【実施例1】
【0031】
図1〜3、
図4〜6において本発明に係る下糸残量検出装置1は、下糸2が巻かれているボビン3をその軸線回りに回転可能に収容するボビンケース5を内部に保持する内釜6と、剣先7を具え該内釜6の外周を回転可能な外釜9とを具えるミシン8において該ボビン3に巻かれている下糸2の残量を、下糸残量検出手段10によって検出するものであり、該内釜6と該外釜9とがミシン釜11を構成している。
【0032】
図2〜3、
図5〜6、
図7〜8に示すように、前記ボビンケース5の周壁部12(
図7)には第1の測定開口13が設けられており、前記ボビンケース5を収容する前記内釜6の周壁部15には第2の測定開口16が設けられており、又、前記外釜9の周壁部17には第3の測定開口19が設けられている。
【0033】
前記下糸残量検出手段10は、本実施例においては、三角測量方式を応用した三角測距方式のレーザ変位計としての光学測定器21を用いて構成されており、
図2〜3、
図5〜6に示すように、前記第1、第2、第3の測定開口13,16,19が連通して連通測定開口22が形成された状態で、該光学測定器21の照射部23から照射光25が、該連通測定開口22を通して前記ボビン3の巻糸部26の前記外周面27に向けて照射され、且つ、該外周面27で反射された反射光29が、該連通測定開口22を通して該光学測定器21の受光部30で受光される如くなされている。
【0034】
そして該下糸残量検出手段10は、該受光部30から出力された光の受光位置情報に基づく三角測距の原理に基づき、前記ボビン3の前記巻糸部26の外周面27の位置を測定するものであり、該測定は複数回行われる如くなされており、該複数回の測定値の内の最低の測定値を前記巻糸部26の外周面27の位置として検知する如くなされている。
【0035】
又、前記最低の測定値に基づいて検出された下糸残量が、ミシンの1回分の縫製を可能とする必要下糸量を有するか否かを判別する判別装置を具えており、更に、前記連通測定開口22を通して前記ボビン3の巻糸部26の外周面27に対してエアを吹き付けるためのエアブロー装置31が設けられている。該エアブロー装置31の吹き付けノズル32の先端のノズル径は、例えば1mmに設定されている。
【0036】
以下、これをより具体的に説明する。
図7は、前記外釜9が反時計回りF(
図1)に回転する垂直全回転釜を具備するミシン8における、前記ミシン釜11と前記ボビン3と前記ボビンケース5を示す斜視図であり、
図8は、該ボビン3と該ボビンケース5を示す斜視図であり、又
図9は、該ボビンケース5にボビン3が収容されている状態を示す断面図である。
【0037】
前記ミシン8は、本実施例においては
図1に示すように、本縫いミシンとして構成され、上糸33と下糸2とにより縫製を行うものであり、例えばエアバックやシートベルトを縫製する。そして前記ボビン3は、例えば
図7〜9に示すように、糸巻筒35の左右端の外面に同径の鍔部36,36を同芯に設けてなり、該糸巻筒35にはその軸線に沿って装着孔37が貫設されている。該ボビン3の該糸巻筒35に巻かれている下糸2は、前記本縫いミシンがエアバックやシートベルトを縫製することに鑑み、そのために通常使用されている番手の糸であり、例えば、約0.5mm直径の糸である。
【0038】
又前記ボビンケース5は、本実施例においては
図7〜9に示すように、後端39が開放した収容空所40を具えるボビンケース本体41の該収容空所40の中心部に、前面部42の内面43で支持筒44が突設されており、該支持筒44には、その軸線に沿って支持孔45が貫設されている。そして、該支持筒44が前記装着孔37に挿通されることにより、前記ボビン3は、
図9に示すように、前記収容空所40内にその軸線回りに回転可能に収容される。又、該支持筒44の前記支持孔45に、前記内釜6内の中心部に突設された支持軸46が挿通されることにより、
図9に示すように、前記ボビンケース5が前記内釜6に支持される。又、
図7に示すように、前記ボビンケース本体41の前面部42の外面47には、その中央部分を横切るように、前記支持筒44(
図8)の開口端面49と連通し得るロック開口50を有するレバー51が設けられている。そして該レバー51を起倒操作することにより、
図9に示すように、前記支持軸46に対して前記支持筒44を着脱でき、該レバー51を
図7に示すように倒すことにより、
図9に示すように、ボビンケース5が前記内釜6に支持された状態でロックされるようになされている。
【0039】
然して前記ミシンは、前記ボビンケース5に収容したボビン3によって下糸2を供給すると共に、ミシン針52(
