【実施例】
【0057】
例示
本明細書に開示される試験の結果により、ヒトにおけるAd36感染と、より低い肝臓脂質レベルおよびより良好な血糖コントロールの間に関連があることが明らかとなった。結果はまた、Ad36 E4orf1タンパク質は、Ad36ウイルスの保護効果のメディエーターであること、ならびに該効果はアディポネクチンを含むいくつかの遺伝子の発現およびGlut2アバンダンスを改変することにより媒介される可能性があることを立証する。したがって、本明細書に開示されるこれらの試験は、Ad36、Ad36 E4orf1およびそれらの機能的バリアントは、NAFLDを治療または予防するため、哺乳動物の肝臓から過剰な脂肪を低減するため、血糖コントロールを改善するためおよび肝機能障害を治療または予防するために使用され得ることを示す。
【0058】
技術およびアッセイ:
ウイルス調製. Ad-36は、American Type Culture collection (ATCC Cat# VR913)から得られ、以前に記載され、使用されたように(45、44)、プラークが精製され、A549細胞(ヒト肺癌細胞株)中で増殖された。Ad-2もATCC (Cat #VR846)から得られ、A549細胞中で増殖された。ウイルス力価は、プラークアッセイ(45)および接種により決定され、プラーク形成単位(PFU)として表された。
【0059】
b. 生化学的アッセイ
グルコース: それぞれのマウス由来の2μLの血清は、Raichemグルコースオキシダーゼ法(R80038)を使用して、96ウェルプレート形式で測定した。500nmで吸光度を読んだ。インスリン: 超高感度マウスインスリンELISAキット(Ultra-sensitive mouse insulin ELISA kit)(Crystal Chem, # 90090)を使用してインスリンを測定した。Cardiochek脂質パネル試験片を使用してトリグリセリドを測定した。
【0060】
qRT-PCR: 高脂肪食を与えたマウスの脂肪組織から、製造業者の指示書に従いRNeasy Miniキット(Qiagen, # 74101)を使用して、mRNAを抽出した。増幅等級デオキシリボヌクレアーゼI(Invitrogen, # 18068-015)を使用して残りのDNAを除去した。製造業者のプロトコルに従いiscriptTM cDNA合成キット(BioRad, # 170-8890)を使用して、1μgの全RNAをcDNAに逆転写した。cDNAの増幅のためにPCRコアシステムII(Promega, # M7665)を使用した。GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ; Applied Biosystems, # Mm99999915_g1)と比較して、遺伝子TNFα(腫瘍壊死因子アルファ、Applied Biosystems, # Mm00443259_g1)、レジスチン(Applied Biosystems, # Mm00445641_m1)、MCP-1(マクロファージケモアトラクタントタンパク質(macrophage chemoattractant protein);Applied Biosystems, # Mm00441243_g1)、CD68(Applied Biosystems, # Mm03047343_m1)、TLR4(Toll様レセプター4; Applied Biosystems, # Mm00445274_m1)、MCSF(マクロファージコロニー刺激因子; Applied Biosystems # Mm00432688_m1)およびIL6(インターロイキン6; Applied Biosystems, # Mm00446191_m1)の相対的発現レベルを試験するために、定量的RT-PCRを行なった。T検定により平均を比較した。有意さはp<0.05で設定した。
【0061】
c. 感染の確認:
抗体力価:
