(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965323
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】光熱学的要素を含むトナーに関する効率的な融解及び固定
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20160721BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
G03G9/08 368
G03G15/20 505
G03G15/20 550
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-717(P2013-717)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2013-148895(P2013-148895A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2016年1月5日
(31)【優先権主張番号】13/352,105
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユェンジャア・チャン
(72)【発明者】
【氏名】マンダキニ・カナンゴ
(72)【発明者】
【氏名】サミル・クマー
(72)【発明者】
【氏名】ファミング・リ
【審査官】
野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−219103(JP,A)
【文献】
特開2011−008162(JP,A)
【文献】
特開2010−122685(JP,A)
【文献】
特開2005−266558(JP,A)
【文献】
特開2012−103535(JP,A)
【文献】
特開2010−102339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する装置であって、
重合体を組み込んだ1つ以上の光熱学的要素を含むトナー画像をその上に含む画像受取部であって、前記重合体は光学的に透明であって前記1つ以上の光熱学的要素の吸収範囲内で、10%〜100%までの透明度を有する、画像受取部と、
前記画像受取部から画像受取基材に前記トナー画像を転写する中間転写部と、
前記1つ以上の光熱学的要素を含む前記トナー画像に近接して、前記1つ以上の光熱学的要素を光学的に誘導して、前記画像受取基材の上の前記トナー画像を加熱するよう設定された1つ以上の光源と、を含み、
前記1つ以上の光熱学的要素は、グラフェン、金属ナノシェル、及びそれらの組合せからなる群から選択される、装置。
【請求項2】
前記装置が定着サブシステムを含まず、前記1つ以上の光源により、前記トナー画像が前記画像受取基材の上に溶解され固定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上の光源は、0.1W/cm2〜50W/cm2の範囲の出力を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記1つ以上の光源により加熱された、前記トナー画像を、前記画像受取基材の上で、溶解し、固定させる定着サブシステムをさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記1つ以上の光源は、0.01W/cm2〜10W/cm2の範囲の出力を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記1つ以上の光熱学的要素は前記重合体に対して0.1%〜60%の範囲の量で存在している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つ以上の光熱学的要素に、少なくとも部分的に前記1つ以上の光源により供給される光信号が照射される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記重合体は、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ラテックスポリマー、又はそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記光学的に透明な重合体は、ポリカーボネート、PET、PMMA、ナノ複合重合体、又は、ポリチオフェンとポリアニリンとその派生物を含む導電性重合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
それぞれの前記1つ以上の光源には、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、発光ダイオードアレイ、又は有機発光ダイオードアレイのうちの少なくとも1つ以上が含まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
