特許第5965324号(P5965324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965324
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】建物の断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20160721BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   E04B1/76 500C
   E04B1/76 500G
   E04B1/00 501Q
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-925(P2013-925)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-133983(P2014-133983A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】亀山 太一
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246622(JP,A)
【文献】 実開昭57−111903(JP,U)
【文献】 特開2001−140372(JP,A)
【文献】 特開2004−143882(JP,A)
【文献】 特開平11−13206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E04B 1/94
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブとそのウェブを挟んで両側に設けられる一対のフランジとを有する形鋼からなり、前記ウェブと前記各フランジとにより囲まれた溝部を屋外側に向けた状態で建物外周部に沿って設けられた外周梁と、
前記外周梁の屋外側に連結され、当該外周梁と交差する方向に延びる交差梁と、
発泡系断熱材からなり、前記外周梁の屋外側において当該外周梁の上下高さ全域を覆うように当該外周梁に沿って延びるように設けられ、かつ前記交差梁によって分断された外周梁断熱材と、を備え、
前記外周梁における前記交差梁との連結部位には、前記溝部に梁内断熱材が配設されていることを特徴とする建物の断熱構造。
【請求項2】
前記梁内断熱材は、前記溝部において、その一部が前記外周梁断熱材と前記ウェブとの間に入り込んだ状態で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の断熱構造。
【請求項3】
前記交差梁は、ウェブとそのウェブを挟んで両側に設けられる一対のフランジとを有する形鋼からなり、前記ウェブと前記各フランジとにより囲まれた溝部を側方に向けた状態で設けられており、
前記梁内断熱材は、前記外周梁の前記連結部位における当該外周梁の溝部と前記交差梁の溝部とに跨がって配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の断熱構造。
【請求項4】
前記梁内断熱材は、前記外周梁の前記連結部位においてその溝部に配設された第1断熱部と、前記第1断熱部から当該溝部に沿って延び前記外周梁断熱材と前記ウェブとの間に入り込んだ第2断熱部と、前記第1断熱部から屋外側に延び前記交差梁の前記溝部に入り込んだ第3断熱部とを有することでL字状をなしていることを特徴とする請求項3に記載の建物の断熱構造。
【請求項5】
前記交差梁は、前記ウェブを挟んだ両側にそれぞれ側方に向けて開放された前記溝部を有するH形鋼よりなり、
前記梁内断熱材は、前記交差梁のそれら各溝部に対してそれぞれ設けられており、
それら各梁内断熱材がいずれも前記外周梁の前記連結部位における当該外周梁の溝部と前記交差梁の溝部とに跨がって配設されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の建物の断熱構造。
【請求項6】
前記梁内断熱材は、繊維系断熱材により形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の断熱構造。
【請求項7】
前記外周梁が建物外周部に沿って横並びで複数設けられており、
前記交差梁は、隣り合う前記外周梁の境界部付近でそれら各外周梁のうち少なくともいずれかと連結されており、
前記梁内断熱材は、それら各外周梁の前記溝部に跨がって配設されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物の断熱構造。
【請求項8】
建物本体と、その建物本体から屋外側に張り出して設けられた張出部とを備える建物に適用され、
前記外周梁は、前記建物本体の外周部に沿って設けられており、
前記張出部は、前記外周梁に連結された前記交差梁としての支持梁を複数備え、
前記外周梁断熱材は、それら各支持梁によってそれぞれ分断されており、
前記梁内断熱材は、前記外周梁における前記各支持梁との連結部位ごとにそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の建物の断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、建物外周部に沿って外周梁が設けられている。外周梁は形鋼を用いて構成されることが多いが、その中でも特に断面効率に優れたH形鋼がよく用いられる(例えば特許文献1参照)。外周梁がH形鋼からなる場合、外周梁はそのウェブを上下に向けた状態で、換言するとウェブを挟んだ両側の溝部をそれぞれ屋内側及び屋外側に向けた状態で建物外周部に配設される。
