(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965317
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】反応混合液および関連製品の調製方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20060101AFI20160721BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
C12Q1/68 A
!C12N15/00 A
【請求項の数】34
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-531466(P2012-531466)
(86)(22)【出願日】2010年10月4日
(65)【公表番号】特表2013-506413(P2013-506413A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】FI2010050772
(87)【国際公開番号】WO2011039425
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年8月13日
(31)【優先権主張番号】20096013
(32)【優先日】2009年10月2日
(33)【優先権主張国】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514036911
【氏名又は名称】サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック・バルティクス・ユーエイビー
【氏名又は名称原語表記】THERMO FISHER SCIENTIFIC BALTICS UAB
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコ・クルケラ
(72)【発明者】
【氏名】カーチャ・エクリン
(72)【発明者】
【氏名】サンナ・ウーシヴィルタ
【審査官】
松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−243497(JP,A)
【文献】
特開2010−252790(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/137291(WO,A1)
【文献】
特開平11−075897(JP,A)
【文献】
特表2005−512085(JP,A)
【文献】
特表2009−526542(JP,A)
【文献】
特表2010−503413(JP,A)
【文献】
特表2012−509078(JP,A)
【文献】
特表2012−524242(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/088506(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0053950(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0141709(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
G01N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)測定のための反応混合液の調製方法であって、
−該測定を行うために必要とされる、少なくとも一つの物質を含む第一の試薬溶液の提供、
−該測定を行うために必要とされる、少なくとも一つの他の物質を含む第二の試薬溶液の提供、
−PCR工程に供される混合溶液を提供するための、第一の試薬溶液と第二の試薬溶液の混合、
を含み、
−第一の試薬溶液は、第一の試薬溶液に第一の色を与える第一の着色剤を含み、
−第二の試薬溶液は、第二の試薬溶液に第一の色とは異なる第二の色を与える第二の着色剤を含み、
−該混合により、該第一および第二の着色剤に起因して、第一および第二の色とは異なる第三の色を呈する混合溶液が得られ、かつ第三の色が検出される、
ことを特徴とする反応混合液の調製方法。
【請求項2】
該試薬溶液の一つが、該PCR測定において増幅される生物学的サンプルを含むサンプル溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの試薬溶液が、ポリメラーゼ、プライマー、イオン、dNTPまたは、蛍光qPCR色素もしくはプローブ、のうち一つもしくはそれ以上を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの試薬溶液が、PCRマスターミックス、qPCRマスターミックスまたはPCRもしくはqPCRプレミックスであることを特徴とする、請求項1−3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの試薬溶液が、サンプル溶出バッファー溶液であることを特徴とする、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの試薬溶液が、サンプル希釈バッファー溶液であることを特徴とする、請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの試薬溶液が、第一および第二の試薬溶液の混合の前の、サンプル溶解、cDNA合成反応、逆転写反応、サンプル消化、バイサルファイト反応、サンプル溶出、またはサンプル希釈から選択される、調製工程の段階において使用されることを特徴とする、請求項1−6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該第一および/または第二の着色剤として色素を使用することを特徴とする、請求項1−7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該第一および/または第二の着色剤が、キノリンイエロー、キシレンシアノール、ブリリアントブルー、パテントブルー、インジゴカルミン、アシッドレッド1、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ニュートラルレッド、ブロモクレゾールグリーン、アシッドバイオレット5、ブロモフェノールブルー、およびオレンジGからなる群から選択されること特徴とする、請求項1−8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
溶液に第一および第二の色とは異なる色を与える追加的な着色剤を含む、一つ以上の追加的な試薬溶液を提供し、それによって、前記追加的な試薬溶液が、第一もしくは第二の試薬溶液、または混合溶液との混合で、該追加的な着色剤に起因して、さらなる識別可能な色を呈する追加的な混合された溶液を形成することができることを特徴とする、請求項1−9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
−該測定の実施のために必要とされる少なくとも一つのさらなる物質を含む第三の試薬溶液を提供し、前記第三の試薬溶液が、第一、第二、および第三の色とは異なる第四の色を溶液に提供し、かつ、
−該第一、第二および第三の着色剤に起因して、第一、第二、第三および第四の色とは異なる第五の色を呈する混合された試薬溶液を提供するために、第一および第二の試薬溶液と第三の試薬溶液を混合すること、
を特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
第一の試薬溶液がサンプル溶液であり、第二の試薬溶液がマスターミックスであり、かつ、第三の試薬溶液がプライマー溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
−溶液に第一、第二、および第三の色とは異なる第四の色を与える第三の着色剤を含む、第三の試薬溶液を提供し、かつ、
−それぞれ第三および第五の色を呈し、お互いに異なる色であり、第一、第二および第四の色とも異なる、第一および第二の混合溶液を得るために、該第二および第三の試薬溶液と、第一の試薬溶液を個別に混合する、
