特許第5965393号(P5965393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965393皮膚潰瘍を治療及び/又は予防するためのパーツのキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965393
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】皮膚潰瘍を治療及び/又は予防するためのパーツのキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/61 20060101AFI20160721BHJP
   A61K 36/47 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 36/38 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A61K36/61
   A61K36/47
   A61K36/185
   A61K36/38
   A61K9/06
   A61P17/02
   A61P31/22
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-511752(P2013-511752)
(86)(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公表番号】特表2013-527193(P2013-527193A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】IB2011001137
(87)【国際公開番号】WO2011148257
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年1月29日
(31)【優先権主張番号】MI2010A000953
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512306874
【氏名又は名称】ロジ ロベルト
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ロジ ロベルト
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0104728(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0151710(US,A1)
【文献】 特表2004−517101(JP,A)
【文献】 米国特許第00526630(US,A)
【文献】 特開平07−188031(JP,A)
【文献】 特開平08−157383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 9/06
A61P 17/02
A61P 31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚潰瘍を治療するためのパーツのキットであって、
クロトン・レクレリ樹脂抽出物と、メラレウカ・アルテルニフォリアオイルとを含むことを特徴とするパーツキット。
【請求項2】
種以上の可塑剤を更に含む、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項3】
前記可塑剤が、カレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏及び/又はハマメリス・バージニアナをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はヒペリカム・パーフォラタムオイルから選択される、請求項2に記載のパーツキット。
【請求項4】
前記皮膚潰瘍が慢性潰瘍ある、あるいは前記皮膚潰瘍が単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍ある、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項5】
前記クロトン・レクレリ樹脂抽出物が少なくとも樹齢5年のクロトン・レクレリ植物の100%植物由来の樹脂乳液の溶液であるか及び/又は使用される前記メラレウカ・アルテルニフォリアオイルが100%の精油である、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項6】
前記パーツキットで使用する前記クロトン・レクレリ樹脂抽出物及び前記メラレウカ・アルテルニフォリアオイルが、1:1.5〜13の比で使用され、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項7】
潰瘍に毎日投与する前記クロトン・レクレリ樹脂抽出物の量が60〜600mgである及び/又は潰瘍に毎日塗布する体積基準の量が1日0.20〜2mlある、請求項に記載のパーツキット。
【請求項8】
皮膚潰瘍を治療するための、同時に、別々に又は連続的に使用するための、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項9】
前記皮膚潰瘍への塗布を1日数回行う、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項10】