血清中の中和抗体の存在は、詳細に記載されるように(92)、中和抗体を決定するための高感度、特異的かつ黄金標準アッセイである「一定ウイルス減少血清(constant virus-decreasing serum)」法により決定した。簡潔に、熱不活性化試験血清を、96ウェルプレート中で1:2から1:512に連続希釈(2倍)した。それぞれのアデノウイルス作業ストックの全部で100TCID-50(50%組織培養感染量)をウェルのそれぞれに添加して、次いで37℃で1時間のインキュベーション後にA549細胞を添加した。それぞれの試験血清は、2重で行った(run)。血清対照(血清および細胞あり、ウイルスなし)、細胞対照(細胞のみ、ウイルスなし、血清なし)およびウイルス対照(細胞およびウイルスあり、血清なし)をそれぞれのアッセイに含ませた。プレートを37℃で13日間インキュベートして、CPE(細胞変性効果)の存在に注意した。1:8以上の希釈度におけるCPEなしの血清試料は、それぞれのウイルスに対する中和抗体の存在について陽性とみなし、該ウイルスでの感染前の証拠とした。1:8未満の力価を有する試料は、ウイルス抗体の存在について陰性とみなした。クオリティーチェックとして、それぞれのアッセイでウイルス逆滴定を行なった。
【0062】
ウイルスDNAおよびウイルスRNAのスクリーニング:
DNA単離: QIAMP DNA miniキット(# 51306)を使用してDNAを単離した。Ad36、Ad2のE4遺伝子についておよびマウスβアクチンについてもプライマーを設計した。PCRによりDNAを増幅した。プライマー配列は以下の通りである:
【0063】
Ad36フォワードプライマー: 5'-GGCATACTAACCCAGTCCGATG-3'、
Ad36リバースプライマー: 5'-TCACTCTCAGCAGCAGCAGG-3';
Ad2フォワードプライマー: 5'-CCTAGGCAGGAGGGTTTTTC-3'、
Ad2リバースプライマー: 5'-ATAGCCCGGGGGAATACATA-3'
マウスβアクチンフォワードプライマー: 5'-GATCTTCATGGTGCTAGGAG-3'、
マウスβアクチンリバースプライマー: 5'-ACGTTGACATCCGTAAAGAC-3'。
【0064】
陰性PCR対照: 水。陽性PCR対照: Ad36またはAd2感染A549細胞由来のDNA。DNAは、95℃で2分間変性させ、35サイクルのPCRに供した(94℃で1分、55℃で1分、72℃で2分、続いて72℃で5分インキュベーション。製造業者の指示書に従ってRNeasy Miniキット(Qiagen, # 74101)を使用して、RNAを抽出した。残りのDNAは、増幅等級のデオキシリボヌクレアーゼI(Invitrogen, # 18068-015)を使用して除去した。製造業者のプロトコルに従ってiscriptTM cDNA合成キット(BioRad, #170-8890)を使用して、1μgの全RNAを、cDNAに逆転写した。cDNAの増幅のためにPCRコアシステムII(Promega, # M7665)を使用した。
【0065】
d. ブドウ糖負荷試験:
16時間の絶食後、意識のあるマウスにDグルコース(2.5mg/体重g)を腹腔内注射した。グルコース注射(時間0)前、および注射の10、20、30、60、120および150分後に尾静脈から血液を採取した。グルコース測定器(glucometer) (Contour, Bayer)を使用して血糖を測定した。
【0066】
e. ウェスタンブロット分析:
免疫沈降: IR、IRS1およびIRS2の免疫沈降のために、組織試料を50mM HEPES (pH7.4)、2mMオルトバナジン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、2mM EDTA、1% NP-40、0.25%デオキシコール酸ナトリウムおよびプロテアーゼインヒビターを含むバッファ中でホモジナイズした。次いで、ホモジネート(250μg)を3μgの一次抗体と共に免疫沈降させた。4〜20%勾配ゲルを使用して試料をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写した。膜を抗リン抗体で免疫ブロットした。リン酸化-tyr-1322-IR-β(Millipore, # 04-300)および全IR-β受容体(Millipore, # 05-1104)、全IRS1 (Santacruz, # Sc-559)およびpIRS1-(tyr-989) (Santacruz, # Sc-17200)、pIRS1-(ser307) (Cell signaling, # 2381)、(Milipore, # 06-506)のIRS2および(Santacruz, # Sc-17195-R)のp-IRS2 (tyr-612)に対する抗体を使用した。
