特許第5965334号(P5965334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965334
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   B60R21/264
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-28578(P2013-28578)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156207(P2014-156207A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】花野 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】井本 勝大
(72)【発明者】
【氏名】山下 治彦
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/042010(WO,A1)
【文献】 特開2011−157025(JP,A)
【文献】 特開2005−238907(JP,A)
【文献】 特開2006−219125(JP,A)
【文献】 特開2009−001221(JP,A)
【文献】 特表2009−500223(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/140441(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に点火手段が取り付けられ、他端側にガス排出口を有するディフューザ部が取り付けられた筒状ハウジングを有しており、
前記筒状ハウジング内には、
前記筒状ハウジング内の前記点火手段が取り付けられた端部側において、第1貫通孔を有する第1多孔板部材により仕切られて形成された、第1ガス発生剤成形体が充填された第1燃焼室が配置され、
前記第1多孔板部材とは軸方向に間隔をおいて配置された第2貫通孔を有する第2多孔板部材により仕切られて形成された、第2ガス発生剤成形体が充填された第2燃焼室が配置されており、
前記点火手段が、円柱形状の着火部を含む点火器本体が点火器カラーを含む固定手段で固定されたもので、前記着火部が前記第1燃焼室内に突き出された状態で配置されているものであり、
前記第1多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍において周方向に複数の貫通孔を有しており、前記第1多孔板部材の第1貫通孔の総開口面積中の前記周縁部近傍における第1貫通孔の総開口面積の割合が95%以上であるものであり、
前記第1燃焼室の軸方向の両端面が、前記第1多孔板部材と、前記点火器の着火部および点火器カラーで形成されており、
前記着火部の外周面と前記外周面と半径方向に正対する前記筒状ハウジングの内壁面との間に前記点火器カラーを底面とする環状空間が形成されているものであり、
前記点火器カラーからの前記着火部の頂面の高さ(H)と、第1燃焼室内に充填されている第1ガス発生剤成形体の最小長さ(Lmin)が、Lmin<Hの関係を満たしており、
前記筒状ハウジングの軸Xと、前記点火器の着火部、第1多孔板部材および第2多孔板部材の中心線が一致するように配置されている、ガス発生器。
【請求項2】
H/Lminが2〜5の範囲である、請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
前記第1多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍においてのみ周方向に複数の第1貫通孔を有しているものである、請求項1または2記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第1多孔板部材が有している第1貫通孔の総開口面積(a1)と前記第2多孔板部材が有している第2貫通孔の総開口面積(a2)との比率(a2/a1)が0.9〜1.2の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項5】
さらに第2燃焼室内には、周壁部に連通孔を有する筒状部材が配置されており、
前記筒状部材が、前記筒状ハウジングの内周壁面と前記周壁部との間に間隙を形成するように配置されており、
前記筒状部材の第2多孔板部材側が前記筒状ハウジングの内周面に当接された第1開口端部を有し、反対側が前記ディフューザ部側にて支持された第2端部を有しているものである、請求項1〜4のいずれか1項記載のガス発生器。
【請求項6】
前記筒状部材が、第1開口端部側の開口部が拡径された拡径部を有し、第2端部側が底面の中心部に中央孔を有するものであり、