ことを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
第一の試薬溶液が(q)PCRマスターミックスであり、第二の試薬溶液が一つのプライマーセットを含み、第三の試薬溶液が第一のプライマーセットとは異なる第二のプライマーセットを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
定量的PCRのための反応混合液が調製され、前記反応混合液が蛍光剤を含むことを特徴とする、請求項1−14のいずれかに記載の方法であって、該着色剤のいずれの吸収ピークも、該蛍光剤の放射波長または励起波長と重複しない、または、該波長における反応混合液の総吸光度が、少なくとも0.05未満、0.03未満、または0.1未満(1mm光路長)である、方法。
【請求項16】
試薬溶液の吸光度が、最大吸収波長において、1mm光路長を用いて、0.001−0.5、0.01−0.5、または0.03−0.15であることを特徴とする、請求項1−15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
試薬溶液が適切に混合されたか否かを、該色の存在の観察に基づいて確認することを特徴とする、請求項1−16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
スペクトル分解能を有する光学的手段の使用によって、該確認を自動的に実行することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
目視検査によって、該確認を実行することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
第一の試薬溶液がポリメラーゼ溶液、または、ポリメラーゼバッファー溶液であることを特徴とする、請求項1−19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第一の試薬溶液が、ポリメラーゼ溶液またはポリメラーゼバッファーから選択され、第二の試薬溶液が、プライマー、プローブ、またはサンプルから選択されることを特徴とする、請求項1−20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
該混合が、マイクロタイターストリップまたはプレートの一つ以上のウェルへ試薬溶液をピペッティングすることによって実行されることを特徴とする、請求項1−21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)測定のための溶液セットであって、
−該PCR測定を行うために必要とされる、少なくとも一つの物質を含む第一の試薬溶液、
−該PCR測定を行うために必要とされる、少なくとも一つの他の物質を含む第二の試薬溶液、
を含み、
−第一の試薬溶液が、第一の色を呈する第一の着色剤を備え、
−第二の試薬溶液が、第一の色とは異なる第二の色を呈する第二の着色剤を備え、
−第一および第二の試薬溶液が、混合によって、該第一および第二の着色剤に起因して、第一および第二の色とは異なる第三の色を呈する、混合溶液を形成することができ、該第一および第二の色が、少なくとも30nm分離している、それらの吸収スペクトルにおける最大ピークを有し、かつ該第一の試薬溶液が、サンプル溶液、ポリメラーゼ溶液、溶出バッファー、希釈バッファー、マスターミックス、またはcDNA合成反応、逆転写反応、もしくはバイサルファイト処理のための溶液である、
ことを特徴とする溶液セット。
【請求項24】
該試薬溶液の少なくとも一つが、増幅されるテンプレートを受容するサンプル溶液であることを特徴とする、請求項23に記載の溶液セット。
【請求項25】
前記試薬溶液の少なくとも一つが、ポリメラーゼ、プライマー、イオン、もしくはdNTPまたは、蛍光qPCR色素もしくはプローブの一つ以上を含む、あるいはPCRマスターミックスまたはqPCRマスターミックスであることを特徴とする、請求項23または24に記載の溶液セット。
【請求項26】
前記試薬溶液の少なくとも一つが、溶出バッファーまたは希釈バッファーであることを特徴とする、請求項23−25のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項27】
該第一および/または第二の着色剤が、キノリンイエロー、キシレンシアノール、ブリリアントブルー、パテントブルー、インジゴカルミン、アシッドレッド1、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ニュートラルレッド、ブロモクレゾールグリーン、アシッドバイオレット5、ブロモフェノールブルー、およびオレンジGからなる群から選択されることを特徴とする、請求項23−26のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項28】
個々の試薬溶液における該着色剤の濃度が、所望のPCR工程の濃度へ希釈した際、最大吸収波長において、1mm光路長を用いて、0.001−0.5、0.01−0.5、または0.03−0.15の該溶液の吸光度に相当することを特徴とする、請求項23−27のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項29】
前記第一の試薬溶液および/または第二の試薬溶液が濃縮物であることを特徴とする、請求項23−28のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項30】
前記第一の試薬溶液および第二の試薬溶液が、qPCRに適した透明または半透明の混合溶液を形成することができるものであることを特徴とする、請求項23−29のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項31】
第一の試薬溶液が、ポリメラーゼ溶液またはポリメラーゼバッファーから選択され、第二の試薬溶液が、プライマー、プローブ、またはサンプルから選択されることを特徴とする、請求項23−30のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項32】
混合溶液が蛍光剤を含むことを特徴とする、請求項23−31のいずれかに記載の溶液セットであって、該着色剤のいずれの吸収ピークも、該蛍光剤の放射波長または励起波長と重複しない、溶液セット。
【請求項33】
混合溶液が蛍光剤を含み、かつ、該蛍光剤の放射波長または励起波長における混合溶液の総吸光度が、0.05未満、0.03未満、または0.1未満(1mm光路長)であることを特徴とする、請求項23−32のいずれかに記載の溶液セット。
【請求項34】
定量的PCRの反応混合液の調製のための、請求項1−22のいずれかに記載の方法、または、請求項23−33のいずれかに記載の溶液セット、の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(生)化学的試薬のピペッティングに関する。特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、とりわけ、定量的PCR(qPCR)増幅、のためのマイクロウェルへの試薬のピペッティング方法に関する。加えて、本発明はピペッティング補助のための新規な製品に関する。
【背景技術】
【0002】
技術背景
PCR反応のピペッティングの際に、全ての必要な成分、すなわち試薬類、を、反応チューブに一つずつ、または、好ましくは、少なくともそれらのうちいくつかをマスターミックスとして最初に混合し、この混合液を複数サンプルへ分注することによって、加えることができる。通常、個別に加えられなければならない成分の一つは、研究対象のサンプルである。サンプル、チューブまたはマイクロタイタープレートにおけるサンプルウェルの数は、一設定につき何百、または何千にすらなる。
【0003】