前記パーツキットの有効成分を前記皮膚潰瘍に連続的に塗布る、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項11】
前記パーツキットの前記有効成分を前記皮膚潰瘍に、前記クロトン・レクレリ樹脂の塗布と前記メラレウカ・アルテルニフォリアオイルの塗布との間に間隔をあけて塗布る、請求項10に記載のパーツキット。
【請求項12】
薬剤として使用するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項13】
皮膚潰瘍を治療するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項14】
ヒト以外の哺乳類おける皮膚潰瘍又は創傷を治療するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のパーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚潰瘍、好ましくは慢性潰瘍(例えば、褥瘡性潰瘍)、より好ましくは下肢の栄養障害性潰瘍を治療及び/又は予防するための、また単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex)によって引き起こされる皮膚潰瘍、好ましくは口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍(一般に帯状疱疹と称される)を治療及び/又は予防するためのパーツのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚潰瘍は、外傷、感染症、より多くは血管性又は神経障害性の栄養障害によって引き起こされる、修復が緩慢な、皮膚、時には皮下組織を侵す連続離断である。その形状、範囲、関連する症状により通常は診断が容易である(Di Stanislao C.,Ciarfella R.“Terapia combinata in corso di ulcere trofiche vasculopatiche dell’arto inferiore refrattarie ad altri trattamenti”Yi Dao Za Zhi,2002(vol.18)/オンラインでのみ閲覧可能)。
【0003】
皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(すなわち、治癒までに6週間より長くかかる病変)を予防及び治療するための様々な治療戦略がある。皮膚潰瘍の多くは、苦しい感染症を招く下腿潰瘍、糖尿病性足病変、褥瘡及び手術創である。慢性病変(皮膚潰瘍)の管理には通常、例えば圧力を下げ、病変部の周囲を処置することによる局所治療が必要であり、包帯、除圧ベッド、マット及びクッションの使用が広く知られている解決策である(Cullum N.et al,“Systematic reviews of wound care management:(5)beds;(6)compression;(7)laser therapy,therapeutic ultrasound,electrotherapy and electromagnetic therapy”,Health Technology Assessment(2001);vol 5:No.9)。
【0004】
Cullumらは、除圧及び圧迫により痛みを和らげる技法がいかに皮膚潰瘍治療で効果的かを述べる一方で、慢性病変に関しては、レーザー療法、超音波治療、電気治療及び電磁療法等の技法にいかに大きな改善が見られないかを強調している。
【0005】
局所的な皮膚潰瘍、特には静脈性潰瘍の予防及び治療に関しては、病変自体の進行段階(壊死性、線維性滲出、感染、清浄化、肉芽形成、再上皮化)に応じて、包帯を使用した様々な圧迫法、密封療法、半密封療法、吸収材、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ポリウレタン、コラーゲン、フィブリン糊、キトサンをベースとしたペースト、顆粒、フォーム及びゲルの形態の薬剤を使用することができる。最近では成長因子の局所適用が提案されている(ECM course“le ulcere trofiche degli arti inferiori:percorsi terapeutici fra tradizione e innovazione”−Asl/Rome−“Sandro Pertini”Hospital 18th April 2009)。
【0006】
感染症の場合、潰瘍の浸出液の培養物を用意し、抗生物質の全身投与による治療を行うべきである。局所用抗生物質は一般に使用しない。これは局所用抗生物質が、接触性皮膚炎の発症を促進する可能性があるからである。
【0007】
静脈性潰瘍の外科手術は保存的治療を補うものととらえるべきであり、基本的な血行動態の変化を正すこと又は治癒までの時間を短縮することを目的として皮膚移植により潰瘍を覆うことを目的とすることができる。
【0008】
静脈瘤性潰瘍の患者の場合、特に深部静脈系に変質がない場合、表面静脈系の外科手術が最も良い結果をもたらし、治癒までの時間を短縮し、また時間がたってからの再発を減らすと一般に考えられている。血栓後潰瘍の場合、外科手術の成果は芳しくない。
【0009】
