特許第5965441号(P5965441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965441原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープすることができるハロゲンドーピングソース、該ハロゲンドーピングソースの製造方法、及び該ハロゲンソースを利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法並びに該方法を用いて成膜されたハロゲンドープ酸化物薄膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965441
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープすることができるハロゲンドーピングソース、該ハロゲンドーピングソースの製造方法、及び該ハロゲンソースを利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法並びに該方法を用いて成膜されたハロゲンドープ酸化物薄膜
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20160721BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C23C16/455
   C23C16/40
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-171933(P2014-171933)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42784(P2015-42784A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0100908
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506263491
【氏名又は名称】インダストリー−アカデミック コーペレイション ファウンデイション, ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】カン、キュン−ムン
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−078253(JP,A)
【文献】 特開平01−145350(JP,A)
【文献】 特開昭56−024708(JP,A)
【文献】 特開2013−163863(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/002285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/365
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子層堆積法にて酸化物薄膜の少なくとも一部をドープするためのハロゲンドーピングソースであって、
前記ハロゲンドーピングソースは、ハロゲン化水素を水に希釈した溶液を含むハロゲンドーピングソース。
【請求項2】
前記ハロゲン化水素は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載のハロゲンドーピングソース。
【請求項3】
前記溶液は、フッ化水素1ml当たりに脱イオン水(Deionized Water;DI Water)が5ml以上含まれるように希釈された溶液である請求項1または2に記載のハロゲンドーピングソース。
【請求項4】
原子層堆積法にて酸化物薄膜をドープすることができるハロゲンドーピングソースの製造方法であって、
ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を提供する段階と、
前記ハロゲン化水素または前記水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する段階と、
を含むハロゲンドーピングソースの製造方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化水素は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素のうちの少なくとも1種である請求項4に記載のハロゲンドーピングソースの製造方法。
【請求項6】
前記溶液は、フッ化水素1ml当たりに脱イオン水(Deionized Water;DI Water)が5ml以上含まれるように希釈された溶液である請求項4または5に記載のハロゲンドーピングソースの製造方法。
【請求項7】
基板が配置されるチャンバと薄膜成膜用ソースがそれぞれ貯留される複数のソース容器を含む原子層堆積装置を利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法であって、