図1)の1回の上下運動の間に、
図1に矢印Fで示す反時計回りに回転する外釜9の剣先7ですくわれた上糸33が、ループになって前記内釜6を1回通過し、その際に、前記ループになった上糸33の表側糸部分が該内釜6に納められている前記ボビンケース5の表面55を反時計回りFに横切るように構成されている。
【0040】
そして
図7(B)に示すように、前記ボビンケース5の周壁部12には、前記ボビン3に巻かれている前記巻糸部26の外周面27と対向する如く前記第1の測定開口13が設けられている。該第1の測定開口13は、本実施例においては同図に示すように、前記前面部42に寄せて設けられている。該第1の測定開口13の前後方向の幅は例えば4mm程度に設定されると共に、その周方向の長さは例えば12mm程度に設定されている。又、該ボビンケース5を収容する前記内釜6の周壁部15には、
図2〜3、
図5、
図7、
図10に示すように、該第1の測定開口13を完全に含むようにこれと連通し得る第2の測定開口16が設けられている。又前記外釜9の周壁部17は途切れており、
図2〜3、
図7、
図10に示すように、該周壁部17の両端部分間をなす途切れ開口56、即ち、一方の開口端部57と他方の開口端部側に設けられた前記剣先7との間に、略180度の角度範囲で開口する途切れ開口56が、前記第1、第2の測定開口13,16を完全に含むようにこれと連通し得る前記第3の測定開口19を構成している。
【0041】
そして本実施例においては、縫製が完了して糸切り信号が出力されたときには前記剣先7が、
図2に示すように、略最下端位置59にある一方、ミシンの起動信号が出力されたときには前記剣先7が、
図5に示すように、反時計回りで見て、最上端位置から稍行き過ぎた位置(以下、上端側位置ともいう)60にある。かかることから、前記下糸残量検出手段10による前記測定の際には、例えば
図2、
図5、
図10に示すように、前記内釜6の周壁部15の右下部分は前記外釜9で覆われていない状態となる。従って、このように外釜9で覆われていない内釜6の周壁部分61に前記第2の測定開口16を設けることができるのである。そして、該第2の測定開口16と連通するように、前記ボビンケース5の周壁部12に前記第1の測定開口13を設ければ、
図3、
図6、
図10に示すように、該第1、第2、第3の測定開口13,16,19が連通して前記連通測定開口22が形成されることとなる。
【0042】
要するに本実施例においては、前記糸切り信号の出力時における、前記内釜6の前記外釜9によって覆われていない周壁部分61a(
図2)であって、且つ、前記起動信号の出力時における、前記内釜6の前記外釜9によって覆われていない周壁部分61b(
図5)、即ち前記周壁部分61(
図2)に、前記第2の測定開口16が設けられると共に、前記ボビンケース5の周壁部12には、該第2の測定開口16と連通し得る前記第1の測定開口13が設けられている。
【0043】
より詳しく説明すれば、前記剣先7は、糸切り時には略真下、即ち前記略下端位置59(
図2)にあり、且つ、ミシンの起動時には前記上端側位置60(
図5)にある。従って、糸切り時には
図2に示すように、内釜6の周壁部分61の略右半分は開いている。又、起動時には
図5に示すように、前記内釜6の周壁部分61の略下半分が開いている。そこで本実施例においては、この略右半分とこの略下半分とが重なる部分で、内釜6に前記第2の測定開口16を設け、且つこれと連通するように、前記ボビンケース5に第1の測定開口13を設けることとしているのである。
図11は、この重なる部分を説明する説明図であり、前記糸切り信号の出力時における外釜9を太い実線で示すと共に、ミシンの起動時における外釜9を細い実線で示しており、前記した略右半分と略下半分の重なる部分を符号64で示している。そして、この重なる部分64で、前記連通測定開口22が形成される。その結果、1個の光学測定器21によって、後述の第1の測定と第2の測定を行い得ることとなる。
【0044】
前記下糸残量検出手段10は、本実施例においては
図1に示すような、三角測距方式のレーザ変位計21aとしての前記光学測定器21を用いて構成されている。該レーザ変位計21aは、前記ミシン釜11に近接させて定位置に固定されており、前記連通測定開口22を通して前記ボビン3の巻糸部26の前記外周面27に向けて照射レーザ光62を照射する照射部23と、該外周面27で反射された反射レーザ光65を、前記連通測定開口22を通して受光する受光部30を具えている。
【0045】