前記ディフューザ部側には、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に突起を有するガス迂回手段が、その開口部側がディフューザ部側になるように配置されており、
前記筒状部材の拡径部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、
前記筒状部材の中央孔が前記ガス迂回手段底面の突起に嵌合されている、請求項5記載のガス発生器。
【請求項7】
前記第1多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍においてのみ周方向に複数の第1貫通孔を有しているものであり、
前記第2多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍においてのみ周方向に複数の第2貫通孔を有しているものである、請求項5または6記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置など車輌の人員拘束装置に使用されるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグを展開させるためのガス発生器は、その取り付け場所の関係から細長いシリンダー形状のハウジングを使用する場合があり、その場合には一端側に点火器を取り付け、他端側にガス排出口を設ける構造となる。
このように点火器とガス排出口の位置を離すと、ガス排出口にエアバッグを取り付ける際に、点火器に接続されたリードワイヤが邪魔にならないため、車両への取り付けが容易になる利点がある。
しかし、一端側に点火器を有する構造では、ガス発生剤が一端側から他端側に向かって燃焼が進行する際に、着火しやすいところと、着火し難いところが生じる場合がある。
【0003】
特許文献1のガス発生器10は、細長いハウジング12の一端部に点火器20が配置され、その周りにガス発生剤30が充填されている。
点火器20が配置され、ガス発生剤30が充填されている室と、別のガス発生剤99が充填されている室21は、中心部分に連通孔19が形成されたスペーサー18で仕切られている。連通孔19はシール97で閉塞されている。
また点火器20は、着火部が燃焼室に突き出された状態で配置されていることから、エンドクロージャ22の近傍にポケット状の環状空間が形成され、そこにガス発生剤30がはまり込む状態となっている。
【0004】
点火器20の着火部は連通孔19に向かって配置されているため、作動により発生した燃焼生成物は、連通孔19から隣接する室21へ直線的に流れることになり、前記ポケット状の環状空間にはまり込んだガス発生剤は燃焼し難いことが考えられる。
そして、環状空間にあるガス発生剤30の燃焼が遅れたり、焼尽せずに残ったりした場合には、設計どおりの性能が得られないことになる。
【0005】
特許文献2の図1には、第1多孔板部材14と第2多孔板部材32を備えたガス発生器が示されている。
第1多孔板部材14と第2多孔板部材32は、多孔であることが記載されているが、孔の配置状態についての記載はない。
また、図1では、特許文献1と比べると、点火器16の着火部16aの突き出しの程度が小さいため、特許文献1のガス発生器10のようなポケット状の環状空間は実質的に形成されていない。このため、点火器16が配置された第1燃焼室20における着火遅れなどの課題が発生する可能性は小さいと考えられるが、着火部16aから発生する燃焼生成物が放出される方向以外の部分に配置されたガス発生剤は、着火しにくい状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,073,820号明細書
【特許文献2】特開2011−157025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、細長い形状のガス発生器で、点火器の周りにガス発生剤成形体が入り込むポケット状の環状空間が存在する構造であっても、全てのガス発生剤成形体を設計どおりに焼尽させることができるガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1〕
本発明は、課題の解決手段として、
一端側に点火手段が取り付けられ、他端側にガス排出口を有するディフューザ部が取り付けられた筒状ハウジングを有しており、
前記筒状ハウジング内には、
前記筒状ハウジング内の前記点火手段が取り付けられた端部側において、第1貫通孔を有する第1多孔板部材により仕切られて形成された、第1ガス発生剤成形体が充填された第1燃焼室が配置され、
前記第1多孔板部材とは軸方向に間隔をおいて配置された第2貫通孔を有する第2多孔板部材により仕切られて形成された、第2ガス発生剤成形体が充填された第2燃焼室が配置されており、