金属酸化物薄膜を成膜したい基板を前記チャンバ内部に配置する第1段階と、
ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する第2段階と、
前記希釈溶液及び成膜したい金属酸化物薄膜の金属ソース物質を前記ソース容器にそれぞれ貯留する第3段階と、
前記金属酸化物薄膜の金属ソースを前記チャンバ内部に噴射する第4段階、及び
前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する第5段階と、
を含む原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項8】
さらに、前記方法は、前記第4段階及び第5段階を複数回繰り返す請求項7に記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項9】
基板が配置されるチャンバと薄膜成膜用ソースがそれぞれ貯留される複数のソース容器を含む原子層堆積装置を利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法であって、
金属酸化物薄膜を成膜したい基板を前記チャンバ内部に配置する第1段階と、
ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する第2段階と、
前記希釈溶液、成膜したい金属酸化物薄膜の金属ソース物質、及び水を前記ソース容器にそれぞれ貯留する第3段階と、
前記金属酸化物薄膜の金属ソースを前記チャンバ内部に噴射する第4段階、及び
前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する第5段階と、
を含む原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項10】
前記方法は、前記第4段階及び第5段階を複数回繰り返す請求項9に記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項11】
前記第5段階では、前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する段階と前記水を前記チャンバ内部に噴射する段階とが予め決められた比率に応じて規則的に繰り返される請求項10に記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項12】
前記方法は、前記第4段階または第5段階の後に、前記チャンバ内部に残留した残留物をチャンバから除去する段階をさらに含む請求項7〜11の何れかに記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項13】
前記方法は、前記希釈溶液の濃度に応じて前記ハロゲンのドーピング量を調節する請求項7〜12の何れかに記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項14】
前記方法は、前記第5段階で前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する回数と前記水を前記チャンバ内部に噴射する回数の比率に応じて前記ハロゲンのドーピング量を調節する請求項9〜11の何れかに記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化水素は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素のうちの少なくとも1種である請求項7〜11の何れかに記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項16】
前記希釈溶液は、ハロゲン化水素1ml当たりに脱イオン水が5ml以上含まれるように希釈された溶液である請求項15に記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【請求項17】
前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する工程を更に含む請求項9記載の原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープすることができるハロゲンドーピングソース及び前記ハロゲンドーピングソースの製造方法に関する。さらに、本発明は、前記ハロゲンドーピングソースを利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法並びに該方法を用いて成膜されたハロゲンドープ酸化物薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物を基板に堆積する際、金属酸化物の一部を異種元素でドープして金属酸化物の電気的、光学的、構造的特性を変化させる様々な方法が知られている。