(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965416
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】植物用照明装置、ならびに暗栽培室のための方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20160721BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20160721BHJP
F21V 9/16 20060101ALI20160721BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20160721BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20160721BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
H01L33/50
F21V9/16 100
F21S2/00 600
F21Y101:00
【請求項の数】31
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-558478(P2013-558478)
(86)(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公表番号】特表2014-510528(P2014-510528A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】FI2012050119
(87)【国際公開番号】WO2012123628
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】11158698.8
(32)【優先日】2011年3月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/468,856
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513224652
【氏名又は名称】ヴァロヤ,オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アイカラ,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】キヴィマキ,イルッカ
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−029098(JP,A)
【文献】
特開2010−233509(JP,A)
【文献】
米国特許第05012609(US,A)
【文献】
特開平05−115219(JP,A)
【文献】
特開2010−193824(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/078426(WO,A1)
【文献】
特開2011−040486(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/120900(WO,A1)
【文献】
特開2011−029380(JP,A)
【文献】
特開2003−079254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00−17/18
H01L 33/00
F21S 2/00,19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)600〜700nmの波長帯にピークを含み、少なくとも50nm以上の半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性と、
b)最大値50nmの半値全幅を有し、440〜500nmの範囲でピーク波長を示すように構成された第2のスペクトル特性と、
を有する少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットを備える、栽培用照明装置を収納する暗空洞または陰影空洞。
【請求項2】
a)600〜700nmの波長帯にピークを含み、少なくとも50nm以上の半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性と、
b)最大値50nmの半値全幅を有し、440〜500nmの範囲でピーク波長を示すように構成された、第2のスペクトル特性と、を有し、
c)500〜600nmの波長における放射の少なくとも一部または全てが、最小化および/または除去されるように、ならびに/あるいは400〜500nmの周波数帯の強度未満および600〜700nmの周波数帯の強度未満に減少するように構成された、
少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットを備える、暗空洞または陰影空洞内の栽培用照明装置。
【請求項3】
500〜600nmの波長における放射の少なくとも一部または全てが、最小化および/または除去されるように、ならびに/あるいは400〜500nmの周波数帯の強度未満および600〜700nmの周波数帯の強度未満に減少するように構成された、請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記LEDおよび/または量子ドットが、周波数帯500〜800nmの間で自由に調整可能なピークを有し、少なくとも30nmの半値全幅を示すように構成されたスペクトル特性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記LEDおよび/または量子ドットの前記第1、第2のスペクトル特性の発光強度が調整可能に構成され、第3のスペクトル特性の発光強度を任意で調整可能に構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
最大値50nmの半値全幅、および400〜500nmの範囲にピーク波長を有する少なくとも1つのスペクトル特性と、任意で、450nm〜800nmの範囲で自由に調整可能なピーク波長を有するように構成された第2および第3のスペクトル特性と、を有する第2のLEDおよび/または量子ドットを備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記照明装置のワット当たりのPPF値が0.35μmol s−1m−2以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
スペクトル放射特性、すなわち強度、ピーク波長、および半値全幅が量子ドットの粒径、数、および種類により制御される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
a)前記第1のLEDおよび/または量子ドットが、600〜700nmの周波数帯にピーク波長を有し、少なくとも50nmの少なくとも半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性を有し、
b)前記第1のLEDおよび/または量子ドットが、440〜500nmの波長帯にピークを有する第2のスペクトル特性を更に有し、
c)前記第1のLEDおよび/または量子ドットが、少なくとも30nmの半値全幅を示すように構成された、500nm〜800nmの範囲で自由に調整可能なピーク波長の第3のスペクトル特性を任意で有し、
d)前記第1、第2、および任意の第3のスペクトル特性の発光強度が任意の比率で調整可能である、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
最大値50nmの半値全幅、および400〜500nmの範囲にピーク波長を有する少なくとも1つのスペクトル特性と、任意で、450nm〜800nmの範囲で自由に調整可能なピーク波長を有する第2および第3のスペクトル特性と、を有する第2のLEDおよび/または量子ドットを備える、請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記照明装置が粒径の異なる複数の量子ドット(110、120、130、140、150、160)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項12】