【0067】
ウェスタンブロット: ビシンコニン酸アッセイによりタンパク質濃度を定量し、4〜20%のポリアクリルアミドゲルに等量で充填した。次いでタンパク質をPVDF膜に転写した。膜を3% BSAを含むPBS Tween-20中でブロッキングし、全AKT (Cell signaling, # 4691)、p-AKT(ser-473) (Cell signaling, # 9271)、Ras (Cell signaling, # 3965)、Glut1 (Abcam, # 35826)、Glut4 (Abcam, # 14683)、Glut2 (Santacruz, # 9117)、グルコース6-ホスファターゼ(Santacruz, # 7291)、全AMPKα(Cell signaling, # 2603)、p-AMPKα(Thr-172) (Cell signaling, # 2535)およびレプチン(Abcam, # 2095)抗体のそれぞれを認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体とインキュベートした。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした二次抗体とインキュベートし、高められた化学発光によりシグナルを検出した。AlphaEaseFC分析器ソフトウェアを使用した走査デンシトメトリー(scanning densitometry)により特異的なバンドを定量して、等量の充填をGAPDH (Ambion, # 4300)アバンダンスに対する標準化により評価した。
【0068】
アディポネクチンの異なるオリゴマー形態の分析: 脂肪組織から単離した30μgのタンパク質を、DTT、βメルカプトエタノールを含まない5X非還元バッファで処理し、室温で1時間インキュベートした。試料を、4〜20% Tris-グリシンSDS-PAGEゲルに流し(run)、PVDF膜に転写した。アディポネクチンの抗球状(antiglobular)ドメイン抗体(Millipore, # MAB3608, Temmecula, CA)を使用して、ウエスタンブロッティングを行なった。
【0069】
f. 組織化学:
Ad36、Ad2およびmock感染した高脂肪食を与えたマウスのそれぞれからの3匹のマウスならびに対照として報告されるような(41)mock感染の食餌を与えた1匹のマウスの瞬間的に凍結した(flash frozen)肝臓試料に対してグリコーゲン染色を行なった。組織試料を、OCT封入培地に包埋し、8umの厚さにスライスした。過ヨウ素酸-シッフ染色(PAS)を使用してグリコーゲンを染色した。グリコーゲンの保存を高め、流動アーティファクト(streaming artifact)を防ぐことを補助するために、肝臓試料をカルノワ固定液(6部のエタノール、3部のクロロホルムおよび1部の氷酢酸)中、4℃で10分間固定した。固定の際、切片を蒸留水で数回すすいで洗浄し、次いで1%過ヨウ素酸溶液中、5分間室温でインキュベートした。蒸留水で洗浄後、シッフ試薬を添加して、11分間インキュベートした。全てのスライドを、冷却した流しっぱなしの水道水で10分間すすいだ。スライドを風乾して、パーマウント(permount)を使用してカバーガラスをかけた。グリコーゲンの染色は、切片にマゼンタ色を呈し、より濃い染色はより多くのグリコーゲンを示す。
【0070】
固定中脂質は試料から出ていく(leave)ので、スライド上の白色のブランク領域は、脂質の小滴を示す(96)。Zeiss Axioskop 40FLで画像を作成した。グリコーゲンおよび脂質の定量のために、Image Jを使用して、1つの試料あたり3つの標本および1つの標本あたり3枚の画像を分析した。画像を8ビットに変換して、グリコーゲン特異的染色のみが見られる閾値を決定し、この閾値でグリコーゲンの量をピクセル2として計算した。報告されるように(96)、脂質の定量のために、全面積からこの数を引き、ブランク空間の面積を得た。
