【実施例】
【0187】
実施例1
クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAおよび/またはトキシンBに対する中和用モノクローナル抗体の作製
A.免疫原の調製
クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAおよび/またはトキシンB用の中和用モノクローナル抗体を、マウスをクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAトキソイド(不活性形態のトキシン)および活性形態のトキシンAおよび/またはトキシンBで免疫して、作製した。また、動物をトキソイドAで免疫した後、活性形態のトキシンAおよび/またはトキシンBで免役して、マウスmAb(PA−38:抗トキシンA mAb、ATCC番号PTA−9888;PA−39:抗トキシンAおよびB mAb、ATCC番号PTA−9692;PA−41:抗トキシンB mAb ATCC番号PTA−9693;およびPA−50:抗トキシンA mAb、ATCC番号PTA−9694)を作製した。トキシンAトキソイド、トキシンA、トキシンB(List Biological Laboratories Inc., Campbell, CA)およびトキシンA(Techlab Inc., Blacksburg, VA)を、使用するまで4℃で保管した。トキシンおよびトキソイドには、一般に用いられているクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の参考株である株VPI10463由来のものを用いた。必要な容量のトキソイドまたはトキシンにQuil Aアジュバント(Accurate Chemical, Westbury, NY)を加え、混合した。混合物を60分間の免疫で調製し、免疫の準備ができるまで氷上で保管した。融合前の最終ブーストのために、必要なトキシンをPBSで希釈し、免疫に使用するまで氷上で保管した。
【0188】
B.免疫および融合
30匹のメスのBALB/cマウス(Charles River Labs, Wilmington, MA)に、3週間間隔で活性トキシンAまたは活性トキシンBの用量を増してブースト免疫する前に、3週間間隔で、2免疫用量(PA−50の場合)または3免疫用量(PA−38、PA−39、PA−41の場合)のトキシンAトキソイド(10μg)を皮下注射した。PA−38では、1匹のマウスを3週間ごとにブースト免疫し、トキシンA(List Biological Laboratories Inc.)を合計で3回ブーストした。このとき、ブーストするたびに用量を500ngから2μgに増し、トキシンA(8μg)の最終ブーストは脾摘出の3日前とした。PA−39およびPA−41では、2匹のマウスをトキシンBで3週間ごとに3回または5回ブースト免疫し、ブーストするたびに用量を2μgから12.5μgに増し、トキシンB(20μg)の最終ブーストは脾摘出の3日前とした。PA−50では、1匹のマウスをトキシンA(Techlab Inc.)で3週間ごとにブースト免疫し、合計で4回ブーストした。このとき、ブーストするたびに用量を20ngから2.5μgに増し、トキシンA(10μg)の最終ブーストは脾摘出の3日前とした。免疫およびブースト用量のトキソイドおよびトキシンを、Quil A(10μg)などのアジュバントと一緒に投与した。活性形態のトキシンAまたはトキシンBでのブーストによって、保護抗体ができたであろう動物を同定した。免疫した動物からの血清を段階希釈し、後述するようにしてCHO−K1細胞に対するトキシンA細胞傷害作用の中和を試験した。中和抗体の力価が最も高かった動物を融合用に選択し、アジュバントなしでトキシンでブーストした。
【0189】
ブースト後、動物を屠殺し、単離した脾細胞を、標準的な方法でSp2/0細胞株と融合した。ハイブリドーマを、選択培地RPMI−1640、10%FBS、10% BM Condimed−H1(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)およびβメルカプトエタノール(PA−38およびPA−39の場合)またはハイブリドーマ−SFMおよび10%FBS(PA−41およびPA−50の場合)(100μMのヒポキサンチン、1μg/mlのアザセリンおよび16μMのチミジンを含む)に選択目的で懸濁させた。ハイブリドーマを96ウェルの平底組織培養プレート(BD Biosciences, San Jose, CA)に播種した。プレートを37℃で3日間インキュベートした後、HT成長培地(アザセリンなしの選択培地)を加えた。インキュベーションをさらに4〜7日間継続した後、ハイブリドーマ上清を中和活性についてスクリーニングした。
【0190】
PA−38の一次スクリーニングで、608のハイブリドーマ上清を、CHO−K1細胞(ATCC番号CCL−61、Manassas, VA)に対するトキシンA(List Laboratories)の細胞傷害作用の中和能について試験した。PA−39およびPA−41の一次スクリーニングでは、2416のハイブリドーマ上清を、CHO−K1細胞に対するトキシンB(List Laboratories)の細胞傷害作用の中和能について試験した。PA−50の一次スクリーニングでは、1440のハイブリドーマ上清を、T−84細胞に対するトキシンA(Techlab Inc.)の細胞傷害作用の中和能について試験した。2回目のアッセイで、ウサギ赤血球のトキシンによる凝集の阻害について検討した。スクリーニング手順から、PA−38(抗トキシンA)、PA−39(抗トキシンA/B)、PA−50(抗トキシンA)、PA−41(抗トキシンB)で示し、スクリーニングアッセイでクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンを効果的に阻害または中和する4種類のmAbを、単離した。これらのmAbを産生したハイブリドーマ細胞株を限界希釈によって2回クローニングし、クローン細胞株を作製した。IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を用いて、PA−38、PA−39、PA−41、PA−50 mAbを、それぞれアイソタイプIgG2a,κ、IgG1,κ、IgG1,κ、IgGI,κと判断した。mAb産生ハイブリドーマ細胞株を、それが産生するmAbと同じ名称で示す。
【0191】
C.スクリーニング:細胞に対するトキシンAまたはB細胞傷害作用の中和
ハイブリドーマ上清を、細胞に対するトキシンAまたはトキシンBの細胞傷害作用の中和能についてスクリーニングした。高スループットの方法を開発し、数千のハイブリドーマ上清を同時に処理した。細胞毒性(cytoxicity)アッセイでは、CHO−K1細胞(PA−38、PA−39、PA−41の場合)またはT−84細胞(PA−50の場合)のいずれかを使用した。Biomek FXロボットシステム(Beckman Coulter, Brea, CA)を用いて、細胞をアッセイプレート(96ウェル、乳白色の壁、透明な平底のプレート;Perkin Elmer, Waltham, MA)に加えた。アッセイプレートを37℃で4時間インキュベートし、細胞をウェルに付着させた。T−84のアッセイでは、トキシンAを240ng/mlまで希釈した。CHO−K1アッセイでは、トキシンAを2μg/mlまで希釈するか、トキシンBを6ng/mlまで希釈した。希釈後のトキシンを、Biosafety Cabinet(BSC)で試薬希釈プレート(96ウェルの丸底プレート;BD, Franklin Lakes, NJ)に手作業で加えた。ハイブリドーマ上清を手作業で回収し、Biomek FXシステムを用いて試薬希釈プレートのウェルに加えた。上清とトキシンの混合物を37℃で1時間インキュベートし、Biomek FXシステムを用いて細胞の入ったアッセイプレートに加えた。37℃で72時間インキュベートした後、20μL/ウェルのCellTiter−Blue(Promega, Madison, WI)を各ウェルに加えた。プレートをさらに4時間インキュベートした後、励起波長560nm、発光波長590nmでSpectraMax M5 Plate Reader(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて読み取った。未処理培養とトキシン処理培養で細胞生存率を比較した。細胞生存率(%)を濃度に対してプロットした。
【0192】
D.本発明によるマウスmAbの作製
In vivoおよびin vitroでの作製方法を利用して、単離および/または精製された本発明のmAbを得た。マウスmAbのin vivoでの産生には、適切なハイブリドーマ細胞株をプリスタンで予備刺激したBALB/cマウスの腹膜腔に注射して、腹水液を調製した。硫酸アンモニウムでの沈殿後、プロテインAクロマトグラフィによってmAbを均一性>95%まで精製した。精製抗体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させた。
【0193】
小規模の(<100mg)in vitroでの作製では、培養で増殖させたハイブリドーマ上清からマウスmAbを精製した。ハイブリドーマをハイブリドーマ−SFM(Invitrogen)および10%FBSで培養した。週に3回T−150フラスコに細胞株を通し、細胞濃度が2×10
6個/mlを超えないように増やした。PA−39(IgG1,κ)、PA−41(IgG1,κ)、PA−50(IgG1,κ)を含む上清を、2000rpmで10分間の遠心によって清澄化し、濾過した。清澄化材料をランニング緩衝液で最終濃度(60mMグリシン/3MのNaCl、pH8.5)に希釈し、ランニング緩衝液で平衡化しておいたプロテインAカラムにロードした。カラムを洗浄後、PA−39またはPA−41 mAbを0.1酢酸ナトリウム(pH5.5)で溶出し、pH7.0に中和した。PA−38(IgG2a,κ)を含む上清を2000rpmで10分間遠心して清澄化し、濾過した。清澄化材料を25mMのリン酸ナトリウム緩衝液/100mMのNaCl(pH7.0)の最終濃度まで調節し、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液/0.5MのNaClで平衡化しておいたプロテインAカラムにロードした。カラムを洗浄し、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH3.0)でPA−38 mAbを溶出し、溶出抗体をpH7.0に中和した。
【0194】
大量(>100mg)のmAbをin vitroで作製するには、5% Ultra Low IgG FBSを用いて、WAVE Bioreactor(GE Healthcare, Piscataway, NJ)に、ハイブリドーマ−SFMの初期密度2×10
5個/mlでハイブリドーマを接種した。細胞数と生存度を毎日監視した。抗体の産生が変化のない状態に達するほぼ6日目または7日目までに、培養を終了した。培養を清澄化した後、接線流濾過で10〜20分の1に濃縮した。60mMのグリシン、3MのNaCl(pH8.5)で平衡化しておいたプロテインAカラムに抗体をロードした。カラムを同一の緩衝液で洗浄し、抗体を50mMの酢酸(pH3.5)で溶出した。プールされた抗体を、1MのTrisでpH7.4まで中和し、10mg/mLに濃縮し、PBSに透析濾過した。精製mAbを滅菌濾過し、−80℃で保管した。
【0195】
実施例2
本発明の抗C difficileトキシンAおよび/またはトキシンB mAbの特異性およびトキシンAおよび/またはトキシンBに対する親和性
A.トキシンAおよび/またはトキシンBのmAbの特異性を判断するためのELISA
ELISAプレート(BD Biosciences)に50ng/ウェルのトキシンA(List Laboratories)または25ng/ウェルのトキシンB(List Laboratories)を4℃で一晩コートした。プレートをPBS−(カルシウムまたはマグネシウムなしのPBS、0.05%Tween 20)で洗浄した後、ウェルを200μlのブロッキング緩衝液(カルシウムまたはマグネシウムなしのPBS、0.1%Tween 20、2.5%無脂肪乳)で37℃にて1時間ブロックした。洗浄ステップを繰り返し、ハイブリドーマ上清または精製mAbを37℃で1時間加えた。プレートを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG−Fc(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)を用いて37℃で1時間インキュベートした。ABTSペルオキシダーゼストップ溶液(KPL)を用いて、プレートをABTSペルオキシダーゼ基質システム(KPL, Gaithersburg, MD)でデベロップし、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices)で405nmで読み取った。
【0196】
滴定データを
図1Aから
図1Cに示す。
図1Aは、PA−38がトキシンAに結合し、トキシンBに結合しないことを示す。
図1Bは、PA−39がトキシンAとトキシンBの両方に結合可能であることを示す。
図1Cは、PA−41がトキシンBに結合し、トキシンAに結合しないことを示す。
【0197】
B.BiacoreにおけるトキシンAおよびBのmAbの反応性
Biacore 3000装置(GE Healthcare)を用いて、トキシンAおよび/またはトキシンBに対する本発明のmAbの結合特異性を判断した。MAbを、アミンカップリングの製造業者の指示に従って、約10,000レゾナンスユニット(RU)でCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定化した。特異性が無関係の(Southern Biotech)のアイソタイプマッチ抗体の参考表面を対照として用いた。HEPESベースのHPS−EP緩衝液(GE Healthcare)で25℃で結合実験を実施した。精製トキシンAまたはトキシンB(30nM;List Biological Laboratories)を対照フローセルと試験用フローセルに5μL/分の速度で通した。必要に応じて、追加のmAb(100nM)を5μL/分でフローセルに通し、多価または競合的結合について検討した。
【0198】
図2Aから
図2Dに示すように、mAb PA−38(
図2A)およびmAb PA−50(
図2C)は、トキシンAに特異的に結合した。mAb PA−41(
図2D)は、トキシンBに特異的に結合した。mAb PA−39(
図2B)は、トキシンAに優先的に結合したが、トキシンBに対する結合も示した。これらのデータからの結果は、ELISAのデータ(
図1A〜
図1C)と一致し、トキシンAおよび/またはトキシンBに対する本発明のmAbの結合特異性を示している。
【0199】
C.結合親和性
Biacore分析も利用して、それぞれのトキシンに対する本発明のmAbの結合活性を判断した。Biacoreのマウス抗体キャプチャーキットで準備したCM5センサーチップを用いて、mAbをキャプチャーした。次に、トキシンをさまざまな濃度(0.4〜100nM、2倍増大)でフローセルに通した。すべてのトキシン濃度を二重に試験し、測定実施後に毎回、キットに指定された条件でチップ表面を再生した。トキシンに対するmAbのK
Dを算出するBia Evaluation Software 1:1(Langmuir)結合モデルを用いて、RUの変化を記録し、分析した。結合と解離データ、フィッティングを
図3Aから
図3Eに示す。
【0200】
トキシンAに対するmAbのK
DをBiacore分析で判断したところ、PA−38で1.0nM、PA−39で0.16nM、PA−50で0.16nMであった。トキシンBに対するmAbのK
Dを判断したところ、PA−39で2.4nM、PA−41で0.59nMであった。これらの結果から、本発明のmAbが、ナノモルの親和性およびナノモル以下の親和性でトキシンAおよび/またはトキシンBに結合することが明らかになった。
【0201】
実施例3
In vitro細胞ベースの中和アッセイ
CHO−K1細胞またはT−84細胞のいずれかを用いる細胞ベースの細胞毒性アッセイを用いて、標記の抗トキシンAおよび抗トキシンB mAbの中和活性を評価した。
【0202】
A.CHO−K1細胞に対するトキシンA細胞傷害作用の中和