【0003】
ところで、外周梁は建物外周部に配置されることから熱橋となり易い。そこで、外周梁の屋外側に当該外周梁に沿って断熱材を設けることで、外周梁が熱橋となるのを抑制するようにした断熱構造が知られている。この種の断熱構造では一般に断熱材として、断熱性能に優れた発泡系断熱材(硬質系断熱材)よりなる板状の断熱材が用いられる。ここで、H形鋼からなる外周梁にかかる断熱材を屋外側から設ける場合、断熱材を外周梁において屋外側の溝部の開口を塞ぐようにして上下の各フランジに跨がって設けることが考えられる。この場合、H形鋼からなる外周梁において上下各フランジを含む上下高さ全域を屋外側から断熱材で覆うことができ、外周梁が熱橋となるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−127295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、住宅等の建物では、建物本体から屋外側に張り出すようにしてバルコニーが設けられる場合がある。かかるキャンチ(片持ち)式のバルコニーでは、バルコニー床の下方に当該床を下方から支持する支持梁が設けられる。かかる支持梁は、外周梁に連結され当該外周梁から屋外側に延びるように設けられる。
【0006】
ここでこのような構成において、外周梁の屋外側に当該外周梁に沿って断熱材を設ける場合、外周梁の屋外側に支持梁が連結された連結部位では断熱材を配設することができない。そのため、かかる構成では、断熱材を当該連結部位で分断して配置する必要がある。しかしながら、その場合当該連結部位で断熱欠損が生じてしまうこととなるため、当該連結部位で外周梁が熱橋となるおそれがあり、断熱性能の低下が懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外周梁が熱橋となるのを抑制することで、断熱性能の低下を抑制することができる建物の断熱構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の断熱構造は、ウェブとそのウェブを挟んで両側に設けられる一対のフランジとを有する形鋼からなり、前記ウェブと前記各フランジとにより囲まれた溝部を屋外側に向けた状態で建物外周部に沿って設けられた外周梁と、前記外周梁の屋外側に連結され、当該外周梁と交差する方向に延びる交差梁と、発泡系断熱材からなり、前記外周梁の屋外側において当該外周梁の上下高さ全域を覆うように当該外周梁に沿って延びるように設けられ、かつ前記交差梁によって分断された外周梁断熱材と、を備え、前記外周梁における前記交差梁との連結部位には、前記溝部に梁内断熱材が配設されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、外周梁の屋外側に当該外周梁に沿って設けられた外周梁断熱材が、外周梁の屋外側に連結された交差梁によって分断されているものの、外周梁における当該交差梁との連結部位には、その溝部に梁内断熱材が配設されているため、当該連結部位において外周梁が熱橋となることが抑制されている。これにより、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0010】
第2の発明の建物の断熱構造は、第1の発明において、前記梁内断熱材は、前記溝部において、その一部が前記外周梁断熱材と前記ウェブとの間に入り込んだ状態で設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、外周梁の溝部において梁内断熱材の一部が外周梁断熱材と外周梁のウェブとの間に入り込んでいる。この場合、梁内断熱材と外周梁断熱材とを外周梁の長手方向に連続させて設けることができるため、断熱性能の低下を抑制する効果を高めることができる。
【0012】
ここで、梁内断熱材と外周梁断熱材とを互いに接触させた状態で配設することが好ましい。そうすれば、梁内断熱材と外周梁断熱材とで連続した断熱ラインを形成することができるため、断熱性能の低下を抑制する効果をより一層高めることができる。
【0013】
第3の発明の建物の断熱構造は、第1又は第2の発明において、前記交差梁は、ウェブとそのウェブを挟んで両側に設けられる一対のフランジとを有する形鋼からなり、前記ウェブと前記各フランジとにより囲まれた溝部を側方に向けた状態で設けられており、前記梁内断熱材は、前記外周梁の前記連結部位における当該外周梁の溝部と前記交差梁の溝部とに跨がって配設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、梁内断熱材が外周梁の連結部位における当該外周梁の溝部と交差梁の溝部とに跨がって配設されているため、梁内断熱材の屋内外方向の長さ(換言すると梁内断熱材の厚み)を大きくすることができる。これにより、断熱性能の低下をより一層抑制することができる。
【0015】
第4の発明の建物の断熱構造は、第3の発明において、前記梁内断熱材は、前記外周梁の前記連結部位においてその溝部に配設された第1断熱部と、前記第1断熱部から当該溝部に沿って延び前記外周梁断熱材と前記ウェブとの間に入り込んだ第2断熱部と、前記第1断熱部から屋外側に延び前記交差梁の前記溝部に入り込んだ第3断熱部とを有することでL字状をなしていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、梁内断熱材がL字状をなしており、その一部(第2断熱部)が外周梁の溝部において外周梁断熱材と外周梁のウェブとの間に入り込んでおり、またその一部(第3断熱部)が交差梁の溝部に入り込んでいる。この場合、上記第2の発明の効果と、上記第3の発明の効果とを一挙に得ることができ、断熱性能の低下を大いに抑制することができる。
