【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成22年12月1日、http://jcem.endojournals.org/content/early/2010/12/01/jc.2010−1935 http://jcem.endojournals.org/content/96/2/548 http://jcem.endojournals.org/content/96/2/548.full http://jcem.endojournals.org/content/96/2/548.full.pdf http://jcem.endojournals.org/content/96/2/548.full.pdf+html http://jcem.endojournals.org/content/96/2/548/suppl/DC1 http://jcem.endojournals.org/content/suppl/2010/12/01/jc.2010−1935.DC1/10−1935_figs_1_and_2.pdf及びhttp://jcem.endojournals.org/content/96/2/548.shortを通して発表 平成23年2月1日、The Endocrine Society 発行の刊行物「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism February 2011・Volume96・Number2」に発表 平成22年12月1日、http://www.nih.gov/news/health/dec2010/niddk−01.htmを通して発表
【文献】
REGISTRY(STN) [ONLINE],2000年12月20日(検索日:2015年2月6日)、CAS登録番号309926-35-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
甲状腺がんが基礎的なTSHRシグナル伝達活性を示す甲状腺がんであり、かつ前記化合物が該TSHRシグナル伝達活性を阻害することを特徴とする、請求項29記載の薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
用語
用語および方法の以下の説明は、本化合物、組成物および方法をより良く記述するために、また本開示の実施において当業者を指導するために示される。本開示において使用する用語法が特定の態様および例のみを記述するためのものであり、限定的であるようには意図されていないということも理解すべきである。
【0020】
本明細書において使用する単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」および「その(the)」は、文脈上別途明らかな指示がない限り、複数の参照対象を含む。同様に、「または」という語は、文脈上別途明らかな指示がない限り、「および」を含むように意図されている。また、本明細書において使用する「含む(comprises)」という用語は「含む(includes)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising)」とはA、B、またはAおよびBを含む(including)ことを意味する。
【0021】
「化合物の投与」および「化合物を投与する」は、本明細書に記載の化合物、化合物のプロドラッグ、または薬学的組成物を与えることを意味すると理解すべきである。化合物または組成物は、別の人物によって対象に投与する(例えば静脈内)ことができ、または対象によって自己投与する(例えば錠剤)ことができる。
【0022】
「任意的な」または「任意的に」とは、続いて記述される事象または状況が生じうるがそうなる必要はなく、その記述が該事象または状況が生じる場合およびそれが生じない場合を含むということを意味する。
【0023】
「誘導体」とは、親化合物から誘導されるかまたは理論的に誘導可能である、化合物または化合物の一部を意味する。
【0024】
「対象」という用語はヒト対象および獣医学対象の両方を含む。
【0025】
「処置」とは、疾患または病理状態の徴候または症状をそれが発生し始めた後に寛解させる治療介入を意味する。本明細書において使用する、疾患または病理状態に関する「寛解させる」という用語は、処置の任意の観察可能である有利な効果を意味する。有利な効果は、例えば感受性がある対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部もしくはすべての臨床症状の重症度の減少、疾患の進行の緩徐化、対象の全体的健康もしくは安心の改善、または特定の疾患に特有である当技術分野で周知の他のパラメータによって証明することができる。「疾患を処置する」という語句は、例えばホルモン受容体媒介性障害、特に甲状腺機能亢進性障害または甲状腺機能低下性障害などの甲状腺障害などの疾患の危険性がある対象において疾患または状態の完全な発生を阻害することを意味する。「予防的」処置とは、病理を発生させる危険性を減少させるために、疾患の徴候を示していないかまたは初期徴候のみを示す対象に実施する処置のことである。「同時投与する」という用語は、少なくとも2つの各化合物が、それぞれの生物活性期間が重なる時間枠中に投与されることを意味する。したがって、この用語は2つ以上の薬物化合物の順次投与および同期間投与を含む。
【0026】
「薬学的に許容される塩またはエステル」という用語は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸などを含むがそれに限定されない無機酸および有機酸の塩基性塩を含む、慣用的手段により調製される塩またはエステルを意味する。また、本明細書に開示される化合物の「薬学的に許容される塩」としては、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛などのカチオン、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基から形成されるものが挙げられる。これらの塩は標準的手順、例えば遊離酸と好適な有機塩基または無機塩基とを反応させることにより調製することができる。本明細書に列挙される任意の化合物は、薬学的に許容されるその塩として投与することもできる。「薬学的に許容される塩」は遊離の酸、塩基および双性イオン形態も含む。好適な薬学的に許容される塩の記述はHandbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, Wiley VCH (2002)に見出すことができる。本明細書に開示される化合物がカルボキシ基などの酸性官能基を含む場合、カルボキシ基の好適な薬学的に許容されるカチオン対は当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、四級アンモニウムカチオンなどを含む。そのような塩は当業者に公知である。「薬理学的に受容できる塩」のさらなる例はBerge et al., J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照。「薬学的に許容されるエステル」としては、ヒドロキシ基またはカルボキシル基を含むように修飾された、本明細書に記載の化合物から誘導されるものが挙げられる。インビボ加水分解性エステルとは、ヒトまたは動物の体内で加水分解されて親酸または親アルコールを生成するエステルのことである。カルボキシの好適な薬学的に許容されるエステルとしては、化合物中の任意のカルボキシ基において形成可能なC
1-6アルコキシメチルエステル、例えばメトキシ-メチル、C
1-6アルカノイルオキシメチルエステル、例えばピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C
3-8シクロアルコキシカルボニルオキシC
1-6アルキルエステル、例えば1-シクロヘキシルカルボニル-オキシエチル; 1,3-ジオキソレン-2-オニルメチルエステル、例えば5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニルメチル; およびC
1-6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば1-メトキシカルボニル-オキシエチルが挙げられる。
【0027】
ヒドロキシ基を含有するインビボ加水分解性エステルとしては、エステルのインビボ加水分解の結果として分解して親ヒドロキシ基を生じさせる、リン酸エステルなどの無機エステル、およびα-アシルオキシアルキルエーテル、ならびに関連化合物が挙げられる。α-アシルオキシアルキルエーテルの例としてはアセトキシ-メトキシおよび2,2-ジメチルプロピオニルオキシ-メトキシが挙げられる。ヒドロキシのインビボ加水分解性エステルを形成する基の選択としては、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、ならびに置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(炭酸アルキルエステルを生じさせる)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバミン酸エステルを生じさせる)、ジアルキルアミノアセチル、ならびにカルボキシアセチルが挙げられる。ベンゾイル上の置換基の例としては、環窒素原子からメチレン基を経由してベンゾイル環の3位または4位に連結されるモルホリノおよびピペラジノが挙げられる。
【0028】
治療用途では、化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容される塩である。しかし、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば薬学的に許容される化合物の調製または精製に用途を見出すことができる。
【0029】
上記で言及した薬学的に許容される酸および塩基付加塩は、化合物が形成することができる治療上活性な無毒の酸および塩基付加塩の形態を含むように意図されている。薬学的に許容される酸付加塩は、塩基形態をそのような適切な酸で処理することにより好都合に得ることができる。例えば、適切な酸としては、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸もしくは臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸; または例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわちエタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(すなわちヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸などの有機酸が挙げられる。逆に、前記塩形態を適切な塩基での処理によって遊離塩基形態に変換することができる。
【0030】
また、酸性プロトンを含有する化合物を、適切な有機塩基および無機塩基での処理によってそれらの無毒の金属またはアミン付加塩形態に変換することができる。例えば、適切な塩基塩形態としては、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、ヒドラバミン塩、および例えばアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。
【0031】
上記で使用した「付加塩」という用語は、本明細書に記載の化合物が形成することができる溶媒和物も含む。そのような溶媒和物としては例えば水和物、アルコール和物などがある。
【0032】