前記点火手段が、円柱形状の着火部を含む点火器本体が点火器カラーを含む固定手段で固定されたもので、前記着火部が前記第1燃焼室内に突き出された状態で配置されているものであり、
前記第1多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍において周方向に複数の貫通孔を有しており、前記第1多孔板部材の第1貫通孔の総開口面積中の前記周縁部近傍における第1貫通孔の総開口面積の割合が95%以上であるものであり、
前記第1燃焼室の軸方向の両端面が、前記第1多孔板部材と、前記点火器の着火部および点火器カラーで形成されており、
前記着火部の外周面と前記外周面と半径方向に正対する前記筒状ハウジングの内壁面との間に前記点火器カラーを底面とする環状空間が形成されているものであり、
前記点火器カラーからの前記着火部の頂面の高さ(H)と、第1燃焼室内に充填されている第1ガス発生剤成形体の最小長さ(Lmin)が、Lmin<Hの関係を満たしており、
前記筒状ハウジングの軸Xと、前記点火器の着火部、第1多孔板部材および第2多孔板部材の中心線が一致するように配置されている、ガス発生器を提供する。
【0009】
筒状ハウジング、第1多孔板部材および点火手段(点火器および点火器カラー)で囲まれて第1燃焼室が形成されている。
第1多孔板部材は、筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍において周方向に複数の第1貫通孔を有しているが、前記周縁部近傍を除いた部分にも第1貫通孔を設けることができる。第1貫通孔は、シールテープで閉塞されていてもよい。
このとき、第1多孔板部材の第1貫通孔の総開口面積中の周縁部近傍のみの貫通孔の総開口面積の割合は95%以上であり、98%以上が好ましく、100%であることがより好ましい。
なお、周縁部近傍の第1貫通孔の形成位置は、第1多孔板部材(円形)の中心点(筒状ハウジングの軸Xが通る点)から円周までを半径rとしたとき、周縁から各貫通孔の中心までの距離は0.2r以内(半径rの20%以内)が好ましく、0.15r以内(半径rの15%以内)がより好ましい。
【0010】
点火手段は、着火部を含む点火器本体が点火器カラーを含む固定手段で固定されたもので、前記着火部が第1燃焼室内に突き出された状態で配置されている。
このため、第1燃焼室内に突き出された着火部の外周面と筒状ハウジングの内壁面との間には、点火器カラーを底面とするポケット状の環状空間が形成されている。
そして、前記ポケット状の環状空間を含む第1燃焼室内には、第1ガス発生剤成形体が充填されている。
ガス発生器の製造工程において第1燃焼室内に第1ガス発生剤成形体を充填するときは、全ての第1ガス発生剤成形体を整列させて充填するようなことはせず、必要量の第1ガス発生剤成形体を燃焼室となる空間(第1燃焼室)内に流し込むような作業となる。
このため、例えば円柱形状のガス発生剤成形体の場合には、様々な向きになって流し込まれた状態になっており、隣接するガス発生剤成形体同士の間にも隙間が存在している。
その後、外部から振動を加える等で前記した隙間をなくすような作業をした後、固定部材(本発明では第1多孔板部材と点火手段)で軸方向両側から押しつけて、隙間がなくなるようにした状態で固定する。
ガス発生剤成形体がこのようにして充填されるため、充填後のガス発生剤成形体の充填状態は確認できないが、ガス発生剤成形体の中には、前記環状空間内において円柱形状の着火部の頂面の高さ(H)よりも下方(点火器カラー側)にのみ位置した状態で充填されたものがあることも考えられる。
すなわち、Lmin>Hであれば、ガス発生剤成形体は必ず前記環状空間から飛び出された状態で充填されることになるが、Lmin<Hの関係を満たしているときには、充填状態によっては、前記環状空間内において円柱形状の着火部の頂面の高さ(H)よりも下方にのみ位置した状態で充填される可能性がある。
ここでガス発生剤成形体の最小長さ(Lmin)は、例えば円柱の場合には直径であり、ディスク(円板)の場合には厚さである。
【0011】
点火器が作動して着火部から燃焼生成物が放出されるとき、直進乃至は放射状に放出される場合を含めて、着火部(着火部の頂面)よりも前方向に放出されることになる。
このとき、第1多孔板部材の中心部(軸Xと一致する部分)を含めた部分が大きく開口していると(またはシールテープが破れて大きく開口すると)、着火部からの燃焼生成物の大部分がそのまま第1燃焼室外部に放出されることなるため、第1燃焼室内のポケット状の環状空間内に充填されている第1ガス発生剤成形体の着火遅れや、焼尽残りが生じるおそれがある。