更に、劇的に死亡率を低下させると判明してはいるものの、約4年に亘る追跡調査では、開放術と比較すると、内視鏡手技は、潰瘍の治癒という点で統計学的に有意な差を示さなかった。
【0010】
弁形成、静脈弁の移植等の手術及び静脈移所術は、最後の手段と見なすことができる。
【0011】
皮膚移植に関しては、静脈性潰瘍の安定した治癒に対するその効果の十分な証拠を記載している文献もない。皮膚移植は様々な方法で行うことができ、例えば「分層メッシュ植皮(meshed split skin grafting)」、「ピンチグラフト」、体外培養したヒトケラチノサイトの同種移植、潰瘍切除術及び不十分なパーフォラン(perforan)の結合後の弁状静脈セグメントでの遊離皮弁移植、シェーブ・セラピー(shave therapy)(すなわち、潰瘍切除術。脂肪皮膚硬化症を起こした組織の除去及び「メッシュ」植皮)(ECM course−ASL/Rome −“Sandro Pertini”hospital/上記を参照のこと)が挙げられる。
【0012】
局所的な潰瘍治療では、必要ならば弾性圧迫療法及び全身的な医学療法を同時に行うべきである(標的抗生物質療法、血管作動性血液レオロジー改善薬(vasoactive hemorheologics)、抗血栓症薬、消炎剤等)。
【0013】
加えて、治療成果を更に改善し且つ患者のより良好なコンプライアンスを得るために、個別の疼痛治療(皮膚潰瘍の存在は、侵害受容性疼痛及び神経因性疼痛を引き起こし得る)を提供することが必要である。用語「侵害受容性疼痛」は、慢性又は急性の組織損傷性の炎症に対する生理的反応を示す際に使用され、概して期間は限定的である。創傷がゆっくりと治癒する際、広範囲に亘る炎症性反応が、創傷レベル(一次痛覚過敏)及びその周りの皮膚(二次痛覚過敏)の両方での感受性の引き上げにつながる場合がある。神経因性疼痛という用語は、一次病巣又は神経系の機能不全によって引き起こされる不適切な反応を示すのに使用される。神経損傷は、外傷、感染症、代謝機能不全又はがんによって引き起こされる一次病巣の最も一般的な原因である。
【0014】
上記を踏まえると、多種多様な薬剤が提案されてきたものの、依然として理想的な療法はなく、全ての皮膚潰瘍、特には静脈性潰瘍の治癒に有効な厳密なプロトコルを起草することはできないと結論づけることができる。
【0015】
このため、迅速に潰瘍を瘢痕化し、痛みを和らげ、肉芽組織の成長を刺激し、その一方で細菌及び真菌(mycets)に対するバリアを形成することを可能にする皮膚潰瘍治療が依然として必要とされている。
【0016】
口唇ヘルペスは概して唇を侵す感染症であり、唇に潰瘍ができる。この特定のタイプのヘルペスは、単純ヘルペスと称されるウイルス株(通常、タイプI)によって引き起こされる。時には、この単純ヘルペス感染症が、頬、鼻及び口蓋にさえ病変を引き起こすこともある。
【0017】
この疾患の症状は特徴的であり、目障りで痛い小水疱(潰瘍)の発生が共通し、この小水疱の発生前、罹患領域は熱を持ち、突っ張り及びピリピリ感が先立ち、この疾患に一度罹ったことがある人間ならはっきりと知覚できる。
【0018】
口唇ヘルペスは通常、局所用抗ウイルス剤、一般にアシクロビル系の軟膏で治療し、小水疱の発生から約5〜7日以内に完全に治癒する。しかしながら、このような有効成分は、ウイルスの再活性化の初期段階で投与した場合にのみ(すなわち、ヘルペス感染に典型的なピリピリ感を感じた時)、小水疱の発生の予防に効果的である。多くの重症例で使用する局所用又は全身用抗ウイルス剤は対症療法であり、ウイルスは生体内に留まるため、例えば厳しい暑さ/寒さ、太陽光への曝露、肉体疲労等の引き金となる因子があると頻繁に再発する。
【0019】
このため、水疱があることでヘルペスと診断された後であっても、ヘルペス感染症を最適に治癒可能な薬剤が必要なことは明らかである。このような薬剤は、従来の抗ウイルス剤より治癒までの時間を早め、また再発を予防可能であるべきである。
【0020】
一般には帯状疱疹と称される帯状ヘルペスは激しい痛みのある疾患であり、皮膚及び神経末端を侵し、水痘ウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)によって引き起こされる。皮膚上での水疱及び痂皮の形成は患部神経に沿った急性疼痛を伴い、長期に亘って持続する場合がある。通常、胸部又は腹部、稀に顔面上で発症する。
【0021】
治療では軟膏及びローションを局所適用し、滅菌包帯で皮膚を保護し、抗ヒスタミン剤を投与する。経口抗生物質は同時感染がある場合のみ有用であり、鎮痛剤(アスピリンに始まりさらに強力なものまで)が患者の痛みを和らげる。
【0022】
痛みが極めて激しい場合は、麻酔薬又はクリーム及び麻酔パッチの局所湿潤を行うことができる。早期に投与すると治癒を促進し、またヘルペス後神経痛の予防に役立つ抗ウイルス剤(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル等)がある。
【0023】
驚くべきことに、クロトン・レクレリ(Croton lechleri)樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリア(Melaleuca alternifolia)オイルの併用により、皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(例えば、褥瘡性潰瘍)、とりわけ下肢の栄養障害性潰瘍が極めて迅速に瘢痕化して病変が完全に治癒することが判明した。