上記で使用した「四級アミン」という用語は、化合物の塩基性窒素と例えば置換されていてもよいハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アリールアルキル、例えばヨウ化メチルまたはヨウ化ベンジルなどの適切な四級化剤との間の反応によって化合物が形成することができる四級アンモニウム塩を定義する。良い脱離基を有する他の反応物質、例えばトリフルオロメタンスルホン酸アルキル、メタンスルホン酸アルキルおよびp-トルエンスルホン酸アルキルを使用することもできる。四級アミンは正に帯電した窒素を有する。薬学的に許容される対イオンとしてはクロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテートおよびアセテートが挙げられる。選択される対イオンをイオン交換樹脂を使用して導入することができる。
【0033】
本明細書に記載の化合物が金属結合特性、キレート化特性、錯体形成特性を有しうるものであり、したがって金属錯体または金属キレートとして存在しうることが理解されよう。
【0034】
「飽和または不飽和」は、水素で飽和した置換基、水素で完全不飽和した置換基、および水素で部分飽和した置換基を含む。
【0035】
「アシル」という用語は、Rが有機基である式RC(O)-の基を意味する。
【0036】
「アルキル」という用語は、1〜24個の炭素原子の分岐状または非分岐状の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどを意味する。「低級アルキル」基とは、1〜10個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状の飽和炭化水素のことである。好ましいアルキル基は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、1個または複数の水素原子がハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリールまたはカルボキシルなどの置換基で置換された「置換アルキル」でありうる。
【0037】
「アルケニル」という用語は、2〜24個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する構造式の炭化水素基を意味する。
【0038】
「アルキニル」という用語は、2〜24個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する構造式の炭化水素基を意味する。
【0039】
「ハロゲン化アルキル」または「ハロアルキル基」という用語は、上記定義のアルキル基であって、これらの基上に存在する1個または複数の水素原子がハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたアルキル基を意味する。
【0040】
「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子で構成される非芳香族炭素系環を意味する。シクロアルキル基の例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるがそれに限定されない。「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、環の少なくとも1個の炭素原子が窒素、酸素、硫黄またはリンなどであるがそれに限定されないヘテロ原子で置換された上記定義のシクロアルキル基のことである。
【0041】
「脂肪族」という用語は、先に記載のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基およびシクロアルキル基を含むものとして定義される。「低級脂肪族」基とは、1〜10個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状の脂肪族基のことである。
【0042】
「アルコキシ」という用語は、結合点において酸素原子を含む、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状または環状炭化水素配置およびその組み合わせを意味する。「アルコキシ基」の一例は式-ORで表され、式中、Rは先に記載のアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基またはヘテロシクロアルキル基で置換されていてもよいアルキル基でありうる。好適なアルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0043】
「アルコキシカルボニル」とはアルコキシ置換カルボニル基-C(O)ORを意味し、式中、Rは置換されていてもよいアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたは同様の部分を表す。
【0044】
「アルキルアミノ」という用語は、少なくとも1個の水素原子がアミノ基で置き換えられた上記定義のアルキル基を意味する。
【0045】
「アミノカルボニル」とは、単独または組み合わせで、アミノ置換カルボニル(カルバモイル)基を意味し、ここでアミノ基は例えばアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニルなどで一置換または二置換されていてもよい。アミノカルボニル基は-N(R)-C(O)-R(式中、Rは置換基もしくはHである)または-C(O)-N(R)
2でありうる。「アミノカルボニル」はアミド基を含む。好適なアミノカルボニル基はアセトアミドである。
【0046】
「アリール」という用語は、ベンゼン、ナフタレンなどを含むがそれに限定されない任意の炭素系芳香族基を意味する。「芳香族」という用語は「ヘテロアリール基」も含み、これは少なくとも1個のヘテロ原子が芳香族基の環内に包含された芳香族基として定義される。ヘテロ原子の例としては窒素、酸素、硫黄およびリンが挙げられるがそれに限定されない。アリール基はアルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸またはアルコキシを含むがそれに限定されない1個または複数の基で置換されていてもよく、あるいは、アリール基は非置換でもよい。
【0047】
「カルボニル」とは式-C(O)-の基を意味する。カルボニル含有基は、炭素-酸素二重結合(C=O)を含有する任意の官能基を含み、アシル基、アミド、カルボキシ基、エステル、尿素、カルバメート、カーボネート、ならびにケトンおよびアルデヒド、例えばRが脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、または二級、三級もしくは四級アミンである-CORまたは-RCHOに基づく置換基が挙げられる。
【0048】
「カルボキシル」とは-COOH基を意味する。置換カルボキシルとは、Rが脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、ヘテロアルキル、またはカルボン酸もしくはカルボン酸エステルである-COORを意味する。
【0049】
「ヒドロキシル」という用語は式-OHで表される。
【0050】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1個の水素原子がヒドロキシル基で置換されたアルキル基を意味する。「アルコキシアルキル基」という用語は、少なくとも1個の水素原子が先に記載のアルコキシ基で置換されたアルキル基として定義される。
【0051】
「アミン」または「アミノ」という用語は式-NRR'の基を意味し、式中、RおよびR'は独立して水素、または先に記載のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基もしくはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0052】
「アミド(amide)」または「アミド(amido)」という用語は式-C(O)NRR'で表され、式中、RおよびR'は独立して水素、先に記載のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基またはヘテロシクロアルキル基でありうる。好適なアミド基はアセトアミドである。
【0053】
「アラルキル」という用語は、上記定義のアルキル基が上記定義のアリール基に結合した、アリール基を意味する。アラルキル基の一例はベンジル基である。
【0054】
「置換されていてもよいアルキル」などの置換されていてもよい基は、置換されている場合、アルコキシ、置換されていてもよいアルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、アリール、カルボキシアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、ハロゲン、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、ヒドロキシ、スルホニル、チオールおよびチオアルコキシより選択される1〜5個の置換基、典型的には1、2または3個の置換基を有する、アルキル基などの基を意味する。特に、置換されていてもよいアルキル基としては、トリフルオロメチル基を含むがそれに限定されないフルオロアルキル基などのハロアルキル基が例として挙げられる。
【0055】
「治療有効量」または「診断有効量」とは、特定の薬剤で処置される対象において所望の効果を実現するために十分なその薬剤の量を意味する。例えば、これは対象において甲状腺がんを検出または処置する上で有用な本明細書に開示される化合物の量でありうる。理想的には、薬剤の治療有効量または診断有効量は、対象において相当な細胞毒性効果を引き起こさずに疾患を阻害または処置するために十分な量である。薬剤の治療有効量または診断有効量は、処置される対象、病気の重症度、および治療用組成物の投与様式に依存する。
【0056】
開示される化合物のプロドラッグも本明細書において想定される。プロドラッグとは、対象へのプロドラッグの投与後に加水分解、代謝などのインビボ生理作用を通じて化学修飾されて活性化合物になる、活性または不活性化合物のことである。プロドラッグを作製および使用することに関する適合性および技術は当業者に周知である。エステルを包含するプロドラッグの一般的考察についてはSvensson and Tunek Drug Metabolism Reviews 165 (1988)およびBundgaard Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照。
【0057】
薬学的に許容されるプロドラッグとは、対象において代謝されて、例えば加水分解または酸化されて本開示の抗ウイルス化合物を形成する化合物を意味する。プロドラッグの典型例としては、活性化合物の官能性部分上にあるかまたはそれを他のやり方で遮断する1個または複数の生物学的に不安定な保護基を有する化合物が挙げられる。プロドラッグとしては、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、脱リン酸化されて活性化合物を生成することができる化合物が挙げられる。概して本明細書に開示されるプロドラッグ化合物は、ホルモン受容体調節活性を有し、かつ/または、インビボで代謝されるかまたは他のやり方で加工されて、そのような活性を阻害する化合物を形成する。
【0058】