しかし、本願発明では、大部分の貫通孔が第1多孔板部材の周縁部近傍にあるため、着火部から放出された燃焼生成物の大部分は第1多孔板部材(第1貫通孔が少ないか、または形成されていない部分)に衝突して第1燃焼室内に拡散される(前記ポケット状の環状空間にも燃焼生成物が届く)ことになる。
このため、Lmin<H(例えばH/Lmin=2〜5)の関係を満たしているとき、前記環状空間内において円柱形状の着火部の頂面の高さ(H)よりも下方にのみ位置した状態で充填されたガス発生剤成形体が多数あるような場合であっても、第1燃焼室内のポケット状の環状空間内に充填されている全ての第1ガス発生剤成形体は燃焼し易く、着火遅れや焼尽残りが生じることがない。
【0012】
〔請求項4〕
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記第1多孔板部材が有している貫通孔の総開口面積(a1)と前記第2多孔板部材が有している貫通孔の総開口面積(a2)との比率(a2/a1)が0.9〜1.2の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス発生器を提供する。
【0013】
第1燃焼室内の第1ガス発生剤成形体が燃焼して生じた燃焼ガスは、第1多孔板部材と第2多孔板部材との間の空間(燃焼ガス移行空間)に流入した後、第2多孔板部材の貫通孔を通って、第2燃焼室内に流入する。
このとき、a2/a1が上記関係を満たしていると、第1多孔板部材の貫通孔から前記燃焼ガス移行空間、前記燃焼ガス移行空間から第2多孔板部材の貫通孔への燃焼ガスの移行がより速やかになされるので好ましい。
【0014】
〔請求項5〕
本発明は、課題の他の解決手段として、
さらに第2燃焼室内には、周壁部に連通孔を有する筒状部材が配置されており、
前記筒状部材が、前記筒状ハウジングの内周壁面と前記周壁部との間に間隙を形成するように配置されており、
前記筒状部材の第2多孔板部材側の内周面に当接された第1開口端部と、前記ディフューザ部側にて支持された第2端部を有しているものである、請求項1〜4のいずれか1項記載のガス発生器を提供する。
【0015】
筒状部材は、周壁部に連通孔を有している(好ましくは複数の連通孔を有している)もので、弾力性のある金属からなるものが好ましい。連通孔は、筒状部材の周壁部において、軸方向及び円周方向にそれぞれ等間隔で形成することができる。また、ディフューザ部側よりに形成することができ、この場合、ディフューザ部側の開口面積が大きくなるように、連通孔の個数や径を調整する。
【0016】
筒状部材は、筒状ハウジングの周壁部との間に間隙(筒状間隙)を形成するように配置されており、ハウジングの一端側(点火手段側)に向いて、ハウジングの内周面に当接された第1開口端部と、ディフューザ部側にて支持された第2端部を有している。
【0017】
筒状ハウジングの周壁部との間に間隙を形成するため筒状部材の外径(周壁部の外径)は、筒状ハウジングの内径よりも小さくなるように設定されている。
筒状部材は、周壁部に連通孔が形成され、この連通孔で筒状部材内部(第2燃焼室)と筒状間隙が連通されている。
【0018】
この筒状間隙を設けたときは、インフレータの作動時において燃焼ガスがディフューザ部に流れる排出経路となる。
燃焼ガスが筒状間隙をディフューザ部まで流れる間、間隙を形成する筒状部材(周壁部)と筒状ハウジングの内壁面と接触しやすくなり、残渣捕集機能や冷却機能が向上される。
また、筒状間隙を流れるガスは、流れを妨げられることなくガス排出口に到達するため、点火からガスが排出されるまでの時間を短くすることができるので好ましい。
【0019】
〔請求項6〕
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記筒状部材が、第1開口端部側の開口部が拡径された拡径部を有し、第2端部側が底面の中心部に中央孔を有するものであり、
前記ディフューザ部側には、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に突起を有するガス迂回手段が、その開口部側がディフューザ部側になるように配置されており、
前記筒状部材の拡径部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、
前記筒状部材の中央孔が前記ガス迂回手段底面の突起に嵌合されている、請求項5記載のガス発生器を提供する。
【0020】
筒状部材は、第1開口端部側(即ち、点火手段側及び第1燃焼室側)の開口部が拡径された拡径部を有しており、拡径部が筒状ハウジングの内壁面に当接されている。筒状ハウジング内に取り付けられる前は、たとえばこの拡径部の外径が、筒状ハウジングの内径よりも僅かに大きくなるように調整されていることで、拡径部と筒状ハウジングの内壁面が強く当接(互いに押し合うように接触する)されている。
