特許第5965409号(P5965409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965409創傷滲出液を評価するための統合システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965409
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】創傷滲出液を評価するための統合システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20160721BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A61M27/00
   G01N33/483 C
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-543318(P2013-543318)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-509875(P2014-509875A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】US2011063781
(87)【国際公開番号】WO2012078781
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/421,003
(32)【優先日】2010年12月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509146126
【氏名又は名称】コンバテック・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONVATEC TECHNOLOGIES INC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】ランディ・トス
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/141820(WO,A1)
【文献】 特表2009−525776(JP,A)
【文献】 特表2010−510837(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/040273(WO,A1)
【文献】 特開2005−293241(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0177051(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0173253(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0073151(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/044151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61B 5/00
G01N 33/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の創傷からの創傷滲出液を評価するためのシステムであって、
流れ妨害要素を有する創傷排液管路を備えた創傷治療装置と、
前記創傷滲出液の1つまたは複数の生理的パラメータのうちの1つまたは複数の値を検出する少なくとも2つの検出手段であって、前記創傷排液管路と一体化され、前記1つまたは複数の値には前記少なくとも2つの検出手段の間で検出された信号変化が含まれる前記検出手段と
前記創傷滲出液の評価を得るために前記1つまたは複数の生理的パラメータの値を分析するための分析手段であって、前記1つまたは複数の値を1つまたは複数のベクトルに変換し、該1つまたは複数のベクトルをベクトルマップと比較する前記分析手段と、
前記評価に基づいて治療指針を提供する提供手段と、を有し、
前記創傷治療装置は、前記検出手段、前記分析手段および前記提供手段が一体化されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記創傷治療装置は、陰圧創傷治療装置である
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療指針を用いて前記陰圧創傷治療装置を制御する制御手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記創傷治療装置は、被覆材または包帯を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記被覆材または包帯は、前記システムと統合されるように変更されている
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記被覆材または包帯の中の統合手段は、電気配線を備える
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記提供手段は、前記システムから遠隔配置された外部装置に前記治療指針を送信することができる
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つまたは複数の生理的パラメータの前記値は、輝度値を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つまたは複数の生理的パラメータの前記値は、階調値を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出手段、前記分析手段および前記提供手段は、前記創傷滲出液から隔離して配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
患者の創傷からの創傷滲出液を評価するためのシステムであって、
流れ妨害要素を有する創傷排液管路を備えた創傷治療装置と、
前記創傷滲出液の1つまたは複数の生理的パラメータのうちの1つまたは複数の値を検
出または感知する少なくとも2つのセンサまたは検出器であって、前記創傷排液管路と一体化され、前記1つまたは複数の値には前記少なくとも2つのセンサまたは検出器の間で検出された信号変化が含まれる前記センサまたは検出器と
前記創傷滲出液の評価を取得し、該評価に基づいて治療指針を提供するように、前記1つまたは複数の値を1つまたは複数のベクトルに変換し、該1つまたは複数のベクトルを分析するためのプロセッサと、を備え、
前記創傷治療装置は、前記センサまたは検出器、および、前記プロセッサが一体化されている
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2010年12月8日に出願された米国仮特許出願第61/421003号明細書の出願日の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
陰圧創傷治療(NPWT)工程を自律的に監視して評価し、使用中に患者に禁忌が生じた場合にNPWT治療を中断する機構を提供する必要がある。また、NPWT装置の、例えば安全性、機能性およびインテリジェント、リアルタイムフィードバックなどの所定の特徴を改良することがさらに必要とされている。
【0003】
