特許第5965337号(P5965337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965337
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ステアリングサポートビーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20160721BHJP
   B62D 1/16 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B62D25/08 J
   B62D1/16
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-36138(P2013-36138)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-162389(P2014-162389A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】森下 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 良雄
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−142376(JP,U)
【文献】 実開昭61−075381(JP,U)
【文献】 特開2004−196029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在するビーム本体上の運転席側に設定された中空のコラム支持部を車体前後方向に位置する前側半体と後側半体との接合によって構成し、
前記前側半体及び前記後側半体の上側の一部を上方に突出させて前記コラム支持部に突出部を形成し、
前記前側半体及び前記後側半体の下側の一部を上方に切り欠いて前記コラム支持部の前記突出部の下方に切欠凹部を形成し、
底部及び前後壁部の一部が前記切欠凹部に沿って開放された略箱形形状をなす補剛部材を前記コラム支持部内に配設して、前記補剛部材の前記前壁部を前記前側半体と接合するとともに、前記補剛部材の前記後壁部を前記後側半体と接合し、
ステアリングコラムを支持するコラムブラケットを前記切欠凹部の内側に設けたことを特徴とするステアリングサポートビーム。
【請求項2】
前記切欠凹部に沿って前記補剛部材に接合する略逆U字形状をなす副補剛部材を有し、
前記副補剛部材は前記補剛部材との間に閉断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項3】
前記副補剛部材に、前記コラムブラケットを前記コラム支持部に固定するための固定部を設定したことを特徴とする請求項2に記載のステアリングサポートビーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の車幅方向に架設されてステアリングコラムを支持するステアリングサポートビームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステアリングホイールが連結されるステアリングシャフトはステアリングコラムによって回転自在に支持されている。また、ステアリングコラムは、インストルメントパネル内において、車体のフロントピラー間に架設されたステアリングサポートビームに支持されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、この種のステアリングサポートビームとしては、ビーム本体に安価且つ軽量なパイプ材を用いたものが広く採用されており、ステアリングコラムは、チルト機構を備えたブラケット等を介して、ビーム本体に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−189109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体によっては、レイアウト上の制約等により、ステアリングコラムとステアリングサポートビームとの最適位置が、互いに干渉する位置まで接近する場合がある。これに対処し、例えば、ビーム本体の一部を、ステアリングコラムとの干渉を回避させる形状に湾曲形成等することも考えられるが、このような加工をパイプ材等からなるビーム本体に対して行うと、ステアリングコラムの支持剛性が著しく低下する虞がある。