該異種元素がハロゲンである場合、すなわち、金属酸化物中の酸素の一部をハロゲンで置換する方法は、ハロゲンの揮発性が高いため極めて困難であると知られているが、そのような不具合があるにも拘らず、ハロゲンで金属酸化物中の酸素の一部を置換する技法として、噴霧熱分解法(Spray Pyrolysis)、化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング(Sputtering)、電子ビーム堆積法(E−Beam Evaporation)、パルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Deposition)などの方法が知られている。
【0003】
前記方法のうちの化学気相堆積法は、有機金属前駆体(Metal−Organic Precursor)を用いて気体状態で金属酸化物を基板に直接堆積する堆積法であって、作業環境がクリーンで均質な表面の薄膜を成膜することができるという長所がある。特に、化学気相堆積法を用いてハロゲンを金属酸化物薄膜にドープした事例として、フッ素(F)を酸化亜鉛(ZNO)薄膜中にドープすることで酸化亜鉛薄膜の電気的特性を向上した方法が報告されたことがある。
【0004】
しかしながら、前記方法にて薄膜を成膜する際は、400℃以上の高温工程が必要となり、このような高温での作業は化合物の特性を変化させるなどの不具合があるため、半導体やディスプレイ分野のように精度を要求する分野またはフレキシブル基板が適用された次世代電子素子への適用には不向きである。
【0005】
そこで、近年、前記問題点を解決し且つより簡易に良質の薄膜を成膜するために、化学気相堆積法を応用した原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)が新規な金属酸化物薄膜の堆積法として活発に研究されている。原子層堆積法では、薄膜を原子層単位で堆積するため厚さの調節が容易であり且つ段差被覆(Step Coverage)がよいことから、複雑且つ多用な構造の基板または構造物に薄膜を均一に堆積することができるという長所がある。また、相形成温度が非常に低いため、200℃以下の低温で薄膜堆積工程が可能になるという長所を持っている。原子層堆積法で用いるソース物質は、化学気相堆積法で用いる有機金属前駆体と同じものであり、現在、金属及び金属酸化物のようなセラミック薄膜を堆積するための有機金属前駆体の大半は商用化されており、実際に半導体素子及び透明電極薄膜の堆積工程に多用されている。しかし、ハロゲンのような金属以外の物質は、原子層堆積法または化学気相堆積向けのソース物質が開発されていない。例えば、ハロゲンのうちのフッ素を原子層堆積法に用いるためには、フッ素ソース物質としてTiF4またはTaF5などのフッ化金属を用いてMgF2とCdF2などの金属フッ化物(Metal Fluoride)を堆積する方法が提案されたことがある。しかしながら、該方法にてTiF4またはTaF5を用いて金属フッ化物薄膜を製造した場合、Ti、Taのような金属が薄膜に同時に堆積されるため、所望しない異種元素(Ti、Ta)による汚染が発生するという不具合があり、そのため、TiF4またはTaF5を、フッ素などのハロゲンを原子層堆積金属酸化物へドープするドーピングソースとして使用することはできないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、原子層堆積法にて酸化物薄膜を堆積する際に用いることができるハロゲンドーピングソースを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記ハロゲンドーピングソースを利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部を所望の組成のハロゲンでドープすることができる方法を提供することを他の目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部を所望の組成のハロゲンでドープすることにより、所望しない異種元素物質によって汚染されることなく、定量的にドーピング量の調節が可能であり、且つ精度の高いハロゲンがドープされた酸化物薄膜、及び前記酸化物薄膜が成膜された基板を提供することをまた他の目的とする。
【0009】
さらにまた、本発明は、ハロゲンのドーピング量を調節することにより、酸化物薄膜の優先配向性を調節することで表面形状を容易に調節することができる方法及び該方法にて表面形状が調節された酸化物薄膜、並びに該酸化物薄膜が成膜された基板を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明に係る、原子層堆積法にて酸化物薄膜の少なくとも一部をドープすることができるハロゲンドーピングソースは、ハロゲン化水素を水に希釈してなる溶液であることを特徴とする。
【0011】