【0024】
更に、驚くべきことに、上述したような併用が、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされた皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍を迅速に消散させ、またその皮膚潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍の再発を予防することが判明した。
【0025】
クロトン・レクレリ(トウダイグサ科)はペルーのアンデス地方、コロンビア、エクアドル及びボリビアの低山域に育つ木であり、その治療的特性で知られている。切ると皮層から「龍の血」と呼ばれる赤みがかった又は黄色がかった乳液が出てきて、現地の部族はこの乳液を出血を止め、創傷の治癒を助け、腸疾患を治療する医療目的で使用している。
【0026】
この赤い樹脂は木材に光沢をつけたり、香及び染料としても使用された(Williams J.E.,Altern Med Rev(2001),vol6(6),p.567−579)。
【0027】
メラレウカはフトモモ科の植物属であり、200を超える種が知られ、その殆どがオーストラリア、マレーシア及びニューカレドニア固有である。
【0028】
メラレウカ・アルテルニフォリアはメラレウカ属の知られた種であり、その精油(ティーツリーオイル)から重要である。このオイルは抗真菌及び抗菌特性を有し、局所レベルで使用される(Carson et al.,Antimicrob.Agents Chemother.(2002)vol.46,(6)p.1914−1920)。
【0029】
驚くべきことに、クロトン・レクレリ樹脂抽出物とメラレウカ・アルテルニフォリアオイルとの併用には、上記の成分を単独で使用した場合と比較すると、皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、とりわけ下肢の栄養障害性潰瘍の瘢痕化において、より高い相乗効果があることが判明している。このキットの使用により、皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、とりわけ下肢の栄養障害性潰瘍が有利により速く瘢痕化して病変が完全に治癒することが実際に観察される。
【0030】
更に、驚くべきことに、上記の併用には、皮膚潰瘍、特には単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる口唇潰瘍の短期間(すなわち1〜4日、好ましくは1〜3日、より一層好ましくは1〜2日)での完全な治癒、またその再発の予防に関し、一般に使用されている既知の抗ウイルス剤(アシクロビル等)の使用より高い相乗効果があることが判明している。
【0031】
加えて、驚くべきことに、上記の併用には、帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍の短期間での完全な治癒に関し、一般に使用されている既知の抗ウイルス剤(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル等)の使用より高い相乗効果があることが判明している。
【0032】
任意で、1種以上の可塑剤をクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルに加えて使用することができる。この可塑剤は好ましくは、カレンデュラ・オフィシナリス(Calendula Officinalis)をベースとした軟膏及び/又はハマメリス・バージニアナ(Hamamelis virginiana)をベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はヒペリカム・パーフォラタム(Hypericum perforatum)オイルから選択される。
【0033】
カレンデュラは、ヨーロッパ、北アフリカ及び中東アジア原産のキク科(Asteraceae)の植物属であり、20種を超える一年草又は多年草の種を含み、最も良く知られているのがカレンデュラ・オフィシナリスである。治療薬としてのその花の使用には抗痙攣作用及び瘢痕化作用があり、実際には胃潰瘍には煎剤が推奨される。更に、カレンデュラ・オフィシナリスは、発汗作用及び月経痛の予防/緩和作用を有する。月経周期に関し、カレンデュラ・オフィシナリスは出血量の低下作用及び周期調節作用も有する。粉塵及びダニによって引き起こされるアレルギーを治療するための抗ヒスタミン製剤に使用されることもある。皮膚化粧品においては、乾燥させた花から得られる粉末を使用したクリームが製造され、このクリームは、ざ瘡及び皮膚斑点に効果を有する(“Aromatiche,belle buone e di molte virtu”−Camera di Commercio Industria e Artigianato di Savona−(2003)p.59−62)。
【0034】
ハマメリス・バージニアナ L.は、北アメリカ大陸の東海岸(ケベック、バージニア、フロリダ)原産のマンサク科の植物属であり、ヨーロッパでも鑑賞用に栽培することができる。その葉及び茎の皮層を摘む。ハマメリスの葉は、痔の症状に適応がある従来の植物療法用の調合薬及び静脈不全症の発症の治療の両方に使用される(Medicalia,(2003)vol.68,p.1−Ed.Omeosalus)。
