特許第5965347号(P5965347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965347
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】引戸扉の鎌錠構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/08 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   E05B65/08 G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-82579(P2013-82579)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-205960(P2014-205960A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150936
【氏名又は名称】株式会社田窪工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 康士
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−278246(JP,A)
【文献】 特開2007−002535(JP,A)
【文献】 特許第4599448(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視形状をへ字型に形成しその中央部をケーシングに対して垂直方向に軸支しその軸に対して左右位置に形成した仮施錠押部と解錠押部が横倒ししたシーソーのように交互に前後方向に揺動自在とした操作部と
上下両面間に後述する揺動体と連結体とスライド体を内包しその上下両面に左右方向に長いガイド穴と左端からほぼ中央まで形成した切込み溝と縦方向の軸受穴を形成したガイドケースと
前記操作部の端部に形成した嘴状の係合溝に係合する上下方向の係合軸と前記ガイドケースの上下両軸受穴に軸支する支点軸および同方向に向いて形成した上下の係合溝が略三角位置にある揺動体と
前記揺動体の上下両係合溝に係合する上に長く下に短く突き出したスライド軸と側方に張り出した上下片間に形成した連結軸を有する連結体と
前記連結体の連結軸に嵌合する後方開口の嵌合部と前面開口で上下方向に形成したスライド溝を有するスライド体と
前記スライド体のスライド溝に係合する係合突部を形成しその反対面に係合突部と軸線をずらして回転軸を形成しその回転軸を前記ガイドケースの下面に形成した横向きの軸受穴に挿入した鎌形鉤部とからなり、
該鎌形鉤部は、正面視くの字形状の板材であり、
正面視において、該くの字形状の曲折部と前記回転軸とを結んだ第一直線と、前記回転軸と前記係合突部とを結んだ第二直線と、から形成される角度が90度未満である、
引戸扉の鎌錠構造。
【請求項2】
前記ガイドケースの上下両面に形成した左右方向に長いガイド穴は、
右から左に向かうに従い後方寄りになり、左端近くで前方向に屈曲した平面視がへの字形状であり
鎌形鉤部が戸当開口部に係合した状態において、鍵でシリンダー錠を90度回転させることにより一体的に90度回転してスライド軸のスライド動作を阻止するよう構成したスライドストッパーは
前述のガイド穴の左端に位置したスライド軸が右方向に動くことを妨げるためスライド軸の後方と側面の2面に接触する突部と平面部を形成したことを特長とする請求項1記載の引戸扉の鎌錠構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレハブ建物あるいは物置等の引戸扉の鎌錠構造であり、詳しくは横倒しにしたシーソーのように交互前後動での仮施錠操作と仮施錠の解錠操作により、鎌形鉤部が時計回りまたは反時計回りに90度回転する鎌錠構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は以前に上記特許の錠装置の発明をしたが、この錠装置は、横倒ししたシーソーのように2箇所の押部が交互に前後に動く操作部を操作することにより、鉤部が左右かつ前後方向に動いて戸当りの係合穴に係合する構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―278246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引戸扉はレールに沿ってスライドして開閉する構造であるため、レール幅はレール内を動く扉ガイドに対して僅かに隙間を設けた幅に設計されている。そのため引戸扉が建物あるいは物置本体の奥行き方向(前後方向)に僅かながらガタつくことは避けられない。さらに引戸扉は上下のレールにより支持されていることから、高さにおける中央部が風圧または他の外力により前後に撓むことが考えられ、その撓みは引戸扉の高さ寸法が大きいほど大きくなる。
【0005】
