【実施例】
【0030】
(実施例1)
実施例1の排気ダクトカバーおよびガスコンロについて、
図1〜
図12を用いて説明する。
図1〜
図9に示すように、本例の排気ダクトカバー8は、ガスバーナー4を備えた燃焼室3から導出される排気ガスを流通させるための排気ダクト7を有するガスコンロ1の排気ダクト7の前面に設けられた本体排気口71を囲うように配設されるものである。一方、本例のガスコンロ1は、ガスバーナー4を備えた燃焼室3から導出される排気ガスを流通させるための排気ダクト7を有するガスコンロ1であって、排気ダクト7の前面に設けられた本体排気口71を囲うように本例の排気ダクトカバー8が配設されている。以下、詳細に説明する。なお、以下では、説明の都合上、ガスコンロ1、排気ダクトカバー8の順に説明する。
【0031】
本例のガスコンロ1は、コンロ本体2と、コンロ本体2内の燃焼室3に備えられたガスバーナー4と、燃焼室3の上端開口部32の周囲に設けられた略環状のヒートリング5と、コンロ本体2の後端部に設けられた排気ダクト7と、排気ダクト7の前面に設けられた本体排気口71を囲うように配設された排気ダクトカバー8とを有している。
【0032】
コンロ本体2は、前面部21と、両側の側面部22と、後面部23と、天面部24とを有しており、溶接等によってこれら各面部が矩形の箱状に接合されて構成されている。なお、本例では、コンロ本体2は、底面部を有していない例を示している。但し、コンロ本体2は、被加熱物としての寸胴鍋Pからのこぼれた煮汁を受ける汁受け240を下端部に有している。各面部は、いずれもSUS(例えばSUS430)等の金属材料より形成されている。天面部24の略中央部には、略円形状の開口241が形成されており、この開口241に位置を合わせて燃焼室3が配置されている。コンロ本体2の下端部からは脚部25が突設されており、床面の上方に若干の隙間を介して前面部21、両側の側面部22、後面部23の下端部が配置されている。なお、本例では、コンロ本体2は、幅600mm、奥行750mm、脚部の高さ130mm、天面部の表面までの高さ420mmに形成されている。
【0033】
コンロ本体2の下面には、金属管等からなるガス供給管(不図示)の下流側の端部が接続される管接続部26が設けられている。都市ガス等の燃焼用ガスは、ガス供給管を通じて管接続部26へ供給される。管接続部26からコンロ本体2の内部に向かってガス配管27が延びており、その端部にはガスノズル28が設けられている。管接続部26とガスノズル28との間にはガスコック29が介挿されている。ガスコック29が開状態にされると、管接続部26からの燃焼用ガスがガスバーナー4へ供給される。一方、ガスコック29が閉状態にされると、管接続部26からの燃焼用ガスの供給が遮断される。コンロ本体2の前面部21には、ガスコック29を開閉操作するための操作用つまみやスイッチ類等が配置された操作部211が設けられている。
【0034】
燃焼室3は、側壁31で囲われた内部が燃焼空間となる。本例では、側壁31は、略円筒状をしたSUS(例えばSUS430)等の金属材料より形成されている。燃焼室3は、上端が開口して上端開口部32が形成されるとともに、下端が開口して下端開口部33が形成されている。燃焼室3は、下端開口部33を介して燃焼室3内の燃焼空間とコンロ本体2内の空間とが連通している。これにより、下端開口部33から燃焼室3内へガスバーナー4が燃焼する際の二次空気が流入するようになっている。なお、コンロ本体2内への空気の取り込みは、コンロ本体2の下端部やコンロ本体2の前面部21に形成されたガラリ212等から行われる(
図2の矢印A参照)。また、燃焼室3の後方における側壁31には、排気ダクト7の下端部に向かって延びる筒状の排気煙道6の一端が連通されており、燃焼室3内で発生した排気ガスを排気ダクト7に流入させることが可能とされている。
【0035】
ガスバーナー4は、燃焼室3内に配設されており、バーナー本体41と、混合管42と、種火バーナー(不図示)とを有している。バーナー本体41は、略円形状であり、その上面には多数の炎孔が周方向に並んで設けられている。混合管42は、その一端部に、ガスノズル28が挿入されるガス受入口421を有しており、その他端部はバーナー本体41の下部に接続されている。種火バーナーは、バーナー本体41に設けた炎孔から噴出する混合ガスに点火するためのものである。種火バーナーは、バーナー本体41の近傍に配設されており、種火用ガス配管(不図示)を介してガスコック29に接続されている。
【0036】