正確に試薬類を加えること、すなわち正しい順序や量、は、PCRだけでなく、他の多くの(生)化学反応においても、有効な結果を得るために極めて重要である。実験失敗は、結果的として時間的・資金的な損失を招く。経済的重要度が莫大となり得る。材料、プラスチック製品および個人の作業時間の浪費のためである。さらに、実験結果の獲得の遅れは、大きな影響を与えるものかもしれない。この、よく知られた問題には、様々な解決策がある。
【0004】
この問題への機械的な解決策がある。この技術分野で、サンプルチューブおよびプレートと共に使用される、様々な自動ピペッティングロボット、マルチチャンネルピペットおよびガイダンスシステム(例、Finnzymes Piko(R) Light plate、BioTx Well Aware
TM)が認められている。
【0005】
ここ数年、ピペッティングや電気泳動の追跡を支援するための、いくつかの可視色素を含有するPCRマスターミックスまたはバッファーも入手可能となっている。これらのミックスは、典型的には、電気泳動のゲルローディングを支援するために、溶液の密度を高めるための何らかの成分も含んでいる。
【0006】
US6942964は、ゲルローディングおよび追跡用の色素としても使用される、ピペッティング補助色素を使用している製品を開示する。この着色剤は、ポリメラーゼと組み合わせられ、使用者が、PCRミックスやマスターミックスへ、ポリメラーゼをピペッティングできたかどうか確認することを支援する。同様の製品は、BioLine Accuzyme Redである。
【0007】
USB社のRubyTaqは、二つの色素を含有しているポリメラーゼを特徴としており、これらはアガロースゲル電気泳動の間に分離する:マゼンタ(500塩基対[2%ゲル]から1500塩基対[0.8%ゲル]の間へ泳動)および黄色(10塩基対未満へ泳動)である。
【0008】
FermentasやPromegaはまた、酵素反応バッファーへ着色剤を添加している。FermentasのDreamTaq
TM Green反応バッファーは、緑色に見られるが、ゲル電気泳動の間に、青および黄色のバンドに分離する。PromegaのGoTaqおよびGoTaq Green Mastermixも、同様の挙動を示す。
【0009】
電気泳動の段階での支援を目的とはしてはいないが、ポリメラーゼへ添加された色素である入手可能な製品もある。例として、ABgene Red(R) Hotが挙げられる。
【0010】
NEBは、DNAポリメラーゼ反応バッファーへ添加されたアシッドレッド色素を特徴とする製品(Crimson Taq)を提供する。この製品はまた、密度増加剤として、6%デキストランを用いている。
【0011】
QIAGENのCoralLoad dyeは、非着色のマスターミックスへ添加するための、個別チューブに充填された濃縮物として、また、任意の既製の10xPCRバッファーとしても、入手可能である。この製品は、二種のゲル追跡色素(オレンジと赤)を含有する。
【0012】
KR 2002/0045167は、PCR成分の溶解を確認するための着色剤を含む、凍結乾燥されたPCRミックスを開示する。US 6153412は、凍結乾燥されたPCR試薬の存在を確認するため、および、PCR試薬と試験サンプルの完全な混合を確実にするために使用される、凍結乾燥された反応混合液を開示する。一方、US 5565339は、ホットスタート反応用ワックスへの色素の使用を開示しており、これは混合液中へは溶解しない。
【0013】
Absolute Blue QPCR Master Mixは、反応設定のピペッティングを容易にするために、不活性の青色色素(inert blue dye)を含有している。
【0014】
WO 2007/088506も、色素を添加したマスターミックスを開示する。
【0015】
Applied biosystemsは、qPCR製品に含まれるROXパッシブレファレンス色素(ROX passive reference dye)を有する。この色素の目的は、ある一つのサンプルにおける反応と異なる反応の間での、PCRに無関係な蛍光変動に対する標準化に用いることができる、一定の蛍光レベルを提供することである。この方法はまた、ピペッティングの正確性の偏差に対して少なくとも部分的に標準化するものとして提案される。
【0016】
上述した製品のうち、最後の三種以外は全て、伝統的なエンドポイントPCRにのみ使用されることが推奨されている。着色剤に加えて、これらは通常、ゲルのウェルの底へサンプル物質を入れるための密度増強剤を含む(例えば、US 6942964を参照)。密度増強剤がなければ、サンプルは周辺の溶液に分散してしまうであろう。
【0017】
エンド−ポイントPCRに使用される着色剤は、通常、定量的PCR(qPCR)に適さない。なぜなら、これらは通常、進行中の反応における、リアルタイムの光学的測定を妨げるからである。特に、これらの色素は、典型的に、qPCRにおける蛍光の検出波長と重複するスペクトルを有するか、または、それらの吸光度は非常に高い。これらの色素に通常要求されることは、PCR反応における非阻害効果や、反応pHにおける安定性を含む。
【0018】
色素がマスターミックスまたはポリメラーゼに提供される上述の溶液の、追加的な不利な点は、サンプル(すなわち、PCRで増幅される材料)のピペッティングの助けにならないことである。サンプルのピペッティングは、しかしながら、最も重要であり、最も難しい過程であることに変わりはない。
【0019】
入手可能な様々な機械的システムも、この問題を完全に解決するには至っていない。これらのシステムは高価であり、主に容量違いによるピペッティングエラーがいつも視覚的に見られるものではない、これは、失敗した結果が得られるまでエラーを検出できないということを意味する。
【0020】
それゆえ、強力なピペッティング補助剤が必要とされている。特に、サンプルのピペッティング段階においても適用できる、ピペッティング補助剤が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本発明の目的は、PCR測定の調製の間でのピペッティング補助のための新規溶液の提供であり、特に、ピペッティングの様々な段階におけるエラーの検出をより容易化するものである。
【0022】
この発明の目的は、独立項に定義される発明によって達成される。
【0023】
PCR測定のピペッティング段階において、PCRに供される最終混合液を得るために、少なくとも二つの試薬溶液が混合される。この発明は、異なる初期の着色剤によって試薬溶液を着色し、混合の際に初期の着色剤の色とは異なる識別可能な色を生み出す、という発想に基づく。
【0024】
それゆえ、溶液の色によって、最初の試薬溶液、二番目の試薬溶液またはこれらの混合液であるかどうかを、直接的に見分けることができる。
【0025】
より具体的には、この方法は以下を含む:
−測定を行うために必要な少なくとも一つの物質および第一の色を溶液に提供する第一の着色剤を含む第一の試薬溶液を提供する、
−第二の溶液は、該測定を行うために必要な他の少なくとも一つの物質および第一の色とは異なる、第二の色を溶液に提供する第二の着色剤を含む第二の試薬溶液を提供する、
−PCR工程に供される混合溶液であって、前記混合溶液は該第一および第二の着色剤に起因して、第一および第二の色とは異なる第三の色を呈する混合溶液、を提供するため第一および第二の試薬溶液を混合する。
【0026】
典型的な利用において、試薬溶液の一方はサンプル溶液、つまり、PCR測定において増幅される生物学的サンプルを含む、または受け取りを目的とする溶液であり、もう一方の試薬溶液は、測定を行うために必要な、いくつかの、少なくとも一つの、他の物質、例えば、ポリメラーゼ溶液やマスターミックスを含む。サンプル溶液は、バッファー溶液であってもよい(以下、「サンプルバッファー溶液」という)。それゆえ、第一の色を呈するマイクロウェルは、他の試薬溶液、例えばマスターミックスなどの無い、サンプル溶液のみがウェルに存在する、ことを示す。第二の色を呈するマイクロウェルは、マスターミックスは加えられているが、サンプルが未だ存在しないことを示す。最終的に、第三の色を呈するマイクロウェルは、サンプルが適切にマスターミックスへ加えられていることを意味する。色の観察は、視覚的に、または自動光学的手段によって、行われる。
【0027】