そして扉の錠装置は使い勝手を考慮してほぼ中央高さ位置に取付けられているため、前述のように鉤部が左右かつ前後方向に動く構造の錠装置では、悪条件が重なると仮施錠状態または本施錠状態においても扉が開いてしまう、または悪意によって開けられる可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するために、横倒ししたシーソーのように2箇所の押部が交互に前後に動く操作部を操作することにより鉤部が作動するという従来の錠装置の操作性を損なうことなく、鉤の形状を鎌形にすると共にその動作を時計回りまたは反時計回りの動きになるよう構造を改良して、扉に前後方向のガタつきあるいは撓みが発生しても確実な施錠状態を維持できる鎌錠構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1の発明は、平面視形状をへ字形に形成しその中央部をケーシングに対して垂直方向に軸支しその軸に対して左右位置に形成した仮施錠押部と解錠押部が横倒ししたシーソーのように交互に前後方向に揺動自在とした操作部と、上下両面間に後述する揺動体と連結体とスライド体を内包しその上下両面に左右方向に長いガイド穴と左端からほぼ中央まで形成した切込み溝と縦方向の軸受穴を形成したガイドケースと、前記操作部の端部に形成した嘴状の係合溝に係合する上下方向の係合軸と前記ガイドケースの上下両軸受穴に軸支する支点軸および同方向に向いて形成した上下の係合溝が略三角位置にある揺動体と、前記揺動体の上下両係合溝に係合する上に長く下に短く突き出したスライド軸と側方に張り出した上下片間に形成した連結軸を有する連結体と、前記連結体の連結軸に嵌合する後方開口の嵌合部と前面開口で上下方向に形成したスライド溝
を有するスライド体と、前記スライド体のスライド溝に係合する係合突部を形成しその反
対面に係合突部と軸線をずらして回転軸を形成しその回転軸を前記ガイドケースの下面に
形成した横向きの軸受穴に挿入した鎌形鉤部とからなり、該鎌形鉤部は、正面視くの字形状の板材であり、正面視において、該くの字形状の曲折部と前記回転軸とを結んだ第一直線と、前記回転軸と前記係合突部とを結んだ第二直線と、から形成される角度が90度未満である、引戸扉の鎌錠構造とした。
【0008】
このように構成することにより、従来の錠構造に対して一部構造を変更するだけで良く、全体的に変更改良する必要が無いため、コストを抑えることができる。またそのような構造にすることで、以前と同じく横倒ししたシーソーのように2箇所の押部を交互に前後に動かす操作性は変わらず、仮施錠および仮施錠からの解錠は、操作部の仮施錠押部または解錠押部を押すだけで良いので両手で品物を持った状態とか手先が不自由な方でも容易に仮施錠または解錠ができる。そして引戸扉が何らかの外力の影響により多少前後方向に変形しても鉤部を鎌形状にして垂直面上で回転動作をすることで係合相手の係合穴から外れたりすることが避けられるので、保安面での信頼性が向上する。
【0009】
また請求項2の発明は、前記ガイドケースの上下両面に形成した左右方向に長いガイド穴は、右から左に向かうに従い後方寄りになり、左端近くで前方向に屈曲した平面視がへの字形状であり、鎌形鉤部が戸当開口部に係合した状態において、鍵でシリンダー錠を90度回転させることにより一体的に90度回転してスライド軸のスライド動作を阻止するよう構成したスライドストッパーは、前述のガイド穴の左端に位置したスライド軸が右方向に動くことを妨げるためスライド軸の後方と側面の2面に接触する突部と平面部を形成した。
【0010】
以上のように構成することにより、本施錠状態のスライド軸は、スライドストッパーで後方と右側面への移動を妨げられる。またガイド穴を前述のようなへの字形状にすることにより前記スライドストッパーの動きに若干の遊びがあっても、ガイド穴の左端に位置したスライド軸はガイド穴の屈曲部により直線的に右方向に移動することが妨げられるので、鎌形鉤部が外れて意図せず解錠することがなく確実に施錠状態を維持できるので、防犯性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
従来の錠装置の問題点を解消するために、鉤部を鎌形状に変更しその動きを水平面上の動きではなく垂直面上での動きに変更したが、従来の錠装置の一部構造を変更するだけでその目的を達成でき、しかも仮施錠および解錠は、横倒ししたシーソーのように2箇所の押部が交互に前後に動く操作部を操作することにより鉤部が作動するという従来どおりの操作性を損なうことなく容易に構造の改善ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の鎌錠要部を分解して示した斜視図
図2】本発明の鎌錠が解錠である状態を示す断面図
図3】本発明の鎌錠が解錠である状態を示す要部の斜視図
図4】本発明の鎌錠が施錠である状態を示す断面図
図5】本発明の鎌錠が施錠である状態を示す要部の斜視図
図6】本施錠した状態を示す要部の斜視図
図7】スライドストッパーの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に従って本発明を具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の鎌錠を分解して示した分解斜視図である。操作部2は、平面視形状をへ字形に形成しその中央部の軸穴23でケーシング(図示省略)に対して垂直方向に軸支する。その軸に対して左右位置に形成した仮施錠押部21と解錠押部22が横倒ししたシーソーのように交互に前後方向に揺動自在となる。また前記仮施錠押部21側の端部に後述する揺動体3に係合する嘴状の係合溝24を形成した。