【0017】
第5の発明の建物の断熱構造は、第3又は第4の発明において、前記交差梁は、前記ウェブを挟んだ両側にそれぞれ側方に向けて開放された前記溝部を有するH形鋼よりなり、前記梁内断熱材は、前記交差梁のそれら各溝部に対してそれぞれ設けられており、それら各梁内断熱材がいずれも前記外周梁の前記連結部位における当該外周梁の溝部と前記交差梁の溝部とに跨がって配設されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、交差梁がウェブを挟んだ両側にそれぞれ溝部を有するH形鋼からなる構成において、それら各溝部に対してそれぞれ梁内断熱材が設けられ、それら各梁内断熱材がいずれも外周梁の溝部と交差梁の溝部とに跨がるように配設されている。これにより、交差梁がH形鋼からなる場合でも、上記第3の発明の効果を好適に得ることができる。
【0019】
第6の発明の建物の断熱構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記梁内断熱材は、繊維系断熱材により形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、梁内断熱材が柔軟性を有する繊維系断熱材により形成されているため、外周梁の溝部に梁内断熱材を充填させた状態で配設させ易い。そのため、梁内断熱材を溝部に充填させて断熱性能の向上を図る上で都合がよい。
【0021】
また、本発明を上記第5の発明に適用すれば、梁内断熱材を屈曲させる等して簡単にL字状とすることができるとともに、梁内断熱材を外周梁の溝部と交差梁の溝部との双方にそれぞれ充填させ易くすることができる。
【0022】
第7の発明の建物の断熱構造は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記外周梁が建物外周部に沿って横並びで複数設けられており、前記交差梁は、隣り合う前記外周梁の境界部付近でそれら各外周梁のうち少なくともいずれかと連結されており、前記梁内断熱材は、それら各外周梁の前記溝部に跨がって配設されていることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、隣り合う各外周梁の溝部に跨がって梁内断熱材が設けられているため、それら各外周梁の間に生じる隙間を梁内断熱材によって屋外側から塞ぐことができる。これにより、かかる隙間を通じた空気の出入り、ひいてはその空気の出入りに伴う熱の出入りを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0024】
第8の発明の建物の断熱構造は、第1乃至第7のいずれかの発明において、建物本体と、その建物本体から屋外側に張り出して設けられた張出部とを備える建物に適用され、前記外周梁は、前記建物本体の外周部に沿って設けられており、前記張出部は、前記外周梁に連結された前記交差梁としての支持梁を複数備え、前記外周梁断熱材は、それら各支持梁によってそれぞれ分断されており、前記梁内断熱材は、前記外周梁における前記各支持梁との連結部位ごとにそれぞれ配設されていることを特徴とする。
【0025】
建物本体から屋外側に張り出して張出部が設けられている建物では、張出部が建物本体の外周梁の屋外側に連結された複数の支持梁によって支持されている場合がある。かかる構成では、外周梁断熱材がそれら複数の支持梁によって分断されてしまうことになるため、断熱性能の低下を招き易い。この点本発明によれば、外周梁における各支持梁との連結部位ごとにそれぞれ梁内断熱材が設けられているため、かかる構成にあっても断熱性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】建物全体を示す概略斜視図。
図2】バルコニーの床部周辺の構成を示す断面図。
図3】バルコニーを示す平面図。
図4図3の領域C1における外周梁とバルコニー床梁との連結部分を示しており、(a)が当該連結部分の構成を示す分解斜視図、(b)が平面図である。
図5図3の領域C2における外周梁とバルコニー床梁との連結部分を示しており、(a)が当該連結部分の構成を示す分解斜視図、(b)が平面図である。
図6図3の領域C1における外周梁の断熱構造を示しており、(a)が同構造を示す斜視図、(b)が平面図である。
図7図3の領域C2における外周梁の断熱構造を示しており、(a)が同構造を示す斜視図、(b)が平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物全体を示す概略斜視図である。
【0028】
図1に示すように、建物10は、基礎11上に配設された建物本体12と、建物本体12の上方に配設された屋根13とを備える。建物本体12は、一階部分15と二階部分16とを有してなる二階建てとなっている。
【0029】
建物本体12の二階部分16には、建物本体12から屋外側に張り出すようにしてキャンチバルコニー20(以下、バルコニー20という)が設けられている。バルコニー20は、建物本体12の一側面部においてその幅方向の端部(建物本体12の出隅部)から中間部にかけて設けられている。なおここで、バルコニー20が張出部に相当する。
【0030】
次に、バルコニー20及びその周辺の構成について図2及び図3に基づいて説明する。図2はバルコニー20の床部周辺の構成を示す断面図であり、図3はバルコニー20を示す平面図である。
【0031】