また、前記ハロゲン化水素は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
この場合、前記溶液は、フッ化水素1ml当たりに脱イオン水(Deionized Water;DI Water)が5ml以上含まれるように希釈された溶液であることが好ましい。
【0013】
一方、原子層堆積法にて酸化物薄膜をドープすることができるハロゲンドーピングソースの製造方法は、
ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を提供する段階と、
前記ハロゲン化水素または前記水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する段階と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、前記ハロゲン化水素は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
この場合、前記希釈溶液は、フッ化水素1ml当たりに脱イオン水(Deionized Water;DI Water)が5ml以上含まれるように希釈された溶液であることが好ましい。
【0016】
一方、本発明は、基板が配置されるチャンバと薄膜成膜用ソースがそれぞれ貯留される複数のソース容器を含む原子層堆積装置を利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法であって、
金属酸化物薄膜を成膜したい基板を前記チャンバ内部に配置する第1段階と、
ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する第2段階と、
前記希釈溶液及び成膜したい金属酸化物薄膜の金属ソース物質を前記ソース容器にそれぞれ貯留する第3段階と、
前記金属酸化物薄膜の金属ソースを前記チャンバ内部に噴射する第4段階、及び
前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する第5段階と、を含むことを特徴とする。
【0017】
さらに、前記方法は、前記第4段階及び第5段階を複数回繰り返すことが好ましい。
【0018】
また、本発明は、基板が配置されるチャンバと薄膜成膜用ソースがそれぞれ貯留される複数のソース容器を含む原子層堆積装置を利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法であって、
金属酸化物薄膜を成膜したい基板を前記チャンバ内部に配置する第1段階と、
ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する第2段階と、
前記希釈溶液、成膜したい金属酸化物薄膜の金属ソース物質、及び水を前記ソース容器にそれぞれ貯留する第3段階と、
前記金属酸化物薄膜の金属ソースを前記チャンバ内部に噴射する第4段階、及び
前記希釈溶液または前記水を前記チャンバ内部に噴射する第5段階と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、前記方法は、前記第4段階及び第5段階を複数回繰り返すことが好ましい。
【0020】
この場合、前記第5段階では、前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する段階と前記水を前記チャンバ内部に噴射する段階とが予め決められた比率に応じて規則的に繰り返されることが好ましい。
【0021】
また、前記方法は、前記第4段階の後に、前記チャンバ内部に残留した金属酸化物薄膜の金属ソースをチャンバから除去する段階をさらに含むことが好ましい。
【0022】
また、前記方法は、前記第5段階の後に、前記チャンバ内部に残留した希釈溶液または水をチャンバから除去する段階をさらに含むことが好ましい。
【0023】
また、前記方法は、前記希釈溶液の濃度に応じて前記ハロゲンのドーピング量を調節することが好ましい。
【0024】
また、前記方法は、前記第5段階で前記希釈溶液を前記チャンバ内部に噴射する回数と前記水を前記チャンバ内部に噴射する回数の比率に応じて前記ハロゲンのドーピング量を調節することが好ましい。
【0025】
また、前記ハロゲン化水素は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
この場合、前記希釈溶液は、ハロゲン化水素1ml当たりに脱イオン水が5ml以上含まれるように希釈された溶液であることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係るハロゲンがドープされた酸化物薄膜は、原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法により成膜された酸化物薄膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るハロゲンドーピングソースを利用すれば、原子層堆積法にてハロゲンを酸化物薄膜中に定量的にドープすることでハロゲンドープ金属酸化物薄膜を成膜することができる。
