特許第5965395号(P5965395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965395複合体の調製法、得られる複合体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965395
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】複合体の調製法、得られる複合体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C25D 9/02 20060101AFI20160721BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20160721BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20160721BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20160721BHJP
【FI】
   C25D9/02
   H01M4/36 C
   H01M4/60
   H01M4/137
   H01G11/40
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-517378(P2013-517378)
(86)(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公表番号】特表2013-533383(P2013-533383A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011061438
(87)【国際公開番号】WO2012004317
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】1055526
(32)【優先日】2010年7月7日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】506240632
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ フランソワ ラブレ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE FRANCOIS RABELAIS
(73)【特許権者】
【識別番号】513004582
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド セルジー ポントワーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サラザン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラグット,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ピノー,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】トラン ヴァン,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴロ,クロード
(72)【発明者】
【氏名】オベール,ピエール アンリ
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−050669(JP,A)
【文献】 特表2009−507338(JP,A)
【文献】 特表2009−541198(JP,A)
【文献】 特開2010−053033(JP,A)
【文献】 特開2009−275225(JP,A)
【文献】 特表2009−533831(JP,A)
【文献】 特表2007−525787(JP,A)
【文献】 特表2011−526641(JP,A)
【文献】 特開2003−109875(JP,A)
【文献】 特開2008−182212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 9/00− 9/12
C08F 2/58
H01M 4/00− 4/62
H01G 9/00
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電導性又は半導体性の伸張形状ナノ物体及び電導性ポリマーマトリックスを含んでなり、当該電導性又は半導体性の伸長形状ナノ物体が、ナノ物体を整列させたカーペットの形状である複合材料の調製方法であって、パルスガルバノスタット法により、当該ナノ物体上に当該マトリックスを電気化学的に析出させることからなる工程を含んでなる方法。
【請求項2】
当該電導性又は半導体性の伸張形状ナノ物体が、ナノファイバー、ナノチューブ及びナノワイヤーから選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
当該電導性又は半導体性の伸長形状ナノ物体が、炭素、ケイ素、金、銀、タンタル、ニッケル、白金、銅、モリブデン、パラジウム、鋼鉄、ステンレス鋼、亜鉛、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マンガン、窒化ガリウム、窒化ケイ素、二硫化タングステン、二硫化モリブデン、リン化インジウム、セレン化タングステン、セレン化モリブデン、二酸化チタン、二酸化ケイ素、三酸化モリブデン、及びそれらの混合物からなる群より選択される材料にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
該電導性ポリマーマトリックスが、ポリフルオレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリアセチレン及びポリ(p−フェニレンビニレン)から選択される1種(又はそれ以上)の(コ)ポリマー(類)から形成されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該パルスガルバノスタット法においては、定電流密度が10〜100秒間の継続時間の期間(ton)加えられることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該パルスガルバノスタット法においては、各静止期間(toff)の継続時間の、定電流密度の各適用期間(ton)の継続時間に対する比が、2以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
当該方法が、
a)電導性又は半導体性の伸張形状のナノ物体と当該伝導性ポリマーマトリックスのモノマー(類)前駆体(類)含有の溶液(以下溶液(S)と命名)とを接触させる工程;
b)当該ナノ物体をパルスガルバノスタットモードで分極し、その後に当該伝導性ポリマーマトリックスを当該ナノ物体に電気化学的に析出させる工程;
を含んでなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
当該工程(a)に先立って、電導性又は半導体性の伸張形状のナノ物体を酸化処理に付すことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項9】
当該溶液(S)が、純粋なプロトン性もしくは非プロトン性溶媒の形状;溶媒としてプロトン性もしくは非プロトン性溶媒を含む電解液の形状;又はイオン性液体の形状であることを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