アッセイプレート(96ウェル、乳白色の壁、透明な平底のプレート(Perkin Elmer))にCHO−K1細胞を播種した(50μL/ウェルに細胞2,000個)。処理の前に4時間、細胞を付着させた。等容量(35μL)の2μg/mLのトキシンA(List Biological Laboratories)と段階希釈mAbとを試薬希釈プレート(96ウェルの丸底プレート(Falcon))で37℃にて1時間混合した後、混合物50μlをプレートの各ウェルに加えた。72時間のインキュベーション後、20μL/ウェルのCellTiter−Blue(Promega)を各ウェルに加えた。プレートをさらに4時間インキュベートした後、励起波長560nm、発光波長590nmで、SpectraMax M5 Plate Reader(Molecular Devices)を用いて読み取った。未処理培養とトキシン処理培養で細胞生存率を比較した。細胞生存率(%)をmAbの濃度に対してプロットした。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、阻害データを非線形回帰のシグモイド用量反応曲線にフィッティングし、細胞毒性(cytoxicity)を50%中和するのに必要なmAbの濃度(EC
50)を算出した。
図4に示すように、mAb PA−39は、CHO−K1細胞でのトキシンAの活性をEC
50が93pMで完全に中和した。
【0203】
B.CHO−K1細胞に対するトキシンBの細胞傷害作用の中和
CHO−K1細胞毒性アッセイを用いて、抗トキシンB特異的mAbの中和活性を評価した。抗トキシンA mAbの評価と同様に、96ウェルのプレートでCHO−K1(2,000個/ウェル)に加える前に、段階希釈mAbと一緒にトキシンB(8pg/mL、TechLab)を37℃で1時間インキュベートした。72時間後、20μL/ウェルのCellTiter−Blue(Promega)を各ウェルに加えた。プレートをさらに4時間インキュベートした後、励起波長560nm、発光波長590nmで、SpectraMax M5 Plate Reader(Molecular Devices)を用いて読み取った。CellTiter−Blueを用いて細胞生存度を判断し、処理培養と未処理培養とで細胞生存率を比較した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、阻害データを非線形回帰のシグモイド用量反応曲線にフィッティングし、細胞毒性(cytoxicity)を50%中和するのに必要なmAbの濃度(EC
50)を算出した。
図5に示すように、PA−41は、CHO−K1細胞でトキシンBの細胞毒性を中和する際に高い度合いの活性を示した(EC
50が9.2pM)。
【0204】
ELISAおよびBiacore分析では、mAb PA−39はトキシンBに対する結合を示したが、このmAbはCHO−K1および他の細胞ベースのアッセイではトキシンBに対してin vitro活性を持たなかった。トキシンAおよびトキシンBの両方に結合するが、in vitroの細胞ベースのアッセイでのトキシンAまたはトキシンBの中和では機能的活性を持たない抗体が報告されている(46、92、93)。本発明は、トキシンAおよびトキシンBの両方に結合し、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシン、すなわちトキシンAの細胞毒性を中和する二重の機能を有する新規なmAbを包含する。
【0205】
C.T−84細胞に対するトキシンAの細胞傷害作用の中和
T−84細胞毒性アッセイを用いて、標記の抗トキシンA mAbの中和活性を評価した。アッセイプレート(96ウェル、乳白色の壁、透明な平底のプレート(Perkin Elmer))にT−84細胞を播種した(50μL/ウェルに細胞15,000個)。処理の前に4時間、細胞を付着させた。等容量(35μL)の240ng/mLのトキシンA(Techlab)と段階希釈mAbとを試薬希釈プレート(96ウェルの丸底プレート(Falcon))で37℃にて1時間混合した後、混合物50μlをアッセイプレートの各ウェルに加えた。72時間のインキュベーション後、20μL/ウェルのCellTiter−Blue(Promega)を各ウェルに加えた。プレートをさらに4時間インキュベートした後、励起波長560nm、発光波長590nmで、SpectraMax M5 Plate Reader(Molecular Devices)を用いて読み取った。未処理培養とトキシン処理培養で細胞生存率を比較した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、阻害データを非線形回帰のシグモイド用量反応曲線にフィッティングし、細胞毒性(cytoxicity)を50%中和するのに必要なmAbの濃度(EC
50)を算出した。
図6に示すように、mAb PA−38およびPA−50は、T−84細胞でトキシンAの活性を完全に中和し、EC
50はそれぞれ175pMおよび146pMであった。T−84細胞アッセイで、mAb PA−39はトキシンAに対して最小活性を示し、PA−41は活性ではなかった。
【0206】
D.ウサギ赤血球(RBC)の血球凝集
本発明のmAbが、細胞受容体に対するトキシンAの結合をブロックする機能を、血球凝集アッセイで評価した。このアッセイでは、等容量(30μL/ウェル)のトキシンA(8μg/mL;TechLab)と段階希釈したmAbとを試薬希釈プレート(96ウェルの丸底プレート(Falcon))で4℃にて1時間混合した。ウサギ赤血球(RBC)(Colorado Serum Co., Denver, CO)をPBSで3回洗浄し、PBSに懸濁させた。1%RBC懸濁液60μLを、トキシンA−mAb混合物の入った96ウェルのプレートのウェルに加え、プレートを4℃で4時間インキュベートした。遊離トキシンAがRBCの血球凝集を引き起こす。したがって、トキシンAに結合する抗トキシンA mAbを加えると、血球凝集が防止されると思われる。ImageQuant 400機器を用いて、血球凝集の度合いを判断した。完全血球凝集が起これば、懸濁液中のRBCよりもシグナルが強くなった。GraphPad Prism非線形回帰シグモイド用量反応曲線フィッティングを用いて、阻害データからEC
50値を算出した。
図7に示すように、mAb PA−38(黒い正方形)およびmAb PA−50(黒い三角形)がRBCでトキシンA活性を完全に中和し、EC
50はそれぞれ30nMおよび1.8nMであった。PA−38およびPA−50は、受容体に対するトキシンAの結合をブロックすることで、トキシンAを中和するように見える。アッセイで、mAb PA−39およびPA−41は、不活性であることがわかった。
【0207】
E.Caco−2単層アッセイ
96ウェルのMultiscreen Caco−2プレート(Millipore Billerica, MA)の上部チャンバーでCaco−2細胞を播種し(75μL/ウェルに25,000個)、250μLの培地を下部チャンバ−に加えた。3〜4日ごとに培地を定期的に交換しながら、細胞を10日間成長させた。10〜14日間のインキュベーション後、上皮細胞抵抗測定器(モデル:EVOMX、World Precision Instruments, Sarasota, FL)を用いて経上皮電気抵抗(TEER)を測定して隙間なく形成された単層の形成を確認した。単層の完全性を確立して判断した後、等容量(60μl)のトキシンA(50ng/ml)および段階希釈したmAbを37℃で1時間混合した後、アッセイプレートの上部チャンバーに加えた。プレートを18〜24時間インキュベートした後、抵抗測定器を用いてTEER値を測定した。未治療のウェルとトキシン処理したウェルで単層の完全性を比較した。
図8に示すように、GraphPad Prismソフトウェアを用いて阻害データを非線形回帰シグモイド用量反応曲線にフィッティングし、50%中和(EC
50)に必要なmAbの濃度を求めた。mAb PA−38およびPA−50は、トキシンAによるCaco−2単層の破壊を中和し、EC
50がそれぞれ485pMおよび196pMであった。このアッセイで、他のmAbは不活性であることがわかった。
【0208】
理論に拘泥されるものではないが、細胞ベースのin vitroでの結果から、PA−38およびPA−50が、1つのクラスの抗トキシンA mAbを表し、PA−39が別のクラスの抗トキシンA mAbを表すように見えることがわかる。mAb PA−38およびPA−50は、受容体結合に重要なトキシンAのエピトープに結合するように見える。mAb PA−39は、in vitroにてトキシンAの細胞傷害作用を一層直接的にブロックする形でトキシンに結合するように見える。
【0209】
実施例4
マウスにおける本発明の抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびトキシンB mAbのin vivoでの有効性の評価
in vivoでのマウスモデルを使用して、本明細書に記載のmAbが、動物で循環するクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンを中和する機能を測定した。単独または組み合わせで投与したmAb PA−38、PA−39、PA−41またはPA−50のin vivoでの中和活性を、被検動物での組み合わせでの全身クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAおよびトキシンB(Techlab)の作用について試験した。
【0210】
実験には、雌のSwiss Webster4〜6匹/群(週齢:研究開始時に約6〜8週;Charles River Laboratories)を使用した。設備でマウスを最低4日間順化し、使用する前に動物の健康をチェックした。IACUCが承認したプロトコールで動物実験を実施した。
【0211】
マウスで初期実験を実施して、トキシンAおよびトキシンBの毒性を判断した。動物に0、20、100、500、2500ngのトキシン/匹を腹腔内(腹腔内)投与し、以後の抗体中和実験で用いる、動物にとって致死的な用量を選択した。PBSを注射した対照マウスは未感染であった。中和実験には100ng用量のトキシンA(TechLab)を選択した。この用量が、100%のマウスが注射後24時間以内に致死的になる最低用量レベルであったためである。同様に、中和実験には100ng用量のトキシンB(TechLab)を選択した。この用量が、100%のマウスが注射後24時間以内に致死的になる最低用量レベルであったためである。
【0212】
抗トキシンmAbの中和活性を評価するために、0日目に各mAbを異なる用量レベルでマウス(1群あたり5匹)に単回注射して腹腔内投与した後、1日目に100ng/200μlのトキシンAまたはトキシンBを腹腔内投与した。3日間は動物を毎日観察し、その後はトキシン投与後21日目まで毎週観察した。動物の生存が、研究の一次エンドポイントであった。
【0213】
中和実験では、すべての用量の抗体を、カルシウムまたはマグネシウムを含まないPBS(PBS−、Invitrogen, Carlsbad, CA)で配合した。0日目にmAb PA−38、PA−39、PA−41またはPA−50を異なる用量レベルでマウスに単回注射して腹腔内(200μl/用量/動物)投与した後、1日目にトキシンを注射(抗体注射部位とは異なる腹腔内の部位)。最初の3〜4日間は動物の健康状態を毎日監視した後、トキシン投与後最大21日目まで1週間に2回監視した。動物のケージ側の観察(猫背の姿勢、毛皮の艶がない、活発でないなど)を、生存状態と一緒に記録した。
【0214】
異なる用量レベルのPA−38(動物1匹あたり0.2μg〜250μg)、PA−50(動物1匹あたり0.2μg〜100μg)とw、評価した。このモデルでは、PA−38およびPA−50が、100ng用量のトキシンAを中和し、
図9Aおよび
図9Bに示すように、動物1匹あたり2μgという低い用量レベルのmAbで100%生存させられるすることが明らかになった。対照的に、本明細書ではCDA−1対照のmAbと呼ぶ対照のヒト抗トキシンAモノクローナル抗体(国際公開第2006/121422号パンフレットおよび米国特許出願公開第2005/0287150号明細書)は、動物1匹あたり5μgで、本発明のmAbのように動物をトキシン関連死から保護しなかった(
図9C)。0.5μg〜250μgというPA−41の用量を、評価し、動物1匹あたり5μgの単一用量のmAbで、
図10に示すように、動物1匹あたり100ng用量のトキシンB毒性を完全に中和することが明らかになった。MAb PA−39(動物1匹あたり100μg)は、トキシンAまたはBのどちらでもマウスのトキシン関連死を遅延させることが観察されなかった。
【0215】
トキシンA(PA−38、PA−50)またはトキシンB(PA−41)に対する個々の抗体の中和活性がin vivoにて明らかになった後、同一のin vivoマウスモデルで、トキシンの合計での致死用量(トキシンAを100ng、トキシンBを100ng)に対する各mAbの用量レベル5μgおよび50μgでmAb(PA−38+PA−41)の組み合わせを試験するための実験を実施した。また、個々のモノクローナル抗体を対照として含めた。
図11に示すように、各mAb単独(すべての動物がトキシン投与24時間以内に死亡した)の場合の活性と比較して、PA−38およびPA−41 mAbの組み合わせで、50μg/匹(5匹のうち4匹が生存)および5μg/匹(5匹のうち1匹が生存)の両方でトキシンの組み合わせから保護された。
【0216】
実施例5
Golden Syrianハムスターにおけるクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連下痢症(CDAD)モデルにおける本発明の抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびトキシンB mAbの評価
ハムスターでのCDADモデルが、ヒトにおけるCDAD疾患のカギになる態様を再現する。抗生剤での治療時、正常な結腸細菌叢が根絶し、ハムスターがクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の感染に対して易感受性となった。感染によって、重症の下痢症、偽膜性大腸炎および死に至る。ハムスターのCDADモデルを利用して、生きたクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)細菌からの攻撃に関連した動物の疾患および死を防ぐ本発明のmAbの考えられる有効性を評価した。これらの実験を、IACUCが承認したプロトコールで実施した。
【0217】
A.薬物動態分析
生きたクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)微生物に感染したハムスターを用いてハムスターのモデルで有効性の研究を実施する前に、正常な未感染のハムスターで薬物動態研究を実施した。Golden Syrianハムスター(Harlan)に0.2mg/匹または1mg/匹の精製mAb PA−38またはmAb PA−41を腹腔内注射した。0.125日目、0.25日目、1日目、2日目、4日目、7日目、10日目、14日目、21日間目に、後眼窩または心臓の穿刺(全血)採血技術で、血液試料を回収した。血液試料を8000rpmで10分間遠心処理して、血清を得た。
【0218】
ELISAで血清中のmAb濃度を判断した。96ウェルのELISAプレート(BD Biosciences)に、トキシンA(Techlab)またはトキシンB(Techlab)を250ng/ウェルで4℃にて一晩コートした。プレートをPBS/0.05%Tween−20(登録商標)(PBS−T)で3回洗浄し、200μlのブロッキング緩衝液(カルシウムまたはマグネシウムありのPBS、0.1%Tween 20(登録商標)、2.5%無脂肪乳)で室温にて1時間ブロックした。抗体参照標準(精製mAb PA−38またはmAb PA−41)を、1%のプールした無感作ハムスター血清で希釈し、0.3〜1000ng/mlの範囲の標準曲線を生成した。希釈した被験試料および標準を室温にて1時間、インキュベートした。
【0219】
プレートを洗浄し(上記同様)、HRP結合ヤギ抗マウスIgG、Fcγ特異的抗体(Jackson Immunoresearch)を用いて室温にて1時間インキュベートした。ABTSペルオキシダーゼ基質系(KPL)でプレートをデベロップし、ABTSペルオキシダーゼストップ溶液(KPL)で止めて、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices)で405nmで読み取った。標準曲線を使用して、異なる時点での各ハムスターのmAb濃度を算出した。約10%の試料で抗体力価が認められなかったが、これはおそらく注射ミスまたは吸収が起こらなかったことによるものと思われた。これらの試料はPKパラメータの計算には含めなかった。WinNonLin、バージョン4.0(Pharsight Corp., Mountain View, CA)を用いてノンコンパートメントの薬物動態分析を実施した。データを表1および
図12Aおよび