このため、筒状部材が強く固定されることになり、筒状間隙の形成(特に均等間隔の筒状間隙の形成)も容易になる。さらに第2ガス発生剤成形体からの燃焼生成物が、筒状間隙にショートパスすることを防止できるため、第2ガス発生剤全体の着火性が向上する。
【0021】
筒状部材は、第2開口端部側(即ち、ディフューザ部側)が底面の中心部に底面を貫通した中央孔を有している。
【0022】
ガス迂回手段は、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に第2燃焼室側に向いた突起を有するものである。ガス迂回手段は、その開口部側がディフューザ部側に向くように配置されている。ガス迂回手段は、その中心軸がディフューザ部の中心軸及び筒状ハウジングの中心軸と一致して配置されるようにする。
【0023】
筒状部材の第2端部側の中央孔に、ガス迂回手段底面の突起が嵌め込まれている。このため、筒状部材の第2端部側の固定と筒状間隙の形成(特に均等間隔の筒状間隙の形成)が容易である。さらに、このように固定したとき、ディフューザ部の中心軸、筒状ハウジングの中心軸及びガス迂回手段の中心軸が全て一致するように配置することで、それらと筒状部材の中心軸を容易に一致させることができる。
【0024】
〔請求項7〕
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記第1多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍においてのみ周方向に複数の第1貫通孔を有しているものであり、
前記第2多孔板部材が、前記筒状ハウジングの内壁面と接する周縁部近傍においてのみ周方向に複数の第2貫通孔を有しているものである、請求項5または6記載のガス発生器を提供する。
【0025】
筒状部材と、周縁部にのみ貫通孔を有している2つの多孔板部材を組み合わせて使用することで、ガス排出経路を速やかに開放させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のガス発生器は、燃焼室内に点火器の着火部が突き出された状態で配置され、それに伴い燃焼室内にポケット状の環状空間が形成されている形態であっても、ガス発生剤成形体の充填状態に拘わらず、ガス発生剤成形体全体の着火遅れや焼尽残りが生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のガス発生器の軸方向断面図。
図2図1の部分拡大図。
図3】第1多孔板部材における貫通孔の配置状態を示す図。
図4】第1燃焼室に充填するガス発生剤成形体の斜視図。
図5】第1燃焼室内におけるガス発生剤成形体の充填状態の説明図。
図6】第2多孔板部材における貫通孔の配置状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態を図1図5により説明する。
筒状ハウジング10の一端部10a側には、点火手段となる点火器16が取り付けられている。
点火器16は、着火部18を含む点火器本体が公知の電気式点火器が固定手段となる金属製のカラー17に固定されたものである。着火部18の中心(着火部18の頂面18aの中心)は、筒状ハウジング10の中心となる軸Xと一致している。
点火器16は、点火薬を含んだ着火部18の一部が樹脂で被覆された状態で、金属製のカラー17に固定されたものでもよい。
点火器16としては、例えば特開2001−165600号公報の図2で示すような、イニシエータ32がカラー集合体31(樹脂部36と金属製カラー40)で包囲されたものであり、着火部(点火薬62とこれを包囲するチャージホルダー64)が樹脂部36から突き出されたイニシエータ組立体28を使用することができる。
【0029】
点火器16とは軸X方向に間隔をおいて、第1多孔板部材14が配置されている。第1多孔板部材14の中心は軸Xと一致している。
第1多孔板部材14は、円形底面14bの周縁に環状壁14aが形成されたものであり、点火器16側に延ばされた環状壁14aが筒状ハウジング10の内壁面に圧入されることで固定されている。
第1多孔板部材14は、図3に示すように、筒状ハウジング10の内壁面と接する周縁部近傍においてのみ、周方向に均等間隔で形成された複数の第1貫通孔60を有している。
第1貫通孔60の形成位置は、軸Xが通る中心点から周縁までの距離r(第1多孔板部材14の半径r)を基準とすると、周縁14cから各々の第1貫通孔60の中心までの長さが0.1r程度の位置である。
このように第1貫通孔は、少なくとも点火器16の着火部18aが正対する領域(図3において点線で示す部分)を除いた周縁部に形成されている。