当該複合材料において、当該電導性もしくは半導体性の伸長形状のナノ物体が、伝導性ポリマーマトリックスで含浸された、整列したナノ物体のカーペットの形状であり、当該ナノ物体がカーペット形状のカーボンナノチューブであり、それらの長さが200μmを超えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
当該複合材料が自立性であり、かつ柔軟性であることを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項12】
当該複合材料が、スーパーコンデンサ又はバッテリーの正極/負極、光電装置用の電極及び電気化学センサ用の電極からなる群より選択される電極に使用されることを特徴とする、請求項1又は1に記載の方法
【請求項13】
当該複合材料がCO貯蔵用の材料に使用されることを特徴とする、請求項1又は1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノテクノロジーの分野に関し、より詳しくは、ナノチューブなどの伸張形状のナノ物体を含むナノ複合型材料の分野に関する。
【0002】
それ故、本発明は、とりわけ電導性ポリマーマトリックス中に整列させ得るナノチューブの集合体を含んでなる複合材料の調製方法に関する。
【0003】
本発明はまた、このようにして調製された複合材料及びその多様な用途にも関する。
【背景技術】
【0004】
ナノ物体は、現在、伝統的な材料と比較して、それらの当初の性質が向上しているという理由で、特に興味の中心となっている。事実、ナノ物体、とりわけカーボンナノチューブ(CNT)などのナノチューブは、それらの構造と物理的性質に関して、またそれらの潜在的な応用性、特に、膜、物理的分離装置、電極、複合材料、熱もしくは光もしくは電子装置において、また触媒担体、化学的、光学的、電気的、機械的エネルギーなどを貯蔵又は変換する装置での応用性に関して、多くの利点を有する。
【0005】
CNTなどのナノ物体は、ナノ物体/ポリマー又はナノ物体/樹脂材料などの複合材料、とりわけ、CNT/ポリマー又はCNT/樹脂材料において使用される。当該材料によって、電気的性質、とりわけナノ物体の性質から有益性を引き出し、さらにそれを改善するのみならず、取扱いのより容易な材料を入手することが可能である。
【0006】
複合材料の分野において、CNTは必ずしも整列しているものではなく、又は何らかの特定の様式で配列されているものでもない。逆に、それらは多くの場合<分散>している。複合体は殆どの場合、圧力−及び/又は温度補助技法によって含浸されたものである。現時点で、開発と言う意味で最も見込みのある複合体はポリマーマトリックスを有するものであり、とりわけ、航空宇宙学又はエネルギー分野において、また伝導性プラスティック工業において、高い付加価値をもつ応用性に対して関心が集まっている。
【0007】
ナノ物体に基づく複合材料の調製方法に関しては、文献上非常に多くの研究が報告されている。例えば、2008年には352件の報文を数え、その主題は殆どがCNTを含む複合材料に関するものであるが、スーパーコンデンサの唯一の領域においては、酸化マンガン中のナノチューブに関するものもある。
【0008】
まず最初に、CNTは絶縁性ポリマーマトリックスにおいて、電導性材料として使用された。特許文献1(Renselaer Polytechnic Institute;レンセラー・ポリテクニック・インスティチュート;2008年1月10日公開)は、100μmないし800μmの長さをもつ整列させたCNT及び非電導性ポリマーから形成されたナノ複合体について記載している。このポリマーはイオン性液体の形状で電気化学に使用される溶媒に溶解する。溶解した非伝導性ポリマーとイオン性液体は該ナノチューブを含浸する。この集合体を氷に浸漬してポリマーを結晶化し、次いで、エタノール中で洗って不溶の非伝導性ポリマーを含まないイオン性液体を除去する。37F/gに近い電極静電容量、すなわちCNT単独の値に近い電極静電容量(得られた多孔性による)を明らかにもつ柔軟性ナノ複合体がそれによって得られる。
【0009】
一変法として、特許文献2(精華大学及び鴻海精密工業;2008年2月14日公開)は、良好な熱及び電気的性質を有する複合材料を提案している。構造上の観点から、この複合材料は100ないし200μmの長さを有し、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ケイ素又は熱伝導性グリースなどの樹脂に整列させ、また合体/含浸させたCNTを含んでなる。この複合材料は、CNTを液体樹脂に含浸させ、次いで固化させることにより調製する。
【0010】
電導性ポリマーマトリックス中のCNTの使用もまた、近年、注目されてきた。伝導性ポリマーの中でも、ポリアニリンは安定性の不足又は低下した電位窓などの欠点にもかかわらず、その印象的な結果のために、広範囲にわたる研究の対象として残されている。
【0011】
特許文献3(チェンら(Chen et al.);2003年4月24日公開)は、CNT及びポリピロールなどの伝導性ポリマーを含む電導性複合材料について記載している。この複合材料はそのサイズが100μmを超えないCNTに対して異なるモノマーの電解重合により調製する;当該CNTは溶液中に懸濁している。電解重合は定電圧もしくは循環電圧で、又は定電流により実施し得る。それが溶液中に分散したCNTに対して実施されると、CNTが整列していない複合材料に導く。さらに、このように調製された複合材料は、それらが電極などの伝導性要素によって支えられていると予想されるので、自立性であるとは思えない(段落[0065]参照)。
【0012】
特許文献4(ボストンカレッジ理事会;2003年6月12日公開)は、伝導性ポリマー(好ましくは、ポリピロール)で被覆したCNTを含有する電極材料を提案している。この文献で使用さるCNTは10μm以下のサイズを有する。当該材料の調製には2つの技法が想定される:その第一は、伝導性ポリマーを適切な溶媒(溶媒は後に除去する)に溶解することからなり、第二はインシチューの重合反応からなる。この重合反応は定電位モードで、またCNTを合成した基板上で直接遂行する。
【0013】
一変法として、特許文献5(ADAテクノロジー・インク;2008年2月7日公開)は、高性能ナノ複合スーパーコンデンサについて提案している。提案されたスーパーコンデンサは、75μmを超えるサイズをもつ整列させたCNTの2個の電極及びイオン性液体と共に使用するゲルポリマー電極型の電解液又はILGPE(Ionic Liquid incorporated Gel Polymer Electrolyte;イオン液体併用ゲルポリマー電解液)により調製される。
【0014】
最後に、ファンら(Fang et al.,2010)の非特許文献1(“自立性スーパーコンデンサ膜:パルス電着により可能となったポリピロール被覆カーボンナノチューブネットワーク”)は、ポリピロールで被覆したCNTのネットワークからなる自立性スーパーコンデンサ膜を提案している。このCNTはその長さが50μmのオーダーであり、この複合体形状で使用されるが、整列した形状ではなく、膜を通して濾過されて、織り込み型ネットワークを形成する。該ナノ複合体を自立させるのは、この膜の存在によるものである。換言すると、該CNTは伝導性ポリマーを析出させる前から自立性である;この性質は、伝導性ポリマーを析出するために遂行した方法の結果ではない。この析出操作は、0.1MのKCl水性電解質溶液中で電気化学的に、パルス定電位モードで、すなわち一定電位でパルスを使用して実施される(下記図1A参照)。
【0015】
