特許第5965391号(P5965391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5965391-ソナーセンサの取付構造 図000002
  • 特許5965391-ソナーセンサの取付構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965391
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ソナーセンサの取付構造
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/521 20060101AFI20160721BHJP
   G01S 15/93 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01S7/521 B
   G01S15/93
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-510914(P2013-510914)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2012054599
(87)【国際公開番号】WO2012144270
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2013年11月7日
【審判番号】不服2015-14710(P2015-14710/J1)
【審判請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-93813(P2011-93813)
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】壽山 仁
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 中塚 直樹
【審判官】 清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−191007(JP,A)
【文献】 特表2001−527480(JP,A)
【文献】 特開2006−203563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/521
G01S 15/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソナーセンサの取付構造であって、
検知面を有するセンサ本体を備え、前記検知面から超音波を送信し、検知対象物によって反射された超音波の反射波を受信することで前記検知対象物との距離を検出する前記ソナーセンサと、
孔部が開口された、前記ソナーセンサが取り付けられる樹脂部材と、
前記検知面を覆うカバー部を有し、前記ソナーセンサを保持するホルダと、を備えており、
前記ソナーセンサが前記ホルダに装着されており、
前記カバー部が前記樹脂部材の内側から前記孔部に挿入されて、前記カバー部の外表面が前記樹脂部材の外表面とほぼ面一となるように、前記ホルダが前記樹脂部材に取り付けられており、
前記ホルダの少なくとも前記カバー部が樹脂で成形され、かつ、前記ホルダが前記樹脂部材に取り付けられて前記カバー部の前記外表面が前記孔部から外部に露出された後に、前記カバー部の露出された前記外表面と前記樹脂部材の前記外表面とが、同じ塗料で塗装されており、
前記ソナーセンサが、前記ホルダ内で回転可能であり、かつ、任意の回転位置で前記ホルダ内に固定される、ことを特徴とするソナーセンサの取付構造。
【請求項2】
前記カバー部は、前記検知面から送信される超音波の通過が可能な厚みを有している、ことを特徴とする請求項1に記載のソナーセンサの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知対象物との距離を検出するソナーセンサの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、検知対象物との距離を検出するソナーセンサを、外観を損なわずにバンパに組み付ける取付構造が開示されている。この取付構造では、ソナーセンサの検知面[detector plane]とバンパの外表面とが平滑な連続面[continuous smooth surface](フラッシュサーフェス[flush surface])となるように、ソナーセンサがホルダによってバンパに開口された貫通孔に取り付けられる。検知面とバンパの外表面とが平滑な連続面(フラッシュサーフェス)となるので、外観の見栄えが良くなる。また、この取付構造では、更に見栄えを良くするために、検知面とバンパとが同色で塗装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特表2001−527480号公報(米国特許6,318,774号)
【発明の概要】
【0004】
しかし、一般的に検知面の材質はアルミニウムなどの金属で形成されるが、バンパはPP(ポリプロピレン)などの樹脂で形成される。このため、各材質に合わせて、検知面を金属用塗料で塗装し、バンパを樹脂用塗料で塗装しなければならない。この結果、異なる塗料での塗装が必要になり、塗装コストが増大していた。
【0005】
本発明の目的は、塗料の共通化によって塗装コストを抑制することのできるソナーセンサの取付構造を提供することにある。