逆に、ビーム本体との干渉を回避可能な位置までステアリングコラムをオフセットさせることも考えられるが、このような対策を行った場合、ステアリングホイール等がドライバの膝等と干渉する虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、支持剛性を低下させることなく、所望の位置にステアリングコラムを支持することができるステアリングサポートビームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるステアリングサポートビームは、車幅方向に延在するビーム本体上の運転席側に設定された中空のコラム支持部を車体前後方向に位置する前側半体と後側半体との接合によって構成し、前記前側半体及び前記後側半体の上側の一部を上方に突出させて前記コラム支持部に突出部を形成し、前記前側半体及び前記後側半体の下側の一部を上方に切り欠いて前記コラム支持部の前記突出部の下方に切欠凹部を形成し、底部及び前後壁部の一部が前記切欠凹部に沿って開放された略箱形形状をなす補剛部材を前記コラム支持部内に配設して、前記補剛部材の前記前壁部を前記前側半体と接合するとともに、前記補剛部材の前記後壁部を前記後側半体と接合し、ステアリングコラムを支持するコラムブラケットを前記切欠凹部の内側に設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のステアリングサポートビームによれば、支持剛性を低下させることなく、所望の位置にステアリングコラムを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ステアリングサポートビームの斜視図
図2】コラム本体の要部を示す分解斜視図
図3】後側半体を取り外した状態にてコラム本体の要部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はステアリングサポートビームの斜視図、図2はコラム本体の要部を示す分解斜視図、図3は後側半体を取り外した状態にてコラム本体の要部を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すステアリングサポートビーム1は、例えば、左ハンドル車用のステアリングサポートビームであり、このステアリングサポートビーム1は、インストルメントパネル(図示せず)内において車幅方向に延在するビーム本体2を有して構成されている。
【0012】
ビーム本体2は、例えば、センタコンソール及び助手席側の領域に対応して車幅方向に延在するパイプ部5と、運転席側の領域に対応して車幅方向に延在するコラム支持部6と、を有する。
【0013】
パイプ部5は、例えば、ストレートパイプによって構成されている。このパイプ部5の一端部(右側端部)には、ビームブラケット10が固設されている。ビームブラケット10は、例えば、アルミニウム製のブロックによって構成され、このビームブラケット10に保持された複数のボルト10aが右側フロントピラー11の下部に締結されることにより、パイプ部5の一端部が車体に連結されている。
【0014】
また、パイプ部5の他端側(左端側)には、下方に延在する一対のステー12L、12Rが固設されている。これらのステー12L、12Rは、例えば、板金部材によって構成され、その下端部が、図示しないフロアパネルに締結されることにより、パイプ部5の他端側を車体に支持する。
【0015】
さらに、これら一対のステー12L、11Rのうち、左側に位置するステー12Lには、コラム支持部6の一端部が溶接等によって連結されている。このステー12Lの連結により、例えば、図3に示すように、パイプ部5の他端部はコラム支持部6内に挿入されている。そして、パイプ部5の他端部は、コラム支持部6内に設けられたガイド板13等に溶着されることにより、当該コラム支持部6の一端側と連結されている。
【0016】
図2に示すように、コラム支持部6は、例えば、板金製の中空部材によって構成されている。具体的に説明すると、コラム支持部6は、車体前方に突出する断面略「コ字状」の板金部材からなる前側半体15と、車体後方に突出する断面略「コ字状」の板金部材からなる後側半体16と、を有し、前後に対向配置されたこれら前側半体15と後側半体16の各開放端部が溶接等によって互いに連結されることにより、要部が構成されている。
【0017】
このコラム支持部6の他端部(左側端部)には、ビームブラケット17が固設されている。ビームブラケット17は、例えば、アルミニウム製のブロックによって構成され、このビームブラケット17に保持された複数のボルト17aが左側フロントピラー(図示せず)の下部に締結されることにより、コラム支持部6の他端部が車体に連結されている。
【0018】
ここで、図1,2に示すように、前側半体15及び後側半体16の上側の一部には上方に突出する突出部15a,16aが設けられ、これら突出部15a,16aにより、コラム支持部6の中途には突出部7が形成されている。
【0019】
また、前側半体15及び後側半体16の下側の一部には上方に切り欠かれた切欠部15b,16bが設けられ、これら切欠部15b,16bにより、コラム支持部6の突出部7の下方には、切欠凹部8が形成されている。
【0020】
このように突出部7及び切欠凹部8が形成されることにより、本実施形態のコラム支持部6は、その中途の一部が上方にオフセットしたクランク状の中空部材で構成され、切欠凹部8の内側の領域が、後述するコラムブラケット30を保持するための保持部として設定されている。
【0021】
また、コラム支持部6の内部には、中途をオフセットさせたことによるコラム支持部6の剛性低下を補剛するための補剛部材20が配設されている。