それぞれの前記1つ以上の光熱学的要素は1nm〜500nmの平均粒子サイズの範囲を有するナノ粒子を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
画像を形成する方法であって、
1つ以上の光熱学的要素をトナー配合に組み込んで、光熱学的トナーを形成するステップであって、前記1つ以上の光熱学的要素は、グラフェン、金属ナノシェル、及びそれらの組合せからなる群から選択される、ステップと、
前記光熱学的トナーを画像受取部の上に塗布して、トナー画像を形成するステップと、
画像受取部から画像受取基材に前記トナー画像を転写するステップと、
前記トナー画像内の1つ以上の光熱学的要素に光信号を照射して、熱を生成して、前記画像受取基材の上に前記トナー画像を固定させるステップと、を含み、
前記1つ以上の光熱学的要素に光信号を照射することで、前記光熱学的要素は50℃〜1500℃の範囲の温度に達する、方法。
【請求項13】
前記光信号は0.1W/cm2〜50W/cm2の範囲の出力を有する1つ以上の光源により供給される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
画像を形成する方法であって、
トナー画像を画像受取部の上に塗布するステップであって、前記トナー画像はカーボンナノチューブ、グラフェン、金属ナノシェル、金属ナノ構造物、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の光熱学的要素を含む、ステップと、
前記画像受取部から画像受取基材に前記トナー画像を転写するステップと、
前記トナー画像内の前記1つ以上の光熱学的要素に光信号を照射して、前記画像受取基材の上の前記トナー画像を加熱するステップと、
定着部と圧力部とにより形成された接触アーク内に前記画像受取基材を通過させて、前記画像受取基材の上に前記トナー画像を固定させるステップと、を含み、
前記1つ以上の光熱学的要素に光信号を照射することで、前記光熱学的要素は50℃〜1500℃の範囲の温度に達する、方法。
【請求項15】
前記定着部及び前記圧力部により、110oF〜450oFの範囲の温度で前記トナー画像を溶解させるステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記定着部及び前記圧力部により、20Psi〜130Psiの範囲の圧力で前記トナー画像を定着するステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記光信号が0.01W/cm2〜10W/cm2の範囲の出力を有する1つ以上の光源により供給される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の光熱学的要素はカーボンナノチューブを含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光熱学的要素を含むトナーに関する効率的な融解及び固定に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な静電写真式再生装置では、複写される元の光画像を静電潜像の形で画像受取部の上に記録することができ、続いて一般にはトナーと呼ばれる検電熱可塑性樹脂粒子を塗布することにより、この潜像を可視化することができる。
【0003】
図1には、従来の画像形成装置が示され、この画像形成装置では、感光部、即ち感光体等の画像受取部110の表面が帯電器112により帯電され得、この帯電器112に電源111により、電圧を供給することができる。次いで、画像受取部110の画像に関して、光学システム、即ち画像入力装置113から光を照射して、画像受取部の上に静電潜像を形成する。一般に、現像ステーション114からの現像混合剤を塗布することで、静電潜像を現像することができる。磁気ブラシ、パウダークラウド、又はその他の現像処理により現像を行うことができる。
【0004】
トナー粒子を画像受取部110の表面に塗布した後、圧力転写又は静電転写であり得る転写手段125により、これらのトナー粒子をコピーシート等の画像受取基材116に転写することができる。あるいは、現像された画像を中間転写部に転写し、続いて、コピーシートに転写することができる。トナー画像の転写完了後、画像受取基材116は、定着部120及び圧力部121を含む定着サブシステム119に進み、画像受取基材116を定着部120と圧力部121との間を通過させることにより、トナー画像を画像受取基材116に定着させ、これにより恒久的な画像を形成することができる。転写後、画像受取部110は、クリーニングステーション117に進み、ブレード122、ブラシ、又はその他のクリーニング装置により、画像受取部110に残った全てのトナーを、その画像受取部110から取り除くことができる。
【0005】
しかし、接触式の定着サブシステムのエネルギ効率は低く、これにより問題が発生する(