【0006】
本発明のソナーセンサの取付構造は、検知面を有するセンサ本体を備え、前記検知面から超音波を送信し、検知対象物によって反射された超音波の反射波を受信することで前記検知対象物との距離を検出する前記ソナーセンサと、孔部が開口された、前記ソナーセンサが取り付けられる樹脂部材と、前記検知面を覆うカバー部を有し、前記ソナーセンサを保持するホルダと、を備えており、前記ソナーセンサが前記ホルダに装着されており、前記カバー部が前記樹脂部材の内側から前記孔部に挿入され、前記カバー部の外表面が前記樹脂部材の外表面とほぼ面一となるように、前記ホルダが前記樹脂部材に取り付けられており、前記ホルダの少なくとも前記カバー部が樹脂で成形され、かつ、前記ホルダが前記樹脂部材に取り付けられて前記カバー部の前記外表面が前記孔部から外部に露出された後に、前記カバー部の露出された前記外表面と前記樹脂部材の前記外表面とが、同じ塗料で塗装されており、前記ソナーセンサが、前記ホルダ内で回転可能であり、かつ、任意の回転位置で前記ホルダ内に固定される、ことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ソナーセンサの取付構造の実施形態をバンパ表面側から見た斜視図である。
図2図2は、上記実施形態の断面図である。
図3図3は、上記実施形態の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ソナーセンサの取付構造の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の取付構造では、ソナーセンサが、ホルダを介して車両のバンパ(樹脂部材[resin member])に取り付けられている。図1は、バンパ表面側から見た、バンパに取り付けられたソナーセンサを示している。図2は、ホルダを介してバンパに取り付けられたソナーセンサの断面を示している。図3は、バンパへの組み付ける前のホルダ及びソナーセンサの断面を示している。なお、図2及び図3の断面図において、ソナーセンサ2は、その側面が示されている。
【0009】
図1に示されるように、ソナーセンサ2の検知面3aを覆うカバー部4を有するホルダ5がバンパ1に固定される。バンパ1には、検知面3aを覆うカバー部4が挿入される孔部6が形成されている。孔部6は、バンパの厚み方向に貫通する円形孔である。バンパ1は、ソナーセンサ2が取り付けられる内表面1aとは反対側の外表面1bが車体外側となる。外表面1bには、塗装が施されている。
【0010】
ソナーセンサ2は、図2に示されるように、センサ本体[sensor main body]7の検知面3aから超音波[ultrasound wave]Hを検知対象物8に向けて送信し、検知対象物8によって反射された反射波を受信して、検知対象物8との距離を検出する。センサ本体7の側面からは、ホルダ4に装着されたソナーセンサ2の脱落を防止するロック爪[lock pawls]9(図3参照)が突設されている。ロック爪9によって、装着されたソナーセンサ2は、図2中の挿入方向Aと逆向きの取り外し方向Bに容易に脱落しないようにホルダ4に保持される。また、センサ本体7には、制御装置[controller](図示せず)との電気的接続のためにコネクタ10が設けられている。コネクタ10は、車体側のボディーハーネス先端に取り付けられたコネクタと接続される。コネクタ10は、センサ本体7の矩形又は多角形状の一側面に設けられている。
【0011】
ホルダ5は、ソナーセンサ2の検知面3aを覆う上述したカバー部4と、センサ本体7を囲うホルダ本体11とからなる筒状ケースとして成形されている。
【0012】
カバー部4は、ソナーセンサ2の検知部3全体を覆う、高さの低い筒形状を有している。カバー部4は、ソナーセンサ2の検知面3aから送信される超音波Hの通過が可能な厚みを有している[has a thickness enabling penetration of the ultrasound wave...]。なお、ソナーセンサ2が超音波センサである場合、振動ダイアフラムとしての検知面3aとカバー部4との間には、音響的分離[acoustic separation]のための弾性材[elastic material]や空気層[air space]が設けられる。
【0013】
ホルダ本体11の内部には、センサ本体7を収納し得る内部空間[internal chamber]が形成されている。また、ホルダ本体11には、上述したロック爪9と係合するクリップ片[clipping tabs]12が形成されている。クリップ片12には、ロック爪9の後端9aと係合する孔12bが形成されている(図3参照)。また、クリップ片12の各縁には、外方に屈曲する屈曲端[bent edge]12aが形成されている(図3参照)。
【0014】
クリップ片12は、弾性変形可能である。ホルダ5へのソナーセンサ2の取付時には、まず、ロック爪9の前端傾斜面9bが屈曲端12aを外方に押し、クリップ片12が外方に弾性変形する。そして、ソナーセンサ2が図2に示される位置まで挿入されると、クリップ片12はそれ自身の弾性復元力によって元の形状に復帰し、ロック爪9の後端9aと孔12bとが係合する。この結果、ソナーセンサ2の取り外し方向Bへの脱落が防止される。なお、孔12bは、凹部として形成されてもよい。
【0015】