図12Bに示す。図示のとおり、Cmaxおよび曲線下の面積(AUC)が用量依存性であった。各抗体の終末半減期が6日間を超えたが、これによって後述する有効性の研究のあいだ、抗体が確実に保持された。
【0220】
【表1】
【0221】
B. Golden Syrianハムスターのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連下痢症(CDAD)モデルにおける、組み合わせでの本発明の抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびトキシンB mAbの評価
有効性実験を実施して、本発明のマウスの抗トキシンAおよび抗トキシンB mAbが、ハムスターのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連下痢症のin vivoモデルで感染動物の生存性に影響する能力を評価した。雄のGolden Syrianハムスター(約90g)(Crl:LVG(SYR))(Charles River Laboratories, Inc., Kingston, NY)を、単回皮下用量のクリンダマイシン(Sigma, St. Louis、5mg/mLのPBS溶液として配合)50mg/kgで前処理し、正常な結腸細菌叢を破壊した。翌日、関連の試験群のハムスターに経口用量(0.5mLを1×10
7CFU)のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)(ATCC 43596株)懸濁液を与えた。株43596は、過去にハムスターモデルで抗体の中和に用いられていた。動物の体重を毎週計測し、健康状態と生存については毎日監視した。
【0222】
被検抗体は、本発明のマウスmAbの組み合わせ、すなわち、mAb PA−38およびPA−41の組み合わせまたはmAb PA−39およびPA−41の組み合わせからなるものであった。ヤギ抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびトキシンBポリクローナル抗体(Techlab)を、陽性対照として含めた。mAbおよび対照試薬を表2に示したようにして投与した。
【0223】
【表2】
【0224】
群1のハムスターには研究の間、何の処理もしなかった。群2〜7のハムスターは、単回皮下用量のリン酸クリンダマイシン50mg/kg(−1日目)で前処理した。群5〜7のハムスターには、クリンダマイシン処理直後に表2に示すようなポリクローナルヤギ抗体(群5)またはmAbの組み合わせ(群6および7)を腹腔内投与した。24時間後、群3〜7の各ハムスターに、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)ATCC 43596(10
6〜10
7CFU/mL)適切な懸濁液0.5mLを経口胃管栄養で与えた(0日目)。1日目の抗体での初期処理後、1日目、3日目、5日目に、これらの群での以後の3回の治療剤を1日おきに、1日あたり1回投与した。群4の動物に、1〜5日目に1日2回、約6時間あけてバンコマイシン(20mg/kg BID)を経口胃管栄養で投与した。バンコマイシン(群4の動物)の投与は、動物にクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)を接種した約20〜24時間後に開始した。
【0225】
mAb処理群と対照群での生存結果を
図13に示す。全群でのハムスターでの死亡率の概要を表3にあげておく。処理せずにクロストリジウム・ディフィシル(C difficile)に感染したすべてのハムスター(感染対照、群3)は、研究の2日目または3日目に死亡したことがわかった。バンコマイシン処理群(群4)では、8匹のハムスターのうち7匹が15日目から19日目の間に死亡したことが明らかになった。このモデルで一般に観察されるように、ほとんど(88%)のバンコマイシン処理ハムスターで、療法の中断後2週間以内にクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染が再発し、死亡した。対照的に、mAb PA−39+PA−41(群7)の組み合わせで処理したすべてのハムスターならびに、mAb PA−38+PA−41(群6)の組み合わせで処理した8匹のハムスターのうち7匹が、研究終了時まで生存した(感染後37日目)。また、研究終了時、ヤギポリクローナル抗体で処理した群のすべての動物(群5)が生きていた。生存したハムスターはいずれも、死後剖検時にGI管が正常であった(
図15A、
図15Cおよび
図15D参照)。
【0226】
【表3】
【0227】
これらの結果から、最初と以後の疾患の再発時の両方で、mAb PA−39とPA−41の組み合わせならびに、mAb PA−38とPA−41の組み合わせが、ハムスターを重症の疾患から効果的かつ永続的に保護したことがわかる。mAb治療で利益が得られる期間(37日間)は、ハムスターモデルでクリンダマイシンでの治療後にクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症が確立されるウィンドウ(2週間)を有意に超えた。ポリクローナル処理群とmAb処理群、対照群での動物の体重を、
図14に示す。未感染の対照群(群1)のハムスターは、研究の過程で13〜29gから堅調に重量が増えた。感染対照動物はいずれも最初の接種後体重測定前に死亡した。バンコマイシン、ヤギポリクローナル抗体、PA−38+PA−41 mAbの組み合わせ、PA−39+PA−41 mAbの組み合わせで処理した動物の平均体重は、感染後の最初の週に有意に低下した。その後、mAb処理群ならびにポリクローナル抗体処理群での平均体重が、堅調に増えて、研究の終わりまでには未感染の対照と同様になったことから、毒性のイベントがないことがわかった。
【0228】
このハムスターでの研究全体として、本発明のmAbの組み合わせが、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症の関連およびストリンジェントなハムスターモデルでハムスターを死亡率から効果的かつ永続的に保護したことが明らかになった。これらの所見は、未感染の動物と比較して、mAb処理動物で正常な腸細菌叢の自然な発達と再増殖が可能になる長期間にわたって、mAbの組み合わせが動物をクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)疾患から保護した機序を裏付けるものである(
図15A〜
図15D)。このように、本発明のmAbを用いると、感染動物に対して治療的な保護が得られ、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連疾患がなくなって、胃腸管の健康と生存が回復された。
【0229】
C.Golden Syrianハムスターでのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連下痢症(CDAD)モデルにおける本発明の個々の抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよび/またはトキシンB mAbの評価
ハムスターでの別の研究を実施し、組み合わせで投与したmAbの場合と比較して、感染動物に投与した本発明の個々のマウス mAbの有効性を評価した。この研究での処理群を表4に示す。
【0230】
【表4】
【0231】
この研究では、群1〜7のハムスターに単回皮下用量のリン酸クリンダマイシンを50mg/kg(1日目)で与えて前処理した。群3〜7の動物には、クリンダマイシン処理直後にmAbを腹腔内投与した。24時間後、前述のセクションBで説明したように、群1〜7の各ハムスターにクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の懸濁液0.5mLを経口胃管栄養で与えた(0日目)。1日目、3日目、5日目に、被検mAb治療剤を、群3〜7の動物に単回用量で投与した。1〜5日目に1日2回(群2)バンコマイシンを経口胃管栄養で投与した。ハムスターの生存度を1日2回監視した。1週間に1回、体重を記録した。死亡が確認された動物または研究時に安楽死させた動物については、剖検を実施した。研究終了時(接種後40日目)、残っていたすべてのハムスターについて最終剖検を実施した。
【0232】
mAb処理動物群および対照動物群での生存を
図16Aに示し、すべての群のハムスターの死亡日を表5にまとめておく。
【0233】
【表5】
【0234】
感染対照群(群1)では、7匹のハムスターすべてが2日目に死亡したことが明らかになった。これらのハムスターはいずれも、死後の検査でGI管に炎症が生じていた。バンコマイシン-処理群(群2)では、7匹のハムスターがすべて研究の12日目から19日目の間に死亡した。これらの死亡のタイミングは、このモデルのバンコマイシン処理で前に観察されたタイミングと同様であった。死後の検査で、すべてのハムスターに、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症を示すGI管の炎症があることが明らかになった。
【0235】
PA−39+PA−41 mAbの組み合わせ処理(群3)は、この研究では感染したハムスターを保護する上で極めて効果的であった。群3の7匹のうち6匹のハムスターが研究の終わりまで生存した。1匹のハムスターが、研究12日目に死亡したことが明らかになった。死後の検査で、このハムスターには、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症に典型的なGI管の炎症があることがわかった。
【0236】
単一抗体での処理(群4〜7)のうち、mAb PA−39単独(群6)で、処理動物でいくらか保護活性が示された。この群のハムスターは、2日目から12日目までに死亡したことがわかった。個々のmAbすなわちPA−41(群4)、PA−38(群5)、PA−50(群7)で処理した群では、ハムスターは2日目と3日目の間に死亡したことがわかった。最終剖検で、これらの群のすべてのハムスターにGI管の炎症が認められたが、これはクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症を示すものである。対照的に、生存したすべての処理ハムスターは正常なGI管であった。
【0237】
この研究の結果から、PA−39+PA−41のmAbの組み合わせで処理すると、処理中断後1か月を超える期間にわたって、疾患の発症からハムスターを保護できることを示している。これは、PA−39+PA−41の組み合わせで処理した8匹のハムスターのうち8匹がクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症から生存した実施例5Bの上述した研究で得られるものと同じである。この研究では、単一のmAb治療としてのmAb PA−39が、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)疾患からクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症ハムスターを保護するにあたって、いくらかの活性を呈した。
【0238】
D.終末血での抗体濃度の判断ならびに、終末時ハムスター盲腸試料でのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の存在の評価
研究時に瀕死であることが明らかになった動物から血液を採取した。研究終了時、生きたままであった動物から血液を採取した。以下において特に明記しないかぎり、血液試料を処理して血清を集めた。以後に有り得る分析のために、処理済みの試料を<−70℃で冷凍した。
【0239】
上述したin vivoでの有効性ハムスター研究に続いて、研究時に動物から得た全血採血でmAbの存在を調べた。実施例5Bで説明したmAbの組み合わせ研究では、mAb PA−39(50mg/kg)+mAb PA−41(40mg/kg)の組み合わせを投与(2日ごと×4)した群7の8匹の動物を、研究37日目に全血採血した。この全血採血から回収した血清で、3.3±3.4μg/mLのレベルでPA−39が検出され、2.4±1.7μg/mLのレベルでPA−41が検出された。実施例5Cで説明した個々のmAb研究では、mAb PA−39(50mg/kg)+mAb PA−41(50mg/kg)のの組み合わせを投与(2日ごと×4)した群3の動物6匹を、研究40日目に全血採血し、血液試料を処理して血漿を得た。この全血採血から回収した血漿で、1.8±1.4μg/mLのレベルでPA−39が検出され、3.4±3.2μg/mLのレベルでPA−41が検出された。これらの分析での抗体の検出限界は、1.6ng/mLであった。このように、数週間の時間にわたって動物で検出可能なレベルのmAbを測定した。これは、これらのmAbが、治療計画の過程とmAbの最終用量を投与した後にで治療上の利点を与える作用様式を裏付けるものである。
【0240】
実施例5Cの群3での最後の剖検で、各ハムスターの盲腸を露出させたところ、いずれも正常に見えた。炎症または赤みは観察されず、盲腸の内容物も比較的しっかりして硬かった。各盲腸の壁を滅菌した使い捨てのメスで開いた。ハムスターごとに新しいメスを使って、相互汚染を防いだ。少量の糞便を滅菌した綿棒で盲腸から取り除き、滅菌した試験管に入れた。10μLの播種用ループを用いて、試験管から糞便の試料を回収し、ウマ血液培地(Remel、ロット735065)のCCFAの入った寒天プレートに試料を画線した。これは、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)用に選択したものである。プレートを無気箱に入れ、37℃で48時間インキュベートした。1枚のプレートに保存培養からクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)ATCC 43596を画線し、コロニー比較のために糞便の画線と一緒にインキュベートした。ハムスター6匹全部からのプレート上でクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)に似ているコロニーを観察した。これらの実験の結果から、本発明のmAbで処理した生存動物には依然としてクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)がいるが、正常な腸内微生物平衡を回復すべく正常な細菌叢が再集合して、これが全生存に寄与したことがわかる。
【0241】
E.Golden Syrianハムスターのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連下痢症(CDAD)モデルにおける本発明の抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよび/またはトキシンBヒト化mAbおよび対照の抗トキシンAおよび抗トキシンB mAbの評価
ハムスターでさらなる研究を実施して、本発明のヒト化抗トキシンAおよび抗トキシンB mAbのの組み合わせのin vivoでの有効性を、ヒト抗トキシンA対照のmAb、CDA−1、ヒト抗トキシンB対照のmAb、CDB−1の組み合わせでの場合と比較して、それぞれの抗体の組み合わせをクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症の動物に投与した場合について評価した。この研究の処理群を、表5Aに示す。
【0242】
【表5A】
【0243】
被検抗体は、本発明のヒト化mAbすなわち、ヒト化抗トキシンA mAb PA−50とヒト化抗トキシンB mAb PA−41との組み合わせ(hPA−41+hPA−50)またはCDA−1対照のmAbと呼ぶ対照のヒト抗トキシンA mAbとCDB−1対照のmAbと呼ぶ対照のヒト抗トキシンB mAbとの組み合わせ(CDA−1+CDB−1)を表5Aに示す量で用いた組み合わせからなるものであった。本明細書に記載の方法で、3D8および124の公開された重鎖および軽鎖領域(国際公開第2006/121422号パンフレットおよび米国特許出願公開第2005/0287150号明細書)に基づいて、対照のmAbを合成(DNA2.0)し、全長IgG1発現ベクター(pCON−γおよびpCON−κ)にクローニングし、CHO−KSV1細胞で発現させ、精製した。mAbの組み合わせと対照治療剤を表5Aに記載したようにして投与した。
【0244】
