいペプチド実体を生じさせるために、単独または組合せで使用することができる。タンパク質・タンパク質相互作用の構造分析もまた、大きいタンパク質リガンドの結合活性を模倣するペプチドを提案するために使用することができる。そのような分析において、結晶構造は、ペプチドを設計することができる大きいタンパク質リガンドの非常に重要な残基の正体および相対的配向を示唆し得る(例えば、Takasaki他、1997、Nature Biotech.、15:1266〜1270を参照のこと)。以降、これらの方法および関連する方法は「タンパク質構造分析」として示される。これらの分析方法はまた、受容体タンパク質と、ファージディスプレーによって選択されるペプチドとの間における相互作用を調べるために使用することができ、これにより、結合活性を増大させるためのペプチドのさらなる改変が示唆され得る。
【0086】
本開示のポリペプチドのペプチドアゴニストおよびペプチドアンタゴニストはビヒクル分子に対して共有結合により連結することができる。用語「ビヒクル」は、治療タンパク質の分解を妨げ、および/または、その半減期を増大させ、その毒性を低下させ、その免疫原性を低下させ、あるいは、その生物学的活性または生物学的取り込みを増大させる分子を示す。例示的なビヒクルには、Fcドメインまたは線状ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリシン、デキストランなど);分岐鎖ポリマー(例えば、米国特許第4,289,872号;米国特許第5,229,490号;国際公開WO93/21259を参照のこと);脂質;コレステロール基(例えば、ステロイドなど);炭水化物またはオリゴ糖(例えば、デキストラン);あるいは、サルベージ(salvage)受容体またはタンパク質形質導入ドメインに結合する任意の天然または合成のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが含まれる。
【0087】
本開示のポリペプチドとの免疫反応性を有する抗体が本明細書中に提供される。そのような抗体は、(非特異的な結合とは対照的に)、抗体の抗原結合部位を介してポリペプチドに特異的に結合する。本開示において、特異的に結合する抗体は、他の分子ではなく、本開示のプレセニリンポリペプチド、ホモログおよび変化体を特異的に認識し、それらと結合する抗体である。1つの実施形態において、抗体は本開示のポリペプチドに対して特異的であり、他のポリペプチドと交差反応しない。この様式において、上記で示されるような本開示のプレセニリンポリペプチド、フラグメント、変化体および融合ポリペプチドなどは、それらとの免疫反応性を有する抗体を製造する際の「免疫原」として用いることができる。
【0088】
より具体的には、上記のポリペプチド、フラグメント、変化体および融合ポリペプチドなどは、抗体の形成を誘発する抗原決定基またはエピトープを含有する。これらの抗原決定基またはエピトープは線状または立体配座的(不連続)のどちらでも可能である。線状エピトープはポリペプチドのアミノ酸のただ1つだけの区域から構成され、一方、立体配座的または不連続なエピトープは、ポリペプチド折り畳みのときに近傍に接近するポリペプチド鎖の異なる領域からのアミノ酸区域から構成される(C.A.Janeway,Jr.およびP.Travers、Immuno Biology、3:9(Garland Publishing Inc.、第2版、1996))。折り畳まれたポリペプチドは複雑な表面を有するので、利用可能なエピトープの数は極めて数が多い;しかしながら、ポリペプチドの立体配座および立体的障害のために、エピトープに実際に結合する抗体の数は、利用可能なエピトープの数よりも少ない(C.A.Janeway,Jr.およびP.Travers、Immuno Biology、3:9(Garland Publishing Inc.、第2版、1996))。エピトープは、この分野で知られている方法のいずれかによって特定することができる。従って、本開示の1つの局面が本開示のポリペプチドの抗原性エピトープに関連する。そのようなエピトープは、下記においてより詳しく記載されるように、抗体(具体的にはモノクローナル抗体)を惹起させるために有用である。加えて、本開示のポリペプチドに由来するエピトープは、研究試薬として、また、アッセイにおいて、また、特異的な結合抗体を物質(例えば、培養されたハイブリドーマからのポリクローナル血清または上清など)から精製するために使用することができる。そのようなエピトープまたはその変化体は、この分野では広く知られている技術(例えば、固相合成、ポリペプチドの化学的切断または酵素的切断など)を使用して、または、組換えDNA技術を使用して製造することができる。
【0089】
本開示のポリペプチドのエピトープによって誘発され得る抗体に関しては、エピトープが単離されているか、または、ポリペプチドの一部のままであるかに依らず、ポリクロナール抗体およびモノクローナル抗体の両方を従来の技術によって調製することができる。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses、Kennet他(編)、Plenum Press、New York(1980);およびAntibodies.A Laboratory Manual、HarlowおよびLand(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988);KohlerおよびMilstein(米国特許第4,376,110号);ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor他、1983、Immunology Today、4:72;Cole他、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:2026〜2030);ならびにEBVハイブリドーマ技術(Cole他、1985、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、77頁〜96頁)を参照のこと。本開示のポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株もまた、本明細書中では意図される。そのようなハイブリドーマは従来の技術によって製造および特定することができる。本開示のmAbを産生するハイブリドーマはインビトロまたはインビボで培養することができる。高力価のmAbをインビボで産生させることは、これを最も一般的な製造方法にする。そのようなハイブリドーマ細胞株を製造するための1つの方法は、動物をポリペプチドにより免疫化すること;脾臓細胞を免疫化された動物から集めること;前記脾臓細胞をミエローマ細胞に融合し、それにより、ハイブリドーマ細胞を作製すること;および、ポリペプチドと結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定することを含む。抗体を産生させるために、様々な宿主動物を下記の1つまたは複数により注射によって免疫化することができる:プレセニリン−1ポリペプチド、プレセニリン−1ポリペプチドのフラグメント、プレセニリン−1ポリペプチドの機能的等価体、または、プレセニリン−1ポリペプチドの変異形態。そのような宿主動物には、ウサギ、マウスおよびラットが含まれ得るが、これらに限定されない。様々なアジュバントを、宿主生物種に依存して、免疫学的応答を増大させるために使用することができ、これらには、フロイント(完全または不完全)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウムなど)、表面活性物質(例えば、リゾレシチンなど)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホルリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび潜在的に有用なヒト用アジュバント(例えば、BCG(Bacillus Calmette−Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)など)が含まれるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体を従来の技術によって回収することができる。そのようなモノクローナル抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含めて、いずれかの免疫グロブリンクラス、および、いずれかのそのサブクラスであり得る。
【0090】
加えて、適切な抗原特異性のマウス抗体分子に由来する遺伝子を適切な生物学的活性のヒト抗体分子に由来する遺伝子と一緒にスプラシングすることによる「キメラ抗体」(Takeda他、1985、Nature、314:452〜454)の製造のために開発された技術を使用することができる。キメラ抗体は、種々の部分が、異なる動物種に由来する分子であり、例えば、ブタmAbに由来する可変領域と、ヒト免疫グロブリンの定常領域とを有する分子などである。本開示のモノクローナル抗体にはまた、マウスモノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。そのようなヒト化抗体は、知られている技術によって調製することができ、この抗体がヒトに投与されるときには低下した免疫原性という利点を提供する。1つの実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変領域(またはちょうどその抗原結合部位)と、ヒト抗体に由来する定常領域とを含む。代替において、ヒト化抗体フラグメントは、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位と、ヒト抗体に由来する可変領域フラグメント(これは抗原結合部位を欠く)とを含むことができる。キメラなモノクローナル抗体およびさらに操作されたモノクローナル抗体を製造するための手順には、Riechamn他(Nature、332:323、1988)、Liu他(PNAS、84:3439、1987)、Larrick他(Bio/Technology、7:934、1989)、そして、WinterおよびHarris(TIPS、14:139、Can、1993)に記載される手順が含まれる。抗体を遺伝子組変えにより作製する手順が、英国特許GB2,272,440、米国特許第5,569,825号および同第5,545,806号、ならびに、それらの優先権を主張する関連特許において見出され得る(これらのすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)。好ましくは、ヒトでの使用のためには、抗体はヒト型またはヒト化型である;そのようなヒト抗体またはヒト化抗体を作製するための技術もまた広く知られており、例えば、Medarex Inc.(Princeton、N.J.)およびAbgenix Inc.(Fremont、Calif.)から市販されている。
【0091】
特定のエピトープを認識する抗原結合性の抗体フラグメントを、知られている技術によって作製することができる。例えば、そのようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって製造することができるF(ab’)2フラグメント、および、(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製することができるFabフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。代替において、Fab発現ライブラリーを、所望される特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な特定を可能にするために構築することができる(Huse他、1989、Science、246:1275〜1281)。単鎖抗体の製造のために記載される技術(米国特許第4,946,788号;Bird、1988、Science、242:423〜426;Huston他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883;およびWard他、1989、Nature、334:544〜546)もまた、プレセニリン−1遺伝子産物に対する単鎖抗体を製造するために適合化することができる。単鎖抗体が、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋により連結し、これにより、一本鎖のポリペプチドを生じさせることによって形成される。加えて、プレセニリン−1ポリペプチドに対する抗体は結果的には、当業者に広く知られている技術を使用して、プレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドを模倣し、プレセニリン−1ポリペプチドまたはプレセニリン−2ポリペプチドに結合し得る抗イディオタイプ抗体を作製するために利用することができる(例えば、Greenspan&Bona、1993、FASEB J、7(5):437〜444;およびNissinoff、1991、J.Immunol.、147(8):2429〜2438を参照のこと)。
【0092】
そのような抗体を特定することができるスクリーニング手順が広く知られており、これらは、例えば、免疫親和性クロマトグラフィーを伴い得る。抗体をアゴニスト的(例えば、リガンド模倣)特性についてスクリーニングすることができる。そのような抗体は、細胞表面のプレセニリン−1に結合したとき、プレセニリン−1結合パートナーまたはプレセニリン−2結合パートナーが細胞表面のプレセニリン−1またはプレセニリン−2に結合するときに誘導される生物学的影響と類似する生物学的影響(例えば、生物学的シグナルの伝達)を誘導する。アゴニスト抗体を、プレセニリン−1またはプレセニリン−2により媒介される活性(例えば、上皮バリア形成、刺激経路または細胞間連絡など)を誘導するために使用することができる。本開示のプレセニリンポリペプチドがプレセニリン−1に対する結合パートナーに結合することを阻止し得るそのような抗体は、そのような結合から生じるプレセニリン−1媒介またはプレセニリン−2媒介の上皮バリア形成、細胞間連絡または共刺激化を阻害するために使用することができる。そのような阻止抗体を、いずれかの好適なアッセイ手順を使用して特定することができ、例えば、抗体を、プレセニリン−1結合パートナーまたはプレセニリン−2結合パートナーを発現する特定の細胞に対するプレセニリン−1またはプレセニリン−2の結合を阻害する能力について試験することなどによって特定することができる。代替において、阻止抗体を、本明細書中に記載されるアッセイを使用して、標的細胞に対するプレセニリン−1またはプレセニリン−2の結合から生じる生物学的影響(例えば、上皮バリア形成など)を阻害する能力についてのアッセイで特定することができる。そのような抗体はインビトロ手順において用いることができ、または、この抗体を生じさせた実体によって媒介される生物学的活性を阻害するためにインビボ投与することができる。従って、プレセニリン−1またはプレセニリン−2が細胞表面結合パートナー受容体と相互作用することによって(直接的または間接的に)引き起こされるか、または悪化する障害を処置することができる。治療方法は、阻止抗体を、プレセニリン−1またはプレセニリン−2の結合パートナーにより媒介される生物学的活性を阻害することにおいて効果的な量で哺乳動物にインビボ投与することを伴う。ヒト抗体またはヒト化抗体をそのような治療方法において使用することができる。1つの実施形態において、抗原結合性の抗体フラグメントが用いられる。プレセニリン−1またはプレセニリン−2に対して向けられる抗体と、生理学的に許容され得る希釈剤、賦形剤またはキャリアとを含む組成物がこの場合には提供される。そのような組成物の好適な成分は、本開示のプレセニリンポリペプチドを含有する組成物について下記で記載される通りである。
【0093】
同様にまた本明細書中に提供されるものが、検出可能な物質(例えば、診断剤)または治療剤を抗体に結合されて含むコンジュゲートである。そのような物質(薬剤)の例が上記において示される。このようなコンジュゲートはインビトロ手順またはインビボ手順において用途が見出される。本開示の抗体はまた、インビトロまたはインビボのどちらであっても、本開示のポリペプチドまたはフラグメントの存在を検出するためのアッセイにおいて使用することができる。抗体はまた、本開示のポリペプチドまたはフラグメントを免疫親和性クロマトグラフィーによって精製することにおいて用いることができる。
【0094】
合理的薬物設計の目標は、目的とする生物学的に活性なポリペプチドの構造的アナログ、または、それらが相互作用する小分子の構造的アナログ、例えば、阻害剤、アゴニストおよびアンタゴニストなどを製造することである。これらの例のどれもが、ポリペプチドのより活性な形態またはより安定な形態である薬物、あるいは、ポリペプチドの機能をインビボで高めるか、または妨害する薬物を作出するために使用することができる(Hodgson J.、1991、Biotechnology、9:19〜21;これは参照により本明細書中に組み込まれる)。1つの取り組みにおいて、目的とするポリペプチドの三次元構造またはポリペプチド−阻害剤複合体の三次元構造が、X線結晶学によって、核磁気共鳴によって、または、コンピューター相同性モデル化によって、あるいは、最も典型的にはこれらの方法の組合せによって決定される。ポリペプチドの形状および電荷の両方が、ポリペプチドの構造を解明するために、また、ポリペプチドの活性部位を決定するために確認されなければならない。それほど多くの場合ではないが、ポリペプチドの構造に関する有用な情報を相同的なポリペプチドの構造に基づくモデル化によって得ることができる。両方の場合において、関連のある構造情報が、類似したプレセニリン様分子を設計するために、または、効率的な阻害剤を特定するために、または、本開示のプレセニリンと結合し得る小分子を特定するために使用される。合理的薬物設計の有用な例には、Braxton SおよびWells J A(1992、Biochemistry、31:7796〜7801)によって示されるように、改善された活性または安定性を有する分子、あるいは、Athauda S B他(1993、J Biochem、113:742〜746)によって示されるような生来的ペプチドの阻害剤、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用する分子が含まれ得る(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)。阻害剤設計および阻害剤−プレセニリン−1ポリペプチド相互作用を助けるための分子モデル化ソフトウエアシステムにおけるプレセニリン−1ポリペプチドの構造情報の使用もまた本開示によって包含される。本開示の特定の方法は、本開示のプレセニリンポリペプチドの三次元構造を基質の有望な結合部位について分析すること、予測された反応性部位を取り込む新しい分子を合成すること、および、新しい分子を本明細書中においてさらに記載されるようにアッセイすることを含む。
【0095】
機能的アッセイによって選択される標的特異的な抗体を本明細書中においてさらに記載されるように単離し、その後、その結晶構造を解明することもまた可能である。この取り組みは原理的には、その後の薬物設計が基づき得るファルマコア(pharmacore)をもたらす。ポリペプチド結晶学を、機能的かつ薬理学的活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体(抗id)を作製することによって完全に回避することが可能である。鏡像の鏡像として、抗idの結合部位は、元の受容体のアナログであることが予想されるであろう。抗idはその後、ペプチドを化学的または生物学的に製造されたペプチドのバンクから特定および単離するために使用することができる。単離されたペプチドがその後、ファルマコアとして作用するであろう。