創傷の状態を評価するための現在の治療プロトコルは、医療提供者による定性分析を伴う。多くの場合、医療提供者は、見た目、匂いまたは滲出液の全体的な外観により創傷の状態を評価する。しかしながら、多くの場合、医療提供者は、創傷を規則通りにまたは定量的に評価していない。このような評価は、例えば、一日ごとまたは週一回の間隔でしか行われないことがある。この治療プロトコルの欠点は、評価が古い滲出液のものであることである。創傷での最初の状態と比較すると、これらの滲出液の生理的パラメータは、時間とともに変化することがある。色、細菌、酸素、および温度はすべて時間とともに変化するので、滲出液を収集後の一度の評価では、創傷状態を正確または確実に予測できるものではない。また、滲出液の流量は、創傷評価に有用なツールとなり得る。先の評価手法は、創傷滲出液の流量を監視するための実行可能な解決策を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施態様によれば、患者の創傷からの創傷滲出液を評価するためのシステムは、創傷治療装置と、創傷滲出液の1つまたは複数の生理的パラメータの1つまたは複数の値を検出する検出手段と、創傷滲出液の評価を得るように1つまたは複数の生理的パラメータの値を分析する分析手段と、評価に基づいて治療指針を提供するための提供手段と、を備えてもよく、その中に創傷治療装置、検出手段、分析手段および提供手段は一体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の一実施形態による創傷滲出液システムの構成要素を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態によるNPWT装置内に組み込まれた創傷滲出液システムの一実施形態を示す。
図3】本発明の一実施形態による創傷評価工程のフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態による創傷滲出液システムの断面図を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による複数の光源および複数の検出器を備える創傷滲出液システムの一実施形態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による流れの途絶要素を備える創傷滲出液システムを示す図である。
図7】本発明の一実施形態によるバイオマーカコーティングを備えた流入機構を備える創傷滲出液システムを示す図である。
図8】本発明の一実施形態による曲がりくねった経路で構成された創傷排液チューブを示す。
図9】本発明の一実施形態による創傷排液管路を挟み込むための創傷滲出液システムの実施形態を示す。
図10】本発明の一実施形態による創傷排液管路を挟み込むための創傷滲出液システムの実施形態を示す。
図11】本発明の一実施形態による創傷排液管路を締め付ける込むための複数のアクチュエータを有する創傷滲出液システムを示す図である。
図12】本発明の一実施形態による創傷排液管路の両側に沿って配置された複数の挟み込み機構を有する創傷滲出液システムの別の実施形態を示す図である。
図13】本発明の一実施形態による安定状態にあるスプリング式ラッチを備える創傷滲出液システムの別の実施形態を示す。
図14】本発明の一実施形態による解放状態にあるスプリング式ラッチを備える創傷滲出液システムの別の実施形態を示す。
図15】本発明の一実施形態による非印加状態にある抵抗発熱ブレーク素子が設けられた創傷滲出液システムを示す。
図16】本発明の一実施形態による印加状態にある抵抗発熱ブレーク素子が設けられた創傷滲出液システムを示す。
図17】本発明の一実施形態によるその上に圧力センサが配置された薄膜を備える創傷滲出液システムの実施形態を示す。
図18】本発明の一実施形態による熱質量センサを備える創傷滲出液システムを示す図である。
図19】本発明の一実施形態による収集チャンバ内に構成された創傷滲出液システムを示す図である。
図20】本発明の一実施形態による異なるスペクトル強度を示すグラフである。
図21】本発明の一実施形態による創傷滲出液のスペクトル分析のための工程のフローチャートである。
図22】本発明の一実施形態による創傷滲出液のスペクトル分析の際に測定された所定範囲の波長を表す具体的な2次元ベクトルマップである。
図23】本発明の一実施形態による図22のマップの測定のスペクトルグラフである。
図24】本発明の一実施形態による創傷滲出液のスペクトル分析の際に測定された所定範囲の波長を表す具体的な3次元ベクトルマップである。
図25】本発明の一実施形態による補助収集チャンバ内に配置された創傷滲出液システムの別の実施形態を示す図である。
図26】本発明の一実施形態による創傷滲出液の測定の流量測定を実現するための具体的な工程を示すフローチャートである。
図27】本発明の一実施形態による流量測定を示す2次元グラフである。
図28】本発明の一実施形態による読取および評価のループ処理の手順を示すフローチャートである。
図29】本発明の一実施形態による創傷滲出液の測定を実現するための工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
創傷滲出液を監視し、評価するためのシステム、装置および方法が本明細書に開示されている。このシステムおよび装置(「創傷滲出液システム」または「システム」)は、創傷部位からの創傷滲出液の便利な評価を可能にし、統合インライン診断ソリューションと同様に、リアルタイム定量および予測機能を提供することができる。また、このシステムは、創傷治療装置に統合されていてもよい。
【0007】
また、生理的データを収集し、滲出液流量および他の特性値の傾向に基づいて創傷療法の結果を予測するシステムおよび方法も開示されている。
【0008】
図1は、本発明による創傷滲出液システム1の一実施形態のブロック図である。この実施形態では、センサまたは検出器11は創傷の状態を表すデータを検出して読み出すことができる。この創傷データは、有線または無線手段17を介して1つまたは複数のプロセッサ15に電気的に転送することができる。プロセッサは、とりわけ、創傷データに基づいて創傷状態や他の治療法を予測することができる。
【0009】
また、データはメモリ16に記憶することができる。プロセッサ15からの情報は、健康や創傷の状態についてユーザに通知または警告するために、当該技術分野で公知の手段によって出力デバイス19に送信することができる。
【0010】
図2は、創傷滲出液システム18の一実施形態を示す。本発明の一実施態様によれば、システム18は、通常、患者5の創傷3(および創傷滲出液)と流体連通している。システム18と創傷3の間の流体連通は、当該技術分野で公知の任意の手段、例えば、創傷治療装置9の一部である創傷排液管7であってもよい。
【0011】
創傷滲出液システム18は、温度、pH、色、粘度および色調を含むがこれらに限定されない様々なパラメータを検出するために使用できる1つまたは複数のセンサまたは検出器11を備えてもよい。これらのパラメータは、現在の創傷状態の有用な指標であり、実行可能な治療の選択肢を提供するために、本発明の実施態様にしたがって使用してもよい。
【0012】
創傷滲出液システムは、1つまたは複数の光源13を任意に用いてもよい。光源13は、それらのプログラムされた機能に応じて、様々な波長の光を放出してもよい。光の波長は、創傷滲出液を介して放出されてもよく、滲出液自体の特性に応じて変更されてもよい。
【0013】
そのとき、波長はセンサまたは検出器11によって検出してもよい。センサまたは検出器11により検出された波長は、分析される創傷滲出液の様々な状態を表すことができる。センサまたは検出器11は、創傷滲出液システム18内で一体の1つまたは複数のプロセッサ15に、検出された波長を表す情報を電子回路17によって送信してもよい。
【0014】
1つまたは複数のプロセッサ15は、検出された波長データを受信し、プログラムされた工程によって様々な分析を行うように構成されてもよい。プロセッサ15は、センサ11から波長データを受信し、適切な工程でこのようなデータを使用してもよい。工程の決定は、創傷の健康状態または治療、並びに所定の治療計画のどのようなタイプの診断または分類であってもよい。過去のデータ、工程、およびベクトルマップを含むがこれらに限定されない様々な情報をメモリ16に記憶してもよい。
【0015】
工程の決定は、無線で、または有線手段を介して通信してオンボードまたは外部ディスプレイ19に表示されてもよい。図2に示すように、滲出液システム18は、創傷治療装置9の中に直接的に組み込まれてもよい。この構成では、プロセッサ15は、創傷治療装置の中に組み込まれてもよく、センサ、検出器および回路は、能動治療装置の一部である創傷排液路、または包帯または被覆材と一体であってもよい。