【0071】
実施例1
Ad36およびヒト
4のコホートからの血清試料を、過去の感染の指示物質(indicator)としてのAd36抗体についてスクリーニングした。コホートは、A)HERITAGE家系研究(49)(n=671、白人および黒人の男性および女性)B)PBRC(ペニントンバイオメディカルリサーチセンター)研究(206人の白人および黒人の男性および女性)、C)MET研究(50、51)(n=45、思春期前の白人および黒人の男児および女児)、D)VIVA LA FAMILIA研究(52)(585人のヒスパニックの男児および女児)であった。Ad36抗体の広がり(prevalence)は、HERITAGE研究、PBRC研究、MET研究およびViva La Familia研究それぞれにおいて、13%、18%、22%および7%であった。より良い血糖コントロール(glycemic control)の種々の測定(インスリン感受性指数またはインスリンディスポジションインデックス(disposition index)を含む)が、年齢、性別、人種および肥満に関係なく、これらのコホートにおいて、Ad36感染と有意に関連した(例えば、表1および2は、PBRCおよびMETコホートを示す)。重要なことには、Ad36とより良い血糖コントロールの関連は、1500人を超える個体の種々の年齢群および人種のこれらのコホートにわたって、一貫して顕著であった。これらのデータは、Ad36感染がヒトにおいて血糖コントロールを改善し得ることを示唆した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例2:
Ad36は食餌を与えたマウスにおいてインスリン感受性を改善する
年齢、体重および体脂肪を合わせた雌性C57BL/6JマウスにMockを感染させるか、Ad36もしくはAd2を感染させ、標準的な食餌で維持した。4週齢雌性C57B6/6Jマウスを、The Jackson Laboratories (Bar Harbour, Maine, USA)から購入した。1週間の馴化の後、総体脂肪を、Brucker Minispec mq10 NMR (Nuclear Magnetic Resonance)アナライザーにより測定した。マウスを、体重および体脂肪を合わせた3つの群に分割し、Ad36(N=3)もしくはAd2(対照として使用された一般的なヒトアデノウイルス;N=4)の107PFUを、鼻内的、経口的および腹腔内的に植え付けたか、または組織培養培地でmock感染させた(n=6)。マウスは、25℃で12時間の明暗サイクルにあり、1つの部屋にバイオセイフティーレベル2の封じ込め下で、マイクロアイソレーターケージに収容し、水および齧歯類の食餌(chow)(Purian LabDiet 5001)に自由にアクセスできるようにした。
【0075】
3つの群のマウスは、12時間の実験の間、総体重の違いを示さなかった。
【0076】
アデノウイルスに対する中和抗体、および/または種々のマウス組織中のウイルスDNAおよび/またはmRNAについてのPCR分析により、mock感染または予想されるウイルスによる感染を確認した(表3)。感染前のベースラインでのマウスの3つ全ての群の間の空腹時血清グルコースレベルおよび空腹時血清インスリンレベルは同等であったが、これらのレベルは、Ad36感染マウスのみにおいて、実験の経過と共に、段々と減少した(
図1AおよびB)。さらに、感染後(pi)12週で、Ad36感染マウスの腹膜後脂肪パッドおよび肝臓の重量は、mock感染マウスに比べて、それぞれ、2倍重くなり(P<0.03)、または10%低下した(P<0.04)(表4、
図1)。従って、標準的な食餌を与えたマウスでは、Ad36感染は、空腹時グルコースレベルおよび空腹時インスリンレベルを低下させることによって、全身の血糖コントロールを改善したが、Ad2感染は、そうしなかった。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