図1の119を参照されたい)。ほとんどの静電プリンタでは、装置の全エネルギの50%以上が定着器により消費され、定着工程では定着エネルギの10%未満しか消費されない。これは、トナーを溶解するために必要な熱が、定着部/圧力部から伝わらず、トナー材料は積極的に加熱することができないためである。定着システムに関して、エネルギは、動作中及び待機中に用紙を温め、定着部/圧力部を加熱することに消費されてしまう。さらに、定着部からトナー画像を効率よく剥がすために、隔離剤が塗布されるとき、従来の用いられている高温度と高圧力のもとでは、化学反応がトナー材料と隔離剤の間でしばしば発生する。これにより、エネルギ効率が低下し、印刷の欠陥が発生し、定着部の耐用期間が制限される。
【0006】
従来の非接触式定着システムには、ラジアント定着システム及びフラッシュ定着システムが含まれる。しかし、それても問題を抱えている、ラジアント定着システムでは、用紙を引火点まで加熱できてしまい、冷却するのに時間がかかり、安全性が懸念され、エネルギ効率が低下し、かつ温度制御に対して過敏になり過ぎる。フラッシュ定着システムでは、用紙をほとんど加熱せず、低い電力しか必要としない。しかし、パルスヒータはコストがかかる。さらに、加熱は、トナーの吸収性に大きく依存している。例えば、黒のトナーはカラートナーよりもかなり効率的に加熱される。したがって、異なる顔料を均等に加熱するためにトナー配合を調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、速くて、安全で、コストがかからず、エネルギ効率がよく、且つ色による配合の調整をほとんど必要としない、効率の良い定着を行う装置及び方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
種々の実施形態によって、画像を形成する装置を提供する。この画像を形成する装置は、その上に塗布されたトナー画像を含む画像受取部を含み、このトナー画像は、重合体と組み込まれた1つ以上の光熱学的要素を含む。この画像形成装置は、画像受取部から画像受取基材にトナー画像を転写する中間転写部と、1つ以上の光熱学的要素を含むトナー画像に近接して、1つ以上の光熱学的要素を光学的に誘導して、画像受取基材の上のトナー画像を加熱するよう設定された1つ以上の光源と、をさらに含む。
【0009】
種々の異なる実施形態によって、画像を形成する方法を提供する。この方法は、1つ以上の光熱学的要素をトナー配合に組み込んで、光熱学的トナーを形成するステップと、光熱学的トナーを画像受取部の上に塗布してトナー画像を形成するステップと、を含むことができる。この方法は、画像受取部から画像受取基材にトナー画像を転写するステップと、トナー画像内の1つ以上の光熱学的要素に光信号を照射して、熱を生成してトナー画像を画像受取基材の上に固定させるステップと、さらに含むことができる。
【0010】
種々の異なる実施形態によって、画像を形成するその他の方法を提供する。この方法は、画像受取部の上に1つ以上の光熱学的要素を含むトナー画像を塗布するステップと、画像受取部から画像受取基材にトナー画像を転写するステップと、を含むことができる。この方法は、トナー画像内の1つ以上の光熱学的要素に光信号に照射して、画像受取基材の上のトナー画像を加熱するステップと、定着部及び圧力部により形成された接触アークの中に画像受取基材を通過させて、トナー画像を画像受取基材の上に固定させるステップと、をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、従来の画像形成装置の説明図である。
【
図2A】
図2Aは、本教示の種々の実施形態による、例示的な画像を形成する装置及び方法の説明図である。
【
図2B】
図2Bは、本教示の種々の実施形態による、例示的な画像を形成する装置及び方法の説明図である。
【
図3A】
図3Aは、本教示の種々の実施形態による、その他の例示的な画像を形成する装置及び方法の説明図である。
【
図3B】
図3Bは、本教示の種々の実施形態による、その他お例示的な画像を形成する装置及び方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
種々の実施形態により、画像を形成する材料、装置、及び方法が提供される。例示的な画像形成装置は、トナー画像の画像受取基材(コピーシート等)上への転写後に、そのトナー画像を処理するよう設定される1つ以上の光源を含むことができる。このトナー画像は、光熱学的要素をトナー配合に含む光熱学的トナーから形成され得る。
【0013】
本明細書で使用される用語「光熱学的要素」とは、別段の定めがない限り、光信号に応じて、熱挙動を表すことができる、又は熱信号に応じて光挙動を表すことができる要素のことを指す。例えば、光熱学的要素は、露光即ち光の照射に応じて熱を生成することができる。光熱学的要素は光誘導加熱要素でよい。
【0014】
本明細書で使用される用語「光熱学的トナー」とは、別段の定めがない限り、光熱学的要素を含むトナー又はトナー配合のことを指す。本明細書及びそれに続く請求項では、「トナー」は、「トナー配合」のことを指すことができ、その逆も同様である。トナーは、全ての周知のトナーでよく、例えば、乳化重合疑集法(EA)トナー、液体トナー、又はその他の好適なトナー配合が含まれ得る。トナーには、トナー樹脂として知られる重合体(複数可)が含まれ得る。