発光スペクトルが緑黄色(500〜600nm)を除外するか、あるいはこれを極めて低い強度で提供し、遠赤色700〜800nmの周波数帯において高い強度のスペクトル特性を備えることを除いて、光合成有効放射(PAR)スペクトルと類似する総発光スペクトルを発生させるように、少なくとも1つのLEDおよび/または複数の量子ドット(110、120、130、140、150、160)の粒径分布が構成されることを特徴とする、請求項1、2、11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
少なくとも1つの前記量子ドットの粒径が、植物における特定の光形態形成的効果を伴って光子スペクトルにおけるプリセットされた相対強度を有する単一のまたは種々の周波数帯において量子ドットが光子を放出するように選択されることを特徴とする、請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
達成される光形態形成的変数は、様々な時点または収穫熟度における植物の重量、葉の数、根の質量、茎の高さ、化学成分(ビタミン、ミネラル、および/または栄養素の含有量および/または濃度)という生物学的パラメータのいずれかであることを特徴とする、請求項13に記載の照明装置。
【請求項15】
少なくとも1つの前記量子ドット(110、120、130、140、150、160)が、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、ヒ化インジウム、リン化インジウム、および/または硫セレン化カドミウムのいずれかの合金によって作製されることを特徴とする、請求項11に記載の照明装置。
【請求項16】
量子ドット(110、120、130、140、150、160)の粒径分布が、2nm〜200nmの範囲内で粒径の異なる量子ドットを含むことを特徴とする、請求項11に記載の照明装置。
【請求項17】
少なくとも1つの前記量子ドット(110、120、130、140、150、160)が、コロイド合成によって作製されることを特徴とする、請求項11に記載の照明装置。
【請求項18】
前記LEDおよび/または少なくとも1つの量子ドット(110,120、130、140、150、160)の粒径が、遠赤色700〜800nmの周波数帯において発光するように構成されることを特徴とする、請求項1、2、11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項19】
前記照明装置が、少なくとも1つの量子ドット(110、120、130、140、150、160)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の温室および/または栽培室用照明装置。
【請求項20】
発光ダイオード(LED)半導体チップと、
前記発光ダイオード(LED)半導体チップに直接近接して堆積させた、光波長アップコンバージョン量子ドットまたは蛍光体と、を備え、
2つの特性発光ピークを放射することが可能であり、500〜600nmの波長における放射の少なくとも一部または全てが、最小化および/または除去されるように、ならびに/あるいは400〜500nmの周波数帯の強度未満および600〜700nmの周波数帯の強度未満に減少するように構成される、暗空洞または陰影空洞内の栽培用光の発光部品。
【請求項21】
前記光波長アップコンバージョン量子ドットまたは蛍光体が、前記発光ダイオード(LED)半導体チップの表面上に直接堆積されるか、または他の光学材料から間隔を空けられる、請求項20に記載の発光部品。
【請求項22】
前記発光ダイオード(LED)半導体チップが、440〜500nmの範囲のピーク発光を有する、請求項20または21に記載の発光部品。
【請求項23】
波長アップコンバージョン量子ドットまたは蛍光体が、前記発光ダイオード(LED)半導体チップにより放射された発光エネルギーの一部を、600〜700nmの高波長へと変換するように構成される、請求項20〜22のいずれか1項に記載の発光部品。
【請求項24】
前記2つの特性発光ピークが、それぞれ440〜500nmおよび600〜700nmにおけるものである、請求項20〜23のいずれか1項に記載の発光部品。
【請求項25】
前記2つの特性発光ピークが、スペクトル特性であって、1つは少なくとも50nmの半値全幅であり、もう1つは最大50nmの半値全幅であり、両者は異なる波長帯におけるものである、特有のスペクトル特性を除去する、請求項20〜24のいずれか1項に記載の発光部品。
【請求項26】
請求項1または2に記載の発光装置の使用であって、環境光、または前記発光装置が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対する光の提供における、請求項1または2に記載の発光装置の使用。
【請求項27】
請求項20に記載の発光部品の使用であって、環境光下、または前記発光部品が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対する光の提供における、請求項20に記載の発光部品の使用。
【請求項28】
植物の生長を促進するための方法であって、少なくとも1つの請求項1または2に記載の発光装置が、環境光下、または前記発光装置が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対して光を放射する、方法。
【請求項29】
植物の生長を促進するための方法であって、少なくとも1つの請求項20に記載の発光部品が、環境光下、または前記発光部品が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対して光を放射する、方法。
【請求項30】
発光装置および/または発光部品が、蓋によって任意で閉じられうる陰影空洞に取り囲まれている、請求項1、18、19、20のいずれか1項に記載の発光装置および/または発光部品。
【請求項31】
600〜800nmの周波数における放射の全てまたは一部が、LEDおよび/または量子ドットチップ放射電力の全波長または部分波長アップコンバージョンを用いて、および/または別の電気的に作動する量子ドットによって作り出される、請求項1、18、19、20のいずれか1項に記載の発光装置および/または発光部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用の人工光を発生させるための改善された方法に関する。より具体的には、本発明は、温室環境における植物栽培に適した半導体発光手段を有する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に到達する放射のうち、光合成有効放射(PAR)は約50%のみである。PARは、電磁スペクトルの300nmから800nmの間の波長域を含むものと解釈される。光合成は、光周性、屈光性、および光形態形成と併せて、放射と植物間の相互作用に関する4つの代表的な作用である。次の式は、簡素化された光合成の化学反応式を示す。
6H
2O+6CO
2(+光子エネルギー)→C
6H
12O
6+6O
2
【0003】
クロロフィルa、クロロフィルb、およびベータカロテン、ならびに2つの相互変換可能な形態であるフィトクロム(PfrおよびPr)などの、最も一般的な光合成および光形態形成の光受容体の典型的な吸収スペクトルを、
図1Aに示す。
【0004】
光合成とは異なり、光形態形成反応は極端に低い光量で達成可能である。異なる種類の光合成および光形態形成の光受容体は、少なくとも3つの公知の光化学系、すなわち、光合成、フィトクロム、およびクリプトクロム、または青色/UV−A(紫外線A)に分類することが可能である。
【0005】