本発明者らは、彼ら自身、広範囲のモノマー(すなわち、多くの多様な化学的性質、とりわけ溶解性を有するモノマー)から得られる伝導性ポリマーで被覆又は含浸した配列CNTを含んでなる複合材料の調製が可能である方法を提案することをその目標として定めた;当該複合材料は、技術の現状における材料のものに等しいか、又はそれより高い電気的性質を有し、この性質の付与方法の前後に追加の工程を必要とすることなく自立したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第08/005431号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/039557号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/077515号明細書
【特許文献4】国際公開第03/049219号パンフレット
【特許文献5】国際公開第08/016990号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Fang et al.,2010 “Journal of Power Sources”,Vol.195,pages 674−679
【発明の概要】
【0018】
本発明は、先に定義したような技術上の問題の解決と本発明者らが設定した目標の達成を可能とする。
【0019】
事実、本発明者らによる研究は、カーペット形状に整列させ、その上に電導性のポリマーマトリックスを析出させたCNTを含んでなる複合材料の調製を可能とし、マトリックスの電気化学的析出以外の処理をすることなしに自立した複合材料の入手を可能とした。
【0020】
本発明者らが提案する技術的解決は、CNT上に伝導性ポリマーマトリックスを析出させる方法、すなわち、パルスガルバノスタットモードでの電気化学的析出に関して、特別の選択をしたことに相当する。
【0021】
事実、本発明者らは、パルスガルバノスタット技法によるカーペット形状のCNTに対する伝導性ポリマーの電気化学的析出操作が、カーペットの最深部に至るまでのこのマトリックスの電解重合を可能とすることを事実上示した。さらに、該カーペットの形態はパルスガルバノスタットモードにおけるこの電解重合によっては決して修飾されるものではない。
【0022】
パルスガルバノスタットモードでのこの電解重合法は、殆どの様々な電解液中で実行することができる;すなわち、プロトン性溶媒もしくは非プロトン性溶媒と塩を含有するタイプの常套の電解液からより粘稠な溶液、例えば、イオン性液体型溶媒を含む溶液の範囲の溶液である。使用し得るこの多様な電解液は、伝導性ポリマーマトリックスの前駆体であるモノマーの広い選択を可能とする。使用するモノマーとは関係なく、適切な電解液がいつでも見出し得る。
【0023】
当該析出操作は、数ミリメートルにも及ぶ非常に長いCNTのカーペット上で実施し得る。先に記載したように、電導性ポリマーマトリックス中のCNTのカーペットからなる先行技術の複合材料は、比較的サイズが小さい、すなわち、200μm未満である。
【0024】
さらに、当該析出操作は広いCNT密度範囲で、広いCNT平均直径の範囲で、また多少とも構造化されている、すなわち、多少の程度構造上の欠陥を有するCNTについて実施することができる。
【0025】
最後に、本発明の複合材料は自立的であるのみならず、電導性ポリマーマトリックスにより付与される特定の柔軟性をも有する。
【0026】
興味深いことは、本発明はカーペット形状のCNTのみならず、より一般的に、分散型又は整列型であっても、電導性又は半導体性である伸張形状のすべてのナノ物体に当てはまるという事実である。
【0027】
従って、本発明は伸長形状の電導性もしくは半導体性ナノ物体及び電導性のポリマーマトリックスを含んでなる複合材料を調製する方法を提案するものであり、当該方法は当該ナノ物体上に、パルスガルバノスタット技法により当該マトリックスを電気化学的に析出させることからなる工程を含んでなる。
【0028】
本発明における“ナノ物体”とは、ナノメートルサイズの有機又は無機の物体を意味する;すなわち、少なくとも1つのその外部寸法がナノメータの大きさである。
【0029】
本発明において“伸長形状のナノ物体”とは、先に定義したようなナノ物体を意味し、その少なくとも2つの外部寸法がナノメータのサイズであり、3番目のその寸法が他の2つのものの寸法よりも少なくとも2倍、特に少なくとも5倍、より特に少なくとも10倍、さらに特に少なくとも50倍である。
【0030】
本発明において“伸長形状の電導性ナノ物体”とは、先に定義したような伸長形状のナノ物体を意味し、電流の通過を可能とし、電荷の自由運動を可能とする。
【0031】
本発明において“伸長形状の電気的半導体性ナノ物体”とは、金属と絶縁体の間の中間電導性をもつ先に定義したような伸長形状のナノ物体を意味する。半導体の伝導性は半導体の電荷キャリヤ(電子又は電子空位)により主として影響を受ける。これらの性質は、価電子帯(共有結合に関わる電子に相当する)及び伝導帯(励起状態の電子に相当し、半導体中で移動し得る)と呼ばれる2つの特定のエネルギー帯により決定される。“ギャップ”とは、価電子帯と伝導帯との間のエネルギー差を表す。
【0032】
本発明にて有利に使用される伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体は、ナノファイバー、ナノチューブ及びナノワイヤーから選択される。
【0033】
本発明における“ナノファイバー”とは、0.5nmないし1000nm、特に1nmないし500nm、さらに特に2nmないし50nmの範囲で変わる太さ又は直径をもつ一次もしくは実質的な一次構造を意味する。
【0034】
本発明における“ナノチューブ”とは、管状及び/又は円筒状の構造であって、その内径が0.5nmないし100nm、特に0.5nmないし50nm、より具体的には0.5nmないし10nmの範囲で変わるものを意味する。
【0035】
本発明における“ナノワイヤー”とは、先に定義したような、すなわち、固形のナノファイバーを意味する。
【0036】
電導性又は半導体性の伸長形状ナノ物体、とりわけ本発明にて使用されるナノファイバー、ナノチューブ及びナノワイヤーは、炭素、ケイ素、金、銀、タンタル、ニッケル、白金、銅、モリブデン、パラジウム、鋼鉄、ステンレス鋼、亜鉛、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マンガン、窒化ガリウム、窒化ケイ素、二硫化タングステン、二硫化モリブデン、リン化インジウム、セレン化タングステン、セレン化モリブデン、二酸化チタン、二酸化ケイ素、三酸化モリブデン、及びその混合物により形成される群より選択される材料にある。
【0037】
本発明にて有利に使用される伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体は、カーボンナノチューブである。思い起こされるのは、カーボンナノチューブが1層以上のグラフェン(炭素六方晶の網目)の同心巻線と定義されることである。この用語は以下のとおりである:
−単壁ナノチューブ(SWNT)は、単一層のグラフェンのみが存在する場合に使用される;
−二重壁ナノチューブ(DWNT)は2層のグラフェンの存在するときに使用される;
−多重壁ナノチューブ(MWNT)は数層のグラフェンの存在するときに使用される。
【0038】
本発明はその調製方法に関係なく、いずれの型のカーボンナノチューブにも適応する。例えば、本発明にて使用されるカーボンナノチューブは、単一グラフェン層のナノチューブ(SMNT)、二重グラフェン層のナノチューブ(DWNT)、数層のグラフェン層をもつナノチューブ(MWNT)又はその混合物の1つであってもよい。