【0096】
本開示のポリペプチドおよびペプチドはまた、それらに結合する物質を、特定された結合パートナーを有する細胞に送達するためのキャリアとしての用途が見出される。従って、ポリペプチドを、診断剤または治療剤をインビトロ手順またはインビボ手順でそのような細胞(または、結合パートナーを細胞表面に発現することが見出される他の細胞タイプ)に送達するために使用することができる。ポリペプチドに結合することができる検出可能な物質(診断剤)および治療剤には、トキシン、他の細胞毒性剤、薬物、放射性核種、発色団、および、比色定量反応または蛍光定量反応を触媒する酵素などが含まれるが、これらに限定されない。具体的な物質が、意図された適用に従って選ばれる。トキシンには、リシン、アブリン、ジフテリアトキシン、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)菌体外トキシンA、リボゾーム不活性化ポリペプチド、マイコトキシン(例えば、トリコテセン類など)、ならびに、それらの誘導体およびフラグメント(例えば、単鎖)が含まれる。診断使用のために好適な放射性核種には、123I、131I、99mTc、111Inおよび76Brがが含まれるが、これらに限定されない。治療使用のために好適な放射性核種の例には、131I、211At、77Br、186Re、188Re、212Pb、212Bi、109Pd、64Cuおよび67Cuが含まれる。そのような物質は、いずれかの好適な従来の手順によってポリペプチドに結合させることができる。ポリペプチドは、例えば、共有結合性の結合を形成するために、所望の物質における官能基と反応し得るアミノ酸側鎖上の官能基を含む。代替において、ポリペプチドまたは物質は、所望の反応性官能基を生じさせるために、または結合させるために誘導体化することができる。誘導体化では、様々な分子をポリペプチドに結合するために利用可能な二官能性カップリング試薬の1つを結合することを含むことができる(Pierce Chemical Company、Rockford、Ill.)。ポリペプチドを放射性標識するための数多くの技術が知られている。放射性核種金属を、例えば、好適な二官能性キレート化剤を使用することによってポリペプチドに結合することができる。従って、ポリペプチドおよび好適な診断剤または治療剤を(好ましくは共有結合により連結されて)含むコンジュゲートが調製される。このようなコンジュゲートは、特定の適用のために適切な量で投与されるか、または、他の場合において用いられる。
【0097】
本明細書中に提供される方法によって特定される物質および本開示のペプチドは、臨床的状況にかかわらず、アミロイド原線維の形成、凝集または沈着に伴う疾患を処置するために治療的または予防的に投与することができる。本開示の化合物は、下記の機構のいずれかを使用してアミロイド関連疾患の経過を調節するために作用し得る:例えば、アミロイド原線維の形成または沈着の速度を遅らせること;アミロイド沈着の程度を軽減すること;アミロイド原線維形成の阻害、低下または防止をもたらすこと;アミロイド誘導の炎症を阻害すること;アミロイドの、例えば、脳からのクリアランスを高めること;あるいは、細胞をアミロイド誘導(オリゴマーまたは原線維の)毒性から保護すること(これらに限定されない)。
【0098】
アミロイド沈着の「モジュレーション」は、アミロイド沈着又は原繊維形成の阻害(上記で規定される)と増強の両者を含む。従って用語「モジュレートする」は、アミロイドーシスが進行している(例えばすでにアミロイド凝集物を有する)被験体におけるアミロイド形成又は蓄積を防止又は停止すること、さらなるアミロイド凝集の阻害又は減速、及びアミロイドーシスが進行している被験体におけるアミロイド凝集物の低減又は逆転;及びアミロイド沈着の増強、例えばin vivo及びin vitroでのアミロイド沈着の速度もしくは量の増加を包含する。アミロイド増強化合物は、例えば短時間で動物のアミロイド沈着の発達を可能にするために、又は選択された期間にわたってアミロイド沈着を増加させるために、アミロイドーシスの動物モデルにおいて有用であり得る。アミロイド増強化合物はin vivoで、例えば動物モデル、細胞アッセイで、及びアミロイドーシスについてのin vitroアッセイで、アミロイドーシスを阻害する化合物のためのスクリーニングアッセイにおいて有用であり得る。かかる化合物は、例えば化合物のためのより迅速で高感度のアッセイを提供するために使用することができる。一部の場合には、アミロイド増強化合物はまた、治療目的、例えばCAAを予防するために脳血管の壁よりもむしろ、管腔中のアミロイド沈着を増強するために投与することができる。アミロイド凝集のモジュレーションは、未処理被験体と相対的に又は治療前の処理被験体と相対的に測定される。
【0099】
アミロイド沈着の「阻害」には、アミロイド形成(例えば、原繊維形成)の防止又は停止、脳からの可溶性Aβのクリアランス、アミロイドーシスの(例えばすでにアミロイド沈着を有する)被験体におけるさらなるアミロイド沈着の阻害又は減速、及びアミロイドーシスが進行している被験体におけるアミロイド原繊維形成又はアミロイド沈着の低減もしくは逆転などがある。アミロイド沈着の阻害は、未処理被験体に比較して、又は治療前の処理被験体に比較して、例えば臨床的に測定可能な改善により、又は脳アミロイドーシスの被験体[例えば、例えばアルツハイマー病又は脳アミロイド血管症の被験体]の場合は認知機能の安定化又は認知機能のさらなる低下の予防(すなわち、疾患の進行を防ぐ、遅らせる、又は止める)により、又はCSFにおけるtau又はAβ濃度のようなパラメータの改善により測定される。
【0100】
本明細書で使用する被験体の「治療」は、アミロイド−β関連疾患もしくは状態を有するか、かかる疾患もしくは状態の症状を有するか、又はかかる疾患もしくは状態のリスク(罹患し易さ)がある被験体への、該疾患又は状態、該疾患又は状態の症状、又は該疾患又は状態のリスク(罹患し易さ)を治療し、治癒し、緩和し、除去し、改変し、軽減し、改善し、改良し、又は影響を与えることを目的とした、本開示の方法により同定される物質を含む組成物の適用もしくは投与、又はそのような被験体からの細胞もしくは組織への本開示の組成物の適用もしくは投与を含む。用語「治療する」は、任意の客観的又は主観的パラメータ(緩解など)を含む、損傷、病理、又は状態の治療又は改善;寛解;症状の縮小、又は損傷、病理、もしくは状態を被験体がより許容できるようにすること;変性又は減退の速度を遅延させること;変性の最終点の衰弱を小さくすること;被験体の身体的又は精神的健康を改善すること;又は一部の状況では、認知症の発症を予防すること、における成功の任意の兆候をいう。症状の治療又は改善は、客観的又は主観的パラメータ(身体検査又は精神的評価を含む)を基礎とすることができる。例えば本開示の方法は、認知の低下の速度又は程度を小さくすることにより、被験体の認知症をうまく治療する。
【0101】
家族性又は散発性のアルツハイマー病は高齢者でみられる主要な認知症であるが、他のタイプの認知症もみられる。これらには特に限定されないが以下がある:ピック病に関連する前頭側頭骨変性、血管性認知症、レーヴィ小体型の老人性認知症、前頭葉萎縮、進行性核上麻痺及び大脳皮質基底核変性症を有するパーキンソン病の認知症、及びダウン症候群に関連するアルツハイマー病。プラーク形成はまた、海綿状脳症(例えば、CJD、スクレピー、及びBSEなど)でもみられる。本開示は、そのような神経変性疾患、特に神経毒性タンパク質プラーク(例えばアミロイドプラーク)を伴うものの治療に関する。
【0102】
ダウン症候群は、生児出生800例中の1例に起きる深刻なヒト障害である。これは、罹患者の第21染色体の余分なコピー(21トリソミー)の存在に関連する。β−アミロイド前駆体タンパク質(β-APP)遺伝子は、第21染色体上で、ダウン症候群遺伝子座の非常に近位にコードされる。ダウン症候群を患うすべての患者は、40才を超えるとアルツハイマー病様認知症及び脳中のAβ沈着を発現させる。従って、Aβの過剰産生がADとダウン症候群のいずれの認知症の発生に直接関係すると提唱することは、充分理由がある。すなわちAD症状の改善のための治療薬の同定の本質は、ダウン症候群症状の改善にも有用であろう。
【0103】
「認知症」は、器質的又は心理的要因による全般的な精神変調をいい、見当識障害、記憶障害、判断、及び知力、及び軽い感情易変性を特徴とする。本発明において認知症は、血管性認知症、虚血血管性認知症(IVD)、前頭側頭型認知症(FTD)、レーヴィ小体認知症、アルツハイマー型認知症などがある。高齢者の間で最も一般的な認知症の様態はアルツハイマー型認知症である。
【0104】
本明細書で使用する「軽度−中度」又は「早期段階」のADという表現は、進行しておらず、疾患の兆候又は症状が重くはないADと同義に使用される。軽度−中度又は早期段階のADの被験体は、熟練した神経科医又は臨床医によって確認され得る。一実施形態において、軽度−中度のADの被験体は、ミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination)(MMSE)を使用して確認される。ここで、「中度−重度」又は「後期段階」のADという用語は、進行しており、疾患の兆候又は症状が顕著なADをいう。かかる被験体は、熟練した神経科医又は臨床医により確認され得る。この様態のADを患う被験体はコリンエステラーゼインヒビターを用いる治療にもはや応答せず、アセチルコリンレベルが顕著に低下していることがある。一実施形態において、中度−重度のADを患う被験体は、ミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination)(MMSE)を使用して同定される。「家族性AD」は、遺伝子欠陥により引き起こされる遺伝型のADである。AD又は認知症の「症状」は、任意の病的兆候、又は被験体が経験する構造、機能、又は間隔の正常との解離であり、AD又は認知症を示すものである。
【0105】
アミロイド原繊維の形成、凝集、又は沈着に関連する疾患を治療するための物質を、治療的または予防的に投与することができる。本開示の物質は、原繊維形成の経過を改善し;アミロイド−βにより誘導される神経変性又は細胞毒性を阻害し;アミロイド−β誘導性炎症を阻害し;脳からのアミロイド−βのクリアランスを増強し;又はAβのより大きな異化を促進するように作用することができる。
【0106】
物質は脳Aβに直接作用することにより、例えばこれを非繊維状で維持するか又は脳からのそのクリアランスを促進することにより、アミロイド−β沈着を制御する上で有効であり得る。前記化合物はAPPプロセシングを遅らせることができ;マクロファージ又は神経細胞によるAβ原繊維の分解を増加させることができ;又は活性化小神経膠細胞によるAβ産生を減少させることができる。これらの物質はまた、脳中のAβを細胞表面と相互作用することから防ぎ、従って神経毒性、神経変性、又は炎症を防ぐことができる。
【0107】
本発明で提供される方法により同定される物質は、アルツハイマー病(例えば散発性又は家族性AD)を治療するのに使用することができる。物質はまた、例えばダウン症候群の個体、及び脳アミロイド血管症(「CAA」)、遺伝性脳出血、又は早期アルツハイマー病の患者の、アミロイド−β沈着の他の臨床的発生(clinical occurrence)を治療するために、予防的または治療的に使用することができる。
【0108】
物質はまた、軽度の認知障害を治療するために使用することができる。軽度の認知障害(「MCI」)は、必ずしも認知症の存在に関連していない思考力の軽いが測定可能な障害の状態を特徴とする。MCIはしばしば(必ずではないが)アルツハイマー病に先行する。
【0109】
さらに筋肉繊維中のAPP及びアミロイド−βタンパク質の異常蓄積は、散発性封入体筋炎(IBM)の病理に関与している(Askanas, V., et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 1314-1319; Askanas, V. et al. (1995) Current Opinion in Rheumatology 7: 486-496)。従って、本発明で提供される方法により同定される物質は、非神経学的位置にアミロイド−βタンパク質が異常に沈着している障害の治療(例えば筋繊維への化合物の送達によるEBMの治療など)において予防的または治療的に使用することができる。
【0110】
さらにAβは、加齢性黄斑変性症(ARMD)の個体の網膜色素性上皮の基底表面に沿って蓄積する異常細胞外沈着物(ドルーゼンとして知られている)に関連していることが示されている。ARMDは、高齢者の不可逆的失明の原因である。Aβ沈着は、網膜色素性上皮の萎縮、ドルーゼン生物発生、及びARMDの病理発生に寄与する局所的炎症性事象の重要な成分であり得ると考えられている(Johnson, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(18), 11830-5 (2002))。
【0111】
従って本開示は、概して、アミロイド原繊維の形成もしくは沈着、神経変性、又は細胞毒性が低減するか又は阻害されるように、本発明で提供される方法により同定される物質又は化合物の治療量を被験体に投与することを含む、被験体(好ましくはヒト)のアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。別の実施態様において、本開示は、脳アミロイドーシスを患う患者、例えばアルツハイマー病、ダウン症候群、又は脳アミロイド血管症の患者で、認知機能が改善又は安定化されるか、又は認知機能のさらなる悪化が防止され、遅延され又は停止されるように、本発明で提供される方法により同定される化合物の治療量を被験体に投与することを含む、被験体(好ましくはヒト)のアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。これらの化合物はまた、これらの被験体の日常生活の質を改善することができる。
【0112】
さらに本開示は、アミロイド関連疾患の治療のための物質を含む医薬組成物、ならびにかかる医薬組成物の製造する方法に関する。
【0113】
一般に、本開示で提供される方法により同定される物質は、当業者に公知の方法のいずれかにより調製することができる。本開示の物質は、適切な溶媒とともに又は溶媒無含形態(例えば、凍結乾燥型)で提供することができる。本開示の別の態様において、本開示の方法を実施するのに必要な物質及び緩衝液は、キットとしてパッケージングすることができる。キットは、本明細書に記載の方法に従って商業的に使用することができ、本開示の方法において使用するための説明書を含んでよい。追加のキット成分として、酸、塩基、緩衝化剤、無機塩、溶媒、抗酸化剤、保存剤、又は金属キレート剤などを含んでもよい。追加のキット成分は、純粋な組成物として、又は1つ又はそれ以上の追加のキット成分を含む水溶液もしくは有機溶液として存在する。キット成分のいずれか又はすべては、場合により緩衝液をさらに含む。
【0114】
治療薬はまた、非経口、腹腔内、髄腔内、又は脳内に投与することができる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物、及び油中で調製することができる。通常の保存及び使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有してもよい。
【0115】
非経口投与以外の経路で治療薬を投与するために、物質をその不活性化を防ぐ材料で被覆するか又は該材料と共に共投与することが必要であり得る。例えば治療薬は、適切な担体、例えばリポソーム又は希釈剤中で被験体に投与することができる。薬剤学的に許容される希釈剤には、食塩水及び液体バッファー溶液などがある。リポソームには、水中油中水型CGFエマルジョンならびに従来のリポソームなどがある(Strejan et al., J. Neuroimmunol. 7, 27 (1984))。
【0116】
注射用途に適した医薬組成物は、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散剤、及び無菌注射溶液もしくは分散剤の即時調製のための無菌粉末を含む。すべての場合に、組成物は無菌であり、容易に注射可能である程度に流動的でなければならない。組成物は製造と保存条件下で安定であり、細菌や真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0117】
適切な薬剤学的に許容されるビヒクルには、特に限定されないが、経口、非経口、鼻内、粘膜内、経皮、血管内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、及び皮下(SC)投与経路に適した任意の非免疫原性医薬アジュバント、例えばリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)などがある。
【0118】
ビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適当な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体でもよい。適当な流動性は、例えば、リシチンのようなコーティングの使用により、分散剤の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物作用は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより防止することができる。多くの場合に、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム、又はポリアルコール(例えばマンニトール及びソルビトール)が組成物中に含有される。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを組成物中に含めることにより行うことができる。
【0119】
無菌注射用溶液は、治療薬を必要量だけ適切な溶媒中に、必要に応じて上記成分の1つ又は組合せと共に含有させ、次にろ過滅菌することにより調製することができる。一般に分散剤は、治療薬を、基礎分散媒体と上記からの必要な他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合は、調製方法は真空乾燥と凍結乾燥であり、これは活性成分(すなわち治療薬)と、予め無菌ろ過したその溶液からの任意の追加の所望成分を生じる。
【0120】
治療薬は、例えば不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体とともに経口投与することができる。治療薬及び他の成分はまた、硬又は軟シェルゼラチンカプセル中に封入されるか、錠剤に圧縮されるか、又は直接被験体の食事中に組み込んでもよい。経口治療投与のために、治療薬は賦形剤とともに組み込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。組成物及び調製物中の治療薬の割合は、もちろん変化してもよい。かかる治療上有用な組成物中の治療薬の量は、適切な用量が得られるようなものである。
【0121】
投与の容易さと投与量の均一性のために、非経口組成物を単位投与剤型で調製することが特に有利である。本明細書において使用する単位投与剤型は、治療される被験体にとって1回の投与に適した物理的に別個の単位をいい、各単位は、必要な医薬ビヒクルとともに所望の治療効果を与えるように計算された規定量の治療薬を含有する。本開示の単位投与剤型の規格は、(a)治療薬の固有の特性と達成される特定の治療効果、及び(b)被験体のアミロイド沈着の治療のためにかかる治療薬を配合する技術における固有の制限、により影響を受ける、かつ直接的に左右される。