一の実施形態においては、試薬溶液の一つが、核酸精製キットとの組み合わせで用いられる溶出バッファーのような、溶出バッファーである。
【0028】
一の実施形態においては、試薬溶液の一つが、核酸遊離のために固体状態のサンプルの溶解を促進するために用いられる希釈バッファーである。この試薬溶液はまた、PCRの前に、遊離された成分の希釈、消化、または沈殿のために用いることができる。それゆえ、ダイレクトPCR測定のピペッティングの際に本発明を使用することが可能である。
【0029】
さらなる実施形態においては、試薬溶液の一つが、cDNA合成反応、逆転写反応またはやバイサルファイト処理において用いられる溶液である。
【0030】
一の実施形態においては、試薬溶液の一つが、PCR工程のためのサンプルを調製するために用いられる他の溶液である。
【0031】
この発明はまた、二つ以上の着色されたPCR試薬溶液の製造のための色素の新規な使用を提供し、これは、試薬溶液の初期の色から識別可能な色を呈する混合溶液を形成することができる。
【0032】
さらなる実施形態は、従属項に記載している。
【0033】
この発明の特段の目的は、定量的PCRに適しているピペッティング補助溶液の達成である。これは、蛍光工程、すなわち、qPCRにおいて使用される励起および放射、または光学的検出、を著しく阻害することがないような、着色剤あるいは着色剤濃縮物を使用することによって、達成される。特に、qPCRに供される反応混合液は、少なくともqPCRの励起および放射波長において、透明または半透明である。これは通常、反応混合液の最大吸光度が0.5未満、特に0.15未満(光路長1mmを使用して測定)、であること、また、着色剤の吸光領域(absorption window)が、少なくとも使用される蛍光qPCR色素または修飾されたDNAオリゴヌクレオチドプローブの励起波長または放射波長と著しく重複しないこと、を意味する。
【0034】
一の実施形態においては、定量的PCRのための反応混合液であって、前記反応混合液が蛍光色素、プライマーまたはプローブを含み、該着色剤のいかなる吸収ピークも、該蛍光色素、プライマーまたはプローブの放射波長または励起波長と重複しないものである、反応混合液が調製される。重複が存在する場合、一般的には、該波長における反応混合液の総吸光度が、0.05未満、好ましくは0.03未満、特に0.1未満であれば、qPCRのシグナルを著しく弱めるものではない。
【0035】
この発明は、注目に値する利点を提供する。初期の溶液および得られた溶液が、初期の溶液との間だけでなく、初期の溶液とこれらの混合液との間でも、相互に異なる色を有するからである。
【0036】
加えて、着色された溶液から、溶液が適切に混合されたか否か、および望ましい容量から著しく偏っていないか否かが、瞬時に把握できる。
【0037】
さらに、その色は、コンタミネーションやマイクロウェルプレートの密閉における問題点等を引き起こす可能性がある、誤った場所への溶液のはねやこぼれを、容易に見えるようにする。とりわけ、熱サイクルの前にマイクロタイタープレートへ使用する粘着性密閉フィルムについて、シール接触面中のいかなる液体も、密閉、ひいては完全なPCR測定に支障をきたし得る。
【0038】
もし、実施されるピペッティングの段階が、着色剤の使用で可視化されるとしても、本発明は、エラー率をさらに低くするために、機械的な解決策と共に使用されることも可能である。ピペッティングロボットを使用する際に、所望の段階の後に、光学的検出に基づく品質検査段階を加えることも可能である、また、試薬の容量および色を視覚的に瞬時に確認することもできる。
【0039】
上述の理由から、本方法で用いられる色素や他の着色剤は、反応の設定段階、とりわけ反応プレートに試薬をロードする間の経過を追う手助けとなることができる。それゆえ、このアプローチは、サンプルのピペッティングのための、重要な支援および確実性の増加を提供する。
【0040】
qPCRにおいては、PCR反応後、増幅産物をゲルへロードする必要はない。それゆえ、密度増強剤は必要ではない。その結果として、本溶液は、密度増強剤のないものである、またはほんの少量の(すなわち、ゲル電気泳動に必要な量よりも少ない)密度増強剤を含んでもよい。
【0041】
一の実施形態によると、上述した第一および第二の試薬溶液に加えて、溶液に異なる色を与える追加的な着色剤を含む、一つ以上の追加試薬溶液が提供される。その溶液は、混合において、該追加的な着色剤に起因して、さらに識別可能な色を呈する、追加的な溶液を形成することができる。それゆえ、本発明は、工程のうちの一つの特定の段階、例えばマスターミックスへサンプルをピペッティングするする段階、におけるピペッティングの補助だけでなく、他の段階、特にサンプルをピペッティングする以前の、または、それに続く段階の間におけるピペッティングの補助のためにも用いることができる。
【0042】
さらに詳しくは、この方法は、該測定を行うために必要な少なくとも一つの物質を含む第三の試薬溶液を提供すること、ここで前記第三の試薬溶液は、上述した第一、第二、第三の色とは異なる第四の色を溶液に提供する第三の着色剤を含む、および、第一、第二、第三の着色剤に起因して、第一、第二、第三、第四の色とは異なる第五の色を呈する混合された試薬溶液を得るために、第三の試薬溶液を、第一、第二の試薬溶液に混合することを含んでもよい。特に、第一の試薬溶液はサンプル、第二の反応溶液はマスターミックス、第三の試薬溶液はプライマー溶液であってもよい。測定の説明書において別途定義されていない限り、適用順は本質的なことではない。
【0043】
あるいは、上述の方法は、第一、第二、第三の色とは異なる第四を溶液に提供する第三の着色剤を含む第三の試薬溶液を提供すること、および、それぞれ第三および第五の色を呈し、お互いに異なる色であり、第一、第二、第四の色とも異なる、第一および第二の混合溶液を得るために、第一の試薬溶液と、第二および第三の試薬溶液を個別に混合すること、を含んでもよい。例えば、第二の試薬溶液は一つのプライマーセットを含んでいてもよく、第三の試薬溶液は二番目のプライマーセットを含んでいてもよい。この実施形態においてもまた、全ての初期の含有物および全ての得られる混合液の色は、固有のものである。
【0044】
上述した二つの実施形態は、少なくとも二つの異なる色を呈する試薬溶液の混合によって調製されたそれ自身である試薬溶液と、第二および第三の試薬溶液が、最終的に個別に混合される、というように連鎖することもできる。他の種類の組み合わせもまた可能である。
【0045】
「試薬溶液」とは、PCRの目的のために用いられる必須の、または有用な、少なくとも一つの試薬を含んでいるいずれかの試薬である。最も典型的な構成要素は、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、イオン、マグネシウム、その他の塩、pH緩衝剤、dNTPまたは蛍光qPCR色素またはプローブ、オリゴヌクレオチド、核酸結合剤(binding agent)、核酸テンプレートである。試薬はまた、ポリメラーゼ反応やそのモニタリングに影響を与える、他のポリメラーゼ反応の添加剤であってもよい。
【0046】
用語「サンプル溶液」は、特に指定がない限り、テンプレート未添加または、すでにPCRで増幅するテンプレートを添加済みの、緩衝および非緩衝のサンプル溶液の両方を包含する。「サンプル溶液」という言葉は、「試薬溶液」という言葉によっても包含される。
【0047】
用語「マスターミックス」は、PCRが起こるために必要な構成要素または因子の、全てまたはほとんどの混合液、典型的には、サンプルおよびアンプリコン特異的なテンプレートおよびプライマーを除く全てをいう。商業的に入手可能なマスターミックスは、通常、濃縮溶液である。マスターミックスは複数のサンプルに共通している全ての試薬を含んでいてもよく、一つのサンプルだけのために構成されていてもよい。マスターミックスの使用は、ピペッティングされた容量の違いによるサンプル間のばらつきおよびピペッティングエラーの軽減のために役立つ。また、ピペッティングにかかる時間を最小限にする。
【0048】
qPCRのマスターミックスは、qPCR反応の実施を目的としたマスターミックスである。それゆえ、蛍光色素または蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを含む。