体重を1週間に一回測定し、血液試料を、4時間絶食し麻酔したマウスの眼窩内の(intra orbital)眼球後方の洞(retrobular sinus)から採取した。マウスを、感染後12週で屠殺した。体幹血(trunk blood)を採取し、血清を分離した。肝臓、腹膜後脂肪貯蔵(depot)を、注意深く分離し、計量し、液体窒素中で瞬間凍結し、使用まで−80℃で保存した。血清を、グルコースおよびインスリンの測定のために使用した。
【0080】
体重、肝臓、脂肪パッドの重量、ならびにグルコースレベルおよびインスリンレベルの違いを、スチューデントの「t」検定によって解析した。確率レベルを、P<0.05に設定した。
【0081】
実施例3:
Ad36は高脂肪の食餌を与えたマウスの高血糖を改善する
この実験は、Ad36が、食餌誘導性高血糖を引き起こす高脂肪(HF、60kcal%)の食餌を用いて糖尿病性になったマウスにおいて同様の効果を有するかどうかを調査した。
【0082】
先の8週間HFの食餌を与えた年齢、体重および体脂肪を合わせた雄性C57BL/6Jマウス(14週齢)は、高い空腹時血清クルコースレベル(>200mg/dL)を証拠として、糖尿病性状態を発症した。この時点で、マウスは、mockで感染されるか、またはAd36もしくはAd2で感染された。pi20週までに、3つ全ての群は、同様の累積摂食量、ならびに総体重および脂肪パッド重量を示した(表5、
図2)。6週齢から高脂肪(60%kcal)の食餌(Reserch Diets Inc. D12492i)を与えられた14週齢の雄性C57B6/6Jマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbour, Maine, USA)から購入した。1週間の馴化の際に、NMRによりベースライン体脂肪を測定し、マウスを、体脂肪および体重について合わせた3つの群(群あたりn=10)に分割した。群を、鼻内的、腹腔内的および経口的に、Ad36(0.6×106PFU)、Ad2(3×106PFU)またはmockで感染させ、さらに20週間、高脂肪の食餌(60%kcal)を続けた。マウスを、25℃で12時間の明暗サイクルにあり、1つの部屋にバイオセイフティーレベル2封じ込め下でマイクロアイソレーターケージ中に一匹ずつ収容した。食餌の消滅および体重を16週間1週間に一回測定し、血液試料を、麻酔したマウスの眼窩内の眼球後方の洞から得た。空腹時試料を、4時間食餌を取除いた後、採取した。マウスを、自由に食餌を与えた状態で、植え付けの20週後に屠殺した。体幹血を採取し、血清を分離した。肝臓、精巣上体、腹膜後の脂肪貯蔵を、注意深く分離し、計量し、液体窒素で瞬間凍結し、使用まで−80℃で保存した。
【0083】
感染後20週間の期間にわたって、血糖コントロールを、空腹時グルコースおよび空腹時インスリン、ブドウ糖負荷試験を測定することによって、ならびに、自由に食餌を与えた状態でのグルコースレベルを測定することによっても、種々の方法において評価した。予想されたように、HFの食餌誘導性インスリン抵抗性により、mock感染マウスは、空腹時血清グルコースレベルおよび空腹時血清インスリンレベルの上昇を示したが、これらの上昇は、それぞれ、pi8週またはpi4週のAd36感染マウスにおいて有意に低減された(
図3C&Dおよび4A)。Ad36感染マウスはまた、pi12週で有意により速い、腹腔内ブドウ糖負荷試験(ipGTT)に応答した血糖クリアランスを示し(
図3E)、pi20週で有意により低い、自由に食餌を与えた場合の(free-fed)血清グルコースレベルを示した(
図3Fおよび
図4B)。実際、感染後20週で、Ad36感染マウス全ての自由に食餌を与えた場合の血清グルコースレベルは、mock感染マウスで測定されたものの、下方50パーセンタイル(lower 50th percentile)内であった(