図2〜3は、前記レーザ変位計21aの照射部63から、照射レーザ光62が、前記連通測定開口22を通して前記支持軸46の中心に向けて照射され、且つ、前記巻糸部26の前記外周面27で反射された反射レーザ光65が、前記連通測定開口22を通して前記レーザ変位計21aの受光部66で受光された状態を示している。本実施例においては、前記外周面27にスポット光が照射される。又本実施例においては、第1、第2、第3の測定開口13,16,19の配置状態を前記のように特定しているため、これらの3つの測定開口13,16,19を確実に合致させることができながら、1個の光学測定器21を用いて後述の第1測定と第2測定を行うことができる。
【0046】
該受光部30で出力された光の受光位置情報に基づく三角測距の原理に基づき、前記巻糸部26の外周面27の前記糸巻筒35の外周面67に対する位置(以下、巻糸部26の表面高さという)を測定できる。然して、該巻糸部26の表面高さH(
図3、
図6)と、前記ボビン3に巻かれている下糸残量とを対応付けておくことにより、該巻糸部26の表面高さHによって、ボビン3に巻かれている下糸残量を検出できることとなる。そして、該下糸残量を検出するために用いられる測定値は、前記複数回の測定値の内の最低の測定値である。測定を複数回行うのは、測定誤差が出にくいようにするためである。但し、複数回の測定のための時間が長いと生産性が悪くなるので、この複数回の測定は、短時間で行うのがよい。この短時間として、例えば1/100秒を例示できる。又、最低の測定値を用いるのは、下糸残量をより正確に検出するためである。より具体的には、前記巻糸部26の外周面27に、糸の巻ムラによる凹凸が生じている場合があるが、この凹凸に極力影響されにくくするためであり、又、下糸の弛み部分69の表面70(
図13(A))での反射レーザ光65が受光部30で受光された場合等の極端な測定値を除外して、下糸残量をより正確に検出するためである。
【0047】
ところで、所定の縫製が完了した後に下糸が切断された場合は、この切断の際にボビン3が何回転かの空転状態となるために、例えば
図13(A)に示すように、前記巻糸部26の外周面27に下糸の弛みが発生している。又、縫製中においても、布送りの際等における慣性作用等によるボビン3の空転に起因して下糸の弛みが発生する場合がある。これらの原因によって、弛んだ糸が何回か巻き付いているときは、複数回の測定値の内の最低の測定値を前記外周面27の位置として測定できたとしても誤作動が生ずる恐れがある。下糸の弛み部分69の表面70での測定値が最低値として検出されたとすれば、前記巻糸部26の表面高さHが実際よりも大きくなってしまうからである。
【0048】
このような場合は、前記エアブロー装置31の吹付けズル32から、
図13(B)(C)に示すように、前記連通測定開口22を通して、前記外周面27の内の前記連通測定開口22と対向する部分27Aに向けてエアを吹き付ける。これによって、前記下糸の弛み部分69を、
図13(B)に示すように、前記糸巻筒35の左右何れか一方の端部側71aに移動させたり、
図13(C)に示すように、前記糸巻筒35の左右の端部側71a,71bに分けて移動させたりして、該下糸の弛み部分69を前記外周面27の内の前記連通測定開口22と対向する部分27Aから除け易くなる。それ故、ボビン3に巻かれている下糸2に弛みが発生していたとしても、糸の弛みに極力影響されない状態での最低値の測定が可能となり、巻糸部26の外周面27の測定精度を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施例においては
図2、
図5に示すように、同一のエア供給源から供給されるエアの一部が前記エアブロー装置31に供給される一方、残余のエアが、
図1〜2、
図4〜5に示すように、付着防止ノズル72を介して、前記レーザ変位計21aの前記照射部23のカバー部表面73と前記受光部30のカバー部表面75に向けて吹き付けられるようになされている。この吹き付けによって、該カバー部表面73,75に糸埃や潤滑油等が付着しにくくなし得、これらの付着による測定誤差の発生を防止できる。前記エアの吹き付けは、連続的に行ってもよいのであるが、本実施例においてはエア消費量を極力少なくするために、前記連通測定開口22の形成タイミングに合わせて間欠的に行うこととしている。そして、このタイミングに合わせて前記カバー部表面73,75にエアが吹き付けられる。なお、前記吹付けノズル32によるエア吹き付けと前記付着防止ノズル72によるエア吹き付けは、個別のエア供給源で行ってもよい。
【0050】