光合成の光化学系において、存在する色素はクロロフィルおよびカロテノイドである。クロロフィルは、植物の葉の葉肉細胞中にある葉緑体チラコイド内に位置する。これらの色素の活性は集光性と密接に関連するため、放射の量またはエネルギーは、最も重要な側面である。クロロフィルの2つの最も重要な吸収ピークは、それぞれ625〜675nm、425〜475nmである赤色領域および青色領域に位置する。加えて、近紫外領域(300〜400nm)および遠赤色領域(700〜800nm)において、他の局所的ピークも存在する。キサントフィルおよびカロテンのようなカロテノイドは、植物細胞の有色体の色素体である細胞小器官中に位置し、主に青色領域を吸収する。
【0006】
フィトクロムの光化学系は、フィトクロムの2つの相互変換可能な形態、すなわちPrとPfrを含み、これらはそれぞれ、660nmの赤色、および730nmの遠赤色において感度ピークを有する。フィトクロムが媒介する光形態形成反応は、通常、遠赤色(FR)に対する赤色(R)の比(R/FR)を通した光質の検出に関連する。フィトクロムの重要性は、これらが関与する葉の拡大、近隣の知覚(neighbour perception)、日陰回避性、茎生長、種子発芽、および開花誘導などの様々な生理学的反応によって評価可能である。通常、日陰回避反応は、R/FR比の検出を通したフィトクロムによって制御されるが、関連する適応的な形態学的反応においては、青色光およびPARのレベルも関与する。
【0007】
青色およびUV−A(紫外線A)感応性光受容体は、クリプトクロム光化学系において見られる。青色光吸収色素は、クリプトクロムおよびフォトトロピンの両方を含む。これらは、光の質、量、方向、および周期性の監視などのいくつかの異なるタスクに関与する。青色およびUV−A感応性光受容体のこの異なるグループが、内因性リズム、器官の配置、茎の生長および気孔の開放、発芽、葉の拡大、根の生長、ならびに屈光性などの重要な形態学的反応を媒介する。フォトトロピンは、集光性および光阻害を最適化するために、光合成器官および細胞小器官の色素含量および配置を調節する。連続的な遠赤色光の照射と同様に、青色光も、クリプトクロム光受容体の媒介により開花を促進する。さらに、青色光感応性光受容体(例えば、フラビンおよびカロテノイド)は、近紫外放射にも感応性があり、局所的な感度ピークを370nm付近に見出すことができる。
【0008】
クリプトクロムは、ただ全ての植物種に共通するというだけではない。クリプトクロムは、シロイヌナズナのような顕花植物における概日リズムの同調を含む、様々な光反応を媒介する。300nm未満の波長の放射は分子の化学結合およびDNA構造に対して非常に有害でありうるが、植物はこの領域の放射も吸収する。PAR領域内の放射の質は、UV放射の破壊的効果を減少させるために重要でありうる。これらの光受容体は最も研究されているものであり、それ故、光合成および生長の制御におけるこれらの役割も相応によく知られている。しかしながら、他の光受容体が存在し、それらの活動が植物の重要な生理学的反応の媒介において重要な役割を有しうることの証拠が存在する。さらに、受容体の特定のグループ間の相互作用および相互依存の性質はよく理解されていない。
【0009】
人工光を用いる温室栽培により、多くの植物を、自然の生息環境とは異なる地理学的位置において生長させることが可能である。Zukauskasらによる国際公開第2010/053341A1号により、発光ダイオード(LED)を、蛍光体変換と共に、植物の光形態形成的要求のいくつかを満たすために用いることが可能であることが知られている。蛍光体変換は、より長い波長の放射を吸収し再発光する蛍光体構成要素に隣接する短い波長で発光する、LEDのような光が存在できるように機能する。このようにして、植物に供給される光子が、例えば茎の高さのようないくつかの形態学的目的を達成するようなある方法で植物が生長することを可能とするように、照明装置の総発光スペクトルを調整することが可能である。この文書は、参考文献として本明細書に引用する。
【0010】
発光ダイオード(LED)は、日々注目度を増している。LEDに用いられる特有の新たな構造が量子ドットであり、これは、励起子が三次元空間全方位で閉じ込められている半導体である。蛍光体を除去するために量子ドットを用いることが国際公開第2009/048425号において示唆されており、ここでは量子ドットを備える多重量子井戸構造(MQW)について議論されている。この出願公開によれば、蛍光体を用いない窒化物ベースの赤色および白色LEDを作製するために、MQW構造を用いることが可能である。この文書もまた、参考文献として本明細書に引用する。
【0011】
先行技術は、多くの不利点を有する。先行技術の蛍光管、LED、および蛍光体の構成では、発光スペクトルの十分な高分解能の調整はできない。さらに、先行技術の蛍光管、LED、および蛍光体の構成は、植物のための主要な光源としては非常に貧弱であり、建物の地下室などのような暗所栽培用の空洞において低品質の収穫物を産出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術のMQWおよび量子ドット照明装置は、不都合な構造上の特徴(例えばリン)の代替に主に焦点を当てたものであり、園芸家への助けとは殆どならない。
【0013】
発展途上国における地球規模の飢餓に立ち向かうため、また、先進国世界における食料および植物生産の環境影響を減少させるために、より洗練された植物栽培技術がきわめて明確に必要とされている。
【0014】
検討される本発明は、従来よりも高い精度をもって植物の光形態形成的要求に対処する、量子閉じ込め半導体照明装置の効率的な実現に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様において、量子の閉じ込めは、量子ドット、すなわち三次元空間全方位での閉じ込めにより、または複数の量子ドットにより、実現される。いくつかの実施形態においては、本発明の実施のために、量子ドットの使用の他、量子細線(二次元空間閉じ込め)および量子井戸(一次元空間閉じ込め)を用いることが可能である。
【0016】
本発明の一態様によれば、量子ドット−発光ダイオードは、粒径の異なる量子ドットを特徴とする。量子ドットにおいて粒径は発光エネルギーと逆相関し、より小さな量子ドットはより高いエネルギーを放射する。本発明の一態様によれば、量子ドットの粒径分布は、本発明の量子ドット−発光ダイオードによって放射された人工光により栽培される植物にとって好適な光形態形成効果を伴う総発光スペクトルを生成するように選択される。
【0017】
本発明の目標の1つは、本分野における問題の少なくとも一部を排除すること、および、LEDおよび/または量子ドットを用いた植物の生長促進の新たな方法を提供することである。
【0018】
本発明の第1の目的は、光合成プロセスがよく反応する、LEDおよび/または量子ドット装置に基づく単一の発光源を提供することである。
【0019】
本発明の第2の目的は、LEDおよび/または量子ドット装置に最適化された光合成光量子束(PPF)に基づく温室栽培および/または暗栽培室栽培のための照明器具を提供することである。
【0020】
本発明の第3の目的は、300〜800nmの波長帯における2つの発光ピークであって、その発光ピークの少なくとも1つが少なくとも50nm以上の半値全幅(FWHM)を有する発光ピークを提供するLEDおよび/または量子ドット装置を実現することである。
【0021】
本発明の第4の目的は、一万時間の実施中、300〜500nmおよび600〜800nmという2つの発光周波数の発光強度比を20%未満に減少させる、LEDおよび/または量子ドットに基づく温室および/または暗室栽培照明装置を提供することである。
【0022】
本発明の第5の目的は、温室栽培または暗栽培室栽培において通常用いられる従来の高圧ナトリウムランプまたはLEDランプによって達成されるものよりも良いワット当たりPPF値(すなわち、使用した電力のワット数に対するPPF)をもたらし、それにより、温室栽培および/または栽培室栽培プロセスおよびそこで用いられる人工照明のためのエネルギー効率の良い光源を提供する技術的解決法を提供することである。
【0023】
本発明の第6の目的は、単一の発光源であって、300〜500nmの周波数における放射が前記半導体LEDまたは量子ドットチップによって作り出され、600〜800nmの周波数における放射が別のLEDまたは量子ドットチップを用いて作り出される、単一の発光源を提供することである。本発明者は、例えばキュウリおよびレタス植物は、遠赤色光(700〜800nm)を含む本発明の栽培用光を当てられた場合に、より大きな全長および/または質量に到達することを発見した。