【0016】
システム18は、滲出液中の血液の存在を検出するだけでなく、例えば流速/流量、色、バクテリアトレース(bacterial traces)、温度、pHなどの創傷滲出液に関連する他の生理値を監視し、評価してもよい。
【0017】
図3は、具体的な創傷滲出液システム工程500を示すフローチャートである。図3のブロックは、適切に組み合わせ、省略、追加または順序変更することができる創傷滲出液システムの様々な機能を表すものである。
【0018】
ブロックS501で、センサは創傷滲出液の1つまたは複数のパラメータを検出および/または測定する。ブロックS501で得られた測定データは、ブロックS503内の1つまたは複数のプロセッサに送受信される。それからプロセッサは、ブロックS505で受信されたデータを分析する。分析の結果に基づいて、ブロックS507では、センサによる測定に関して決定がなされる。それらの決定は、診断や治療の指針を含むことができ、その後、ブロックS509においてアラームまたは警告により出力され、またはブロックS510において出力表示される。
一体構造
【0019】
本明細書に開示され、添付図面に示された創傷滲出液システムは、様々な構造的特徴を持っていてもよい。システムは、既存の創傷治療装置に取り付けるために別に構成されてもよく、またはこれらの装置の一つに直接的に組み込まれてもよい。また、システムの構成は、スペクトル分析用の光の光源、並びに、これらの光源によって放出された光を検出するためのセンサまたは検出器を備えてもよい。創傷滲出液を介して放出された後の特定の波長の光の検出は、滲出液の所定のパラメータの値を示すことができる。また、システムは、温度や圧力などの非スペクトルパラメータを測定するためのセンサを備えてもよい。
【0020】
図4は、既存の創傷排液管路に組み入れられた創傷滲出液システム28の一実施形態を示す。システムは、滲出液の中に所定の波長の光を発光する光源29を備える。また、システムは、創傷滲出液を通過した後の光の発光波長を検出および/または感知する検出器30を備える。検出された波長の振幅は、滲出液のスペクトル属性を表し、創傷状態を示すことができる。
【0021】
また、図4で示されている実施形態は、創傷排液管路32の外側に配置された光学バリア31を示す。光学バリア31は、環境光が創傷滲出液に到達しないようにするのに便利である。それは光源29によって放射されたもの以外の光によって引き起こされる可能性のあるアーチファクトを回避するために、これは検出精度を向上させる。通信手段25を介して結果を送信してもよい。
【0022】
図5は、本発明の別の実施形態を示しており、ここではシステムは、狭帯域光源33と広帯域光源34を含むマルチバンド光源を備えてもよい。複数のマルチバンド検出器35は、システム内に配置してもよい。マルチバンド光源および検出器は、光の様々な波長、したがって滲出液の様々な属性を検出するのに有用であってもよい。検出器35は、望ましくない周囲の光を除去し、より詳細なスペクトル情報を取得するように構成してもよい。
【0023】
病院での使用に適しているであろう別の実施形態では、滲出液システムは、中央吸引システムに取り付けることができる。この場合、滲出液システムは、有害事象の場合に警告して創傷部位からの流れを停止するように、既存の中央吸引システムと関連付けて並行して運転してもよい。この場合、滲出液システムは、有害事象の場合に創傷排液管路をクランプしてもよい。このような実施形態では、病院において既存のNPWT装置に代わる安全かつ低コストの代替手段を提供してもよい。この機構は、検出されない出血によって生じる不注意による出血性ショックを防止するのに有益である。この場合、中央吸引ユニットは、本明細書に記載されているような一体化された創傷システムで予め設定されてもよい。
【0024】
図6は、1つまたは複数の検出器40、42と光源44と組み合わせた流れ妨害要素41を備える創傷滲出液システムの別の実施形態を示している。本実施形態の構成は、流れ妨害要素のたわみに基づくより正確な検出を提供してもよい。
【0025】
一実施形態では、滲出液システムは、滲出液が通過可能な流路を備えてもよい。この場合、流路は、図6に見られるように、滲出液の経路に位置する遮蔽部41を備えてもよい。滲出液は、遮蔽部を通過すると、流れに乱れが生じる。乱れの中および周囲の流れの挙動は、例えば粘度、濃度および/または固形物の組成物などの流れのパラメータを測定するのに有用である。また、流れの乱れは、滲出液をより良く混合するのに使用でき、測定精度を向上させるのに有用である。検出器40、42の間の任意の信号変化は、流れ破壊要素に関連付けてもよい。また、粘度は、おおよその滲出液の含水量、ならびに大きな分子の存在を決定するのに使用できる。
【0026】
また、創傷滲出液システムは、図8に見られるように、曲がりくねった通路60に構成された排液路で構成されてもよい。この構成は、感覚領域59から周辺光を排除するように機能してもよい。
【0027】
本発明の別の実施形態では、滲出液の評価システムは、滲出液収集キャニスタに取り付けてもよい。また、それは、図8、19、25に見られるように、分析中の流体が評価する前に事前に収集された滲出液と混合しないように、流路内に構造体および成形されたチューブを有してもよい。
【0028】
さらに別の実施形態では、滲出液システムは、図19に見られるように、チャンバまたはトラップ98を有してもよく、漏出液の物理的状態に関するより正確な測定値を得るのを助けるように、この中に流体97が溜まったり、流れたりしてもよい。例えば流量などの測定は、溜められた流体、流れている流体、またはその両方をセンサ101によって行ってもよい。本実施形態では、滲出液の熱質量を測定するのに特に有用である。
【0029】
また、滲出液システムは、図19で見られるように、創傷部位を離れた滲出液によって満たされる区画98を備えてもよい。この実施形態において、区画98は、分析のために滲出液を分離する、または、創傷部位から徐々に除去される流体の速度を評価するために創傷部位から除去される滲出液を定期的に計量するのに適していてもよい。区画は、流量が規定のレベルに達したときに空にするための自動手段を備えてもよい。あるいは、区画は、流体97が規定のレベルに達したときに区画98を空にするために、例えばバルブ99などの能動システムを有してもよい。流体は流入管96を通して区画98に入り、排出管103を介して区画98から出てもよい。
【0030】
この実施形態では、滲出液システムは、創傷排液管を介した流れを方向付ける、および/または妨げるための1つまたは複数のバルブ99を備えてもよい。さらに別の実施形態では、滲出液システムは、流体ラインを通る流れを完全に止めることなく、試料用流体を出してもよい。図19に示すように、分離された流体は、流体ライン内で分析して、さらに下流で再混合してもよい。別の設計は、分析用試料を採取するためのサンプリングポートを備えてもよい。
【0031】
別の実施形態では、滲出液システムは、キャニスタの内面または外面に沿って結合されてもよく、またはキャニスタと嵌合するように配置されてもよい。本実施形態では、システムは、使用中に蓄積された滲出液の種々の生理的パラメータの値を検出するように構成されてもよい。この場合、滲出液がキャニスタに蓄積しながら、システムは、滲出液の重量、高さ、インピーダンスなどを監視して検出してもよい。このような情報は、出血の開始などの有害事象が発生したか否かを判定するのに有用なことがある。また、それは、創傷部位から滲出液を除去する全ての速度を決定するために、キャニスタを変更する予測計画を提供するために、または、多量に液が滲み出る状態から表面的に液が滲み出る状態への創傷の進行を評価するためにも、有用なことがある。
【0032】