また「プロドラッグ」という用語は、プロドラッグを対象に投与する際に本発明の活性親薬物をインビボで放出する任意の共有結合担体を含むように意図されている。多くの場合、プロドラッグが活性医薬品に比べて強化された溶解性およびバイオアベイラビリティなどの特性を有することから、本明細書に開示される化合物はプロドラッグ形態で送達されうる。したがって、本明細書に開示される化合物のプロドラッグ、プロドラッグを送達する方法、およびそのようなプロドラッグを含有する組成物も想定される。典型的には、開示される化合物のプロドラッグは、修飾が日常的操作またはインビボのいずれかで開裂されて親化合物を生じさせるように、化合物に存在する1個または複数の官能基を修飾することで調製される。プロドラッグとしては、インビボで開裂されてそれぞれ対応するアミノおよび/またはホスホネート基を生じさせる任意の基で官能化されたホスホネートおよび/またはアミノ基を有する化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、アシル化アミノ基および/またはホスホン酸エステルもしくはホスホン酸アミド基を有する化合物が挙げられるがそれに限定されない。特定の例では、プロドラッグはホスホン酸イソプロピルエステルなどのホスホン酸低級アルキルエステルである。
【0059】
開示される化合物の保護誘導体も想定される。開示される化合物で使用される種々の好適な保護基はGreene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999に開示されている。
【0060】
概して保護基は、分子の残りの部分に影響しない条件下で除去される。これらの方法は当技術分野で周知であり、酸加水分解、水素化分解などが挙げられる。1つの好ましい方法は、エステルの除去、例えば、TMS-Brを媒介するエステル開裂などのルイス酸条件を使用するホスホン酸エステルの開裂によって遊離ホスホネートを生じさせることを包含する。第2の好ましい方法は、保護基の除去、例えばアルコール、酢酸など、またはその混合物などの好適な溶媒系中でのパラジウム担持炭素を利用する水素化分解によるベンジル基の除去を包含する。t-ブトキシカルボニル保護基を含むt-ブトキシ系基は、水、ジオキサンおよび/または塩化メチレンなどの好適な溶媒系中でHClまたはトリフルオロ酢酸などの無機酸または有機酸を利用して除去することができる。アミノおよびヒドロキシ官能基を保護するために好適である別の例示的保護基はトリチルである。他の慣用的保護基は公知であり、好適な保護基はGreene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999を参照して当業者が選択することができる。アミンを脱保護する場合、得られた塩を容易に中和して遊離アミンを生じさせることができる。同様に、ホスホン酸部分などの酸部分を脱保護する(unveiled)場合、化合物を酸化合物またはその塩として単離することができる。
【0061】
本明細書に開示される化合物の特定の例は1つまたは複数の不斉中心を含み、したがってこれらの化合物は異なる立体異性形態で存在しうる。したがって、化合物および組成物を個々の純粋な鏡像異性体として、またはラセミ混合物を含む立体異性混合物として与えることができる。特定の態様では、本明細書に開示される化合物は、実質的にエナンチオピュアな形態、例えば90%の鏡像体過剰率、95%の鏡像体過剰率、97%の鏡像体過剰率、さらには99%を超える鏡像体過剰率、例えばエナンチオピュアな形態に合成されるか、またはそうなるように精製される。
【0062】
本明細書に記載の化合物の置換基および置換パターンを、化学的に安定した、当技術分野で公知の技術、さらには本開示に記載の方法で容易に合成可能な化合物が得られるように、当業者が選択することができると理解される。以下、本明細書において好ましい化合物に詳細に言及する。
【0063】
概観
TSHまたはTSAbにより刺激されるシグナル伝達を阻害するTSHRのニュートラルアンタゴニストである化合物、ならびにTSHおよびTSAbにより刺激されるシグナル伝達を阻害しかつ基礎的なシグナル伝達を阻害するインバースアゴニストである化合物が本明細書に開示される。
【0064】
上記のように、TSHRのその内因性ホルモンTSHによる活性化は、正常な甲状腺ホメオスタシスのために必要ではあるが、脂肪細胞(脂肪)前駆細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、免疫細胞および骨を含む甲状腺の機能を制御することもある。TSHRは、TSHによる刺激に依存しない活性も示し、これをアゴニスト非依存性基礎活性または構成的活性と称する。アゴニスト非依存性シグナル伝達活性は、いくつかの甲状腺疾患状態において重要であると考えられる(下記参照)。
【0065】
甲状腺細胞中の、ならびにおそらくは眼の背後の(後眼窩腔内の)支持組織中の線維芽細胞および脂肪細胞中のTSHRもTSHR刺激抗体(TSAb)により刺激され、これによりグレーブス病が生じる。米国の人口の1%において生じる自己免疫疾患であるグレーブス病は2つの重要な臨床的構成要素を有する。1) 甲状腺細胞上のTSHRの刺激による甲状腺機能亢進症、ならびに2) 後眼窩線維芽細胞および/または脂肪細胞上のTSHRの刺激により生じるようであるグレーブス眼窩症(またはグレーブス眼症もしくは甲状腺眼疾患)。
【0066】
グレーブス甲状腺機能亢進症は、体内の実質的にすべての組織/細胞を冒す異化亢進状態であり、特に循環器機能障害および死を導くことがある。グレーブス甲状腺機能亢進症は、外科的切除により、治療量の放射性ヨウ素により、または薬理学的に(メチマゾールもしくはプロピルチオウラシル)処置することができる。しかし、これらの各処置様式はそれに関連する副作用を有する(Cooper DS, 2005 N Engl J Med, 352, 905-917)。
【0067】
グレーブス眼窩症は、コンピュータ断層撮影スキャンにより診断されるグレーブス甲状腺機能亢進症患者の80%において生じる。症状は軽度から中程度、重度、失明寸前にわたる。眼球の突出(眼球突出)、ならびに複視(二重視)を導く様々な程度の外眼筋の筋力低下または麻痺は、外観および身体機能を損なうことがある。グルココルチコイドによる処置は何らかの改善を与えうるが、甲状腺機能亢進性状態の正常状態への矯正は効果がない。角膜擦過傷、または視神経に対する圧力によって視力が脅かされることがあり、静脈内グルココルチコイドを使用する救急治療、および眼窩放射線治療、ならびにいくつかの場合では眼窩の外科的減圧術が必要になる(Bahn RS 2010, N Engl J Med 362, 726-738)。有害副作用がないグレーブス眼窩症の単純な治療は存在しない。
【0068】
手術、放射性ヨウ素、または甲状腺ホルモン合成を遮断する薬物(メチマゾールもしくはプロピルチオウラシル)によるグレーブス甲状腺機能亢進症の処置は、甲状腺機能亢進性状態を減少または消滅させるが、グレーブス甲状腺機能亢進症またはグレーブス眼窩症の根本的原因、すなわち甲状腺細胞または後眼窩細胞を刺激するTSHR活性化抗体の存在には対処せず、したがってグレーブス眼窩症を処置しない。TSHRインバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストはいずれも、甲状腺細胞および後眼窩細胞においてTSHRのTSHR刺激自己抗体による刺激を遮断することから、グレーブス甲状腺機能亢進症およびグレーブス眼窩症の有効な治療薬でありうる。
【0069】
TSHRインバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストにより処置可能な第2の疾患は甲状腺がんである。TSHRは甲状腺がん細胞中で発現し、甲状腺がん細胞の成長、増殖および転移能を制御する。周知のように、甲状腺は体内の代謝調節部位の1つである。甲状腺がんは特に一般的ではないが、高い疾患再発率により長期監視が必要となる。通常、甲状腺がんの処置中に、甲状腺腫瘍の大部分は除去されるが、多くの場合は少量が残り、放射性ヨウ素治療により処置しなければならない。実際、甲状腺がんは、治療の成功後であっても患者の最大30%という高い再発可能性を特徴とする。したがって、経過観察検診が必要である。
【0070】
原発性甲状腺がん処置(外科的切除または放射性ヨウ素切除)の後、血清中TSHレベルを低下させ、それによりがん細胞の成長、増殖および転移のTSH刺激を阻害するために、下垂体TSHの甲状腺ホルモン抑制が通常推奨される。しかし、甲状腺ホルモンの投与は、不整脈および他の有害な循環器効果の危険性増大が理由で、循環器に問題がある患者において禁忌である。インバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストは、下垂体TSHを抑制できない患者においてTSHR活性を阻害することにより腫瘍成長を抑制する可能性がある。いくつかの場合、投与された甲状腺ホルモンによるTSHの抑制にもかかわらず、甲状腺がんは再発する。これは、構成的活性型TSHRのアゴニスト非依存性の成長および増殖促進活性が理由でありうる。インバースアゴニスト(構成的TSHR活性を阻害する)が有効な処置薬である可能性がある。
【0071】
稀に、TSHRは遺伝性変異を含有しており、遺伝性変異によってそれは正常TSHRよりも活性が高くなり、遺伝性非免疫甲状腺機能亢進症が生じる。TSHRのインバースアゴニストはこれらの患者にも有効な処置薬である可能性がある。
【0072】
本明細書において使用する「インバースアゴニスト」とは、基礎的またはTSH非依存性もしくは構成的TSHR活性を阻害する薬剤を意味する。インバースアゴニストは、TSH活性化を阻害するアンタゴニストでもありうる。特に、本明細書において使用する「インバースアゴニスト」とは、TSHおよび甲状腺刺激抗体非依存性(基礎的または構成的)TSHR活性を阻害しかつTSHおよび甲状腺刺激抗体依存性活性化を阻害する薬剤を意味する。対照的に、「ニュートラルアンタゴニスト」は、アゴニスト(TSHRに対するTSHまたは甲状腺刺激抗体)の作用を遮断するが、基礎的/構成的TSHR活性を阻害しない。したがって、インバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストはいずれも、TSHおよび甲状腺刺激抗体によるTSHRの活性化に拮抗する。TSHRの低分子リガンド(アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニスト)は、受容体の膜内ドメインに結合するものであり、受容体上のその細胞外部位に結合するTSHをめぐって単に競合するよりむしろ立体構造変化を誘導することにより作用する。
【0073】
低分子(例えば1000ダルトン未満)のインバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストは、TSH、その類似体または抗TSHR抗体に比べてプローブおよび薬物として容易に使用されることから魅力的な薬剤であり、中程度の費用で大量に化学的に合成することができ、消化管内で分解されずかつ消化管から吸収可能であることから経口投与することができる。野生型TSHRおよびいくつかの構成的活性型変異体受容体(CAM)による基礎的なシグナル伝達を阻害し、TSHR生体作用のプローブ、甲状腺がん(特にTSH非依存性甲状腺がん)の対象の処置、甲状腺機能亢進症(特にグレーブス甲状腺機能亢進症)の対象の処置、またはグレーブス眼窩症の対象の処置に使用可能なインバースアゴニストが本明細書に開示される。TSHR生体作用のプローブ、またはグレーブス眼窩症および/もしくはグレーブス甲状腺機能亢進症の対象の処置に使用可能なニュートラルアンタゴニストも開示される。特定の態様では、インバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストはTSHRに選択的なインバースアゴニストまたはニュートラルアンタゴニストでありうる(すなわち、該化合物は他のホルモン受容体、特に黄体ホルモン/絨毛性ゴナドトロピン受容体(LHCGR)および濾胞刺激ホルモン受容体(FSHR)を活性化または調節しない)。
【0074】