図2に示すように、建物本体12の外周部において、その一階部分15には、一階居室21を屋外との間で仕切る外壁部24が設けられている。外壁部24において屋外側には外壁パネル25が設けられ、屋内側には内壁面材26が設けられている。外壁パネル25は、外壁面材27とその裏面側に設けられた外壁フレーム28とを有している。外壁パネル25と内壁面材26との間にはグラスウール29が設けられ、その上方にはロックウール33が設けられている。なお、図2中の符号41は、一階居室21の天井面材である。
【0032】
建物本体12の外周部において、その二階部分16には、二階居室22をバルコニー20との間で仕切る外壁部34が設けられている。外壁部34において屋外側には外壁パネル35が設けられ、屋内側には内壁面材36が設けられている。外壁パネル35は、バルコニー20に面して設けられた外壁面材37と、その裏面側に設けられた外壁フレーム38とを有している。外壁パネル35と内壁面材36との間にはグラスウール39が設けられ、外壁面材37の下方には、その下端部に沿って防水下地材46が設けられている。
【0033】
外壁部34の下方には二階居室22の床部が設けられている。床部は、後述する外周梁30により支持された2枚の床下地材43,44と、その床下地材43,44上に敷設された床仕上げ材(図示略)とを備える。床下地材43はALC床からなり、床下地材44はパーティクルボードからなる。床下地材44は床下地材43よりも屋外側に延出しており、その延出した部分の下方にはロックウール45が設けられている。ロックウール45は、グラスウール39と上下に並んで配置され、また一階部分15のロックウール33及びグラスウール29とも上下に並んで配置されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、建物本体12の外周部において、一階部分15と二階部分16との間の階間部分17には当該外周部に沿って延びる外周梁30が設けられている。外周梁30は、建物本体12の外周部に沿って横並びに複数設けられている。外周梁30は、H形鋼よりなり、上下方向に延びるウェブ30aと、ウェブ30aの上下両端部に設けられた一対のフランジ30b,30cとを有している。外周梁30には、ウェブ30aと各フランジ30b,30cとにより囲まれた溝部31がウェブ30aを挟んだ両側にそれぞれ形成されている。外周梁30は、それら各溝部31をそれぞれ屋外側及び屋内側に向けて配設されている。なお、以下においては説明の便宜上、屋外側の溝部31の符号にaを付し、屋内側の溝部31の符号にbを付す。
【0035】
続いて、バルコニー20について説明する。
【0036】
バルコニー20は、バルコニー床部51と、バルコニー床部51の周縁に沿って立設されたバルコニー腰壁部52とを備える。バルコニー床部51は、外周梁30から屋外側に向けて延びる複数のバルコニー床梁54と、それら各バルコニー床梁54の屋外側の端部同士を連結するバルコニー連結梁55とを備える。バルコニー床梁54とバルコニー連結梁55とはいずれもH形鋼よりなり、図示しない連結金具等を介して互いに連結されている。なおここで、バルコニー床梁54が支持梁及び交差梁に相当する。
【0037】
バルコニー床梁54は、外周梁30に対して直交する向きで設けられ、その一端部が外周梁30に連結され、その他端部がバルコニー連結梁55に連結されている。バルコニー床梁54は、上下方向に延びるウェブ54aと、ウェブ54aの上下両端部に設けられた一対のフランジ54b,54cとを有している。バルコニー床梁54では、ウェブ54aと各フランジ54bとにより囲まれた溝部56がウェブ54aを挟んだ両側にそれぞれ形成されており、バルコニー床梁54はそれら各溝部56をそれぞれ側方に向けた状態で設置されている(図4も参照)。なお本実施形態では、バルコニー床梁54と外周梁30とがいずれも同じ断面を有するH形鋼により形成されている。
【0038】
バルコニー床梁54は、外周梁30の長手方向(換言するとバルコニー20の横幅方向)において所定間隔で複数(具体的には3つ)設けられている。具体的には、バルコニー床梁54は、バルコニー20における横幅方向の両端部と中央部とにそれぞれ配置されている。以下の説明では、各バルコニー床梁54について図3における左側のものから右側のものにかけて順に、その符号にA、B、Cを付す。つまり、各バルコニー床梁54A〜54Cのうち、バルコニー床梁54A,54Bは建物本体12の直線部(非出隅部)から屋外側に延びており、バルコニー床梁54Cは建物本体12の出隅部から屋外側に延びている。
【0039】
バルコニー床部51では、各バルコニー床梁54上とバルコニー連結梁55上とに跨がって床下地材58が設けられており、その床下地材58上には床断熱材59が敷設されている。床下地材58はALC床からなり、床断熱材59は発砲ポリスチレン樹脂からなる。床断熱材59上には図示しない防水板が敷設され、その防水板によりバルコニー床部51の床面が形成されている。なお、防水板の一部は防水下地材46の屋外側面に沿って立ち上げられている。
【0040】
バルコニー腰壁部52は、壁幅方向に所定間隔で立設された複数の腰壁支柱61と、それら腰壁支柱61を挟んで両側に設けられた一対の壁面材62,63とを備える。腰壁支柱61は図示しない連結金具を介してバルコニー連結梁55に連結されている。
【0041】
各バルコニー床梁54及びバルコニー連結梁55の下方には軒天板65が設けられている。軒天板65は、それらの梁54,55に下地材66を介して支持されている。また、バルコニー腰壁部52の下端部には、軒天板65とバルコニー腰壁部52の壁面材62とを繋ぐ繋ぎ材67が設けられている。
【0042】