【0039】
当業者は先に定義したようなナノ物体の調製に使用し得る異なる方法についても知っている。
【0040】
ナノワイヤーの調製に使用し得る方法のより詳しい例としては、基体をリトグラフィー又はエッチング技法によりエッチングし、ナノワイヤーを金などの薄い金属フィルムから化学的蒸着法(CVD)により成長させることからなる方法が例示され得る。
【0041】
炭素ナノチューブの調製に使用し得る方法のより特定された例としては、電気アーク、レーザ切除もしくは太陽炉法など炭素昇華に基づく物理的方法、及びCVD法又は炭素源を金属触媒上で熱分解する方法などの化学的方法が例示し得る。CNTを調製する特に適切な一方法は、特にピノールらの文献(Pinault et al.2005;“エーロゾル補助CCVDの初期段階における多重壁カーボンナノチューブの成長”、Carbon 43、2968)及びピノールらの文献(Pinault et al.2005;“整列させた多重壁カーボンナノチューブ多重層の成長における逐次揚力の証明”、Nano Lett.5(12)、2394)に記載されたCVDインジェクション法である。
【0042】
本発明にて使用される伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体は、どのようなキラリティ及びどのような長さを有していてもよい。有利には、これらのナノ物体は10nmないし2cmの長さ、特に20nmないし1cm、より特に50nmないし8mm、さらに特に100nmないし5mmの長さを有する。
【0043】
本発明にては、伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体は、分散、ねじれ又は整列した互いに関連するコンホメーションで使用することができる。“ねじれコンホメーション”とは、必ずしも互いに整列していない実質的に直線のナノ物体を意味する。ナノ物体の整列とねじれはX線を介して入手可能なパラメータである。
【0044】
逆に、整列したコンホメーションにおいては、ナノ物体が垂直配列において互いに整列させて使用される。このコンホメーションにおいて、それらは一般に、また実質的に支持体に対して垂直である。“カーペット”という用語、とりわけ、ナノファイバー、ナノチューブ又はナノワイヤーのカーペットという用語が使用される。また、“フォレスト”又は“ネットワーク”という用語も使用される。整列したコンホメーションは、ナノ物体を調製すると直ぐに入手し得るか、又は特にナノチューブのコアにおける濾過技法により、もしくはナノチューブの軸を横断する横断流技法により一般的に一旦調製した後に入手することができる。有利には、本発明方法において、伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体は、ナノ物体が整列しているカーペットの形状である。
【0045】
本発明において“電導性ポリマーマトリックス”とは、本発明方法に使用されるナノ物体の表面の、多孔性又は非多孔性に拘わらず、フィルム形状の構造を意味し、基本的に1種(又はそれ以上)の電導性の(コ)ポリマーからなる。
【0046】
本発明において“電導性(コ)ポリマー”とは、主ポリマー鎖と選択肢としてその側鎖が少なくとも1つの二重結合又は少なくとも1つの芳香環をもつ(コ)ポリマーを意味する。典型的には、電導性(コ)ポリマーは、1つの二重結合及び/又は1つの芳香環、及び選択肢としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、イオウ原子又はフッ素原子)を担持する1種(又はそれ以上)のモノマーの重合により入手する。
【0047】
本発明にて使用されるポリマーマトリックスは、有利には、ポリフルオレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリアセチレン及びポリ(p−フェニレンビニレン)から選択される1種(又はそれ以上)の(コ)ポリマー(類)から形成される。有利には、本発明にて使用されるポリマーマトリックスは、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリアニリン及びポリチオフェンから選択される1種(又はそれ以上)の(コ)ポリマー(類)から有利に形成される。
【0048】
当業者は、重合を介して上記掲載のポリマーを得るために使用し得る様々なポリマーについても理解している。
【0049】
例示としてのポリピロールは、ピロール及びピロール誘導体から選択される1種(又はそれ以上)のモノマーの重合により入手し得る。ピロール誘導体は、有利には、少なくとも1個の置換基により置換されたピロールであり、該置換基は、C1ないしC10、特にC1ないしC5の直鎖、分枝もしくは環状の、置換されていてもよい(ヘテロ)アルキル;ハロゲン原子;−OH基;−COOH基;C2ないしC20、特にC2ないしC10の、置換されていてもよいアルコキシアルキル;アルコキシポリエーテル;アルキレンポリエーテル;C3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アリール、又はC3ないしC20、特にC4ないしC16の置換されていてもよい(ヘテロ)アラルキルから選択される。ピロール誘導体はまた、C1ないしC10、特にC1ないしC5の、ヘテロ原子を含んでいてもよい架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたピロールであってもよい。使用し得るピロール誘導体の例としては、以下のものを例示し得る:3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−ブチルピロール、3−ブロモピロール、3−メトキシピロール、3,4−ジクロロピロール及び3,4−ジプロポキシピロール。
【0050】
本発明において“置換されていてもよい”とは、−OH、−COOH、ハロゲン原子又はC1ないしC4アルキルにより置換され得る基を意味する。
【0051】
例示としてのポリカルバゾールは、カルバゾール及びカルバゾール誘導体から選択される1種(又はそれ以上)のモノマーの重合により入手し得る。カルバゾールの誘導体は、有利には、少なくとも1個の置換基により置換されたカルバゾールであり、該置換基は、C1ないしC10、特にC1ないしC5の直鎖、分枝もしくは環状の、置換されていてもよい(ヘテロ)アルキル;ハロゲン原子;−OH基;−COOH基;C2ないしC20、特にC2ないしC10の、置換されていてもよいアルコキシアルキル;アルコキシポリエーテル;アルキレンポリエーテル;C3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アリール、又はC3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アラルキルから選択される。カルバゾール誘導体はまた、C1ないしC10、特にC1ないしC5の、ヘテロ原子を含んでいてもよい架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたカルバゾールであってもよい。
【0052】