治療方法は、基本的に、この実施例のパートBで上述したとおりである。簡単に説明すると、この実施例5Eの研究では、Golden Syrianハムスター(Charles River Laboratories, Stone Ridge, NY、50日齢)を用いた。対照群1のハムスターは未感染(かつ未処理)であった。群2〜7の動物は単回皮下用量のリン酸クリンダマイシン50mg/kgで前処理し、正常な結腸細菌叢を破壊した(1日目)。群4〜7の動物には、クリンダマイシン処理直後にIP投与した。24時間後、群2〜7の各動物に0.5mLのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)(ATCC 43596、株545)懸濁液を経口胃管栄養で与えた(0日目)(すなわち経口用量)。群4〜7では、1日目、3日目、5日目に、動物に単一用量で被検治療剤をさらに投与した。群3の動物には、1〜5日目に1日2回、約6時間あけてバンコマイシンを投与した。動物の体重を毎週計測し、健康状態と生存については39日間毎日監視した。終末に剖検を実施し、選択培地にて37℃で48時間の嫌気培養後にクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)微生物の盲腸での力価を判断した。検出限界は、盲腸内容物1gあたり20CFUであった。この研究および上述したハムスターでの研究は、Institutional Animal Care and Use Committeeのガイドラインに従って、Ricerca Biosciences(Concord, OH)で実施した。
【0245】
mAb処理群および対照群での生存結果を
図16B−1に示す。研究の死亡率データを以下の表5Bに示す。ハムスターの生存での概要を以下の表5Cに示す。
【0246】
【表5B】
【0247】
表5Bから明らかなように、未感染の対照ハムスター(群1)4匹はいずれも研究の終わりまで生存した。感染対照(群2)動物はすべて2日目と3日目に死亡した。バンコマイシン処理群(群3)では、研究動物はいずれも13日目から22日目の間に死亡した。hPA−50+hPA−41(50、50mg/kg)群4では、10匹の動物のうち9匹が研究の終わりまで生存した。この群の1匹のハムスターが8日目に瀕死であることがわかり、GI管が赤く変色していたのに対し、この群で残り9匹の生き残った動物はGI管が正常であった。群5の10匹のハムスターはすべて研究の終わりまで生存し、GI管も正常であった。対照のmAb群では、50mg/kg(群6)を投与した10匹の動物のうち9匹が、5日目から14日目の間に死亡し、1匹の動物が研究の28日目までに死亡した。対照のmAbの組み合わせ20mg/kgで処理した10匹のハムスター(群7)はいずれも、研究5日目から14日目の間に死亡した。
【0248】
【表5C】
【0249】
表5Cから明らかなように、未感染の対照群1の動物4匹すべてが研究の終わりまで生存した(40日間)。処理なしでクロストリジウム・ディフィシル(C difficile)に感染したすべてのハムスター(感染対照、群2)では、生存中央値が2日間であった。この群の動物は研究の終わりまで生存しなかった。バンコマイシン処理群(群3)では、生存中央値が20日間で、40日目まで生存した動物はいなかった。hPA−50+hPA−41 mAbの組み合わせでの処理はともに、この研究では感染動物を保護する上で効果的であった(群4および5)。ヒト化mAb PA−50+PA−41(20mg/kg 各々;群5)の組み合わせで処理したすべて(100%)のハムスターと、ヒト化mAb PA−50+PA−41(各50mg/kg;群4)の組み合わせで処理したハムスターの90%が、研究の終わりまで生存した(感染後40日)。すべての生存したハムスターは、死後剖検で基本的にGI管が正常であった。対照的に、対照の抗トキシンAおよび抗トキシンB mAbの組み合わせを与えた動物の生存中央値は、対照のmAbのどちらの用量でも同様であった。対照mAbの組み合わせで処理した2つの群では、すべての動物が死亡した。特に、CDA−1+CDB−1(各50mg/kg;群6)組み合わせを与えた動物では、生存中央値が14日間だったのに対し、CDA−1+CDB−1(各20mg/kg;群7)の組み合わせを与えた動物では、生存中央値が11日間であった。
【0250】
この研究での追加評価には、研究終了時における体重測定、肉眼での剖検、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)微生物の盲腸力価が含まれていた。バンコマイシンまたはPA−50/PA−41の組み合わせで処理した動物の平均体重は、感染後の最初の週に減少した後、戻した(
図16B−2)。39日目までに、PA−50/PA−41の組み合わせで処理した動物の平均体重は、並列に収容した健康で未感染の動物と同様になった(P>0.05)。CDA1/CDB1対照の抗体の組み合わせの組み合わせで処理した動物の平均体重は、研究の間、着実に減少した。
【0251】
39日目、PA−50/PA−41の組み合わせで治療して生存した19匹の動物の消化管は、未感染の動物と同様に見えた。クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の盲腸力価は検出不能(<1.3log
10CFU、n=11)または低い(4.15±0.76log
10CFU、n=8)のいずれかであった。対照的に、他の処理群では、死亡時に数匹またはすべての動物で炎症の生じた消化管が観察された。4匹の未処理の動物のうち4匹と、盲腸の分析をした4匹のバンコマイシンで処理した動物のうち4匹(PA−50/PA−41に対して平均CFU=6.01±0.93log
10、P<0.017)で、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)が検出され(PA−50/PA−41に対して平均CFU=8.96±0.59log
10、P<0.0001)。CDA1/CDB1対照の抗体の組み合わせで処理したほとんどのハムスターで、盲腸の内容物がわずかしかないかまったくなかったが、このためクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)力価の定量的な分析ができなかった。
【0252】
この研究および上記の研究での統計分析のために、GraphPad Prism(v.4.0 GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて中和データを4パラメータのロジスティック方程式にフィッティングした。両側t検定またはlogランク検定を用いて、平均または生存データをそれぞれ比較した。
【0253】
研究の結果から、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症の動物を、どちらの用量レベルのヒト化mAb PA−50とPA−41の組み合わせで処理しても、最初と以後の疾患の再発時のいずれも、ハムスターを重症の疾患から効果的かつ永続的に保護できることがわかる。ヒト化mAbの組み合わせ処理の利益がある期間(40日間)は、対照としてのバンコマイシンまたは対照の抗トキシンAおよび抗トキシンB mAbでの処理と比較して、動物の長期生存を有意に改善した。
【0254】
in vivoでの動物研究から明らかなように、ヒト化PA−50/PA−41 mAbの組み合わせでの組み合わせ処理は、CDIおよび療法の十分に確立されたGolden Syrianハムスターモデルでクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症に対して非常に有効であった。PA−50/PA−41での短い処理期間でも、処理をしなかった動物、標準的な抗生剤療法の動物または対照のmAbの動物の生存が0%だったのに対し、感染後39日目に95%が生存した。感染後39日目に、PA−50/PA−41で処理した動物は体重が正常であり、明らかな胃腸管病変は認められなかった。未処理動物と比較して、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)はほとんどの動物から回収できず、>7−log
10クリアランスを反映していた。これらの所見に対して考えられる説明のひとつとして、抗生剤の非存在下におけるトキシンのmAbによる中和によって、動物の消化管で保護的な微生物細菌叢が再建できるようになったことがあげられる。
【0255】
トキシンAまたはトキシンB単独では、CDIのハムスターモデルにおいて致死的な疾患を引き起こせたことが報告され、これらのトキシンに対するmAbは通常、治療の有効性を最大にするのに必要とされる。上記の研究では、マウスmAb PA−50およびPA−41を個々に50mg/kgの用量でハムスターモデルに用いた場合に生存の利点が認められず、これが組み合わせ治療の要件を明確にしている。
【0256】
このハムスターでの研究全体として、マウスmAbの組み合わせを用いた上述の所見と同様に、本発明のヒト化mAbの組み合わせが、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症の厳しいハムスターモデルで効果的かつ永続的にハムスターを死亡率から保護したことが示された。理論に拘泥されるわけではないが、これらの所見は、ヒト化mAbの組み合わせが、ヒト化mAb処理動物の正常な腸細菌叢の自然な発達と再増殖を可能にするだけ長い期間にわたって、動物をクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)疾患から保護および/または動物にクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症に対する反応を持たせ、よって、感染動物を治療的に保護し、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連疾患を効果的になくし、胃腸管の健康と生存を回復させる作用機序を裏付けるものである。
【0257】
実施例6
クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAおよびトキシンBの領域に対するmAbの結合
本発明のmAbが結合したクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAおよびトキシンBのエピトープ領域を判断するための実験を実施した。クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)によって産生されるトキシンAおよびトキシンBはどちらも、約300kDaでかなりの配列と構造が相同である。どちらも、クロストリジウムの繰り返しオリゴペプチド(CROP)を含有するC末端受容体結合ドメインと、ポア形成を引き起こし、エンドソームの膜へのトキシンの挿入を媒介すると考えられている中央の疎水性のドメインと、N末端酵素ドメインを切断するタンパク質分解ドメインと、を有するため、グルコシルトランスフェラーゼが細胞質に入ることができる。クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)ならびに他のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)タンパク質のトキシンをコードする核酸配列は、公開されており、National Center for Biotechnology Information(NCBI)データベース(すなわちwww.ncbi.nlm.nih.gov)でアクセスできる。たとえば、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)株VPI 10463の場合、トキシンAおよびトキシンBをコードするDNA配列は、NCBI受託番号x92982に見られる;また、NCBI受託番号NC_009089、領域795842−803975は、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)630染色体完全ゲノム配列由来のトキシンAのDNA配列を提供するものであり、かたやNCBI受託番号NC_009089、領域787393−794493は、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)630染色体配列由来のトキシンBをコードするDNA配列を提供するものである。
【0258】
A.クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンBの抗体結合ドメインマッピング
クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の全長トキシンBは、3つの主要ドメインすなわち、グルコシルトランスフェラーゼ(GT)活性を処理するN末端酵素ドメイン(63kDa)と、推定上のトランスロケーションドメイン(148kDa)の片側にあるC末端細胞受容体結合(59kDa)(
図17Aおよび
図17C)からなる。酵素カスパーゼ1を用いる全長トキシンBの酵素的な切断によって、いくつかのトキシンB断片を作製した(
図17C)。トキシンBを37℃で96時間、カスパーゼ1(酵素/トキシン比約1U/μgトキシン)で処理した後、SDS−PAGEで検出した場合に断片(193および167kDa)を含有する2つのC末端と断片(103および63kDa)を含有する2つのN末端を含む4つの主要な断片を作製した(
図17B)。26および14kDaなど、他のこれよりも小さな断片も作製されたように見えるが、3〜8%トリス酢酸ゲル分析では検出可能でなかった。
【0259】
未処理またはカスパーゼ1で処理したトキシンBでSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析を実施した(
図18A〜
図18C)。mAb PA−41は、カスパーゼ1処理トキシンBの103kDaと63kDaの両方の断片を認識した(
図18Bの右側のレーン)ことから、PA−41がトキシンBのN末端酵素ドメインに結合することがわかる。N末端シーケンシング分析で、PA−41がトキシンBの63kDaのN末端酵素ドメインに結合することを確認した。未処理トキシンBの63kDaのバンド(左側のレーン、
図18B)がPA−41に認識されなかったのは興味深いが、これはレーンの分子量が同じ(63kDa)2つの断片異なるタンパク質に見えたことを示唆している。
【0260】
カスパーゼ1処理トキシンBのMAb PA−39結合167kDa断片(
図18C、右側のレーン)ならびに、未処理トキシンB調製物の63kDaのタンパク質(
図18C、左側のレーン)は、PA−39がトキシンBのトランスロケーションドメインでエピトープに結合することを示唆している。よって、カスパーゼ1処理 クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンBでのSDS−PAGE/ウェスタンブロット分析の結果に基づいて、mAb PA−41およびPA−39がトキシンBとは異なる形で相互作用することが観察された。mAb PA−41はトキシンBのN末端酵素ドメインでエピトープに結合することが明らかになったが、mAb PA−39は、トキシンのトランスロケーションドメインのエピトープ(アミノ酸850〜1330)に結合することが明らかになった。これらの所見は、エンテロキナーゼ消化を用いるトキシンB断片のSDS−PAGE/ウェスタンブロット分析でも確認された。
【0261】
Biacoreを用いて、トキシンBに対する抗トキシンB mAbの競合的結合も実施した。
図19Aから
図19Eにおいて示されるように、mAb PA−39およびPA−41は、トキシンBの異なるエピトープ領域に結合する。マウスmAb PA−39およびPA−41は、トキシンBの単一部位またはエピトープに結合することが観察された。これらのmAbは、C末端細胞受容体結合(CRB)ドメインに結合することが見出されなかった。マウスPA−41では、結合トキシンBの親和性が0.59mMであった。さらに、PA−41に結合したトキシンB上の部位は、対照の抗トキシンB mAb CDB−1の結合をブロックしなかった(国際公開第2006/121422号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0287150号明細書)(
図19D)。これらの所見は、ウェスタンブロット分析の結果と一致する。
図19Cおよび
図19Eで観察されるように、対照の抗トキシンB mAb CDB−1は、mAb PA−39およびPA−41のものとは異なるエピトープでトキシンBに結合する。
【0262】
B.クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAの抗体結合ドメインマッピング
全長クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAは、分子量が310kDa(
図20A)で、グルコシルトランスフェラーゼ(GT)活性を有するN末端酵素処理ドメイン(約63kDa)と、疎水性ドメイン(約144kDa)の片側にあるC末端CRBドメイン(約101kDa)の3つの主要ドメインを含有する。