【0122】
従って本開示は、エアゾル剤、経口及び非経口投与のための薬剤学的に許容されるビヒクル中に、本明細書に記載の方法により同定される物質(その薬剤学的に許容される塩を含む)を含む医薬製剤を含む。また本開示は、静脈内、筋肉内、又は皮下注射による場合にような、凍結乾燥されておりかつ投与のための薬剤学的に許容される製剤を形成するために再構成することができる、前記物質又はその塩を含む。投与はまた皮内又は経皮でもよい。
【0123】
本開示に従って、物質及びその薬剤学的に許容される塩は、経口的もしくは吸入により固体として投与してもよいし、又は筋肉内もしくは静脈内に溶液、懸濁液、又はエマルジョンとして投与してもよい。あるいは前記物質又は塩は、吸入、静脈内、又は筋肉内にリポソーム懸濁液として投与してもよい。
【0124】
エアゾル剤としての(例えば吸入による)投与に適した医薬製剤も提供される。これらの製剤は、所望の物質若しくはその塩の溶液若しくは懸濁液、又は該物質もしくは塩の複数の固体粒子を含む。所望の製剤は、小さいチャンバーに入れられ、噴霧化される。噴霧化は、圧縮空気又は超音波エネルギーにより行われ、前記物質又は塩を含む複数の液滴もしくは固体粒子を生じる。液滴もしくは固体粒子は、約0.5〜約5ミクロンの範囲の粒径を有するものとする。固体粒子は、固体物質又はその塩を、当該分野で公知の適切な様式(例えば微粉化)により加工することにより得ることができる。固体粒子又は液滴のサイズは、例えば約1〜約2ミクロンである。この点で、この目的を達成するために市販のネブライザーが利用できる。鼻腔内投与用には、液滴のサイズは一般的に、約10〜約20ミクロンまたはそれ以上である。
【0125】
エアゾル剤としての投与に適した医薬製剤は液体の形態でもよく、製剤は水を含む担体中に水溶性物質又はその塩を含む。噴霧化に供する際に、所望のサイズ範囲内の液滴が充分に生じるように、製剤の表面張力を下げる界面活性剤が存在してもよい。
【0126】
経口組成物はまた、溶液、エマルジョン、懸濁液などを含む。かかる組成物の調製に適した薬剤学的に許容されるビヒクルは当該分野で周知である。シロップ剤、エリキシル剤、エマルジョン、及び懸濁剤用の担体の典型的成分には、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体ショ糖、ソルビトール、及び水などがある。懸濁剤用の典型的な懸濁化剤にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガカント、及びアルギン酸ナトリウムなどがあり、典型的な湿潤剤には、レシチン及びポリソルベート80などがあり、そして典型的な保存剤には、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムなどがある。経口液体組成物はまた、例えば上記の甘味剤、香味剤、及び着色剤のような1つ又はそれ以上の成分をさらに含むことができる。
【0127】
医薬組成物はまた従来法により、典型的には対象物質が所望の局所的適用の近位で消化管中に放出されるように、又は所望の活性を延長するために種々の時間に放出されるように、pHもしくは時間依存性コーティングによりコーティングすることができる。かかる剤形は典型的には、特に限定されないが、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、フタル酸ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、蝋、及びシェラックなどがある。
【0128】
対象物質の全身性送達を達成するのに有用な他の組成物には、舌下、口腔、鼻内投与剤形などがある。かかる組成物は典型的には1つ又はそれ以上の可溶性充填剤物質、例えばショ糖、ソルビトール及びマンニトール;及び結合剤、例えばアカシアゴム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどがある。上記の流動促進剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、及び香味剤も含まれ得る。
【0129】
本開示の組成物はまた、被験体に局所的に、例えば被験体の表皮もしくは上皮組織上に該組成物を直接塗布するかもしくは広げることにより、又は経皮的に「パッチ」を介して投与することもできる。かかる組成物には、例えばローション、クリーム剤、液剤、ゲル剤、及び固形剤などがある。これらの局所的組成物は、有効量の、通常少なくとも約0.1%、又は約1%〜約5%の本開示の物質を含むことができる。局所投与に適した担体は皮膚上に連続薄膜として留まり、発汗又は水への浸漬によりはがれることに抵抗する。一般に、担体は本質的に有機性であり、その中に治療薬を分散又は溶解することができる。担体は、薬剤学的に許容されるエモリエント剤、乳化剤、増粘剤、溶媒などを含んでよい。
【0130】
上記において、また、さらには下記の実施例において記載されるように、本開示は、β−APP提示細胞と、PS提示細胞との間における特異的接着が種々の生理学的結果を有することを裏付ける。すなわち、1つが、これらのタンパク質の正常な機能に関連する経細胞(ジャクスタクリン)シグナル伝達プロセスであり、他方が、β−APPのタンパク質分解を究極的には生じさせて、アルツハイマー病の病理につながるAβを形成させる。
【0131】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、共通した構造的モチーフを共に有する。一般に、GPCRは、それぞれが膜をまたぐ7つのアルファらせんを形成する、22個〜24個の間の疎水性アミノ酸からなる7つの配列を有する。これらの膜貫通らせんが、細胞膜の外側で、すなわち、「細胞外」側で、膜貫通−2と、膜貫通−3との間で、膜貫通−4と、膜貫通−5との間で、膜貫通−6と、膜貫通−7との間でアミノ酸の鎖によってつながれる(これらは、「細胞外」領域1、同2および同3(EC−1、EC−2およびEC−3)としてそれぞれ示される)。これらの膜貫通らせんはまた、細胞膜の内側で、すなわち、「細胞内」側で、膜貫通−1と、膜貫通−2との間で、膜貫通−3と、膜貫通−4との間で、また、膜貫通−5と、膜貫通−6との間でアミノ酸の鎖によってつながれる(これらは、「細胞内」領域1、同2および同3(IC−1、IC−2およびIC−3)としてそれぞれ示される)。受容体の「カルボキシ」(「C」)末端が細胞の内側の細胞内空間にあり、受容体の「アミノ」(「N」)末端が細胞の外側の細胞外空間にある。
【0132】
一般に、リガンドが受容体と結合するとき(これは多くの場合、受容体の「活性化」として示される)、細胞内領域と、細胞内「Gタンパク質」との間における共役を可能にする、細胞内領域の立体配座における変化が認められる。GPCRがGタンパク質に関して「乱交的」であること、すなわち、GPCRが2つ以上のGタンパク質と相互作用し得ることが報告されている。Kenakin,T.他、43、Life Sciences、1095(1988)を参照のこと。他のGタンパク質が存在するが、現時点では、Gq、Gs、Gi、GzおよびGoが、これまでに特定されているGタンパク質である。内因性リガンド活性化GPCRがGタンパク質と共役すると、(「シグナル伝達」と呼ばれる)シグナル伝達カスケードプロセスが開始される。正常な状態のともでは、シグナル伝達は最終的には、細胞の活性化または細胞の阻害を生じさせる。受容体のIC−3ループならびにカルボキシ末端がGタンパク質と相互作用することが考えられている。
【0133】
受容体活性化Gタンパク質が細胞膜の内側表面に結合している。それらは、Gαサブユニットおよび強固に会合したGβγサブユニットからなる。リガンドがGタンパク質共役受容体を活性化するとき、リガンドは受容体における立体配座変化(形状における変化)を誘導し、この変化により、Gタンパク質は今度は受容体に結合することが可能になる。その後、Gタンパク質はその結合しているGDPをGαサブユニットから放出し、GTPの新しい分子と結合する。この交換は、Gαサブユニット、Gβγダイマーおよび受容体の解離を引き起こす。その後、両者、すなわち、Gα−GTPおよびGβγは、異なるシグナル伝達カスケード(またはセカンドメッセンジャー経路)およびエフェクタータンパク質を活性化することができ、一方、受容体は次のGタンパク質を活性化することができる。Gαサブユニットは最終的には、結合しているGTPをその固有的酵素活性によってGDPに加水分解し、これにより、GαサブユニットがGβγと再会合することを可能にし、新しいサイクルを開始させる。
【0134】
グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(「o」はotherを表す)のアルファサブユニットは様々な受容体およびエフェクターとの間におけるシグナル伝達を媒介する。Goアルファサブユニットの2つの形態が脳組織ライブラリーから単離されている。これら2つの形態、すなわち、GoAアルファおよびGoBアルファ(これらはまた、GoAおよびGoBとして示される)は、選択的スプライシングの産物である。GoAアルファ転写物は様々な組織に存在するが、脳において最も多く存在する。GoBアルファ転写物が脳および精巣では非常に大きいレベルで発現される。
【0135】
GPCRはヒトゲノムにおける最大の遺伝子ファミリーの1つを構成しており、神経伝達物質、ホルモン、ケモカインおよび多くの他の分子によって調節される非常に様々な細胞機能を媒介する。GPCRシグナル伝達の、時宜を得た脱共役は、GPCR媒介による生理学的機能の適切さおよび完全性を維持するために非常に重要である。この脱共役は主に、はるかにより小さい遺伝子ファミリーによって媒介される。この遺伝子ファミリーは現在、GPCRキナーゼ(GRK)の7つのメンバーが見出される。いくつかのGRKメンバーが非常に多数のGPCRを調節する特異性が、アゴニスト依存的様式で制御される。言い換えれば、GRKはアゴニスト占拠GPCRに優先的に結合し、これをリン酸化して、受容体を対応するGタンパク質から脱共役する(これは、同種脱感作として知られているプロセスである)。構造的類似性に基づいて、7つの知られているGRKメンバーは4つのサブファミリーに分類され(GRK1、GRK2/3、GRK4/5/6およびGRK7)、GRK2/3およびGRK5/6が、脳を含めて、遍在的分布を有している。恐らくはGRK5も同様であるが、GRK2の調節異常が、GRKがこれまで広範囲に研究されている慢性心不全、心筋梗塞および高血圧、ならびに、他の心臓血管障害の病理発生に関わっている。ロドプシンのシグナル伝達をGRK1によって脱感作することができないことが、光受容体細胞の死につながる可能性があり、色素性網膜炎の一因であると考えられている。加えて、増大したGRK2レベルがアヘン嗜癖と関連している。しかしながら、これらのほかに、GPCRの脱調節に潜在的に関連する多くの他の病理学的状態におけるGRKの役割、例えば、ADにおける役割などは、事実上、未検討のままである。
【0136】
GPCRの膜位置のために、形質膜の表面または細胞質ゾルの内部におけるGRKの保持は生理学的には、GPCRへのその接近および結合に影響する。休止細胞において、GRK4サブファミリーメンバー(これには、GRK4/5/6が含まれる)は形質膜と強固に会合し、一方、GRK2サブファミリーメンバー(GRK2/3)は主として細胞質ゾル性であり、細胞がGPCRアゴニストによって刺激されるとき、膜に転位置する。しかしながら、活動細胞では、GRKの細胞内局在化が、細胞質ゾルに対する膜におけるGRK結合因子の含有量および容量によって決定されるようである。リン脂質、具体的にはホスファチジルイノシトール−4,5−ビホスファートは、膜へのGRK付着において役割を果し、GPCRと結合するようであり、一方、ホスファチジルセリンはまた、膜上のGPCRに対するGRK2結合を高めているかもしれない。他方で、カルシウム/カルモジュリンおよび他のカルシウム結合タンパク質は、アクチンおよびアクチニンなどと同様に、GRKを細胞質ゾルに隔離し、GRKがGPCRに結合することを阻害することに寄与しているかもしれない。
【0137】
ADの脳において、著しい膜変化、異常なホスホイノシチド代謝、乱れたカルシウム恒常性および解体された細胞骨格タンパク質はすべて、GRKの細胞内分布に影響を及ぼし得る。加えて、増大したβ−アミロイド(AD病理発生にとって中心的な疎水性ペプチド)が、膜のホスファチジルイノシトール−4,5−ビホスファートを低下させ、かつ、[Ca2+を増大させることが示されている。
【0138】
本開示は部分的には、プレセニリンが一種のGタンパク質共役受容体(GPCR)として機能し、これにより、二次的メッセージ伝達および下流側の影響を生じさせるという実証に基づく。PS−1およびPS−2についての(ロドプシンの7−TM構造のような)7−TM構造の証拠は、PS−1およびPS−2が、本質的に類似する構造をすべてがともに有するGタンパク質共役受容体スーパーファミリーのタンパク質に属するかどうかに関して調べることをもたらしている。PSは、これまでに調べられたおよそ1,000個のGPCRのいずれとも実質的なアミノ酸相同性を何ら示さないが、これらのGPCRのすべてが7−TM型内在性タンパク質であり、多くがどの他とも配列相同性を全く示さないという事実は、PS分子もまたGPCRであるという可能性を可能する。
【0139】
プレセニリンのGPCR活性が、N141I−PS−2変異を使用して特定された。この変異は、ボルガ地方のドイツ人家族におけるFADと関連づけられるものであり、PC−12細胞の死を百日咳トキシン(PTx)感受性様式で引き起こした。他の研究では、(膜におけるPS−1のほとんどすべてのトポグラフィーモデルにおいて細胞質に位置する)PS−1の39アミノ酸残基のカルボキシル末端ドメインの内部には、脳のGタンパク質については特異的結合・調節ドメインが存在することが示唆された。Gとインビトロで結合するPS−1のこのドメインはまた、ある程度の局所的なアミノ酸配列相同性を2つの他のGPCRタンパク質(D2−ドーパミン作動性受容体および5HT−1B受容体)のG結合ドメインに関して、同様にまた、Gタンパク質活性化オリゴペプチドのマストパランに関して示す。PS−1が機能的GPCRであるという可能性が、本明細書中においてさらに記載される。
【0140】
本開示は、Gタンパク質Gが全長型PS−1と結合し、百日咳トキシン(PTx)によって阻害されることを明らかにする。加えて、GoBではなく、GoAのみがPS−1と結合する。PS−1の無テール構築物によるESヌル細胞のトランスフェクションは、結合のほとんどがPS−1のカルボキシル末端テーテルにおいて生じることを明らかにする。しかしながら、非常に少ない量の結合が無テールPS−1の存在下で生じたので、これらの結果は、他の細胞質ループ領域が結合に関与しているかもしれないことを示している。本開示はまた、Gタンパク質が、PS−1だけでなく、PS−2にも結合すること、そして、PS−2については、GoAの結合に加えて、GoBはまた、無傷のPS−2と結合することを明らかにする。この結合は、無テールPS−2が全長型PS−2の代わりに使用されるときも依然として存在する。これらの結果は、GoBがC−テール以外の細胞質ドメインにおいてPS−2と結合することを示唆する。PS−1に対する35S−GTPγS標識GαoA(GαoBではない)の結合における700%を超える増大。PS−2については、同様に、35S−GTPγS標識GαoAの結合の、基礎レベルを上回る700%超の増大、同様にまた、35S−GTPγS標識GαoBにおける約300%の増大が認められる。PTxによる処理により、GoAおよびGoBの両方に対する35S−GTPγSの取り込みが阻害される。
【0141】
従って、GoAは、同じような割合でPS−1およびPS−2の両方に結合し、これに対して、PS−2に対するGoBの結合は、同じ実験条件のもとでGoAについて観測される結合の半分未満である。このデータにより、PS−1およびPS−2に対するGタンパク質共役の機能的結果が確認され、また、これら2つのプレセニリンタンパク質がGタンパク質共役受容体(GPCR)として特徴づけられる。
【0142】
PS−1およびPS−2は、(上記で記載されるような)ファミリー“3”のGPCRと共通する特徴をそれ以外の2つのファミリーのどちらよりも多く有するようである。すなわち、両方とも、大きい細胞外ドメイン(N末端、および、TM VIと、TM VIIとの間での親水性ループ)を有しており、これはファミリー3のGPCRの特徴である。ファミリー3のGPCRにおけるリガンド結合が、もっぱら細胞外ドメインを介して、一般にはアミノ末端ドメインを介して起こるようである。PS−1またはPS−2のN末端ドメインは、β−APP(プレセニリンGPCR活性化の提案されたリガンドおよび考えられるアゴニスト)に対するPS−1またはPS−2のインビトロ結合のためにそれぞれ十分である。ファミリー3のいくつかのメンバーが、通常的には細胞外Cys残基によるジスルフィド結合によってであるが、ホモダイマーを形成する。PS−1およびPS−2がダイマーとして膜に存在することが広く知られている。さらに、PS−1およびPS−2はともに、Cys残基をそれらの細胞外ドメインに有する(7−TM構造)。ファミリー3のGPCRはすべてが3番目の細胞内ループを最も短いループとして有しており、このことはそれぞれのタイプの間で保存されている。同様に、PS−1およびPS−2における3番目の細胞内ループは最も短いループであり、これは、完全に保存されたKYLPEW(アミノ酸239からアミノ酸243までの配列番号2、および、アミノ酸245からアミノ酸250までの配列番号4)からなる。ファミリー3のGPCRのいくつかのメンバーは、それらのカルボキシル末端のPDZ結合ドメインを介して直接、細胞内のPDZドメインタンパク質(例えば、ホーマーなど)と相互作用する。PDZ結合ドメインが、いくつかのPDZタンパク質に結合することが示されているPS−1のカルボキシル末端テールに存在する。
【0143】
PSは細胞表面に発現可能であり、7−TM構造を有し、PS−1およびPS−2はβ−APPとの特異的な細胞・細胞相互作用に関与する;このβ−APP:PS媒介の細胞間相互作用により、チロシンキナーゼ活性およびタンパク質チロシンリン酸化における一時的な増大がもたらされる。さらに、β−APP:PS媒介の細胞・細胞相互作用が、少なくともAβの産生の主要な部分のために要求される。β−APPと、PSとの間における細胞間相互作用は、タンパク質チロシンキナーゼと、Gタンパク質シグナル伝達経路との間でのクロストークのために、PSに対するGタンパク質結合を活性化させる。
【0144】
本開示は、PSによるG活性化が最終的にはAβ産生に影響することを明らかにするので、本開示は、1つの局面において、PS−Gの特異的結合の適切に設計された阻害剤を使用するADのための薬物治療法を提供する。
【0145】
本明細書中に記載されるように、実験が、そのような起こり得る細胞間のタンパク質チロシンリン酸化シグナル伝達事象を検出するために行われた。β−APPにより一過性にトランスフェクションされた培養DAMI(ヒト巨核芽球)細胞が、PS−1またはPS−2によりトランスフェクションされたDAMI細胞と混合されたとき、混合後数分以内に、細胞抽出物は、コントロール、または、特異的なβ−APP:PS結合の阻害剤を含有する細胞混合物では現れなかった、タンパク質チロシンキナーゼ活性およびタンパク質基質のホスホチロシン(PTyr)修飾における著しい一時的な増大を示したことが示された。このシグナル伝達の下流側の結果が、PS−1またはPS−2がβ−APPへの細胞間結合に関わったかどうかに依存して異なっていた。これは、高まったチロシンリン酸化を示したタンパク質の範囲が2つの場合において全く異なっていたからである。このことは、これら2つの非常に相同的なPSタンパク質の生化学的機能が重複していることよりむしろ、これら2つの非常に相同的なPSタンパク質の生化学的機能が区別されることを示唆する。