【0049】
用語「プレミックス」は、テンプレート以外の、PCR反応に必要な全ての構成要素を含むマスターミックスをいう。
【0050】
用語「色」は、ここでは、可視領域における白色光下で検出可能な(溶液の)スペクトル感度をいう。それゆえ、溶液に着色された外観を与える(水の、ほぼ100%の透過率と対照的に)、少なくとも一つの波長域が、溶液の吸収スペクトルに存在する。白、黒、およびグレーの色合いは、ここでいう色に数えられる。後述するように、約0.01より高い吸収(光路長1mm)は、視覚的に知覚可能な色を溶液に与えるのに対し、約0.001より高い吸収(光路長1mm)は、比較的容易にハードウェアに基づくスペクトルの検出方法によって検出可能である。
【0051】
用語「異なる色」は、その色が、好ましくは肉眼によって、また少なくともスペクトル検出方法によって、識別可能であることを意味する。特に、「異なる色」とは、それらの吸収スペクトルにおける最大ピークが、少なくとも30nm分離していることをいう。好ましくは、次のグループから異なる色を選択する:赤色、黄色、青色またはシアン、マゼンタ、黄色、および、緑、オレンジ、紫のような、それらの視覚的に識別可能な組み合わせおよび濃淡。
【0052】
用語「着色剤」は、溶液内に均一に混合または溶解することができ、知覚可能な色を溶液に与えることができる、あらゆる物質を意味する。一の実施形態によると、着色剤は色素であり、特に水性色素であり、好ましくは非酸化型の水性色素である。
【0053】
用語「透明な」および「半透明な」着色剤含有溶液とは、特に、qPCRを行うために用いられる蛍光の励起および/または放射波長の少なくともいくつかにおいて、光透過領域(optical transmission window)を有する溶液をいい、その波長は、反応混合液中に含まれる、蛍光色素分子(fluorophore)、蛍光色素、および/または修飾されたDNAオリゴヌクレオチドプローブに依存する。典型的には、励起波長は350nmから690nmの間、特に490nmから650nmの間である。放射波長は、典型的には、350nm−730nmの間、特に515nm−680nmである。透明溶液は、本質的に光学的には非拡散である一方、半透明溶液は光を拡散的に透過する。
【0054】
用語「サンプル」は、研究対象の核酸を含んでいるかまたは、研究対象の核酸の存在を解析したい固形物質または溶液のことをいう。
【0055】
用語「希釈バッファー」とは、PCR設定の前の、サンプルの前処理に使用できる溶液をいう。前処理は、核酸を遊離するためのサンプル溶解、希釈、結合、化学的溶解、沈殿およびいくつかの構成要素の酵素的切断、を含む。
【0056】
用語「調製工程(preparative process)」は、後続のPCR反応において全体または部分的にサンプルとして使用できる生産物を得るための、あらゆる反応やピペッティング段階、前処理をいう。
【0057】
典型的には、溶液と第一および第二の着色剤の混合によって達成される第三の色は、溶液の第一および第二の色の有色の組み合わせである。それゆえ、第三の色は、第一および第二の色のスペクトル群の合計のスペクトルとして生成されてもよい。しかしながら、第三の色がより複雑な過程、例えば、第一および第二の着色剤の反応、を通じて、または蛍光過程、例えば蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ただし蛍光波長は用いられるqPCR蛍光色素分子(fluorophore)の波長とは異なる、に起因して形成されることは除外されない。
【0058】
次に、実施形態、および、この発明の利点を、添付図面を用いて、より詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】
図1Aは、着色されたサンプルバッファー、着色された試薬溶液、およびそれらの着色された混合液を各々に含む三本のマイクロウェルを断面図として示したものである。
【
図1B】
図1Bは、空のウェル、着色されたサンプルバッファー、着色された試薬溶液、それらの着色された混合液、および、光学的に透明な溶液を含む、マイクロタイタープレートの上方視点図を示したものである。
【
図2a-2b】
図2aおよび2bは、本発明を行う典型例をフローチャートとして示したものである。
【
図3】
図3は、本発明の一つの実施形態における過程をフローチャートとして示したものである。
【
図4a-4d】
図4a−4dは、マスターミックスとサンプルを用いて、ピペッティング補助色素あり(4aおよび4b)、および、なし(4cおよび4d)の状態で得られた標準系列を示す。
【
図5a-5d】
図5a−5dは、吸収測定例に関する吸収スペクトルを示す。
【
図6a-6c】
図6a−6cは、cDNA合成反応における着色剤の使用を図示する。
【
図7a-7c】
図7a−7cは、cDNA合成反応における着色剤の使用を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0060】
プレートの設定をより容易にするため、本発明は、一の実施形態に従って、(q)PCR工程のピペッティング段階における、マスターミックス、サンプル、およびこれらの混合液のピペッティングの追跡を支援する、色素の組み合わせを提供する。qPCR反応に最小限の影響しか与えず(例えば、使用されるサンプルやDNAポリメラーゼへ影響を与えない)および、蛍光の光学的検出へ著しい影響を及ぼさないため、これらの色素は好ましく最適化されている、言い換えると、使用される色素はqPCR測定に適する。
【0061】
qPCRの目的のために使用される典型的な蛍光色素分子(fluorophore)には、Alexa350、FAM
TM、TET
TM、VIC
TM、JOE
TM、HEX
TM、CY(R)3、TAMRA
TM、ROX
TM、Texas Red(R)、CY(R)5、CY(R)5.5、およびQuasar(R)705が含まれ、これらの放射波長および励起波長を表1に示す。
【0063】
図1Aは、本発明の基本原理を示したものである。マイクロウェル12Aは第一の色(横線)を呈する着色されたサンプルバッファー14Aを含む。マイクロウェル12Bは第二の色(縦線)を呈する着色されたマスターミックスを含む。マイクロウェル12Cはサンプルバッファーと着色されたマスターミックスの、第一および第二の色がもたらす第三の色(横線および縦線)を呈する着色された混合液を含む。
【0064】
図1Bは、マイクロタイタープレート10を図示したものであり、
図1Aで示した溶液が加えられており、空のウェル12と、色を呈していない非着色溶液14D(点)も含む。加えて、初期反応混合液14Cを非着色溶液14Dで希釈することで得た希釈反応混合液14Eも示してあり、この希釈反応混合液は初期反応混合液14Cと同様の基礎的な色を呈しているが、透明性は増加、すなわち吸光度は減少している(まばらな横線および縦線)。さらに詳細は後述するとして、本発明の一の実施形態に従って、色だけでなく、希釈度についても測定できる。
【0065】
色素は、好ましくは、互いに視覚的に、すなわち肉眼で識別可能であり、かつ、検出できるものである。それゆえ、異なる色は、スペクトル的に相対的に密に分布されており、特別な機器は必要ではない。しかしながら、光学スペクトル検出またはコンピューター画像に利用される自動装置においても、異なる色の間での識別能を低下させることなく、使用できるスペクトルスケール(spectral scale)で、色はより精密に分布される。
【0066】
一の実施形態によると、この組み合わせは青色のマスターミックスと黄色のサンプルバッファーとを包含する。これらを共に混合すると明瞭な緑色の溶液を形成する。プレート中の青色は、マスターミックスは加えられているがサンプルがまだ存在していないことを示す。サンプルが加えられると、色は緑色に変化する。ウェル中の溶液が黄色であれば、マスターミックス無しでサンプルのみが存在することを示す。一の実施形態によると、青色色素はキシレンシアノールを包含する。一の実施形態によると、黄色色素はキノリンイエローを包含する。これらの色素は、各々、ポリメラーゼおよびサンプルバッファーとの相性が良いことが知られている。
