特許第5965460号(P5965460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965460プランジャポンプとその製造方法及びプランジャポンプ用ラバーシリンダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965460
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】プランジャポンプとその製造方法及びプランジャポンプ用ラバーシリンダ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/067 20060101AFI20160721BHJP
   F04B 43/08 20060101ALI20160721BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F04B43/067
   F04B43/08 D
   E02D3/12 101
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-225122(P2014-225122)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-89714(P2016-89714A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】313000184
【氏名又は名称】株式会社KGフローテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100073623
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 幸吉
(72)【発明者】
【氏名】田中 法夫
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−017182(JP,U)
【文献】 特開平11−062820(JP,A)
【文献】 特開平01−318773(JP,A)
【文献】 米国特許第02786419(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第02253288(DE,A1)
【文献】 米国特許第01832257(US,A)
【文献】 米国特許第01940516(US,A)
【文献】 特開平10−122151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/067
E02D 3/12
F04B 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体を吸入する吸入バルブと吐出する吐出バルブとを設けた流体通路に、
ランジャを往復摺動可能に収納したシリンダケースと、
央部が両端部の径より縮径された括れ小径部となっており、その小径部の外周に環状肉厚部を形成し、前記プランジャを往復摺動させることにより膨縮するラバーシリンダを臨ませて、
バーシリンダの膨縮により吸入バルブから吸入した流体を吐出バルブから高圧流体として送出するようにしたプランジャポンプ
【請求項2】
ランジャ先端を、摺動スペースを残してシリンダ室内径と略同径の円筒形状とすると共に、プランジャを収容するシリンダケースによるシリンダ室と、これに続くラバーシリンダの内部スペースにオイルを充填するようにした請求項1記載のプランジャポンプ
【請求項3】
ランジャが往復摺動するシリンダ室の上部に、高圧バルブを介してオイル充填スペースにオイルを給排するオイルカップを設けると共に、オイルが充填されるラバーシリンダ内スペースの後端部を覆蓋する覆蓋板にオイル充填スペースと連通するオイル給排孔を設けるようにした請求項1又は請求項2記載のプランジャポンプ
【請求項4】
オイルが充填されたラバーシリンダ内スペースの後端部を、同スペースに連通するオイル通孔を穿設し上下に給排口を穿設した覆蓋盤によって覆蓋するようにした請求項2又は請求項3記載のプランジャポンプ。
【請求項5】