【0024】
本発明の第7の目的は、単一の発光源であって、300〜500nmの周波数における放射が前記半導体LEDまたは量子ドットチップによって作り出され、600〜800nmの周波数における放射が、発光のための電流によって駆動されるか、または前記LEDまたは量子ドットの波長アップコンバータとして作動するかのいずれかである第2のLEDまたは量子ドットチップを用いて作り出される、単一の発光源を提供することである。600〜800nm放射を発生させるための波長アップコンバージョンは、第1の量子ドットまたはLED発光源に極めて近接する1または複数の波長アップコンバージョン量子ドットを用いることによって実現される。
【0025】
本出願において、「アップコンバージョン」は、入射する吸収光を、より長い波長の放射光へと変換することとして解釈される。
【0026】
本発明の第8の目的は、300〜500nmの放射範囲を有する半導体LEDおよび/または量子ドットチップの放射の、400〜500nm、600〜800nm、または両方の周波数帯の部分波長または全波長アップコンバージョンを提供することである。波長アップコンバージョンは、有機物質または無機物質のいずれか、または両物質の組み合わせによって実現される。
【0027】
本発明の第9の目的は、アップコンバージョンのためのナノサイズの粒子状物質を用いた波長アップコンバージョンを提供することである。
【0028】
本発明の第10の目的は、アップコンバージョンのための分子様材料を用いた波長アップコンバージョンを提供することである。
【0029】
本発明の第11の目的は、高分子材料を用いた波長アップコンバージョンであって、アップコンバージョン材料と、波長アップコンバージョンを提供するポリマーマトリクスとが共有結合する、波長アップコンバージョンを提供することである。
【0030】
本発明の第12の目的は、500〜600nmのスペクトル帯が抑制された、量子ドットに基づく照明装置を提示することである。この抑制されたスペクトル帯においては、殆ど放射が存在しないか、若しくは全く存在せず、またはいかなる場合にも、隣接するスペクトル帯400〜500nm、600〜700nmのいずれにおけるものよりも放射は少ない。本発明によれば、この抑制は、400〜500nmのスペクトル帯における一次電子放出を全く有さないか、または少量のみを有することによって、および、いかなるアップコンバージョンも、波長を600nm以上に転換する波長シフトを生じさせることを確実にすることによって、達成可能である。緑色光(500〜600nm)放射および隣接スペクトル帯の放射は、植物によって、光合成変換のために吸収されるのではなく、むしろ単に反射されてしまうため、緑色植物はこれらの放射を利用できないことが一般に知られている。
【0031】
本発明の第13の目的は、暗所でありうる、すなわち人工光源が唯一の光源でありうる栽培室において、所望の遠赤色光を提供することによって植物の同化作用による生長を最大化し、一方で、植物栽培の観点からすればエネルギーを無駄にする放射である緑色光を最小化する、LEDおよび/または量子ドットに基づく照明装置を提示することである。この目的は、本発明の一態様において、放射された青色光(300〜500nm)の一部を、遠赤色要素を有するが緑色要素(500〜600nm)を除去および/または最小化する、広範な赤色スペクトル要素(600〜800nm)へとアップコンバートする波長アップコンバージョン装置を有する青色LEDまたは量子ドット発光体によって達成される。
【0032】
本発明は、LEDおよび/または量子ドット、ならびにこれに関連する、温室栽培および栽培室栽培に適した照明装置を提供する。本発明によれば、このLEDおよび/または量子ドットは、特有の放射周波数パターン、すなわち少なくとも2つのスペクトル特性を有する。第1の発光ピークは少なくとも50nm以上の半値全幅を有し、600〜700nmの範囲でピーク波長を有し、第2のスペクトル特性は500nm未満の範囲でピーク波長を有する。この少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットの発光ピークは、植物の光合成反応スペクトルによく適合し、したがって、このスペクトルは高効率の人工光として特に適している。
【0033】
本発明の上述の利点のいくつかまたは全ては、植物が様々な時点または収穫熟度において有する重量、葉の数、根の質量、茎の高さ、化学成分(ビタミン、ミネラル、および/または栄養素の含有量および/または濃度など)などの生物学的パラメータのうちの任意のものでありうる、達成される前記光形態形成的変数のための放射スペクトルを最適化する量子ドットの粒径分布によって生じる。
【0034】
本発明による植物栽培のための照明装置は、粒径の異なる複数の量子ドットを備えることを特徴とする。
【0035】
本発明による植物栽培のための照明方法は、粒径の異なる複数の量子ドットにより光が作り出され、その光が少なくとも1つの植物を照らすことを特徴とする。
【0036】
本発明による温室および/または栽培室照明装置は、照明装置が少なくとも1つの量子ドットを備えることを特徴とする。
【0037】
本発明による栽培用照明装置は、少なくとも1つの量子ドットであって、
a)600〜700nmの波長帯にピークを含み、少なくとも50nm以上の半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性と、
b)最大値50nmの半値全幅を有し、440〜500nmの範囲でピーク波長を示すように構成された第2のスペクトル特性と、を有し、任意で、
c)600〜800nmの周波数における放射の全てまたは一部が、量子ドットチップ放射電力の全波長または部分波長アップコンバージョンを用いて、および/または別の電気的に作動する量子ドットによって作り出される、少なくとも1つの量子ドットを備える。
【0038】
本発明による栽培用照明装置は、少なくとも1つの量子ドットであって、
a)600〜700nmの波長帯にピークを有し、少なくとも50nm以上の半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性と、
b)最大値50nmの半値全幅を有し、440〜500nmの範囲でピーク波長を示すように構成された第2のスペクトル特性と、を有し、
c)500〜600nmの波長における放射の少なくとも一部または全てが、最小化および/または除去されるように、ならびに/あるいは400〜500nmの周波数帯の強度未満および600〜700nmの周波数帯の強度未満に減少するように構成された、少なくとも1つの量子ドットを備える。
【0039】
本発明による前5段落のいずれかに記載の照明装置の使用は、環境光下、または本照明装置が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対する光の提供におけるものである。同様に、本発明による前5段落の植物の生長を促進するための方法は、少なくとも1つの照明装置が、環境光下、または本照明装置が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対して光を放射する。
【0040】
本発明による栽培用光の発光部品は、
・発光量子ドット半導体チップと、
・この量子ドットチップに直接近接して堆積させた、光波長アップコンバージョン量子ドットと、を備え、
この発光部品は、2つの特徴的な発光ピークを放射することが可能であり、500〜600nmの波長における放射の少なくとも一部または全てが、最小化および/または除去されるように、ならびに/あるいは400〜500nmの強度未満、および600〜700nmの強度未満に減少するように構成される。
【0041】
本発明による前段落に記載の発光部品の使用は、環境光下、または本発光部品が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対する光の提供におけるものである。同様に、本発明による植物の生長を促進するための方法は、少なくとも1つの前段落に記載の発光部品が、環境光下、または本発光部品が唯一の光源となる暗空洞内に置かれた少なくとも1つの植物に対して光を放射する。