ヒートリング5は、有底の被加熱物である寸胴鍋Pが載置される部分であり、上面が平坦面となっている。本例では、ヒートリング5は、SUS(例えばSUS430)等の金属材料より形成されている。被加熱物としての寸胴鍋Pがヒートリング5上に載置された場合には、寸胴鍋Pの底部は、ヒートリング5の存在によって天面部24に接触しないようになっている。また、被加熱物としての寸胴鍋Pがヒートリング5上に載置された場合には、燃焼室3の上端開口部32が寸胴鍋Pの底部によって閉塞された状態となる。つまり、本例のガスコンロ1は、燃焼室3内で発生した排気ガスが全て排気ダクト内に流入するよう構成されている。
【0037】
排気ダクト7は、コンロ本体2が有する天面部24の後端部から上方に向かって立設されている。なお、天面部24における排気ダクト7が立設される部分は開口している。排気ダクト7は、排気煙道6を介して燃焼室3内と連通しており、排気ガスを上方に導いて本体排気口71より排出する。本例では、具体的には、排気ダクト7は、SUS(例えばSUS430)等の金属材料より形成されており、ダクト内を下方から上方に向かって延びる内筒部72と、内筒部72の外周に内筒部72と離間して設けられた外筒部73とを備えた二重構造とされている。なお、本例では、内筒部72の外周に断熱材よりなる断熱層74を設けてある。内筒部72の下端部は、排気煙道6の他端に連通されている。内筒部72と外筒部73との間の隙間75は、コンロ本体2内部と連通しており、コンロ本体2内に取り込まれた空気を下方から上方へ流通させることにより、排気ダクト7表面の温度が過度に上昇しないよう冷却可能に構成されている。なお、本例では、排気ダクト7の本体排気口71からは、燃焼室3の排気ガス以外にも、排気ダクト7の冷却に使用された空気もあわせて排気することができるようになっている。
【0038】
排気ダクト7の上端部は、偏流部76とされている。偏流部76は、少なくとも内筒部72を流れてきて内筒部72の上端開口より上方に流出する排気ガスを排気ダクト7の前方へ偏流させることが可能な部位である。本例では、上記排気ガス以外にも、内筒部72と外筒部73との隙間75を流れて上方に流出する冷却用の空気も排気ダクト7の前方へ偏流させることが可能とされている。具体的には、偏流部76は、排気ダクト7の上端部が斜め前上方に向けて屈曲されることによって構成されている。本例では、排気ダクト7の偏流部76の前面に本体排気口71が設けられている。なお、本例では、偏流部76上端の傾斜面部761は、水平方向から約60度の角度をなすように斜め前上方に傾斜している。
【0039】
また、内筒部72の上端部には偏向板762が設けられている。偏向板762は、内筒部72内を流れてきて内筒部72の上端開口より流出する排気ガスの流れを斜め前上方へ向けるためのものである。なお、本例では、偏向板762は、偏流部76上端の傾斜面部761とほぼ平行となるように水平方向から約60度の角度をなすように本体排気口71側に向かって傾斜している。つまり、本例では、排気ダクト7の本体排気口71から流出する排気ガス、冷却用の空気は、排気ダクト7の斜め前上方に排出されるよう構成されている。
【0040】
排気ダクトカバー8は、排気ダクト7の前面に設けられた略長方形状の本体排気口71を囲うようにねじ(不図示)によって取り付けられている。以下、排気ダクトカバー8について詳述する。
【0041】
排気ダクトカバー8は、
図4〜
図9に示すように、インナーカバー部81と、サイドカバー部83と、トップカバー部85とを有している。
【0042】
インナーカバー部81は、本体排気口71の前方において本体排気口71と対峙するとともに本体排気口71の下方開口縁部まで延びる前板部811と、前板部811の両側端から本体排気口71の側方開口縁部まで延びる一対の側板部812とを備えている。そして、インナーカバー部81の上方は、上方に開口する上方開口部82とされている。
【0043】
本例では、具体的には、前板部811は、上方に行くほど本体排気口71から離れるように傾斜する傾斜板部811aを有している。より具体的には、前板部811は、さらに、傾斜板部811aの下端から本体排気口71の下方開口縁部まで延びる下板部811bを有するとともに、傾斜板部811aの上端から排気ダクト7の前面と略平行に上方に延びる上板部811cを有している。そして、本例における前板部811の上端にあたる上板部811cの上端には、前方に向けて折り曲げられた返し片部811dが設けられている。
【0044】
サイドカバー部83は、インナーカバー部81における両側の側板部812に対面してそれぞれ設けられている。なお、サイドカバー部83は、少なくとも一方の側板部812に対面するよう配設することもできる。そして、上述した側板部812には、サイドカバー部83に対面する位置において開口するサブ排気口84が設けられている。つまり、本例では、サブ排気口84は、両側の側板部812における上方よりにそれぞれ設けられている。なお、サブ排気口84は、略長方形状に形成されており、その大きさは、約70×110mmである。