前記最低の測定値に基づいて検出された下糸残量が、ミシンの1回分の縫製を可能とする必要下糸量を有するか否かの判別は前記判別装置で行われる。該判別装置にあっては、1回分の縫製を可能とする必要下糸量が前記糸巻筒35に巻かれているとした場合の前記表面高さHがしきい値として設定されているため、測定された前記表面高さHがこのしきい値を下回った場合は、報知手段が、例えば、赤ランプを点灯させ且つブザーを鳴らすことによって報知する。ここで、必要下糸量とは、1回分の縫製のために消費される縫製必要下糸量に捨て糸量を加算した下糸量を言う。この捨て糸量は、縫製中において下糸2がボビン3の糸巻筒35を滑って抜けてくることがないように設定されるものであり、前記糸巻筒35に少なくとも一巻は残るように設定する。より好ましくは、多少の測定誤差も考慮して、後述のように、幾分余裕を見て設定する。
【0051】
ここで、前記判別装置による残糸量の判別の一例を説明する。今、例えばエアバッグの縫製を行う場合において、糸の太さが0.5mmで、ミシンの1回分の縫製を可能とする縫製必要下糸量が785mmであるとしたとき、しきい値を0.7mmに設定したとする。この縫製必要下糸量は、縫いピッチに運針数を乗じて算出できる。この場合、最低測定値に基づく前記巻糸部26の表面高さHが0.8mmであったとすれば、縫製必要下糸量である785mmを確保でき、この必要下糸量が完全に消費された状態においても、前記ボビン3の前記糸巻筒35には、摩擦を確保して縫製を不安定化させない程度の長さ(例えば800mm程度の長さ)の下糸が巻き付けられた状態が得られる。この場合において、最低測定値に基づく前記巻糸部26の表面高さが0.69mmであったとすれば、これはしきい値を下回るため、前記判別装置が、ミシンの1回分の縫製を可能とする必要下糸量を有さないと判別して、例えば、赤ランプが点灯し且つブザーが鳴って、必要な下糸残量がないことを報知する。
【0052】
次に、前記レーザ変位計21aによる具体的な測定方法を説明する。本実施例においては、糸切り信号が出力された後であり且つ下糸の切断が開始されるまでの時間帯に行う第1測定と、測定をより確実化するためにミシンの起動時に行われる第2測定について説明する。
【0053】
先ず、前記第1測定について説明する。この第1測定は、前記連通測定開口22が形成されている状態において、前記糸切り信号の出力と同期して開始される如くなされ、又該測定は、糸切り信号が出力された後であり且つ下糸の切断が開始されるまでの時間帯に、例えば1/100秒当り複数回(例えば5回)行われる。
図2は、前記糸切り信号が出力された時点における外釜9の剣先7の位置を示しており、該剣先7は、前記の略最下端位置59にある。この状態で前記連通測定開口22が形成される。該外釜9は、
図2において反時計回りFに回転しており、前記複数回の測定は、該剣先7が該連通測定開口22を覆わない時間帯に行われる。前記測定の間は、照射レーザ光62と反射レーザ光65を通過させるための前記連通測定開口22が前記剣先7で覆われていないことが必須となる。そこで本実施例においては、
図12に示すように、前記した略最下端位置59にある前記剣先7が前記連通測定開口22に達するまでに該剣先7が反時計回りに回転する角度θを、若干余裕をみて36度と設定している。今、糸切り時点におけるミシンの回転数(例えば400回転)との関係でこの36度の回転の為に0.02秒を要するとしたとき、前記レーザ変位計21aは、この間に50〜60回測定する。
【0054】
そして前記レーザ変位計21aは、該複数回の測定値の内の最低の測定値を前記巻糸部26の外周面27の位置として検出する。従って、例えば
図14に示すように、4巻目の下糸2が前記ボビン3の糸巻筒35の外周面67の全幅Lには巻かれてはおらず該糸巻筒35の全幅Lの一部分にだけ巻かれている状態であったとしても、検出された該最低の測定値が、
図14(A)に示す、一段低い外周面27aの表面高さHであるときは、より正確な測定がなされたことになる。この場合、検出された前記最低の測定値が、
図14(B)に示す、一段高い外周面27bの表面高さHであるときも生ずる。このように、一段低い巻糸部の外周面27aが最低の測定値とされるか、一段高い巻糸部の外周面27bが最低の測定値とされるかによって、表面高さHには、一巻分程度の誤差が生ずることにもなる。そのため、かかる測定誤差を考慮して、前記捨て糸量を一巻分の余裕を見て設定するのが好ましいと言える。このことが、前記した「幾分余裕を見て設定する」の意味である。
【0055】