特定の態様では、本明細書に開示されるインバースアゴニストは、投与された甲状腺ホルモンによるTSHの抑制にもかかわらず甲状腺がんを示す対象においてがん細胞の成長/増殖/転移を阻害するために使用することができる。甲状腺ホルモンを投与することにより甲状腺がんを処置した対象においてTSHを抑制することができるが、TSHRは、甲状腺がん細胞を刺激し続ける基礎的なシグナル伝達活性を示す。本明細書に開示されるインバースアゴニストはTSHRによる基礎的なシグナル伝達活性を阻害することができる。したがって、さらなる態様では、特に内因性下垂体TSHの抑制にもかかわらず甲状腺がんが再発する対象において、または甲状腺ホルモンの投与が禁忌である場合に、甲状腺がんを処置する方法であって、少なくとも1つのインバースアゴニストを該対象に投与する段階を含む方法が開示される。
【0075】
特定の態様では、本明細書に開示されるインバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストを、対象において甲状腺機能亢進症を処置するために使用することができる。例えば、インバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストは、甲状腺機能亢進症の普通ではない形態を引き起こし正常の場合よりも高い基礎的なシグナル伝達活性を伴う変異体TSHR(CAM)を、阻害することができる。別の例では、甲状腺機能亢進症の最も一般的な形態である、グレーブス病に見出される抗体による刺激を、インバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストは阻害することができる。
【0076】
特定の態様では、インバースアゴニストはTSHRアンタゴニストでもあり、したがって、グレーブス甲状腺機能亢進症においてTSHR刺激抗体(TSAb)を遮断することによりTSHR媒介性甲状腺がんまたは甲状腺機能亢進症を処置するためにも有用である。
【0077】
特に、本明細書に開示される式IまたはIIのインバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストを、グレーブス甲状腺機能亢進症および/またはグレーブス眼窩症においてTSAbを遮断することにより甲状腺または眼窩組織の刺激を阻害するために使用することができる。
【0078】
インバースアゴニストおよび/またはニュートラルアンタゴニスト
一態様では、インバースアゴニストまたはニュートラルアンタゴニストは2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン化合物、特に2-置換、3-置換2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン化合物である。2位での置換基は例えばフラニル含有基、ピリジニル含有基、チエニル含有基、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルでありうる。3位での置換基は例えば-Ar
1-CH
2-X-Ar
2でありうるものであり、式中、Ar
1は置換または非置換アリーレン基(例えば-C
6H
4-)であり; Ar
2は置換または非置換アリール基であり; XはOまたはSである。特定の態様では、Ar
2は2,6-ジアルキルフェニル、特に2,6-ジメチルである。特定の態様では、Ar
1はメトキシ置換フェニレンである。
【0079】
概して、例示的インバースアゴニストまたはニュートラルアンタゴニストは以下の構造を有しうる:
式中、R
1はフラニル含有基、ピリジニル含有基、チエニル含有基、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルより選択され;
R
2はH、アルコキシ、アルキル、置換アルキルまたはハロゲンであり;
R
3〜R
7はH、アルキル、置換アルキル、ハロゲンまたはアミノカルボニルよりそれぞれ独立して選択され;かつ
XはOまたはSである。
【0080】
式Iの特定の態様では、R
1は以下より選択される:
(a) R
10が低級アルキレン基(例えばメチレン(-CH
2-)、エチレン(-CH
2CH
2-)、トリメチレン(-CH
2CH
2CH
2-)、メチルエチレン(-CH
2C(CH
3)H-)などの1〜10個の炭素原子を有する基)である-R
10-フラニルの構造を有するフラニルアルキル基であるフラニル含有基。フラニル環は非置換でも低級アルキルで置換されていてもよい。特定の態様では、フラニル環は3炭素位において低級アルキル、特にメチルで置換されている。フラニルは2-フラニルまたは3-フラニルでありうる。特定の態様では、フラニル含有基は2-フラニルまたはフラン-2-イルメチルである;
(b) R
10が低級アルキレン基(例えばメチレン(-CH
2-)、エチレン(-CH
2CH
2-)、トリメチレン(-CH
2CH
2CH
2-)、メチルエチレン(-CH
2C(CH
3)H-)などの1〜10個の炭素原子を有する基)である-R
10-ピリジニルの構造を有するピリジニルアルキル基であるピリジニル含有基。ピリジニル環は非置換でも低級アルキルで置換されていてもよい。ピリジニルは2-ピリジニル、3-ピリジニルまたは4-ピリジニルでありうる。特定の態様では、フラニル含有基は3-ピリジニルまたはピリジン-3-イルメチルである;
(c) R
10が低級アルキレン基(例えばメチレン(-CH
2-)、エチレン(-CH
2CH
2-)、トリメチレン(-CH
2CH
2CH
2-)、メチルエチレン(-CH
2C(CH
3)H-)などの1〜10個の炭素原子を有する基)である-R
10-チエニルの構造を有するチエニルアルキル基であるチエニル含有基。チエニル環は非置換でも低級アルキルで置換されていてもよい。特定の態様では、チエニル環は3炭素位において低級アルキル、特にメチルで置換されている。チエニルは2-チエニルまたは3-チエニルでありうる。特定の態様では、チエニル含有基は2-チエニルまたはチエン-2-イルメチルである; あるいは
(d) R
8が低級アルキレン基(例えばメチレン(-CH
2-)、エチレン(-CH
2CH
2-)、トリメチレン(-CH
2CH
2CH
2-)、メチルエチレン(-CH
2C(CH
3)H-)などの1〜10個の炭素原子を有する基)であり、R
9が低級アルキル(特にメチル)である、-R
8OR
9の構造を有するアルコキシアルキル。R
2は低級アルキル基であり; R
3およびR
7はそれぞれ低級アルキル基であり; R
4およびR
6はそれぞれHであり; R
5はアミノカルボニル基(特にアセトアミド(-NHAcもしくは-NHC(O)CH
3))またはHである。
【0081】
式Iの特定の態様では、R
3およびR
7はそれぞれ低級アルキル、特にメチルである。式Iの他の態様では、R
2はメトキシである。式Iのさらなる態様では、-R
8OR
9は-(CH
2)
2OCH
3である。式Iのさらなる態様では、XはSである。式Iの他の態様では、R
5はアミノカルボニル基である。式Iの別の態様によれば、R
1は-R
8OR
9である。式Iのさらなる態様では、R
3およびR
7はアルキル基、特にメチル以外の低級アルキル基である。式Iのさらなる態様では、R
3またはR
7の一方は低級アルキルであり、R
3またはR
7の他方はHである。
【0082】
別の態様では、例示的インバースアゴニストまたはニュートラルアンタゴニストは以下の構造を有しうる:
式中、R
1は以下:
より選択され;かつ
R
2〜R
6はH、アルキル、置換アルキルまたはハロゲンよりそれぞれ独立して選択され; 但し、化合物は以下:
ではない。
【0083】
式IIの特定の態様では、R
1は以下である。
【0084】
式IIの他の態様では、R
1は以下である。
【0085】
式IIの特定の態様では、R
2〜R
6はHまたはアルキル(特に低級アルキル)よりそれぞれ独立して選択される。式IIの特定の一態様では、R
3〜R
5はそれぞれHであり、R
2およびR
6は低級アルキル、特にメチルである。
【0086】
インバースアゴニストの具体例を以下に示す。
【0087】
ニュートラルアンタゴニストの具体例を以下に示す。
【0088】
薬学的組成物
本開示の別の局面は、対象への投与のために調製され、また治療有効量の本明細書に開示される1つまたは複数の化合物を含む、薬学的組成物を含む。特定の態様では、薬学的組成物は甲状腺がん、甲状腺機能亢進症(特にグレーブス甲状腺機能亢進症)またはグレーブス眼窩症を処置するために有用である。開示される化合物の治療有効量は投与経路、対象の種、および処置される対象の身体特性に依存する。考慮されうる具体的要因としては疾患の重症度および段階、体重、食事、ならびに併用投薬が挙げられる。これらの要因と開示される化合物の治療有効量の決定との関係は当業者により理解される。
【0089】
対象への投与用の薬学的組成物は、選択される分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存料、界面活性剤などの少なくとも1つのさらなる薬学的に許容される添加剤を含みうる。薬学的組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1つまたは複数のさらなる有効成分も含みうる。これらの製剤に有用な薬学的に許容される担体は慣用的である。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition (1995)では、本明細書に開示される化合物の薬学的送達に好適な組成物および製剤が記載されている。
【0090】
概して、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、ブドウ糖水溶液、グリセリンなどの薬学的および生理学的に許容される液体を媒体として含む注射液を含有する。固体組成物(例えば散剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態)では、慣用的な無毒の固体担体としては例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。投与される薬学的組成物は、生物学的に中性の担体に加えて、湿潤剤または乳化剤、保存料、およびpH緩衝剤などの微量の無毒の補助物質、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有しうる。
【0091】
本明細書に開示される薬学的組成物としては、開示される化合物の薬学的に許容される塩および/または溶媒和物から形成されるものが挙げられる。薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容される無機または有機の塩基および酸から誘導されるものが挙げられる。特定の開示される化合物は、酸と酸-塩基塩を形成可能な少なくとも1個の塩基性基を有する。塩基性基の例としてはアミノ基およびイミノ基が挙げられるがそれに限定されない。そのような塩基性基と塩を形成可能な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸などの鉱酸が挙げられるがそれに限定されない。塩基性基は、有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸もしくはホスホ酸、またはN-置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸、加えてアミノ酸、例えばα-アミノ酸、さらにはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシメタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-もしくは3-ホスホグリセリン酸、グルコース-6-リン酸またはN-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)、あるいは他の酸性有機化合物、例えばアスコルビン酸とも塩を形成することができる。特に、好適な塩としては、薬学分野で周知の数多くの酸のうち、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属から誘導されるものが挙げられる。