例示としてのポリアニリンは、アニリン及びアニリン誘導体から選択される1種(又はそれ以上)のモノマーの重合により入手し得る。アニリンの誘導体は、有利には、少なくとも1個の置換基により置換されたアニリンであり、該置換基は、C1ないしC10、特にC1ないしC5の直鎖、分枝もしくは環状の、置換されていてもよい(ヘテロ)アルキル;ハロゲン原子;−OH基;−COOH基;C2ないしC20、特にC2ないしC10の、置換されていてもよいアルコキシアルキル;アルコキシポリエーテル;アルキレンポリエーテル;C3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アリール、又はC3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アラルキルから選択される。アニリンの誘導体はまた、C1ないしC10、特にC1ないしC5の、ヘテロ原子を含んでいてもよい架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたアニリンであってもよい。
【0053】
例示としてのポリチオフェンは、チオフェン及びチオフェン誘導体から選択される1種(又はそれ以上)のモノマーの重合により入手し得る。チオフェンの誘導体は、有利には、少なくとも1個の置換基により置換されたチオフェンであり、該置換基は、C1ないしC10、特にC1ないしC5の直鎖、分枝もしくは環状の、置換されていてもよい(ヘテロ)アルキル;ハロゲン原子;−OH基;−COOH基;C2ないしC20、特にC2ないしC10の、置換されていてもよいアルコキシアルキル;アルコキシポリエーテル;アルキレンポリエーテル;C3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アリール、又はC3ないしC20、特にC4ないしC16の、置換されていてもよい(ヘテロ)アラルキルから選択される。チオフェンの誘導体はまた、C1ないしC10、特にC1ないしC5の、ヘテロ原子を含んでいてもよい架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたチオフェンであってもよい。使用し得るチオフェン誘導体の例としては、以下のものを例示し得る:3−チオフェン酢酸、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−メトキシチオフェン、3,4−ジクロロチオフェン、及び3,4−ジプロポキシチオフェン。
【0054】
本発明による複合材料の調製方法は、伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体上に、電導性のポリマーマトリックスを電気化学的に析出させるために、パルスガルバノスタットモード(パルスガルバノスタット法)を使用することを特徴とする。
【0055】
本発明における“ガルバノスタットモード”とは、定電流密度を加えることによる電解重合法を意味する。
【0056】
本発明における“パルスガルバノスタットモード”とは、定電流密度をton期間、少なくとも2回連続的に適用する電解重合法を意味し、電流の印加はまた“パルス”とも呼ばれ、電流又は電圧を印加しない静止期間toffにより隔てられる。
【0057】
“パルスガルバノスタットモード”及び“連続ガルバノスタットモード”という表現は等価であり、本明細書においては相互に交換し得る。
【0058】
on期間に加えられる電流密度は、0.5ないし10mA/cm、特に1ないし8mA/cm、より特に2ないし6mA/cmである。
【0059】
本発明方法によると、各ton期間の継続時間は比較的長い。有利な各ton期間の継続時間は、10ないし100秒、特に20ないし80秒、より特に30ないし60秒である。それ故、本発明方法にて使用されるパルスガルバノスタット法においては、定電流密度が10ないし100秒間、特に20ないし80秒間、より特に30ないし60秒間の継続時間(ton)加えられる。
【0060】
on期間の回数、すなわち、パルスの回数は、典型的には、10ないし500回、特に20ないし400回、より特に40ないし300回である。しかし、当業者は特定の方法を実施するために、必要にして十分な必要とされるパルスの回数を、下記パラグラフ4.2の教示に基づいて決定し得よう。
【0061】
本発明方法による各toff期間の継続時間は、とりわけ伸長形状のナノ物体をカーペットの形状のように高密度にて使用する場合、電流を印加する期間よりも相当に長くなければならない。実際に、パルスを加える場合、ポリマーマトリックスがナノ物体上に析出するが、長い静止期間(toff)は、この時点でモノマー(類)を再生するように、溶液中に存在するモノマー(類)をナノ物体内に拡散させることができる。従って、当該静止期間(toff)は、カーペット内でのモノマーの拡散と更新のために必要である。
【0062】
有利には、各toff期間の継続時間は、各ton期間の継続時間よりもファクター2だけ、特にファクター3だけ、より特にファクター4だけ、またさらに特にファクター5だけより長い。換言すると、本発明方法にて使用されるパルスガルバノスタット法において、各静止期間(toff)の継続時間は定電流密度の各適用期間(ton)の継続時間よりもファクター2だけ、特にファクター3だけ、より特にファクター4だけ、さらに特にファクター5だけより長い。有利には、各toff期間の継続時間は、20ないし600秒、特に50ないし500秒、より特に100ないし400秒である。
【0063】
しかしながら、静止期間(toff)は溶媒の粘性、電流密度、パルス時間などのファクターに左右されるであろう。しかし、それぞれの実験について、静止期間(toff)が十分であるか否かを決めることは容易である。必要とされることのすべては電解重合に際しての電位曲線の出現を観察することである。静止期間が十分な場合、到達する電位は、最初に低下するが、次には合成の全般にわたり、ほぼ一定となる(参照:下記図11A及び11B)。
【0064】
より詳しくは、本発明による方法は以下の工程を含んでなる:
a)電導性又は半導体性の伸張形状のナノ物体、とりわけ前記定義のものと当該伝導性ポリマーマトリックスのモノマー(類)前駆体(類)含有の溶液(以下溶液(S)と命名)とを接触させる工程;
b)当該ナノ物体をパルスガルバノスタットモードで分極し、その後に当該伝導性ポリマーマトリックスをナノ物体に電気化学的に析出させる工程。
【0065】
本発明による方法の工程(a)に先立って、電導性又は半導体性の伸張形状のナノ物体を酸化処理(又は前処理)に付すこと、すなわち、使用するナノ物体の表面を酸化すること、及び/又はラジカルの形成を介して引き続く酸化のための表面を準備することができる。酸化はナノ物体の表面を修飾する、とりわけ、ナノ物体の末端もしくは欠損部分に、酸素に富む基、例えば、カルボキシル(−COOH)、ヒドロキシル(−OH)、アルコキシ(−OX;ただし、Xはアルキル基、アシル基又はアロイル基である)、及びカルボニル(−C=O)、過炭酸(−C−O−OH)及び場合によりアミド型(−CONH)の基などの基を固定及び/又は付加することにより修飾する。
【0066】
当該酸化処理は2つの主要な型の表面修飾に基づくものであり、以下を使用する:
−プラズマ処理などの物理的処理、とりわけ、酸素プラズマ、UV処理、X−線もしくはγ−線処理、電子及び重イオン照射処理;又は
−化学処理、例えば、アルコール性カリによる処理、強酸(HCl、HSO、HNO、HClO)での処理、水酸化ナトリウムでの処理、強酸化剤(KMnO4、Cr、KClO又はCrO/塩酸、硫酸又は硝酸中)、オゾン処理及び酸素化気体(O、HOなど)中での熱処理。
【0067】
当該ナノ物体は、これを一旦酸化前処理に付した後、酸化されたナノ物体の形状、すなわち、負荷電形状であり得る。
【0068】
工程(a)にて、また先に説明したように、溶液(S)は、電導性又は半導体性の伸張形状のナノ物体が負に荷電している場合、純粋なプロトン性もしくは非プロトン性溶媒の形状;溶媒としてプロトン性もしくは非プロトン性溶媒を含む電解液の形状;又はイオン性液体の形状であり得る。