【0035】
ヒペリカム属には多数の園芸種が含まれ(H.アンドロサエマム(H.androsaemum)、H.カリシナム(H.calcynum)、H.モゼリアナム(H.moserianum)他)、全て黄色い花をつける。中でもヒペリカム・パーフォラタムは、その不思議な効果及び薬効からおそらく最もよく知られている種である。ヒペリカムの花頂を使用する。長年にわたって、この植物には、消毒、鎮痛、抗カタル、抗うつ、消炎、鎮痙、収斂、止痢、バルサム、胆汁排出、胆汁分泌刺激、充血除去、消化、利尿、強壮、鎮静、駆虫及び創傷の瘢痕化に関して癒傷特性があるとされている(“Aromatiche,belle buone e di molte virtu”−Camera di Commercio Industria e Artigianato di Savona−(2003)p.89−92)。
【発明の概要】
【0036】
したがって、本発明の目的は、皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、特には下肢の栄養障害性潰瘍を治療及び/又は予防するためのパーツキットに関し、このキットはクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルを含む。
【0037】
本発明の目的は、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍の治療及び/又は予防のためのパーツキットでもあり、このキットはクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルを含む。
【0038】
任意で、クロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルに加え、皮膚潰瘍を治療及び/又は予防するための上記のパーツキットに可塑剤、例えばカレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はハマメリス・バージニアナをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はヒペリカム・パーフォラタムオイルを加えることもできる。
【0039】
本発明の目的は、皮膚潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、特には下肢の栄養障害性潰瘍を患っている患者のための薬剤として使用するための、クロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルを含むパーツのキットでもある。
【0040】
本発明の更なる目的は、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍を患っている患者のための薬剤として使用するための、クロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルを含むパーツキットである。
【0041】
任意で、薬剤として使用するための上記のパーツキットに含まれるクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルに加えて、可塑剤、例えばカレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はハマメリス・バージニアナをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はヒペリカム・パーフォラタムオイルを更に加えることができる。
【0042】
好ましくは、本発明の主題であるパーツキットで使用するクロトン・レクレリ樹脂抽出物は、少なくとも樹齢5年のクロトン・レクレリ植物の100%植物由来の樹脂乳液の溶液であり、より一層好ましくはアルコール10%で抽出した純粋なクロトン・レクレリ樹脂の溶液である。あるいは、ヒドロ−グリセロ−アルコール溶液中の純粋なクロトン・レクレリ樹脂(希釈1:10)の溶液である。
【0043】
好ましくは、本発明の主題であるパーツキットで使用するメラレウカ・アルテルニフォリアオイルは100%の精油である。
【0044】
本発明の可塑剤は、完全治癒に至るまで、ニーズに応じて使用される。
【0045】
好ましくは、本発明の主題であるパーツキットで使用のカレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏又はクリームは、5〜15%のカレンデュラ・オフィシナリスを含む水アルコール抽出物を含有し、好ましくは、カレンデュラ・オフィシナリス10%の水アルコール抽出物を含有する。
【0046】
好ましくは、ハマメリス・バージニアナをベースとした軟膏又はクリームは、1〜8DH、好ましくは2〜6DH、より一層好ましくは4DHの希釈したハマメリス・バージニアナを含有する。
【0047】
好ましくは、ヒペリカム・パーフォラタムオイルは100%の精油である。
【0048】
好ましくは、本発明の主題であるパーツキットで使用するクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルは、1:1.5〜13、好ましくは1:1.6〜1:2.2の比で使用され、より一層好ましくは比は1:2である。