底部に複数の通孔が開口する皿状の被着体を先端部に設け、基端部にケースカバーの内側との着合構造とケースカバー側に抜ける通孔を備えた円筒状の被着体とを先端側が細く基端側が太い連結杆によって連結した支持体に、ラバーシリンダを覆着してケースカバー側から流体通路を横断して嵌入し、シリンダケースによるシリンダ室の端部に形成された嵌着部に支持体の先端を嵌着させることによりラバーシリンダを着装するようにした、ラバーシリンダの膨縮により吸入バルブから吸入した流体を吐出バルブから高圧流体として送出するプランジャポンプの製造方法。
【請求項6】
央部が両端部の径より縮径された括れ小径部となっており、その小径部の外周に環状肉厚部を形成したラバーシリンダの膨縮により吸入バルブから吸入した流体を吐出バルブから高圧流体として送出するプランジャポンプ用のラバーシリンダ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構築基礎地盤の強化支保、或いは地盤の安定化や止水を目的として対象地盤に地盤硬化材を高圧注入する際等に用いる流体を加圧圧送するためのプランジャポンプ及びプランジャポンプ用ラバーシリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプランジャポンプは、流体通路に吸入バルブと吐出する吐出バルブとを設け、両バルブの間の流体通路にプランジャを往復摺動可能に収納したシリンダを臨ませて設け、プランジャの往復駆動によるシリンダ内の内圧変動で吸入バルブと吐出バルブとを交互に開閉制御して流体通路内の流体を吸入バルブから吸引し、吐出バルブから吐出するようにしているが、送給される流体がセメントミルクのように粒子物質を含んだものとなると、その粒子がプランジャとシリンダの摺動摩擦を高め、プランジャを早期に摩耗させると共に、摩擦熱を発生させシリンダが過熱するという問題があった。
【0003】
この問題に対応して、例えば特許文献1記載発明のように弾性変形可能な膜体でシリンダと流体通路を仕切り、流体通路から仕切られたプランジャ側内部空間に潤滑油を充填したプランジャポンプが提案されている。また、特許文献2では圧送される流体とプランジャ摺動部とを隔離し、直接接触させないようにする提案もなされている。
【0004】
更に、プランジャの摺動摩擦に対する対応とラバーシリンダの加圧効率を高める方策として、中央部の径が両端部の径より小さくくびれた形状の筒状弾性体を用いること(特許文献3)が本願出願人によって提案されている。
【特許文献1】特開平1ー318773号公報
【特許文献2】特開昭64ー56975号公報
【特許文献3】特許第3135227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3における中央部が小さくくびれた形状の筒状弾性体によるラバーシリンダは、加圧効率を従来に比して飛躍的に高める効果を有しているものの、多数回の激しい往復摺動によって括れ部に掛る負担が大きく、その部分の耐久力が弱く破損し易いという問題があった。
【0006】
また、特許文献3においては、ラバーシリンダを流体通路内に支持する支持体が、前端の円錐状コーン部と後端の円盤状台座部を円筒状態柱部によって連結され、台座部はポンプケースの側腹部を覆蓋する放熱板に着接されているので、オイル通路孔によりオイルの流通は行われるものの、オイルが充填されたラバーシリンダ内スペースの後端部が閉鎖されているためオイルの給排はシリンダ室に設けられたオイル注入口と排出口に頼らざるを得ず、オイル回流にも不利であり、オイル交換に多大な時間と労力を要するという問題があった。
【0007】
更に、特許文献3においては、プランジャの往復摺動による発熱に対応するため、プランジャを中空とする等して充填オイルの量を多くして放熱するようにしてきたが、オイルは水に比して体積効率が悪く、量が多くなるとポンプの加圧効率を下げる問題がある。
【0008】
すなわち、40メガパスカルの圧力に対して水は1.4%しか圧縮しないが、プランジャポンプの潤滑油として用いられるオイルは6.4%圧縮するもので、この体積効率の差により100%の理論吐出量に対して実吐出量は85%しか得られない結果となる。
【0009】
従来、オイルの充填注入は、シリンダ室4に設定されたオイル注入孔73から行い、排出もオイル排出孔74のみで行われてきていたが、充填スペースの形状が複雑化するに従って適切な充填圧をもってオイルを注入することが困難となり、オイルの円滑迅速な排出にも不適切な状況となり、頻度を増すオイル交換にも対応し切れなくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題に対応してこれを解決するため、ラバーシリンダの形状を中央部が両端部の径より縮径された括れ小径部に構成し、その小径部の外周に環状肉厚部を形成し、前記プランジャを往復摺動させることにより膨縮するラバーシリンダに臨ませて、ラバーシリンダの膨縮により吸入バルブから吸入した流体を吐出バルブから高圧流体として送出するようにした。