【0045】
トップカバー部85は、インナーカバー部81の上方開口部82の一部をメイン排気口86として開放した状態で上方開口部82の一部を覆うように設けられている。本例では、具体的には、トップカバー部85は、上方開口部82の一部を覆うとともに一対の側板部812の外方まで延びており、サイドカバー部83の上端部に連結されている。また、トップカバー部85は、頂点部から前方に行くほど下方に傾斜する前方トップカバー部851と、頂点部から後方に行くほど下方に傾斜する後方トップカバー部852とを連ねた山形形状を有している。なお、側板部812の上端縁は、トップカバー部85の下面に当接している。本例では、トップカバー部85の形状を上記のように構成することにより、インナーカバー部81の上方開口部82における前方端側、より具体的には、前方トップカバー部851の前端縁とインナーカバー部81における前板部811の上端縁との間に、略長方形状のメイン排気口86を設けてある。メイン排気口86の大きさは、約434mm×31mmである。なお、排気ダクトカバー8の背面には、排気ダクトの本体排気口71と連通させるための背面開口88が形成されている。
【0046】
次に、本例の排気ダクトカバー8を適用したガスコンロ1を用いた被加熱物としての寸胴鍋Pの加熱について説明する。例えば、スープ等の食材が入った寸胴鍋Pをガスコンロ1のヒートリング5上に載置する。ヒートリング5上に寸胴鍋Pを載置させた状態では、ヒートリング5の上面が寸胴鍋Pの底部に密着し、燃焼室3の上端開口32部が寸胴鍋Pの底部によって閉塞された状態となる。
【0047】
このようにヒートリング5上に寸胴鍋Pを載置した後、ガスバーナー4を燃焼させて寸胴鍋Pを加熱する。ガスバーナー4を燃焼させるには、操作用つまみを点火方向に回してガスコック29を開けばよい。ガスコック29が開かれると、ガス配管27、混合管42内を通ってバーナー本体41に燃焼用ガスが供給され、種火バーナーにより点火されてガスバーナー4にて燃焼が開始される。
【0048】
ガスバーナー4の燃焼が開始されると、燃焼室3内に火炎が形成されるとともに燃焼による高温の排気ガスが発生する。この火炎および排気ガスによって寸胴鍋Pの底部が加熱される。燃焼室3内で発生した排気ガスは、排気ドラフトや温度差によるドラフト、ガスバーナー4からのガス噴出により生じるドラフトなどによって、寸胴鍋Pの底部を加熱した後、燃焼室3の後方における側壁31に連通されている排気煙道6へ流出する(
図2の矢印B参照)。そして、排気煙道6を通った排気ガスは、排気ダクト7の下端部から内筒部72内へ流入して内筒部72内を上昇し、偏向板762によって斜め前上方に向きが変えられて本体排気口71より排気ダクトカバー8内に排出される。
【0049】
また、上記ドラフトなどにより、コンロ本体2の下面や前面部21のガラリ212等からコンロ本体2内へ流入した空気は、その一部が燃焼室3内に流入し、ガスバーナー4の燃焼のための二次空気として使用される(
図2の矢印C参照)。また、上記流入した空気は、コンロ本体2を冷却した後、排気ダクト7の下端部から内筒部72と外筒部73との間の隙間75に流入して隙間75内を上昇する(
図2の矢印D参照)。そして、排気ダクト7の後方側の隙間75に主に流入した空気は、偏流部76上端の傾斜面部761および偏向板762とによって斜め前上方に向きが変えられて本体排気口71より排気ダクトカバー8内に排出される。また、排気ダクト7の前方側の隙間75に主に流入した空気は、偏向板762によって斜め前上方に向きが変えられて本体排気口71より排気ダクトカバー8内に排出される。
【0050】
ここで、本例のガスコンロ1は、上記構成の排気ダクトカバー8を有している。そのため、スポットクーラーによる冷風がない場合には、排気ダクト7の本体排気口71から排気ダクトカバー8に流入した排気ガスは、メイン排気口86とサブ排気口84とから外部へ排気される。一方、スポットクーラーが使用され、その冷風が主に前方から来る場合には、サイドカバー部83と側板部812との間を通ってサブ排気口84から冷風が侵入するが、排気ガスは、メイン排気口86から外部へ排気される。また、スポットクーラーによる冷風が主に上方から来る場合には、メイン排気口86から冷風が侵入するが、排気ガスは、サブ排気口84から外部へ排気される。また、スポットクーラーによる冷風が排気ダクトカバー8の側方から来る場合には、サイドカバー部83によって冷風が妨げられるので、排気ガスは、メイン排気口86およびサブ排気口84の両方から外部へ排気される。このように、本例のガスコンロ1は、本例の排気ダクトカバー8を有しているので、スポットクーラーが使用され、その冷風が前方、上方、側方のいずれから来る場合であっても、排気ダクトカバー8のメイン排気口86、サブ排気口84のいずれか一方または両方から排気ガスを排気することができる。それ故、本例の排気ダクトカバー8、これを用いたガスコンロ1は、スポットクーラーが使用された場合であっても排気ダクト7内の排気ガスの流れに影響を及ぼし難い。