【0069】
本発明において、“プロトン性溶媒”とは少なくとも1個の水素原子をプロトンの形状で放出し得る溶媒を意味し、酸性化もしくは塩基性化水、脱イオン水及び蒸留水、酢酸、メタノール及びエタノールなどのヒドロキシル化溶媒、エチレングリコールなどの低分子量の液状グリコール、及びその混合物からなる群より有利に選択される。
【0070】
本発明において“非プロトン性溶媒”とは、極端ではない条件下でプロトンを放出又は受容し得ない溶媒を意味し、有利には、ジクロロメタンなどのハロゲン化アルカン;ジメチルホルムアミド(DMF);アセトンもしくは2−ブタノンなどのケトン;アセトニトリル;テトラヒドロフラン(THF);N−メチルピロリドン(NMP);ジメチルスルホキシド(DMSO)及びその混合物から選択される。
【0071】
さらに、本発明にて使用し得る溶媒は少なくとも1種のプロトン性溶媒と少なくとも1種の非プロトン性溶媒との混合物であってもよい。
【0072】
本発明にて使用し得る電解液は、先に定義した溶媒に加えて、該溶媒に溶解した塩の形状の電解質を含有する。この塩のアニオンは、Br、Cl、HCO、HPO、Cr3−、BF又はPFなどの無機アニオン;有機アニオン;ポリマーアニオン及び生物アニオンから選択し得る。この塩のカチオンは、Li、Na、Mg2+、Cu2+、Zn2+及びAl3+などの金属カチオンである。
【0073】
本発明にて使用し得る溶媒と電解質の他の例は、国際特許出願WO2003/077515の段落[0040]ないし[0048]に示されている。
【0074】
アニオンと会合したカチオンを含有するイオン性液体のいずれもが本発明にて使用し得る。これらのイオン性液体の内から列挙すると、四級アンモニウムイオンを含有するイオン性液体であって、アンモニウムイオンとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−イソプロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウム、N−プロピルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−tert−ブチルピリジニウム、N−tert−ブタノール−ペンチルピリジニウム、N−メチル−N−プロピル−ピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウム、N−プロポキシエチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−メチル−N−イソプロピルピペリジニウム、N−ブチル−N−メチルピペリジニウム、N−N−イソブチルメチルピペリジニウム、N−sec−ブチル−N−メチルピペリジニウム、N−メトキシ−N−エチルメチルピペリジニウム及びN−エトキシエチル−N−メチルピペリジニウム・イオンである。イオン性液体としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ビス(トリフルオロメタン−スルホニル)アミド(TFSI)又はビス(トリフルオロスルホニル)アミド(FSI)アニオンなどのアニオンと会合したブチル−N−N,N,N−トリメチルアンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウム、N−ブチル−N−エチル−N,N−ジメチルアンモニウム・イオンなどのアンモニウムイオンを含むものが引用され得る。
【0075】
本発明にて使用し得る他のイオン性液体については、国際特許出願WO2008/016990(第18頁第5〜23行)に記載されている。
【0076】
伝導性ポリマーマトリックスの前駆体モノマー(類)は、溶液(S)中、使用した溶媒中のそれらの溶解性に関係して決定される最大量で存在する。
【0077】
伸長形状のナノ物体上の伝導性ポリマーマトリックスの電気化学析出反応、すなわち本発明による方法の工程(b)は、有利には、酸素の不存在下、すなわち、不活性気体中で実施する。例えば、アルゴン又は窒素などの不活性ガスがこの不活性気体を生成させるために使用し得る。不活性気体の使用と該溶液(S)中への不活性ガスの吹き込みは、この溶液(S)に存在し得る酸素の消滅を可能とし;ナノ物体の表面に伝導性ポリマーマトリックスを均一に連続的に塗布することを可能とし;また得られる複合材料の電気化学的性能の改善を任意に可能とする。
【0078】
本発明による方法、とりわけ、この方法の工程(b)は、一般に、参照電極、作用電極及び対極を備えた電気化学セル中で実施する。参照電極はSCE(飽和カロメル電極)型のもの又はAg/AgCl参照電極であり、[KCl]=3M、又は単なる白金線であってもよい。作用電極は伸長形状の電導性又は半導体性のナノ物体により形成され、また対極は白金網又は白金被覆チタン板である。
【0079】
典型的に、本発明による方法の工程(b)は、1ないし60分、特に2ないし45分、より特に3ないし30分間継続する。この工程(b)は、有利には、10ないし50℃、特に15ないし40℃の温度で、より特に大気温度(すなわち、22℃±5℃)で実施する。
【0080】
本発明はまた、先に定義した本発明方法を用いて調製し得る複合材料にも関する。本発明の複合材料はここに含まれるナノ物体の存在により“ナノ複合体”と称し得る。
【0081】
有利には、本発明材料中の電導性もしくは半導体性の伸長形状ナノ物体の密度は、多様であり得る。この密度は、有利には、10ないし1013ナノ物体/cm(材料)である。従って、整列したナノ物体の高密度カーペットを有する材料を得ることが可能であり、その密度は10ないし1013ナノ物体/cmのオーダー、とりわけ、10ないし1011ナノ物体/cmのオーダーである。
【0082】
本発明の複合材料の総重量との関連で表される電導性ポリマーマトリックスの重量パーセントは20%よりも高く、特に、25ないし80%であり、より特に50ないし75%である。電導性ポリマーマトリックスの重量及び複合材料の重量は、熱重量分析(TGA)により及び/又は秤量により得ることができる。
【0083】
従って、本発明は先に定義した本発明方法を用いて得られる複合材料に関するものであり、その電導性もしくは半導体性の伸長形状のナノ物体は、整列したナノ物体のカーペットの形状である。
【0084】
本発明による複合材料として有利に例示し得るのは、電導性もしくは半導体性の伸長形状のナノ物体が、カーペット形状で、200μmを超える長さをもつCNTからなる複合材料である。
【0085】
本発明の複合材料、例えば、CNT、とりわけ、カーペット形状のCNTを含んでなる材料は、特に自立性、柔軟性の材料である。本発明において“自立性材料”とは、本発明方法の前後に、ナノ物体の金属被覆、硬性もしくは塑性もしくはさらに電導性であるコレクター上に該材料を接着するなどの何らの処理をも必要とすることなく、機械的抵抗性をもつ材料を意味する。
【0086】
最後に、本発明は当該複合材料の、又は本発明方法により調製し得る複合材料の、スーパーコンデンサ又はバッテリーの正極/負極、光電装置用の電極、CO貯蔵用材料、又は電気化学センサ用の電極における用途に関する。従って、本発明はスーパーコンデンサ又はバッテリーの正極/負極、光電装置用の電極、CO貯蔵用材料、又は電気化学センサ用の電極に関し、これらは本発明による複合材料又は本発明方法により調製し得る複合材料を含んでなる。
【0087】