創傷部位から流れる滲出液の速度の変化は、創傷状態の変化を示すことがある。別の例では、創傷滲出液の組成の変化は、創傷状態の臨床的に関連する変化を示すことがある。また、このような滲出液の除去速度の変化は、ある治療法から別の治療法に最も好ましく変更する方法を決定する際に有用なことがある。ある例では、高度に液が滲み出る創傷から表面的に滲み出る創傷の一つへの相対的な変化を監視するのに役に立つことがある。高度に液が滲み出る創傷から表面的に滲み出る創傷への移行は、患者がより高価な治療からより安価な治療に移してもよい時期に関する有用な情報を提供してもよい。高価な療法の例は、NPWTあり、一方で安価な療法の例は、湿潤創傷被覆材または包帯である。
【0033】
滲出液システムは、創傷滲出液の上記特性値を測定するのに適したセンサまたは一連のセンサを備えてもよい。
【0034】
滲出液システムは、接触に基づく滲出液の測定を可能にするための1つまたは複数の使い捨て可能なセンサを備えてもよい。このようなセンサ素子は、滲出液の1つまたは複数のパラメータの値を監視するように配置された音響、光音響、光電気化学的および/またはインピーダンス分光素子を備えてもよい。
【0035】
単数または複数のセンサは、被覆材の外膜を介してまたは創傷排液管の壁を介して情報を収集するように配置されてもよい。センサは、温度センサ、光センサ、インピーダンスセンサ、電気化学センサ(例えば、電流測定センサ)、容量センサなどであってもよい。
【0036】
滲出液システムは、創傷部位から除去される流体の量または速度を測定するための当技術分野で知られているどのようなタイプの流量センサを備えてもよい。流量センサは、接触または非接触タイプのものであってもよい。非接触式流量センサの場合、センサはレベルセンサ、ロードセル、流量事象タイマ、液滴カウンタ、速度計などであってもよい。接触式流量センサの場合、センサはロードセル、圧力ヘッドモニタ(例えば、圧力計など)、歪みゲージ、タービン、熱質量センサ、圧力損失モニタ、トウライン(tow line)または類似のものであってもよい。
【0037】
創傷滲出液任意の生理的パラメータは、本発明の実施形態を用いて評価してもよい。関心のある特定のパラメータは、創傷滲出液の流量、容積率、pH、温度、ヘモグロビン濃度、色および色調を含んでもよい。
【0038】
一実施形態では、滲出液システムは、例えば図19、25に示すように、収集チャンバが充填される速度を測定することにより、滲出液の流量を評価することができる。一実施形態では、滲出液システムは、図19に見られるように、垂直軸に対する測定チャンバの姿勢を監視する流れの速度と加速度を測定するための測定チャンバを有するロードセルの組合せを備えてもよい。センサからの合成信号は、滲出液システムの姿勢に依存しない創傷部位からの滲出液の正確な流速を測定するのに使用してもよい。
【0039】
さらに別の実施形態では、滲出液システムは、図19に見られるように、滲出液の物理的状態に関するより正確な測定値を得るのを支援するように、流体97がその中に溜まる、または流れ込むチャンバまたはトラップ98を有してもよい。プールされた流体が流れる流体、またはその両方の流速などの測定がセンサ101によって行われてもよい。本実施形態は、滲出液の熱質量を測定するのに特に有用なことがある。
【0040】
滲出液システムは、図19に見られるように、創傷部位から出る滲出液によって満たされる区画98を備えてもよい。この実施形態では、区画98は、分析用の滲出液を単離するのに、または時間をかけて創傷部位から除去される流体の速度を評価するために創傷部位から除去される滲出液を周期的に計量するのに適している。区画は、流量が所定のレベルに達した際に空にするための自動手段を備えてもよい。あるいは、区画は、流体97が設定したレベルに達した際に区画98を空にするために、バルブ99などの能動システムを有してもよい。流体は、流入管96を通して区画98に入れ、排出管103を介して区画98から出してもよい。
【0041】
この実施形態では、滲出液システムは、創傷排液管を通る流れを方向付けおよび/または遮断する1つまたは複数のバルブ99を備えてもよい。さらに別の実施形態では、滲出液システムは、流体ラインを通る流れを完全には遮断せずに、試料用流体を引き込んでもよい。図19に示されているように、分離された流体は、ライン内で分析され、さらに下流で再混合することができる。別の設計は、分析用試料を採取するためのサンプリングポートを備えてもよい。
【0042】
表1は、さまざまな流速とその可能性のある臨床的適応を示す。これらの流速を定量化して、本明細書に説明する他の生理的パラメータでそれらを一緒に評価することによって、創傷の健康状態の正確な予測を得ることができる。
【0043】
【表1】
【0044】
当該技術の一実施例では、収集キャニスタは、図25の実施例によって示される概念を使用して流量計測を実証するように作られていた。図25は、補助的な収集チャンバ内に配置された創傷滲出液システムとの歪みゲージを示す本発明の別の実施形態である。このような測定は、歪ゲージ236、静電容量レベルゲージ244、光ゲージ素子242、および電気ゲージ素子240に限らない1つまたは複数のセンサによって行われてもよい。重量またはレベルを測定するための標準的なタイプのゲージは、当該分野で周知である。例えば歪みゲージは、簡単な電気回路に基づいており、そこでは、重量の変化に起因する機械的応力によって素子の電気抵抗が印加重量に比例して変化する。静電容量式ゲージは、2点間の静電容量の差を読み取る。当該技術では、チャンバ内の流体235(例えば、創傷液)のレベルは、空気のレベルに応じた異なる静電容量値を有するため、容器内の流体のレベルを測定することができる。あるいは、光ゲージが2つの地点間の距離(例えば、キャニスタと流体の上部は、流体のレベルの変化を示すことができる)を測定するために光を使用してもよい。
【0045】
この特定の例におけるシステム220は、大きなリザーバ232と流体連通している小さなリザーバ230と、小さなリザーバ230に流れ込む流入口234とを有していた。小さなリザーバ230は、弾性支持部238で大きいリザーバ232に取り付けられた。ロードセル236をベースにした歪ゲージが、使用時に支持体238の撓みを測定するために可撓性支持体に貼り付けられた。試験期間中、測定下で流体に近いものとして生理食塩水が使用された。また、システム220は、電気的なゲージ要素240、光学ゲージ要素242、容量レベルゲージ244を備えた。特にこの例は、様々なセンサタイプを個々に、または必要に応じて組み合わせて流速を測定するのに使用してもよいことを示した。
【0046】
この例では、少量の流体が入口を介して供給され、センサ応答はコンピュータ(PC)で記録された。流体の注入中、リザーバは、センサの読み取りを妨害しようとするカオス外乱を受ける状態であった。このような流入は、動きやすい使用状態で装置によって経験される動きの典型であろう。応答データは、有限インパルス応答と無限インパルス応答フィルタを用いてフィルタに通された。該フィルタは、動きアーチファクトを除去し、流入から使用可能な信号を回復するために使用された。
【0047】
一般に、システムに読み込まれた応答データ信号は、小さな容器の重量に関連していた。同様に、これは容器への流速の時間積分に関連している。したがって、流速は、容器重量信号から抽出することができた。
【0048】
あまりにも満杯になったときに容器を空にしてリセットするために、小さな容器と大きな容器の間にバルブ246が使用されていた。検討中の流体に関する粘度関連情報を測定するために、この空にする工程の流動力学を用いてもよい。
【0049】
図26は、図19および図25の流量測定に関連する工程260を示す。工程260は、(1)ブロックS251において流量の読み取り、(2)ブロックS252(1)において動きアーチファクトの除去、(3)ブロックS253において当技術分野で公知の方法、特に本明細書に開示されている方法に基づく流量の算出を含む。算出された流量が許容範囲内にある場合、測定を継続する。流量が許容範囲を超える場合、ブロックS254においてアラームまたは警告が発せられる。また、工程260で算出された流量は、図27に見られるようなグラフにマッピングしてもよい。工程260と同様に、流速マップに従って様々な値を示すスペクトルマップは、感染症の発症および/または出血、すなわち262を示すことができる。