【0029】
また、本発明に係るハロゲンドーピングソースを利用して原子層堆積法にてハロゲンを酸化物薄膜中にドープすれば、所望しない異種元素により汚染されることなく、定量的にドーピング量の調節が可能な、精度の高いハロゲンドープ酸化物薄膜、及び該酸化物薄膜が成膜された基板を得ることができる。
【0030】
さらに、ハロゲンのドーピング量を定量的に調節することにより、酸化物薄膜の優先配向性を調節することで表面形状を調節することができる酸化物薄膜、及び該酸化物薄膜が成膜された基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の好適な実施例に従って酸化物薄膜にフッ素をドープするためのドーピングソースを調製する方法を概略的に示す図である。
図2】本発明の好適な実施例に従って調製されたHFを水に希釈したフッ素ドーピング用ソースを利用して酸化亜鉛薄膜にフッ素をドープした薄膜の状態を示すFE−SEM写真である。
図3】本発明の好適な実施例に従って調製されたHClを水に希釈した塩素ドーピング用ソースを利用して酸化亜鉛薄膜に塩素をドープした薄膜の状態を示すFE−SEM写真である。
図4】本発明の好適な実施例に従って調製されたフッ素ドーピング用ソースを利用して酸化亜鉛薄膜にフッ素をドープした薄膜に対してEDX定量分析を実施した結果を示す図である。
図5】本発明の好適な実施例に従って調製された塩素ドーピング用ソースを利用して酸化亜鉛薄膜に塩素をドープした薄膜に対してPES分析を実施した結果を示す図である。
図6】本発明の好適な実施例に従って酸化亜鉛薄膜にフッ素をドープした薄膜に対するソース噴射の比率とフッ素のドーピング量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施例に係る原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープすることができるハロゲンドーピングソース及びその製造方法、並びに前記ハロゲンドーピングソースを利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法について説明する。
【0033】
図1は、本発明の好適な実施例に従って酸化物薄膜にフッ素をドープするためのドーピングソースを調製する方法を概略的に示す図である。図1に示すように、先ず、HFを水に48%〜51%の濃度で希釈し、該希釈されたHFをHF0.5ml当たりに脱イオン水50ml程度の比率で混合した希釈溶液を提供することにより、本発明の好適な実施例に係るハロゲンドーピングソース、特にフッ素をドープするためのフッ素ドーピングソースの準備が完了する。
【0034】
一方、図1では、フッ素をドープするためのソースとしてHFを原料としたドーピングソースを示しているが、ドープしたいハロゲンの種類に応じてHCl、HBr、HIなどの他のハロゲン化水素を原料として水に希釈することで多様な種類のハロゲンドーピング用ドーピングソースを得ることができる。例えば、本発明の好適な実施例によると、33%〜40%の濃度で希釈されたHClをHCl0.5ml当たりに脱イオン水 50ml程度の比率で混合した希釈溶液を提供し、該希釈溶液を利用して酸化物薄膜の一部を塩素でドープした。
【0035】
一方、本実施例によれば、原子層堆積法を実施するために原子層堆積装置を使用したが、特に本実施例で使用された原子層堆積装置は、基板が配置されるチャンバと薄膜成膜用ソースがそれぞれ貯留される複数のソース容器を含み、複数のソース容器は、少なくとも金属酸化物薄膜を成膜するための金属ソースが貯留される第1ソース容器と、水が貯留される第2ソース容器と、ハロゲン化水素が水に希釈された希釈溶液が貯留される第3ソース容器とを含むことが好ましい。
【0036】
または、本発明の他の実施例に係る原子層堆積装置は、水が貯留される第2ソース容器を備えることなく、金属酸化物薄膜を成膜するための金属ソースが貯留される第1ソース容器と、ハロゲン化水素が水に希釈された希釈溶液が貯留される第3ソース容器のみを含んでいてもよい。
【0037】
また、本発明の好適な実施例に係る原子層堆積装置は、ソース容器に貯留されたソースなどをチャンバ内部に噴射するための噴射手段と、チャンバ内部の金属ソースを外部に排出するための排出手段と、前記堆積装置の動作を制御するための制御手段などを含み、前記構成は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に周知の技術であるため、その詳細な説明を省略するが、本発明に一体で組み込まれる。
【0038】
以下、上述した原子層堆積装置及びハロゲンドーピングソースを利用してハロゲンがドープされた酸化物薄膜を成膜する方法について説明する。
【0039】