本発明のその他の特徴及び利点については、説明を目的とするものであって、限定するものではない以下の実施例を添付の図面とともに参照することにより、当業者にとってさらに明瞭なものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1図1は本発明方法を実施するために使用する装置を図式化したものである。
図2図2は電気化学析出操作に使用するパルスのプロフィールを説明する。
図3図3はカーボンナノチューブ(<CNT単独>、C=3−6F/g)について、ポリマー単独(<P3MT>、C=80−100F/g)について、及び本発明のナノ複合体(<ナノ複合体>、C=130−140F/g)について、v=5mV/sで得られたサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図4図4は2つの操作条件により生成させた2種のナノ複合体の透過型電子顕微鏡画像を示す;パルスガルバノスタットモード、50回連続(図4A)及び75回連続(図4B)。
図5図5は本発明によるP3MT/CNTナノ複合体の10mA/cm図5A)及び5mA/cm図5B)での放電曲線を示す。
図6図6は本発明方法により処理したカーボンナノチューブのカーペットの写真であり、平面に置いたもの(図6A)又はクリップで挟んだもの(図6B)を示す。
図7図7は本発明による2種のナノ複合体の透過型電子顕微鏡画像であり、P3MTをCNT上に2mA/cm図7A及び7C)又は4mA/cm2(図7B及び7D)で析出させたものである。図7C及び7Dはそれぞれ図7A及び7Bの四角で示した領域に相当する詳細な画像である。
図8図8は本発明によるナノ複合体(CNT/P3MT)の静電容量の進展変化をパルス回数の関数として示す。
図9図9は静電容量の進展変化を伝導性ポリマー(P3MT)の含量の関数として示す。点線は試料が自立性かつ柔軟性となった時点及びその後のP3MT含量を示す。
図10図10は本発明によるNTC/P3MTナノ複合体の走査型電子顕微鏡画像を示す。図10Aは80%のP3MTを含むナノ複合体表面の画像に相当し、図10CはP3MTで被覆したこのナノ複合体のナノチューブの画像に相当する。図10Bは85%を超えるP3MTを含むナノ複合体の不浸透性表面の画像に相当し、図10Dはこのナノ複合体の縁に見られる不浸透性層の画像に相当する。
図11図11は300秒の十分な静止時間(図11A)での、又はそれより短い不十分な静止時間(図11B)での電解重合に適用したパルスを示す。
図12図12は静電容量の進展変化(●)と重合収率の進展変化(■)をパルス時間の関数として示す。
図13図13は本発明によるナノ複合体(CNT/P3MT)のサイクリックボルタンメトリーによる特性評価を短いパルス時間(図13A)について、及び長いパルス時間(図13B)について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
1.本発明装置の説明
図1に図式化した本発明方法に使用する装置は、3つの電極をもつ電気化学セルを含んでなる。
【0090】
このセルは、(1)伸張形状のナノ物体、特に、CNT、より特にCNTのカーペットにより形成された作用電極(WE)、(2)白金被覆チタン板などの対極(CE)、及び(3)参照電極(RE)、例えば、銀線を含んでなる。
【0091】
さらに、該電気化学セルは恒温制御槽に、特に、30℃で保持される。この恒温制御槽は、水導入口(Ee)と水排出口(Se)とを備えた水循環槽であってもよい。
【0092】
電気化学セル中でこれらの電極と接触する電解液(S)は、重合を経由して、ポリマーマトリックスを溶液中で得ることを可能とするモノマー;該モノマーとポリマーマトリックスは先に定義したものである。以下の例において、使用する溶液(S)は0.2Mの3−メチルチオフェン(3MT又はMeT)含有イオン液溶液(EMIT−FSI)である。CNTカーペット上で得られ、析出されたポリマーは、ポリ(3−メチルチオフェン)(P3MT又はPMeT)である。
【0093】
本発明方法を実施する場合、とりわけ重合に際しては、アルゴンの吹き込み(Ba)を溶液(S)中で維持するこができ、この溶液のアルゴン含有率の維持と緩やかな撹拌が可能となる。
【0094】
2.実施態様
先に説明したように、本発明による方法の不可欠の特徴は、溶液(S)中に存在するモノマーから得られるポリマーを析出させるための作用電極上での連続するガルバノスタットモードの使用である。
【0095】
図2は、使用電流のパルスプロフィールを示す。このプロフィールに変化を与えるテストは、同量の電流が重合の間中流れるようにして、系統的に同じm伝導性ポリマー/mcnt比が得られるように実施した。
【0096】
図2における実線は従来のプロフィールを示し、点線は同じ電荷を通過させ得る別のプロフィールを示す(曲線下の面積は同一である)。
【0097】
この方法によって、CNT重量がナノ複合体の総重量に対して20ないし25%のオーダーである電導性ポリマー/カーボンナノチューブナノ複合体(ECP/CNT)が得られる。この値はTGA分析により、また秤量により証明された。
【0098】
3.得られるナノ複合体の特性評価
3.1.静電容量値に対する<ナノ構造化>効果の証明
サイクリックボルタンメトリー(CV)での検討を実施した(図3)。例えば、これらの検討では、ナノ複合体に相当する曲線下面積が、2つの他の曲線、すなわち、P3MTポリマーの曲線とCNT単独の曲線の面積の合計よりも大きいことを示すことができた。
【0099】
このナノ構造化はCNTに沿っているP3MTの良好な分布の最初の徴候である。
【0100】
3.2.CNTに沿うモノマーの重合の証明
カーペットの厚さに対する、EDXプローブによるイオウ元素の分布測定によって、P3MTポリマーが整列したチューブの全長に沿って存在することを証明し得た。逆に、連続的ガルバノスタットモードにおいては、該ポリマーが、パルスガルバノスタットモードを使用することの有益性を明瞭に示すカーペットの全長に沿って浸透していない。
【0101】
同様に、図4に示す透過型電子顕微鏡画像(TEM)は、CNTが伝導性ポリマー(P3MT)によって被覆されていることを明瞭に示している。伝導性ポリマーの均一な分布がチューブ上にはっきりと認められ、またさらに、2つの異なる操作モードについて、析出したフィルムの厚さを測定することも可能である。
【0102】
例えば、50回連続のパルスガルバノスタットモードを用いる方法の場合、該ポリマーは8nmの厚さをもつが(図4A)、75回連続のパルスガルバノスタットモードの場合には、この厚さは18nmである(図4B)。
【0103】
3.3.静電容量の測定
静電容量は一定の電流密度で充電/放電サイクルを実施することにより測定した。図5は、J=10mA/cm図5A)及びJ=5mA/cm図5B)での2つの例を示すが、これらの値はしばしば電気化学貯蔵での応用に使用される。
【0104】
静電容量は放電曲線上で得られる<直線>の傾斜を用いて測定した。重量単位当たりのこれらの静電容量はP3MT/整列CNT電極の場合、135F/gないし145F/gであった。P3MT単独の重量について計算すると、静電容量は180ないし200F/gである。
【0105】
【表1】
【0106】
先行技術のナノ複合体は、P3MTの粉末(予め乳鉢中又は特殊な装置で摩砕)とアセチレンブラック(AB)及び結合剤として使用されるポリマー(ポリテトラフルオロエチレンすなわちPTFE)と混合することにより調製した。
【0107】
本発明のナノ複合体により得られた値は、イオン性液体にとって非常に興味深い。
【0108】
しかし、オーム性の降下が10mA/cmの電流密度で認められた;この降下はイオン性液体の粘性に本来備わっているものである。
【0109】
3.4.自立試料
P3MTに関して、析出量は、試料の可能性のあるリフトオフに大きな影響をもつ(本発明の特性の一つ)。