【0092】
特定の化合物は、無機塩基または有機塩基と酸-塩基塩を形成可能な少なくとも1個の酸性基を含む。無機塩基から形成される塩の例としては、本明細書に開示される化合物とカリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムおよびマグネシウムを含むアルカリ土類金属などとの塩が挙げられる。同様に、酸性化合物とアミン(本明細書において使用する、アミンを意味する用語は、遊離アミンが意図されることが文脈上明らかに指示されない限り、それらの共役酸を含むものと理解すべきである)などの有機塩基との塩が想定され、これらは塩基性アミノ酸、脂肪族アミン、複素環アミン、芳香族アミン、ピリジン、グアニジンおよびアミジンと形成される塩を含む。脂肪族アミンのうち、非環状脂肪族アミン、ならびに環状および非環状ジおよびトリアルキルアミンが、開示される化合物における使用に特に好適である。さらに、四級アンモニウム対イオンも使用することができる。
【0093】
本化合物において使用される好適なアミン塩基(およびそれらの対応するアンモニウムイオン)の特定の例としてはピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、N-メチル-N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、モノ、ビスまたはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、トリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンおよびN-メチル-D-グルカミンが挙げられるがそれに限定されない。「薬理学的に受容できる塩」のさらなる例はBerge et al., J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照。
【0094】
本明細書に開示される化合物は、結晶化することができ、単一の結晶形態または異なる結晶多形の組み合わせとして与えることができる。したがって、化合物を1つまたは複数の物理的形態、例えば異なる結晶形態や、結晶性、液体結晶性または非結晶性(非晶質)形態で与えることができる。化合物のそのような異なる物理的形態を、例えば再結晶用の異なる溶媒または異なる溶媒混合物を使用して調製することができる。あるいはまたはさらに、異なる多形を、例えば異なる温度で再結晶を行うこと、および/または再結晶中に冷却速度を改変することにより調製することができる。多形の存在は、X線結晶構造解析、またはいくつかの場合では固相NMR分光法、IR分光法などの別の分光法技術、もしくは示差走査熱量測定により決定することができる。
【0095】
薬学的組成物は、経口、直腸、鼻腔内、肺内もしくは経皮送達、または他の表面への局所送達を含む種々の粘膜投与様式で対象に投与することができる。任意的には、組成物は筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内または非経口経路を含む非粘膜経路で投与することができる。他の代替態様では、対象に由来する細胞、組織または臓器への直接曝露により化合物をエクスビボで投与することができる。
【0096】
薬学的組成物を調剤するために、化合物を各種の薬学的に許容される添加剤、および化合物の分散用の基剤または媒体と組み合わせることができる。所望の添加剤としてはアルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸などのpH調整剤が挙げられるがそれに限定されない。さらに、局所麻酔剤(例えばベンジルアルコール)、等張化剤(例えば塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着阻害剤(例えばTween 80またはMiglyol 812)、溶解度向上剤(例えばシクロデキストリンおよびその誘導体)、安定剤(例えば血清アルブミン)、ならびに還元剤(例えばグルタチオン)が含まれうる。当技術分野で周知である多くの好適なアジュバントのうち、水酸化アルミニウム(例えばニュージャージー州マジソン、Wyeth LaboratoriesのAmphogel)、フロイントアジュバント、MPL(商標)(3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A; インディアナ州ハミルトン、Corixa)およびIL-12(マサチューセッツ州ケンブリッジ、Genetics Institute)などのアジュバントが組成物に含まれうる。組成物が液体である場合、製剤の浸透圧は、0.9%(w/v)生理食塩水の浸透圧を1としたものを参照して測定され、典型的には、相当な不可逆的組織損傷が投与部位において誘導されない値に調整される。概して、溶液の浸透圧は約0.3〜約3.0、例えば約0.5〜約2.0、または約0.8〜約1.7の値に調整される。
【0097】
化合物を分散させる能力を有する親水性化合物、および任意の所望の添加剤を含みうる、基剤または媒体に、化合物を分散させることができる。基剤は、ポリカルボン酸またはその塩、無水カルボン酸(例えば無水マレイン酸)と他のモノマー(例えばメチル(メタ)アクリレート、アクリル酸など)との共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの親水性ビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ならびにキトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、およびその無毒の金属塩などの天然高分子を含むがそれに限定されない広い範囲の好適な化合物より選択することができる。多くの場合、生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸-グリコール酸)共重合体、およびその混合物が基剤または媒体として選択される。あるいはまたはさらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの合成脂肪酸エステルを媒体として使用することができる。親水性ポリマーおよび他の媒体を単独または組み合わせで使用することができ、向上した構造的完全性を部分結晶化、イオン結合、架橋などにより媒体に付与することができる。媒体は、粘膜表面への直接塗布用の液体または粘稠溶液、ゲル、ペースト、粉末、マイクロスフェアおよびフィルムを含む種々の形態で与えることができる。
【0098】
化合物を基剤または媒体と種々の方法に従って組み合わせることができ、化合物の放出を、拡散、媒体の崩壊、または関連する水チャネル形成により行うことができる。いくつかの状況では、化合物は、好適なポリマー、例えばイソブチル2-シアノアクリレートから調製されるマイクロカプセル(マイクロスフェア)またはナノカプセル(ナノスフェア)に分散し(例えばMichael et al., J. Pharmacy Pharmacol. 43:1-5, 1991を参照)、また生体適合性分散媒に分散し、これにより長時間にわたる持続送達および生物活性が生じる。
【0099】
あるいは、本開示の組成物は、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤などの、生理的条件に近づくために必要である薬学的に許容される媒体物質、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレートおよびオレイン酸トリエタノールアミンを含有しうる。固体組成物では、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルカム、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどを例えば含む慣用的な無毒の薬学的に許容される媒体を使用することができる。
【0100】
化合物を投与するための薬学的組成物は、高濃度の有効成分に好適な溶液、マイクロエマルジョンまたは他の規則構造として調剤することもできる。媒体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物を例えば含有する溶媒または分散媒でありうる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散性製剤の場合の所望の粒径の維持、および界面活性剤の使用により、溶液として適当な流動性を維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖、マンニトールおよびソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが望ましい。化合物の長期吸収を、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含むことでもたらすことができる。
【0101】
特定の態様では、化合物を時間放出製剤として、例えば緩徐放出ポリマーを含む組成物として投与することができる。これらの組成物は、急速放出に対して保護を行う媒体、例えば、ポリマー、マイクロカプセル化送達系または生体接着ゲルなどの制御放出媒体を用いて調製することができる。本開示の各種組成物の長期送達を、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムヒドロゲルおよびゼラチンを含むことでもたらすことができる。制御放出製剤が望まれる場合、本開示に係る使用に好適な制御放出結合剤としては、活性薬剤に不活性であって、化合物および/または他の生物活性薬剤を包含することができる、任意の生体適合性制御放出材料が挙げられる。数多くのそのような材料が当技術分野で公知である。有用な制御放出結合剤は、それらの送達(例えば、粘膜表面における、または体液の存在下での)の後に生理的条件下でゆっくりと代謝される材料である。適切な結合剤としては、持続放出製剤における使用について当技術分野で周知の生体適合性ポリマーおよび共重合体が挙げられるがそれに限定されない。そのような生体適合性化合物は、無毒であって周囲組織に不活性であり、鼻刺激、免疫応答、炎症などの著しい有害な副作用の引き金を引かない。それらは、やはり生体適合性であって身体から容易に排除される代謝産物に代謝される。
【0102】
本開示において使用される例示的ポリマー材料としては、加水分解性エステル結合を有する共重合体およびホモポリマーポリエステルに由来するポリマーマトリックスが挙げられるがそれに限定されない。多くのこれらの材料が、生分解性であること、および毒性がないかまたは低い分解生成物を生じさせることが、当技術分野で知られている。例示的ポリマーとしてはポリグリコール酸およびポリ乳酸、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(D-乳酸-co-グリコール酸)ならびにポリ(L-乳酸-co-グリコール酸)が挙げられる。他の有用な生分解性または生侵食性ポリマーとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)などのヒドロゲル、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)(例えばL-ロイシン、グルタミン酸、L-アスパラギン酸など)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルトアミド)、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリマレアミド、多糖、およびその共重合体などのポリマーが挙げられるがそれに限定されない。そのような製剤を調製するための多くの方法が当業者に周知である(例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照)。他の有用な製剤としては制御放出マイクロカプセル剤(米国特許第4,652,441号および第4,917,893号)、マイクロカプセル剤および他の製剤を作製する上で有用な乳酸-グリコール酸共重合体(米国特許第4,677,191号および第4,728,721号)、ならびに水溶性ペプチド用持続放出組成物(米国特許第4,675,189号)が挙げられる。