次に、外周梁30におけるバルコニー床梁54との連結部分の構成について説明する。ここでは、外周梁30における各バルコニー床梁54A〜54との連結部分のうち、バルコニー床梁54Aとの連結部分(図3の領域C1内)と、バルコニー床梁54Cとの連結部分(図3の領域C2内)とについて説明する。図4は、外周梁30におけるバルコニー床梁54Aとの連結部分を示しており、(a)が当該連結部分の構成を示す分解斜視図、(b)が平面図である。図5は、外周梁30におけるバルコニー床梁54Cとの連結部分を示しており、(a)が当該連結部分の構成を示す分解斜視図、(b)が平面図である。
【0043】
図4(a)及び(b)に示すように、外周梁30におけるバルコニー床梁54Aとの連結部分では、建物外周方向に隣り合う外周梁30同士が連結金具71を介して互いに連結されている。これら各外周梁30のうち一方の外周梁30(以下、外周梁30Aという)には、その溝部31aに平板状の固定プレート72が配設されている。固定プレート72は、外周梁30Aにおける他方の外周梁30(以下、外周梁30Bという)との境界付近にて各フランジ30b,30c間に跨がって縦向きに設けられ、それら各フランジ30b,30cに対して溶接により固定されている。
【0044】
連結金具71は鋼板によりL字状に形成されており、互いに直角をなす一対の板部71a,71bを有している。連結金具71において、一方の板部71aは外周梁30Bのウェブ30aの屋外側面に溶接により固定され、他方の板部71bは固定プレート72の外周梁30B側の板面にボルト74により固定されている。これにより、隣り合う外周梁30A,30B同士が連結金具71(及び固定プレート72)を介して連結されている。
【0045】
板部71bの固定に関して詳しくは、当該板部71bには複数の挿通孔75が形成されており、固定プレート72にはそれら各挿通孔75に対応する位置に複数の挿通孔76が形成されている。そして、ボルト74が板部71bの挿通孔75を通じて固定プレート72の挿通孔76にねじ込まれることで、板部71bが固定プレート72に固定されている。なお、図4(a)では、挿通孔75,76が上下4箇所に設けられ、そのうち2箇所にのみボルト74が挿通されている。
【0046】
外周梁30Aの屋外側には、バルコニー床梁54Aが連結金具73を介して連結されている。本実施形態では、連結金具73が上記の連結金具71と同じ構成を有しており、部材の共通化が図られている。図4(a)では連結金具73の挿通孔部に連結金具71の挿通孔部と同じ符号75を付している。
【0047】
バルコニー床梁54Aは、外周梁30Aの屋外側において外周梁30B側の端部に配置されており、詳しくは外周梁30Aの長手方向においてそのウェブ54aを外周梁30Aの固定プレート72と位置合わせした状態で配置されている。連結金具73は、固定プレート72を挟んで連結金具71とは反対側に設けられており、その板部73aがバルコニー床梁54Aのウェブ54aに溶接により固定され、その板部73bが外周梁30Aのウェブ30aの屋外側面にボルト78により固定されている。これにより、バルコニー床梁54Aと外周梁30Aとが連結金具73を介して連結されている。なお、板部73bは、その挿通孔75を通じてボルト78がウェブ30aの挿通孔(図示略)にねじ込まれることにより固定されている。また、板部73aにはボルト74が挿通される逃がし孔79が形成されている。
【0048】
続いて、外周梁30におけるバルコニー床梁54Cとの連結構成について説明する。図5(a)及び(b)に示すように、建物本体12の出隅部では、隣り合う外周梁30同士が互いに直角をなして配置されており(以下、外周梁30Bと直角をなす外周梁を外周梁30Cという)、それら外周梁30B,30C同士が連結金具85を介して連結されている。連結金具85は、上記の連結金具71(73)と同一の構成を有しており、その板部85aが外周梁30Cのウェブ30aの屋外側面に溶接固定され、その板部85bが外周梁30Bのウェブ30aの屋内側面にボルト87固定されている。
【0049】
外周梁30Bの屋外側(換言すると外周梁30Bを挟んで外周梁30Cとは反対側)には、バルコニー床梁54Cが連結金具86を介して連結されている。連結金具86は、上記の連結金具71(73)と同一の構成を有しており、その板部86aがバルコニー床梁54Cのウェブ54aのバルコニー内側面に溶接固定され、その板部86bが外周梁30Bのウェブ30aの屋外側面にボルト88固定されている。
【0050】
なお、隣り合う外周梁30同士の連結及び、バルコニー床梁54と外周梁30との連結は必ずしも上記のような連結金具71,73,85,86を用いて行う必要はなく、連結金具を介さずにボルト等を用いて直接連結する等、その連結構成は任意である。
【0051】
ところで、本実施形態の建物10では、外周梁30が熱橋となるのを抑制すべく、外周梁30の屋外側に外周梁断熱材70が設けられている。以下、かかる外周梁断熱材70を有してなる外周梁30の断熱構造について図2に加え図6及び図7を用いながら説明する。なお、図6は、外周梁30Aにおけるバルコニー床梁54Aとの連結部分周辺(すなわち図3の領域C1)の断熱構造を示しており、(a)が同構造を示す斜視図であり、(b)が平面図である。また、図7は、外周梁30Bにおけるバルコニー床梁54Cとの連結部分周辺(すなわち図3の領域C2)の断熱構造を示しており、(a)が同構造を示す斜視図であり、(b)が平面図である。
【0052】