【0263】
酵素エンテロキナーゼ(EK)を用いて、全長トキシンを酵素的に切断していくつかのトキシンA断片を作製した。25℃で48時間のエンテロキナーゼ(酵素/トキシン比:約3mU/μgトキシン)でのトキシンAの処理後、4つのC末端断片(約223kDa、約158〜160kDa、約91kDa、約68kDa)と3つのN末端断片(約195kDa、約181kDa、約127kDa)を含む9つの主要な断片を作製した。これよりも小さな断片(約53および約42kDa)も観察された。(
図20Bおよび
図20C)。
【0264】
未処理またはエンテロキナーゼで処理したトキシンAでSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析を実施した(
図21A〜
図21C)。全長トキシンAおよびその断片(分子量約223kDa、約158〜160kDa、約91kDa、約68kDa)は、mAb PA−50に認識された(
図21B)。N末端シーケンシングによって、68kDaの断片がC末端受容体結合(CRB)ドメインの一部を含むことが確認された。mAb PA−50の結合パターンから、mAbがトキシンAの断片を含むC末端に結合することが示唆される。総合すれば、これらの結果から、mAb PA−50がトキシンAのC末端受容体結合エピトープに結合することがわかる。mAb PA−39は、C末端含有断片(約223および約158〜160kDa)ならびに約181kDaのN末端含有断片(
図21C)に結合したことから、mAb PA−39が、トキシンAの受容体結合ドメイン外の領域のエピトープに結合することがわかる。Biacoreアッセイを使用して、mAb PA−50およびトキシンAの相互作用研究で複数の結合部位(少なくとも2つの結合部位)を同定した(
図22A−1)。Biacore分析を用いる比較研究では、固定化したマウスPA−50がトキシンAに親和性0.16nMで特異的に結合した。また、マウスmAb PA−50によってセンサーチップにキャプチャーされた後、トキシンAは、さらにPA−50に結合でき、その後、対照の抗トキシンA mAb CDA−1(国際公開第2006/121422号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0287150号パンフレット)にも結合する(
図22A−2)ことが見出された。また、Biacoreチップで対照の抗トキシンA mAb CDA−1にキャプチャーされたトキシンAは、別のCDA−1およびPA−50 mAbにさらに結合したことから、対照のmAb CDA−1がトキシンAの複数の繰り返しに結合することがわかり、これらはトキシンAのPA−50 mAb結合エピトープとは異なる(
図22B)。このように、これらの結果から判断すると、トキシンAには複数のコピーでPA−50 mAbエピトープが存在し、CDA−1のエピトープとは重ならない。さらに、PA−39 mAbは、対照のCDA−1 mAbが結合したトキシンAエピトープとは異なるトキシンAのエピトープに結合した(
図22C)。MAb PA−39およびPA−50は、トキシンA上の異なるエピトープに結合することがわかった(
図22D)。ウェスタンブロット分析では、PA−39および対照のmAb CDA−1がEK処理トキシンAとは異なる結合パターンを有するため、トキシンAに異なる結合ドメインおよび異なるエピトープがあることが示された(
図22E)。ウェスタンブロット分析では、PA−50および対照のmAb CDA−1がEK処理トキシンAと同一ドメイン(
図22F)であるが、異なるエピトープに(
図22B)結合することが示された。
【0265】
この実施例のAおよびBで説明したように、マウスmAb PA−50およびPA−41の結合部位は、トキシンの限られたタンパク質分解に続くウェスタンブロットで、トキシンの特異的な領域に局在していた。マウスmAb PA−50は全長トキシンAといくつかのエンテロキナーゼ切断産物を認識したことから、大きな223kDaの断片と、大きさが68kDa、91kDa、160kDaのカルボキシ末端断片がある(
図22F)ことがわかる。N末端シーケンシングによって、68kDaの断片がトキシンAのカルボキシ末端ドメインに対応していることを確認した。CDA−1対照のmAbによって同一の断片が認識された。マウスmAb PA−41は、全長トキシンBならびに、カスパーゼ1消化によって生成された63kDaと103kDaのアミノ末端断片に結合し(
図18B)、かたやCDB−1対照のmAbは、異なる組のカスパーゼ1切断産物を認識した。N末端シーケンシングによって、63kDaの断片がトキシンBのアミノ末端ドメインに対応していることを確認した。まとめると、データは、mPA−50がトキシンAの受容体結合ドメイン内の複数の部位に結合し、mPA−41がトキシンBの酵素ドメイン内の単一部位に結合することを示している。
【0266】
実施例7
抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびトキシンB mAb−作用機序の研究
A.作用機序研究に用いられるIn vitroでの細胞ベースのアッセイ
抗トキシンmAbの作用機序を評価するために、異なる濃度のトキシンAまたはトキシンBを用いて、in vitroでのアッセイを実施した。これらのアッセイでは、先の実施例3で説明したようにして、CHO−K1またはT−84細胞のいずれかを用いた。
【0267】
簡単に説明すると、CHO−K1アッセイを用いて、抗トキシンAおよび抗トキシンB mAb(PA−39およびPA−41)の中和効力を評価した。96ウェルのプレートにCHO−K1細胞を播種した(2,000個/ウェル)。処理の前に4時間、細胞を付着させた。異なる濃度(60、30、15または6ng/mL)のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシン(株VPI 10463)を段階希釈mAbと一緒にインキュベートし、96ウェルの丸底プレートで37℃にて1時間混合した後、混合物を細胞培養プレートに加えた。72時間のインキュベーション後、20μL/ウェルのCellTiter−Blueを加えた。混合物をさらに4時間インキュベートし、対照と比較した細胞生存率(%)を測定した。
【0268】
T−84細胞毒性アッセイも使用して、抗トキシンA mAbの中和効力を評価し。T−84細胞(ヒト結腸癌種細胞株)を96ウェルのプレートに播種した(15,000個/ウェル)。処理の前に4時間、細胞を付着させた。異なる濃度(240、120、60または30ng/mL)のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシン(株VPI 10463)を段階希釈mAbと一緒にインキュベートし、96ウェルの丸底プレートで37℃にて1時間混合した後、混合物を細胞培養プレートに加えた。72時間のインキュベーション後、20μL/ウェルのCellTiter−Blueを加えた。混合物をさらに4時間インキュベートし、対照と比較した細胞生存率(%)を測定した。
【0269】
B.抗トキシンA mAbがトキシンAの細胞への内部移行を防止することを示すELISA
抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンmAbの作用機序をさらに評価するために設計された実験で、各被検抗体(PA−39、PA−50、対照の抗トキシンA mAb CDA−1および抗トキシンAヤギポリクローナル抗体対照)を混合し、そのEC
90値の100倍でトキシンAの高い細胞傷害性濃度で完全な中和を保証するようVero細胞に対するトキシンAのCC
90濃度で1時間インキュベートした。次に、混合物をVero細胞と一緒に37℃で15分間インキュベートした。次に、細胞をPBSで洗浄し、固定し、透過処理した。被検抗体との結合と競合しない抗トキシンAホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体(PA−38)を用いて、内部移行したトキシンAに対するプローブとし、化学発光を用いて検出した(
図31G)。このアッセイでは、結合して細胞に内部移行したトキシンAだけがプローブによって検出されるため、HRP化学発光反応による化学発光シグナルが得られる。化学発光検出では、可視光の生成につながる過酸化物の存在下、酵素を用いてHRP酵素とその基質との間の反応を触媒する(すなわち、過酸化物によるルミノールの触媒酸化)。酸化したルミノールは、基底状態状態まで減衰する際に光を発する。基質がHRPによって触媒されたら、ルミノメーター(Analyst GT)で光シグナルを定量化する。
【0270】
C.中和活性およびMOA研究の結果
抗トキシンA mAb
抗トキシンA抗体の中和活性および作用機序の評価に用いた細胞毒性アッセイでは、この実施例のセクションAで説明したように、濃度を増しながら細胞にトキシンAを加えた。抗トキシンA mAb PA−39、PA−50および対照のmAb CDA−1によるトキシンAの中和を評価したこれらの実験の結果を、
図31B〜
図31Dと以下の表Aに示す。
【0271】
【表A】
【0272】
表Aに示すデータから明らかなように、トキシン効力アッセイでのmAb PA−39のin vitroでの活性には、培養に加えるトキシンAの量を増やすと、EC
50と最大阻害率の両方にシフトが認められることから、PA−39での阻害の混合−競合的機序があることがわかる。100倍過剰のPA−39で保護後のトキシンAのELISA検出によって、トキシンの内部移行と細胞毒(cytocellular toxin)の作用を防止することで、PA−39によるトキシンの阻害が起こることが確認された。トキシン効力アッセイでのmAb PA−50のin vitroでの活性には、培養に加えるトキシンAの量を増やすと、EC
50のシフトが認められることから、PA−50での阻害の競合的機序があることがわかる。100倍過剰のPA−50で保護後のトキシンAのELISA検出によって、トキシンの内部移行を防止することで、PA−50によるトキシンの阻害が起こることが確認された。
【0273】
抗トキシンB mAb
抗トキシンB抗体の中和効力および作用機序の評価に用いた細胞毒性アッセイでは、この実施例のセクションAで説明したように、濃度を増しながら細胞にトキシンBを加えた。抗トキシンB mAb PA−41および対照のmAb CDB−1によるトキシンBの中和を評価した効力実験の結果を、
図31Eおよび
図31Fと以下の表Bに示す。表のデータからわかるように、トキシン効力アッセイでのPA−41のin vitro活性には、培養に加えるトキシンBの量を増やすと、EC50および最大阻害率の両方にシフトが認められることから、阻害PA−41の混合−競合的機序があることがわかる。
【0274】
【表B】
【0275】
この実施例での上述したアッセイに基づいて、単に阻害因子の濃度を増すだけで、トキシンAまたはトキシンBの濃度が増しても完全に中和できる阻害因子は、抗体の結合数が増えてより高い濃度のトキシンを中和する際にEC
50のシフトが生じるため、競合的阻害因子であると考えられる。トキシンの濃度が増すと毒性作用に抗せない阻害因子は、阻害因子の濃度を増しても最大効果率が低くなるが、EC
50にシフトは認められず、非競合的阻害因子であると考えられる。さらに、トキシンの濃度が高くなって阻害因子の濃度が増えた結果として、EC
50のシフトと最大効果率の低下の両方が起こる阻害因子は、混合−競合的阻害因子であると考えられる。いくらかは、細胞毒性(cytoxicity)アッセイでの作用機序の評価は、アッセイの反復性と、阻害因子のない対照ウェルで観察されるバックグラウンドでの細胞毒性(cytoxicity)に伴う誤差を考慮して実施しなければならない。これは、最大阻害率の平坦域に影響する。結果として、トキシン濃度を高めると、これらの作用がゆえにEC
50値のわずかに右よりのシフトが観察されることがある。
【0276】
上記によれば、トキシンAの中和およびMOAについて、PA−39細胞毒性(cytoxicity)曲線(
図31B)でEC
50のシフトが観察され、平坦域が低くなることならびに、表Aで算出した最大効果率の低下から、PA−39 mAbを混合−競合的阻害因子とみなす。これらのデータは、高濃度のPA−39での細胞傷害作用の度合いを示すELISAでの結果(
図31H)で裏付けられ、PA−39のMOAの少なくともいくらかが細胞内で起こることがわかる。PA−50 mAbは、細胞毒性(cytoxicity)アッセイ曲線(
図31C)に見られるEC
50値の右側へのシフトから、さらには最大阻害率の最小変化を示す表Aに示すデータによって、競合的阻害因子として観察される。これらのデータは、高濃度のPA−50でのトキシンA結合と内部移行の完全な阻害を示すELISAでの結果(
図31H)で裏付けられる。
【0277】
図31Dからわかるように、対照のmAb CDA−1は、トキシンを増やすとEC
50に最小のシフトが認められるが、最大効果率がかなり低下する。
図31Dに示す結果を、表Aのデータと一緒に考慮すると、CDA−1対照のmAbは、非競合的作用機序を示す。なぜなら、その活性がすべて細胞外で観察されるからである。トキシン結合の立体障害および細胞内部移行は、
図31Dにおけるデータプロットを生む原因になりやすく、CDA−1対照のmAbの非競合的MOAを裏付けている。
【0278】
トキシンBの中和およびMOAについての上記に従って、PA−41 mAbは、EC
50値の右方向へのシフトと、
図31Eおよび表Bのデータの両方に見られる最大作用率の低下から、混合−競合的作用機序を呈するものとみなされる。
【0279】
mAb PA−41で観察される結果は、最大効果率が下がるがEC
50シフトの度合いの少ない対照のmAb CDB−1で観察される結果とは対照的である。この場合、トキシンBに対する対照のmAbの活性の作用機序は、特に上述した誤差を考慮するとあまりはっきりしない。
【0280】
実施例8
高病原性分離株または株を含むクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)分離株または株のパネルに対する本発明のmAbの試験
本発明のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)抗トキシンAおよび抗B mAbが、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の広い範囲にわたる関連分離株からのトキシンを中和する機能を評価するために、高病原性BI/NAP1/027分離株を含む20の毒素産生性臨床クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)分離株または株の集合に対してmAbの中和活性を試験した。クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)は、トキシンAおよびBをコードする遺伝子においてかなりの株間異種性を呈するため、標記のmAb、特にmAb PA−50およびPA−41によるトキシン中和の幅を判断するためにこれらの研究を実施した。
【0281】
地理的および遺伝的な多様性を得るために、TechLab(Blacksburg, VA)に維持されたクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)分離株または株の国際コレクションから、毒素タイプ、リボタイプおよび制限エンドヌクレアーゼ分析から、毒素産生性の臨床クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)分離株(表6)のパネルを選択した。
【0282】
表6で分類したように、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の株は3つの参考株(VPI 10463(ATCC 43255)、630(ATCC BAA−1382)および545(ATCC 43596)、6つの病院由来のBI/NAP1/027株(CCL678、HMC553、Pitt45、CD196、5、7.1)、2つのトキシンA−/トキシンB+(tcdA−tcdB+)株(F1470、8864)、3つの外来患者分離株(MH5、CCL13820およびCCL14402)、他の臨床上、頻繁に分離される菌株(Pitt2、CCL14137、UVA17、UVA30/TL42、Pitt102、Pitt7)を含む。また、分離株13(CCL13820)および19(Pitt 102)は、それぞれ表6の「外来患者分離株」と「臨床上、頻繁に分離される菌株(リボタイプ027以外)」に分類されるが、toxA−/toxB+株でもある。これらのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンを含む培養上清をTechLabで作製し、滅菌濾過し、4℃で保管した。培養上清におけるトキシンの存在を、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシン/抗トキシンキット(TechLab)および細胞毒性アッセイを用いて確認した。