【0103】
本開示の薬学的組成物は、典型的には製造、貯蔵および使用条件下で無菌かつ安定である。所要量の化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて本明細書に列挙する成分の1つまたは組み合わせと共に包含させた後、濾過滅菌を行うことで、滅菌溶液を調製することができる。概して、分散液は、塩基性分散媒および本明細書に列挙した成分のうち必要な成分を含有する滅菌媒体に化合物および/または他の生物活性薬剤を包含させることで調製される。滅菌粉末の場合、調製方法としては、化合物と任意のさらなる所望の成分との粉末を、既に滅菌濾過したその溶液から生じさせる、真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。微生物の作用の阻止を各種抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。
【0104】
本開示の各種処置方法によれば、その処置または予防を目指す障害の管理に関連する慣用的な方法論と一致した様式で、化合物を対象に送達することができる。本明細書における開示によれば、予防または治療有効量の化合物および/または他の生物活性薬剤を、そのような処置を必要とする対象に、選択される疾患もしくは状態またはその1つもしくは複数の症状を予防し、阻害しかつ/または寛解させるために十分な時間および条件下で投与する。
【0105】
本開示の化合物の投与は予防目的または治療目的のいずれかでありうる。予防的に与える場合、化合物を任意の症状に先立って与える。化合物の予防的投与は、任意の引き続く疾患プロセスを予防するかまたは寛解させるために役立つ。治療的に与える場合、化合物を疾患または感染症の症状の発症時(または発症直後)に与える。
【0106】
予防および治療目的では、化合物を対象に、経口経路により、あるいは長期間にわたる連続送達(例えば連続経皮、粘膜もしくは静脈内送達)を経由した単回ボーラス送達、または反復投与プロトコール(例えば1時間毎、毎日もしくは毎週の反復投与プロトコール)で、投与することができる。化合物の治療有効量は、標的となる本明細書に記載の疾患または状態に関連する1つまたは複数の症状または検出可能な状態を軽減するために臨床的に有意な結果を生じさせる長期の予防または処置レジメンの範囲内で、反復用量として与えることができる。この文脈での有効量の決定は、動物モデル研究とそれに続くヒト臨床試験に典型的には基づくものであり、対象において標的となる疾患症状または疾患状態の発生または重症度を有意に減少させる投与プロトコールにより指導される。この点で好適なモデルとしては例えばマウス、ラット、トリ、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類、および当技術分野で公知の他の許容される動物モデル対象が挙げられる。あるいは、有効量はインビトロモデルを使用して決定することができる。そのようなモデルを使用すれば、治療有効量の化合物(例えば、標的となる疾患の1つまたは複数の症状を緩和させるために有効な量)を投与する上で適切な濃度および用量を決定するために、通常の計算および調整しか必要でなくなる。代替態様では、有効量(effective amount)または有効量(effective dose)の化合物は、治療目的または診断目的のいずれかにおいて、本明細書に記載の疾患または状態に相関する1つまたは複数の選択される生物活性を単に阻害するかまたは強化することがある。
【0107】
化合物の実際の投与量は、対象の疾患指標および特定の状況(例えば対象の年齢、サイズ、健康状態、症状の程度、感受性要因など)、投与時間および投与経路、同時投与される他の薬物または処置薬、ならびに、所望の活性または生物応答を対象において誘発するための化合物の特定の薬理作用などの要因に従って変動する。投与レジメンは、最適な予防または治療応答を与えるように調整することができる。治療有効量は、化合物および/または他の生物活性薬剤の任意の毒性のまたは有害な副作用を治療上有利な効果が臨床的に上回る量でもある。本開示の方法および製剤の範囲内の化合物および/または他の生物活性薬剤の治療有効量の非限定的な範囲は、約0.01mg/kg体重〜約20mg/kg体重、例えば約0.05mg/kg〜約5mg/kg体重、または約0.2mg/kg〜約2mg/kg体重である。
【0108】
投与量は、標的部位(例えば肺または体循環)において所望の濃度を維持するように、主治医が変動させることができる。より高いまたは低い濃度を、送達様式、例えば経皮、直腸、経口、肺または鼻腔内送達対静脈内または皮下送達に基づいて選択することができる。投与量は、投与される製剤、例えば、肺内スプレー剤対散剤、持続放出経口製剤対注射用粒子製剤または経皮送達製剤、などの放出速度に基づいて調整することもできる。
【0109】
本明細書に開示される化合物は、さらなる治療薬と同時投与することもできる。そのような薬剤としては抗炎症剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、サイトカインアンタゴニスト、免疫抑制剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、サイトカイン、成長因子、免疫調節剤、プロスタグランジンまたは抗血管過剰増殖化合物が挙げられるがそれに限定されない。
【0110】
本開示はまた、哺乳動物対象における疾患および他の状態の予防および処置に使用される、本明細書に記載の薬学的組成物、有効成分、および/またはそれを投与するための手段を含有する、キット、包装および多容器ユニットを含む。診断用キットも提供される。一態様では、これらのキットは、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含有する容器または製剤を含む。一例では、この成分は対象への送達用の薬学的調製物として調剤される。化合物は、任意的にバルク分配容器または単位剤形もしくは多単位剤形に含有される。任意的な分配手段、例えば肺または鼻腔内スプレー剤塗布器を設けることができる。包装材料は、それによって包装される医薬品がどの処置目的および/またはどの様式で使用可能であるかを示すラベルまたは説明書を任意的に含む。
【実施例】
【0111】
化合物1 (2-(3-((2,6-ジメチルフェノキシ)メチル)-4-メトキシフェニル)-3-(フラン-2-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン) [NCGC00161856](
図1A)はインバースアゴニストであることがわかった(
図1B参照)。化合物1は、IC
50=3.0μMでTSHRによる基礎的なcAMP産生を58%阻害した。
図2Aは、化合物1がIC
50=0.78μMでTSH刺激性cAMP産生を86%阻害することを示す。さらに、TSH刺激性cAMP産生のシルド分析(
図2B)は、化合物1がTSHシグナル伝達の競合的拮抗薬として作用することを示す(図示せず)。多くの場合、競合的拮抗は、アンタゴニストとアゴニストとの間の結合競合により引き起こされる。しかし化合物1は、HEK-EM 293細胞の表面上のTSHRへの
125I-TSH結合に対する効果を示さなかった(データは示さず)。化合物1の親化合物がTSH結合に影響しないことが既に示され、それがTSHRの膜貫通ドメインにおいて結合することが既に証明されたことから、TSH結合に対する化合物1の効果の欠如は予想されていた。化合物1はTSHRの同一ドメインにおいて結合すると考えられる。
【0112】
少数の甲状腺機能亢進症の患者は、構成的活性型変異TSHR(CAM)の基礎的なシグナル伝達により引き起こされる甲状腺機能の増大を示す。野生型TSHRならびに甲状腺機能亢進症患者に見られた4つのCAM、すなわちS281N、M453T、I568TおよびF631Iの、基礎活性、すなわちTSHRを一過性に発現するHEK-EM 293細胞中での60分にわたるcAMP産生を測定した。これらのCAMは野生型TSHRの15〜27倍の構成的シグナル伝達を示す。
図3は、化合物1が以下のIC
50および最大阻害レベルで試験した全4つのCAMの基礎的なシグナル伝達を阻害したことを示す: S281Nでは1.4μMおよび78%; I568Tでは3.7μMおよび77%; F631Iでは0.5μMおよび36%; M453Tでは0.6μMおよび42%。化合物1による基礎的なシグナル伝達の阻害レベルは、これらのCAMを、一方よりも他方がより大きな阻害を示す2つの群に区分するようである。
【0113】
化合物1のアンタゴニストおよびインバースアゴニスト活性を初代培養物中のヒト甲状腺細胞中で測定した。初代培養物は、分化型甲状腺機能において重要な遺伝子の発現に対するTSHRリガンドの効果の決定を可能にする、生理学的により関連性のある細胞系である。TSHR変異体が異なる細胞型において異なってシグナル伝達することが示されたことから、このことは重要であった。化合物1がヒト甲状腺細胞中でcAMP蓄積を減少させることが最初に確認された(
図4A)。7TMR β-アドレナリン受容体のアゴニストであるイソプロテレノール、7TMRを経由してシグナル伝達する血管作用性小腸ペプチド、またはアデニリルシクラーゼアクチベーターであるフォルスコリンにより刺激されるこれらの細胞におけるcAMP蓄積を化合物1が減少させなかったことから(図示せず)、本発明者らは、化合物1がヒト甲状腺細胞中でTSHRインバースアゴニストとして作用すると結論づける。既に同定されたTSHおよび低分子リガンドアゴニストは、甲状腺細胞中のいくつかの遺伝子の発現を特異的に増大させる(J Biomol Screen 13, 120, 2008; Proc Nat Acad Sci 106, 12471, 2009)。これらの遺伝子、すなわちTPO、TSHR、TGおよびDIO2のmRNAの発現に対する化合物1の効果を任意のアゴニストの非存在下で試験した(
図4B)。甲状腺細胞をIBMXの存在下、化合物1なし、または化合物1単独で48時間処理した。化合物1はTG、TPO、TSHR、NISおよびDIO2 mRNAレベルを減少させた。したがって、化合物1は、分化型甲状腺細胞中で発現するいくつかの遺伝子のmRNAのレベルをおそらくはそれらの転写を阻害することで減少させることができる、ヒト甲状腺細胞中のインバースアゴニストである。これらの観察は、化合物1またはその類似体がヒトにおいてTSH非依存性シグナル伝達を抑制するために使用可能であるという考えを裏付ける。
【0114】
化合物1の新規類似体S2-6 [2-(3-((2,6-ジメチルフェノキシ)メチル)-4-メトキシフェニル)-3-(ピリジン-3-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン](NCGC00229600)は、TSHRアンタゴニストとして化合物1(NCGC00161856)と同程度に強力かつ効果的であったが、その増大した溶解度が理由で、より良い薬物であった(J. Clin. Endocrinol. Metab.