【0042】
本発明による暗空洞または陰影空洞内の栽培用発光装置は、少なくとも1つのLEDであって、
a)600〜700nmの波長帯にピークを含み、少なくとも50nm以上の半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性と、
b)最大値50nmの半値全幅を有し、440〜500nmの範囲でピーク波長を示すように構成された第2のスペクトル特性と、を有し、任意で、
c)600〜800nmの周波数における放射の全てまたは一部が、LEDチップ放射電力の全波長または部分波長アップコンバージョンを用いて作り出される、少なくとも1つのLEDを備える。
【0043】
本発明による暗空洞または陰影空洞内の栽培用発光装置は、少なくとも1つのLEDであって、
a)600〜700nmの波長帯にピークを含み、少なくとも50nm以上の半値全幅を示すように構成された第1のスペクトル特性と、
b)最大値50nmの半値全幅を有し、440〜500nmの範囲でピーク波長を示すように構成された第2のスペクトル特性と、を有し、
c)500〜600nmの波長における放射の少なくとも一部または全てが、最小化および/または除去されるように、ならびに/あるいは400〜500nmの周波数帯の強度未満および600〜700nmの周波数帯の強度未満に減少するように構成された、少なくとも1つのLEDを備える。
【発明の効果】
【0044】
量子ドットおよび/またはLEDに基づく本発明の実施は、発光スペクトルの非常に微細なスペクトル調整を可能とし、したがって、非常に良好なエネルギー効率、および人工光に頼った植物栽培における改善された光形態形成の制御を可能とする。量子ドットによりもたらされるスペクトル調整は従来のLEDよりも優れているため、この利点は量子ドットのみを用いる場合になおさら顕著である。さらに、本発明の照明装置により収穫物の品質は大幅に改善され、これが、暗栽培室または環境光が極めて制限された部屋内での栽培に関する多くの利点を提供する。第1に、植物が消費の現場により近いところ、例えば大都市の住宅地下室で生長しうることにより、輸送のコストを削減する。第2に、従来農耕が不可能であるような地理、例えば夏の高温砂漠条件において植物が生長しうる。第3に、植物の品質が改善されるにつれて、個々の植物間の一貫性も向上し、これが収穫を容易にする。これは、不合格となる個体が少なく、また、マシンビジョンに基づく収穫装置は、各個体が一貫した品質、大きさ、および色を有する場合、これらをより良いものであると認識可能なことによる。第4に、ほぼ全ての生長パラメータが制御下にあるため、制御された様式で植物の特性が変えられうるのであり、これは花や観賞植物の栽培において特に有利である。第5に、植物に対する毎日一定の光子の投与は、年間を通して養分の投与が維持されることが可能なため、養分の管理に役立つ。第6に、非常に高温で日当たりの良い地理において、日光を反射する暗い不透明な栽培室内で植物を生長させうる。本発明の人工照明において消費されるエネルギーは、日光の下での空気調節または植物の冷却において費やされるであろうエネルギーよりも大幅に少ない。
【0045】
暗空洞は、光子を放射する本発明の人工光源を除いて日光および/または環境光を全く有さないか、または低水準で有する、光が抑制された空間として解釈されるが、この暗空洞は、任意の大きさ、顕微鏡的小ささ、植木鉢の大きさ、10m
2の住宅/企業地下室、貨物船のコンテナ、フットボールフィールドの大きさ、例えばフットボール競技場の地下室、および/または1以上のフロアにおいて都市全体のために十分な野菜が育てられる20階建ての高層ビルでありうることに留意されたい。
【0046】
上述の利点を生じる実施形態に加えて、およびこれに関連して、本発明の最良の形態は、発光スペクトルが緑黄色(500〜600nm)を除去するか、または非常に低強度で提供し、暗栽培室において植物を照らす遠赤色700〜800nmの周波数帯において高強度のスペクトル特性を備えることを除けば光合成有効放射(PAR)スペクトルと類似する発光スペクトルを生成するLEDを有する照明装置であると考えられる。
【0047】
以下、添付の図面に従い、例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1A】緑色植物における最も一般的な光合成および光形態形成の光受容体の相対的吸収スペクトルを示す図である。
【
図1B】本発明の照明装置10の実施形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明による照明方法の実施形態20を示すフロー図である。
【
図3】本発明の照明装置の使用の実施形態30を示すブロック図である。
【
図4】本発明による第1の単一発光源LEDおよび/または量子ドット装置の発光ピークを有する実施形態40を示す図である。
【
図5】本発明による第2の単一発光源LEDおよび/または量子ドット装置の発光ピークを有する実施形態50を示す図である。
【
図6】本発明による第3の単一発光源LEDおよび/または量子ドット装置の発光ピークを有する実施形態60を示す図である。
【
図7】本発明による第4の単一発光源LEDおよび/または量子ドット装置の発光ピークを有する実施形態70を示す図である。
【
図8】本発明による、植物のバイオマスを最大化することが見出されたスペクトルを有する実施形態80を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
いくつかの実施形態は、従属請求項において説明される。
【0050】
図1Bは、粒径の異なる複数の量子ドット110、120、130、140、150、および160を備える照明装置100を示す。量子ドットの粒径分布は、2nm〜200nmの範囲内の様々な粒径の量子ドットを備える。すなわち、量子ドット110は典型的に200nmの直径を有し、量子ドット160はおよそ2nmの直径を有する。
【0051】
この照明装置は、典型的にはLED101も備えており、これは好適には青色、またはいくつかの他のより短い波長を有する。
【0052】
LED101が発光するとき、放射された光子の一部は量子ドット110、120、130、140、150、および160によって吸収される。光子が吸収されると、量子ドット110、120、130、140、150、および160内の電子は、より高いエネルギー状態へと励起される。これらの電子は、その後、高エネルギー状態と低エネルギー状態の差に等しいエネルギーの1または複数の光子を放出することにより、高エネルギー状態から低エネルギー状態へと緩和する。
【0053】
いくつかの実施形態において、通常の方法として、量子ドットの電子を励起するための電界を発生させるために、電力および電極(図示せず)が用いられる。電子は、低いエネルギー状態へと緩和する際、励起状態と緩和状態のエネルギー差によって決定される波長を有する光子を放出する。これらの放出光子が、照明装置100の発光スペクトルを生成する。
【0054】
いくつかの実施形態において、量子ドット150、160は250〜400nmのUV/青色光を伝達するように構成され、量子ドット140および130は400〜600nmの緑色光および/または黄色光を伝達するように構成され、量子ドット120は600〜700nmの赤色光を伝達するように構成され、量子ドット110は700〜800nmの周波数帯の遠赤色光を伝達するように構成される。
【0055】
いくつかの実施形態において、相対的放射強度および特定の粒径の量子ドット110、120、130、140、150、および160の数は、光合成有効放射(PAR)スペクトルと類似および/または同一の総発光スペクトルを生成するように変えられる。さらに、より好適には、この発光スペクトルは、緑黄色(500〜600nm)を除去するかまたは非常に低強度で提供し、暗栽培室において植物を照らす遠赤色700〜800nmの周波数帯において高強度のスペクトル特性を備える。
【0056】
いくつかの実施形態において、量子ドット110、120、130、140、150、および160の全てまたはいくつかは、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、ヒ化インジウム、リン化インジウム、および/または硫セレン化カドミウムのいずれかの合金から作製される。