【0022】
図2に示すように、補剛部材20は、平面視形状が、略「逆U字状」をなす板金部材によって構成されている。より具体的には、補剛部材20は、底部及び前後壁部20f,20rの一部が切欠凹部8の形状に沿って開放された略箱形形状をなす部材によって構成されている。
【0023】
この補剛部材20は、例えば、前側半体15と後側半体16とが接合される際に、コラム支持部6内に配設される。そして、補剛部材20は、切欠凹部8を囲繞する位置において、溶接等により、前壁部20fが前側半体15の内面に接合され、且つ、後壁部20rが後側半体16の内面に接合される。これにより、補剛部材20は、前側半体15と後側半体16の中途を拘束するとともに、コラム支持部6の内部に閉断面を画成する。
【0024】
さらに、コラム支持部6には、切欠凹部8の開口形状に沿って略「逆U字状」に形成された副補剛部材21が設けられている。この副補剛部材21は、例えば、複数の板金部材の複合体によって構成されている。図3に示すように、副補剛部材21は、溶接等によって補剛部材20に接合され、補剛部材20との間に閉断面を形成する。これにより、副補剛部材21は、補剛部材20を補剛し、その結果としてコラム支持部6の補剛に寄与する。
【0025】
ここで、副補剛部材21は、ステアリングコラム31を保持するコラムブラケット30の固定部としての機能を兼用する。
【0026】
具体的に説明すると、例えば、図1に示すように、副補剛部材21の内側には、頂部に固設された複数(例えば、4本)のボルト22が突設されている。一方、本実施形態のコラムブラケット30は、平面視形状が「逆U字状」をなす板金部材で構成され、このコラムブラケット30の頂部には各ボルト22に対応するボルト挿通孔30aが穿設されている。そして、各ボルト挿通孔30aにボルト22が挿通され、コラムブラケット30の頂部が、副補剛部材21と図示しないナットとの間で締結されることにより、コラムブラケット30は、副補剛部材21を介してコラム支持部6に支持される。
【0027】
なお、コラムブラケット30の左右壁部30l,30rには上下方向に延在する長孔30bがそれぞれ穿設されている。そして、ステアリングコラム31は、各長孔30bに係合するチルト機構(図示せず)を介してコラムブラケット30に支持されることにより、そのチルト角が変更可能な状態にて支持される。
【0028】
このような実施形態によれば、コラム支持部6を車体前後方向に位置する前側半体15と後側半体16との接合によって構成し、前側半体15及び後側半体16の上側の一部を上方に突出させてコラム支持部6に突出部7を形成し、前側半体15及び後側半体16の下側の一部を上方に切り欠いてコラム支持部6の突出部7の下方に切欠凹部8を形成し、底部及び前後壁部20f,20rの一部が切欠凹部8に沿って開放された略箱形形状をなす補剛部材20をコラム支持部6内に配設して、補剛部材20の前壁部20fを前側半体15と接合するとともに、補剛部材20の後壁部20rを後側半体16と接合し、コラムブラケット30を切欠凹部8の内側に設けることにより、支持剛性を低下させることなく、所望の位置にステアリングコラムを支持することができる。
【0029】
すなわち、突出部7及び切欠凹部8によってコラム支持部6の中途の一部を上方にオフセットさせることにより、ビーム本体2の取付位置を所望の高さ(所定の低い取付位置)に維持しつつ、ステアリングコラム31との干渉を回避させることができる。この場合において、コラム支持部6は前側半体15と後側半体16との接合によって構成されるものであり、コラム支持部6の前後壁部に半体間の接合部が存在しないので、コラム支持部6の一部を上方にオフセットさせることによる上下方向の剛性の低下を抑制することができる。加えて、コラム支持部6の内部に補剛部材20を配設し、この補剛部材20の前壁部20fを前側半体15と接合するとともに、補剛部材20の後壁部20rを後側半体16と接合することにより、コラム支持部6の一部を上方にオフセットさせたことによる剛性の低下を的確に補うことができる。
【0030】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【符号の説明】
【0031】
1 … ステアリングサポートビーム
2 … ビーム本体
5 … パイプ部
6 … コラム支持部
7 … 突出部
8 … 切欠凹部
10 … ビームブラケット
10a … ボルト
11 … 右側フロントピラー
12L … ステー
12R … ステー
13 … ガイド板
15 … 前側半体
15a … 突出部
15b … 切欠部
16 … 後側半体
16a … 突出部
16b … 切欠部
17 … ビームブラケット
17a … ボルト
20 … 補剛部材
20f … 前壁部
20r … 後壁部
21 … 副補剛部材
22 … ボルト
30 … コラムブラケット
30a … ボルト挿通孔
30b … 長孔
30l … 左壁部
30r … 右壁部
31 … ステアリングコラム
図1
図2
図3