【0011】
即ち、プランジャの作動によりラバーシリンダの内圧が高まって括れ小径部の径が拡張すると、最も大きな引張力を受ける括れ部に形成された環状肉厚部が破壊力に対抗すると共に薄くなる径部の肉厚を補充し、堅牢な弾力構造を維持すると共に、強力な膨縮作動により加圧力の強化が行われるようにした。
【0012】
また、往復摺動するプランジャを膨縮するラバーシリンダに臨ませて、充填オイルに作用させることにより、ラバーシリンダに直接プランジャの作動を作用させないようにしてラバーシリンダの素材を保護し損傷を与えないようにした。
【0013】
次いで、従来、プランジャの中空部等によって充填オイルの量を大きくして行ってきたプランジャ往復摺動による発熱の抑制を、ラバーシリンダ支持体の形状を変えることによるオイル回流効果によって対応し、加圧流体に対する充填オイルの量を少なくして体積効率を挙げ、ポンプの加圧効果を向上させるようにした。
【0014】
更に、シリンダケース20の上部に高圧バルブ71を介してオイルカップ7を設定してオイルカップ7により一挙にオイルを供給し、ポンプケース側腹開口部の蓋体6に設けた上下開口部と相俟って、高圧バルブ71により注入排出を迅速に調整できるようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成したことにより、ラバーシリンダの堅牢性を高め、その作動力も強化されたことにより、流体の体積効率が挙がりプランジャポンプの加圧能力を著しく強化する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例を示すもので、本発明によるプランジャポンプの全体構造を示す要部を断面とした縦断面側面図
図2】同じく、往復摺動するプランジャの作動状況を示すもので、(ア)はプランジャが基準位置にある状態、(イ)はプランジャが下支点にある状態、(ウ)はプランジャが上支点にある状態を示す摸式的要略図
図3】同じく、本発明によるプランジャポンプに内装されるラバーシリンダの斜視図
図4】同じく、本発明によるプランジャポンプに内装されるラバーシリンダを覆着する支持体の1例を示す斜視図
図5】同じく、本発明によるプランジャポンプのオイルが充填されたラバーシリンダ内スペースの後端部の側腹部を覆蓋する覆蓋盤の要部を透視図とした斜視図部分拡大正面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明すると、1は流体通路で、吸入口11に供給される流体を吸入して加圧し、吐出口12から加圧流体として吐出する通路となっており、吸入側に負圧により開弁する吸入バルブ13、吐出側に内圧の高まりにより開弁する吐出バルブ14が設けられ、両バルブの間に供給される流体を加圧圧送するラバーシリンダ2が設定されている。
【0018】
ラバーシリンダ2は、中央部が両端部の径より縮径された括れ小径部21となっている筒状弾性体から成り、小径部21の外周に環状肉厚部22が形成され、流体通路1を横断してプランジャ3を収納するシリンダ室4に臨む部位に設置される支持体5によって流体通路1内に設定される。
【0019】
支持体5は、底部に複数の通孔51aが開口する皿状の被着体51を先端部に設け、基端部にケースカバー10の内側との着合構造とケースカバー側に抜ける通孔52aを備えた円筒状の被着体52とを先端側が細く基端側が太い連結杆53によって連結して構成され、ラバーシリンダ2の先端側を被着体51に覆着してポンプケース10の側腹開口部10aから突入させ、シリンダ室4の尾端に形成された嵌着部20aに突合嵌着させて固定すると共に、ラバーシリンダ2の尾端側を被着体52に覆着してポンプケース10の側腹開口部10aの蓋体6の内側と着合させて固定するものである。
【0020】
ポンプケース側腹開口部10aの蓋体6には、支持体5の被着体52に設定された通孔52aに接合すると共に、上下にキャップ6dによって開閉される開口部6bが設けられたオイル導通孔6aが設けられており、シリンダ室4、ラバーシリンダ2と支持体5の間隙スペース、蓋体のオイル導通孔6aがオイル充填スペースを形成することになる。