【0015】
揺動体3は、前記係合溝24に係合する上下方向の係合軸31と後述のガイドケース4の上下面41、42に軸支する支点軸32および同方向に向いて形成した上下の係合溝33、33を有し、平面視がくの字形状で支点軸32を支点にガイドケース4内で揺動自在である。
【0016】
ガイドケース4は、上下両面41,42間に前述の揺動体3と後述の連結体7およびスライド体5を内包する。前記上下両面41,42に右から左に向かうに従い後方寄りになり左端近くで前方向に屈曲した屈曲部43aを有する平面視がへの字形状のガイド穴43、43と、左端からほぼ中央まで形成した切込み溝44、44と、前記揺動体3の支点軸32を受ける縦方向の軸受穴45、45を形成した。さらに下面42に後述する鎌形鉤部6の回転軸61を受ける横向きの軸受穴46を形成した。
【0017】
連結体7は、上向きに長く下向きに短いスライド軸71が前記揺動体3の上下係合溝33,33に係合し、さらに前記ガイドケース4のガイド穴43、43を貫通して揺動体3の揺動によりガイド穴43、43に沿ってガイドケース4内でスライド且つ揺動可能である。スライド軸71は前記ガイドケース4の上面41のガイド穴43から上方向に突き出す。また後述のスライド体5側に張り出した上下片72,72間に連結軸73を形成した。
【0018】
スライド体5は、前記連結体7の連結軸73に嵌合する嵌合部51を後向きに開口して形成し、後述の鎌形鉤部6の係合突部62が溝内で上下にスライド可能なスライド溝52を前向き開口で上下方向に形成した。スライド体5は、連結体7と一緒にガイドケース4内を左右方向にスライドする。
【0019】
鎌形鉤部6は、正面視がくの字形状の板材で後端部に前記ガイドケース4の軸受穴46に軸支する回転軸61を前方へ突出するよう形成し、その回転軸61と反対面に軸線をずらして係合突部62を形成した。
【0020】
図2は、引戸扉Aの端部に取付けた鎌錠Bが解錠状態を示す水平断面図である。鎌錠Bのケーシング1の正面開口部に配置した操作部2は、平面視が略への字形状で正面左側に仮施錠押部21と正面右側に解錠押部22の凹曲面を形成し、両押部は横倒ししたシーソーのように交互に前後方向に揺動する。図2は解錠押部22が押され(矢印Y1)鎌形鉤部6の先端が引戸扉A内に引き込まれた解錠状態を示している。Cは隅柱で前記引戸扉Aに当接する位置に戸当開口部C1を形成している。
【0021】
矢印Y2は、建物あるいは物置の内部から仮施錠状態を解錠するための操作を示したもので、前記仮施錠押部21の裏側にケーシング1から突出するよう形成した内部解錠押部11を押すことで解錠押部22を押すことと同じ作動となる。
【0022】
図3は、各部品の組み合わせ状態をわかりやすくするため図2における要部を示した斜視図である。各部品を実線でそれらを内包するガイドケース4と引戸扉Aを二点鎖線で示している。解錠状態であるため鎌形鉤部6は起き上がりガイドケース4の上面の切込み溝44内に収まっている。
【0023】
図4および図5は、引戸扉Aの端部に取付けた鎌錠Bが仮施錠(または本施錠)状態を示す水平断面図とその要部を示した斜視図である。図2の状態から操作部2の仮施錠押部21を押す(矢印Y3)と、係合溝24が係合軸31を介して揺動体3を反時計回りに揺動させ揺動体3の係合溝33がスライド軸71を介して連結体7およびスライド体5を左方向へスライドさせる。スライド体5のスライド溝52が係合突部62を介して鎌形鉤部6を図5において反時計回りに90度回転させることにより鎌形鉤部6が戸当開口部C1に係合して仮施錠(または本施錠)状態となる。
【0024】
図6および図7は、本施錠をした状態を示す斜視図とスライドストッパー8を示した斜視図である。スライドストッパー8はシリンダー錠Sの端部に一体的に形成されている。シリンダー錠Sを鍵Kで90度回転させることによりスライドストッパー8も90度回転して突部81と平面部82が、ガイド穴43の左端に位置しているスライド軸71の後方および右側面に接触した状態となる。それによりスライド体5は右方向へのスライドが阻止された状態となる。
【0025】
またガイド穴43は平面視がへの字形状であり右から左に向かうに従い後方寄りになり左端近くで前方向に屈曲した屈曲部43aがあるため、スライド軸71が直線的に右方向へ戻ることが妨げられるので、前記スライドストッパー8の動きに若干の遊びがあってもスライド体5は右方向へのスライドが阻止された状態であり、すなわち鎌形鉤部6を時計回りに90度回転させることができない状態で、確実な施錠状態を維持できる。
【符号の説明】
【0026】
A…引戸扉
B…鎌錠
C…隅柱
C1…戸当開口部
1…ケーシング
2…操作部
3…揺動体
4…ガイドケース
5…スライド体
6…鎌形鉤部
7…連結体
8…スライドストッパー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7