【0015】
光熱学的要素が光信号に照射される、さもなければ光信号を受けるように、(例えば光の照射から)光熱学的要素は、重合体をトナー配合内に組み込むことができる。例えば、この重合体は、光信号に対して光学的に透明でよい。あるいは、トナー内の重合体の光学的透明性とは関係なく、光熱学的要素は、少なくとも部分的にトナー表面に露出され得る。
【0016】
トナー内の重合体には、例えば、結晶性重合体、半結晶性重合体、及び/又は非結晶性重合体が含まれ得る。具体的には、トナー内の重合体には、ポリマーガネート、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタン、ポリアミドアジピン酸ヘキサメチレンジアミン(ナイロン6,6)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)(ナイロン−6)、m−フタル酸及びm−ジアミノベンゼン(Nomex)のポリアミド、p−フタル酸及びp−ジアミノベンゼン(Kevlar)のポリアミド、ポリエステルテレフタル酸ジメチルエチレングリコール(Dacron)、炭酸のポリマーガネート、炭酸ジエチル及びビスフェノールA(Lexan)のポリマーガネート、カルバミン酸のポリウレタン、イソシアナート及びアルコールのポリウレタン、エタノールを含むイソシアン酸フェニルのポリウレタン、トルエンジイソシアネート及びエチレングリコールのポリウレタンが含まれ得る。
【0017】
本明細書で使用される用語「光学的に透明な重合体」とは、その重合体に組み込まれた光熱学的要素が、光学的熱学的効果の影響を受けない範囲で、光学的に透明な重合体のことを指す。例えば、光学的に透明重合体は、光熱学的要素の吸収範囲内で、約10%〜約100%までの透明度、又は約10%〜約60%までの透明度、又は約30%〜約90までの透明度を有することができる。
【0018】
例示的な光学的に透明な重合体には、非限定的に、ポリマーガネート、PET、PMMA、ナノ複合重合体、及びポリチオフェン及びポリアニリン並びにその派生物のような導電性重合体が含まれ得る。
【0019】
光熱学的要素を、トナー樹脂内で物理的に分散させることができる、且つ/又はトナー樹脂に化学的に結合させることができる。本明細書で使用される、光熱学的要素をトナー樹脂「結合させる」とはイオン結合又は共有結合等の化学的結合のことを指し、2つの化学種が互いに近接するときに起こり得る水素結合又は分子の物理的封入等の弱い結合機構のことは指さない。物理的分散には、押し出し法、メルトスピニング法、メルトブローイング法等が含まれ得、化学的結合には、光熱学的要素の機能化による、その場重合等が含まれ得る。ある実施形態では、光熱学的要素を、単に重合材料内に混ぜる又は分散させることができるが、化学的には(例えば、交差結合させる)重合体材料とは結合していない。別の実施形態では、光熱学的要素を、重合体材料と交差結合させるなど、重合体材料と化学的に結合させることができる。さらに別の実施形態では、光熱学的要素は、ある部分では、単に重合材料内に混ぜられる、又は分散させることができ、別の部分では、重合体に材料化学的に結合することができる。
【0020】
実施形態では、少なくとも関連するトナー画像が部分的に加熱され、溶解され、及び/又は画像受取基材の上に固定され得る量の光熱学的要素を、トナー内の重合体と組み込むことができ、定着サブシステムを画像形成装置内で使用し得る、又は使用し得ない。さらに、光熱学的要素の量は、トナーの色に影響を与えることなく、かなり少なくてよい。実施形態では、光熱学的要素は、トナー内の重合体(複数可)に対して重量で約0.1%〜約60%、又は約0.1%〜約10%、又は約10%〜約60%の範囲の量で存在し得る。実施形態では、光熱学的要素約0.01g/cm
3〜約10g/cm
3、又は約0.01g/cm
3〜約1g/cm
3、又は約1g/cm
3〜約10g/cm
3の範囲の密度を有し得る。
【0021】
1つ以上の光源(複数可)により光が照射されると、光熱学的要素は少なくとも局部温度で約50℃〜約1,500℃、又は約50〜約500℃、又は約500℃〜約1,500℃の範囲に達することができ、光の照射が取り除かれると、所望の低い温度まで急速に冷えることができる。この温度では、局部的にトナーが加熱され/溶解され得るが、その下の画像受取基材(コピーシート等)は加熱されない。所望の温度に到達し、周囲温度に戻るまでに要する時間は、例えば、光源、光熱学的要素、光源のスペクトルパワー分布、光源の輝度、負荷、光熱学的要素の密度、及び処理速度等のいくつかの要因に依存し得る。
【0022】
実施形態では、光熱学的要素は、あらゆる形状及び/又は寸法でよい。例えば、光熱学的要素は、例えば、長方形、多角形、長円形、又は円形等の様々な断面形状を有することができる。光熱学的要素は、約1nm>(未満)〜約500nmまで、又は約<1nm〜約50nm、又は約50nm〜約500nmの平均粒子サイズの範囲を有するナノ粒子でよい。ナノ粒子は、約1〜約10
8:1、又は約10:1〜約10
7:1、又は約100:1〜約10
6:1の範囲の平均縦横比を有することができる。