【0050】
本明細書に記載された方法、または当業者に公知の方法によって測定できる滲出液の流速は、創傷の健康状態の信頼できる予測因子である。本発明の特定の実施形態では、流速値および流速値の変化は、様々な手段を使って検出してもよく、ある治療法を他に変更する最適な方法を決定する際に有用なことがある。一例として、多量に液が滲み出る創傷から表面的に液が滲み出る創傷への相対的な変化を監視するのに役に立つことがある。多量に液が滲み出る創傷から表面的に液が滲み出る創傷への移行は、患者をより高価な治療からより安価な治療に移すことができる時期について有用な情報を提供できる。高価な治療の例は、NPWTあり、低コスト療法の例は、湿潤創創傷被覆材または包帯ある。一例として、創傷部位から流出する滲出液の速度の変化は、創傷状態の変化を示すことがある。別の例として、創傷滲出液の組成の変化は、創傷状態の臨床的に意義のある変化を示すことがある。
【0051】
別の実施形態では、装置内の使い捨て要素またはチューブ内の使い捨て電極の色評価が可能である。また、滲出液のカラープロファイルをpHにマッピングすることも可能である。いくつかの蛍光ナノ粒子システムは、pHに基づいて色を変えることができる。また、共役ポリマは、同じことを行うために使用してもよい(酸化還元電位は、局所環境のpHに基づいて変化する)。
【0052】
さらに、局所的なpH変化に応答し、滲出液と接触する色変化素子と、色変化素子の色応答の測定によってpH変化を分析することができる再使用可能な読み取り要素を備えてもよい。
【0053】
温度は、感染を監視するだけでなく、出血事象を評価するのに有用である。コア血(core blood)は、一般に真皮における間質液よりも暖かい。一般に、温度を測定するための使い捨ての金属製素子を用いた実施形態および再使用可能なプローブを備えた実施形態が想定される。
【0054】
本発明の一実施態様では、近赤外分光法/可視分光が創傷滲出液中に存在するヘモグロビンの酸素値を検出するのに使用できる。酸素の存在は、ヘモグロビンの存在、したがって、血液の存在を示すことができる。本発明の実施態様では、これは表示器を動作させ、本明細書に記載された締め付け機構のひとつで、さらなる出血を防ぐために創傷排液管をクランプしてもよい。さらに他の実施形態では、この事象は、適切な治療の指針を医療提供者に提供してもよい。
【0055】
色調および/または明度が滲出液の色を表現するために使用される。色調および/または明度の変化は、創傷の生理的状態の変化とその治療段階を示すことができる。また、広帯域の吸光スペクトルを評価するための定量化システムが滲出液の色および色調を評価するのに有用なことがある。
【0056】
一実施形態において、創傷システムは、測定に使用される非常に狭い波長を出す1つまたは複数のレーザダイオードを備えてもよい。この場合、スペクトルマップおよび/またはベクトルは、複数のレーザダイオードおよび/または1つまたは複数の走査型レーザダイオードと組み合わせて単一の検出器を用いて生成してもよい。走査型レーザダイオードは、駆動電子回路によって生成される駆動信号の変調を介して変調された波長を生成してもよい。このような変調は、周囲光の干渉、運動などによるアーチファクトの簡易な除去に役立つ。
【0057】
定量でリアルタイムのスペクトル検出および評価のための方法は、安定したパルスまたは変調された近赤外分光法または、機能的な近赤外分光法であってもよい。それは多波長分光法などを使用してもよい。ある事例では、滲出液システムは、白色光源と組み合わせた色分析システムを備えてもよい。色分析システムは、光スペクトルのセグメントへ別個に応答するので、1つまたは複数のバンドパスフィルタと組み合わせた1つまたは複数のフォトダイオードを備えてもよい。各バンドからの1つまたは複数の出力が生成され、各出力はベクトルのスペクトル成分を提供する。出力ベクトルは、滲出液状態にマッピングすることができ、それによって滲出液の状態を決定するのに有用なベクトルマップを作成することによって、図22図24に見られるように、創傷の生理的状態に関して提示する。
【0058】
図20は、吸光マップまたは様々な吸光波長を分析するための色調マップの一例である。図20に示されるように、代表的な例だけで、2次元マップは、青色104、黄色105、赤色106、およびNIR107の波長に従って光源スペクトル108の吸光を示している。この特定の例は、示された色の広帯域検出を示している。しかし、別の実施形態では、単一の広帯域検出器を使用してもよい。吸光マップに見られる特定の値を創傷状態の特定の評価に変えてもよい。ほんの一例として、プロセッサによって実行される工程は、特定の色調が所定レベルに到達した場合にアラームを通知したり、排液管路を締め付けたりするように符号化されてもよい。
【0059】
図21は、創傷滲出液の色や色調の特徴を評価するために行われる様々な工程のフローチャートを示す。初期ブロックS110は、様々なスペクトル成分を取得することができる。次に、創傷滲出液からのスペクトル測定値の精度を高めるために、任意の周囲光をブロックS112で除去することができる。ブロックS112が一旦完了すると、ブロックS110から取得された測定値から色調ベクトルがブロックS114で算出される。色調ベクトルは、当技術分野で公知の任意の手段によって算出されてもよい。しかし、好ましい実施形態では、ベクトルは次式を用いて計算してもよい。
【0060】
【数1】
【0061】
式1は、センサスペクトル(各部分は、座標Xiで示される)の一部を第n次ベクトル空間に投影する線形重み付け方程式である。スペクトルの各部分は、スカラである重み付けパラメータAi(この例でのみであって、より一般的には、重み付けパラメータは、ベクトル空間内により良く反応の地図を描き、媒介変数を調整し、ならびに周囲条件などの変更を調整する方程式などである可能性がある。)によって重み付けされる。
【0062】
式で計算された関係は、本明細書に開示されるように、個々のセンサからの読取値、波長および/またはスペクトル帯域をn次元の図形にマッピングするのに使用してもよい。この工程は、診断情報がより容易に入力信号の集合体から抽出できるように、基本的に定量化空間に入力応答のマップを作成するために行われる。そのため、例えば、このn次元空間にマッピングされた三角形の領域は、様々な病気の状態または既存の治療のための禁忌などと統計的に有意な関係を有することがある。患者データがマップ上に位置する場所を相互に関連付けて履歴データおよび傾向データを調べることによって、この技術は治療の決定に関して意思決定を支援してもよい。
【0063】
そして、これらの色調ベクトルは、標準または許容可能な色調値を含む色調マップブロックS116と比較される。任意の潜在的な問題を評価するブロックS118では、ブロックS114から色調ベクトルがブロックS116で受け取った値と比較される。ブロックS116からこれらの値のいずれかが許容範囲を下回るまたは超えると、ブロックS120で所定のアクションが実行される。プログラムされた動作は、本明細書に記載のラッチ機構の1つを作動させてから警報音を発することを含んでもよい。
【0064】
特に、明度と色調は、創傷における感染、出血または増加した浮腫が増加、緊急の注意を必要とする全ての状態を示すことができる。本発明の特定の実施形態は、患者または医療提供者に有益な治療指針を提供するために、色調や明度の所定の値で検出された色調および明度の値を比較して分析してもよい(図22図23および図24を参照)。これらの様々なパラメータの値は、ベクトルマップに組み合わせてもよい。
【0065】
図22は、創傷滲出液から測定された、所定の明度201における色の範囲に基づく2次元ベクトルマップ200である。マップ200は、図23に示すように、スペクトルのグラフ206に沿ってデータ点を表す。ベクトルマップ200上の様々な位置は、創傷状態に関連する様々な事象の発生の可能性や事実を示してもよい。例えば、位置202に通常の滲出液の傾向を示す一方で、位置203、204はそれぞれ、出血が疑わしいことまたは出血の可能性が高いことを示してもよい。位置205は、実際の出血事象の有無を示してもよい。グラフ206は、所定期間にわたる3つの個別のスペクトルプロファイルの折れ線グラフを示す。