先ず、第1段階として、金属酸化物薄膜を成膜したい基板を原子層堆積装置のチャンバ内部に配置する。前記基板は通常、Si基板を利用するが、金属酸化物薄膜が成膜可能な基板であればその種類は限定しない。
【0040】
次いで、第2段階として、ハロゲン化水素または水に希釈されたハロゲン化水素を脱イオン水に添加して希釈溶液を調製する。すなわち、希釈溶液は、先の実施例で説明した溶液を用いればよい。
【0041】
また、希釈溶液の濃度に関し、後で説明する方法にて希釈溶液をチャンバ内部に噴射してハロゲンをドープするとき、該希釈溶液の濃度が低すぎると所望のドーピングができず、逆に該希釈溶液の濃度が高すぎると腐食が生じることがあるため、このような点を勘案して、該希釈溶液の濃度を、所望のドーピングができる濃度以上且つ腐食が生じる濃度以下に保持することが好ましい。または、ハロゲンの濃度が高いため腐食のおそれがあり、ソース容器と配管などのハロゲンと接する部分をテフロンなどがコートされた素材で構成することで腐食の発生を抑制した場合は、希釈溶液の濃度を高くできるなど、ハロゲンの濃度範囲を多様に調節可能である。
【0042】
次いで、第3段階として、希釈溶液、成膜したい金属酸化物薄膜の金属ソース物質、及び水をソース容器にそれぞれ貯留する。または、後で説明するように水はソース容器に貯留しないこともある。
【0043】
次いで、第4段階として、金属酸化物薄膜の金属ソースを前記チャンバ内部に噴射する。本発明の好適な実施例によれば、例えば酸化亜鉛薄膜を成膜するための金属ソースとしてDEZ(diethylzinc)を用いていてよく、また、成膜したい酸化物薄膜の種類に応じて多様な種類の金属ソースを用いていてよい。
【0044】
前記金属ソースをチャンバ内部に噴射すれば、金属が基板に堆積される。なお、噴射後、チャンバ内部には、基板から分離された物質やソース容器から出た物質などの残留物が存在することがあり、このような残留物はチャンバから除去することが好ましい。
【0045】
次いで、第5段階として、ソース容器に貯留された希釈溶液または水を前記チャンバ内部に噴射する。そうすると、前記希釈溶液のH2Oの酸素及びハロゲン化水素のハロゲン(F、Cl、Br、I)が金属に結合され、その結果、ハロゲンでドープされた金属酸化物が得られる。このとき、金属酸化物薄膜のドープされる程度は原則的に希釈溶液の濃度に比例するため、希釈溶液の濃度を調節することで金属酸化物薄膜のドーピング量を容易に調節することができる。なお、本発明によれば、希釈溶液の濃度を高くし続けてもドープされる量は一定のレベルに達するとそれ以上増加せず、希釈溶液の濃度を高くしすぎると腐食が生じることがあるため、希釈溶液の濃度は適宜制限することが好ましい。または、ハロゲンの濃度が高いため腐食のおそれがあり、ソース容器と配管などのハロゲンと接する部分をテフロンなどがコートされた素材で構成することで腐食の発生を抑制した場合には、希釈溶液の濃度を高くできるなど、ハロゲンの濃度範囲を多様に調節可能である。また、第5段階の噴射時でもチャンバ内部には残留物が存在することがあり、残留物はチャンバから除去することが好ましい。
【0046】
また、前記方法は、前記第4段階及び第5段階を順次所望のサイクルだけ繰り返すことにより、所望の量のハロゲンがドープされ且つ所望の膜厚の金属酸化物薄膜を得ることができる。
【0047】
または、本発明の他の実施例によれば、金属ソースと希釈溶液とを交互に噴射することでドープされた金属酸化物薄膜を得るような前述の方法に代えて、希釈溶液を噴射する段階で希釈溶液と水を選択的に噴射し、前記サイクルを繰り返すことでハロゲンがドープされた酸化物薄膜を得ることもできる。
【0048】
前記実施例によれば、第4段階と第5段階を順次1回実施したことを1サイクルと定義すれば、第4段階としての金属ソースの噴射後に、第5段階ではサイクルに応じて希釈溶液と水を選択的に噴射していてよい。例えば、水と希釈溶液を4:1の比率で噴射したい場合、第5段階では、金属ソースの噴射後に水の噴射を4サイクル行った後に金属ソースの噴射及び希釈溶液の噴射を1回行うようになる。本実施例は、前記方法にて水と希釈溶液とを所定の比率で噴射することで金属酸化物薄膜のドーピング量を調節することができる。
【0049】
先に説明した実施例では、希釈溶液の濃度に応じて金属酸化物薄膜のドーピング量を調節していたのに対し、その後で説明した実施例では、希釈溶液と水の噴射量に応じて金属酸化物薄膜のドーピング量を調節していた。後で説明した実施例の場合でも希釈溶液の濃度を高くし続けてもドープされる量は一定のレベルに達するとそれ以上増加せず、希釈溶液の濃度を高くしすぎると腐食が生じることがあるため、希釈溶液の濃度は適宜制限することが好ましい。
【0050】
図2は、本発明の好適な実施例に従って調製されたHFを水に希釈したフッ素(F)ドーピング用ソースを利用してZnO薄膜にフッ素をドープした薄膜の状態を示すFE−SEM写真である。
【0051】