図2図6及び図7に示すように、外周梁断熱材70は、発泡系断熱材(硬質系断熱材)により長尺状でかつ板状に形成されており、例えばウレタンフォーム樹脂により形成されている。外周梁断熱材70は、外周梁30の屋外側において当該外周梁30に沿って延びるように設けられている。外周梁断熱材70は、外周梁30の溝部31aの開口を塞ぐようにして上下の各フランジ30b,30cに跨がって設けられており、これにより各フランジ30b,30cを含む外周梁30の上下高さ全域が外周梁断熱材70により屋外側から覆われている。なお、建物本体12の出隅部では、図7に示すように、外周梁30Cを屋外側から覆う外周梁断熱材70が外周梁30Bの長手方向の端部まで延出し、その延出部分により当該端部が屋外側から覆われている。
【0053】
また、図示は省略するが、外周梁断熱材70は、外周梁30の上面(詳しくはフランジ30bの上面)及び下面(詳しくはフランジ30cの下面)にそれぞれ設けられた上下一対の挟み込み部材により挟み込まれることで固定されている。この場合、挟み込み部材は、例えば平板状のプレートからなり、外周梁30の上面及び下面にそれぞれ外周梁断熱材70の上端部及び下端部にはみ出した状態で取り付けられる。なお、外周梁断熱材70の固定構成は必ずしもこれに限ることなく、接着用テープを用いて固定する等その固定構成は任意である。
【0054】
ここで、上述したように、本実施形態の建物10では、外周梁30の屋外側にバルコニー床梁54が連結されているため、外周梁30におけるバルコニー床梁54との連結部位(以下、連結部位83という)では外周梁断熱材70を配設することができない。そのため、図6及び図7に示すように、外周梁断熱材70を当該連結部位83において分断して配置する必要がある。しかしながら、この場合、当該連結部位83で断熱欠損が生じることとなるため、外周梁30が当該連結部位83において熱橋となるおそれがあり、断熱性能の低下が懸念される。そこで本実施形態では、この点に鑑みて、外周梁30の当該連結部位83においてその溝部31aに梁内断熱材を設け、これにより当該連結部位83で外周梁30が熱橋となるのを抑制するようにしている。以下、かかる本実施形態の特徴的構成について詳しく説明する。
【0055】
図6及び図7に示すように、外周梁断熱材70は、各バルコニー床梁54A〜54Cによってそれぞれ分断されている。分断された各外周梁断熱材70は、バルコニー床梁54を挟んだ両側においてそれぞれ当該バルコニー床梁54(詳しくは各フランジ54b,54c)に当接又は近接させて配置されている。
【0056】
梁内断熱材は、外周梁30における各バルコニー床梁54A〜54Cとの連結部位83ごとにそれぞれ設けられている。図6に示すように、外周梁30Aにおけるバルコニー床梁54Aとの連結部位83では、当該外周梁30Aの溝部31aに一対の梁内断熱材80,81が設けられている。これら各梁内断熱材80,81は、固定プレート72(換言するとバルコニー床梁54のウェブ54a)を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。
【0057】
梁内断熱材80,81は、繊維系断熱材としてのグラスウールからなり、(自然状態では)所定の厚みを有する板状に形成されている。梁内断熱材80,81は、L字状に屈曲された状態で外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56とに跨がって配設されている。具体的には、各梁内断熱材80,81は、バルコニー床梁54の各溝部56a,56bに対してそれぞれ設けられており、梁内断熱材80が外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56aとに跨がって配設され、梁内断熱材81が外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56bとに跨がって配設されている。
【0058】
より詳しくは、各梁内断熱材80,81は、外周梁30の連結部位83においてその溝部31aに配設された第1断熱部80a,81aと、その第1断熱部80a,81aから外周梁30(溝部31a)の長手方向に互いに逆側に延びて外周梁断熱材70とウェブ30aとの間に入り込んだ第2断熱部80b,81bと、第1断熱部80a,81aから屋外側に延びてバルコニー床梁54の溝部56a,56bに入り込んだ第3断熱部80c,81cとを有している。
【0059】
第1断熱部80a,81a及び第2断熱部80b,81bは、外周梁30の溝部31aにおいて上下方向に各フランジ30b,30cに跨がるように設けられ、かつ、屋内外方向にウェブ30aと外周梁断熱材70とに跨がるように設けられている。具体的には、これら各断熱部80a(81a),80b(81b)は、各フランジ30b,30cの間で上下に圧縮され、かつ、ウェブ30aと外周梁断熱材70との間で屋内外方向に圧縮された状態で設けられている。
【0060】
第3断熱部80c,81cは、バルコニー床梁54の溝部56a,56bにおいて上下方向に各フランジ54b,54cに跨がるように設けられ、具体的には各フランジ54b,54c間で上下に圧縮された状態で設けられている。また、第3断熱部80c,81cは、その屋内外方向の長さが第1断熱部80aよりも大きくされており、より詳しくは第1断熱部80a,81aの屋内外方向の長さの2倍よりも大きくされている。これにより、外周梁30の連結部位83において梁内断熱材80,81の屋内外方向の長さ(換言すると厚み)が十分に確保されている。
【0061】
また、梁内断熱材81(詳しくは第1断熱部81a及び第2断熱部81b)は隣り合う各外周梁30A,30Bの溝部31aに跨がるように配設されている。これにより、梁内断熱材81によって各外周梁30A,30Bの間の隙間が屋外側から覆われた状態となっている。