96, 548, 2011)。本発明者らは、S2-6がヒト細胞中でのTSHRの基礎およびTSH刺激のアンタゴニストであることを示した(
図6〜
図9参照)。S2-6は、TSHRによる基礎的なcAMP産生を30μMで53%阻害し、TSHのEC
50濃度により刺激されるcAMP産生を30μMで53%阻害した。cAMP産生のS2-6阻害は高用量のTSHで克服され、したがって「競合的」であった。S2-6によるTSH結合の競合が競合的阻害を引き起こした可能性があるが、S2-6は、HEKTSHR細胞への
125I-TSH結合に対する効果を示さなかったため、アロステリックインバースアゴニストである。最も重要なことには、S2-6をグレーブス眼窩症の患者少なくとも1名を含むグレーブス甲状腺機能亢進症の患者30名からの血清に対して試験した(
図13)。S2-6は、試験した全30個のグレーブス病血清によるcAMP産生を39±2.6%阻害した。ヒト甲状腺細胞の初代培養物中で、S2-6は、TSHR媒介性の基礎的な甲状腺ペルオキシダーゼmRNAレベルの上方制御およびグレーブス病血清における甲状腺刺激抗体による甲状腺ペルオキシダーゼmRNAレベルの上方制御を65±2.0%阻害した(
図14)。したがって、低分子でありTSHRのアロステリックインバースアゴニストであるS2-6は、グレーブス病患者血清中の甲状腺刺激抗体によるTSH受容体活性化の普遍的アンタゴニストである。
【0115】
インバースアゴニストが治療的に使用される可能性がある、少なくとも2つの患者群が存在する。構成的活性型変異体(CAM)、特に生殖細胞系列変異が引き起こす非自己免疫甲状腺機能亢進症の患者が、インバースアゴニストが有効である可能性のある1つの群である。これは、化合物1および甲状腺阻害抗体が、組織培養物中の細胞中で発現する疾患関連CAMによる基礎的なシグナル伝達を阻害することが既に示されたためである。おそらく、低分子リガンドインバースアゴニストの使用は、放射性ヨウ素または外科的切除がそれほど魅力的ではない、この疾患の遺伝性形態を有する子どもにおいて最も有用であろう。これらの薬物が有用と考えられるより大きな患者群は、TSH抑制のために甲状腺ホルモンを受けているが、TSHRのアゴニスト非依存性シグナル伝達が理由でがん細胞が依然として増殖および転移するように刺激されていることがある、再発性または転移性甲状腺がんの患者である。
【0116】
予備的実験において、化合物S2-6が、グレーブス眼窩症の患者から取得した後眼窩線維芽細胞上のTSHRの活性化を阻害することが示された。後眼窩線維芽細胞は、グレーブス眼窩症の減圧眼手術を受けた患者から得て、細胞培養に適応させた。S2-6は、細胞培養物中のこれらの線維芽細胞中で、基礎的なシグナル伝達を75%阻害し、甲状腺刺激抗体刺激性シグナル伝達を阻害する(85%)ことが示された。
【0117】
上記の結果は、インバースアゴニストおよびニュートラルアンタゴニストが、1つの例示的態様では、グレーブス眼窩症(後眼窩TSHR上で作用するTSHR抗体を刺激することにより生じる)の治療薬(例えば初期治療薬)としての、別の例示的態様では、グレーブス甲状腺機能亢進症、例えば再発性グレーブス甲状腺機能亢進症(放射性ヨウ素または抗甲状腺薬処置後の)の手術の治療代替案としての用途を有することを示す。TSH抑制のために甲状腺ホルモンを受けているが、TSHRのTSHアゴニスト非依存性シグナル伝達が理由でがん細胞が依然として増殖および転移するように刺激されていることがある、再発性または転移性甲状腺がんの患者にインバースアゴニストは有用であろう。
【0118】
材料および方法
一般的合成
すべての市販の試薬および溶媒は購入後、さらに精製せずに使用した。すべてのマイクロ波反応は、磁気攪拌子を備え、Biotage Initiatorマイクロ波合成装置中で加熱される、密封マイクロ波バイアル中で行った。
1HスペクトルはInova 400MHz分光計(Varian)を使用して記録した。LCMSを使用して試料の純度を分析した: 流量1.1mL/分を有するZorbax(商標)Eclipse XDB-C18逆相(5ミクロン、4.6x150mm)カラムを備えたAgilent 1200シリーズLC/MS。移動相は、0.05%トリフルオロ酢酸をそれぞれ含有するアセトニトリルおよびH
2Oの混合物とした。分析中、5%〜100%アセトニトリル、8分間の勾配を使用した。高分解能質量分析測定をAgilent 6210エレクトロスプレーTOF質量分析計上で行った。
【0119】
以下の一般的手順を使用して、異なるが類似の構造を有する化合物を合成した。合成分野の当業者は、必要であればどのようにしてこれらの一般的手順を修正して所望の変換を達成するかを認識しているであろう。
【0120】
スキーム1に示すように、2-アミノ安息香酸1と異なるアミンとのアミドカップリング、または無水イサト酸2とアミンとの反応のいずれかにより、2-アミノベンズアミド3を調製した。マイクロ波照射下での塩化ベンジル5と異なるフェノール(またはチオフェノール)4との反応によりアルデヒド6を生じさせた。アルデヒド6と2-アミノベンズアミド3との縮合により2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン7を得た。
【0121】
無水イサト酸からの2-アミノベンズアミド(3)の合成の一般的手順
無水イサト酸(0.16g、1.0mmol、1.0当量)の無水アセトニトリル10mL溶液にアミン(1.05mmol、1.05当量)を室温で加えた。得られた混合物を室温で2時間攪拌し、50℃で4時間加熱した。次にそれを減圧濃縮して生成物を固体として収率90〜99%で得た。
【0122】
2-アミノ-N-(フラン-2-イルメチル)ベンズアミド:
【0123】
2-アミノ-N-(2-メトキシエチル)ベンズアミド:
【0124】
2-アミノ-N-(ピリジン-3-イルメチル)ベンズアミド:
【0125】
1 [2-(3-((2,6-ジメチルフェノキシ)メチル)-4-メトキシフェニル)-3-(フラン-2-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(NCGC00161856)]の合成
3-(クロロメチル)-4-メトキシベンズアルデヒド(85mg、0.46mmol、1.0当量)および2,6-ジメチルフェノール(62mg、0.51mmol、1.1当量)の無水アセトニトリル3.0mL溶液にK
2CO
3(320mg、2.3mmol、5.0当量)を加えた。混合物をマイクロ波反応器中、150℃で30分間加熱した。固体を濾去し、溶媒を除去した後、EtOH 5mL中2-アミノ-N-(フラン-2-イルメチル)ベンズアミド(110mg、0.51umol、1.1当量)を加え、続いてイッテルビウムトリフルオロメタンスルホネート(57mg、0.02umol、0.2当量)を加えた。混合物を80℃で2時間加熱した。分取HPLC精製を経由して生成物を単離し、減圧凍結乾燥を経由して溶媒を除去して、ジエチルエーテルで粉砕後、2-(3-((2,6-ジメチルフェノキシ)メチル)-4-メトキシフェニル)-3-(フラン-2-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(64.5mg、30%)を白色固体として得た。
【0126】
S2-6の合成
3-(クロロメチル)-4-メトキシベンズアルデヒド(300mg、1.625mmol、1.0当量)および2,6-ジメチルフェノール(218mg、1.787mmol、1.1当量)のアセトニトリル10ml溶液に炭酸カリウム(1.1g、8.12mmol、5.0当量)を加えた。混合物をマイクロ波中、150℃まで30分間加熱した。完了時点で、混合物を濾過し、乾燥させて3-[(2,6-ジメチルフェノキシ)メチル]-4-メトキシベンズアルデヒド(400mg、収率91%)を黄色固体として得た。その一部(100mg、0.370mmol、1.0当量)をエタノール(4ml)に取り込み、それに2-アミノ-N-(ピリジン-3-イルメチル)ベンズアミド(92mg、0.407mmol、1.1当量)を加え、続いてイッテルビウム(III)トリフルオロメタンスルホネート(45.9mg、0.074mmol、0.2当量)を加えた。混合物を80℃まで2時間加熱した。完了時点で、混合物を乾燥させ、シリカゲル上での0〜30% EtOAc(酢酸エチル)/ヘキサン勾配溶出を用いるクロマトグラフィーに供して、所望の2-{3-[(2,6-ジメチルフェノキシ)メチル]-4-メトキシフェニル}-3-(ピリジン-3-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(110mg、収率62.0%)を淡褐色固体として得た。1H核磁気共鳴
液体クロマトグラフィー質量分析: (エレクトロスプレー+ve)、m/z 480.2 (MH)
+(分子量プラス1); HPLC: t
R=5.05分、UV
254=100%。高分解能質量分析(エレクトロスプレーイオン化): m/z C
30H
30N
3O
3の計算値[M+H]
+ 480.2282、実測値480.2291。
【0127】
N-(4-(5-(3-(フラン-2-イルメチル)-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(7a; 化合物S2-7)の合成
水素化容器内の2,6-ジメチル-4-ニトロフェノール(4a、1.58g、9.45mmol)のAcOH(20ml)、MeOH(15ml)およびTHF(10ml)懸濁液を無水酢酸(6ml、63.6mmol)およびPtO
2(200mg、0.881mmol)で処理し、H
2で50p.s.i.に加圧し、24時間振盪した。反応混合物を大気圧に戻し、EtOAcで希釈し、H
2Oで洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧濃縮した。N-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(4b)を、LCMS分析に基づいて純粋である白色固体として単離し、さらに精製せずに使用した。ヨウ化テトラブチルアンモニウム(78.9mg、0.534mmol)、3-(クロロメチル)-4-メトキシベンズアルデヒド(5a、197mg、1.07mmol)およびN-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(4b、211mg、1.18mmol)のアセトニトリル20ml溶液に炭酸カリウム(810mg、5.34mmol)を加えた。反応混合物をマイクロ波中で150℃まで1時間加熱し、濾過し、減圧濃縮した。シリカゲル上での5〜50% EtOAc/DCM勾配を用いるカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製して、所望の生成物6a(196mg、56%)を白色固体として得た。