ホルダ5は、少なくともカバー部4が、バンパ1の樹脂材料と同一の樹脂材料で形成されている。もちろん、カバー部4を含めたホルダ5の全体が、バンパ1の樹脂材料と同一の樹脂材料で形成されてもよい。このように構成されたホルダ5は、バンパ1の内側から内表面1aに固定される。ホルダ5の内表面1aへの固定は、例えば、接着剤・溶着・吹き付け結合[spray-applied fixation]又はねじ締結[screw fastening]などを用いた各種の固定方法を適用できる。
【0016】
バンパ1にホルダ5を介してソナーセンサ2を固定するには、まず、ホルダ5をバンパ1の内表面1aに固定する。具体的には、まず、ホルダ5のカバー部4をバンパ1の内側から孔部6に挿入する。この時、カバー部4の外表面4aは、バンパ1の外表面1bとほぼ面一となる(滑らかな連続面を形成する)。この状態で、上述した固定方法でホルダ5が内表面1aに固定される。
【0017】
次に、検知部3をカバー部4内に収納するように、ソナーセンサ2がホルダ5の内部に挿入される。ソナーセンサ2がホルダ5の内部に挿入されると、検知部3がカバー部4により覆われ、センサ本体7がホルダ本体11に囲まれる。また、ソナーセンサ2は、クリップ片12とロック爪9との係合によって、ホルダ5からの脱落が防止される。
【0018】
バンパ1の孔部6と検知部3との間にはカバー部4が介在するので、孔部6と検知部3と間の隙間が外側から見えなくなり(又は、ほとんど見えなくなり)、外観の見栄えが向上する。なお、従来のソナーセンサでは、検知部とバンパとが直接接触するようにソナーセンサを装着すると、検知面から発せられた超音波がバンパを伝って隣接する別のソナーセンサの検知面に伝播して、誤動作の原因になる。この誤動作を防止するために、従来のソナーセンサでは、検知部とバンパとが直接接触しないように両者の間に隙間を設ける必要があった。しかし、本実施形態では、隙間がカバー部4によって埋められるので、バンパ1と検知面3aとは直接接触せず、かつ、バンパ1の外側から見えるような隙間も生じない。
【0019】
また、カバー部4の外表面4aとバンパ1の外表面1bとは、バンパ1全体を塗装する同じ塗料で塗装される。通常は、バンパ1に予めホルダ5が取り付けられ、その後、バンパ1の外表面1とカバー部4の外表面4aとが同じ樹脂塗料(塗装工程)で塗装される。このようにすれば、バンパ1の外表面1とカバー部4との外表面4aとの間の継ぎ目にも塗料が入り込み、表面はより面一となり、一層円滑な連続面として形成されて外観の見栄えがさらに向上する。また、継ぎ目からの雨水などの内部への浸入も防止できる。さらに、同じ樹脂材料に同じ塗料(塗装工程)で塗装が行われるので、塗料の経時的色変化がバンパ1の外表面1とカバー部4の外表面4aとで同じになる。この結果、経時的な外観の見栄えもさらに向上する。バンパ1に予めホルダ5が取り付けられ、その後、バンパ1の外表面1とカバー部4の外表面4aとが同じ樹脂塗料(塗装工程)で塗装されたか否かは、塗装後の当該部位を観察することで容易に判別ができる。なお、バンパ1とカバー部4とが別々に塗装された後に、バンパ1にホルダ5が取り付けられてもよい。この場合も、経時的な外観の見栄えは向上する。
【0020】
また、ホルダ5の少なくともカバー部4とバンパ1とが同一の樹脂材料で成形され、かつ、カバー部4の外表面4aとバンパ1の外表面1bとが同じ塗料で塗装されるので、バンパ1の塗装に使用する1種類の塗料で、1回の塗装作業で同時に両者を塗装することができる。このため、別種の塗料で塗装し分ける場合のような色配合調整をする必要が無く、塗装作業が簡略化される。なお、多層塗装の場合も、カバー部4の外表面4aとバンパ1の外表面1bとは同じ塗料によって同じ塗装工程が行われるので、やはり、塗装作業が簡略化される。
【0021】
また、検知面3aを覆うカバー部4がバンパ1の内側から挿入され、バンパ1の外表面1bとカバー部4の外表面4aとがほぼ面一となるので、検知部3と孔部6の内縁との間がカバー部4で埋められ、隙間が減少する。したがって、バンパ1の外側から見える隙間が減少するので、外観の見栄えが向上する。
【0022】
また、カバー部4は、検知面3aから送信される超音波Hが通過可能な厚みを有しているので、ソナーセンサ2の機能に支障をきたすことがなく、ソナーセンサ2は良好な性能を発揮する。
【0023】
上記実施形態では、ソナーセンサ2がホルダ5の内部に挿入されて保持される構造が採用された。しかし、図2に示される中心軸Mの回りにソナーセンサ2がホルダ5の内部で回転する構造が採用されてもよい。ソナーセンサ2をホルダ5内で回転可能であると、ボディーハーネス先端のコネクタがソナーセンサ2の左側に位置する場合でも右側に位置する場合から延びてくる場合でも、ソナーセンサ2のコネクタ10を最適な方向に向けることができる。従って、ボディハーネスの長さを短くすることができる。
【0024】
日本国特許出願第2011−93813号(2011年4月20日出願)の全ての内容は、ここに参照されることで本明細書に援用される。本発明の実施形態を参照することで上述のように本発明が説明されたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、請求の範囲に照らして決定される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、車両等のバンパ(樹脂部材)に樹脂製のホルダを介してソナーセンサを取り付けるソナーセンサの取付構造に適用できる。
図1
図2
図3