【0057】
より詳細な実施形態において、LEDおよび/または少なくとも1つの量子ドット110、120、130、140、150、および/または160の粒径は、量子ドットが、植物における特定の光形態形成的効果を伴う光子スペクトル内の周波数帯における光子放出を発生させるように選択されることに留意されたい。この達成される光形態形成的変数は、様々な時点または収穫熟度における植物の重量、葉の数、根の質量、茎の高さ、化学成分(ビタミン、ミネラル、および/または栄養素の含有量および/または濃度など)という生物学的パラメータのいずれかでありうる。
【0058】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの量子ドット110、120、130、140、150、および/または160は、コロイド合成により作り出される。コロイド合成においては、伝統的な化学プロセスに類似して、溶液中に溶解した前駆体化合物からコロイド半導体ナノ結晶が合成される。典型的には、このコロイド量子ドットの合成は、前躯体、有機界面活性剤、および溶媒から成る三成分系に基づく。反応媒体は十分な高温まで熱され、前躯体がモノマーへと化学的に変換する。このモノマーが十分に高い過飽和レベルに到達すると、核生成過程と共にナノ結晶成長が開始する。いくつかの実施形態において、成長過程における温度は、ナノ結晶成長のための最適条件の決定における重要な因子の1つである。この温度は、典型的には、結晶成長を促進するのに十分な低さでありながら、合成過程において原子の再配列およびアニーリングを可能とするのに十分な高さである。いくつかの実施形態において、ナノ結晶成長の間に制御されるもう一つの重要な因子は、モノマーの濃度である。
【0059】
ナノ結晶の成長過程は、通常、「フォーカシング」および「デフォーカシング」と表現される2つの異なる状態の中で生じうる。高濃度のモノマーにおいて、臨界サイズ(ナノ結晶が成長も収縮もしない大きさ)は相対的に小さく、ほぼ全ての粒子を成長させる。この状態において、大きな結晶は、成長のために小さな結晶よりも多くの原子を必要とするため、小さな粒子は大きな粒子よりも早く成長し、これが、ほぼ単分散の粒子を生み出すための粒径分布における「フォーカシング」を与える。サイズフォーカシングは、典型的には、モノマーの濃度が維持されることにより、目下のナノ結晶の平均サイズが常に臨界サイズよりも僅かに大きい場合に最適である。成長中にモノマー濃度が激減した場合、臨界サイズは目下の平均サイズよりも大きくなり、オストワルド熟成の結果として分布が「デフォーカス」する。
【0060】
多くの異なる半導体を作製するためのコロイド法が複数存在する。本発明の典型的な量子ドットは、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、ヒ化インジウム、およびリン化インジウムなどの二元合金で作製される。しかしながら、いくつかの実施形態においては、量子ドットは硫セレン化カドミウムなどの三元合金で作製されうる。これらの量子ドットは、10〜50原子の直径を有する量子ドットの体積中に、僅か100から100,000までの原子を包含することができる。これは、およそ2〜10ナノメートルに相当する。
【0061】
コロイド合成の異なる方法により量子ドットの異なるポピュレーションを生成すること、および、その後、植物栽培のための所望の発光スペクトルを与える粒径分布を生みだすためにそのポピュレーションを組み合わせることは、本発明に合致する。
【0062】
本発明によれば、実施形態10は、従来のLEDと共に使用されることが可能であることに留意されたい。この実施形態10は、暗い栽培用空洞、または低水準の環境光を有する空洞内で少なくとも1つの植物のための照明光源として使用されることにも適している。
【0063】
さらに、実施形態10は、実施形態20、30、31、40、50、60、70、および/または80のうちの任意のものと容易に置き換えることおよび/または組み合わせることが可能であることにも留意されたい。
【0064】
図2は、例えば温室または栽培室環境における、本発明の量子ドットを用いる照明装置の実施を示す。ステップ200において、照明装置からの発光が少なくとも1つの植物へと向けられる。
【0065】
ステップ210において、照明装置および照明装置における少なくとも1つの量子ドットに電力が供給され、電界を発生させる。ステップ220において、この電界が、量子ドットにおける電子をより高いエネルギー状態へと励起する。
【0066】
ステップ230およびステップ240において、この電子は、より低いエネルギー状態へと緩和する際に、励起状態と緩和状態の間のエネルギー差によって決定される波長を有する光子を放出する。これらの放出された光子は、照明装置から伝達された発光スペクトルを生成する。本発明のLEDは、通常の方法で作動する。
【0067】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、LEDおよび/または様々な粒径の量子ドットから、250〜400nmの範囲のUV/青色光、400〜600nmの範囲の緑色および/または黄色光、600〜700nmの赤色光、および/または700〜800nmの周波数帯における遠赤色光が放射される。本発明のいくつかの実施形態において、典型的には、より大きな量子ドットはより長い波長の赤色光を放射し、より小さい量子ドットおよび/またはLEDはより短い波長の青色光を放射する。
【0068】
本発明によれば、実施形態20は、従来のLEDと共に使用されることが可能であることに留意されたい。この実施形態20は、暗い栽培用空洞、または低水準の環境光を有する空洞内で少なくとも1つの植物のための照明光源として使用されることにも適している。
【0069】
さらに、実施形態20は、実施形態10、30、31、40、50、60、70、および/または80のうちの任意のものと容易に置き換えることおよび/または組み合わせることが可能であることにも留意されたい。
【0070】
図3は、本発明の人工温室照明装置および方法の異なる使用構成の実施形態30、31を示す。一実施形態30において、植物311は、透明壁301を有する温室の床面上で栽培される。少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットを有する照明装置322は、これより放射される光子が、できるだけ多くの植物311に最大の光量子束で到達するような位置に配置される。いくつかの実施形態において、照明装置の発光スペクトル350は、壁301を通して伝えられる日光である自然光スペクトルを補完するように調整される。本発明によれば、いくつかの実施形態において、照明装置322は、温室の壁によってフィルタリングされるおよび/または減衰されるそれらの波長を伝達するように構成された量子ドットを備えうる。
【0071】
実施形態31においては、栽培される植物は、温室300内の栽培室360内に積み重ねられる。いくつかの実施形態においては、栽培室の各々が照明装置321を有する。植物が透明な栽培室内に積み重ねられる場合であっても、いくつかの光子は1以上の透明壁を通して伝播する必要があるため、実施形態30におけるものよりも日光の減少および/または減衰は大きい。したがって、量子ドットを有するこの照明装置321は、通常、上述の多数の伝播の自然光スペクトルを補完するか、または不透明な栽培室の場合、植物310に対する全ての光放射を提供する。いくつかの実施形態においては、各栽培室専用の照明装置と、1または複数の栽培室360内の1以上の植物310によって共有される少なくとも1つの照明装置320の両方が存在する。
【0072】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットは、伝播するスペクトル340と組み合わされた場合に光合成有効放射(PAR)スペクトルと類似する発光スペクトルを生成するように構成される。さらに、より好適には、この発光スペクトルは、緑黄色(500〜600nm)を除去するか、または非常に低強度で提供し、暗栽培室において植物を照らす遠赤色700〜800nmの周波数帯において高強度のスペクトル特性を備える。本発明によれば、このスペクトルは、暗栽培室において生長する植物のための唯一の光源として特に有効である。