同図は、原子層堆積装置のソース容器にDEZ(diethylzinc)、HF0.5ml当たりに水100mlで希釈された希釈溶液及び水をそれぞれ貯留し、後で説明する方法にて希釈溶液と水を予め決められた様々な順に噴射することでフッ素がドープされた酸化亜鉛薄膜を成膜したときの、それぞれの薄膜のドープされたドーピング量と組織の状態を示す図である。具体的に、図2(a)は、希釈溶液を噴射することなくDEZ及び水だけを噴射した場合であって、フッ素がドープされていない酸化薄膜の状態を示す図である。また、図2(b)は、DEZ/水の噴射及びDEZ/希釈溶液の噴射を4:1の比率で行ったときのドープされた酸化亜鉛薄膜、図2(c)は、DEZ/水の噴射及びDEZ/希釈溶液の噴射を2:1の比率で行ったときのドープされた酸化亜鉛薄膜、図2(d)は、DEZ/水の噴射及びDEZ/希釈溶液の噴射を1:1の比率で行ったときのドープされた酸化亜鉛薄膜、図2(e)は、DEZ/水の噴射及びDEZ/希釈溶液の噴射を2:1の比率で行ったときのドープされた酸化亜鉛薄膜、図2(f)は、DEZ/水の噴射を行うことなくDEZ/希釈溶液の噴射のみを行ったときのドープされた酸化亜鉛薄膜の状態をそれぞれ示す図である。
【0052】
図2に示すように、DEZの噴射後に噴射される噴射物である水と希釈溶液の噴射の比率を4:1にした場合は酸化亜鉛薄膜中のフッ素含量(ドーピング量)が0.2%、2:1にした場合は0.5%、1:1にした場合は0.7%、1:4にした場合は1.0%、そして水を噴射することなく希釈溶液だけを噴射した場合は酸化亜鉛薄膜の1.2%がドープされたことを確認することができる。
【0053】
また、図2(a)に示すように、フッ素ドープされていない酸化亜鉛の柱状形状は(002)方向に成長した結晶粒を、くさび状形状は(100)方向に成長した結晶粒を示す。しかし、図2(b)〜図2(f)に示すように、フッ素ドープによりZnO結晶の優先配向性が(002)方向から(100)方向に漸次調節されることを確認することができる。
【0054】
図3は、図2に示されたそれぞれの水と希釈溶液との噴射比率を調節した場合のドーピング量を示す図であって、多様な比率にて水及び希釈溶液を噴射した場合に含まれるHFの含量とドーピング量(酸化亜鉛薄膜中のフッ素の含量)との関係を示す図である。図3に示すように、HFの含量とドーピング量は線状に増加することが分かり、これは希釈溶液の濃度を調節したり、希釈溶液と水との噴射比率を調節したりするなどの方法にてハロゲン化水素の噴射量を調節することで金属酸化物薄膜のドーピング量を調節することができることを示す。
【0055】
図4は、図2と類似の方法にてHClを水に希釈した塩素(Cl)ドーピング用ソースを用いてZnO薄膜に塩素をドープした薄膜の状態を示すFE−SEM写真である。
【0056】
具体的に、左上端の図面から順に、希釈溶液を噴射せずにDEZ及び水だけを噴射した場合、DEZ/水の噴射及びDEZ/希釈溶液の噴射をそれぞれ4:1、2:1、1:1、1:2、及び1:4にした場合、及びDEZ/希釈溶液だけを噴射した場合の塩素ドープされた酸化亜鉛薄膜の状態をそれぞれ示す図である。
【0057】
図4に示すように、塩素ドープされていない酸化亜鉛の柱状形状は(002)方向に成長した結晶粒を、くさび状形状は(100)方向に成長した結晶粒を示すが、塩素のドーピング量の増加につれてZnO結晶の優先配向性が(002)方向から(100)方向に漸次調節されることを確認することができる。
【0058】
図5は、HFを水に希釈したフッ素(F)ドーピング用ソースを用いてZnO薄膜にフッ素をドープした薄膜に対してEDX分析を実施した結果を示す図である。同図に示すように、フッ素はZnO薄膜に良好にドープされ、ドーピング用ソースのサイクル調節によってドーピング量も正確に調節されることを確認することができる。
【0059】
図6は、HClを水に希釈した塩素(Cl)ドーピング用ソースを用いてZnO薄膜に塩素をドープした薄膜に対してPES分析を実施した結果を示す図である。図6に示すように、HClの注入比が増加するにつれ、ZnO薄膜のドーピング量が線状に増加することを確認することができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施例に係る原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープすることができるハロゲンドーピングソース、該ハロゲンドーピングソースの製造方法、及び該ハロゲンソースを利用して原子層堆積法にて酸化物薄膜の一部をハロゲンでドープする方法、並びに該方法にて成膜されたハロゲンドープ酸化物薄膜を詳しく説明した。しかし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれは、前記構成に対する種々の修正及び変形が可能であるということが理解できるであろう。よって、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6