【0066】
図24は、3次元のベクトル・マップであり、図22に示された2次元マップと同様に、創傷滲出液から測定された色の範囲に基づいている。ベクトルに変換された創傷滲出液のスペクトル成分は、そのような2次元または3次元マップにマッピングしてもよい。カラーチャンネルの数、ひいては検出できる波長の数を増やすことによって、システムの感度および精度を向上させてもよい。ベクトルマップに沿った様々な位置はまた、2次元か3次元かによらず、創傷の健康状態の傾向を示すことができる。例えば、曲線220は初期傾向を示す一方、曲線222は感染へのわずかな進行を示してもよい。曲線224は実際の感染開始を示す一方、曲線226は所定の感染確率の様々な領域を示してもよい。
【0067】
ベクトルマップにおける例えば227、228などの与えられた点は、ある特定の創傷の状態を示すことができる。このような創傷状態は、規定された治療指針に対応することができる。これらの治療指針には、NPWTの設定の変更、または創傷排液管の閉鎖が含まれるが、これに限定されない。細菌や他の感染症が存在する場合は、患者への抗生物質の投与が必要になる場合がある。
【0068】
創傷滲出液の色のスペクトルの定性分析は、創傷の健康を評価するためのもう一つの貴重なツールとなり得る。表2は、様々な滲出液、それらの色、透明度および可能な臨床的適応を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
実際には、創傷に苦しむ患者のための診断と治療の選択肢を検討する際に、一般に、臨床医はデータが殺到することを望んでいない。滲出液評価システムは、創傷から検出された値を分析し、治療の選択肢についてのユーザの意思決定支援だけではなく、単なるデータ表示を提供することが望ましい。そのためには、本発明のシステムは、センサおよび/または検出器から得られたデータの値を分析することが可能であってもよい。一旦分析が行われると、システムは創傷の評価、ならびに治療指針を提供してもよい。
【0071】
本発明に係る方法および装置の実施形態は、リアルタイムで各種パラメータの値を検出し、図28図29に示すように、分析工程を実行してもよい。これらの分析工程は、創傷のはるかに正確かつ確実な評価を与えるリアルタイムの検出を提供するだけでなく、これらが評価するのは創傷の現在の状態であって、長期間にわたって収集キャニスタ内に留まっている滲出液ではないので、リアルタイムの治療の提案も行う。
【0072】
滲出液システムは、創傷状態条件または治療の選択肢を提供または出力する各種処理を実行する処理要素を備えてもよく、これは、滲出液の生理的パラメータを意味があるように読み取るためにセンサデータを調整して分析するために、例えばディスクリート回路、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGAまたは同種のもののマイクロ電子回路を含んでもよい。処理要素は、センサ、光源および処理要素がすべて同じ装置内に含まれるようにシステム内に一体的に配置されてもよい。別の実施形態では、処理要素は、システムの他の部分から離れて設置されてもよい。
【0073】
分析のために実行される工程は、以下の1つまたは複数のもの、すなわち、AODE(Averaged One-Dependence Estimators)、カルマンフィルタ、マルコフモデル、バックプロパゲーション人工ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、基底関数、サポートベクトルマシン、k近傍法、事例に基づく推論、決定木、ガウス過程回帰、情報ファジィネットワーク、回帰分析、自己組織化マップ、ロジスティック回帰、例えば自己回帰モデル、移動平均モデル、自己回帰統合移動平均モデルなどの時系列モデル、分類回帰木、多変量適応回帰スプラインに一般的に適応できて基づいてもよい。センサデータは、センサフュージョンアプローチを用いて複数の情報源から分析されてもよい。具体的な工程は、教師あり学習、教師なし学習、および/または強化学習アプローチを用いて発展させることができる。さらに、この装置は、搭載電子機器(センサ、超小型電子回路、通信素子)を駆動するために結合された電源などを備えてもよい。
【0074】
色調と明度の値が温度測定値、流速およびNIRの測定値と組み合わせて分析される場合、滲出液の実際の状態について包括的な説明をしてもよい。色調、明度、温度および流速を含む様々な生理的パラメータに上述の工程を適用することによって、臨床的に適切な一連の治療指針をシステムによって送達できるので、医療提供者または患者が多量のデータを解釈して主観的な判断を行う必要がなくなる。
【0075】
図28は、パラメータ測定値を取得して分析し、並びに警告および治療の選択肢を提示して表示するための典型的な工程のフローチャートである。
【0076】
また、図28の工程は、読み取りおよび評価ループと呼ばれる。システムは、消費電力を蓄えたり、低減したりするためにスリープ状態になることがある。システムは、所定の入力に応じて、ウェイクアップ状態S201の間に「ウェイクアップ」となることができる。この入力は、例えば動きやタイマの結果としての刺激であればどのようなタイプのものでもよい。いったん動作停止状態を解除すると、システムは、パラメータ測定値S203を取得する。ブロックS203の後、装置は直ちにブロックS222における停止状態に戻ってもよい。これが装置によって論理パスである場合、ブロックS203で得られた測定値はまた、メモリに格納されてもよい。
【0077】
ブロックS203で測定値を取得した後、システムがすぐに停止状態S222に戻らない場合、ブロックS205で装置は調整して洗浄されてもよい。この洗浄工程は、正確な測定値を取得し、余分なデータやアーチファクトを除去するのを補助する。ウェイクアップから第1のモードでは、装置は、既に説明したように、単にウェイクアップし、測定値を取得し、それを潜在的に格納した後、停止するループ内にあってもよい。停止の代わりに、リセットに、装置がブロック207から外乱監視にモードを切り替える必要がある場合、コンディショニング機能を有効にする必要があり、これはここでは207から生の信号を取得して分析のためにそれらを準備すること(例えば、センサタイプに応じたアナログ信号からデジタル信号への変換、または当該技術分野において知られている他の形式のデータ変換/信号調整)であってもよい。また、多くの信号は、「ノイズ」や209での処理前に除外する必要がある誤ったデータを持っている可能性があるので、信号をきれいにすることが必要なことがある。
【0078】
ブロックS205の後、ステップS203で得られた測定値は、ベクトルに変換され、対応する重みS209が割り当てられる。種々の測定値の重み付けは、当技術分野で知られるどのような要因に基づくものでもよい。ほんの代表的な一例として、例えば温度などの一つのパラメータがpHよりも大きな重みを与えられ、またはその逆でもよい。このような重み付けは、患者ごとに変更するか、同じ患者に適用してもよい。また、このような重み付けは、様々なパラメータ211の過去の重みに基づいて割り当ててもよい。ひとたび測定値がベクトル化と重み付けがされると、ブロックS213でプロセッサは、ベクトルマップにベクトル化と重み付けがされた値を比較する。この時点で、プロセッサは、データを分析し、ベクトルマップ上のベクトルの位置に基づいて、ブロックS217で、その値が安全領域内にあるか否かについて判定する。また、安全領域を構成するものは、プロセッサに関連付けられたメモリ内に予め設定して保存することができるパラメータである。測定値が安全領域内にあるが、危険な領域に向かっているように見えるとブロックS217(a)で判定された場合、それらの測定値の重みは、前記値により高い優先度を割り当てるようにブロックS217(b)で調整されてもよい。次に、調整された重みに基づいて、システムは、危険な領域に向かう傾向のユーザに警告するに値するか否かを判定するS217(c)。所定の値に基づく場合、プロセッサは、それが実際にユーザに警告するに値すると判定し、ブロックS217(d)で警告が発せられる。もしそうでなければ、システムは電力消費を最小限にするために停止状態222に戻る。