【0073】
いくつかの実施形態において、この照明装置における少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットは、その周波数帯が植物に対する特定の光形態形成効果を有する光子スペクトルにおける周波数帯において発光するように選択される。この達成される光形態形成的変数は、様々な時点または収穫熟度における植物310、311の重量、葉の数、根の質量、茎の高さ、化学成分(ビタミン、ミネラル、および/または栄養素の含有量および/または濃度など)という生物学的パラメータのいずれかでありうる。
【0074】
本発明によれば、実施形態30は、従来のLEDと共に用いられることが可能であることに留意されたい。実施形態30、31は、任意のレベルの不透明性または透明性の栽培室360における実施にも適する。
【0075】
さらに、実施形態30および31は、互いに、および/または実施形態10、20、40、50、60、70、および/または80のうちの任意のものと、容易に置き換えるおよび/または組み合わせることが可能であることにも留意されたい。
【0076】
図4において、この半導体LEDおよび/または量子ドットチップの放射周波数は457nmの波長においてピークに達し、発光ピークの半値全幅(FWHM)は25nmである。この場合、波長アップコンバージョンは、2つのアップコンバージョン材料を用いて行われる。これら2つの波長アップコンバージョン材料は、660nmおよび604nmにおいて個別の発光ピークを有する。いくつかの実施形態において、これらの材料は量子ドットまたは他の材料であってよい。
図4は、発光ピークFWHMが101nmであり、651nmの波長においてピークに達する、これら2つの波長アップコンバージョン材料の組み合わされた発光ピークを示す。この場合、(ピーク強度から計算して)半導体LEDおよび/または量子ドットチップ放射の約40%が、個々の2つのアップコンバージョン材料によって651nm放射へとアップコンバートされる。
【0077】
いくつかの実施形態においては、アップコンバージョンは用いられず、電力によって駆動される少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットによって、より長い波長スペクトル特性が放射される。
【0078】
スペクトル40は、従来のLEDと共に用いられ、実施されることが可能であることに留意されたい。本発明によれば、スペクトル40は、少なくとも1つの量子ドットと少なくとも1つのLEDの組み合わせによって、または少なくとも1つの量子ドットのみによって、実施されることが可能である。スペクトル40は、暗い栽培用空洞、または低水準の環境光を有する空洞内で少なくとも1つの植物を照らすために用いられることに特に適する。
【0079】
さらに、実施形態40は、実施形態10、20、30、31、50、60、70、および/または80のうちのいずれかと容易に置き換えられるおよび/または組み合わされることが可能であることにも留意されたい。
【0080】
図5において、この半導体LEDおよび/または量子ドットチップ放射周波数は470nmの波長においてピークに達し、発光ピークの半値全幅(FWHM)は30nmである。この場合、波長アップコンバージョンは、2つのアップコンバージョン材料を用いて行われる。これら2つの波長アップコンバージョン材料は、660nmおよび604nmにおいて個別の発光ピークを有する。いくつかの実施形態において、これらの材料は量子ドットまたは他の材料であってよい。
図5は、発光ピークFWHMが105nmであり、660nmの波長においてピークに達する、これら2つの波長アップコンバージョン材料の組み合わされた発光ピークを示す。この場合、(ピーク強度から計算して)半導体LEDチップ放射の約60%が、個々の2つの「アップコンバージョン」材料によって660nm放射へとアップコンバートされる。
【0081】
いくつかの実施形態においては、アップコンバージョンは用いられず、電力によって駆動される少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットによって、より長い波長スペクトル特性が放射される。
【0082】
スペクトル50は、従来のLEDと共に用いられ、実施されることが可能であることに留意されたい。本発明によれば、スペクトル50は、少なくとも1つの量子ドットと少なくとも1つのLEDの組み合わせによって、または少なくとも1つの量子ドットのみによって、実施されることが可能である。スペクトル50は、暗い栽培用空洞、または低水準の環境光を有する空洞内で少なくとも1つの植物を照らすために用いられることに特に適する。
【0083】
さらに、実施形態50は、実施形態10、20、30、31、40、60、70、および/または80のうちのいずれかと容易に置き換えられるおよび/または組み合わされることが可能であることにも留意されたい。
【0084】
図6において、この半導体LEDおよび/または量子ドットチップ放射周波数は452nmの波長においてピークに達し、発光ピークの半値全幅(FWHM)は25nmである(
図6においては図示されていない)。この場合、波長アップコンバージョンは、1つのアップコンバージョン材料を用いて行われる。いくつかの実施形態において、この材料は量子ドットまたは他の材料であってよい。
図6は、発光ピークFWHMが80nmであり、658nmの波長においてピークに達する、このアップコンバージョン材料の発光ピークを示す。この場合、(ピーク強度から計算して)半導体LEDおよび/または量子ドットチップ放射の約100%が、アップコンバージョン材料によって、658nm放射へとアップコンバートされる。このことは、
図6においてLEDおよび/または量子ドット装置に452nm放射が存在しないことから理解されうる。
【0085】
いくつかの実施形態においては、アップコンバージョンは用いられず、電力によって駆動される少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットによって、より長い波長スペクトル特性が放射される。
【0086】
スペクトル60は、従来のLEDと共に用いられ、実施されることが可能であることに留意されたい。本発明によれば、スペクトル60は、少なくとも1つの量子ドットと少なくとも1つのLEDの組み合わせによって、または少なくとも1つの量子ドットのみによって、実施されることが可能である。スペクトル60は、暗い栽培用空洞、または低水準の環境光を有する空洞内で少なくとも1つの植物を照らすために用いられることに特に適する。
【0087】
さらに、実施形態60は、実施形態10、20、30、31、50、70、および/または80のうちのいずれかと容易に置き換えられるおよび/または組み合わされることが可能であることにも留意されたい。
【0088】
図7において、この半導体LEDおよび/または量子ドットチップ放射周波数は452nmの波長においてピークに達し、発光ピークの半値全幅(FWHM)は25nmである。この場合、波長アップコンバージョンは、1つのアップコンバージョン材料を用いて行われる。いくつかの実施形態において、この材料は量子ドットまたは他の材料であってよい。
図7は、発光ピークFWHMが78nmであり、602nmの波長においてピークに達する、このアップコンバージョン材料の発光ピークを示す。この場合、(ピーク強度から計算して)半導体LEDおよび/または量子ドットチップ放射の約95%が、波長アップコンバージョン材料によって、602nm放射へとアップコンバートされる。
【0089】
いくつかの実施形態においては、アップコンバージョンは用いられず、電力によって駆動される少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットによって、より長い波長スペクトル特性が放射される。
【0090】