【0110】
この現象は、150μmを超える長さをもつCNTに対して70〜75%のP3MT含有率(ナノ複合体の総重量に対するP3MTの重量で表される含有率)の領域で起こる。当該含有率は図9に垂直点線で示される。興味深いことに、最大静電容量が約80%に見出されること、すなわち、自立した(引き離された)材料がこの最大の静電容量(図9参照)をもち得ることが示されている。
【0111】
試料は自立(電流コレクタなし)しており;すなわち、カーペットに沿って電流を収集するためにCNTを金属被覆すること、又はアルミニウムコレクタを接着させることは全く必要ない。さらに、伝導性ポリマーで含浸したカーペットは柔軟性となる。図6は析出伝導性ポリマーを含む約1cmのカーペットの写真を示す(図6A)。図6Bの写真においては、ナノ複合体が伝導性ポリマーの析出操作後に非常に柔軟であることが認められる。
【0112】
4.析出物とその性質に影響する種々のパラメータの検討
検討したパラメータは以下のとおりであった:
−電流密度:このものは伝導性ポリマーの析出物の割合に、また従って、その質に影響をもつ。
−パルス回数:これは所定の密度に対して析出物の厚さを制御する。
−パルスの形状:静止時間は析出物の質に対する効果的な影響因子であり得る。
【0113】
4.1.重合に際し適用される電流密度
パルスに適用される電流密度は材料の性質にとって重要な因子である。検討は3種の異なる電流密度:2;3;4mA/cmで、同じパルス回数と1つの同じ印加電荷量を用いて実施した。
【0114】
【表2】
【0115】
電流密度の増加は重合率の改善に、また材料の静電容量の改善につながる。
【0116】
TEMによる析出物の分析
図7に示すように、2mA/cmで析出させた層(図7A)は、4mA/cmで析出させた層(図7B)と対照的に、高密度かつ均一である。図7A及び7Bを大きく拡大した図面が、それぞれ図7C及び7Dであり、図7Dの試料の表面にうねりを明示している。重合の動力学は4mA/cmでより急速であるため、より多孔性の構造が得られる。
【0117】
電流密度は高ければ高い程、析出ポリマーの構造はより多孔性となり、またその逆も言える。当該多孔性は静電容量が改善された説明とみなせる。溶媒/ポリマー境界面は最大でなければならないので、より大きな多孔性は静電容量を改善する。
【0118】
4.2.パルス回数/ナノチューブの長さ
これら2つのパラメータは互いに分離することが困難である。異なる合成法に由来するもののみならず、1つの同じ合成法に由来する試料も、CNTの合成に使用されるチューブ状石英反応器中の異なる点に位置するので、それぞれが異なるCNTの長さを有する、
【0119】
何度かの試験の後、カーボンナノチューブのカーペットの長さが、少量の析出ポリマーの静電容量に何らかの影響をもつとは思えず、あたかもこの場合にナノ構造による影響が殆どなかったかのようであった。実際に、試料の長さに関係なく、パルス回数の関数としての静電容量の進展変化の曲線は、図8に説明する進展変化に従う、すなわち、釣鐘形状のプロフィールをとる。
【0120】
静電容量の降下は、P3MTがあるときにはカーペットの表面に単に析出するのみという事実によるとみなすことができる;次いで、電極がその<3D>構造を失い、カーペット内側全体が最早電荷貯蔵の役割を果たせないため、静電容量はそれに強く影響を受ける。
【0121】
本発明のナノ複合体中のP3MTの割合は、負荷したパルスの回数に関係する。最大の静電容量は80ないし85%のP3MT含有する試料で得られる(図9)。この値はほんのわずかの空隙がチューブ間に残っている整列したナノチューブのカーペットの最適充填率に相当する。
【0122】
それ故、カーペット中のモノマーの拡散はある時点でますます遅くなることが想定される。新たなパルスが再開される場合、重合が起こるのはカーペットの上部でより多くなり、カーペットを覆い隠す。この現象は図9で観察される静電容量の突然の降下を説明するものと見做すことができる。
【0123】
それ故、85%の伝導性ポリマー(P3MT)の上に表層が形成されて、溶液に対して遮蔽を形成し、静電容量の強力な降下につながる。マットの深部に存在する活性物は最早利用できず、エネルギーを貯蔵するその有用性を失ってしまう。
【0124】
異なる回数のパルスによるCNT/P3MTナノ複合体の走査型電子顕微鏡画像(SEM)(図10)はこの事実を確認する。図10A及び10Cにおいては、225回のパルスが用いられ、80%のP3MTを含むナノ複合体の取得が可能となり、一方、85%を超えるP3MTを含むナノ複合体が275回のパルスで得られた(図10B及び10D)。このようにして得られたナノ複合体の表面と縁をSEM下で観察すると、P3MTで被覆されたCNTでの非常に高い充填(図10A及び10C)が明らかとなり、また85%を超えるP3MTを含むナノ複合体(図10B及び10D)の場合、カーペットの不浸透性表面が明らかとなる。
【0125】
4.3.静止時間とパルス時間の効果
静止時間:
十分な静止時間での電解重合に際し、到達する電位は、最初は低下し、次いで合成を通じて略一定のままとなる。到達した電位は電極で生成させたポリマーの酸化電位の特性である(図11A)。
【0126】
もし逆に静止時間が十分でないならば、拡散が十分ではなく、モノマーの補充量が不十分となるだろう。この系の電位が上昇して、モノマーの代わりに溶液中の他の種を酸化することになるだろう。この特性の増大は、図11Bにて説明される。それはポリマーの過剰酸化、不都合な反応、形態の変化などの有害な作用につながり得る。
【0127】
パルス時間:
パルス時間の影響に関しては、これを図12及び13にて説明する。
【0128】
もし静電容量をパルス持続の関数として決定するなら、図12に示すように、釣鐘型の曲線が静電容量について、及び重合収率についての両方で得られる。
【0129】
より短いパルス時間(5〜15秒)はMeTオリゴマーの形成を促進する。これらが溶媒中に部分的に可溶であるため、それらは溶液に拡散し(それらには時間があるので)、それ故に、重合収率に算入されない。
【0130】
平均最適静電容量は約50秒のパルス時間で得られ、大まかには最適重合収率に対応する(60秒のパルス時間)。この最適値に加えて、静電容量の降下がある。重合時間が長すぎ、CNTカーペット表面上の層の形成現象が多分増強される。
【0131】
図13A及び13Bは、充電/放電サイクルの間にナノ複合体を通過する電荷の変動を走査型サイクリックボルタンメトリーによって、短いパルス時間(すなわち、45秒以下)について、及びより長いパルス時間(すなわち、45秒以上)について示す。
【0132】
4.4.その他のモノマーの析出物
その他のモノマーを用いて、CNTの長いカーペットから、その上に相当するポリマーを析出させることにより、本発明によるナノ複合体を調製した。
これらのポリマーは以下のとおりであった:
式:
【0133】
【化1】

【0134】
で示されるポリアニリン(PANI);
式:
【0135】
【化2】

【0136】
で示されるポリピロール(PPy);
式:
【0137】
【化3】

【0138】
で示されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT);
式:
【0139】
【化4】

【0140】
で示され、後に官能基化し得る酸機能を有するポリ(3−チオフェン酢酸)(PTAA);
式:
【0141】
【化5】

【0142】
で示されるポリ(カルバゾール)(PCz)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13