なお、第1貫通孔60は円形底面14bの内側寄り(周縁部に形成された第1貫通孔よりも内側寄り)にも形成されていてもよい。この場合、第1貫通孔60の総開口面積に対して周縁部近傍のみに形成された第1貫通孔の総開口面積の割合を95%から100%未満の幅で調整することができる。
【0030】
点火器16(点火器16とカラー17)、筒状ハウジング10、第1多孔板部材14で囲まれた空間が第1燃焼室20となっている。
第1燃焼室20には、第1多孔板部材14によって第1ガス発生剤成形体22が点火器16側へ押しつけられた状態で充填されている。
第1ガス発生剤成形体22は公知の形状のものを使用することができ、例えば、図4(a)、(b)に示すような円柱状(貫通孔や凹部のあるものも含む)やディスク状のもの(貫通孔や凹部のあるものも含む)を使用することができる。
【0031】
点火器16の着火部18は、点火器カラー17の環状面17aから第1燃焼室20内に突き出された状態になっている。
このため、第1燃焼室20内の着火部18の周囲には、環状面17aを底面とするポケット状の環状空間33が形成されている。この環状空間33にもガス発生剤成形体22が充填されている。
環状空間33は、作動前は点火器カラー17の環状面17aから着火部頂面18aまでの高さ(H)の範囲となっている。
環状面17aからの着火部頂面18aまでの高さ(H)と、第1燃焼室20内に充填されている第1ガス発生剤成形体22の最小長さ(Lmin)はLmin<Hの関係を満たしている。
なお、点火器カラー17の構造および形状によっては、環状面17aに段差がある場合があるが、その場合の「H」は、深さの大きい方の底面から着火部頂面18aまでの高さであってもよいし、深さの小さい方の底面から着火部頂面18aまでの高さであってもよい。なお第1ガス発生剤成形体22は、環状空間33から高さH方向に(着火部頂面18aを超えて)突出しない限りにおいては、環状空間33内で斜めに配置されていてもよく、その配置の向きや形状、寸法は限定しない。またそのような状態の第1ガス発生剤成形体22が1つでもあれば、本件発明に含まれるものとする。
【0032】
第1ガス発生剤成形体22として、図4(a)に示す円柱のものと図4(b)に示すディスクのものを使用した場合について説明する。
図4(a)の円柱の第1ガス発生剤成形体22の場合には、最小長さ(Lmin)は端面22bの直径となる。
図4(b)のディスクの第1ガス発生剤成形体22の場合には、最小長さ(Lmin)は厚さとなる。
そして、例えば燃焼室20内に図4(a)に示す円柱の第1ガス発生剤成形体22を充填したとき、図5に示すように点火器カラー17の環状面17aに対して、円柱の第1ガス発生剤成形体22の周面22aが当接された状態で充填される場合がある。
このとき、上記したLmin<Hの関係を満たしていると、第1ガス発生剤成形体22は、必ず環状空間33内にあり、着火部頂面18aから飛び出した状態になることはない。
【0033】
第1ガス発生剤成形体22としては、着火性が良く、燃焼が持続する(燃焼温度の高い)ガス発生剤を使用することができる。
第1ガス発生剤成形体22の燃焼温度は、1700〜3000℃の範囲にあることが望ましい。
このような第1ガス発生剤成形体22としては、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)からなるものを用いることができる。
【0034】
筒状ハウジング10の反対端部(他端側)10b側には、ディフューザ12が取り付けられて、ディフューザ部を形成している。
ディフューザ12は、フランジ部12a、周壁部12b、底部12cを有する略カップ形状であり、このフランジ部12aにおいて筒状ハウジング10に溶接固定されている。
周壁部12bには、複数のガス排出口15が形成されている。
【0035】
筒状ハウジング10内部のディフューザ12側端部(反対端部10b)には、ガス迂回手段となるカップ状部材40が配置されている。カップ状部材40は、底面40aと周壁部40bを有しており、周壁部40bは複数の連通孔40cを有している。底面40aの中心部には、突起40dが点火器16側に伸びるように形成されている。
【0036】
カップ状部材40は、ディフューザ12のフランジ部12aに対して公知の方法(溶接等)で固定されている。カップ状部材40の開口部は、シールテープ45で閉塞されており、ガス排出口15から湿気が進入しないよう機能している。
【0037】
カップ状部材40の外径は、筒状ハウジング10の内径よりも小さい。このため、周壁部40bと筒状ハウジング10の内壁面との間には間隙36が存在しており、ディフューザ部のフランジ部12aにて行き止まりのポケット部(間隙)36となっている。このポケット部36は、筒状間隙35と続いているため、燃焼ガス中のミストを滞留させるように機能する。