【0049】
好ましくは、潰瘍に毎日投与するクロトン・レクレリ樹脂の質量基準の量は60〜600mgである及び/又は潰瘍に毎日塗布する体積基準の量は1日0.20〜2ml、好ましくは0.5〜1.5mlである。
【0050】
メラレウカ・アルテルニフォリアオイルとの上記の比を超えてクロトン・レクレリの量が増加すると、キットの瘢痕化作用が改善されないばかりか、その作用も低下する。
【0051】
本明細書で使用の用語「パーツ(の)キット(kit of parts)」は、有効成分として、皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、とりわけ下肢の栄養障害性潰瘍を治療及び/又は予防するために同時に、別々に又は連続的に使用するための、あるいは単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる皮膚潰瘍を治療及び/又は予防するために同時に、別々に又は連続的に使用するためのクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイルを含有する併用製剤を示す。
【0052】
任意で、この「パーツキット」は1種以上の可塑剤を含み得て、例えばカレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はハマメリス・バージニアナをベースとした軟膏若しくはクリーム及び/又はヒペリカム・パーフォラタムオイルである。
【0053】
パーツキットのこの2種の個々の成分、すなわちクロトン・レクレリ樹脂抽出物及びメラレウカ・アルテルニフォリアオイル(「2種の有効成分」とも記述する)が機能単位(すなわち、目的のために直接塗布することを通して実際に機能する組み合わせ)を構成する。本発明のパーツキットにおけるその使用により、この2種の有効成分は相乗効果を示す。
【0054】
有利には、本発明のパーツキットを皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、とりわけ下肢の栄養障害性潰瘍に塗布することによる投与を1日数回、すなわち3〜5回、好ましくは1日2回、より一層好ましくは朝夕に行う。
【0055】
有利には、本発明のパーツキットを単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍及び帯状ヘルペスの形で起きる潰瘍に塗布することによる投与を好ましくは1日数回、すなわち3〜5回、好ましくは1日2回、好ましくは朝夕に行う。
【0056】
有利には、本発明のパーツキットの皮膚潰瘍、特には慢性潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、とりわけ下肢の栄養障害性潰瘍への塗布による投与は潰瘍が完全に治癒するまで続けられ、完全な治癒は、病変の重症度に応じて治療開始から1週間〜4ヵ月の間に起きる。好ましくは、完全な治癒は、治療開始から2週間〜3ヵ月、より一層好ましくは3週間〜2ヵ月の間に起きる。
【0057】
有利には、本発明のパーツキットの単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍への塗布による投与は潰瘍が完全に治癒するまで続けられ、完全な治癒は治療開始から1〜4日以内に起きる。好ましくは、完全な治癒は1〜3日、より一層好ましくは1〜2日以内に起き、それ以上の再発はない。
【0058】
本発明の別の有利な併用製剤においては、本発明のパーツキットを、皮膚潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、特には下肢の栄養障害性潰瘍又は単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる潰瘍に同時に塗布する。
【0059】
本発明の別の有利な併用製剤においては、パーツキットを、皮膚潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、特には下肢の栄養障害性潰瘍又は単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる潰瘍に連続的に塗布し、好ましくはクロトン・レクレリをメラレウカ・アルテルニフォリアオイルより先に塗布する。
【0060】
本発明の別の有利な併用製剤においては、パーツキットを、皮膚潰瘍(褥瘡性潰瘍等)、特には下肢の栄養障害性潰瘍又は単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚潰瘍、特には口唇潰瘍又は帯状ヘルペスの形で起きる潰瘍に、クロトン・レクレリ樹脂の塗布とメラレウカ・アルテルニフォリアオイルの塗布との間に間隔をあけて塗布し、この間隔は好ましくは1日〜1週間である。
【0061】
本発明の別の有利な併用製剤においては、パーツキットをヒト以外の哺乳類(ネコ科の動物、イヌ科の動物、ウマ科の動物等)の潰瘍又は皮膚創傷に塗布する。
【0062】
本発明のパーツキットの有効成分を、本発明に従って同時及び別々、すなわち連続的の2通りで投与する。これらの有効成分は、既に知られている薬剤の単なる寄せ集めではない、上記の驚くべき特性を有する新しい組み合わせである。
【0063】