【0283】
CHO−K1細胞(培養上清のトキシンB活性の判断に使用)およびT−84細胞(培養上清のトキシンA活性の判断に使用)に対する各トキシン含有培養上清の細胞傷害活性を、滴定済みの培養上清で細胞を処理して評価した。
【0284】
【表6】
【0285】
本発明のmAbの中和活性を試験するために、トキシン含有培養上清を細胞生存度の≧95%喪失につながる最大希釈で用いた。トキシン上清をさまざまな濃度のmAbと1時間予備混合した後、細胞に加えて37℃で72時間インキュベーションした。Cell−Titer Blue(Promega)を用いて細胞生存度を測定した。処理したウェルの生存率を未処理の対照ウェルでの生存率と比較し、グラフにしてmAbのin vitroでの中和活性(EC
50)を算出した。最初の一連の実験では、
図23Aは、CHO−K1細胞を用いてトキシン含有上清を中和する際のmAb PA−41の活性を示す。PA−41は、3種類のトキシンA−/トキシンB+株だけが例外で、あとはすべての高病原性株を含む、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のすべての毒素産生性株の上清を強力に(EC
50範囲1.1
−11Mから6.5
−10M)中和する。従来のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)株由来のトキシンA−/トキシンB+の酵素ドメインには有意な配列差があることが報告されている。PA−41はトキシンBの酵素ドメインに結合することから、このドメインの配列の多様性で、2つのトキシンA−/トキシンB+株由来のトキシンBに対するPA−41の中和活性がそれほど効果的ではないことを説明できる。
【0286】
CHO−K1細胞株におけるクロストリジウム・ディフィシル(C.diffiicle)の高病原性株に対するhPA−41および対照のヒト抗トキシンB mAb CDB−1(国際公開第2006/121422号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0287150号明細書)の両方の活性を評価するための実験を実施した。これらの研究では、hPA−41が6つのBI/NAP1/027株すべての上清に対して有意な中和活性を示し、かたや対照のmAb CDB−1は最小の活性を示す(
図23B)ことが観察された。また、これらの研究では、hPA−41 mAbの中和活性が、BI/NAP1/027株の毒性を中和するにあたって、対照のmAb CDB−1よりも>1,000倍高いようにみえる。2つの参考株(VPI 10463およびATCC 43596)および6つのBI/027/027株(CCL678、HMC553、Pitt 45、CD196、Montreal 5.1およびMontreal 7.1)に対するhPA−41およびCDB−1対照のmAbの中和活性を、
図23Bに示す。これらの研究で、hPA−41が、トキシンA−/B+である3種類のリボタイプ017分離株(表6)に対して不活性であるが、hPA−41抗トキシンB mAbは対照のmAbよりもパネルの他の株に対して有意に高い中和活性を呈することがわかった。
【0287】
T−84細胞を用いるクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)培養のトキシンA含有上清を中和する際のmAb PA−50の活性は、
図24Aに示すように、2.6
−12Mから7.7
−11Mの範囲であった。PA−50は、高病原性株を含めて、トキシンAを産生する入手可能なすべての株の上清を完全に中和した。PA−50は、4つのトキシンA−/トキシンB+株(F1470、8864、CCL 13820、CCL 14402)を中和しなかった。これらの株は、トキシンAをまったく産生しないためである。また、hPA−50も、パネルにおける残りの株の活性を中和する際に、有意に一層効果的であった。他の比較研究で、トキシンA産生クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の6つのBI/NAP1/027株すべてに対するhPA−50の中和活性は、対照のmAb CDA−1(国際公開第2006/121422号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0287150号明細書)の場合よりも>100倍大きい(
図24B)ことが見出された。hPA−50も、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンA産生参考株VPI 10463および545に対して対照のmAb CDA−1より高い中和活性を呈した。同様に、mAb PA−39は、(
図25A)に示すように、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)培養の上清のトキシンAを、EC
50値7.7
−12Mから4.8
−8Mの範囲で中和した。mAb PA−50からわかるように、4つのトキシンA−/トキシンB+株は、PA−39では中和されない。さらに、比較研究の結果は、6つのBI/NAP1/027株すべてに対するmAb PA−39の中和活性が、対照のヒト抗トキシンA mAb CDA−1の場合よりも>100倍大きく、PA−39もパネルの残りの株に対する中和活性が有意に大きい(
図25B)ことを示していた。1つのトキシン株すなわちCCL 14402では、アッセイでmAb中和活性の正確な測定ができるほどT−84細胞の生存度が十分には落ちなかった点に注意されたい。
【0288】
これらの研究では、CHO−K1細胞株、hPA−41が、6つのBI/NAP1/027株すべての上清に対して高いレベルの中和活性を示し、かたや対照の mAb CDB−1は最小の活性を示した。ヒト化PA−41は、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の高病原性BI/NAP1/027株を中和するにあたって、対照のmAb CDB−1よりも中和活性が>1,000倍高いように見えた。これらの研究における、2つの参考株(VPI 10463およびATCC 43596)および6つのBI/027/027株(CCL678、HMC553、Pitt 45、CD196、Montreal 5.1およびMontreal 7.1)に対するhPA−41およびCDB−1の中和活性を、
図23Bに示す。同様に、hPA−41は、これらの研究で、パネルの他の株に対して対照のmAb CDB−1よりも有意に高い中和活性を示し、トキシンA−/B+の3つのリボタイプ017分離株が例外であった。同様の実験を実施して、T−84細胞でのhPA−39および対照のヒト抗トキシンA mAb CDA−1の中和活性を評価した。結果は、hPA−39による6つのBI/NAP1/027株すべての中和が、対照のmAb CDA−1の場合よりも>100倍高いことを示していた(
図25B)。ヒト化PA−39は、研究で、パネルの残りの株に対して対照のmAb CDA−1よりも有意に高い中和活性を示した。このように、hPA−41およびhPA−39 mAbは、試験したすべての株に対して高いレベルの抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)高病原性株中和活性を有する。これは、これらのヒト化mAbによって認識されるエピトープが、多種多様な株で高度に保存されることを示す。
【0289】
表6と同様に、表7も上述したin vitroでのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシン中和実験の結果を示し、北米および欧州から単離された毒素産生性クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)株のパネルと、ヒト化抗トキシンmAbおよび対照のmAb CDA−1およびCDB−1によって生成されるEC
50値を示している。パネルは、リボタイプ001、002、003、012、014、017、027、078を、臨床的に観察されるレートに比例する適切な比率で含み(94、95)、パネルに過剰に現れたリボタイプ017 tcdA
−tcdB
+株が例外である。tcdA
−tcdB
+株由来の上清をツールとして使用して、トキシンB単独で含む上清によって難治性から死亡までの細胞を同定した。これは、トキシンAに媒介される細胞毒性を調べるのに適していた。VPI 10463をパネルに含め、得られた精製トキシンと未精製のトキシンで結果を比較できるようにした。
【0290】
これらの研究で、ヒト化mAb PA−50は、トキシンAを株非依存的に中和した。中央EC
50値は32pM(範囲:20〜127pM、表7)で、急唆な用量反応曲線が観察され、ヒル勾配は通常、2より大きい(
図25C)。PA−50は、各被検分離株に対してCDA1よりも活性が高い。効力の差が最も大きいのは、高病原性027株で観察されており、これに対してPA−50ならびにパネルに含まれているリボタイプ078株は、CDA1(P=0.0002)よりも約1,000倍強かった。
【0291】
ヒト化mAb PA−41は、tcdA
+tcdB
+株各々を強力に阻害し、中央値EC
50値は23pM(範囲:7.7〜129pM、表7)であり、基本的に高い濃度での完全な中和が観察される(
図25D)。PA−41は通常、tcdA
+tcdB
+株に対してCDB1よりも効果的であり、高病原性027株に対して約500倍強い(P=0.003)。CDB1は、リボタイプ017 tcdA
−tcdB
+株からのトキシンBを中和する際に効果的であるが、PA−41はそうでもない。最後に、PA−41およびPA−50は、トキシンの粗形態および精製形態で、参考株VPI 10463(表7および
図25Cおよび25D)から同様の活性を呈した。
【0292】
【表7】
【0293】
この実施例で示すように、ヒト化mAb PA−50およびPA−41は、現在のCDI伝染病を代表する遺伝的に多種多様な株のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびBに対して、高いレベルの中和活性を示した。これらのmAbの活性の幅は、トキシン内の遺伝子型および表現型のばらつきに関して顕著である。特に、PA−50およびPA−41は、ピコモル活性で高病原性の抗生剤耐性027株によって産生されたトキシンを中和し、かたや対照のmAbは、ナノモル活性を持つことが観察された。この結果は、過去に報告があるように、027株のトキシンAに対するCDA−1の結合の低減に反映されることがある(90)。027株由来のトキシンBは他のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)株に比して、顕著な配列の相違を呈する。配列差はカルボキシ末端受容体結合ドメインに集中し、in vitroでの細胞毒性の増加に関連している。しかしながら、このような配列の相違は、PA−41の中和活性に影響しない。これは、トキシンBのアミノ末端ドメイン内のエピトープに結合する。PA−50およびPA−41は、ピコモル力価のパネルで、6つの027株すべてを中和し、これには最近027罹患率のリスクがあがっている株CD196も含む。全体としての所見から、PA−50およびPA−41のエピトープが、027の結合によって広く保存されることがわかる。
【0294】
CDIは一般に、トキシンAおよびBの両方を産生するクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)の株によって引き起こされる。しかしながら、tcdA
−tcdB
+株も、この疾患に結び付いている。臨床的に関連したtcdA
−tcdB
+株は、優先的にリボタイプ017である。リボタイプ017株は、ハムスターで病原性を低下させ、アミノ末端領域がVPI 10463からのtcdBとクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)からの致死的なトキシン(tcsL)の両方に対して70〜80%配列相同性である非定型のtcdBをコードすることが報告されている。表現型では、リボタイプ017tcdBは、ハイブリッドの特徴を有し、一般的なtcdBおよびtcsLトキシンの受容体結合特性とグリコシル化特異性を呈する。017 tcdBの非定型のアミノ末端領域は、なぜ、研究ではPA−41によってトキシンが中和されなかったのかを説明となろう。017の株が地域に広く流行し、CDIの局所的な流行を引き起こしたが、全体としては、CDIを治療するための調査的な治療法の最近の国際的なフェーズ3の臨床研究で遭遇した、株の<2%を含むと判断された(94、95)。
【0295】
実施例9
キメラmAbの生成
親マウスmAbの可変領域とヒトIgG1の定常領域とを含むキメラモノクローナル抗体を作製してキャラクタライズした。正しい抗トキシン活性と結合特異性を有するマウス可変領域をクローニングし、ヒト定常領域でのマウス可変領域の構築によって各クローンmAbの結合特性および中和特性が有意に変化することはないことを保証するために、キメラmAbを作製した。キメラmAbは一般に、親マウスmAbと同一の結合活性を呈する。
【0296】
MAb PA−38、PA−39、PA−41およびPA−50はいずれも、κ軽鎖を含む。キメラmAbを作製するために、重鎖および軽鎖の可変領域をコードする核酸配列を、pCONγ1およびpCONκ(Lonza Biologics, Berkshire, UK)などであるがこれに限定されるものではない好適な発現ベクターに挿入した。好適なプラスミドが、ヒトκ軽鎖の定常領域またはヒトIgG1重鎖の定常領域をコードする。キメラmAbを作製するために、各mAbの重鎖の可変領域をpCONγ1プラスミドにクローニングした。完全重鎖遺伝子を、軽鎖遺伝子を含むプラスミドにサブクローニングし、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方をコードする単一のプラスミドを作製した。Effectene(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、製造業者が提案したプロトコールで、293F細胞をこの発現ベクターで一過的にトランスフェクトした。分泌されたキメラmAbを含有する細胞上清を、トランスフェクションの7日後に回収し、プロテインAクロマトグラフィを用いて精製した。細胞毒性および血球凝集アッセイで、キメラmAbの力価および活性を、マウスmAbの場合と比較した。
【0297】
上記の手順に基づいて、親のマウスPA−39およびPA−41 mAbからキメラmAb(cPA−39およびcPA−41)を作製した。粗細胞上清でのこれらのキメラmAbの濃度は、約2〜11μg/mLの範囲であった。特に、cPA−39を産生するトランスフェクトした293F細胞培養由来の粗上清には、10.6μg/mLのキメラmAbが含まれていたのに対し、cPA−41を産生するいくつかのトランスフェクトした293F細胞培養由来の粗上清は、9.6〜10.9μg/mLのキメラmAbを含有していた。
【0298】
上述したような(実施例3)細胞毒性アッセイ(cPA−39:CHO−K1細胞、cPA−41:CHO−K1細胞およびcPA−50:T−84細胞)を実施して、キメラmAbを、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンのin vitroでの中和能について、それぞれの親のマウスmAbと比較した。
図26(PA−41)、
図27(PA−39)、
図28(PA−50)に示すように、それぞれのマウス親mAbと比較すると、すべてのキメラmAbが、等しく効果的であることがわかった。これらの結果は、キメラ化と、親のマウスmAbに相当するトキシン中和力価を持つ機能的キメラmAbの産生の成功を示している。
【0299】
実施例10
マウスmAbのヒト化とトキシン中和効力についてのin vitroでの本発明のヒト化mAbの試験
従来技術において周知の方法で、ヒト化mAbを作製した。さまざまなヒト化mAbの例と説明が、たとえば、Zenapax(65,66)、Synagis(67〜69)、Herceptin(70〜72)、Mylotarg(73、74)、Xolair(75〜77)、Raptiva(78〜80)、Avastin(81、82)、Tysabri(83)に含まれている。ヒトのmAb活性が悪影響をおよぼさないようにして、免疫原を最小限にするのに効果的なヒト化モノクローナル抗体を作製可能である(84〜87)。好ましくは、ヒト化mAbは、親マウスmAbの2倍以内のトキシン中和活性を示す。さらに、ヒト化mAbは、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)感染症のハムスターモデルで強力な有効性を最適に示す。