【0079】
ベクトル化と重み付けがされた測定値が安全領域内にない場合、ブロックS219でプロセッサは、危険な測定値が新規発生S219なのか否かを判定する。それが新規発生である場合、ブロックS220でこの発生の警戒重みを増加させる。ひとたび警戒重みが増加されると、プロセッサは停止状態S222に戻る。危険な測定値が新規発生でないと装置またはプロセッサが判定した場合、ブロックS219(b)で警戒重みが重大であるか否かについてブロックのプロセッサによって判定される。
【0080】
警戒重みが重大ではない場合、ブロックS220で警戒重みを単に増加させ、装置は停止状態S222に戻る。警戒重みが重大な場合、ブロックS219(c)でプロセッサは、値がベクトルマップのどの領域にあり、そのためどのようなタイプの状態が測定値によって示されているのかを判定する。ブロックS219(c)で検出された領域と事象のタイプに基づいて、ブロックS219(d)で行動が開始される。行動は、警告、アラーム、創傷排液管の締め付け、または他のタイプの事象または警告であってもよく、創傷を評価または治療する際にユーザを助ける。ブロックS219(d)で取られる行動が決定されると、ブロックS219(e)で判定されたように、装置および/またはプロセッサは、ブロックS219(f)で事象を記録し、停止状態S222に戻る。事象が解決されていない場合、ブロックS219(d)での動作を繰り返すか、維持する。
【0081】
読み取り評価ループにおけるブロックS203で、測定値が取得される。図29は、ブロックS203で実行される操作の詳細な論理図である。ひとたびプロセッサや装置が「ウェイクアップ」すると、センサの電源が投入されるS301。ひとたびセンサの電源が投入されると、パラメータ値を取得できるS303。図29に示されるように、例えば、創傷滲出液のスペクトル成分S303(a)、流量S303(b)、温度S303(c)、バイオマーカ検出S303(d)、粘度(e)などのパラメータが検出して測定される。これらのパラメータは図29に示されているが、これらは代表的な例示に過ぎず、本発明は創傷滲出液に認められるどのようなパラメータの測定に使用してもよい。そして、ブロックS305でこれらの値はデジタル信号に変換され、これは所要電力を低減するために低電力変換として実行されてもよい。ひとたび値がデジタル化されると、ブロックS309でプロセッサは、統計的異常値であるかもしれない値のチェックを行う。
【0082】
ブロックS309で、異常値分析の一環として、値が履歴データS309(a)に組み込まれるようにメモリに格納されてもよい。ブロックS311で試料が良品試料であると判断された場合、プロセッサは特定の現状に適合するように特定の校正S313を実行する。この調整が行われると、ブロックS315においてプロセッサは、ステップS207と同様に、調整と洗浄を行ってもよい。S311でプロセッサによって試料が良好な試料ではないと判定された場合、その事象はブロックS311(a)に記録される。悪い試料が先の履歴値によって検出された繰り返し発生する問題である場合、ブロック311(c)でエラーメッセージがユーザに表示される。問題のある試料が繰り返さない場合、プロセッサは、S311(d)の残りの部分に戻る。
【0083】
例えば、プロセッサが創傷状態および/または治療の情報を決定した後、そのデータは、ユーザまたは患者に提供または伝達されてもよい。上述のように、システムは、ユーザに値および治療指針を伝達または提供してもよい。さらに、システムは、必要な変更を達成するために陰圧創傷治療装置と直接通信できる。
【0084】
システムは、滲出液の異常状態の有無、量または状態を患者または医療提供者に警告するための手段を備える。この場合、患者または医療提供者に情報を伝達するために、1つまたは複数の照明、表示部、スピーカ、振動素子などを備えてもよい。
【0085】
さらに、創傷滲出液についての関連情報をNPWT装置に提供するように無線通信機能を備えてもよい。このような情報は、滲出液中の血液の有無、細菌の有無、滲出液の吸光スペクトルの変化、滲出液の流速の変化などを含んでもよい。
【0086】
創傷評価の結果は、グラフィカルユーザインターフェイス、モニタまたは他のタイプの表示部を介して表示してもよい。また、創傷評価の結果は、見られるように、表示器を用いて臨床医および/または患者に伝達してもよい。表示器は、特定の事象が検出されたときに臨床医または患者に警告するために、例えば警告灯などの可視表示器、または例えばブザーやアラームなどの可聴表示器、または例えば振動モータなどの触覚伝達装置であってもよい。
【0087】
滲出液システムは、セル方式ネットワーク、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)、広域ネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、キャンパス・エリア・ネットワーク(CAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、インターネット、イントラネットまたはニアミー・エリア・ネットワーク(NAN)のようなネットワークを介して通信するための手段を備えてもよい。
【0088】
滲出液システムは、ネットワーク内の1つのノードとして構成されてもよく、従って、リング型、メッシュスター型、完全接続型、ライン型、ツリー型またはバス型ネットワークトポロジで要素を提供してもよい。一実施形態では、滲出液システムは、関連する値を、メッシュ型またはスター型ネットワークトポロジにおける1つのノードとして伝達する。
【0089】
滲出液システムは、ローカルに配置された移動端末、無線ノード、無線モデム、電話アダプタなどを介してセルラーネットワークなどのローカル通信ネットワークと接続するための手段を備えてもよい。
【0090】
滲出液システムは、赤外線、ブルートゥース(Bluetooth)、UWB、Z−WAVE、ANT、またはジグビー(ZigBee)などの様々なプロトコルを用いるネットワークを介して関連情報を通信してもよい。好ましくは、関連情報は、ブルートゥースローエネルギ(Bluetooth low energy)、ANTまたはジグビー(ZigBee)のような低電力・プロトコルを介して送信される。
【0091】
滲出液システムは、システム、またはシステムが結合されている創傷装置が効率的に滲出液を評価するように配置されるとすぐに、搭載された超小型回路に電力が自動的に供給される統合電源スイッチを備えてもよい。別の実施形態では、システムは、スリープ状態からシステム自体または創傷装置を目覚めさせるために近接センサを備えてもよい。スリープ機能は、不使用期間中に電力を取っておくのに有用である。
【0092】
別の実施形態では、図7に示すように、システムは、蛍光バイオマーカを有する創傷被覆材を備えてもよい。バイオマーカ50は、種々の条件を検出するために用いてもよい。バイオマーカ50は、外部に配置された光センサ52によって評価されるので、滲出液の特性を評価するための非接触な方法を提供してもよい。光学センサ52は、バイオマーカ50を読み取って生理的パラメータの特定の値の有無または量を検出するために比色分析を使用してもよい。一実施形態では、創傷滲出液に光を放射するためにオプション光源56を使用してもよい。
【0093】
この特定の実施形態では、光学センサ52は、不透明または光学的に透明なチューブ54の外側表面上に配置してもよい。バイオマーカは、局所的なpH、局所的なインピーダンス、局所的な酸化還元電位、色に基づいて変化し、その全てが当技術分野で知られている特定の基準に基づいて蛍光を発してもよい。これらは滲出液と相互作用するため、特定の生体物質の有無を検出するのに有用である。滲出液システムは、光学的手段(色の変化、蛍光など)、または電気的手段(pH、酸化還元、インピーダンスなど)を介してバイオマーカを読み取り、検出または評価してもよい。