図4B)(χ試験P=0.01)。この実験において、Ad2について使用された用量はAd36に比べて5倍高かったにも関わらず、Ad2感染マウスは、mock感染対照マウスに比べて血糖異常の有意な改善をなおも示さなかった。従って、Ad36感染は、空腹条件および食餌を与えた条件の両方での糖尿病性マウスの血糖上昇応答を、同様に有意に改善する。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例2からのマウスを用いて行ったウェスタンブロット(WB)分析により、インビトロのデータ(76、12)と一致して、pi20週のmock感染マウスと比べて骨格筋、脂肪組織および肝臓中のRasおよびホスホ(phospho)−Aktのアバンダンス(abundance)がより多いことによって示されるように、Ad36は、Ras−PI3K経路をアップレギュレートすることが明らかになった(
図5)。Ad36感染マウスについて、骨格筋および脂肪組織中のGlut4およびGlut1タンパク質のアバンダンスがより高いことにより、Ad36がこれらの組織中のグルコース取込みを増大させる機構が示唆され、肝臓中のGlut2アバンダンスおよびグルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)がより低いことにより、Ad36が、肝臓のグルコース放出を減少させることを示唆し(
図5C)、次いで、これは、より良好な血糖コントロールに寄与するかもしれない。予想されるように、HFの食餌を与えたマウスの肝臓切片は、標準的な食餌を与えたマウスよりも、少ないグリコーゲンおよびより多い脂質を示した(
図6A)。しかし、HFの食餌を与えたマウスの中で、Ad36感染マウスの肝臓は、mock感染マウスに比べて増加したグリコーゲンおよびより低下した脂質含有量によって示されるように、HFの食餌の病理学的効果からのより高度な保護を示した(
図6A〜C)(P<0.02)。Ad36によって媒介されるHFの食餌誘導性肝臓異常(liver pathology)に対する保護効果は、Ad36に感染された成人および思春期前の若者の両方において低い肝臓脂質蓄積を示す本出願人のヒトでのデータと一致する。従って、本明細書に示された所見は、Ad36が骨格筋および脂肪組織によるグルコース取込みを増大させ、肝臓によるグルコース放出を低減させ、それによって、動物における全身の血糖コントロールを有意に改善するというモデルを支持する。
【0086】
摂食量、体重、肝臓重量、脂肪パッド重量、ならびにグルコースレベルおよびインスリンレベルの違いを、スチューデントの「t」検定によって解析した。確率レベルをP<0.05に設定した。
【0087】
実施例4:
Ad36は脂肪組織の代謝プロフィールのマーカーを改善する
ウェスタンブロットを、上記するように、感染後20週の自由に食餌を与えた状態で屠殺されたHFの食餌を与えたマウスからの脂肪組織タンパク質を使用してs実施した(3匹マウス/群)。GAPDHを、ローディング(loading)対照として使用した。Ad36は、より多いAKTリン酸化、ならびにGlut4およびGlut1のより多いアバンダンスによって示されるように、PI3K経路および下流のグルコース取込みをアップレギュレートするようである。感染に応答して、Ad2群中の脂肪組織は、Mock群に比べてより多いマクロファージ浸潤を有したが(P<.05)、Ad36群では有さなかった。重要なことには、Ad36群は、重要なインスリン感作物質およびグルコース取込みの促進因子(53)および肝臓脂肪症の保護物質(54)(55)である、アディポネクチンの有意により多いアバンダンスを有した(
図4)。アディポネクチンは、より高い分子量(MW)形態、中程度の分子量形態およびより低い分子量形態で存在するが、より高いMW形態が、インスリン感受性と最も強く関連する(56、57)。Ad36は、HFの食餌を与えたマウスの脂肪組織中の全ての形態のアディポネクチンのレベルを有意に増大させた(
図7B)。Ad36によるアディポネクチンのアップレギュレーションは、Ad36で感染されたヒト脂肪組織の外植片中の有意により多いアディポネクチンのmRNAおよびタンパク質のアバンダンスを含め、一貫して観察された(12)。これらの変化は、包括的に、Ad36が、脂肪組織の代謝の質を改善することを示す。アディポネクチンの強い肝臓効果(54、55)を考慮すると、アディポネクチンは、Ad36の抗脂肪症効果の重要なメディエーターであると信じられる。
【0088】
実施例5:
Ad36は脂肪症を低減し、肝臓中の代謝プロフィールを改善する