【0300】
相補性決定領域(CDR)グラフティングの確立された方法を使用して、本明細書で説明するようなマウス抗トキシンAおよび/または抗トキシンB mAbのヒト化形態を作製した。トキシン中和活性について、in vitroおよびin vivoで、ヒト化mAbを親マウスmAbと比較した。本発明によれば、ヒト化mAbは、親マウスmAbの抗トキシン活性を保持でき、ヒトでの繰り返し投与に適したものとなり得る。
【0301】
A.マウスmAbの重鎖および軽鎖遺伝子の分子クローニング
確立された方法を使用して、抗体遺伝子をクローニングした。(88)簡単に説明すると、1×10
7ハイブリドーマ細胞から、TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、製造業者が提案したプロトコールに従って全RNAを精製した。オリゴ−dTプライマーを使うSuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen)を用いて、5μgの全RNAを逆転写した。得られたcDNAをRNAse Hで処理してRNAテンプレートを除去し、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いてこれを精製して、遊離ヌクレオチドおよびプライマーを除去した。次に、製造業者が提案したプロトコールに従って、dGTPの存在下、酵素末端トランスフェラーゼ(NEB)を用いて、グアニジンヌクレオチドの尾をcDNAの3’末端に加えた。得られた尾状のcDNAを、重鎖または軽鎖の定常領域にアニールした1つのプライマーと、cDNAのグアノシン尾にアニールした1つのユニバーサルプライマーとを用いて、PCR処理した。重鎖および軽鎖の両方に、ユニバーサルプライマー5’TATATCTAGAATTCCCCCCCCCCCCCCCCC3’配列番号11を用いた。軽鎖を増幅するために、プライマー5’TATAGAGCTCAAGCTTGGATGGTGGGAAGATGGATACAGTTGGTGC3’(配列番号12)を用いた。また、重鎖についてはプライマー5’TATAGAGCTCAAGCTTCCAGTGGATAGAC(CAT)GATGGGG(GC)TGT(TC)GTTTTGGC3’(配列番号13)を用いて増幅した。ここで、括弧内の配列は、塩基の縮重を示す。得られたPCR増幅DNAを、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、配列決定した。PCR反応を実施し、三重に配列決定して、約500塩基対のDNA断片の増幅時に誤差が含まれないようにした。
【0302】
B.mAb可変領域のヒト化
ヒト化mAbの配列を作製するために、CDR構造に重要なフレームワークアミノ酸残基を、まず同定した。並行して、マウスV
HおよびV
Lとそれぞれ高い相同性を有するヒトV
HおよびV
L配列を既知のヒト免疫グロブリン配列から選択した。マウスmAbのCDR配列を、必要であればCDRの構造を維持するのに重要なフレームワークアミノ酸残基と一緒に、選択したヒトフレームワーク配列にグラフトした。また、得られるヒト化mAbの潜在的な免疫原を抑えるために、対応するV領域サブグループで非定型であることが見出されるヒトフレームワークアミノ酸残基を、一般的な残基で置換した。これらのヒト化V
HおよびV
L領域をpCONγ1およびpCONκ(Lonza Biologics, Berkshire, UK)などであるが是に限定されるものではない発現ベクターに、それぞれクローニングした。これらのベクターは、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子の定常領域をコードする。Effecteneシステム(Qiagen, Valencia, CA)を使用して、293F細胞を一過的にこれらの発現ベクターでトランスフェクトした。分泌されたヒト化mAbを含む細胞上清をトランスフェクションの7日後に回収し、プロテインAクロマトグラフィを用いて精製した。
【0303】
C.ヒト化mAbを発現している安定したクローンCHO細胞の作製
安定したCHO細胞/細胞株を作製することで、in vitroでの細胞アッセイと、ゴールデンSyrianハムスターのクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)関連下痢症(CDAD)モデルの両方で試験するだけの十分な量のmAbを産生できるようになる。一例として、安定したトランスフェクトCHO細胞を作製するためのグルタミンシンテターゼ選択および増幅システム(GS)を用いて、Lonza Biologics(Berkshire、UK)由来のCHO K1 SV細胞を使用することが可能である。Lonza GSシステムでは一般に、相当に大量のヒト化mAbを産生可能なCHO細胞株を高産生率で得られる。
【0304】
CHO K1 SV細胞を、1×グルタミン(Invitrogen)および1×H/T Supplement(Invitrogen)を加えたCD CHO細胞培地(Invitrogen)で増やした。1×10
7個の生存可能な細胞を、290V、無限抵抗、960uFでで電気穿孔し、40μgの直線化プラスミドDNAを100μlの滅菌TE緩衝液に再懸濁させた。完全CD CHO培地50mlの入ったT−150フラスコに細胞を移し、37℃、8.0%CO
2下、約48時間インキュベートした。細胞を遠心処理し、100μMでのMSX(Sigma)の入ったGS選択培地(CD CHO+1X GS Supplement(JRH Biosciences)+1X H/T Supplement)に再懸濁させて最終密度を3.3×10
5個/mlとし、生存可能な細胞5000個/ウェルで96ウェルのプレート(Corning)に播種し、一次細胞コロニー(トランスフェクトした細胞のクローン)が見え始めるまで約3〜4週間インキュベートした。20μlの上清を慎重に除去して約300の細胞コロニー(クローン)を組換えmAb作製用にサンプリングし、96ウェルフォーマットでELISAアッセイを実施した。簡単に説明すると、96ウェルのプレートにキャプチャー抗体(ヤギ抗−ヒト抗体)をコートした後、クローンCHOトランスフェクタント(1:800に希釈)由来の上清を加えて、プレートウェルに結合したキャプチャー抗体の結合を可能にした。洗浄後、二次抗体(アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗−ヒト抗体)をプレートに加え、試料のヒト抗体に結合させた上で、洗浄して非特異的な結合を除去した。その後、1ステップPNPPキット(Thermo, Rockford, IL)を用いてアルカリホスファターゼ活性についてプレートをアッセイし、分泌抗体が最大量になるクローンを同定した。mAbの産生量が多いクローンを、1×グルタミンおよび1×H/T Supplementを加えたCD CHO細胞培地で増やした。分泌されたヒト化mAbを含む細胞上清を回収し、プロテインAを用いて精製した。産生率が最も高いクローンを限界希釈によってサブクローニングし、スケールアップしてグラム量の組換えヒト化モノクローナル抗体を得た。
【0305】
D.ヒト化mAb hPA−39、hPA−41、hPA−50
分子クローニングしたヒト化mAbを上述したように単離し、キャラクタライズした(以下のセクションEを参照のこと)。各ヒト化抗体の軽(L)鎖定常領域(CL)がカッパ(κ)クラスのものであり、各ヒト化抗体の重(H)鎖定常領域(CH)はIgG1アイソタイプのものである。独特の可変(V)領域を含むヒト化mAbが、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAまたはトキシンBの活性を結合および中和することがあきらかになった。ヒト化mAbのL鎖およびH鎖のV領域は、一般にジスルフィド結合でリンクした2つのH鎖ポリペプチドと2つのL鎖ポリペプチドからなる完全免疫グロブリン(Ig)または抗体分子の一部をなすことがあり、あるいは、抗体の離散した一部または断片、特に、トキシンAおよび/またはトキシンBに結合および/またはトキシン活性を中和する抗体部分または断片のこともある。好適なV領域含有免疫グロブリン断片または部分の非限定的な例として、F(ab)断片、F(ab’)断片またはF(ab’)
2断片があげられる。
【0306】
ヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAおよびトキシンB mAbを上述した手順で作製した。ヒト化プロセスで、トキシンAに結合し、感受性細胞でトキシンA活性を中和するいくつかの抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンAヒト化mAb(hmAb)を作製した。このようなhmAbの例として、配列番号1で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図32A)、ヒトIgG1のC領域、配列番号3で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図33A)、ヒトκC領域を含むヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA mAb;配列番号2で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図32B)、ヒトIgG1のC領域、配列番号3で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図33A)、ヒトκC領域を含む抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA hmAb;配列番号1で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図32A)、ヒトIgG1のC領域、配列番号4で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド(
図33B)、ヒトκC領域を含む抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA hmAb;および配列番号2で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図32B)、ヒトIgG1のC領域、配列番号4で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図33B)、ヒトκC領域を含む抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA hmAbがあげられる。このようなヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA mAbは、本発明のPA−39 hmAb(hPA−39)を包含する。2つのL鎖と2つのH鎖を有する完全hPA−39免疫グロブリンを、本発明のVH領域(たとえば、配列番号1;配列番号2)と、たとえば、IgG1アイソタイプの好適なCH領域(GenBank受託番号NW_001838121に含まれるものなど)とからなるhPA−39 H鎖ポリペプチドと、本発明のhPA−39 VL領域(たとえば、配列番号3;配列番号4)と、たとえば、κサブタイプの好適なCL領域(GenBank受託番号NW_001838785に含まれるものなど)とからなるhPA−39のL鎖ポリペプチドとを同時発現し、分泌する宿主細胞で作製可能である。
【0307】
本発明のヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA mAbの他の例として、配列番号5で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図34A)、ヒトIgG1のC領域、配列番号7で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図35)、ヒトκC領域を含むヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA mAb;および配列番号6で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図34B)、ヒトIgG1のC領域、配列番号7で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図35)、ヒトκC領域を含むヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA mAbがあげられる。このようなヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA mAbは、本発明のヒト化PA−50(hPA−50) mAbを包含する。2つのL鎖と2つのH鎖を有する完全hPA−50免疫グロブリンを、本発明のVH領域(たとえば、配列番号5;配列番号6)と、たとえばIgG1アイソタイプの好適なCH領域(GenBank受託番号NW_001838121に含まれるものなど)とからなるhPA−50H鎖ポリペプチドと、本発明のVL領域(配列番号7)と、たとえばκサブタイプのCL領域(GenBank受託番号NW_001838785に含まれるものなど)とからなるhPA−50のL鎖ポリペプチドとを同時発現して分泌する好適な宿主細胞で作製可能である。
【0308】
ヒト化プロセスでは、トキシンBに結合し、感受性細胞でin vitroにてトキシンB活性を中和する抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンBヒト化mAbも得られた。このようなhmAbの例として、配列番号8で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図36A)、ヒトIgG1のC領域、配列番号10で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図37)、ヒトκC領域を含むヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンB mAb;配列番号9で示すVH領域を含むH鎖ポリペプチド配列(
図36B)、ヒトIgG1のC領域、配列番号10で示すVL領域を含むL鎖ポリペプチド配列(
図37)、ヒトκC領域を含むヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンB mAbがあげられる。このようなヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンB mAbは、本発明のヒト化PA−41(hPA−41) mAbを包含する。2つのL鎖と2つのH鎖を有する完全hPA−41免疫グロブリンを、本発明のhPA−41 VH領域(たとえば、配列番号8;配列番号9)と、たとえばIgG1アイソタイプの好適なCH領域(GenBank受託番号NW_001838121で含まれるものなど)とからなるhPA−41 H鎖ポリペプチドと、本発明のhPA−41 VL領域(たとえば、配列番号10)と、たとえばκサブタイプのCL領域(GenBank受託番号NW_001838785に含まれるものなど)とからなるhPA−41のL鎖ポリペプチドとを同時発現して分泌する好適な宿主細胞で作製可能である。
【0309】
また、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンAまたはトキシンBに結合し、トキシン活性を中和するヒト化クローンmAb(hmAb)を作製した。抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA hmAb PA−50が、2つの重鎖ポリペプチドと2つの軽鎖ポリペプチドとからなり、重鎖が各々、VH領域とヒトCH領域とを含み、軽鎖が各々、VL領域とヒトCL領域とを含む。配列番号14で示すhPA−50重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列(またはcDNA)を、配列番号15に示す(
図38B)。配列番号16で示すhPA−50軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列(またはcDNA)を、配列番号17に示す(