【0023】
光熱学的要素は、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、金属ナノシェル、金属ナノ構造物、及び/又はそれらの組み合せ等のナノ材料を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用される用語「カーボンナノチューブ」とは、グラフェン層と呼ばれるグラファイトの原子が1重に並んだ厚さの層で、ナノメートルサイズの円筒に巻きつき、管又はその他の形状とみなすことができる。例示的なカーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、及び多層カーボンナノチューブ(MWNT)、及び/又はナノ繊維等のそれらの種々の機能化され、且つ誘導体化された繊維形状が含まれ得る。用語「カーボンナノチューブ」には、上記に記載した実行可能なナノチューブ及びそれらの組み合せからの変更CNTも含むことができる。ナノチューブの変更には、物理的変更及び/又は化学的変更が含まれ得る。例えば、カーボンナノチューブを1つ以上の化学的部位を用いて機能化させることができる。一般にカーボンナノチューブ上の化学的部位は、好適なモノマーに共有結合することができる。次いで、このモノマーは、当技術分野において周知の全ての好適な手段により重合し、これにより、重合体母材内分散をさせるカーボンナノチューブが形成される。このカーボンナノチューブ/重合体の複合樹脂をトナーに組み込むことができる。
【0025】
カーボンナノチューブ(CNT)は、半導体カーボンナノチューブ及び/又は金属製カーボンナノチューブでよい。実施形態では、CNTは約5%以下の、例えば、トナー内の全ての重合体に対して約0.1%〜約30%、約0.1〜約10%、又は約1〜約30%の範囲の分銅荷重を有するこができる。
【0026】
カーボンナノチューブは、それぞれ異なる全長、直径、及び/又はキラリティを有することができる。例えば、CNTは、約0.1nm〜約100nm、又は約0.5〜約50nm、又は約1nm〜約100nmの範囲の平均直径を有することができる。例えば、CNTは約10nm〜約5mm、約200nm〜約10μ、又は約500nm〜約1μの範囲の直径を有することができる。例えば、CNTは、約50m
2/g〜約3000m
2/g、約50m
2/g〜約1,500m
2/g、又は約500m
2/g〜約1000m2/gの範囲の平均表面積を有することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは低純度及び/又は高純度乾燥紙の形で得ることができる、又は様々な溶剤の形で購入することができる。他の実施形態では、カーボンナノチューブを未精製で加工された状態で購入することができ、続いて精製工程を行うことができる。
【0028】
光熱学的要素は、金属ナノシェルを含むことができる。この金属ナノシェルは、誘電体コア及びこの誘電体コアの上に配置された金属シェルを含むことができる。いくつかの実施形態では、金属シェル内の金属は、金、銀、及び銅からなる群から選択することができる。他の実施形態では、誘電体コアは、シリカ、チタニア、及びアルミナからなる群から選択することができる。金属シェルが約5nm〜約25nmの厚み、場合によっては約10nm〜約15nmの厚みを有する状態で、金属ナノシェル内の誘電体コアは、約30nm〜約150nmの直径を有することができ、一部の例では、約50nm〜70nmの直径を有することができる。
【0029】
実施形態では、光熱学的要素と組み込まれた重合体に加えて、光熱学的トナーは、随意的に、1つ以上の着色剤及び、随意的に、1つ以上のワックスを含むことができる。ある実施形態では、着色剤はカーボン黒でよく、ワックスはポリオレフィンワックスでもよい。
【0030】
光信号を供給するために様々な光源を用いることができる。例えば、光源は、光熱学的要素の吸収範囲内で発光を行なって、光熱学的要素が光源からの光を吸収することにより熱を生成できるようにすることができる。次いで、光熱学的要素を含むトナー画像は、加熱され、溶解され得、且つ/又はその下の表面上に固定され得る。
【0031】
種々の実施形態では、光源(複数可)は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、発光ダイオード(LED)アレイ、及び有機発光ダイオード(OLED)アレイのうちの少なくとも1つを含むことができる。光源は、紫外線領域から赤外線領域近くのいずれの領域の光も発行することができる。いくらかの実施形態では、光源はデジタル光源でよく、レーザアレイ、発光ダイオード(LED)アレイ、及び有機発光ダイオード(OLED)アレイ等の各光構成部品のうちの少なくとも1つを個々にアドレス指定することができる。本明細書で使用される用語「光構成部品」とは、LEDアレイ内のLED、OLEDアレイ内のOLED、又はレーザアレイ内のレーザのことを指す。本明細書で使用されるフレーズ「個々にアドレス指定可能な」とは、LEDアレイ内のLED等の各光構成部品を識別し、周囲のLEDから独立して操作することがことを意味する。例えば、各LED又はLEDの各グループを、個々にオン・オフし、各LED又はLEDの各グループの出力を個々に制御することができる。例えば、いくらかの行間及び余白を有する印刷テキストの場合、例えばLEDアレイ内の1つ以上のLED等の、そのテキストに対応する光構成部品をオンにして、そのテキストに対応した1つ以上の光熱学的要素のそれらの部分上に選択的に光を照射することができるが、テキスト間の行間及びテキスト余白に対応するLEDはオフにしておくことができる。したがって光熱学的要素は、デジタル光源であると同時にデジタル熱源であり得る。