併用製剤の構成成分が必ず混ぜ合わされて存在する(例えば、組成物)ことを、パーツキットとして設計されるこの併用製剤は含意せず、構成成分を別々に又は連続的に塗布できることに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用した治療から4日後の栄養障害性潰瘍病変(ulcerous trophic lesion)(日付:2010年3月23日)。
図2】任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用した治療から29日後の栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年4月17日)。
図3】任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用した治療から49日後の栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年5月7日)。
図4】任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用した治療から55日後に治癒した栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年5月13日)。
図5】任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用した治療から62日後に完全に治癒した栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年5月20日)。
図6】任意の可塑剤としてのヒペリカム・パーフォラタムの存在下で本発明のキットを使用した治療から5日後の栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年3月24日)。
図7】任意の可塑剤としてのヒペリカム・パーフォラタムの存在下で本発明のキットを使用した治療から9日後の栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年3月28日)。
図8】任意の可塑剤としてのヒペリカム・パーフォラタムの存在下で本発明のキットを使用した治療から29日後の栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年4月17日)。
図9】任意の可塑剤としてのヒペリカム・パーフォラタムの存在下で本発明のキットを使用した治療から55日後に治癒した栄養障害性潰瘍病変(日付:2010年5月13日)。
【実施例1】
【0065】
実施例1:任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用して治療した栄養障害性潰瘍の臨床例
慢性リンパ性白血病に罹患した86才の体重過多の女性被験者は以下の診療記録を有していた。
・2009年9月に右下肢に栄養障害性潰瘍を発症。従来のやり方で治療(すなわち、酵素軟膏、包帯、ガーゼ及びパッチを使用)。
・栄養障害性潰瘍が悪化し、2009年12月24日に緊急入院が必要になった。ここで、同じく一般診療記録により、抗凝固薬を使用した治療(ダルテパリンナトリウム)、抗血小板薬(チクロピジン)、抗狭心症薬(ニトログリセリン)、利尿剤(ランソプラゾール)、局所用鎮痛剤(フェンタニル経皮吸収パッチ)及び全身用鎮痛剤(パラセタモール及びコデインホスフェート)に加えて酵素軟膏及び弾性圧迫包帯を使用して患者を治療する。「脛骨前栄養障害性潰瘍に侵された下肢の閉塞性動脈疾患」との診断にも関わらず、被験者は2010年1月15日に退院した。
・2010年2月1日、右総腸骨動脈の血管形成術を試みるが、効果がない。
・2010年3月1日、更に検査を行った後、壊疽を回避し、また栄養障害性潰瘍に侵された肢の切断を回避するために、次の血管形成術の予定を新たにたてる(経皮法による右腸骨動脈の再疎通)。
・2010年3月12日、続発症(激しい直腸出血)により被験者の容体は悪化し、再入院が必要となり、ここで2010年1月15日の治療スキームとは異なり、チクロピジンをやめ、ダルテパリンナトリウムを減量する。栄養障害性潰瘍に大きな効果がないまま、被験者は2010年3月19日に退院する。
【0066】
この日、すなわち2010年3月19日、本発明のパーツキットを使用した臨床試験を開始した。
【0067】
栄養障害性潰瘍上に巻いた包帯を外した後、創傷を生理食塩水で洗浄し、クロトン・レクレリ樹脂抽出物(すなわち、アルコール10%で抽出した純粋なクロトン・レクレリ樹脂)の液滴を振りかけ、包帯を巻くことなく栄養障害性潰瘍を覆わずにおいた。24時間後には既に痂皮が形成されていて、48時間後には再瘢痕化過程が既に始まっていた。下肢の強い痛みが消え、患者はそれ以上の鎮痛剤の使用をやめた。
【0068】
100%のメラレウカ・アルテルニフォリアの精油の液滴を、クロトン・レクレリ抽出物の量の約2倍の液滴量で潰瘍周囲に塗布することによって、栄養障害性潰瘍の再上皮化過程の促進に加えて、かゆみ緩和作用を得た。
【0069】
最後に、新しい上皮の弾力性を改善するために、カレンデュラ・オフィシナリス10%の水アルコール抽出物を含む、カレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏を再上皮化した部位に塗布した。