図38A)。抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンA hmAb PA−39が、2つの重鎖ポリペプチドと2つの軽鎖ポリペプチドとからなり、重鎖が各々、VH領域とヒトCH領域とを含み、軽鎖が各々、VL領域とヒトCL領域とを含む。配列番号18で示すhPA−39重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列(またはcDNA)を、配列番号19に示す(
図39B)。配列番号20で示すhPA−39軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列(またはcDNA)を、配列番号21に示す(
図39A)。抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンB hmAb PA−41が、2つの重鎖ポリペプチドと2つの軽鎖ポリペプチドとからなり、重鎖が各々、VH領域とヒトCH領域とを含み、軽鎖が各々、VL領域とヒトCL領域とを含む。配列番号22で示すhPA−41重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列(またはcDNA)を、配列番号23に示す(
図40B)。配列番号24で示すhPA−41軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列(またはcDNA)を、配列番号25に示す(
図40A)。
【0310】
対照のmAbとして使用するために、モノクローナル抗体CDA−1およびCDB1(7、89)を調製した。3D8および124(国際公開第2006/121422号パンフレットおよび米国特許出願公開第2005/0287150号明細書)のIg重鎖および軽鎖可変領域をコードするDNA配列を合成し(DNA2.0)、ベクターpCON−γ1およびpCON−κにクローニングした。全長IgG1,κ mAbを、安定的にトランスフェクトしたCHO−K1SV細胞で発現させ、上述したように精製した。BiacoreによってトキシンAおよびBに対する結合親和性、トキシンによる細胞傷害作用の阻害、血球凝集について刊行物に記載のある方法(7)で試験すると、CDA1およびCDB1調製物は想定レベルの活性を示した。
【0311】
E.ヒト化mAbのIn Vitroキャラクタリゼーション
in vitroにてクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシンの中和実験を実施し、ヒト化mAbの機能的活性を親のマウスmAbの機能的活性と比較した。
図29に示すように、ヒト化PA−41(hPA−41)mAbは、EC
50が9pMであるマウスPA−41 mAb(mPA−41)の場合と比較して、トキシンBの細胞毒性を強力に中和した(EC
50が6pM)。同様に、hPA−39には
図30、hPA−50には
図31に示すように、CHO−K1細胞またはT−84細胞を用いてマウス親mAbと比較すると、トキシンAの中和にあたって、ヒト化PA−39 mAb(hPA−39)およびヒト化PA−50 mAb(hPA−50)は等しく強力であることが明らかになった。これらの結果から、親のマウスmAbのヒト化に成功し、ヒト化mAbが機能的かつ効果的であることがわかる。
【0312】
これらの研究で試験した抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンmAbのうち、PA−50が顕著な用量反応中和曲線を示し、ヒル係数が2つより典型的に大きかったことから、協同的阻害があることがわかった。協同的相互作用は、実際には一般的であり、急唆な用量反応曲線とヒル係数>1でキャラクタライズされることが多い。協同的活性を呈する医薬品は、ウイルス感染を治療する上での臨床活性の増大と関連していた。また、PA−50は、必要になることが多いが協同には十分でない条件である多価的にトキシンAに結合する。
【0313】
実施例11
本発明のマウス抗トキシン mAbのFab断片の生成
A.Fab断片の調製物
マウスIgG1 FabおよびF(ab’)2調製キット(Pierce)とキットに同梱されている試薬を用いて、製造業者の指示に従ってFab断片化を実施した。すべてのmAbすなわちPA−39、PA−41、PA−50で、断片化には同一のプロトコールを用いた。簡単に説明すると、固定化したフィチンスラリー(750μl)を消化緩衝液(75mMシステイン、pH5.6)で洗浄した後、約3mgのmAbを加え、コンスタントに転倒回転しながら混合物を37℃で4時間インキュベートした。消化が終わったら、スラリーを遠心処理し、消化産物を回収した。スラリーをプロテインA結合緩衝液で3回洗浄し、洗浄材料を加えて消化を完了させた。NAbプロテインAカラムをプロテインA結合緩衝液で平衡化し、消化抗体試料を加えた。カラムおよび試料を室温にて10分間インキュベートした。カラムを1000gで1分間遠心処理し、Fab断片を含む通過画分を回収した。カラムをプロテインA結合緩衝液で3回洗浄した。通過画分を回収し、緩衝液をPBSに交換して、濃縮した。
【0314】
B.Fab断片のSDS−PAGE
Novexゲルシステム(Invitrogen)を用いてSDS−PAGEで試料を分析し、特に明記しないかぎり、以下に列挙する試薬はすべてInvitrogenから入手した。試料をNuPage試料緩衝液と混合し、DTTで還元した。還元試料と非還元試料を100℃で10分間インキュベートした。試料(4μg)を4〜12%のBis Tris NuPageゲルにロードした後、MOPSランニング緩衝液を用いて180Vで60分間、電気泳動を実施した。電気泳動後、固定液(40%メタノール、10%酢酸)と一緒に20分間、ゲルをインキュベートし、水ですすぎ、コンスタントに回転しながらSimply Blue Stainで一晩染色した。
【0315】
C.FabのIn vitroキャラクタリゼーション
In vitroクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)のトキシン中和実験を実施して、結合部位数を基準にFab(▲)の機能的活性を完全mAb(■)の機能的活性と比較した。PA−39のFabは、完全PA−39よりもCHO−K1細胞でトキシンA細胞毒性を強く中和した(それぞれEC
50が880pM、EC
50が200 pM)(
図41A)。PA−41のFabは、CHO−K1細胞でのトキシンB活性の中和にあたって完全PA−41と等しく強力なであることがわかった(それぞれEC
50が88pM、EC
50が80pM)(
図41B)。T−84細胞でのトキシンAの中和にあたっての完全PA−50 mAbのEC
50値100pMであったのに対し、PA−50のFabは、EC
50値が1.8nMであった(
図41C)。
【0316】
実施例12
ヒト組織標本のヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンmAbの免疫組織化学的分析
特定抗原の発現を研究する際の免疫組織化学検査(IHC)の値は、正常な組織と腫瘍組織における微小解剖の詳細と不均一性を評価できるようにするものである。IHCは、個々の細胞タイプにタンパク質を直接局在化できるので、他の分析方法よりも好都合である。正常な組織と腫瘍組織の遺伝子発現差を検出可能であり、同時に細胞数と組成の変化も把握できる。この技術の制約には、研究対象となる分子の低レベルの発現がゆえに偽陰性の結果が出る可能性があることと、同様のエピトープまたは他の抗原が共通のエピトープへの抗体結合がゆえに偽陽性の結果(交差反応性)が出ることである。これらの制約に対処するために、本研究は、陽性のトキシン特異的注射マウス対照標本で強く特異的な染色を示した各抗体で可能な限り最も低い濃度で実施した。
【0317】
ヒト化mAb PA−41およびPA−50をビオチン化し、副腎、膀胱、骨髄、乳房、小脳、大脳皮質、頸部、結腸、食道、目、ファロピウス管、心臓、回腸、空腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、卵巣、末梢神経、膵臓、上皮小体、脳下垂体、胎盤、前立腺、皮膚、小腸、脊髄、脾臓、胃、睾丸、胸腺、甲状腺、尿管、子宮、白血球を含む凍結ヒト組織の選択時に免疫組織化学的結合パターンを判断した。上述の37の異なるヒト組織タイプの各々の組織1つを、各抗体で染色した。両方の抗体にウォーキング(Working)IHCアッセイを開発した。無関係のヒトのIgG1,κ、アイソタイプ対照抗体を、すべての試料に含めた。
【0318】
組織調製で、OCT化合物に埋包した凍結標本(Optimal Cutting Temperature埋包化合物;Sakura, Torrance, CA)を5ミクロンに切片化し、正に荷電したスライドガラスに載せた。各抗体および組織標本のIHC染色方法と条件を開発し、試験し、最適化した。新たに切り出した未固定の凍結組織切片を用いて直接的なビオチン化IHC手順を実施した。スライドをクライオスタットから取り出し、室温で10分間空気乾燥させ、95%エタノールで室温にて5分間固定した後、Tris緩衝生理食塩水/0.1%Tween−20洗浄緩衝液(TBST;Dako Cytomation)の3回連続浴で3分間洗浄した。以後の洗浄はいずれも同様にして実施した。室温にてすぐに使える状態のペルオキシダーゼブロックで5分間インキュベーションして、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。緩衝液での洗浄後、アビジンに続いてビオチンで15分間インキュベーションして、内因性ビオチン活性をブロックした。このとき、ステップごとに緩衝液で洗浄した。PA−41では、スライドをBackground Sniperタンパク質ブロッキング試薬で10分間、室温にてインキュベートし、その後の緩衝液での洗浄は実施しなかった。スライドを被検物品または負の対照試薬(PA−41に対し1.25 mg/mlおよびPA−50に対し10 mg/ml)と一緒に室温にて30分間インキュベートした。PA−50の一次抗体をDako希釈剤で1:350に希釈し、PA−41一次抗体については、プロリン(250mM、0.576g、Genzyme, CA)およびヒスチジン(15mM、0.046g、Genzyme, CA)を20mlの希釈剤(pH7.7)に加えてDako希釈剤で1:3520に希釈した。TBSTでの洗浄後、両方の抗体アッセイでABC検出試薬(TBST中1:50)を組織切片に適用し、室温にて30分間インキュベートした後、緩衝液で洗浄した。3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)溶液で室温にて5分間インキュベートして、免疫反応を可視化した。スライドを脱イオン(DI)水で各30〜60秒、3回すすぎ、修飾Mayersヘマトキシリン(Dako Cytomation)で対比染色し、0.2%アンモニアで青くして、等級アルコールで脱水し、キシレンでクリアにして、カバースリップを載せた。染色スライドの解釈を顕微鏡検査で実施した。概して、抗体染色後のスライド上の組織を形態学的に検査して、適切な量の組織が存在するか否か、指定の正常な組織要素が適宜現れたか否かを判断した。上記の標準を満たさなかった試料を、研究病理学者による分析から除外した。
【0319】
スコアリングシステムには、染色強度の半定量的な分析を含む。被検物品の染色強度を、負の対照抗体で染色した隣接する切片を含む組織対照スライドの強度に比して判断した。負の試薬対照で標識した切片の染色を、「バックグラウンド」染色とみなした。「0」のスコアはバックグラウンドに対して染色なしを示し、「1+」が弱い染色、「2+」が中程度の染色、「3+」が強い染色を示した。病理学での標準的なやり方で、すべての組織要素で観察された強度の最高レベルとして染色強度を報告した。
【0320】
ヒト化PA−50およびPA−41 mAbの両方でのIHC分析の結果は、試験したどのヒト組織標本でも陽性染色(0%)が認められなかったというものである。トキシンを注射したマウスの脚筋肉対照組織(PA−50にはトキシンA、PA−41にはトキシンB)では、研究全体で一貫した強い染色(たとえば、3+)が示された。PA−50の場合、どの組織試料にも真の陽性染色が認められなかった。(すなわち100%の細胞が染色0%だった)。PA−41では、試験した37のヒト組織で真の陽性染色が認められなかったが、正常な肝臓(リポクローム色素による)、正常な肺(異物のある肺マクロファージ)および正常な筋肉(アーチファクト染色の反応と一貫する)の最高染色強度で弱い(1+)陽性染色が見られた。このようなPA−41の弱い染色値については、全対照と最小染色のばらつきからみれば、ささいであるとみなした。
【0321】
実施例13
非ヒト霊長類におけるヒト化抗クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)トキシンmAbの薬物動態分析
精製ヒト化mAb PA−41またはmAb PA−50を用いて未感作ではないカニクイザルでの薬物動態(PK)研究を実施した。この研究では、雄の未感作ではないカニクイザル(Macaca fascicularis)に1mg/kg/匹または5mg/kg/匹の精製ヒト化mAb PA−41またはmAb PA−50を静脈内注射した。Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のポリシーと手順に沿って研究を実施した。
【0322】
表8は、各mAb(濃度10mg/kg)を未感作ではない動物に2用量レベルで静脈内投与したことを示すPK研究フォーマットを示す。
【0323】
【表8】
【0324】
研究開始時に動物に研究抗体を1回静脈内注射した。その後、29日間の間に14の別々の時点で(すなわち投与前;1日目に0.5時間、2時間、6時間、12時間、24時間(投与後);3日目、4日目、7日目、9日目、12日目、15日目、22日目、29日目)、各動物から末梢血管の静脈穿刺によって血液試料を得た。血液試料を血清分離管に回収し、凝固するまで湿った氷上に維持した。凝固後、血液試料を1800gで15分間、4℃で遠心処理して血清を得た。血清試料を使用するまで−70℃で保管した。
【0325】
ELISAで血清中のmAb濃度を求めた。96ウェルのELISAプレート(Thermo Fisher Scientific, Rochester, NY)を、100ng/ウェルのトキシンA(Techlab)またはトキシンB(Techlab)で4℃にて一晩コートした。プレートをPBS/0.05% Tween−20(登録商標)(PBS−T)で3回洗浄し、200μlのブロッキング緩衝液(PBS、カルシウムまたはマグネシウムなし、0.1% Tween 20(登録商標)、1%カゼイン)で室温にて1時間ブロックした。抗体参照標準(精製mAb PA−41またはmAb PA−50)を1%のプールした未感作のカニクイザル血清(Bioreclamation)で希釈し、0.3〜4000ng/mlの範囲の標準曲線を作成した。希釈した被験試料および標準を三重に試験し、室温にて1時間インキュベートした。
【0326】
プレートをPBS−Tで6回洗浄し、HRP結合ヤギ抗−ヒトIgG1(The Binding Site, San Diego, CA)とともに室温で1時間インキュベートした。プレートをSureBlue TMB 1−コンポーネントのペルオキシダーゼ基質(KPL)でデベロップし、1Nの塩酸(Thermo Fisher Scientific)で止めて、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices)で450nmにて読み取った。標準曲線を用いて、異なる時点の各サルでのmAb濃度を算出した。WinNonLin、Version 4.0(Pharsight Corp., Mountain View, CA)を用いてノンコンパートメントの薬物動態分析を実施した。ヒト化mAb PA−50でのPKの結果を
図42Aに示す。ヒト化mAb PA−41での結果を
図42Bに示す。用量1mg/kgおよび5mg/kgのPA−50では、平均T
1/2(日)は14.5±0.3および12.3±1.5であった。用量1mg/kgおよび5mg/kgのPA−41では、平均T
1/2(日)は8.9±1.3および9.2±3.3であった。
【0327】
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【0328】
以上、例示目的で本発明について詳細に説明してきたが、このような詳細は単に説明目的のものにすぎず、当業者であれば以下の特許請求の範囲に規定の本発明の意図および範囲を逸脱することなく改変可能であることは、理解されたい。
【0329】
本出願で引用したすべての参考文献、特許、公開公報の内容を、本明細書に援用する。
【0330】
参考文献の一覧は、その参考文献が従来技術であることを認めるものではない。