【0146】
さらに、本開示は、上記で記載される生物学的経路を、ES二重ヌル細胞として本明細書中では示される、PS−1−/−かつPS−2−/−の二重ヌルマウスに由来する胚性幹(ES)細胞(これはコントロール実験ではトランスフェクションされなかったが、β−APPによりトランスフェクションされた)を使用することによって明らかにする。後者の場合、β−APPによりトランスフェクションされたES細胞が、PS−1またはPS−2のどちらかによりトランスフェクションされたDAMI細胞と混合される;DAMI細胞は著量の内因性β−APPをその表面に発現しない。従って、この混合細胞培養システムでは、β−APPによりトランスフェクションされたES二重ヌル細胞が、細胞表面に発現したβ−APPの唯一の供給源として役立ち、一方、PSによりトランスフェクションされたDAMI細胞が、細胞表面に発現したPSの唯一の供給源として役立つ。β−APP:PSの特異的なシグナル伝達事象がこのシステムにおいて生じるならば、それは、これら2つの細胞タイプの間におけるジャクスタクリン相互作用の結果である。本開示は、まさにそのような相互作用を明らかにする。
【0147】
シグナル伝達にはSrcファミリーのチロシンキナーゼ活性における一時的な上昇が伴うことが証明されており、これにより、β−APPと、PS−1との間の細胞間シグナル伝達を媒介する個々のSrcファミリーメンバーがpp60c−srcであることが確認されている。対照的に、β−APP:PS−2のシグナル伝達では、SrcファミリーメンバーのLynを伴う。これらのシグナル伝達事象は正常な生理学に影響を及ぼす。例えば、これらのシグナル伝達事象が、β−APPヌルマウスの開発において遭遇する生理学的障害において役割を果たしているかもしれない。Srcファミリーのキナーゼが、ガン、免疫系機能不全および骨リモデリング疾患に関係する。一般的な総説については、ThomasおよびBrugge、Annu.Rev.Cell Dev.Biol.、1997、13、513;LawrenceおよびNiu、Pharmacol.Ther.、1998、77、81;TatosyanおよびMizenina、Biochemistry(Moscow)、2000、65、49〜58;Boschelli他、Drugs of the Future、2000、25(7)、717を参照のこと。
【0148】
Srcファミリーメンバーには、哺乳動物では下記の8個のキナーゼが含まれる:Src、Fyn、Yes、Fgr、Lyn、Hck、LckおよびBlk。これらは、分子量が52kDから62kDにまで及ぶ非受容体タンパク質キナーゼである。すべてが、下記の6つの明確な機能的ドメインから構成される共通する構造的構成によって特徴づけられる:Src相同性ドメイン4(SH4)、固有的ドメイン、SH3ドメイン、SH2ドメイン、触媒ドメイン(SH1)およびC末端の調節領域。Tatosyan他、Biochemistry(Moscow)、2000、65、49〜58。発表された研究に基づくと、Srcキナーゼは、様々なヒト疾患に対する潜在的な治療標的と見なされる。
【0149】
GSK−3活性もまた、アルツハイマー病に関連する。この疾患は、広く知られているβ−アミロイドペプチドの存在、および、細胞内の神経原線維変化の形成によって特徴づけられる。神経原線維変化は、タウが、異常な部位でリン酸化される過剰リン酸化タウタンパク質を含有する。GSK−3は、これらの異常な部位を細胞モデルおよび動物モデルにおいてリン酸化することが示されている。さらに、GSK−3の阻害は、細胞におけるタウの過剰リン酸化を妨げることが示されている。GSK3を過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて、著しい増大したタウの過剰リン酸化およびニューロンの異常な形態学が認められた。活性なGSK3が、もつれる前のニューロンの細胞質に蓄積し、このことが、AD患者の脳における神経原線維変化を引き起こしている可能性がある。GSK−3の阻害は神経原線維変化の生成を遅らせるか、または停止させ、従って、アルツハイマー病を処置するか、または、その重篤度を軽減する。GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割についての証拠がインビトロで示されている(例えば、Aplin他(1996)、J Neurochem、67:699;Sun他(2002)、Neurosci Lett、321:61;Takashima他(1998)、PNAS、95:9637;Kirschenbaum他(2001)、J Biol Chem、276:7366;Takashima他(1998)、Neurosci Res、31:317;Takashima他(1993)、PNAS、90:7789;Suhara他(2003)、Neurobiol Aging、24:437;De Ferrari他(2003)、Mol Psychiatry、8:195;およびPigino他、J Neurosci、23:4499、2003を参照のこと)。GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割についての証拠がインビボで示されている(例えば、Yamaguchi他(1996)、Acta Neuropathol、92:232;Pei他(1999)、J Neuropath Exp Neurol、58:1010;Hernandez他(2002)、J Neurochem、83:1529;De Ferrari他(2003)、Mol Psychiatry、8:195;McLaurin他、Nature Med、8:1263、2002;およびPhiel他(2003)、Nature、423:435を参照のこと)。
【0150】
プレセニリン−1およびキネシン−1はまた、Pigino.G.他、Journal of Neuroscience(23:4499、2003)によって近年に記載されたように、GSK−3に対する基質であり、GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割についての別の機構に関わる。GSK3ベータがキネシン−1の軽鎖をリン酸化し、この結果、膜結合オルガネラからのキネシン−1の放出を生じさせ、これにより、速い順方向の軸索輸送における減少を引き起こすことが見出された。PS−1における変異は、結果的にはニューロンにおける軸索輸送を損なうGSK−3活性の脱調節および増大を生じさせているかもしれない。軸索輸送が、冒されたニューロンにおいて結果として低下することが、究極的には神経変性を引き起こす。
【0151】
本開示は、β−APP提示細胞と、PS提示細胞との間における特異的な接着が、種々の生理学的結果(1つが、これらのタンパク質の正常な機能に関連する経細胞(ジャクスタクリン)シグナル伝達プロセスであり、他方が、β−APPのタンパク質分解を最終的には生じさせて、アルツハイマー病の病理を引き起こすβAを形成させる)を有することを裏付ける。このシステムにおけるジャクスタクリン相互作用についての証拠が、β−APPによるか、あるいは、PS−1またはPS−2によるかのどちらかで適切にトランスフェクションされる培養DAMI細胞を用いて得られた;特異的なβ−APP:PS媒介細胞・細胞相互作用は、タンパク質チロシンキナーゼ活性およびタンパク質チロシンリン酸化における迅速かつ一時的な増大を、接着している細胞の最も起こりそうには一方において、または、場合によっては両方においてもたらした。DAMI細胞が、この細胞は通常、著量の内因性β−APPを細胞表面に発現しないために、また、この細胞は、細胞基層から機械的に剥がすことが容易であるために用いられた。従って、ES二重ヌル細胞をβ−APPによりトランスフェクションすることによって、PSではなく、表面β−APPのみを発現する細胞が利用可能になり、また、DAMI細胞をPS−1またはPS−2のどちらかによりトランスフェクションすることによって、PSタンパク質を表面に発現し、著しいβ−APPを全く発現しなかったさらなる細胞が作製された。
【0152】
これらのトランスフェクション細胞の間における混合実験は、結果が示すように、ジャクスタクリン相互作用から生じる、すなわち、一方の細胞表面の膜結合しているPSを別の細胞表面のβ−APPとともに必要とする反応から生じる、β−APPと、PSとの間のシグナル伝達を明らかにする(図5)。この相互作用が、可溶性β−APP(β−APPの細胞質ドメイン)によって、また、FLAGに融合されるPS−1のN末端ドメインによってそれらの両方で特異的に阻害される。このことは、β−APPのPSとの相互作用の二重特異性を明らかにする。
【0153】
このシグナル伝達の下流側の結果が、PS−1またはPS−2がβ−APPに対する細胞間結合に関わるかどうかに依存して異なっている。チロシンリン酸化によって修飾されるタンパク質の範囲が、PS−1またはPS−2がβ−APPに対する特異的な細胞間結合に関与したかどうかに依存して異なった。本開示は、c−Srcを、β−APPおよびPS−1が細胞間で相互作用するときのリン酸化における主たる一時的増大を受けるタンパク質として特定する。SrcキナーゼファミリーメンバーのLynは、β−APPに対するPS−2の細胞間結合に関与する支配的な(または少なくとも主たる)Srcキナーゼであるようである。まとめると、これらの結果から、これら2つの非常に相同的なプレセニリンタンパク質について、冗長的ではなく、むしろ、異なる生理学的機能を生じさせることができる別個のシグナル伝達機構が示される。
【0154】
本開示は、β−APPと、PS−1またはPS−2のどちらかとの間におけるジャクスタクリンシグナル伝達が、これら2つのPSタンパク質の間で異なる迅速かつ一時的なチロシンキナーゼ活性化を生じさせることを明らかにする。c−SrcまたはLysが、β−APPがPS−1またはPS−2と結合したときにそれぞれ動員される。動員は、シグナル伝達複合体が細胞・細胞接触の部位においてインビボで一時的に形成され、発達上の結果を生じさせるリン酸化事象のカスケードを作動させることを示唆するであろう。β−APP:PS−1複合体との会合のために必要なSrcの領域を特定することにより、β−APP:PS−1シグナル伝達複合体の組み立ておよび活性化に関する有益な情報が提供され、また、β−APP:PS−1複合体と、キナーゼとの間の相互作用が直接的または間接的であるか否かが示される。β−APPは、細胞質のチロシン残基に対してリン酸化されることが知られておらず、また、PS−1も、細胞質のチロシン残基に対してリン酸化されることが知られておらず、従って、c−SrcのSH2ドメインを介する直接的な結合は起こりそうにない。これは、このドメインはリン酸化チロシン残基においてだけ結合するからである。
【0155】
直接的な結合がSrcのSH3ドメインを介して生じ得る。SH3ドメインは、コアのP−X−X−P(配列番号10)(式中、Xは任意のアミノ酸を示す)を含有するプロリンリッチ配列を認識する。リガンドがSH3結合表面を2つの逆配向のうちの1つで認識する。1型配向で結合するペプチドはコンセンサス配列R−X−L−P−X−Z−P(配列番号11)(式中、Zは通常、疎水性残基またはAr残基である)に一致する(Kay他、2000)。興味深いことに、PS−1およびPS−2はともに、保存された1型SH3結合部位(LPALP;アミノ酸432からアミノ酸436までの配列番号2、または、アミノ酸413からアミノ酸417までの配列番号4を参照のこと)を細胞質のカルボキシル末端領域に有する。
【0156】
GPCRの相互作用を阻害する数多くの物質がこの分野では知られている。加えて、数多くのキナーゼ(例えば、c−srcおよびflnなど)阻害剤がこの分野では知られており、本開示の方法において使用され得る。そのような物質を医薬的に許容され得るキャリアに含む組成物で、ADを処置するための組成物、または、記憶機能を修正するために使用することができる組成物が本開示によって意図される。
【0157】
特異的なGPCRスクリーニングアッセイ技術が当業者には知られている。例えば、候補化合物が、「包括的な」Gタンパク質共役受容体アッセイ(例えば、アンタゴニスト、アゴニスト、部分アゴニストまたはリバースアゴニストである化合物を選択するためのアッセイ)を使用して特定されると、その候補化合物が受容体部位において相互作用していることを確認するためのさらなるスクリーニングを行うことができる。例えば、この「包括的な」アッセイによって特定される化合物は受容体に結合しないかもしれないが、代わりに、Gタンパク質を細胞内ドメインから単に「脱共役」するだけであるかもしれない。
【0158】
Gタンパク質活性を、Gタンパク質に関連する酵素をアッセイすることによって求めることができる。例えば、Gは酵素アデニリルシクラーゼを刺激する。他方で、G(ならびにGおよびG)はこの酵素を阻害する。アデニリルシクラーゼは、ATPからcAMPへの変換を触媒する;従って、Gタンパク質と共役する構成的活性化GPCRがcAMPの増大した細胞レベルに関連する。他方で、G(またはG、G)タンパク質と共役する構成的活性化GPCRがcAMPの低下した細胞レベルに関連する。一般的には、「シナプス伝達の間接的機構」、第8章、From Neuron To Brain(第3版)(Nichols,J.G.他編、Sinauer Associates,Inc.(1992))を参照のこと。従って、cAMPを検出するアッセイを、候補化合物が、例えば、受容体に対するインバースアゴニストまたはアンタゴニストであるかどうかを決定するために利用することができる(すなわち、そのような化合物はcAMPのレベルを低下させるであろう)。cAMPを測定するためにこの分野では知られている様々なアプローチを利用することができる;最も好まれるアプローチが、抗cAMP抗体をELISA型形式で使用することに依拠する。利用することができる別のタイプのアッセイが、全細胞セカンドメッセンジャーリポーターシステムアッセイである。遺伝子上のプロモーターが、特定の遺伝子がコードするタンパク質の発現を行わせる。環状AMPは、cAMP応答エレメントと呼ばれる特定部位においてプロモーターにその後で結合し、当該遺伝子の発現を行わせるcAMP応答性のDNA結合タンパク質または転写因子(CREB)の結合を促進させることによって遺伝子発現を行わせる。多数のcAMP応答エレメントを含有するプロモーターをレポーター遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ)の前に有するレポーターシステムを構築することができる。従って、構成的に活性化されたGsリンク受容体はcAMPの蓄積を引き起こし、これにより、その後、レポータータンパク質の遺伝子および発現が活性化される。その後、レポータータンパク質(例えば、ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼなど)を、標準的な生化学的アッセイを使用して検出することができる。
【0159】
およびGが酵素ホスホリパーゼCの活性化に関連する;酵素ホスホリパーゼCは結果的に、リン脂質PIPを加水分解し、これにより、2つの細胞内メッセンジャー、すなわち、ジアシクログリセロール(DAG)およびイノシトール1,4,5−三リン酸(IP)を放出する。IPの増大した蓄積がG会合受容体およびG会合受容体の活性化に関連する。一般的には、「シナプス伝達の間接的機構」、第8章、From Neuron To Brain(第3版)(Nichols,J.G.他編、Sinauer Associates,Inc.(1992))を参照のこと。IPの蓄積を検出するアッセイを、候補化合物が、例えば、G会合受容体またはG会合受容体に対するインバースアゴニストであるかどうかを決定するために利用することができる(すなわち、そのような化合物はIPのレベルを低下させるであろう)。G会合受容体はまた、G依存性ホスホリパーゼCが、AP1エレメントを含有する遺伝子の活性化を引き起こすAP1リポーターアッセイを使用して調べることができる;従って、活性化されたG会合受容体が、そのような遺伝子の発現における増大の証拠となり、それにより、それに対するインバースアゴニスト/アンタゴニストがそのような発現における低下の証拠となり、アゴニストがそのような発現における増大の証拠となる。そのような検出のための市販されているアッセイが利用可能である。
【0160】
同様に、PS−1、PS−2および/またはβ−APPの細胞外ドメインと相互作用し、それらの天然の細胞間相互作用を妨げる物質または試験化合物または薬物候補物を、アルツハイマー病を処置するために、および/または、Aβ産生を低下させるために使用することができる。Gタンパク質活性化およびAβ産生の両方が、β−APP:PSの細胞間相互作用を特異的に阻害することによって阻害される。Gタンパク質活性化およびAβ産生が、百日咳トキシン(G活性化の阻害剤)の共培養における存在によって阻害される。このことは、β−APP:PS−1の細胞間相互作用に続くGタンパク質活性化がβ−APPからのAβ産生の経路の途上にあることを明らかにする。これらの結果は、Gタンパク質シグナル伝達におけるPSの直接的な役割を裏付けており、ADのための薬物候補物を開発するための新しい手段を提供するかもしれない。
【0161】
本明細書中に記載されるように、プレセニリンのβ−APP結合ドメインは、天然に存在するもの、または、合成されたもののどちらであっても、例えば、β−APPの細胞外ドメインに結合するタンパク質、オリゴペプチド(例えば、長さが約5個〜約100個のアミノ酸であるもの、典型的には、長さが、約5個〜50個のアミノ酸、5個〜20個のアミノ酸、または、5個〜15個のアミノ酸であるもの)を示す。
【0162】
「アゴニスト」は、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合し、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現を刺激し、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現を増大させ、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現を活性化し、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現を促進させ、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性化を高め、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを敏感にし、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現をアップレギュレーションする物質を示す。
【0163】
「アンタゴニスト」は、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、あるいは、本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性を刺激することを部分的または完全に阻止するか、あるいは、それらの活性を部分的または完全に低下させるか、あるいは、それらの活性を部分的または完全に妨げるか、あるいは、それらの活性を活性化することを部分的または完全に遅らせるか、あるいは、それらの活性を部分的または完全に不活性化するか、あるいは、それらの活性を部分的または完全に鈍化するか、あるいは、それらの活性を部分的または完全にダウンレギュレーションする物質を示す。
【0164】
「小さい有機分子」は、天然に存在するもの、または、合成されたもののどちらであっても、分子量が約50ダルトンを超え、約2500ダルトン未満(好ましくは約2000ダルトン未満)であり、好ましくは約100ダルトン〜約1000ダルトンの間であり、より好ましくは約200ダルトン〜約500ダルトンの間である有機分子を示す。
【0165】