【0067】
その他の可能性のある色素には、ブリリアントブルー、パテントブルー、インジゴカルミン、アシッドレッド1、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ニュートラルレッド、ブロモクレゾールグリーン、アシッドバイオレット5、ブロモフェノールブルー、およびオレンジGが包含される。その他の可能性のある色素はUS 6942964に掲載される。
【0068】
一の実施形態によると、これらの色素は、各々の溶液に視覚的に知覚可能な色を与えるのに十分強力であるが、蛍光検出を阻害しないよう十分弱く、かつ/または、ゲル電気泳動の移動を追跡する目的のために一般的に使用されているその他の色素を妨げないよう十分弱い。例えば、上述したキシレンシアノールおよびキノリンイエローは、この群の色素に属する。それゆえ、もし着色された増幅混合液が、エンド−ポイントゲル電気泳動解析に供されるとしても、これらの着色剤はその解析に影響を与えない。その代わり、電気泳動色素を含む従来のローディングバッファーを増幅混合液に加えることができる。適度な着色はまた、溶液の全体的な外観の透明性または半透明性を維持する。
【0069】
色素の適正濃度は、その色素自身に依存する。機械を利用した色検出を対象とする一の実施形態によると、初期溶液の色素濃度は、その最大吸収波長(光路長1mm)において、0.001−0.5の吸光度となるように調整される。視覚的な色検出を対象とする一の実施形態によると、色素濃度は、その最大吸収波長(光路長1mm)において、0.01−0.5、特に0.03−0.5の吸光度となるように調整される。最も好ましい実施形態によると、吸光度は0.03−0.15であり、これは、色素の視覚的な知覚可能性および、たとえ吸収ピークがqPCRの励起波長および/または放射波長とわずかに重複しているとしても、qPCR測定における影響がごく僅かまたは小さいこと、の両方を確実にする。このような重複が存在しても、最大吸光度に関わらず、qPCRの励起波長および/または放射波長における総吸光度が、0.05未満、好ましくは0.03未満、特に0.01未満(光路長1mm)であることが好ましい。二つ(以上)の初期溶液が異なる着色色素を有しているように、いずれの特定の波長における、著しく重複する吸光度は存在しない。上述の吸光度は、望ましいPCR工程の濃度に希釈された溶液についての、好ましい吸光度であることも、留意すべきである。溶液が濃縮物として供給される場合、好ましい吸光度は各々より高くなる。
【0070】
別の実施形態によると、少なくとも一つの溶液が色素含有で提供され、この色素は、qPCRに適しており(すなわち、使用される波長における蛍光検出に影響を与えず)、かつ、ゲル電気泳動における検出のために十分強力であり、サンプルに対して、ゲル上の適切な距離へ泳動する。それゆえ、別個のローディングバッファーは必須ではない。
【0071】
色素を含むサンプルバッファーは、使用目的によって、希釈物または濃縮物のいずれかとして供給されてもよい。
【0072】
図2は、単一の容器への着色されたサンプル溶液(段階20)および少なくとも一つの試薬溶液(段階21、任意に22)のピペッティング、および溶液の混合(段階23)の一般的な概念を図示する。混合溶液の色は、その混合液のPCRの実施(ステップ25)の前に確認される(ステップ24)。簡略化された
図2には示されていない、他のピペッティングや処理のステップが存在するかもしれないことに留意するべきである。
【0073】
いくつかの実施形態は、以下に説明される本発明の一般的発想を利用している。
【0074】
一の実施形態によると、複数の着色されたサンプルバッファー溶液が提供され、異なる着色剤が、これらのサンプルバッファーに異なる色を与えるために用いられている。
【0075】
さらなる実施形態によると、同一の着色試薬混合液と複数の着色されたサンプルバッファーの混合によって、異なる色の反応混合液が得られる。それゆえ、マルチサンプルPCR測定において、溶液の色に基づき、異なるサンプル間を識別することができる。例えば、青色のマスターミックスと混合された、黄色のサンプルバッファーおよび赤いサンプルバッファーは、緑色およびマゼンタの反応混合液を形成し得、これによって、適切な混合だけでなく、サンプルの種類までも、迅速に確認することができる。
【0076】
一の実施形態によると、マスターミックスと複数の着色されたプライマーミックスが提供され、そこでは、混合液に異なる色を与えるために異なる着色剤が用いられる(マスターミックス:色1、プライマーミックス:色2および色3)。これらのプライマーミックスとマスターミックスの組み合わせは、さらに異なる色で着色された混合液(色4および色6)を与える。さらに、着色されたサンプル(色7)を得られた混合液に加えることで、識別可能なPCR溶液が得られる(色8および色9)。工程の各場合において、溶液の色が溶液の内容物の指標となる。
【0077】
図3に示される、一の実施形態によると、複数のマスターミックスまたはその他のプレミックス(段階31、32)が提供され、それらには、異なる色をプレミックスに与えるための異なる着色剤(つまり、プレミックス1:色2,プレミックス2:色3、...プレミックスn:色n+1)、およびさらに他の色(色1)を有するサンプルが備わっている(段階30)。これらのプレミックスは個別にサンプルと混合され(段階33a、33b)、結果として生じる溶液の色が確認される(段階34a、34b)。これらの色は、好ましくは、プレミックス溶液およびサンプル溶液の各々の組み合わせが、お互い、ならびに初期のプレミックスおよびサンプル溶液から識別可能な固有の色を生じさせるように、選択される。確認後(34a、34b)、これらの溶液は、原則として、いつでもPCRが行える状態である。簡略化された
図3には示されていない、他のピペッティングおよび処理の段階が存在する場合があることに留意するべきである。
【0078】
さらにほとんどの場合、複数の初期溶液(各々にはPCR反応に必要な試薬、例えば、ポリメラーゼ、プライマー、イオン、dNTP、または、蛍光qPCR色素もしくはプローブ、またはその他の添加物、を含む)が提供され、それらには、異なる色を溶液に与えるための異なる着色剤(つまり、溶液1:色2,溶液2:色3、...溶液n:色n+1)、およびさらに他の色(色1)を有するサンプルが備わっている。これらの色は、好ましくは、溶液の各々の組み合わせが、溶液を他の溶液から識別可能な固有の色を生じさせるように、選択される。
【0079】
高い利用価値のある本発明の選択された変形例を、以下に述べる。
【0080】
溶出バッファーでの色素の利用
分子生物学的実験における核酸は、通常、複雑な試料物資から精製される。抽出、沈殿、ハイブリダイゼーション、および、異なる様式のクロマトグラフィー、またはフィルター濾過等に基づく方法を含む、様々な精製方法がある。それらの技術のほとんどにおいて、核酸は、選択された溶液において溶解または溶出のいずれかがなされる。沈殿した核酸は、様々な溶液に溶解することができる。その他のDNA相互作用に基づく異なる方法を用いる場合には、溶出バッファーに対して、適したイオン強度など、さらなる必要条件がある。高イオン強度条件下での、シリカへのDNA結合に基づく精製方法が、広く使用される。結合したDNAは、低イオン強度のバッファーまたは純水を用いて、シリカマトリックスから溶出される。シリカ結合方法に基づく多くのキットが入手可能であり、また一般的にそのキットは溶出バッファーを含む。実験作業手順におけるピペッティング段階の回数を減らすため、着色剤は溶出バッファーに含むことができ、また、キットと共に提供されたバッファーは着色されたバッファーで置換できる。これを行うことにより、使用者は、別個の段階で色素を追加する必要がない。
【0081】
例えば、色素を含むサンプルバッファーは、多くの市販または自家製のDNA精製キットとの組み合わせにおいて、サンプル溶出バッファーとして用いることができる。多くの入手可能なキットで提供される溶出バッファーは、色素含有のサンプルバッファーでただ単純に置換できる。もう一つの方法として、サンプルを希釈しすぎない程度に、少量の色素濃縮物を、キットで提供された溶出バッファーに添加することもできる。