【0062】
図7に示すように、外周梁30Bにおけるバルコニー床梁54Cとの連結部位83では、当該外周梁30Bの溝部31aに一対の梁内断熱材90,91が設けられている。これら各梁内断熱材90,91は、外周梁30Bの長手方向においてバルコニー床梁54Cのウェブ54aを挟んだ両側にそれぞれ設けられている。梁内断熱材90,91は、繊維系断熱材としてのグラスウールからなり、(自然状態では)所定の厚みを有する板状に形成されている。
【0063】
各梁内断熱材90,91のうち梁内断熱材90は、上述した梁内断熱材80,81とその構成が基本的に同じであり、また外周梁30の溝部31a及びバルコニー床梁54の溝部56aへの配設構成も基本的に同じである。そのため、ここではその説明を割愛する。つまり、梁内断熱材90は、外周梁30Bの溝部31aとバルコニー床梁54Cの溝部56aとに跨がるようにL字状をなして配設されており、各断熱部90a〜90cをそれぞれ有している。
【0064】
これに対して梁内断熱材91は、外周梁30Bの溝部31aとバルコニー床梁54Cの溝部56bとに跨がって設けられており、これにより屋内外方向(換言するとバルコニー床梁54Cの長手方向)に延びる直線状をなしている。つまり、梁内断熱材91は、外周梁30の溝部31aに配設された第1断熱部91aと、バルコニー床梁54Cの溝部56bに配設された第2断熱部91bとを有している。
【0065】
梁内断熱材91の第1断熱部91aは、外周梁30Bの溝部31aにおいて各フランジ30b,30c間で上下に圧縮された状態で設けられ、第2断熱部91bはバルコニー床梁54Cの溝部56bにおいて各フランジ54b,54c間で上下に圧縮された状態で設けられている。また、溝部31aでは第1断熱部91aが梁内断熱材90の第1断熱部90aと接触した状態で設けられており、これにより外周梁30Bの連結部位83ではこれら各梁内断熱材90,91(の第1断熱部90a,91a)により連続した断熱ラインが形成されている。
【0066】
なお、図示は省略するが、外周梁30Bにおけるバルコニー床梁54Bとの連結部位83でも、上述したバルコニー床梁54Aとの連結部位83と同様の配置構成で梁内断熱材80,81が配設されている。
【0067】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0068】
外周梁30におけるバルコニー床梁54との連結部位83では、その溝部31aに梁内断熱材80,81,90,91を配設した。これにより、外周梁30の連結部位83ではバルコニー床梁54により外周梁断熱材70が分断されているものの、外周梁30の溝部31aに梁内断熱材80,81,90,91が配設されているため、当該連結部位83において外周梁30が熱橋となるのを抑制することができる。これにより、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0069】
梁内断熱材80,81,90については、外周梁30の溝部31aにおいて、その一部を外周梁断熱材70と外周梁30のウェブ30aとの間に入り込ませた。これにより、梁内断熱材80,81,90と外周梁断熱材70とを外周梁30の長手方向に連続させて設けることができるため、断熱性能の低下を抑制する効果を高めることができる。
【0070】
また、梁内断熱材80,81,90において外周梁断熱材70とウェブ30aとの間に入り込ませた部分(第2断熱部80b,81b,90b)については外周梁断熱材70と接触させて設けた。これにより、梁内断熱材80,81,90と外周梁断熱材70とで連続した断熱ラインを形成することができ、その結果断熱性能の低下を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0071】
梁内断熱材80,81,90,91を外周梁30の連結部位83における当該外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56とに跨がって配設した。これにより、梁内断熱材80,81,90,91の屋内外方向の長さ(換言すると梁内断熱材80,81,90,91の厚み)を大きくすることができるため、断熱性能の低下をより一層抑制することができる。
【0072】
H形鋼よりなるバルコニー床梁54の各溝部56a,56bに対してそれぞれ梁内断熱材80,81(90,91)を設け、それら各梁内断熱材80,81(90,91)のそれぞれを外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56a(56b)とに跨がるように配設した。これにより、バルコニー床梁54がH形鋼からなる場合でも、梁内断熱材80,81,90,91の厚みを大きくすることで奏する上記の効果を得ることができる。
【0073】
具体的には、梁内断熱材80,81,90については、外周梁30の連結部位83においてその溝部31aに配設された第1断熱部80a,81a,90aと、第1断熱部80a,81a,90aから溝部31aに沿って延び外周梁断熱材70とウェブ30aとの間に入り込んだ第2断熱部80b,81b,90bと、第1断熱部80a,81a,90aから屋外側に延びバルコニー床梁54の溝部56に入り込んだ第3断熱部80c,81c,90cとを有してL字状に形成した。これにより、第2断熱部80b,81b,90bにより梁内断熱材80,81,90と外周梁断熱材70とを外周梁30の長手方向に連続させることができ、第3断熱部80c,81c,90cにより梁内断熱材80,81,90,91の屋内外方向の長さを大きくすることができるため、断熱性能の低下を大いに抑制することができる。