HFの食餌を与えたマウスの肝臓切片は、標準的な食餌を与えたマウスより、少ないグリコーゲンおよびより多い脂質を示した(
図6A)。HFの食餌を与えたマウスの中で、Ad36感染マウスの肝臓は、Mock群に比べて増加したグリコーゲンおよび低下した脂質含有量によって示されるように、HFの食餌の有害な効果からのより高い保護を示した(
図6A)(p<.02)。Ad36群の肝臓中のより低いGlut2アバンダンスおよびグルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)(
図8)により、肝臓グルコース放出の減少が示唆され、これは、次いで、より良好な血糖コントロールに寄与するかもしれない。Ad36の肝臓は、脂肪症に対して肝臓を保護するためのアディポネクチンの公知の標的である、AMPKリン酸化がより多いことを示したが、Ad2群ではそうではなかった(54)。
【0089】
肝臓mRNA:食餌を与えたマウス(
図9)またはHFの食餌を与えた(
図10)マウスの肝臓からの選択された遺伝子の発現を試験した。これらの分子は、また、複数の経路において共通する役割を果たすが、本出願人は、脂質生成(lipogenesis)のモジュレーター(58)として、FAS(脂肪酸シンターゼ)、SREBP1c(ステロール応答エレメント結合タンパク質1c)およびFOXO1(フォークヘッドボックスO1)を考慮し、脂質酸化(59〜61)を示すために、CPT1(カルニチンパルミチルアシルトランスフェラーゼ)、LXR(肝臓Xレセプター)およびPPARαを考慮し、かつ脂質輸送(62〜66)を示すものとして、MTP(ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質)およびApoB(アポリポタンパク質B)を考慮した。炎症に関連する(coupled with)肝臓脂肪症は、NASHに進行するシグナルを出し得るので、炎症のマーカーを測定した。肝臓の遺伝子発現を、植え付け後12〜20週で測定した(表3)。かかる長い期間およびHFの食餌により幾分変化が隠されるが、食餌を与えたマウスおよびHFの食餌を与えたマウスからの遺伝子発現は、包括的に、Ad36が、脂質生成を低減させ、脂質酸化をアップレギュレートし、肝臓の炎症を低減させることを示唆した(表6)。
【0090】
【表6】
【0091】
実施例6:
体重損失なしに肝臓脂肪症を低減するためのAd36 E4orf1
別個の実験において、HepG2細胞またはマウス一次肝細胞を、E4orf1または空のpcDNAベクターでトランスフェクトした。HepG2細胞によるパルミテート酸化およびapoB分泌ならびに一次肝細胞による基礎量の(basal)グルコース産出およびグルカゴン刺激グルコース産出を、感染後48時間に測定した。
【0092】
ヌル(null)ベクタートランスフェクト細胞と比べて、E4orf1は、脂肪酸化を2倍に上昇させ(P<0.0001)、apoB分泌を1.5倍に上昇させ(P<0.003)、基礎量のグルコース産出およびグルカゴン刺激グルコース産出をそれぞれ、45%(P=0.0008)および22%(P<0.02)だけ減少させた。
【0093】
このインビトロの肝細胞のトランスフェクションは、E4orf1が、Ad36の肝臓代謝に対する効果を媒介することを示す。データは、肝細胞において、Ad36 E4orf1が肝臓の外部の脂肪酸化および脂肪の輸送を上昇させ、グルコース放出を低減させることを示す。
【0094】
実施例7
E4orf1はPPARγを誘導する
PPARγは、体が脂肪細胞を生成するプロセスである、脂肪生成(adipogenesis)の主なレギュレーターである。Ad36は、PPARγをアップレギュレートし、脂肪生成を誘導し、アディポネクチンを増加させ、血糖コントロールを改善する。この研究は、アディポネクチン発現が、PPARγ誘導または脂肪生成と独立で(uncoupled)あり得るかどうかを調査した。
【0095】