【0051】
上記作用効果をより一層明確にするため、本例の排気ダクトカバー8を適用した本例のガスコンロ1と、本例の排気ダクトカバー8を取り外した比較用ガスコンロ(不図示)について、スポットクーラーの風量が燃焼室温度に与える影響を評価した。その結果について説明する。本例のガスコンロ1と、比較用ガスコンロについて、
図10に示すように、燃焼室3内のNo.1〜No.7の温度測定位置に熱電対を取り付けるとともに、各ガスコンロの正面から本体排気口71に向けてスポットクーラーから冷気を供給した。この際、スポットクーラーから吐出される冷気の流速は一定としたまま、スポットクーラーの冷気吐出口を、本体排気口71から140cmの距離とした場合を冷気「強」、本体排気口71から150cmの距離とした場合を冷気「中」、本体排気口71から160cmの距離とした場合を冷気中供給した冷気「弱」とした。得られた結果を
図11および
図12に示す。
【0052】
図11および
図12に示すように、本例の排気ダクトカバー8を有していない比較用ガスコンロは、スポットクーラーから供給される冷気を強くするほど、本体排気口71から排気ダクト7内に冷気が侵入しやすくなって排気ガスの排気抵抗が大きくなり、燃焼室3内での火炎形成位置が変化してガスバーナー4の周囲の温度が上昇した。
【0053】
これに対し、本例の排気ダクトカバー8を有する本例のガスコンロ1は、スポットクーラーから供給される冷気を強くしても、排気ガスの排気抵抗が大きくなり難く、燃焼室3内での火炎形成位置が保持されてガスバーナー4の周囲の温度が上昇し難い結果となった。このことから、本例の排気ダクトカバー8、これを有する本例のガスコンロ1は、スポットクーラーが使用された場合であっても排気ダクト7内の排気ガスの流れに影響を及ぼし難く、スポットクーラーの使用によってガスバーナー4に過熱による不具合が生じ難いことが確認された。
【0054】
また、本例の排気ダクトカバー8、これを有する本例のガスコンロ1は、比較用ガスコンロに比べて、スポットクーラーの冷気の影響を受けずに安定して火炎形成を行うことができることから、排気ガス中のCO濃度の低減に寄与することが可能となる。
【0055】
(実施例2)
本例の排気ダクトカバー8は、
図13および
図14に示すように、排気ダクトカバー8におけるインナーカバー部81の内部には、メイン排気口86から流入する空気の深部への侵入を阻止する邪魔板87が配設されている点で、実施例1の排気ダクトカバー8と異なっている。本例では、邪魔板87は、上方から見てメイン排気口86に対面するように配設されている。より具体的には、邪魔板87は、サブ排気口84側から見てその両端の板端面にて両側にあるサブ排気口84がそれぞれ上下方向に二分割されるような位置に水平に配置されている。また、本例のガスコンロ1は、実施例2の排気ダクトカバー8を用いた点で、実施例1のガスコンロ1と異なっている。その他の構成はいずれも実施例1と同様である。
【0056】
本例の排気ダクトカバー8を有する本例のガスコンロ1は、メイン排気口86から侵入した冷風が、邪魔板87の上方表面に沿って左右に流れ、邪魔板87よりも上側のサブ排気口84より排出される。また、メイン排気口86から冷風が侵入してくる状況下では、本体排気口71から流入した排気ガスは、邪魔板87の下方表面に沿って左右に流れ、邪魔板87よりも下側のサブ排気口84より排出される。そのため、本例の場合は、本体排気口71内への冷風の侵入をより一層抑制しやすくなるとともに、本体排気口71からの排気ガスの外部への排気を確実なものとすることができ、排気ダクト7内の排気ガスの流れに影響をより一層及ぼし難くすることができる。なお、メイン排気口86から冷風が侵入してこない状況下では、本体排気口71から流入した排気ガスは、邪魔板87の下方表面に沿って左右に流れ、邪魔板87よりも下側のサブ排気口84より排出されるとともに、邪魔板87とダクト内壁との間の隙間を通ってメイン排気口86からも排出される。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0057】
以上、実施例について説明したが、本発明は、上記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変形を行うことができる。