【0074】
梁内断熱材80,81,90を繊維系断熱材により形成したため、梁内断熱材80,81,90を屈曲させる等して簡単にL字状とすることができるとともに、梁内断熱材80,81,90を外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56との双方にそれぞれ充填させ易くすることができる。
【0075】
隣り合って設けられた各外周梁30A,30Bの溝部31aに跨がって梁内断熱材81を配設したため、それら各外周梁30A,30Bの間に生じる隙間を梁内断熱材81により屋外側から塞ぐことができる。これにより、かかる隙間を通じた空気の出入り、ひいてはその空気の出入りに伴う熱の出入りを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0076】
建物本体12から屋外側に張り出してバルコニー20が設けられる建物10では、バルコニー20が外周梁30の屋外側に連結された複数のバルコニー床梁54によって支持されている場合がある。このような構成では、外周梁断熱材70がそれら複数のバルコニー床梁54によって分断されてしまうことになるため、断熱性能の低下を招き易い。この点、上記の実施形態では、外周梁30における各バルコニー床梁54との連結部位83ごとにそれぞれ梁内断熱材80,81,90を設けたため、かかる構成にあっても断熱性能の低下を抑制することができる。
【0077】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0078】
(1)上記実施形態では、梁内断熱材80,81,90,91を外周梁30の溝部31aとバルコニー床梁54の溝部56とに跨がって配設したが、梁内断熱材を外周梁30の溝部31aにのみ配設してもよい。例えば、梁内断熱材を、外周梁30の連結部位83においてその溝部31aに配設された部分と、当該部分から溝部31aに沿って延び外周梁断熱材70と外周梁30のウェブ30aとの間に入り込んだ部分とを有して直線状に形成することが考えられる。この場合でも、梁内断熱材と外周梁断熱材70とを外周梁30の長手方向に連続させて設けることができるため、断熱性能の低下を抑制する効果を高めることができる。
【0079】
また、外周梁30の連結部位83にのみその溝部31aに梁内断熱材を配設するようにしてもよい。この場合にも、当該連結部位83において外周梁30が熱橋となるのを抑制することができ、断熱性能の低下を抑制することができる。また、このような構成であれば、バルコニー床梁54として、必ずしも溝部を有した形鋼を用いる必要はなく、例えば角形鋼等、溝部を有しない形鋼や、角材等を用いることもできる。
【0080】
(2)上記実施形態では、H形鋼よりなる外周梁30に対して本発明の断熱構造を適用したが、外周梁が溝形鋼やI形鋼等、溝部を有する他の形鋼よりなる場合でも本発明を適用することができる。例えば、外周梁がウェブと、ウェブの上下両端部からそれぞれ屋外側に延びる一対のフランジを有する溝形鋼からなる場合においても、外周梁におけるバルコニー床梁54との連結部位においてその溝部に梁内断熱材を配設すれば、外周梁の連結部位において外周梁が熱橋となるのを抑制することができる。
【0081】
(3)上記実施形態では、外周梁30Aの連結部位83においてその溝部31aが固定プレート72により外周梁30の長手方向に遮断されていたが、かかるプレート72が溝部31aに設けられていない構成であれば、梁内断熱材を溝部31aにおいてバルコニー床梁54により分断された両外周梁断熱材70に跨がるように配設してもよい。そうすれば、一の梁内断熱材を介して分断された両外周梁断熱材70を外周梁30の長手方向に連続させることができ、断熱性能の低下を抑制する効果を高めることができる。
【0082】
(4)梁内断熱材80,81,90,91をウレタンフォーム樹脂等の発泡系断熱材(硬質系断熱材)により形成してもよい。この場合、梁内断熱材80,81,90については樹脂成形によりL字状に形成し、梁内断熱材91について同じく樹脂成形により直線状に形成することが考えられる。一般に、発泡系断熱材はグラスウール等の繊維系断熱材と比べて断熱性能が高いため、断熱性能の向上を図ることができる。
【0083】
(5)外周梁断熱材70と梁内断熱材80,81,90,91とを予め製造工場において接着等により接合し一体化してもよい。例えば、外周梁断熱材70における長手方向の端部に対して梁内断熱材80,81,90,91を接合することが考えられる。そうすれば、施工現場において、外周梁断熱材70と梁内断熱材80,81,90,91とを外周梁30及びバルコニー床梁54に対して設置する際、それらの断熱材70、80(81,90,91)を一体で取り扱うことができるため、その作業がし易い。
【0084】
(6)建物本体12の二階部分16から屋外側に張り出すように庇部(張出部に相当)が設けられている構成において、その庇部が二階部分16の外周梁に連結された複数の支持梁により支持されている場合に、その外周梁に対して本発明の断熱構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…建物、12…建物本体、20…張出部としてのバルコニー、30…外周梁、30a…ウェブ、31b.31c…フランジ、31a…溝部、54…交差梁及び支持梁としてのバルコニー床梁、56a,56b…溝部、70…外周梁断熱材、80,81…梁内断熱材、90,91…梁内断熱材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7