以下の細胞型を、ヒトアデノウイルスAd36、もしくはAd2で感染するか、またはmock感染した:a)インタクトのPPARγを有する3T3−L1マウス胚線維芽細胞(MEF);b)PPARγ発現が損なわれているNIH/3T3 MEF;およびc)PPARγノックアウトマウス由来のMEF(MEF−/−)。PPARγのダウンレギュレーションまたは非存在にも関わらず、Ad36は、mockまたはAd2感染細胞に比べて、細胞グルコース取込み、アディポネクチン、Glut4およびGlut1タンパク質アバンダンスを上昇させた。予想されるように、脂肪生成誘導は、3T3−L1中の脂質を増加させたが、NIH/3T3またはMEF−/−では増加しなかった。これは、Ad36が、PPARγの補充または脂肪生成の増強なしに、グルコース取込みおよびアディポネクチン分泌をアップレギュレートすることを示した。ヒトにおいて、Ad36抗体の存在によって測定されるように、天然のAd36感染は、高いアディポネクチンレベルを予測させ、これらの効果の治療的関連性を示唆する。これは、さらに、TZDの作用とは異なり、体脂肪を上昇させることなしにE4orf1によってグルコース取込みを改善することが可能であるという本出願人の提案を強化する。
【0096】
実施例8
E4orf1タンパク質はグルコース処理(disposal)を増強する
ドキシサイクリンに応答してE4orf1を誘導的に発現する安定な3T3−L1細胞株(3T3−E4)を、細胞シグナル伝達を研究し、かつAd36が3T3−L1前駆脂肪細胞(preadipocyte)においてグルコース取込みをアップレギュレートするためにE4orf1を必要とするかどうかを試験するために、開発した。mock感染細胞と比較して、Ad36は、基礎量のグルコース取込みを3倍だけ増加させるが、これは、E4orf1がsiRNAを用いてノックダウンされた場合失われた。これは、Ad36が、E4orf1を介してグルコース取込みを増強させることを示す。ヌルベクターを有する細胞と比較して、3T3−E4細胞は、誘導依存性様式で、グルコース取込みを増加した。E4orf1は、Ad36に誘導されるグルコース取込みの必須分子であるRasのアバンダンスおよび活性化を上昇させた。特に、E4orf1は、H−rasアイソフォームを活性化する。従って、E4orf1は、Ad36の抗高血糖効果を、単一のタンパク質にしぼる。
【0097】
実施例9
E4orf1は脂肪細胞および肝細胞中のグルコース処理を調節する
別個の実験において、3T3−L1前駆脂肪細胞または脂肪細胞、C2C12筋芽細胞またはHepG2肝細胞を、E4orf1を発現するV−5タグ化プラスミド(pcDNA−V5−AD36−E4orf1)またはヌルベクター(pcDNA−V5−DEST)でトランスフェクトした。
【0098】
脂肪組織および骨格筋によるグルコース取込みならびに肝臓によるグルコース産出が全身血糖コントロールに寄与することを考慮しつつ、これらの組織を代表する細胞株による基礎量のグルコース処理およびインスリン刺激グルコース処理に対するAd36 E4orf1の効果を測定した。E4orf1を発現するプラスミドでトランスフェクトされた3T3−L1前駆脂肪細胞または脂肪細胞、C2C12筋芽細胞またはHepG2肝細胞中のグルコース処理を、ヌルベクターでトランスフェクトされた細胞と比較した。
【0099】
E4orf1発現は、3T3−L1前駆脂肪細胞、脂肪細胞およびC2C12筋芽細胞中の基礎量の2DG取込みを上昇させた(
図11A〜C)。脂肪細胞において、E4orf1は、さらに、インスリン刺激2DG取込みを上昇させた(p=0.003)。完全にインスリン応答性ではない前駆脂肪細胞および筋芽細胞において、E4orf1は、インスリン刺激2DG取込みを増強しなかった。
【0100】
グルコース取込み、グルカゴン合成、糖新生等の肝臓の複数の代謝機能は全身血糖コントロールに寄与するが、肝臓グルコース産出は、しばしば、インスリン抵抗性のために調節されず、2型糖尿病における高い血糖の主な寄与因子であり得る。従って、肝細胞によるグルコース放出に対するE4orf1の効果を測定することに焦点が当てられた。E4orf1トランスフェクションは、基礎的(basal)条件下およびインスリン刺激条件下で、HepG2細胞によるグルコース産出を有意に低減させた(それぞれ、P<0.000001および<0.001;
図5D)。
【0101】
この実験は、Ad36 E4orf1が、脂肪組織、骨格筋および肝臓によるグルコース処理に影響することを示す。
【0102】
参考文献