【0094】
さらに別の実施形態では、システムは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含むがこれらに限定されるものではない感染の有無を検出して、入院患者の入院治療が必要であることを自宅にいる患者に警告してもよい。これらの様々な感染症は、システム内に一体化されたバイオマーカを評価することによって、または温度を含むがこれに限定されるものではない他の生理的パラメータの値を評価することによって検出してもよい。
【0095】
好ましい一実施形態では、システムによって実行される各処理は、センサおよびセンサを支持する電子機器が滲出液と接触しないように非接触で行われてもよい。これは、二次汚染が回避されるので、システムの構成要素を再利用可能とし、使用毎に交換可能なセンサを使用するのにかかる費用を倹約する。
【0096】
非接触とは、本明細書では、分析中の流体と感知素子の間で直接接触しないこととして定義される。排液管路の薄膜が圧力、温度などを感知するのに使用されてもよい(図17参照)。図18は、圧力センサを備えている創傷滲出液システムの別の実施形態を示す。本実施形態では、創傷滲出液システムは、創傷排液管89に隣接する二つの部分を備えてもよい。これらの二つの部位は、システムの壁厚が薄くされたシステムと排液路の界面に91および92として、図17に示されている。システムと創傷排液管の間のまさに界面には、薄膜(図示せず)がその上に配置されている。薄膜は、圧力センサが位置91aと92aで排液路内の圧力を検出できるようにする。圧力P1が位置91aにおける圧力測定値に割り当てられ、第2の圧力P2が位置92aにおける圧力測定値として得られる。これら二つの圧力測定値の差は、例えば流速や粘度を決めるのに使用してもよい。上述の構成は、既存の創傷排液管路上に配置するための使い捨てシャント内で自己完結している、または創傷排液路線の一体部品として設計されていてもよい。
【0097】
図18は、図17に見られるものと同様の実施形態を示す。しかし、図18に示された実施形態は、各凹部93、94に配置されたマイクロヒート要素(microheating element)に関する熱質量を測定する。この実施形態は、創傷排液管路の壁に沿う流量を推定するのに有用である。
【0098】
滲出液システムは、締め付けるための手段、または他の方法で、異常(例えば、滲出液中の血液の存在など)が発生した場合に、創傷排液路を閉じるための手段を備えることができる。この場合、装置は、有害事象時に配管を圧迫するように配置することができるアクチュエータを備えてもよい。他の場合、アクチュエータは、通常動作時に強制的に退避され、有害事象時に解除され、このようにして創傷排液管路を締め付けて流体の流れを締め付けオフするように構成されてもよい。
【0099】
図9図16は、創傷からの流体の流れを制御したり、停止させたりするための様々な制御機構を示している。これらの制御機構は、所定の生理値を検出したときに滲出液の流量を制御する締め付け配管(pinch line)を備えてもよい。また、これらの締め付け機構は、本明細書ではラッチと呼んでも良い。さまざまなタイプのラッチをさまざまな機構によって動かすことができる。ある機構では、ラッチは、刺激に応答して形状を変化させる活性材料要素である。好適な活性材料は、形状記憶合金、電気活性ポリマ、圧電セラミックなどが挙げられる。
【0100】
この特定の実施形態では、活性材料ラッチ(active material latch)は、それが刺激によって外れるように設計されている。
【0101】
所定のパラメータ値に応答するNPWTシステムの一部として使用される場合、NPWT装置に障害(閉塞ライン障害)を強制するように、システムはその創傷排液管路を締め付けてもよい。この場合、システムは、有害事象の患者または医療提供者に警告するための独自の手段を有する必要はないが、この目標を達成するために既存のNPWT装置内にあるアラームを動作させてもよい。
【0102】
別の実施形態では、図15に見られるように、埋め込まれた抵抗加熱素子80、リード81および剥離可能固定部83を考慮して適切なラッチが設計されている。リードは、製造時に変形され、変形状態で剥離可能固定部83と結合される。また、リードは、取付点84に接合されており、該接合は切断されない。ラッチ装置は、リードが剥離可能固定部に保持されているときは、流体は隣接する流路を介して流れるが、リード87が解放されたときは、流体ライン85上の流路を介して流れる流体は妨げられるように設計されている。発熱体80の加熱時に、剥離可能な固定部83は、溶解、変形または気化することで、変形したリードが固定部83から離れることになる。この工程中、図16に示すように、リードは流体ライン85に橋渡しをして、流れを妨げて任意に閉塞アラームを作動させる。他の代替的なラッチの設計は、当業者には明らかであろう。
【0103】
創傷排液管は、例えば出血などの有害事象が発生した場合に、創傷排液管路を締め付けるための作動手段を提供することに加えて、吸引中に滲出液の層流を維持するように特定の形状を有してもよい。本実施形態の代表例は、図9および図10で見ることができる。本実施形態での機械要素は、ソレノイド式締め付け弁65から構成される。従来のソレノイド式装置と同様に、本実施形態の締め付け弁65は、コイル磁石66とコイルアクチュエータ磁石67を備えている。本実施形態では、締め付け弁は、閉じるか、または十分に創傷排液管69の内壁を狭くするように作動してもよい。
【0104】
この創傷排液の流路幅の変化は、乱流に対する層流を検出するのに役立ち、より良い分析や測定のために流れを制限できる。図9に示された実施形態は、例えば、図10に示されているような流れ妨害要素70など、本明細書に記載された他の実施形態のいずれかと組み合わせてもよい。流れ妨害要素が存在する場合、分析および検出は光源62と検出器63によって分析流領域64に沿って行ってもよい。
【0105】
図11に見られるように、締め付け作用を高めるために、複数のソレノイドアクチュエータ71を使用してもよい。図12は、複数の締め付けアクチュエータ73が創傷排液管路の両側に配置された別の実施形態を示す。図12に示されたアクチュエータ73は、例えば血液の存在などの要因に応答して駆動されてもよい。結局、アクチュエータ73は作動されて、さらに出血するのを防ぐために排液管路を締め付ける。アラームは詰まった流路を通知してもよい。
【0106】
図13は、スプリング式のリセット可能なラッチを含んだ本発明のさらに別の実施形態を示す。図14に示すように、作動時に、スプリング式ラッチは外れて、例えば出血などの望ましくない事を検出した際、機構に創傷排液管路79を締め付けさせる。図13に示すように、一旦作動されたスプリング式要素75はリセットして、ラッチ77は再固定してもよい。この特定の実施形態では、動作に必要な電子機器および電源を外部筐体に収納してもよい。
【0107】
従来の被覆材または包帯の場合、滲出液評価システムと容易に統合できるように被覆材成分を変更してもよい。この統合を有効にするために、被覆材は接触面として電気配線を有していてもよい。電気配線は、導電性インク(銀、塩化銀、炭素、ニッケルなど)を用いて印刷され、または当技術分野で知られているいくつかの利用可能なRFID技術によって形成され、滲出液評価システムと電気的に相互作用するために埋め込まれていてもよい。
【0108】
本明細書における本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示に過ぎないことを理解されたい。したがって、典型的な実施形態に種々の変更を加えることができること、ならびに添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の構成を考案できることを理解されたい。
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