スペクトル70は、従来のLEDと共に用いられ、実施されることが可能であることに留意されたい。本発明によれば、スペクトル70は、少なくとも1つの量子ドットと少なくとも1つのLEDの組み合わせによって、または少なくとも1つの量子ドットのみによって、実施されることが可能である。スペクトル70は、暗い栽培用空洞、または低水準の環境光を有する空洞内で少なくとも1つの植物を照らすために用いられることに特に適する。
【0091】
さらに、実施形態70は、実施形態10、20、30、31、40、50、60、および/または80のうちのいずれかと容易に置き換えられるおよび/または組み合わされることが可能であることにも留意されたい。
【0092】
図8は、植物におけるバイオマス生産を最大化する、最適化されたスペクトル80を示す。この最適化スペクトルは、好適には、本出願において説明される本発明の照明装置を用いて作り出される。スペクトル80は、栽培室が暗室であり、すなわち日光および/または環境光を全く有さないかまたは低水準で有する場合に、栽培室栽培における特別な利点を有する。本発明によれば、スペクトル80を生成する本発明の照明装置は、暗室内に配置されることが可能であり、バイオマス生産を最大化する。本発明者は、スペクトル80のバイオマスを最大化するという特性を実験的に発見した。
【0093】
さらに、実施形態80は、実施形態10、20、30、31、40、50、60、および/または70のうちのいずれかと容易に置き換えられるおよび/または組み合わされることが可能であることにも留意されたい。用いられるLEDおよび/または量子ドットの材料および粒径は、そのLEDおよび/または量子ドット装置による所望の発光スペクトルを得られるように選択される。
【0094】
要約すると、LED、量子ドットの種類および/または粒径分布を調整することにより、LEDおよび/または量子ドット装置による所望の発光スペクトルを調整することが可能となり、また、量子ドットおよび/またはLEDの数を調整することにより、発光装置のための所望のチップ発光量を調整することが可能となる。
【0095】
また、本発明は、600〜700nmの波長帯にピークを含むスペクトル特性を有する少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットを備える、植物の生長を促進するための照明装置にも関連する。
【0096】
この手法を用いることにより、光源は、既存の技術と比較して優れたPPF、ワット当たりPPF効率および性能、非常に低いエネルギー消費、ならびに非常に長い動作寿命に到達するように設計されることが可能であり、これらの利点はこの光源を暗栽培室において非常に有用なものとする。
【0097】
いくつかの実施形態において、300〜500nmの周波数における放射は半導体LEDチップにより作り出され、400〜800nmの周波数における放射はLEDチップ放射電力の全波長または部分波長アップコンバージョンを用いて作り出される。部分波長アップコンバージョンは、半導体LEDチップ放射の5〜95%の範囲、好適には35〜65%の範囲となるように選択されることが可能である。いくつかの実施形態において、400〜800nm放射を生み出すための波長アップコンバージョンは、LED発光源に近接する1または複数のアップコンバージョン材料を用いて達成される。
【0098】
本出願において、上述の「調整可能」なピーク波長は、工場における照明装置の組立ての間に調整されることが可能であるピーク波長として、および/または、その場におけるピーク波長調整のための照明装置における調整可能ダイヤルにおいて「調整可能」として解釈される。加えて、本装置の作製工程においてLEDおよび/または量子ドットのピーク波長を調整することもまた本発明に合致するものであり、「調整可能」は、LEDおよび/または量子ドットの作製工程においてなされる調整をも含むものとして解釈されるべきである。調整可能なピーク波長についての上述の全ての実施形態、または任意の他の調整可能な光源、LEDおよび/または量子ドット変数は、本特許出願の範囲に含まれる。
【0099】
本発明の特別な例示的一実施形態において、平均粒径が6.6nmであり、およそ±0.5nmの粒径分布を有するCdSe−ZnS(コアシェル)量子ドットナノ粒子を、二成分形シリコーン封入樹脂と混合させた。混合比は、シリコーン樹脂中のナノ粒子が0.2wt%であった。樹脂を含むナノ粒子は、プラスチックリード付チップキャリア(PLCC)空洞内のInGaN発光ダイオードからなるPLCC内への封入材として適用した。発光ダイオードは、450nmの波長帯においてエレクトロルミネセンス放射を有するように決定した。
【0100】
ナノ粒子を含む封入材物質を有する、InGaNを含むPLCCは、3.2Vの順方向電圧および350mAの順方向電流を有する直流電圧の電源に接続した。装置の発光スペクトルは、1つは450nmの波長帯におけるもの、もう1つは66nmの波長帯におけるものである2つの発光ピークを与えるように特徴付けた。660nmの波長帯における発光ピークの半値全幅は、およそ60nmを越えるものであることが観測された。450nmと660nmの強度比は、0.5:1であった。以上の実験は、出願人によって実施された。
【0101】
1つの照明装置において異なるピーク発光を有する少なくとも1つのLEDおよび/または量子ドットを含むこと、および、決定された生長結果または生理学的反応を得るための望ましいスペクトル放射を提供するためにこれらを制御することは、本発明に合致する。このようにして、本照明システムは、照度およびスペクトルの多用途の制御を可能としうる。究極的には、CO
2濃度、温度、採光特性、および湿度等の他の非生物パラメータの制御が、照明と共にこの制御システムに統合されうるものであり、農作物の生産性および温室の総括的管理を最適化しうる。
【0102】
ここまで、上述の実施形態を参照して本発明を説明し、いくつかの商業的および工業的利点を示した。本発明の方法および構成は、植物栽培において用いられる照明のための、発光スペクトルのより精密なスペクトル調整を可能とする。それ故、本発明は、植物の生長の光形態形成制御における予想外の改善、および、特に地下室のような暗栽培室における植物生産の更なる改善を実現する。また、本発明は、人工光に頼った植物栽培のエネルギー効率を大幅に改善する。さらに、本発明の照明装置により収穫物の品質は大幅に改善され、これが、暗栽培室または環境光が極めて制限された部屋内での栽培に関する多くの利点を与える。第1に、植物が消費の現場により近いところ、例えば大都市の住宅地下室で生長しうることにより、輸送のコストを削減する。第2に、従来農耕が不可能である地理、例えば夏の高温砂漠条件において植物が生長しうる。第3に、植物の品質が改善されるにつれて、個々の植物間の一貫性も向上し、これが収穫を容易にする。これは、不合格となる個体が少なく、また、マシンビジョンに基づく収穫装置は、各個体が一貫した品質、大きさ、および色を有する場合、これらをより良いものであると認識可能なことによる。第4に、ほぼ全ての生長パラメータが制御下にあるため、制御された様式で植物の特性が変えられうるのであり、これは花や観賞植物を栽培する場合に特に有利である。第5に、植物に対する毎日一定の光子の投与は養分の管理に役立ち、年間を通して養分の投与が維持されることが可能である。第6に、非常に高温で日当たりの良い地理において、日光を反射する暗い不透明な栽培室内で植物を生長させうる。本発明の人工照明において消費されるエネルギーは、日光の下での空気調節または植物の冷却において費やされるであろうエネルギーよりも大幅に少ない。
【0103】
ここまで、上述の実施形態を参照して本発明を説明した。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、後述の請求項を通した本発明の趣旨および範囲内の可能な全ての実施形態を含むものであることは明らかである。
【0104】
[参考文献]
国際公開第2010/053341A1号,”Phosphor conversion light−emitting diode for meeting photomorphogenetic needs of plants”,Zukauskas et al.2010.
国際公開第2009/048425A1号,“Fabrication of Phosphor free red and white nitride−based LEDs”,Soh et al.2009.