【0070】
本発明のキットの2種の成分、またカレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏を1日2回、朝夕に塗布し、1回の塗布量はクロトン・レクレリ抽出物が約0.25〜0.75ml、メラレウカ・アルテルニフォリアが0.25ml、カレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏が1.5gであった。
【0071】
治療開始から約4日後(すなわち、2010年3月23日)、図1に輪郭が描かれるように、栄養障害性潰瘍病変上に固い痂皮の形成が観察された。
【0072】
カレンデュラ・オフィシナリス10%の水アルコール抽出物を含むカレンデュラ・オフィシナリスをベースとした軟膏の塗布に加えた本発明のキットを使用した治療から約29日後(日付:2010年4月17日。図2)、栄養障害性潰瘍病変の範囲が大幅に減少して見えた。また、治療から49日後(日付:2010年5月7日。図3)、栄養障害性潰瘍はほぼ全て治癒したようであった。
【0073】
図4に示すように、治療から55日後(2010年5月13日)、栄養障害性潰瘍病変はほぼ全て治癒した。
【0074】
最後に、図5に示すように、栄養障害性潰瘍病変は、任意の可塑剤としてのカレンデュラ・オフィシナリスの存在下で本発明のキットを使用した治療から62日後に全て治癒したようであった(2010年5月20日)。
【0075】
全部で約2ヵ月の間に、約30mlのクロトン・レクレリ樹脂抽出物、約60mlのメラレウカ・アルテルニフォリアの精油及び約150gのカレンデュラ・オフィシナリスの軟膏を使用した。
【実施例2】
【0076】
実施例2:任意の可塑剤としてのヒペリカム・パーフォラタムの存在下で本発明のキットを使用して治療した栄養障害性潰瘍の臨床例
実施例1と同じ被験者の第2の潰瘍を、任意の可塑剤としてのヒペリカム・パーフォラタムの存在下で本発明のキットを使用して2010年3月19日から治療した。
【0077】
実施例1と同様に、創傷を生理食塩水で洗浄し、クロトン・レクレリ樹脂抽出物(すなわち、アルコール10%で抽出した純粋なクロトン・レクレリ樹脂)の液滴を振りかけ、包帯を巻くことなく栄養障害性潰瘍を覆わずにおいた。12時間後には既に痂皮が形成されていて、24時間後には再瘢痕化過程が既に始まっていた。下肢の強い痛みが消え、患者はそれ以上の鎮痛剤の使用をやめた。
【0078】
100%のメラレウカ・アルテルニフォリアの精油の液滴を、クロトン・レクレリ抽出物の量の約2倍の液滴量で潰瘍周囲に塗布することによって、栄養障害性潰瘍の再上皮化過程の促進に加えて、かゆみ緩和作用が得られた。
【0079】
最後に、新しい上皮の弾力性を改善するために、100%のヒペリカム・パーフォラタムの精油を数滴、再上皮化した部位に塗布した。
【0080】
本発明のキットの2種の成分、またヒペリカム・パーフォラタムの精油を1日2回、朝夕に塗布した。
【0081】
治療開始から約5日後(すなわち、2010年3月24日)、図6に示すように、栄養障害性潰瘍病変上に痂皮が形成された。
【0082】
治療開始から約9日後(すなわち、2010年3月28日)、潰瘍は大幅に減少した(図7)。
【0083】
ヒペリカム・パーフォラタムの精油の塗布に加えた本発明のキットを使用した治療から約29日後(日付:2010年4月17日。図8)、栄養障害性潰瘍病変の範囲が大幅に減少して見えた。また、治療から55日後(2010年5月13日。図9)、栄養障害性潰瘍病変は完全に治癒したようであった。
【0084】
全部で約2ヵ月の間に、約10mlのクロトン・レクレリ樹脂抽出物、約20mlのメラレウカ・アルテルニフォリアの精油及び約100mlのヒペリカム・パーフォラタムの精油を使用した。
【実施例3】
【0085】
実施例3:任意の可塑剤としてのハマメリス・バージニアナの存在下で本発明のキットを使用して治療した栄養障害性肛門周囲潰瘍の臨床例
実施例1、2と同じ被験者の肛門周囲潰瘍を、任意の可塑剤としてのハマメリス・バージニアナの存在下で本発明のキットを使用して2010年3月19日から治療した。
【0086】
これまでの実施例と同様に、創傷を生理食塩水で洗浄し、クロトン・レクレリ樹脂抽出物(すなわち、アルコール10%で抽出した純粋なクロトン・レクレリ樹脂)の液滴を振りかけた。12時間後には既に痂皮が形成されていて、24時間後には再瘢痕化過程が既に始まっていた。
【0087】
100%のメラレウカ・アルテルニフォリアの精油の液滴を、クロトン・レクレリ抽出物の量の約2倍の液滴量で潰瘍周囲に塗布することによって、肛門周囲潰瘍の再上皮化過程の促進に加えて、かゆみ緩和作用が得られた。
【0088】
最後に、新しい上皮の弾力性を改善するために、ハマメリス・バージニアナをベースとしたクリームを再上皮化した部位に塗布した。
【0089】
本発明のキットの2種の成分、またハマメリス・バージニアナをベースとしたクリームを1日2回、朝夕に塗布したところ、約2ヵ月の治療期間内に肛門周囲潰瘍は完全に治癒した。
【0090】
全部で約2ヵ月の間に、約10mlのクロトン・レクレリ樹脂抽出物、約30mlのメラレウカ・アルテルニフォリアの精油及び約150gのハマメリス・バージニアナをベースとしたクリームを使用した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9