【0038】
筒状ハウジング10内には、ディフューザ12(カップ状部材40)と第1燃焼室20(第1多孔板部材14)との間において、第2燃焼室25が設けられている。
第2燃焼室25は、筒状部材30、第2多孔板部材32、筒状ハウジング10の内壁面で囲まれて形成されており、第2ガス発生剤成形体50が充填されている。
【0039】
筒状部材30は、周壁部30aが筒状ハウジング10の内径よりも小さな外径を有しており、周壁部30aと筒状ハウジング10の間には均等幅の筒状間隙35が形成されている。
【0040】
筒状部材30は、その周壁部30aに複数のガス通過孔37が軸方向に均等間隔で形成されている。このガス通過孔37は、筒状部材30(周壁部30a)の円周方向に均等間隔で形成されている。第2燃焼室25と環状間隙35は、ガス通過孔37で連通されている。なお、このガス通過孔37は、周壁部のうちディフューザ部12側寄りに形成されていてもよい。また、ディフューザ部12側に近づくにつれて開口面積が増大するようにしてもよい。
【0041】
筒状部材30は、点火器16側においてフランジ状に形成された拡径部31を有しており、拡径部31の外周縁31aが筒状ハウジング10の内周面に当接されている。
【0042】
筒状部材30を筒状ハウジング10に取り付ける前は、外周縁31aの外径は、筒状ハウジング10の内径よりも僅かに大きくなっており、筒状ハウジング10内に配置されたとき、拡径部31が有する弾性により、筒状ハウジング10の内壁面に圧入されている。このため、圧入部分には隙間が形成されていない。なお、筒状部材30の固定のために、拡径部31の開口周縁に嵌合する段部や係合する突起が筒状ハウジング10の内部に形成されていてもよい。
【0043】
筒状部材30は、ディフューザ部12側が底面30bの中心部に中央孔30dが形成されている。そして、中央孔30dがカップ状部材40の底面40aに形成された突起40dに嵌め込まれている。
【0044】
筒状部材30は、拡径部31と筒状ハウジング10の内壁面が圧入されていることと、中央孔30dがカップ状部材40の突起40dに嵌め込まれていることで、軸方向及び半径方向の両方向において固定されており、筒状ハウジング10と同軸上に配置されている。
【0045】
第2多孔板部材32は、第1多孔板部材14とは軸X方向に間隔(例えば3〜20mm程度)をおいて配置されており、第2多孔板部材32の中心は軸Xと一致している。
第2多孔板部材32は、円形底面32bの周縁に点火器16側に延ばされた環状壁32aが形成されたものであり、環状壁32aが筒状ハウジング10の内壁面に対して圧入されることで固定されている。
第2多孔板部材32と第1多孔板部材14の間には、空間19が形成されている。空間19の容積(第1多孔板部材12と第2多孔板部材32の間隔)は、それぞれの燃焼室20、25に充填されるガス発生剤成形体22、50の形状や量によって変わるものである。
【0046】
第2多孔板部材32の第2貫通孔65は、第2ガス発生剤成形体50よりも小さな開口である。第2貫通孔65はシールテープで塞がれていてもよい。
第2多孔板部材32が有している第2貫通孔65の配置状態は、特に制限されるものではなく、図6により好ましい実施形態を説明する。
図6では図1のディフューザ部12側から見た第2多孔板部材32を示しており、第1多孔板部材14が完全に第2多孔板部材32に隠れてしまうため、第1貫通孔60は点線で示している。
図6(a)では、第1貫通孔60と第2貫通孔65が軸X方向には正対していない状態が示されている。
これは、図3の第1貫通孔60と図6(a)の第2貫通孔65の配置状態が異なっているものではなく、同じ配置状態であるが、筒状ハウジング10に取り付けるときに円周方向にずらして配置し、第1貫通孔60と第2貫通孔65が重ならないようにしていることを示しているものである。
但し、第1貫通孔60と第2貫通孔65が軸X方向に正対するようにして配置されていてもよいし、それぞれが軸X方向に部分的に重なるようにしてもよい。
図6(a)の第2多孔板部材32は筒状部材30と組み合わせたとき、筒状部材30の内壁面30aに近接して充填されている第2ガス発生剤成形体50の燃焼を促進して、ガス排出経路を速やかに開放するように機能することができるので好ましい。
【0047】
また例えば、図6(b)に示すように、第2多孔板部材32のうち筒状ハウジング10の内壁面と接する周縁部近傍を除いた中央部分にのみ(第1貫通孔60よりも半径方向内側に)第2貫通孔65を形成することができる。
図6(b)のようにして第2貫通孔65を配置したとき、第1貫通孔60と第2貫通孔65の軸X方向の位置は重なることはない。
また例えば、図6(c)に示すように、図6(a)、(b)における第2貫通孔65の形成位置を組み合わせた状態にすることもできる。