「機能的影響を求める」は、プレセニリンの影響を間接的または直接的に受けるパラメーターを増減させる化合物についてアッセイすること、例えば、物理的および化学的または表現型の影響を測定すること、例えば、Gタンパク質またはβ−APPとのプレセニリンの相互作用の物理的および化学的または表現型の影響を測定することを示す。そのような機能的影響は、当業者に知られているいずれかの手段によって測定することができる;例えば、タンパク質についての分光学的特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的特性(例えば、形状)、クロマトグラフィー特性または溶解性特性における変化;タンパク質の誘導性マーカーまたは転写活性化を測定すること;結合活性を測定することまたは結合アッセイ、例えば、抗体に対する結合;リガンド結合親和性における変化を測定すること;カルシウム流入の測定;本開示のポリペプチドの酵素産物の蓄積の測定、または、基質の消耗の測定;酵素活性における変化、本開示のポリペプチドのタンパク質レベルにおける変化の測定;RNA安定性の測定;Gタンパク質結合;GPCRのリン酸化または脱リン酸化;タウのリン酸化または脱リン酸化、シグナル伝達、例えば、受容体・リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えば、cAMP、IPまたは細胞内Ca2+);下流側遺伝子発現またはレポーター遺伝子発現(CAT、ルシフェラーゼ、ベータ−galおよびGFPなど)の、例えば、化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導性マーカーおよびリガンド結合アッセイによる特定。加えて、プレセニリンに対するβ−APP結合、および、Aβ産生もまた、プレセニリン活性に対する機能的影響を求めるものとして使用することができる。
【0166】
以下の実施例は、本開示を例示するものであって、限定するものではない。これらの実施例で使用される科学的方法の種々のパラメータは詳細に説明され、開示内容を一般に実施するための指針を提供する。
【実施例】
【0167】
実施例1
pcDNA3中のGタンパク質GαoA及びGαoBのcDNAを、UMR cDNA Resource Center(Rolla, MO)から購入した。pcDNA3中の完全長ヒトPS-1とPS-2のcDNAを、既に記載されているようにPCRによりクローニングした。最後のTM-ドメインの直後のPS-1又はPS-2の細胞質ドメインのみが欠如したPS-1及びPS-2のテイルレス構築物をpcDNA3中に構築した(この構築物は、PS-1のアミノ酸1〜430及びPS-2の1〜410からなる)。
【0168】
細胞培養:ES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞を、公表されたプロトコールに従って培養した。
【0169】
トランスフェクション:ES(PS-1-/-/PS-2-/-)を、15μgの、全長ヒトPS-1又はPS-2のpcDNA構築物と、所望のGタンパク質のcDNAを用いてリポフェクタミン(Invitrogen)法を使用して一過的にトランスフェクトした。簡単に説明すると、リポフェクタミン−DNA溶液を室温に30分放置し、充分量の血清無含培地と混合し、細胞に加えた。細胞を37℃でCO2インキュベーター中で5時間インキュベートし、次に培地に血清を補充し、トランスフェクションの12〜24時間後に細胞を回収した。
【0170】
免疫沈降:トランスフェクションの24時間後、培養培地を除去し、細胞を200μlの抽出バッファー中で剥がした。Smineらの可溶化条件(50mM HEPES/NaOH、pH 7.4、1mM EDTA、1mM DTT、1% Triton X-100、60 mMオクチルクリコシド、及びプロテアーゼインヒビター)を使用して超音波処理により、全細胞抽出物を作製した。PS-1(MAB5232)又はPS-2(MA1〜754)のラージループに対するモノクローナル抗体を使用して、100μgの各抽出物を免疫沈降した。次に免疫沈降タンパク質を12% SDS-PAGEで分離し、膜に転移した。次にGタンパク質Goに対する抗体(K-20、Santa Cruz Biotechnology製のsc-387、親和性精製した;このポリクローナル抗体はGoAとGoBの両方を認識する)によるウェスタンブロットハイブリダイゼーションを行った。
【0171】
ウェスタンブロットハイブリダイゼーション:免疫沈降したタンパク質をローディングバッファー(50 mM Tris、pH 6.8、0.1 M DTT、2% SDS、0.1% ブロモフェノールブルー、10% グリセロール)中で5分間沸騰させ、SDS-PAGE(12%)ゲル上で電気泳動により分離し、タンパク質をニトロセルロースフィルターに移した。フィルターを1次ポリクローナルウサギGタンパク質抗体と共にインキュベートし、次に西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート型ヤギ抗ウサギIgGと共にインキュベートした。フィルター結合ペルオキシダーゼ活性を化学発光により検出した。
【0172】
PS-1 ES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞へのGタンパク質Goの結合を、全長ヒトPS-1に対するcDNAとGタンパク質GoA又はGoBのcDNA(UMR cDNA Resource Center, Rolla, MO)を用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、Smineらの可溶化条件(50mM HEPES/NaOH、pH 7.4、1mM EDTA、1 mM DTT、1% Triton X-100、60 mMオクチルクリコシド、及びプロテアーゼインヒビター)を使用して超音波処理により、全細胞抽出物を作製した。ラージループ[7-TMモデルで細胞外である(Mab #5232、Chemicon、これはすでに公表された研究で使用された]に対するモノクローナル抗体を使用して、100μgの各抽出物を免疫沈降した。次に免疫沈降したタンパク質を12% SDS-PAGEで分離し、膜に転移した。次に、PS-1とGoの両方に対する抗体(K-20、Santa Cruz Biotechnology製のsc-387、親和性精製した;このポリクローナル抗体はGoAとGoBの両方を認識する)によりウェスタンブロットハイブリダイゼーションを行った。
【0173】
PS-2に対するGタンパク質Goの結合:ES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞を、全長ヒトPS-2のcDNAとGタンパク質GoA又はGoBのcDNA(UMR cDNA Resource Center, Rolla, MO)を用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、Smineらの可溶化条件(50mM HEPES/NaOH、pH 7.4、1mM EDTA、1 mM DTT、1% Triton X-100、60 mMオクチルクリコシド、及びプロテアーゼインヒビター)を使用して超音波処理により、全細胞抽出物を作製した。PS-2のラージループ(Affinity BioReagentsからのMA1-754)に対するマウスモノクローナル抗体を使用して、100μgの各抽出物を免疫沈降した。次に免疫沈降したタンパク質を12% SDS-PAGEで分離し、膜に転移した。次にPS-2とGoの両方に対する抗体によるウェスタンブロットハイブリダイゼーションを行った。
【0174】
百日咳毒素処理:PTxプロトマーを10mM DTTと共に37℃で10分間インキュベートして、これを酵素活性型に変換した。PS-1又はPS-2及びGタンパク質のcDNAでES細胞をトランスフェクトした5時間後、1 mM NAD、2 mM MgCl2、及び1 mM EDTAの存在下で培養培地中の細胞に500ng/mlの活性化PTxを加え、細胞を5% CO2の存在下で37℃、12時間インキュベートした。次に細胞を回収し、後述するように[35S]-GTPγS取り込みを調べた。
【0175】
GTPγS結合:細胞を回収し、タンパク質を可溶化バッファー(50mM HEPES/NaOH、pH 7.4、1mM EDTA、1 mM DTT、1% Triton X-100、60 mMオクチルクリコシド、1Xプロテアーゼインヒビターミックス)を使用して超音波処理により可溶化した。100μgのタンパク質を等量のBuffer B(50mM HEPES/NaOH pH 7.4、40μM GDP、50mM MgCl2、100mM NaCl)と200μlの容量で混合した。50nMの[35S]-GTPγS(1250Ci/mmol)を用いて反応を開始し、室温で60分間インキュベートした後、20μlの10X停止バッファー(100 mM Tris-HCl、pH 8、25mM MgCl2、100 mM NaCl、20 mM GTP)を加えて反応を停止させた。次にサンプルを抗PS-1ループモノクローナル抗体(5μl)で免疫沈降させた。抗体−タンパク質複合体をプロテインA/Gアガロースに室温で90分間結合させ、洗浄バッファー1(50 mM HEPES、pH 7.4、1 mM EDTA、pH 8.0、1% Triton X-100、1Xプロテアーゼインヒビターミックス、150 mM NaCl、及び60 mM オクチル-β-D-グルコピラノシド)で2回洗浄し、洗浄バッファー2(50 mM HEPES、pH 7.4、1 mM EDTA、pH 8.0、0.5% Triton X-100、1Xプロテアーゼインヒビターミックス、及び50 mM NaCl)と3(50 mM HEPES、pH 7.4、1 mM EDTA、pH 8.0 及び1Xプロテアーゼインヒビターミックス)でそれぞれ1回洗浄した。次に洗浄したアガロースビーズをシンチレーション液(CytoScint, ICN)(5ml)中に懸濁し、Beckman Coulter LS 6000 SCシンチレーションカウンターで3分間計測した。
【0176】
全長ヒトPS-1及びGタンパク質GαoA又はGαoBのcDNAで共トランスフェクトしたES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞の抽出物100μgをPS-1の親水性ラージループに対するMAbで免疫沈降させ、次にGoに対する親和性精製したポリクローナル抗体(これは両方のアイソフォームGoAとGoBを認識する)を用いてウェスタンブロットハイブリダイゼーションを行ったとき、PS-1/GoA共トランスフェクト細胞のみが約45kDaでGoの明確なシグナルを生じており(図1、レーン3)、これはGoBではなく、GoAがPS-1に結合することを示唆している。対照の非トランスフェクト細胞又はPS-1のみでトランスフェクトした細胞は、同様に処理したとき、ウェスタンブロット上でGoバンドを示さなかった(図1)。
【0177】
PS-1の細胞質カルボキシル末端へのGタンパク質Goの結合の証明。最後のTM-ドメインの直後のPS-1の細胞質ドメインのみが欠如したPS-1のテイルレス構築物をpcDNA3中に構築した(この構築物は、アミノ酸1〜430を含む)。この構築物を使用してES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞をトランスフェクトした。テイルレスPS-1は、膜中に組み込まれ、細胞表面上に発現されることが示されている。全長PS-1について上記したものと同じ方策で、ES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞を、テイルレスPS-1とGタンパク質GαoA又はGαoBのcDNAでトランスフェクトした。次に細胞抽出物を、PS-1ループMAb #5232で免疫沈降させ、SDS-PAGEで分離し、Goに対する抗体でウェスタンブロットした。
【0178】
テイルレスPS-1及びGタンパク質GαoA又はGαoBのcDNAで共トランスフェクトしたES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞の抽出物100μgをPS-1の親水性ラージループに対するMAbで免疫沈降させ、次にGoに対する親和性精製したポリクローナル抗体(これは両方のアイソフォームGoAとGoBを認識する)を用いてウェスタンブロットハイブリダイゼーションを行った。結合が検出され(図1、レーン6)、これは、結合ドメインであることが先に同定されたカルボキシル末端39アミノ酸は、GoAのPS-1の全結合ドメインを構成しないことを示している。GoBはテイルレスPS-1への結合を示さなかった(図1、レーン7)。
【0179】
PS-1へのGoA結合の大部分を排除したテイルレス構築物を使用した結果は、PS-1テイル以外にPS-1の別の領域への一部のPS-1:GoA結合の特異性を示す。これらはまた、GoAがPS-1 β−セクレターゼ複合体の他の成分に結合し、PS-1抗体で共免疫沈降した可能性を排除する。
【0180】
完全なPS-2へのGタンパク質Goの結合を解明するためにさらに試験を行った。結合ドメインであることが同定された39アミノ酸のPS-1 C末端領域は、PS-2のC末端テイルに完全に保存されている。従って、PS-2のC末端ドメインもGαoに結合されると考えられた。PS-1と同様に、GoはPS-2に結合するが顕著な差があることが示された。GoAとGoBの両方を認識するGo抗体は、PS-2及びGoAならびにPS-2及びGoBcDNAで共トランスフェクトした細胞の抽出物のPS-2免疫沈降物のウェスタンブロットで二重縞を示した。二重縞はおそらく、Goの両方のアイソフォームのPS-2への結合を示す(図2、レーン2と4)。これに対してPS-1はGoBに結合せず(図1、レーン4)、同じGo抗体とのウェスタンブロットで単一のバンドを示したのみであった(図1、レーン3)。
【0181】
PS-2の細胞質カルボキシル末端へのGタンパク質Goの結合を調べた。PS-1のように、最後のTM-ドメインの直後のPS-2の細胞質ドメインのみが欠如したPS-2のテイルレス構築物をpcDNA3中に構築した(この構築物は、アミノ酸1〜410を含む)。この構築物をES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞をトランスフェクトするのに使用すると、膜中に組み込まれ、細胞表面上に発現されることが示された。全長PS-1とPS-2について上記したものと同じ方策で、ES(PS-1-/-/PS-2-/-)細胞を、テイルレスPS-2とGタンパク質GαoA又はGαoBのcDNAでトランスフェクトした。次に細胞抽出物を、PS-2ループMAb #MA1-754で免疫沈降させ、SDS-PAGEで分離し、Goに対する抗体でウェスタンブロットした。
【0182】
GoAと共に共発現したテイルレスPS-2を、PS-1の結果のように、PS-2 MAbで免疫沈降し、抗Go抗体でウェスタンブロットすると、バンド強度が低下したが、バンドが全く存在しないことはなかった。一方、GoB/PS-2共トランスフェクションサンプル中のバンドの強度はテイルレスサンプルについては変化は無く、これはGoBがカルボキシル末端テイル以外の細胞内ドメインでPS-2に結合することを示唆する(図2、レーン3と5)。従ってPS-1とPS-2は、これらが結合するGoアイソフォームによってのみでなく、互いに相同的ではないPS-1とPS-2上の結合部位でも区別される。従って、PS-1とPS-2の機能的研究は全く異なる結果を与え、すなわちPS-1とPS-2は単に機能的に重複するタンパク質ではない、可能性がある。
【0183】
oA及びGαoB PS-1とGタンパク質GoA及びGoBとのPS介在型の機能活性化をさらに試験した。以前の試験は、PS-1のカルボキシル末端へのGo結合を評価するためのいくつかの独立したアプローチの1つとして、GTP加水分解とGTPγS結合とを使用した。しかしこれらは、3つの対照ペプチドとともに、PS-1のC末端の残基429〜467の合成ペプチドを用いてこのアッセイを行っていた。一方、このアプローチは、細胞抽出物中の35S-GTPγS取り込みについてアッセイすることにより、共トランスフェクト細胞中の完全なPS-1及びPS-2へのGタンパク質GoA及びGoBの結合の機能的結果を評価するためであった。
【0184】
PS-1とGタンパク質GoAのcDNAで共トランスフェクトしたES細胞の抽出物における35S-GTPγSの取り込みは、対照の非トランスフェクトES(PS-/-)細胞について得られた値の700%以上であることが示された(図3、カラム2)。この増加は、PS-1及びGoA cDNAでトランスフェクトした細胞を最初にPTxで処理したときはみられず(図3、カラム3)、これは毒素の存在下での機能の阻害を示している。一方、PS-1とGoBのcDNAでトランスフェクトした細胞は35S-GTPγSの取り込みを示さず(図3、カラム4)、これはPS-1へのGoBの結合が欠如した以前の結果に一致する。
【0185】
PS-1と同様に、GoAと共に共発現させ、35S-GTPγS結合についてアッセイしたとき、PS-2は非トランスフェクトの対照ES(PS-/-)抽出物よりも35S-GTPγS結合について700%を超える増加を示した(図4、カラム2)。これはPTxの存在下で阻害された(図4、カラム3)。PS-1の場合と異なり、PS-2へのGoB結合は35S-GTPγS取り込みを増加した。この新規知見は、GoBはPS-2に結合するがPS-1には結合しないという本明細書に記載の他のデータと一致する。35S-GTPγS取り込みにおけるこの増加は、GoAで観察されたもの(約300%)より小さい(図4、カラム4)。この増加はPTxの存在下で阻害される。図4に示した結果は、少なくとも3つの独立した実験の代表例である。
【0186】
実施例2
ES PSダブルヌル細胞を培養し、一晩プレーティングした。細胞を、全長ヒトβ-APP cDNAのpcDNA3構築物により、リポフェクタミン(Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従って使用してトランスフェクトした。DAMI細胞を培養し、pcDNA3又は全長ヒトPS-1もしくはPS-2 cDNAのpcDNA3構築物のいずれかでトランスフェクトした。
【0187】
親和性精製したポリクローナルウサギ抗PTyr抗体(Maher et al., 1985)をウェスタンブロットで使用した。マウスモノクローナル抗PTyr抗体(4G10;Upstate Biotechnology, Lake Placid, NY)をELISA分析で使用した。ヒトpp60c-srcに対するマウスモノクローナル抗体(抗Src、クローンGD11)と、Lynに対するウサギポリクローナル抗体(抗Lyn)はUpstate Biotechnologyから購入した。Fynに対するウサギポリクローナル抗体(抗Fyn、sc-16)はSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から購入した。PS-1のN末端ドメインに対する1次ラット抗ヒトPS-1モノクローナル抗体MAb #1563は、Chemicon International(Temecula, CA)から購入した。これは、GSTと融合したヒトPS-1(残基21〜80)のN末端ドメインの融合タンパク質抗原含有部分に対して作製された。ヒトβ-APP細胞外ドメインに対する1次マウスモノクローナル抗体MAb #348はChemicon Internationalから購入した。