【0082】
その他の着色された試薬溶液は、上述されたような、工程に必要な他の溶液である場合がある。
【0083】
溶出バッファー中の色素の利用(ダイレクトPCR)
新たな酵素技術は、PCRのためのサンプル調製を著しく容易にすることを可能としており、PCRへ直接、未精製のサンプルを用いることでさえ可能である。しかしながら、多くの実験において、いくつかの反応のためにサンプルは分離される必要があり、しばしば、再試行または他の目的のために、いくつかのサンプルを保存できることが好ましい。それゆえ、サンプルが特別なサンプルバッファーで溶解(lysed)、および溶解(dissolved)されるダイレクトPCRプロトコールの人気が高い。ダイリューションプロトコール(dilution protocol)と呼ばれるこれらにおいて、希釈バッファーはサンプルを溶解(lyse)する異なる試薬を含有してもよい。これらの試薬に加えて、後続のピペッティング段階をより簡便にするため、希釈バッファーに着色剤を添加できる。
【0084】
その他の着色された試薬溶液は、上述されたような工程に必要な他の溶液である場合がある。
【0085】
これらの実施形態を論証するため、シリカへのDNA結合に基づくキットを用いて、牛乳サンプルからの抽出を二組行った。一方は手順に従って、もう一方は溶出バッファーを黄色色素を用いた1xサンプルバッファーで置換して、実施した。精製されたサンプルはqPCRに用いられ、二組に示されたpPCRの結果を比較した。著しい違いは観察されなかった。
【0086】
逆転写反応での色素の利用
リアルタイムPCRの大多数は、遺伝子発現解析研究のために行われる。これらの実験において、関心のある核酸はRNAであり、それゆえ通常のqPCRのためのテンプレートとして直接的に適しているものではない。qPCRの前に、RNAサンプルはqPCRステップの前に逆転写されなければならない。逆転写反応およびqPCR反応は、組み合わさることができ、同じ反応混合液の中で続いて行うことができる。しかしながら通常、その条件は、それら二つの反応のいずれかに対して、侵害的であり最適ではないものである。ほとんどの場合、独立した逆転写反応を行うこと、独立したqPCRにおいてテンプレートとして合成されたcDNAを使用すること、が最適である。逆転写反応の設定においても、qPCRで述べられたように、ピペッティングの間、サンプルを追跡するための同様の試みがある。本発明の実施形態は、この試みを克服するため、cDNA合成反応においてどのようにして着色剤が用いられるのかについて、記載する。
【0087】
cDNA合成反応における着色剤の使用は、以下の通り、実証される:
【0088】
二つのcDNA合成反応系を、一方は黄色の着色剤をqPCRの実施に使用される濃度と比べて10倍の終濃度で用い、もう一方は添加色素無しで、調製した。1000ng、500ng、10ng、1ng、100pg、10pgのHeLa細胞の総RNA希釈系列がテンプレートとして用いられた。反応は、取扱説明書(製品番号F−470、Finnzymes)に従い別の方法で実施された。各反応の1.5uLアリコートを、その後のDyNAmo SYBR Flash qPCRマスターミックスを用いたqPCRのテンプレートとして使用した。
【0089】
図6a−6cおよび7a−7cに関して、二つの標準曲線が作成され、最初の図(
図6c)は色素を添加した系を表し、その他の図(
図7c)は色素無しの系を表している。結果は、cDNA合成が着色剤の存在下でも遂行でき、反応の定量的性質も保たれていることを示す。
【0090】
実際には、色素は、転写酵素、サンプル、バッファー溶液と共に、または、濃縮物として個別に、反応中に組み込むことができる。
【0091】
バイサルファイト反応での色素の利用
上述された内容と同様に、色素は、バイサルファイト処理に関与するあらゆる成分にも、結果として得られるサンプルと第二の反応溶液との混合に先立って添加することができる。
【0092】
上述の例に見られるように、色素は、最終的なPCR反応混合液の混合の際に存在するだけでなく、調製工程の段階、特に、逆転写反応(例えば、cDNA合成)、バイサルファイト反応、サンプル溶出またはサンプル希釈のようなサンプル調製に関連するものにおいても存在する。これらの例は、限定されるものではなく、また、当業者には明らかなように、この色素は様々な方法で、例えば、酵素と共に、反応バッファーと共に、サンプルと共に、または個別に、これらの反応に導入される。
【0093】
調整工程の段階においても色は存在するため、これらの工程のピペッティングもまた容易化される。しかしながら、好ましい実施形態によると、少なくとも一つの着色された溶液が、最終反応溶液の混合、例えば、ポリメラーゼまたはマスターミックスと混合する際に、組み込まれる。
【0094】
図2bは、一般水準における、少なくとも一つの調製工程の段階29’に先立つ工程への、少なくとも一つの着色された試薬溶液(段階20’)を導入する原理を示す。前処理は、一つ以上の他の物質の導入をも含んでいてもよい(段階28’)。前処理の後、上記に説明されたものと同様に、調整工程段階での生産物(またはそのアリコート)と第二の着色された試薬溶液との混合(段階21’および23’)、混合溶液の色の確認(段階24’)、および(q)PCRの開始(ステップ25’)、により工程を継続することができる。
【0095】
ピペッティング過程のモニタリング方法
好ましくは、異なる色は、裸眼によって識別可能である。しかしながら、色調間を区別できるハードウェア制御の光学測定もまた、利用することができる。
【0096】
一の実施形態によると、ピペッティングされる、一以上のマイクロウェルの状態は、スペクトル分解能を有する光学的手段によって、ピペッティング工程の間、少なくとも一回、自動的に確認される。
【0097】
一の実施形態によると、マイクロウェルの状態は、ピペッティング工程における異なる段階で、少なくとも二回、自動的に確認される。好ましくは、このような確認は、全ての独立したピペッティング段階の後に、実行される。
【0098】
全ての非着色溶液、すなわち、視覚的に透明な溶液、の添加に起因して、着色剤の濃度は減少し、着色された溶液の色は弱まっていく。一方で、着色された物質を添加すると、色合いが変化する。それゆえ、ウェル内の溶液の強度および/または色合いは、ピペッティングの段階の指標となる。マイクロウェルのスペクトル感度の自動測定によって、ピペッティング工程の進み具合をモニタリングできる。
【0099】
一の実施形態によると、上述のモニタリングがコンピュータープログラムを用いて実行されており、これは、所望のピペッティング段階後の、測定されたスペクトル感度と、これらの段階であらかじめ定義された限度との比較に適合する。このような限度は、添加された試薬を考慮に入れて、その溶液の色の正確な色合いおよび/または強度を反映するように設計されている。許容される範囲内に無い測定値を示す、一のマイクロウェルは、不正確なピペット操作であったことを示す。
【0100】
溶液の色の検出は、好ましくは、吸光度測定に基づくものである。検出機器は、自動ピペット装置または(q)PCRサイクル装置に不可欠な部分であり、例えば吸光度測定機器、すなわち、光源、光検出器、および少なくとも一つの波長もしくは波長帯においてマイクロウェルの内容物の吸光度を測定する機器を含む。好ましくは、吸光度測定機器は分光光度計を含む。本発明の方法によって、たとえ色の色合いおよび強度のわずかな変化であっても、PCR測定およびピペッティングの信頼性を高めることができ、それゆえ、ウェルの内容物を検出できる。
【0101】
別の実施形態によると、検出機器は独立した装置に組み込まれ、重要なピペッティング段階の後、そこへ、反応溶液を自動的にまたは手動で移動する。独立した装置において、さらなる工程のために移動される前に、素早いプレートの読み取りが行われる。
【0102】