【0032】
トナー画像を形成するために用いられる光熱学的トナーにより、光源(複数可)を選択することができ、その逆も同様である。例えば、選択された光源の出力/輝度に応じて、画像形成装置は、様々な構成を有することができる。
図2A〜
図2B及び
図3A〜
図3Bには、本教示の種々の実施形態による、画像形成する例示的な装置及び方法が示される。
【0033】
図2A〜
図2Bでは、例示的な画像形成装置200Aに
図1に示す定着サブシステムが含まれていない。その代り、画像受取基材116の上に光熱学的トナーが形成されたトナー画像を、溶解/固定するように、1つ以上の光源260を設定することができる。具体的には、
図2Aに示す通り、光熱学的トナー上に形成されたトナー画像を、画像受取部110上に塗布することが出来、次いで、中間転写部125により、画像受取基材116に転写することができる。その上にトナー画像202を有する画像受取基材116が方向205に進むとき、光源260が光を発光して、トナー画像に含まれる光熱学的要素の光熱学的効果を光学的に誘導することができる。次いで、この光学的に誘導された加熱効果により、熱を生成することができる。次いで、トナー画像202を画像受取基材116上で加熱、融解、及び固定させて、定着サブシステムを使用しないで、トナー画像208を形成することができる。
【0034】
光源(複数可)260は、画像受取基材116の上のトナー画像を完全に加熱/溶解/固定するために十分な出力及び/又は輝度を発光することができる。例えば、光源(複数可)260は、約100mW/cm
2〜約50W/cm
2、約500mW/cm
2〜約5W/cm
2、又は約5W/cm
2〜約50W/cm
2の範囲の高出力の発行を行うことができる。この様に、光源260を用いることにより、非接触によるトナー画像202の溶解/固定(
図2A〜
図2Bを参照)を行うことができる。
【0035】
図3A〜
図3Bでは、光源(複数可)360を、定着サブシステムに組み込むことができ、定着サブシステムにより、光熱学的トナー上に形成されたトナー画像202が溶解/固定される。図示する通り、画像受取基材116を定着サブシステム319に通過させる前に、光源(複数可)360を用いて画像受取基材116の上のトナー画像202を予備処理することができる。この予備処理では、少なくとも部分的にトナー画像202を溶解させて、続く定着サブシステム319による定着を容易にすることができる。定着サブシステム319は、当業者には周知の構成の定着部320及びバックアップ部又は圧力部321を含むことができる。定着部320及び圧力部321は、それぞれロール部(
図3A)、ベルト部、及び当技術分野において周知の全ての実行可能なそれらの組合せでよい。定着部320及び圧力部321は、共同してニップ即ち接触アークを形成することができ、予備加熱されたトナー画像304をその上に載せた画像受取基材116がその中を通過することができる。次いで、トナー画像308を画像受取基材116上に固定することができる。
【0036】
光源(複数可)360による予備処理により、定着サブシステムを用いるトナー画像の溶解/固定に必要な温度及び圧力を、従来の定着サブシステムと比較して、著しく抑えることができる。例えば、光源(複数可)360を用いない従来の定着工程は、約60℃(140
oF)〜約300℃(572
oF)の範囲の温度で実行され得る。それと比較して、開示された定着サブシステム319による定着工程は、約110
oF〜約450
oFまで、約120
oF〜約400
oF、又は約130
oF〜約300
oFの範囲の温度で実行することができる。随意的に、定着工程の間にバックアップ部又は圧力部321により圧力をかけることができる。例えば、従来の定着工程は、約50Psi〜約150Psiまでの範囲の圧力で実行され得る。本明細で開示された定着サブシステム319による、定着工程は、約20Psi〜約130Psi、約30Psi〜約120Psi、又は約40〜約110Psiの範囲の圧力で実行することができる。定着工程の後、溶解されたトナー画像は、画像受取基材116の上に308は完全に形成され得る。
【0037】
実施形態では、光源(複数可)360は、
図2A〜2Bに示された、トナー画像予備加熱を行う光源(複数可)260よりも出力及び/又は輝度は低くてよい。例えば、光源(複数可)360は約0.01W/cm
2〜約10W/cm
2、約0.05W/cm
2〜約5W/cm
2、又は約0.1W/cm
2〜約1W/cm
2の範囲の低い出力を有することができる。