【0188】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-コンジュゲート型親和性精製ヤギ抗ラットIgGとテトラメチルローダミンBイソシアネート(TRITC)-コンジュゲート型親和性精製ロバ抗マウスIgG 2次抗体は、Jackson ImmunoResearch(West Grove, PA)から購入した。免疫蛍光標識用のトランスフェクトDAMI細胞と非トランスフェクトDAMI細胞とをPBS中4%パラホルムアルデヒドで10分間固定化し、浸透処理することなく使用した。細胞を、1% BSA含有PBS中でPS-1に対する抗血清(1:200希釈)及びβ-APPに対する抗血清(1:500希釈)で懸濁液中、室温で30分標識した。PBSを用いて遠心分離により3回洗浄した後、細胞を1% BSA/PBS中に再懸濁し、適切な蛍光2次抗体と共にインキュベートした。インキュベーションを室温で20分間行い、次に細胞をPBSで洗浄し、封入剤(Vector Laboratories, Burlingame, CA)の存在下でスライド上にのせた。
【0189】
X60対物レンズにより、油浸を使用して免疫蛍光顕微鏡観察を行った。フルオレセインイソチオシアネートとテトラメチルローダミンBイソシアネートフィルターと、Zeiss Photoscope III装置とを用いるか、又はNomarski光学系を使用してスライドを調べた。
【0190】
PS-1とPS-2のN末端ドメインはPCRにより取得し、FLAG発現ベクター(Scientific Imaging Systems, IBI 13100)のTth111I部位とXhoI部位にクローニングして、PS-1もしくは-2のN末端ドメインのいずれかのN末端で結合したFLAGとの融合タンパク質を製造した。2種のFLAG-融合タンパク質をDH5α細菌で別々に増殖させ、製造業者のプロトコールに従って親和性精製した。精製した組換えタンパク質を、両FLAGに対する抗体と、PS-1又はPS-2のN末端ドメインのいずれかに対する抗体とを使用してウェスタンブロットによりチェックした。
【0191】
DAMI:ES細胞:同数(0.5x106/ml)のβ-APP695(Selkoe and Podlisny, 2002)トランスフェクトESダブルヌル細胞とPS-1トランスフェクトDAMI細胞とを、37℃で種々の時間(0〜20分)共培養した。
【0192】
実験は、適切にトランスフェクトしたDAMI細胞のみを使用して行った。同数(0.5x106/ml)のβ-APP-トランスフェクトDAMI細胞と、PS-1もしくはPS-2トランスフェクトDAMI細胞のいずれかとを、記載されたように(Dewji and Singer, 1998)正確に室温で静かに混合した。対照実験では、β-APPトランスフェクト細胞の代わりにpcDNA3のみでトランスフェクトしたDAMI細胞を使用した。
【0193】
混合後0〜20分のいくつかの時点で、各細胞混合物のアリコートを迅速に遠心分離し、培養培地を除去し、細胞ペレットを、プロテアーゼインヒビター(1mM 4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)/1μg/mlアンチパイン/0.1μg/mlペプスタチンA/0.1μg/mlロイペプチン)とホスファターゼインヒビターであるオルトバナジウム酸ナトリウム(0.1mM)とを含有する200μlの抽出バッファー(50mM Tris, pH 8.0/150mM NaCl/0.5% Nonidet-P40)中に懸濁した。混合物を20秒間のバーストを3回行うことで超音波処理し、その後遠心分離した。次にこれらの抽出上清を、後述するようにウェスタンブロットとELISA分析に使用した。
【0194】
細胞抽出物中のタンパク質チロシンキナーゼのSrcファミリーについてのアッセイを行った。基質ペプチドである{[Lys19]cdc2(6-20)-NH2}及び、対照ペプチドである{[Lys19Ser14Val12]cdc2(6-20)}と{[Lys19Phe15]cdc2(6-20)}とは、Upstate Biotechnology Inc.から購入した。PS-1トランスフェクト細胞と混合したトランスフェクトDAMI細胞(β-APP又はpcDNA3でトランスフェクトした);及びPS-2トランスフェクト細胞と混合したβ-APP-もしくはpcDNA3-トランスフェクト細胞、の抽出物において、3つ全てのペプチドを使用してSrcキナーゼ活性を測定した。対照は、反応混合物中で基質を使用せずに行った実験を含んだ。
【0195】
基質ペプチド(10μl中1.5mM)、Srcキナーゼ反応バッファー(100mM Tris−HCl、pH7.2、125mM MgCl2、25mM MnCl2、2mM EGTA、0.25mM オルトバナジウム酸ナトリウム、2mM DTT)(10μl)、Srcキナーゼ(アッセイ当たり2〜20Uの精製酵素、又は10μl中10〜200μgのタンパク質溶解物)、及びMn2+/ATPカクテルで希釈した[γ-32P]ATP(NEN Dupont, Boston, MA)(10μl)を、30℃で15〜20分インキュベートした。
【0196】
上記抽出物上清のアリコート(100μgタンパク質/レーン)をローディングバッファー(50 mM Tris, pH 6.8, 0.1 M DTT, 2% SDS, 0.1% ブロモフェノールブルー, 10% グリセロール)中で5分沸騰し、SDS-PAGE(10%)ゲル上で電気泳動により分離し、タンパク質をニトロセルロースフィルターに転移した。フィルターを1次ポリクローナルウサギ抗PTyr抗体と共にインキュベートし、次に西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート型ヤギ抗ウサギIgGと共にインキュベートした。フィルター結合ペルオキシダーゼ活性を化学発光により検出した。
【0197】
抽出バッファー中で細胞溶解物を調製し、4℃で15分間マイクロ遠心分離によって清澄化した。
【0198】
抽出物をc-Src、Lyn、又はFynのいずれかに特異的な4μgの抗体と共にインキュベートし、次にプロテインA又はGセファロース(40μlのスラリー)と共にインキュベートした。抗原抗体−プロテインA(又はG)セファロース複合体を、300mM NaClを含有するRIPA(50 mM Tris−HCl, pH 7.2, 150 mM NaCl, 1% Triton X-100, 1% デオキシコール酸ナトリウム, 0.1% SDS, 1% トラジロール, 25 μM ロイペプチン)で3回洗浄し、10mM NaClを含有するRIPAで1回洗浄し、40mM Tris−HCl(pH7.2)で2回洗浄し、25mM HEPES(pH6.9)、3mM MnCl2、及び200μMオルトバナジウム酸ナトリウムを含有するキナーゼバッファーで1回洗浄した。
【0199】
反応は公表されたプロトコール(Zisch et al., 1998)に従って、5μCi[g32P]ATP(3000Ci/mmol)を含有する40μlのキナーゼバッファー(25 mM Hepes, pH 6.9, 3 mM MnCl2 及び 200μM オルトバナジウム酸ナトリウム)中37℃で30分行った。反応ビーズをキナーゼバッファーで3回洗浄し、75μlのSDSゲルローディングバッファー(250mM Tris−HCl, pH 6.8, 4% SDS, 10% 2-メルカプトエタノール, 0.02% ブロモフェノールブルー、及び75% グリセロール)中に再懸濁した。自己リン酸化反応物をSDS-PAGEにかけ、次にタンパク質をPVDF膜に移しオートラジオグラフィーを行った。
【0200】
チロシンキナーゼアッセイキット(Upstate Biotechnology)を使用し、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、ELISAタンパク質チロシンキナーゼ活性を測定した。ポリ(Glu4-Tyr)のタンデムリピートを含有するビオチン化基質ペプチドを、製造業者のプロトコールに従って、非放射性ATPとMn2+/Mg2+補助因子カクテルとの存在下で異なる時間混合したトランスフェクト細胞の抽出液の上清(20μgタンパク質/ウェル)と共にインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたホスホチロシン特異的マウスモノクローナル抗体(4G10)を使用して、ELISAによりリン酸化基質を検出した。
【0201】
非トランスフェクトDAMI細胞及びPS-1トランスフェクトDAMI細胞中のβ-APPの細胞表面発現の欠如。最初の試験セットは、PS-1でトランスフェクション後にDAMI細胞がその表面に無視できる量のβ-APPのみを発現し続けるという仮定に依存するため、まず以下の実験を行った。固定化状態であるが非透過性状態の非トランスフェクト及びPS-1トランスフェクトDAMI細胞を、β-APP及びPS-1について2重に免疫蛍光標識した。既に記載されているように(Querfurth and Selkoe, 1994)、トランスフェクトしていない固定化非透過性DAMI細胞は、細胞表面上に多量のβ-APPを発現しない(図5a、パネル2)が、β-APPのpcDNA3構築物でトランスフェクトしたDAMI細胞は、固定化非透過性細胞中で顕著な細胞表面発現を示す(図5b、パネル2)。しかし図5aとbのパネル1は、非トランスフェクト固定化非透過性DAMI細胞が内因性細胞表面PS-1を発現することを示す。図5cのパネル1では、固定化非透過性PS-1トランスフェクト細胞中でPS-1のこの細胞表面発現が増加している。図5cのパネル2は、DAMI細胞をPS-1でトランスフェクトすることは、トランスフェクトしていない細胞でみられる無視できるレベルを超えてβ-APPの細胞表面発現を顕著には増加しないことを示す(図5a、パネル2)。図5dのパネル2は、β-APPでトランスフェクトしたESダブルヌル固定化非透過性細胞中でβ-APPの細胞表面発現を示すが、PS-1発現は示していない(図5d、パネル1)。
【0202】
非トランスフェクト固定化非透過性ESダブルヌル細胞では、予想されたように、細胞表面PS-1の標識はない(図5e、パネル1)が、内因性β-APPの少量の表面発現がある(図5e、パネル2)。これらの結果は、β-APPトランスフェクトESダブルヌル細胞とPSトランスフェクトDAMI細胞の相互作用において、ES細胞のみが細胞表面β-APPを発現し、PSを発現しないが、PSトランスフェクトDAMI細胞のみが細胞表面でPSを発現し、β-APPを発現しないことを証明する。従って、細胞の混合後にβ-APP:PS相互作用が起きるなら、これは細胞間相互作用の結果のみであり得る。
【0203】
また、特異的β-APP:PS細胞間シグナル伝達がチロシンキナーゼ活性の増加を引き起こすことを示すデータも提供される。β-APPでトランスフェクトしたESダブルヌル細胞をPS-1でトランスフェクトしたDAMI細胞と混合し、細胞間接触を保証する細胞密度を使用して、種々の時間(0〜20分間)共培養した。次に細胞抽出物についてELISAアッセイを行って、タンパク質チロシンキナーゼ活性を測定した。図6aは、これらの共培養物が、PS-1トランスフェクトDAMI細胞をβ-APPトランスフェクトDAMI細胞と混合したときに既に記載されているもの(Dewji and Singer, 1998)と同様のタンパク質チロシンキナーゼ活性の迅速かつ一過性の増加を生じることを示す。25μgの精製バキュロウイルス由来可溶性β-APP(β-APPの細胞外ドメイン)(図6b)又は25μgのPS-1のN末端ドメインに融合したFLAGレポーターの融合ペプチド(図6c)の存在下で、図6aと同じ相互作用を行ったとき、タンパク質チロシンキナーゼ活性の増加は起きなかった。一方、25μgのFLAG-PS-2 N末端ドメイン融合ペプチドの存在下での同じβ-APP:PS-1共培養物は、PTyr形成を阻害しなかった(図2d)。これらの結果は、いくつかの点を明瞭に確立する:1)可溶性β-APP自体は、PS-1トランスフェクトDAMI細胞を活性化してチロシンキナーゼ活性を示すことはない;トランスフェクトしたES細胞膜中に完全なβ-APPが必要である。これに対して、可溶性β-APPは、膜結合β-APPによって生じる活性を阻害し、これは膜結合β-APPが活性化に特異的に関与していることを証明する;2)PS-1のN末端ドメイン自体は、β-APPトランスフェクト細胞を活性化してチロシンキナーゼ活性を示すことはできない。そのDAMI細胞膜中に完全なPS-1分子が必要である。しかしPS-1(PS-2ではない)のN末端ドメインは共培養物の活性化を阻害し、これはPS-1トランスフェクトDAMI細胞上の膜結合PS-1も相互作用に特異的に関与していることを示す;3)インヒビターである可溶性β-APP及びPS-1のN末端ドメインのFLAG融合タンパク質のタンパク質としての性質は、生きたDAMI細胞及びES細胞の細胞膜のこれらの非透過性を保証に
し、従ってシグナル伝達事象を発生させるのに関与するのは細胞表面β-APPとPS-1の外部ドメインのみであることを立証する(すなわち、シグナル伝達は細胞接触介在型である)。これらの結果は、β-APPとPSとの間の細胞接触介在型相互作用が起こり得ることを確立する否定できない証拠を与える。
【0204】
さらに、PS-1のN末端ドメインが細胞外表面に露出しているというこの証明は、PSタンパク質の7-TM形に一致するが、8-TMモデル(これは、PSのN末端ドメインを細胞内に置く)の予測には矛盾する。
【0205】
本明細書に提供する追加のデータは、β-APP:PS-1とβ-APP:PS-2細胞間シグナル伝達が、Srcファミリーのチロシンキナーゼのメンバーに仲介され得ることを示す。β-APP:PS細胞間結合の結果であるPTyr修飾の増加は、同定する必要のある1つ又はそれ以上のタンパク質チロシンキナーゼが関与する。β-APPもPSタンパク質もかかるキナーゼ活性部位を含まないため、これらのタンパク質の細胞質ドメインの間接的活性(例えば、これらのドメインの1つへの細胞質チロシンキナーゼの直接的又は間接的結合)が下流のシグナルに関与しているかも知れない。Src遺伝子ファミリー内でいくつかの細胞質チロシンキナーゼが同定されているため、混合したトランスフェクト細胞の細胞抽出物において基質ペプチド[lys19]cdc2(6-20)-NH2(KVEKIGTYGVVKK;配列番号12)を使用してSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼをアッセイした。cdc2(6-20)中のTyr19がlysで置換されたこのペプチドは、Srcファミリーキナーゼの有効な基質であることが示されている。試験したすべてのSrcファミリーキナーゼ(v-Src及びc-Src、c-Yes、Lck、Lyn、及びFlyを含む)は、この基質に対する強い活性を示す。2つの対照ペプチドも使用した:第1のペプチド[lys19ser14val12]cdc2(6-20)-NH2(KVEKIGVGSYGVVKK;配列番号13)において、glu12とthr14はそれぞれvalとserにより置換され、生じるペプチドがSrcファミリーチロシンキナーゼの基質として機能する効率を大きく低下させた。もう一方のペプチド[lys19phe15]cdc2(6-20)-NH2(KVEKIGEGTFGVVKK;配列番号14)はチロシンキナーゼによりリン酸化されないはずであるが、ser/thrキナーゼの標的候補を含有した(thr14)。
【0206】
β-APP:PS-1相互作用を引き起こすβ-APPトランスフェクトDAMI細胞とPS-1トランスフェクトDAMI細胞との共培養物、及びβ-APPが欠如した対応の対照(pcDNA3:PS-1)、の抽出物中のSrcファミリーキナーゼ活性測定の結果を、図7aとbに示す。これらの3つのペプチドを使用した、β-APP:PS-2相互作用を引き起こすトランスフェクトDAMI細胞混合物、及び対照のpcDNA3:PS-2混合トランスフェクトDAMI細胞の抽出物についての同様の結果を図7cとdに示す。各β-APP:PS細胞混合物について、[lys19]cdc2(6-20)-NH2をSrcファミリーキナーゼ基質として使用した場合に、チロシンキナーゼ活性のELISAの結果に平行して、対照ペプチドと比較した活性増加の時間経過を得た。β-APP:PS-1相互作用(図7a)について、Srcファミリーキナーゼ活性は8分にピークに達し、12分までにベースラインレベルまで戻り、これは細胞混合後の時間の関数とするチロシンキナーゼ活性の以前のELISAの結果を確認している。同じ基質を対照pcDNA3:PS-1(図7b)混合細胞について使用したとき、顕著な増加は観察できなかった。β-APP:PS-2相互作用を引き起こす細胞混合物(図7c)については、チロシンキナーゼELISAの結果と同様に、基質ペプチド[lys19]cdc2(6-20)-NH2を用いて、混合後9分と16分に活性の2つの明瞭なピークが観察された。
【0207】
β-APPが欠如した対応の対照pcDNA3:PS-2(図7d)について、バックグランドを上回るSrcキナーゼ活性の顕著な増加は観察されなかった。これらの結果は、β-APP-トランスフェクト細胞とPS-1-トランスフェクト細胞の混合物で、又はβ-APP-トランスフェクト細胞とPS-2-トランスフェクト細胞の混合物で以前に観察されたチロシンキナーゼ活性の増加に、Srcチロシンキナーゼファミリーの1つ又はそれ以上のメンバーが関与することを示唆する。
【0208】
Srcファミリーキナーゼ及びチロシンキナーゼの特異的インヒビターの存在下でのチロシンキナーゼ活性の阻害。β-APP:PS細胞間シグナル伝達におけるSrcキナーゼファミリーの関与を、チロシンキナーゼ(ハービマイシンA)とSrcファミリーキナーゼ(PP2)の特異的インヒビターの存在下又は非存在下で行ったβ-APP:PS-1混合細胞相互作用の抽出物のELISAによりさらに確認した。図8aは、10μg/mlのハービマイシンAの存在下において、β-APPトランスフェクトDAMI細胞とPS-1トランスフェクトDAMI細胞との混合後8〜10分で、チロシンキナーゼ活性の増加が完全に阻害されることを示す。10nM PP2の存在下で行った同じ実験(図8b)は同様に、チロシンキナーゼ活性の阻害を示した。
【0209】
β-APP:PS-1細胞間シグナル伝達におけるc-Srcの関与に関する追加のデータを以下に示す。β-APP:PS-1細胞間シグナル伝達に関与するSrcファミリーメンバーの正体を決定するために、本発明者らはpp60c-Srcを調べ始めた。見かけの分子量が58kDaと60kDaの2つの主要なタンパク質バンド(c-Srcとサイズが似た二重縞)は、この細胞接触介在型相互作用で一過性のPTyr修飾を受けた。PS-1トランスフェクトDAMI細胞とβ-APPトランスフェクトDAMI細胞との混合物の抽出物を、抗PTyrもしくは抗c-Src抗体のいずれかを用いたSDS16PAGEと免疫ブロッティングにかけると、両方の抗体が同じ2つのバンドと反応した(図9a、パネル1〜3)。抗PTyr抗体と免疫ブロットしたこの図のパネル1は、タンパク質バンドのチロシンリン酸化の一過性増加(細胞混合後8〜10分で最大)を示す。パネル2では、c-Src抗体で免疫ブロットした同じ抽出物は経時的に変化しておらず、これはそのPTyrレベルの増加中にc-Srcタンパク質濃度が変化しないままであることを示す。重要な観察結果は、β-APPでトランスフェクトしたESダブルヌル細胞(従ってβ-APPのみを発現し、PS-1もしくは2は発現しない)を、PS-1でトランスフェクトしたDAMI細胞(従ってPS-1のみを発現し、細胞表面β-APPを発現しない)と混合すると、p60 c-Srcタンパク質及び1又は2つの追加のタンパク質は、PS-1トランスフェクトDAMI細胞(図9a、パネル1)と混合したβ-APPトランスフェクトDAMI細胞でみられたものと同様の混合後の時間(図9a、パネル4)でPTyr修飾が一過的に増加したことであった。従ってPTyr修飾結果はPS-1に関連し、これが発現した細胞タイプには関連しない(PS-2については下記参照)。
【0210】