【0021】
ポンプケース側腹開口部10aに対向する側腹には、プランジャ3を往復摺動可能に収納するシリンダケース20が形成されており、プランジャ3の往復動によりラバーシリンダ2が膨縮駆動して流体を加圧し、高圧流体として吐出するものである。
【0022】
すなわち、先ず、蓋体6の上部開口部6aのキャップを外してオイル注入時にエアーが抜けるようにし、プランジャ3を、図2の(ア)に示すように、位置決め治具Pにより下支点から1/3ストローク出たシリンダ内の基準位置に設定し、高圧バルブを開いてオイル充填スペースにオイルを注入セットして前記上部開口部6aのキャップを締める。
【0023】
次いで、(イ)に示すように、プランジャ3を下支点まで移動させることによりラバーシリンダ2が縮径し、流体通路内に負圧が生じ、吸入バルブ13が開いて流体を流体通路1内に吸引する。次いで、(ウ)に示すようにプランジャ3を上支点まで移動させることによりラバーシリンダ2が膨張拡径し、流体通路内の内圧が40メガパスカル程度まで高まり、吐出バルブ14が開いて流体を吐出口12から吐出する。
【0024】
この際、ラバーシリンダ2には、括れ小径部21が存在することにより筒状弾性体の膨縮作動が拡張されると共に、小径部21の外周に環状肉厚部22が形成されているので、膨縮作動の破壊力に対抗すると共に薄くなる径部の肉厚を補充し、堅牢な弾力構造を維持すると共に、強力な膨縮作動により加圧力の強化が行われる。
【0025】
また、支持体5は先端側が細く基端側が太い連結杆53によって連結先端側が細く基端側が太い連結杆53によって連結され、被着体51に複数の通孔51a、被着体52に通孔52aが備えられているので、ラバーシリンダ2内を流動する充填オイルは、先後の通孔と連結杆53の外周に沿って円滑に移動し、ラバーシリンダ2の滑らかな膨縮作動が行われる。
【実施例2】
【0026】
実施例2は、プランジャ3を収納するシリンダケース20の上部に高圧バルブ71を介してオイルカップ7を設定し、シリンダ室4に連通するオイル導入孔72を通じてオイル充填スペースに対するオイルの給排を行えるようにしたものである。
【0027】
更に、ポンプケース側腹開口部10aの蓋体6には、支持体5の被着体52に設定された通孔52aに接合すると共に、上下にキャップ6dによって開閉される開口部6bが設けられているので、通常のオイルの排出はキャップ6dをはずしたオイル導通孔6aを通じて簡易に行うことが出来るようになっている。
【0028】
この実施例は、シリンダケース20の上部に高圧バルブ71を介してオイルカップ7を設定してオイルカップ7により一挙にオイルを供給し、ポンプケース側腹開口部の蓋体6に設けた上下開口部と相俟って、高圧バルブ71により注入排出を迅速に調整できるようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るプランジャポンプ及びプランジャポンプ用ラバーシリンダは、従来のダイヤフラム等に相当する膨縮弾性体に筒状のラバーシリンダを用いたので、変形量が大きく、更に、対象流体とプランジャ摺導部とを隔離できるので、軟弱地盤の改良や止水壁の造成に用いられる地盤硬化材の注入等、セメントミルク等の固形粒子を含んだ流体にも広く適用でき、土木建設産業上に高度の利用価値を有するものである。
【符号の説明】
【0030】
1 流体通路
11 流体通路の吸入口
12 流体通路の吐出口
13 吸入バルブ
14 吐出バルブ
2 ラバーシリンダ
21 ラバーシリンダの括れ小径部
22 ラバーシリンダ括れ小径部外周の環状肉厚部
3 プランジャ
4 プランジャを収納するシリンダ室
5 ラバーシリンダ支持体
51 支持体先端側の被着体
51a 先端側先端被着体底部の通孔
52 支持体基端側の被着体
52a 基端側被着体のケースカバー側に抜ける通孔
53 両端被着体を連結する連結杆
6 ポンプケース側腹開口部を覆蓋する蓋体
6a 上下に開口部が設けられた蓋体のオイル導通孔
6b 蓋体のオイル導通孔上下に開口部
6a 蓋体上下開口部のキャップ
7 オイル供給用オイルカップ
71 高圧バルブ
72 シリンダ室に連通するオイル導入孔
73 オイル注入孔
74 オイル排出孔
10 ポンプケースカバー
10a ポンプケースカバー側腹開口部
20 シリンダケースカバー
20a シリンダ室尾端に形成された嵌着部
P 位置決め治具
図1
図2
図3
図4
図5