EtOH 5ml中のN-(4-(5-ホルミル-2-メトキシベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(6a、145mg、0.441mmol)、2-アミノ-N-(フラン-2-イルメチル)ベンズアミド(3b、105mg、0.486mmol)およびYb(OTf)
3 0.2当量を80℃で4時間加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、シリカゲル上でのヘキサン中7〜60%酢酸エチルを用いるクロマトグラフィーに残渣を供して、所望の生成物7a(40.9mg、0.078mmol、収率17.6%)を白色固体として得た。
【0128】
2-(3-((2,6-ジメチルフェニルチオ)メチル)-4-メトキシフェニル)-3-(フラン-2-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(化合物S2-8)の合成
3-(クロロメチル)-4-メトキシベンズアルデヒド(91.0mg、0.5mmol、1.0当量)および2,6-ジメチルベンゼンチオール(68.4mg、0.5mmol、1.0当量)のアセトニトリル4mL溶液に炭酸カリウム(0.55g、4.0mmol、8.0当量)を加えた。混合物をマイクロ波中、150℃まで10分間加熱した。固体を濾去し、溶媒を除去した後、EtOH 5mL中2-アミノ-N-(フラン-2-イルメチル)ベンズアミド(107mg、0.5mmol、1.0当量)を加え、続いてイッテルビウムトリフルオロメタンスルホネート(62mg、0.1mmol、0.2当量)を加えた。混合物を80℃で2時間加熱した。完了時点で、混合物を乾燥させ、シリカゲル上での10〜60% EtOAc/ヘキサン勾配溶出を用いるクロマトグラフィーに供して、ジエチルエーテルで粉砕後、2-(3-((2,6-ジメチルフェニルチオ)メチル)-4-メトキシフェニル)-3-(フラン-2-イルメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(101.4mg、42%)を白色固体として得た。
【0129】
N-(4-(2-メトキシ-5-(4-オキソ-3-(ピリジン-3-イルメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)ベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(化合物S2-17)の合成
EtOH 5mL中のN-(4-(5-ホルミル-2-メトキシベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(100mg、0.305mmol)、2-アミノ-N-(ピリジン-3-イルメチル)ベンズアミド(83mg、0.367mmol)およびYb(OTf)3 0.2当量を80℃で4時間加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、シリカゲル上でのDCM中2〜40%メタノールを用いるクロマトグラフィーに残渣を供して、所望の生成物N-(4-(2-メトキシ-5-(4-オキソ-3-(ピリジン-3-イルメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)ベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(68.2mg、0.127mmol、収率41.6%)を白色固体として得た。
【0130】
N-(4-(2-メトキシ-5-(3-(2-メトキシエチル)-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)ベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(化合物S2-29)の合成
EtOH 5mL中の2-アミノ-N-(2-メトキシエチル)ベンズアミド(71.2mg、0.367mmol)、N-(4-(5-ホルミル-2-メトキシベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(100mg、0.305mmol)およびYb(OTf)3 0.2当量を80℃で2時間加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、シリカゲル上でのDCM中10〜80%酢酸エチルを用いるクロマトグラフィーに残渣を供してN-(4-(2-メトキシ-5-(3-(2-メトキシエチル)-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)ベンジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル)アセトアミド(77.9mg、0.155mmol、収率50.6%)を得た。
【0131】
HEK-EM 293細胞株の培養および一過性の形質移入
HEK-EM 293細胞を、加湿5% CO
2インキュベーター内、37℃で、10%ウシ胎仔血清、100単位/mlペニシリンおよび10μg/mlストレプトマイシン(Life Technologies Inc.)を加えたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で成長させた。TSHRを発現する安定なHEK-EM 293細胞株の作製は既に記述された通りである(Endocrinology 149, 5945, 2008)。FuGENE(商標)6試薬(Roche)を製造者のプロトコールに従って使用して、野生型TSHRまたは変異体受容体を24ウェルプレート(ウェル当たり細胞7.5x10
4個)中 0.2μg DNA/ウェルで、細胞に一過性に形質移入した。
【0132】
初代ヒト甲状腺細胞の培養
既に記載のように、米国国立衛生研究所臨床センターにおいて甲状腺がんの甲状腺全摘出術を受けた患者の正常甲状腺組織から甲状腺組織試料を収集した(Proc Nat Acad Sci 106, 12471, 2009)。手短に説明すると、外科的標本を氷上のハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中に維持し、小片に刻み、3mg/mlコラゲナーゼIV型(Gibco)で消化した。単分散細胞を、10cm組織培養皿内の10% FBSを有するDMEM 10ml中にプレーティングし、加湿5% CO
2インキュベーター内、37℃でインキュベートし、24時間後、付着した甲状腺細胞の初代培養物を得た。サイログロブリン(TG)、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、TSHRまたは2型脱ヨウ素酵素(DIO2)mRNA発現の決定のために、甲状腺細胞を24ウェルプレートに0.6x10
4細胞/ウェルの密度で播種した。24時間後に細胞を、2% FBSを有するDMEMで洗浄し、2mM IBMXを有する培地中で48時間インキュベートした。細胞をHBSSで洗浄し、溶解緩衝液を加えることでインキュベーションを終了した。
【0133】
TSHRの部位特異的変異誘発
QuickChange XL部位特異的変異誘発キット(Stratagene)によりS281N、M453T、I568TおよびF631I変異を野生型TSHR-pcDNA3.1に導入した。構築物を配列決定(MWG Biotech)により検証した。
【0134】
cAMP産生の決定
一過性に形質移入されたHEK-EM293細胞、またはTSHRを安定的に発現する細胞を、96ウェルプレートに、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するDMEM中、70,000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を24時間培養した後、HBSS/HEPES(pH7.4)中、次に1mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を含有するHBSS/HEPES(SIGMA)中でTSHまたは化合物1を伴わずに(基礎)またはそれと共に、加湿インキュベーター内、37℃で20〜40分間インキュベートした。IBMXなしのHBSS/HEPES中でインキュベートした細胞中のcAMPのレベルを減算した。培地の吸引後、cAMP-Screen Direct(商標)システム(Applied Biosystems)の溶解緩衝液を使用して細胞を溶解させた。製造者のプロトコールに記載の方法を使用して、細胞溶解液のcAMP含有量を決定した。Windows用GraphPad Prism 4を用いるデータ解析による用量反応曲線からリガンドの効力(EC
50)を得た。
【0135】
125I-TSH結合に対する化合物1の効果
TSHRを安定的に発現するHEK-EM293細胞を24ウェルプレート中に播種し、集密状態近くまで成長させた。60,000cpmウシ
125I-TSHを含有する結合緩衝液(2.5%粉乳および0.2% BSAを含有するHBSS)0.25ml中で、xxμMの化合物1を伴わずにまたはそれと共に、室温で2時間インキュベートすることによって細胞表面結合を測定した。非特異的結合を1.8μM非標識ウシTSHの存在下で測定した。細胞を氷冷HBSS 0.5mlで3回洗浄し、0.4N NaOH 0.5mlで溶解させ、細胞関連の放射能をガンマカウンターで計数した。
【0136】
定量的RT-PCR
Applied Biosystemsからのプライマーおよびプローブを使用してmRNAレベルを測定した。定量的RT-PCR結果をGAPDHに対して正規化することでRNAインプットの差について補正した。
【0137】
統計解析
データは平均±SEとして表す。データをスチューデントt検定または一方向Anovaにより解析し、P<0.05を有意であると見なした。
【0138】
開示される薬剤および方法の原理を適用することができる多くの可能な態様を考慮して、例示される態様が、単に好ましい例でしかなく、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないということを認識すべきである。