c-Srcがβ-APP:PS-1相互作用において一過性のチロシンリン酸化を経たチロシンキナーゼファミリーのメンバーであるかどうかをさらに試験するために、混合後の異なる時点で採取した混合トランスフェクトDAMI細胞の抽出物を抗c-src抗体で処理し、次にプロテインGセファロースビーズで処理する実験(自己リン酸化)を行った。次にビーズにγ32PATPを加えた後、タンパク質をビーズから可溶化し、SDS17 PAGEとオートラジオグラフィーを行った。図9bの結果は、類似の抽出物中のPTyrの出現に対応する時間経過である細胞混合後8〜10分でリン酸化が最大であるいくつかの一過性バンドが現れることを証明する(図9a、パネル1)。これらのバンドで顕著なことはc-Srcに対応する1つの二重縞であり、これはβ-APP:PS-1細胞間相互作用でc-Srcが一過的に活性化されることを証明している。
【0211】
図9b中の他のリン酸化バンドの正体は不明である。必ずしもこれらのすべてがチロシンリン酸化による必要はなく、一部のセリン又はスレオニンキナーゼが、特異的抗pc-Srcと免疫反応したc-Srcに結合したかもしれない。β-APP:PS-2細胞間シグナル伝達の下流のFynではなくLynの関与。β-APP:PS-2細胞間相互作用を適切にトランスフェクトしたDAMI細胞の混合物を用いて行うと、β-APP:PS-1系とは完全に異なるセットのタンパク質がPTyr修飾された。50〜66kDaに存在するバンドがPTyr抗体により検出されたが、これらはウェスタンブロット上のc-Srcに対応しなかった(図11a、パネル1)。さらにβ-APP:PS-2混合細胞の抽出物を最初にc-Src抗体で免疫沈降させ、次に免疫沈降物をin vitroで自己リン酸化させたとき、早期の時点(混合後8〜10分)でリン酸化の顕著な増加はみられなかった(図10b)。
【0212】
しかし後の時点では、c-Srcは明らかにこれらのサンプルでリン酸化され、これは、c-Srcがβ-APP:PS-2シグナル伝達の第2の後のピークで同定される増加に寄与することを示している(図10b)。Srcキナーゼファミリーの他のメンバーの関与の可能性を、c-Src以外の53〜59kDa範囲の分子量で調べた。Lyn(分子量53/56kDa)とFyn(分子量59kDa)は、調べた2つのSrcキナーゼ候補であった。
【0213】
図11a中の抗Lyn抗体を用いたウェスタンブロットハイブリダイゼーションの結果は、β-APP:PS-2細胞間相互作用を行ったとき、Lynタンパク質濃度は変化しないが、抗Lyn抗体による抽出物の免疫沈降と沈降物のin vitro自己リン酸化後に、他のリン酸化バンドとともに、8〜9分と17〜18分で活性のピークを有するLynの一過性リン酸化が観察される(図11c)。Lynは、β-APP:PS-2相互作用についてのウェスタンブロット及びELISAでみられるPTyr増加と類似したパターンで一過性リン酸化を減る(図11c)。一方Fynは、抗Fyn抗体による免疫沈降後に、同じ抽出物中でin vitroの自己リン酸化(図11d)も、濃度の経時変化(図11b)も示さない。
【0214】
実施例3
以下のデータは、マウス前頭部皮質の抽出物中の内因性PS-1及びPS-2へのGタンパク質結合を示す。GTPγS可溶化/抽出バッファー[50 mM HEPES/NaOH pH 7.4, 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 1% Triton X100, 60 mM オクチルグリコシド, 1X プロテアーゼインヒビターミックス (1μM フェニルメチルスルホニルフルオリド, 1 μg/ml アンチパイン, 0.1 μg/ml ペプスタチンA, 0.1 μg/ml ロイペプチン)]中で、WTマウス前頭部皮質の20%ホモジネートを作製した。未処理、PTX処理、及びPS-1及びPS-2免疫枯渇抽出物について[35S]-GTPγS結合の測定を行った。
【0215】
未処理サンプルについて、100μgの抽出物をGTPγS可溶化/抽出バッファーで100μlにし、等量のGTPγSバッファーB(50 mM HEPES/NaOH pH 7.4, 40 μM GDP, 50 mM MgCl2, 100 mM NaCl)と混合して総量を200μlとした。50nMの[35S]-GTPγS(1250 Ci/mMol; Perkin Elmer)を用いて反応を開始し、室温で60分インキュベートした。20μlの10X停止バッファー(100 mM Tris−HCl, pH 8.0, 25 mM MgCl2, 100 mM NaCl, 20 mM GTP)を加えて反応を停止させた。
【0216】
PTX処理サンプルについて、100μgの抽出物をGTPγS可溶化/抽出バッファーで100μlにし、PTXバッファー(20 mM HEPES pH 8.0, 1mM EDTA, 2 mM MgCl2, 1 mM NAD)の存在下で500ng/mlの活性化PTXを用いて処理した。サンプルを30℃で12時間インキュベートした。次にPTX処理サンプルを等量のGTPγSバッファーBと混合し、上記したように[35S]-GTPγSアッセイに供した。
【0217】
マウス前頭部皮質の抽出物をPS-1及びPS-2に対するポリクローナル抗体の混合物(それぞれ10μl)で4℃で一晩免疫沈降させて、PS-1及びPS-2をサンプルから枯渇させた。プロテインAアガロース(20μl スラリー/100μg タンパク質)を加え、4℃で2時間サンプルを回転振盪した。PS−抗体−プロテインA複合体を高速で5分遠心分離した。上清を回収し、100μgのアリコートを上記したように[35S]-GTPγSアッセイに供した。
【0218】
GTPγS反応後、5μlの抗PS-1又は抗PS-2モノクローナル抗体のいずれかを加え、サンプルを4℃で一晩置いた。抗体−タンパク質複合体を20μlのプロテインA/Gアガロース(Pharmacia)に結合させ、サンプルを4℃に置き、2時間回転振盪した。アガロースビーズを洗浄バッファー1(50 mM HEPES, pH 7.4, 1 mM EDTA, pH 8.0, 1% Triton X100, 1X プロテアーゼインヒビターミックス)で3回洗浄し、洗浄バッファー2(50 mM HEPES, pH 7.4, 1 mM EDTA, pH 8.0, 0.5% Triton X100, 1X プロテアーゼインヒビターミックス)と3(50 mM HEPES, pH 7.4, 1 mM EDTA, pH 8.0, 1X プロテアーゼインヒビターミックス)とでそれぞれ1回洗浄した。次に洗浄したアガロースビーズを5mlのシンチレーション液(CytoScint, ICN)中に懸濁し、Beckman Coulter LS 6000 SCシンチレーションカウンターで3分間計測した。
【0219】
PS-1とPS-2の両方について、細胞内ループ1の最初の16アミノ酸に対応する配列[icl(1-16)]、細胞内ループ1の残りの16アミノ酸に対応する配列[icl(17-32)]、全細胞内ループ2に対応する配列(ic2)、全細胞内ループ3に対応する配列(ic3)、細胞質C末端テイルの最初の20アミノ酸に対応する配列(C1-20)、及び細胞質C末端テイルの残りの19アミノ酸に対応する配列(C21-39)は、合成されHPLCで>90%の純度まで精製される。図12は、PSの細胞内ドメインを示す。表1は、これらのドメインから合成できる配列を示す。さらにペプチドC1-20の配列をランダム化できる20アミノ酸の対照ペプチドが合成される。このペプチドは、GoについてPS-1上の結合ドメインとして同定される39アミノ酸配列の一部である。
【表1】
【0220】

実施例4
本試験は、PS-1のGPCR機能がAβの産生をモジュレートすることを証明する。PS-GPCR機能の研究における大きな問題は、PSからGタンパク質活性を誘発することができるPS(ここにリガンドが細胞内で結合する)に特異的なリガンドを決定することである。本試験は、3部構成のリガンド−受容体−Gタンパク質系がAβの産生を開始するかどうかを調べた。かかる系では、リガンド(β-APP)結合によるPSの活性化は、細胞質ドメイン中のPSへのGタンパク質結合をもたらす。
【0221】
PS-1又はPS-2へのGタンパク質結合がβ-APPからのAβ産生に影響を与えるかどうかを調べるために、百日咳毒素(PTx)の存在下及び非存在下でのβ-APPとPS-1との細胞間相互作用の実験を行った。PTxはGタンパク質Go活性化の特異的インヒビターである。PSのGPCR機能がβ-APP:PS細胞間結合からのAβの産生に関与するなら、その存在下でAβ産生が阻害されるはずである。
【0222】
上記方法を使用して、35S-メチオニンの存在下でβ-APPトランスフェクトES(PS-/-)細胞(細胞はβ-APPを産生するがPSを発現しない)と相互作用したPS-1トランスフェクトβ-APP-/-初代繊維芽細胞(細胞はPS-1を発現するがβ-APPを産生しない)を用いて、β-APP:PS-1介在細胞間相互作用を行った。トランスフェクトした細胞の共培養の24時間後、プロテアーゼインヒビターの存在下でサンプルを回収した。細胞を超音波処理し、全細胞抽出物100μgをAβに対する抗体(6E10)で免疫沈降させ、免疫沈降したサンプルをBicene-Trisゲルに流した。乾燥ゲルのオートラジオグラフィーによりAβバンドを視覚化した。同じ実験を500ng/mlのPTxの存在下で行った。培養細胞の処理は、下記のように12時間行った。PTx処理の対照として、培養細胞をATPとNADのみを含有するPTxバッファーと共にインキュベートした。これらの条件下で、Goの活性化とAβのレベルは影響を受けないはずである。
【0223】
図15はこれらの試験の結果を示す。レーン1は、PS-1発現繊維芽細胞(β-APP-/-)と共培養したβ-APP発現ES(PS-/-)細胞の結果を示す。レーン2は、PTx及びPTxバッファー(NAD+ATP)の存在下におけるレーン1で使用した成分の結果を示す。レーン3は、PTxバッファーのみ(NAD+ATP)でPTxを含まない条件におけるレーン1で使用した成分の結果を示す。レーン4は、テイルレスPS-1発現繊維芽細胞(β-APP-/-)と共培養したテイルレスβ-APP発現ES(PS-/-)細胞の結果を示す。レーン5は、PTxの存在下におけるレーン4で使用した成分の結果を示す。レーン6は、テイルレスPS-1発現繊維芽細胞(β-APP-/-)と共培養した野生型β-APP発現ES(PS-/-)細胞の結果を示す。
【0224】
結果は、PTx毒素がβ-APPとPS-1の細胞間相互作用からのAβの産生を阻害することを示す(上記レーン1と2)。レーン3は、PTxバッファーのみの存在下、PTxの非存在下で、Aβ産生が阻害されないことを示す。レーン4と6は、すでにGoに対するPS-1の結合ドメインであることが示されたPS-1の細胞質カルボキシル末端ドメインが存在しないとき、Aβ産生が排除されることを示す。
【0225】
ここに示したデータは、β-APPがPS-1のリガンドであり、結合するとそのGPCR活性を活性化することを示す。データはまた、PS-1のGPCR機能が、PS-1との細胞間相互作用後のβ-APPからのAβ産生に関与することを示す。これらの結果はさらに、PS-1のGPCR活性をモジュレートすることはAβの産生もモジュレートすることを示す。従ってPS-1のGPCR活性をモジュレートする物質はAβの産生をモジュレートする。
【0226】
共培養実験のために、ES(PS-/-)細胞とβ-APP(-/-)細胞とをフラスコ25cm2当たり1x107細胞でプレーティングし、適切なcDNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの5時間後、β-APPでトランスフェクトしたES(PS-1-/PS-2-/-)細胞を穏やかなトリプシン処理により剥がし、熱不活性化し透析したFCS(10%v/v)を含有するmet無含培養培地で2回洗浄し、この培地中に0.33x107細胞/mlで再懸濁した。同様に、β-APPノックアウトマウスからの初代繊維芽細胞をPS-1又はPS-2で共トランスフェクトし、1x107細胞でプレーティングした。トランスフェクトした細胞をmet無含培地で2回洗浄し、3mlのmet無含培地に置いた。
【0227】
β-APPトランスフェクトES(PS-1-/PS-2-/-)細胞(1x107細胞/3ml met無含培地)を、PS-1トランスフェクトβ-APPノックアウト細胞に加えた。この細胞密度は、実質的にすべての細胞が互いに接触していることを保証した。35S-met(66μCi/ml;1175Ci/mmol、NEN)を加え、培養物を24時間インキュベートした。PTx処理を用いる実験では、この段階で適切な反応条件下で500ng/ml PTxを培養物に加え、24時間インキュベートした。次に培地を取り出し、細胞を剥がして回収した。プロテアーゼインヒビターミックスを培地に加えた後、ドライアイス上で凍結した。プロテアーゼインヒビター(1mM 4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)/1μg/mlアンチパイン/0.1μg/mlペプスタチンA/0.1μg/mlロイペプチン)を含有する100μlの抽出バッファー(50mM Tris、pH8.0/150mM NaCl/0.5% Nonidet-P40)を細胞ペレットに加え、サンプルをドライアイス上で急速凍結した。
【0228】
PTxプロトマー(Biomol Research Laboratories)を10mM DTTと共に37℃で10分インキュベートして、これを酵素活性型に変換した。ES細胞をPS-1又はPS-2及びGタンパク質のcDNAでトランスフェクトした5時間後、1mM NAD、1mM ATP、2mM MgCl2、及び1mM EDTAの存在下、培養培地中で500ng/mlの活性化PTxを細胞に加えた。5% CO2の存在下で細胞を37℃で18時間インキュベートした。
【0229】
それぞれ氷上で20秒間のバーストを3回行うことで超音波処理した細胞ペレットを使用して、全細胞抽出物を調製した。タンパク質濃度はLowryの方法に従って測定した。
【0230】
免疫沈降は、2μgのAβ特異的モノクローナル抗体6E10(Senetek)(これはAβの残基1〜17(Senetek)に対して生じた)を用いた免疫沈降(回転子中、4℃、一晩)に100μgの細胞抽出物を供することで行った。次にプロテインGセファロース(Pharmacia)の40μlのスラリーを加え、室温で1時間回転混合させた。抗原−抗体−プロテインGセファロース複合体を、以下のそれぞれで1回洗浄した:バッファー1(10mM Tris−HCl, pH 7.4, 1 mM EDTA, pH 8.0, 0.65M NaCL, 1% NP-40)、バッファー2(10mM Tris−HCl, pH 7.4, 1 mM EDTA, pH 8.0, 0.75% NP-40)、及びバッファー3(10mM Tris−HCl, pH 7.4, 1 mM EDTA, pH 8.0, 0.1% NP-40)。洗浄した複合体をbicene-トリスサンプルバッファー中で10分間沸騰し、bicene-トリスゲルでSDS-PAGEを行った。
【0231】
8M尿素を含むbicene-トリスゲル(15%T/5%C)を型を取り、泳動した。次にゲルを0.4Mホウ酸ナトリウム/リン酸バッファー中の5%グルタルアルデヒドで30分間固定化し、メタノール−酢酸中の0.1%Coomassie Blue G250で1時間染色した。脱染後、オートラジオグラフィーのためにゲルを調製した。
【0232】
脱染したゲルをエタノール(30%)とグリセロール(5%)で30分間処理し、Amplify(Amersham)を30分間染み込ませ、真空下80℃で乾燥し、X-Omatフィルムに-70℃で4〜5日間曝露した。
【0233】
Aβの最終的な産生のために要求される特異的なβ−APP:PS媒介の細胞・細胞相互作用はまた、Gタンパク質を活性化する。一方の細胞表面のβ−APPが他方の細胞表面のPSと特異的に結合することによって媒介される細胞:細胞相互作用は、β−APPからのAβの産生における要求される最初の工程である。ヒトβ−APPオンリー発現細胞と、ヒトPSオンリー発現細胞との間における、それらの会合する内因性タンパク質と一緒での細胞・細胞相互作用が、内因性マウスGタンパク質の活性化を生じさせたかどうかを明らかにするために、35S−GTPγSのGαとの結合(Gタンパク質活性化を求めるための標準的方法)をアッセイした。これらの研究のすべてにおいて、内因性マウスGαの活性化が調べられた。
【0234】
2つの細胞タイプを作製した;ほんの少量にすぎない内因性β−APPを発現し、PSを全く発現しなかったES由来のマウス細胞(PS−1−/−;PS−2−/−)を、ヒトβ−APPに対するcDNAにより一過性にトランスフェクションして、マウスβ−APPを上回る過剰なヒトβ−APPを発現し、PS−1またはPS−2を全く発現しない細胞(β−APPオンリー細胞)を作製した。ほんの少量にすぎない内因性のPS−1およびPS−2を発現する、β−APPヌルマウスに由来する胚性(E18)マウス初代線維芽細胞を、ヒトPS−1に対するcDNAによりトランスフェクションして、マウスPS−1を上回る過剰なヒトPS−1を発現し、β−APPを全く発現しない細胞(PS−1オンリー細胞)を作製した。β−APPオンリー発現細胞と、PS−1オンリー発現細胞とを、それらの細胞間相互作用を可能にした高い密度で、または、より小さい程度にすぎない細胞:細胞相互作用を可能にしたより低い密度でのいずれかで24時間共培養した(図14C(レーン4)と比較される図14C(レーン2)における光学顕微鏡写真を参照のこと)。
【0235】
百日咳トキシン(PTx)(Gの活性化がPTxの存在下で阻害される)の存在下および非存在下での高密度共培養物および低密度共培養物の、界面活性剤緩衝液による抽出物を調製し、それぞれが100μgの総タンパク質を含有するアリコートを35S−GTPγSと反応させた。それぞれの35S−GTPγS処理抽出物の免疫沈殿を、Gαに対するポリクローナル抗体K−20を用いて行った。この抗体は、活性化された35S−GTPγS標識マウスGαを免疫沈殿させた。
【0236】
β−APPオンリー細胞がPS−1オンリー細胞と高密度で共培養された場合(図14C、レーン1)、トランスフェクションされていないES(PS−/−)細胞抽出物および線維芽細胞(β−APP−/−)細胞抽出物の等量部を混合することによって調製される)コントロール抽出物から得られる基礎値を上回る35S−GTPγS取り込みにおける200%を超える増大(図14A、レーン1)が、低密度サンプル(図14C、レーン2)についての33%の増大(図14A、レーン2)と比較して認められた。PTxの存在下では、高密度培養物(図14C、レーン4)は35S−GTPγS取り込みにおける阻害を示し、基礎値よりも38%低かった(図14A、レーン3)。これらの結果は、β−APPオンリー細胞と、PS−1オンリー細胞との間における特異的な細胞:細胞相互作用はまた、PTx感受性Gタンパク質を、PS−1の細胞質ドメインを介して直接的に、または、PS会合タンパク質を介して間接的に、そのどちらでも活性化することを示している。
【0237】
β−APPオンリー細胞およびPS−1オンリー細胞を高密度および低密度で共培養し、PTxの存在下または非存在下のどちらであっても35S−metの存在下で代謝的に標識した。24時間の共培養の後、細胞を集め、界面活性剤による抽出物を調製した。それぞれが100μgのタンパク質を含有するサンプルを、ヒトAβに対するマウスMAb(6E10)を用いて免疫沈殿し、その後、可溶化された免疫沈殿物をBicene−Trisゲルで電気泳動した。その後、Aβのバンドを35S−オートラジオグラフィーによって可視化した。図14は下記のことを明らかにする:1)等量の総タンパク質に存在するAβのレベルが細胞密度の低下(図14C、レーン1〜3)とともに徐々に低下し(図14B、レーン1〜3)、これは、Aβをβ−APPから産生させるためのβ−APP:PS−1媒介の細胞間相互作用のための要件と一致していたこと、;2)図14Aに示されるように、PTx感受性Gタンパク質の活性化のための同じ細胞間相互作用のための要件;および3)高密度培養物におけるAβの産生(図14Bのレーン1および図14Cのレーン1)がPTxの存在下で完全に阻害されたこと(図14Bのレーン4および図14Cのレーン4)。Gタンパク質活性化およびAβ産生の両方がPTxによって阻害されることが明らかにされたことは、Gタンパク質の活性化がAβ形成に先立って生じることを強く示唆し、このことは、そのような活性化が、β−APP:PS−1の細胞間結合からAβ産生への経路の途中にあるという考えと一致している。