それゆえ、本発明は、複数のマイクロウェルを含むマイクロタイタープレートを受容するための手段および、マイクロウェルの内容物の光学的吸収の手段を含むピペッティングのモニタリングのための装置を提供する。吸光度測定のための該手段は、(色検出のための)サンプルのスペクトル吸収プロファイル、および/または、(希釈検出のための)サンプルの色の強さ、の検出に適合している。好ましくは、前記装置は、完全なピペッティング工程のモニタリングができるようにするため、上述した機能の両方が可能である。光検出手段は、測定された吸光度を解析および保存し、計算または既に保存されているデータと測定されたデータとの比較を行うコンピューターユニットと接続されていることが好ましい。
【0103】
前記検出機器は、反応溶液の温度を十分に低く維持するために冷却することができる、マイクロプレート受容ブロックを含んでいてもよい。ほとんどのホットスタートポリメラーゼにとって、冷却は必須ではない。
【0104】
自動検出は、反応槽の容量が小さい場合、つまり5uL未満、特に1uL未満の場合、特別の助けになる、これらの場合、溶液の色および容量の信頼できる視覚的な観察は、より難しいからである。
【0105】
マイクロウェルは、独立しているか、または、任意の既知のタイプのマイクロタイターストリップやプレートに含まれていてもよい。好ましくは、ウェルは透明な物質で製造されたものであり、目視検査やスペクトル測定を、ウェルの外壁を通って行うことができるものである。
【実施例】
【0106】
染色例
着色剤としてのキシレンシアノールを、0.0026%(w/v)の濃度で、(Finnzymes,Finland)からのDyNAmo Flash SYBR(R) green qPCRおよびDyNAmo Flash Probe qPCRマスターミックスに添加した。その結果、清澄な青色透明溶液を生じた。キノリンイエローを、0.000174%(w/v)の濃度で、サンプルバッファーに添加した。このサンプルバッファーは、1mM トリス−HCl pH8.5および、0.1mM EDTAを含む。その結果、清澄な黄色透明溶液が得られた。
【0107】
着色されたサンプルバッファーと、着色されたマスターミックスを混合することで、清澄な緑色透明溶液が得られた。
【0108】
増幅例
図4a−4dは、マスターミックスおよびサンプルについて、例1のピペッティング補助色素有り(
図4aおよび4b)、および、無し(
図4cおよび4d)で得られた、標準系列を示す。両系列ともに、製品説明中の手順に従って、DyNAmo Flash Probe マスターミックスを用いて、ヒト染色体DNA配列の増幅によって実施された。プライマー配列は、ACCTCCAAACTGGCTGTAACおよびATCTCCTCCTCATTGCAAAGであった。検出は、TGGCCCCTTGAAGACAGCAGの配列を有する加水分解プローブに基づいた。アンプリコンのサイズは121bpであった。
【0109】
増幅曲線(
図4aおよび4c)および標準曲線(
図4bおよび4d)の相似性から、色素の存在は、反応効率に影響を与えず、また、蛍光強度に著しい影響を与えないことがわかる。
【0110】
ピペッティング例
本発明は、以下のピペッティング手順を行うために利用された:
−(青色)着色された2xミックスを、いくつかの反応のためのプレミックスを得るために、プライマーおよびプローブ、添加剤および水、に完全に混合させた。
−プレミックスを、マイクロタイタープレートのいくつかのウェルへ、ピペッティングした(15uL/well)。
−(黄色)着色されたDNAサンプル溶液を、プレミックスの上にピペッティングした(5uL/well)。
−得られた溶液の色を、正しい(緑色)かどうか、手動で確認した。
【0111】
上述のステップの後、生成した溶液は、いつでも(q)PCRを実施できる状態にある。qPCRのため、試薬はウェルの底に遠心分離されることが好ましい。
【0112】
吸光度測定例
上述の実施例において用いられている色素の希釈物、および、既存の着色されたマスターミックスの希釈物の様々な希釈度での吸光度は、異なる波長における視覚的に知覚可能な範囲の評価のための目視観察で測定され、かつ、比較された。その目的は、特に、異なる色素で視覚的に知覚可能な吸収範囲を決定すること、および、商業的に入手可能な色素が、qPCRにおいて使用されるおそらく最も一般的である、FAMおよびSYBR蛍光色素と共に使用するのに適しているかどうかを確認すること、であった。
【0113】
測定は、Nanodrop ND−1000分光光度計で、1mmおよび0.1mmの光路長を用いて行った。
【0114】
結果を、視覚的に検出可能な色、最大吸収およびサンプルの吸光度と同様に、実験に使用される溶液および色素の種類も含めて、下記の表1−7に示した。表1−3は、FAMまたはSYBRと共に用いられる好ましい色素を用いて得られた結果を示し、一方、表4−7は、商業的に入手可能な着色されたPCR溶液で得られた比較例を示す。
【0115】
表において、用いられている記号は以下の通りである:
+++ 強い色
++ 容易に確認できる色
+ 弱い色ではあるが、通常の研究環境において、肉眼による視認可能
− 通常の研究環境において、肉眼による視認不可
アスタリスク(
*)で示す場合は、吸収ピークが完全に明確(well−defined)ではなかったか、または、明瞭ではなかった。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
表1−3の溶液の最大吸収は、FAMおよびSYBR色素の蛍光波長からは、比較的離れたものである。表3の反応混合液の吸収スペクトル(1x希釈)は、
図5aに示されている。データから、試験された色素は、初期溶液として、およびこれらの蛍光色素と共に着色剤として、qPCR反応混合液と共に使用することにも適していると判明した、と結論づけることができる。
【0120】
【表5】
【0121】
表4のバッファーは、最大吸収が510nmであり、これはFAMおよびSYBR色素の蛍光波長と非常に近い。これらの色素で、吸収は著しくqPCRシグナルを減少させるであろう。それゆえ、qPCRにおいてこの混合液の使用は適さないであろう
【0122】
【表6】
【0123】
表5の混合液は、419nmにおいて非常に強い吸光度を有する。吸収ピークは非常に鋭いものではなく、FAMおよびSYBR色素を励起させる範囲である495nmにおいても著しい吸光度を有する(1mm光路長で0.17)。これらの色素で、吸収は、qPCRシグナルを減少させるであろう。吸収スペクトル(1x希釈)は、
図5cに示されている。
【0124】
【表7】
【0125】
表6の混合液は、485nmにおいて非常に強い吸光度を有する。吸収ピークは非常に鋭いものではなく、FAMおよびSYBR色素を励起させる範囲である495nmにおいても著しい吸光度を有する(1mm光路長で0.982)。これらの色素で、吸収は、qPCRシグナルを著しく減少させるであろう。吸収スペクトル(1x希釈)は、
図5dに示されている。
【0126】
【表8】
【0127】
表7の混合液は、475nmにおいて非常に強い吸光度を有する。吸収ピークは非常に鋭いものではなく、FAMおよびSYBR色素を励起させる範囲である495nmにおいても著しい吸光度を有する(1mm光路長で0.393)。これらの色素で、吸収は、qPCRシグナルを著しく減少させるであろう。吸収スペクトル(1x希釈)は、
図5bに示されている。
【0128】
知覚可能な範囲は波長に依存するが、1mm光路長で0.01−0.1の吸光度を与える一般的な色は、清澄液とは視覚的に識別可能であるように見られる。吸光度が0.1−0.2に上昇した際には、その色は視覚的に非常に明確に見られる。しかしながら、精密機器はより精度が高く、また、それゆえ、0.001を超える吸光度を与える色素は、例えば分光光度計が色測定のために用いられる時には、使用され得る。
【0129】
色検出によって反応設定容量の確認をするための機器の使用は、色が有するであろう弊害の可能性を最小限にするという目的のために、より希釈された色を使用することを可能にする。例えば、qPCRにおいて、蛍光検出に著しく影響を与えることなく使用できるであろう色素の範囲は、増加するであろう。
【0130】
上述の実施形態および実施例、添付図面は、説明の目的のためである。本発明の範囲は、同等物を考慮に入れながら、以下の請求項に基づいて、評価されるべきである。