前記第1測定は、前記のように、糸切り信号が出力された後であり且つ下糸の切断が開始されるまでの時間帯に行われる。糸切り信号が出力された後、下糸の切断が開始されるまでの時間帯にあっては、下糸が被縫製物に繋がった状態にあるため、ボビンの巻糸部26の外周面27に、通常は、下糸の弛みが発生していない。従って、該時間帯に測定を行うことにより、該巻糸部26における下糸の弛み発生が極力少ない状態での測定が可能となり、ミシン稼働中においても、より正確に測定できることとなる。しかしながら、縫製中においても、例えば
図13(A)に示すように、布送りの際等における慣性作用等によるボビンの空転に起因して下糸の弛みが発生している場合がある。そこで前記エアブロー装置31により、
図13(B)(C)に矢印で示すように、前記連通測定開口22を通して前記ボビン3の巻糸部26の外周面27に対してエアを吹き付ける。
【0056】
これにより、例えば
図13(B)や
図13(C)に示すように、下糸の弛み部分69を前記外周面27の内の前記連通測定開口22と対向する部分22Aから除け易い。それ故、ボビン3に巻かれている下糸に、このような弛みが発生していたとしても、糸の弛みに極力影響されない状態での最低値の測定が可能となり、巻糸部の外周面27の測定精度を向上させることができる。
【0057】
前記最低の測定値に基づいて検出された下糸残量が、ミシンの1回分の縫製を可能とする必要下糸量を有するか否かの判別は前記判別装置で行われる。該判別装置にあっては、1回分の縫製を可能とする必要下糸量が前記糸巻筒35に巻かれているとした場合の前記表面高さHがしきい値として設定されているため、測定された該表面高さがこのしきい値を下回った場合は、報知手段が、例えば、赤ランプを点灯させ且つブザーを鳴らすことによって報知する。下糸残量の不足が報知された時は、当該ボビンを、下糸が容量一杯に巻かれたボビンと交換する。
【0058】
次に、前記第2測定について説明する。この第2測定は、ミシンの起動信号の出力と同期して測定が開始される。起動信号の出力と同期して測定を開始することにより、作業者が交代した場合や停電になった場合等において縫製を再開する場合に、少なくとも1回分の縫製を可能とする必要下糸量がボビンに残っているか否かをミシン起動時に確認できることとなる。これにより、下糸残量の検出を入念に行い得ることとなり、縫製不良の発生をより確実に防止できることとなる。
【0059】
図5は、ミシンの起動時における前記外釜9の姿勢を示すものであり、前記剣先7が前記上端側位置60にあって、前記第1、第2、第3の測定開口13,16,19が連通状態にある。この状態で、前記と同様にして、前記レーザ変位計21aの照射部23から照射レーザ光62が前記連通測定開口22を通して前記外周面27に向けて照射され、且つ、該外周面27で反射した反射レーザ光65が、該連通測定開口22を通して該レーザ変位計21aの受光部30で受光される。そして、該受光部30から出力された光の受光位置情報に基づく三角測距の原理に基づき、前記巻糸部26の表面高さH(
図6)が測定される。該測定は例えば、1/100秒当り複数回(例えば5回)行われ、該複数回の測定値の内の最低の測定値を、前記巻糸部26の外周面27の位置として検出する。
【0060】
ミシンの起動時においては、所定の縫製完了後の下糸切断によって前記巻糸部26の外周面27に下糸2の弛みが発生していることが多いため、前記測定の際、前記エアブロー装置31により、前記と同様にして、前記連通測定開口22を通して該外周面27に対してエアを吹き付ける。このエア吹き付けにより、
図13に基づいて説明したと同様にして、下糸の弛み部分69を、前記外周面27の内の前記連通測定開口22と対向する部分27Aから除け易い。それ故、ボビン3に巻かれている下糸2に弛みが発生していても、糸の弛みに極力影響されない状態での最低値の測定が可能となり、巻糸部26の外周面27の測定精度を向上させることができる。
【0061】
そして、前記最低の測定値に基づいて検出された下糸残量が、ミシンの1回分の縫製を可能とする必要下糸量を有するか否かの判別は前記判別装置で行われる。該判別装置にあっては、1回分の縫製を可能とする必要下糸量が前記糸巻筒35に巻かれているとした場合の前記表面高さHがしきい値として設定されているため、測定された前記表面高さHがこのしきい値を下回った場合は、報知手段が、例えば、赤ランプを点灯させ且つブザーを鳴らすことによって報知する。ボビン3の下糸残量の不足が報知された時は、当該ボビン3を、下糸が容量一杯に巻かれたボビンと交換する。検出された下糸の残量が、ミシンの1回分の縫製を可能とする必要下糸量を有すると判別された場合は、ミシンの縫製が開始される。