【0048】
第2ガス発生剤成形体50は、第1ガス発生剤成形体22よりも燃焼温度の低いガス発生剤を使用している。第2ガス発生剤成形体50の燃焼温度は、1000〜1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41質量%)、塩基性硝酸銅(49質量%)及びバインダーや添加物からなる、外径1.8mm、内径0.7mm、長さ1.9mmの単孔円柱状のものを用いることができる。
【0049】
第2ガス発生剤成形体50は、第2多孔板部材32によって、ディフューザ部12側へ押しつけられた状態で充填されている。このため、第2燃焼室25内の第2ガス発生剤50が密に充填されることになり、隙間が形成されることが阻止される。
【0050】
第1多孔板部材14が有している第1貫通孔60の総開口面積(a1)と第2多孔板部材32が有している第2貫通孔65の総開口面積(a2)との比率(a2/a1)は0.9〜1.2の範囲が好ましく、0.95〜1.1の範囲がより好ましい。
【0051】
次に、図1に示すガス発生器の動作を説明する。
点火器16が作動すると、着火部18の中央部分から開裂し、そこから発生した燃焼生成物が第1多孔板部材14のうち第1貫通孔60が形成されていない面に当たり、その一部が半径方向外側やカラー17方向に拡散する。
しかし、本発明のような第1多孔板部材14を使用することで、燃焼生成物が第1多孔板部材14の中心部分(第1貫通孔60が形成されていない部分、あるいは第1貫通孔60の開口面積が小さい部分)に当たることで反射し、ポケット状の環状空間33に充填された第1ガス発生剤成形体22にも燃焼生成物が届きやすくなる。
このため、第1燃焼室20内の第1ガス発生剤成形体22全体が燃焼しやすくなる。
【0052】
第1ガス発生剤成形体22から生じる燃焼生成物(火炎や高温ガス)で第1燃焼室20内部の圧力が高まったときに、第1貫通孔60を閉塞しているシールテープが破れ、そこから燃焼生成物が空間19に流れ込む。
空間19に流入した燃焼生成物は、第2多孔板部材32の第2貫通孔65から第2燃焼室25内に流入して、第2ガス発生剤成形体50を着火燃焼させる。
第2燃焼室25内で発生した燃焼ガス及び燃焼生成物は、ガス通過孔37から筒状間隙35内に流出し、筒状ハウジング10の内壁面に衝突する。
そして、流れの向きをディフューザ12側に向けて流れる。その過程で含まれる残渣は、筒状ハウジング10内壁面に付着する。
さらに燃焼ガスおよび燃焼生成物は、ディフューザ12のフランジ部12aに当たり向きを変え、連通孔40からカップ状部材40内部に入った後、ディフューザ12の底部12cに当たってさらに向きを変え、ガス排出口15から排出される。
第1多孔板部材14と第2多孔板部材32は、それぞれが筒状ハウジング10に対して圧入されているため、作動時の圧力で軸X方向に移動する場合があるが、第1多孔板部材14と第2多孔板部材32との間は環状壁32aの幅に相当する間隔が維持されているため、空間19も維持される。
【0053】
図6(a)のような第2多孔板部材32を図1に示すガス発生器において使用すると、次のような作用効果が得られる。
ハウジング10内に配置された筒状部材30によりガス排出経路となる間隙35が形成されているが、間隙35は第2多孔板部材32側には形成されていない。
そして、図6(a)のように周縁部に第2貫通孔60が配置された第2多孔板部材32を使用すると、燃焼生成物は筒状部材30の周壁部30aに沿う方向に放出されることなるため、ガス通過孔37近傍の第2ガス発生剤成形体50を優先的に燃焼させることになる。
そうすると、第2燃焼室25において、第2貫通孔65からガス通過孔37(最も第2多孔板部材32寄りのガス通過孔37)間のガス排出経路が早期に形成されるため、ハウジング10からのガスの排出が確実かつ迅速に実施される。
【0054】
図6(b)のような第2多孔板部材32を図1に示すガス発生器において使用すると、第2ガス発生剤成形体50は、第2多孔板部材32に面している部分に充填されているものから均一に燃焼しやすくなるため、第2燃焼室25内では端面から燃焼が進行することになる。
図6(c)のような第2多孔板部材32を図1に示すガス発生器において使用すると、図6(a)と図6(b)の両方の機能が発揮されることになる。
【符号の説明】
【0055】
10 筒状ハウジング
12 ディフューザ部
14 第1多孔板部材
15 ガス排出口
16 点火器
17 カラー
18 着火部
20 第1燃焼室
22 第1ガス発生剤成形体
25 第2燃焼室
30 筒状部材
50 第2ガス発生剤成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6