【0238】
PS−1の水溶性の全80アミノ酸のNH末端ドメイン(ペプチド1−80)の融合構築物は、共培養培地に加えられたとき、β−APP:PS−1媒介の細胞・細胞相互作用の特異的な競合的阻害剤として機能し、Aβ産生を阻害した。Gタンパク質活性化およびAβ産生の両方のための、β−APPと、PSとの間における特異的な細胞・細胞相互作用のための要件のさらなる証拠として、実験を、この細胞・細胞相互作用から生じたGαの活性化が共培養物へのペプチド1−80の添加によって阻害され得たかどうかを明らかにするために行った。
【0239】
β−APPオンリー細胞と、PS−1オンリー細胞との共培養を、ペプチド1−80(0〜3μM)の存在下および非存在下で行った。35S−GTPγSアッセイをGタンパク質活性化の尺度として抽出物に対して行った。これらの共培養物抽出物において産生されるAβをELISAによって求めた。図15は、両方、すなわち、Aβの産生(図15A)およびGαの活性化(図15B)が用量依存的様式でペプチド1−80によって阻害され得たことを示し、このことは、Gタンパク質活性化が、Aβの最終的な産生を開始させる同じβ−APP:PS−1媒介の細胞・細胞相互作用から生じるという見解と一致している。
【0240】
加えて、水溶性のβ−APPエクトドメイン自身(β−APPs)がPS−1オンリー細胞の培養物に加えられたとき、これもまた、Gタンパク質を用量依存的様式で活性化することができた。β−APPsが、ヒトβ−APPを過剰発現するバキュロウイルス培養物の馴化培地から部分精製された。最終産物(図16b、レーン1)は、β−APPに加えて、β−APPエクトドメインとともに同時精製された、81kDa、55kDaおよび31kDaにおける3つの主要な混在するバンドを有した。この部分精製β−APPs調製物をPS−1オンリーのAPP−/−線維芽細胞に増大する量で加えた。15分後、それぞれのウエルからの細胞を抽出緩衝液において集め、界面活性剤による抽出物(それぞれが100μgのタンパク質を含有する)を35S−GTPγSにより処理した。Gαの活性化を、活性化された35S−GTPγS−GαをGα特異的抗体により免疫沈殿した後でアッセイした。35S−GTPγSの取り込みにおける増大(図16A、曲線1)が、部分精製β−APPsの増大する濃度とともにPS−1オンリー細胞において認められ、500%を超える最大の増大が120pMのβ−APPsの添加により認められた。トランスフェクションされていないAPP−/−線維芽細胞の培養物は、恐らくは、これらの細胞における内因性PS−1の存在のために、あまり大きくないGタンパク質活性化をもたらした(図16A、曲線3)。さらに、部分精製β−APPsが、トランスフェクションされていないES(PS−/−)細胞に加えられたとき、Gタンパク質活性化における増大が35S−GTPγSアッセイによって全く認められなかった(図16A、曲線5)。このことはさらに、PSを、Gαの活性化におけるβ−APPリガンドに対する受容体として関係づける。
【0241】
Gタンパク質活性に関わるリガンドであったのが実際に、部分精製β−APPs調製物におけるβ−APPsであり、混在物の1つではなかったことを確認するために、β−APPsを、β−APPに対するMAb348による処理によって調製物から除いた(図16C、レーン2を参照のこと)。非枯渇化調節物について使用された同じ濃度でのこのβ−APPs枯渇化溶液をPS−1オンリー細胞に加え、その後、細胞を、上記で記載されるのと同じように処理した。図16A(曲線4)は、β−APPsの抗体除去が、β−APPs調製物を用いて認められれた35S−GTPγS取り込みのほぼ完全な喪失をもたらしたことを示す。対照的に、無関係のIgGにより同様に処理されたβ−APPs調製物は、PS−1オンリー細胞に加えられたとき、非処理サンプルを用いて得られる結果と類似した結果を与えた(図16A、曲線2)。この結果は、Gタンパク質活性化の喪失(図16A、曲線4)が、免疫枯渇化手順の期間中における非特異的なタンパク質喪失のためではなく、サンプルからのβ−APPsの特異的な免疫除去のためであったという提案と一致している。これらの結果は、無傷の膜結合しているβ−APPに加えて、膜から分離された水溶性β−APPs自身が、PS−1発現細胞においてGタンパク質活性化を誘導することができ、しかし、PSの非存在下では誘導することができないことを証明している。
【0242】
以前の報告では、Gタンパク質Gもまたβ−APPに結合することが示されている。β−APPsに関してちょうど記載された実験では、β−APPの細胞質ドメインまたは膜間ドメインが存在しなかった;実験では、PSによりトランスフェクションされたβ−APP−/−細胞が利用され、これに、β−APPの可溶性エクトドメインのみが加えられた。従って、本明細書中に記載される研究全体において観測されるG活性化は、具体的には、PSの細胞質ドメインにおけるG活性化のみ、または、PS会合タンパク質のG活性化に起因する。
【0243】
これまでに記載された結果は、ヒトPSによりトランスフェクションされた培養細胞のみを使用して得られたので、内因性のラットPSタンパク質の、ラット海馬膜に存在するラットGαとの結合を調べた。これらの膜を可溶化し、35S−GTPγSアッセイを、部分精製β−APPsの増大する濃度(0〜120pM)の添加前および添加後の両方で、可溶化膜に対して行った。図17Aは、β−APPsの最も低い濃度(80pM)において、35S−GTPγSの取り込みが非処理サンプルの場合よりも100%大きく、400pMのβ−APPsにおいては、Gタンパク質Gの活性化が600%を超えて増大したことを示す。これらの増大(図17B)は、可溶化されたラット膜をPS−1およびPS−2の両方に対するポリクローナルAbの混合物により最初に処理して、これら2つのマウスタンパク質をサンプルから枯渇させたならば、生じなかった。このことは、β−APPsによるGタンパク質活性化におけるPS−1またはその会合タンパク質の関与と一致している。
【0244】
実験を、ヒトGタンパク質Gが、ヒトGαoAタンパク質またはヒトGαoBタンパク質のどちらかに対するcDNAと一緒にヒトPS−1に対するcDNAにより様々にトランスフェクションされているES由来(PS−/−)マウス細胞の内部で、無傷のヒトPS−1に結合するかどうかを明らかにするために行った。界面活性剤による抽出物をこれらの細胞から調製し、調べた。様々にトランスフェクションされているES細胞からの100μgのタンパク質をそれぞれが含有する抽出物を最初に、(PS−1の7−TMモデルにおいて形質膜の外側から突き出る)PS−1の大きな親水性ループに対して特異的なMAbにより免疫沈殿した。その後、免疫沈殿物を可溶化し、SDS−PAGEに供し、その後、Gαに対するAb K−20(これは両方のイソ型(GαoAおよびGαoB)を認識する)によるウエスタンブロットハイブリダイゼーションを行った。PS−1/αoAの共トランスフェクション細胞のみがGαについてのロバストなシグナルを約40kDaにおいて与えた(図18A、レーン3をレーン2およびレーン3と比較した場合)。このことは、GαoBではなく、GαoAがPS−1に特異的に結合することを示唆する(結合が、使用された界面活性剤溶液に保持されるからである)。ヒトPS−1およびヒトGαのインビトロでの選択的結合を反映するこれらの結果は、ヒトPS−1に対するヒトGαのインシリコ結合の発表された研究と一致しており、しかし、これらの結果はさらに、これら2つのGαイソ型を区別しており、このことは、これまで示されなかった結果である。
【0245】
図5Aにおいて観測されるGoA結合が、同時に免疫沈殿されたPS会合タンパク質に対してではなく、直接にPD−1に対してであったことを証明するために、(7−TMのPSモデルにおける)PS−1の細胞質ループ(1、2、3)およびカルボキシルテールに対応する合成ペプチドフラグメントによるGの自律的活性化を調べた(図18Bおよび図18Cならびに表1を参照のこと)。これらのペプチドを、ラット海馬膜調製物におけるGに対する35S−GTPγS結合を刺激するそれらの能力について個々に試験した。
【0246】
図18Cにおいて、細胞質ループ1ペプチドおよび細胞質ループ2ペプチド(図18B)は35S−GTPγS結合のバックグラウンド刺激のみを誘導したという証拠が示される。しかしながら、細胞質ループ3ペプチドは、COOHテールの最初の20アミノ酸に対応するペプチドがもたらしたように、Gに対する35S−GTPγS結合のロバストな刺激をもたらした。しかしながら、残基21〜39に対応する第2のCOOH末端ペプチドはGを活性化することができなかった。COOHテールの残基1〜20に対応するペプチドを用いた結果は、PS−1のCOOH末端ドメインによるGタンパク質活性化と一致している。しかしながら、その研究は、7−TM PS−1の細胞質ループ3(ほとんどのGPCRについてGタンパク質結合のために重要であることが知られている領域)によるG活性化を見逃した。これらの結果により、GoAが、PS会合タンパク質に対してではなく、PS−1に直接に結合することが確認される。
【0247】
β−APP:PSの細胞・細胞相互作用の後でのGタンパク質活性化に関して、Gタンパク質活性化はいくつかの方法のいずれかでAβ産生に関与しているかもしれない。Gタンパク質活性化はβ−APP:PS複合体のリン酸化または形質膜からの内在化のシグナルを送るかもしれず、あるいは、Aβの産生に至る経路に直接に関与し得る他の下流側の事象(例えば、Ca2+放出など)を活性化するかもしれない。
【0248】
データは、PSとのβ−APPの特異的な細胞:細胞相互作用から生じるGタンパク質活性化がβ−APPからのAβのその後の産生の経路の途上にあることを明らかにする。
【0249】
Gα以外のいずれかの他のGタンパク質がプレセニリン(PS)−1の細胞質ドメインと共役し得るかどうかを明らかにするために、GαCOOHミニ遺伝子ベクターを使用した。Gタンパク質Gαの様々なサブユニットに由来するカルボキシル末端ドメインは受容体結合のための重要な部位であり、COOH末端に対応するペプチドを受容体−Gタンパク質相互作用の競合的阻害剤として使用することができる。Gαの11個〜14個のC末端アミノ酸をコードするミニ遺伝子ベクターは、シグナル伝達経路の受容体媒介活性化を阻害/阻止する能力を有する。pcDNA3にクローン化されたミニ遺伝子を、Caden Biosciencesから得た。表2は、使用されたそれぞれのミニ遺伝子についての具体的な配列を示す。
【表2】
【0250】
ほんの少量にすぎない内因性β−APPを発現し、PSを全く発現しなかったES由来マウス細胞(PS−1−/−;PS−2−/−)を、ヒトβ−APPに対するcDNAにより一過性にトランスフェクションして、マウスβ−APPを上回る過剰なヒトβ−APPを発現し、PS−1またはPS−2を全く発現しない細胞(β−APPオンリー細胞)を作製した。ほんの少量にすぎない内因性のPS−1およびPS−2を発現する、β−APPヌルマウスに由来する胚性(E18)マウス初代線維芽細胞を、ヒトPS−1に対するcDNAによりトランスフェクションして、マウスPS−1を上回る過剰なヒトPS−1を発現し、β−APPを全く発現しない細胞(PS−1オンリー細胞)を作製した。ミニ遺伝子をPSオンリーのAPP−/−線維芽細胞においてPS−1とともに同時トランスフェクションして、研究中の内因性マウスGαをそのような細胞において阻害した。PS−/−のES細胞を、ヒトβ−APPのcDNAにより別個にトランスフェクションし(β−APPオンリー細胞)、これら2つのタイプの細胞を24時間共培養した。細胞を集め、共培養物の界面活性剤緩衝液による抽出液を調製した。これらの培養物における[35S]GTPγS取り込みの測定をそれぞれのミニ遺伝子の存在下および非存在下で行った:それぞれが100μgの総タンパク質を含有するアリコートを35S−GTPγSと反応させ、それぞれの35S−GTPγS処理抽出物の免疫沈殿を、研究中の特定のGαに対する抗体を用いて行った。特定のGαがPS−1に結合する特異性が、特異的なミニ遺伝子阻害剤の存在下におけるGTPγS取り込みの阻止によって明らかにされた。
【0251】
図21は、GαoA、Gα、Gα、Gα、Gαi1/2およびGαの、それらの特異的なミニ遺伝子阻害剤の存在下における、β−APP:PS−1の細胞・細胞相互作用の後でのGタンパク質活性化の存在または非存在を示す。β−APP:PS−1の細胞・細胞相互作用は、GαoA、GαおよびGαを特異的に活性化し、その活性化がそれぞれのGタンパク質の特異的なミニ遺伝子阻害剤によって阻害された。Gαo3ミニ遺伝子の存在は、Gα抗体によって免疫沈殿される活性化Gαタンパク質を阻害しなかった(この抗体はGoAイソ型およびGoBイソ型の両方と交差反応する)。このことは、活性化種がこのサンプルにおけるGoAタンパク質(これはGαo3ミニ遺伝子によって阻害されない)であることを示唆する。Gタンパク質活性化が、β−APP:PS−1の細胞・細胞相互作用の結果として、Gi1/2またはGzについては全く認められなかった。このことは、これらのGタンパク質はPS−1と共役しないことを示唆する。
【0252】
これらのデータは、β−APPと、PS−1との間の細胞・細胞相互作用はまた、Gタンパク質のGおよびGを活性化することを明らかにする。上記で記載される共培養物抽出物において産生されるAβをELISAによって求めた。図22における結果は、PS−1:βAPPの細胞間相互作用について、GαoAおよびGαの活性化がAβの産生と一致し、これに対して、Gαの活性化は一致しないことを示す。これらのタンパク質のGタンパク質活性化がそれぞれのGタンパク質に対する特異的なミニ遺伝子阻害剤の存在下で阻害されるとき、Aβ産生もまた、GαoAおよびGαの場合には阻害され、しかし、Gαの場合には阻害されない。これらの結果は、β−APPからのAβの産生がGタンパク質のGおよびGの下流側のシグナル伝達経路を必要とし、それらの両方がPLC(異なる機構)を介してシグナル伝達することを明らかにする。
【0253】
7−TM PSモデルにおけるヒトPS−1の細胞質ループ(1、2、3)およびCOOHテールに対応するオリゴペプチドによるGタンパク質(Gα、GαおよびGα)の自律的活性化を調べた。これらのペプチドを、ラット海馬膜調製物におけるそれぞれのGタンパク質に対する35S−GTPγS結合を刺激するそれらの能力について個々に試験した。
【0254】
図23Aは、PS−1の細胞質ループペプチドによるGαの自律的活性化を示す。細胞質ループ1ペプチドおよび細胞質ループ2ペプチドは35S−GTPγS結合のバックグラウンド刺激のみを誘導したという証拠が示される。しかしながら、細胞質ループ3ペプチドは、COOHテールの最初の20アミノ酸に対応するペプチドがもたらしたように、Gに対する35S−GTPγS結合のロバストな刺激をもたらした。しかしながら、残基21〜39に対応する第2のCOOH末端ペプチドは、検出可能なG活性化を有しなかった。
【0255】
図23BはGαの自律的活性化を示す。細胞質ループ1ペプチドおよび細胞質ループ2ペプチドは35S−GTPγS結合のバックグラウンド刺激のみを誘導した。細胞質ループ3ペプチドは、Gαの場合のように、COOHテールの最後の19アミノ酸に対応するペプチドがもたらしたように、Gに対する35S−GTPγS結合のロバストな刺激をもたらした。Gを活性化することが以前に示される、残基1〜20に対応するCOOH末端ペプチドは、Gの検出可能な活性化をもたらさなかった。
【0256】
図23CはGαの自律的活性化を示す。(ループ1の最初の16アミノ酸ではなく)残基17〜32を含む細胞質ループ1ペプチド、ならびに、COOHテールの最後の19アミノ酸に対応するペプチドは、35S−GTPγS結合の刺激を誘導した。細胞質ループ2ペプチドおよび細胞質ループ3ペプチド、ならびに、GαについてのCOOH末端ペプチド1〜20は、35S−GTPγS結合のバックグラウンド刺激のみを誘導した。
【0257】
これらの結果は、種々のGタンパク質が、PS−1表面の異なる細胞質ドメインに、または、PS−1表面のドメインの組合せに結合することを示している。
【0258】
一次抗体:Gαに対するポリクロナールAbのK−2、Gαq、Gαs、Gαi1/2およびGαzに対するポリクロナールAbのsc−387を、Santa Cruz Biotechnologyから購入した。Gα Abは、GoAおよびGoBの両方を認識する。Aβの残基1〜17に対するMAb 6E10(Senetek)は、全長型β−APPならびにAβの両方を認識する。
【0259】
細胞培養:マウスES(PS−1−/−/PS−2−/−)を以前に記載されるように培養した。
【0260】
全細胞抽出物の調製:抽出物を、可溶化緩衝液1(50mM HEPES/NaOH(pH7.4)、1mM EDTA、1mM DTT、1%Triton−X100、60mMオクチルグリコシド、1×プロテアーゼ阻害剤ミックス)における超音波処理によって調製し、タンパク質はLowryアッセイを使用した。
【0261】
35S−GTPγSアッセイ:抽出物(100μgの総タンパク質)を等体積のGTPγS緩衝液B(50mM HEPES/NaOH(pH7.4)、40μM GDP、50mM MgCl、100mM NaCl)と混合し、50nMの35S−GTPγS(1250Ci/mmol、Perkin Elmer、Waltham、MA)とRTで60分間反応した。反応を10×停止緩衝液(100mM Tris−HCl(pH8)、25mM MgCl、100mM NaCl、20mM GTP)により停止させ、その後、特定のGαに対するAbを用いた35S−GTPγS−Gα複合体の免疫沈殿を行った。Ab−タンパク質複合体をRTで90分間プロテインA/Gアガロースに吸収させ、洗浄した。アガロースビーズをシンチレーション液(CytoScint,ICN)(5ml)に懸濁し、Beckman Coulter LS6000SCシンチレーションカウンターで3分間計数した。
【0262】
β−APPオンリー細胞と、PS−1オンリー細胞との共培養を、上記で記載されるように行った。
【0263】
Aβ1−40の産生についてのELISAを、サンドイッチELISAキット(Biosource)を使用して行った。
【0264】
ラット海馬膜(Applied Cell Science、Rockville、MD)をCHAPs緩衝液において可溶化した。
【0265】
ペプチド(200μM)を、35S反応混合物において可溶化ラット海馬膜(50μg)と、前処理を行うことなくインキュベーションした。35S−GTPγS由来のγ−S−GTPの蓄積を、特異的な抗G Abとの免疫沈殿の後で求めた。
【表3】
【0266】
上記で多くの実施形態と特徴を説明したが、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の開示の教示又は範囲を逸脱することなく、記載の実施形態や特徴の修飾や変更が可能であることは当業者には理解されるであろう。本明細書に添付された付属書類は本発明をさらに例示するためであって、限定するためではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
図25
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]