【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の局面に従うと、この目的は、
(e) 干渉の生成のための要素が対物レンズの射出瞳の中に位置決めされ、かつ
(f) 干渉の生成のための要素が、振幅透過率F
DIC(x,y)を有する振幅フィルタで形成されることによって達成され、振幅透過率は、式
【0013】
【数1】
【0014】
に従い、
式中、x,yは射出瞳平面中の座標であり、
F
DIC(x,y)はxおよびyの関数としての振幅フィルタ透過および振幅フィルタの位相を記述するための関数式であり、
t(x,y)は振幅フィルタの振幅透過率の実数部分である変数であり、この場合
【0015】
【数2】
【0016】
であり、
T(x,y)は振幅フィルタの透過度であり、F
*DIC(x,y)がF
DIC(x,y)の共役複素を示す場合には、T(x,y)=F
DIC(x,y)・F
*DIC(x,y)=t
2(x,y)であり、
F
+(x,y)はF
DICの「正」部分であり、この場合
【0017】
【数3】
【0018】
であり、
φは射出瞳平面におけるDICの効果の方位角であり、
P(x,y)は振幅フィルタの位相分布であり、この場合
【0019】
【数4】
【0020】
であり、
F
-(x,y)はF
DICの「負」部分であり、この場合
【0021】
【数5】
【0022】
であり、
P
0は、振幅フィルタF
DIC(x,y)の実数位相オフセットである定数であり、
T
0は、それぞれF
DICまたはF
+およびF
-の実数振幅透過率である定数であり、
P
maxは、それぞれF
+またはF
-の実数最大位相である定数である。
【0023】
射出瞳内の位相分布P(x,y)は、最大の2つの関連値を有する位相ステップである。
【0024】
発明によると、対象物と像との間の開口絞りまたは瞳が物理的にアクセス可能である場合は、光学結像列(optische Abbildungsketten/optical imaging chain)を変更することができる。変更は、対物レンズの射出瞳中の付加的な要素を用いて行なわれる。これにより、通常は見えない対象物の特徴が見えるようになり、検出器で検出可能となる。
【0025】
本発明に従うと、付加的な要素は、微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡法と同じ光学的効果を生成する光学振幅フィルタである。しかしながら、DIC特有の要素をすべて省略することができる。偏光された光を用いる必要はない。したがって、本発明は偏光コントラスト法ではない。アセンブリは偏光に対して感度を有しない。したがって、結像光学アセンブリは、公知のDIC顕微鏡よりも容易な要件しか満たさなくてよい。透過光については、アセンブリは本質的に倍率とは独立しており、ある実施形態では完全に倍率とは独立している。アセンブリが振幅フィルタを用いて容易にグレードアップされかつ容易に調節されることが発明の特別な利点である。
【0026】
F
DIC(x,y)は、座標xおよびyに依存する、振幅フィルタ透過および振幅フィルタの位相を記述するための関数式である。xおよびy方向への振幅フィルタの透過度の分布は、複素値F
DIC(x,y)F
*DIC(x,y)によって記述される。
【0027】
φは、射出瞳平面におけるDICの効果の方位角である。しかしながら、これは、射出瞳のxおよびyによって記述される座標系が像平面に転写されれば、像平面における方位角を等しく記述することができる。
【0028】
P(x,y)は、振幅フィルタの位相分布、すなわち入射放射の位相に対する効果の分布を表わす。位相は、フィルタの複素偏角、すなわちP(x,y)=arg(F
DIC)によって記述される。そのような位相の実際的な実現は、振幅フィルタの基板の厚みの差Δdによって影響され得る。そのような差は以下の式に従う。
【0029】
【数6】
【0030】
式中、λは放射源からの光の波長であり、nは波長λでのフィルタ基板の回折指数である。発明の代替的な変更例では、位相分布はフィルタ基板の好適な被覆によって影響され得る。
【0031】
P
0は振幅フィルタの位相オフセットである。位相オフセットは好きなように選ぶことができる。これは像の生成には影響しない。位相オフセットは、十分に扱うことができるフィルタ基板厚みを有する振幅フィルタの使用を可能にする。
【0032】
T
0は振幅フィルタの振幅透過率を表わす。これは、射出瞳中の座標xおよびyとは独立した一定係数である。換言すると、T
0はフィルタ基板の基本透過を表わす。
【0033】
以上の式に本質的に従う特性を有する振幅フィルタの使用は、いくつかの近似を有するいくつかの特別な場合を含む。
【0034】
振幅フィルタは、あらゆる点で同じ厚みを有する、すなわちΔd(x,y)=0である、純粋な強度フィルタによって形成可能である。位相分布および特に位相差は生成されない。放射源からの放射は単色であってはならない。そのような強度フィルタの透過度は、F
DIC(x,y)F
*DIC(x,y)に従う分布を有する。位相分布P(x,y)は、すべての点(x,y)についてゼロに設定される。位相差を有する振幅フィルタと比較すると、この近似にも拘わらず、像がより拡散するのはごくわずかでしかない。
【0035】
振幅透過の分布の生成のため、振幅フィルタをアルミニウムまたは別の好適な吸収材料で被覆することができる。これにより、強度の分布が好適に影響される。代替的に、座標xおよびyに依存して光学的厚みが異なるプレートを用いる。
【0036】
さらなる近似では位相差も生成されない。すなわち、位相分布P(x,y)はすべての点(x,y)についてゼロに設定される。さらに、振幅フィルタは、一方側ではいずれの強度も通さず、射出瞳の1つの部分では放射を妨げ、射出瞳の残余の部分では他方側で最大強度を通す、射出瞳中のナイフエッジであるようにされる。すなわち、透過度T(x,y)は、T(x,y)≦Sについてすべての点でゼロに設定され、式中Sは0≦S≦T
02であるしきい値である。好ましくは、ナイフエッジは、放射の少なくとも半分が最大強度で通るように配置される。
【0037】
発明の代替的な実施形態では、単色放射および位相ステップを用いる。次に位相をゼロに設定することができる。
【0038】
偏光子およびノマルスキープリズムがいずれも必要ないことがすべての実施形態の共通の特徴である。これにより、光学アセンブリの光スループットは公知の方法よりもはるかに高い。干渉性の光または小さな照明アパーチャを用いる必要もない。光源の種類とは独立してかつ光の偏光とは独立して、アセンブリを用いることができる。
【0039】
射出瞳における振幅フィルタの効果を以下の考察から導出することができる。
理論的には、微分干渉コントラスト(DIC)は、顕微鏡における部分的に干渉性の結像の際の光学的透過機能に対する2つの独立した振幅フィルタの結果として説明することができる。微分干渉コントラストは、垂直に偏光されて、それにより独立した2つの明視野照明器から像空間中に生成される。放射は、顕微鏡の対物レンズの入射瞳における系統的な位相勾配によって互いから区別される。位相勾配は両者とも絶対値が同じであり、それらは「準線形」であり、同じ方向を有する。しかしながら、位相勾配は反対の方向感覚を有する、すなわち、それらは符号が反対である。位相勾配の方向は、照明経路におけるノマルスキープリズムの2つのウェッジの方向によって設定される。
【0040】
第1のノマルスキープリズムは、光学的に、顕微鏡対物レンズの入射瞳の範囲内であるが結像列中で対象物の前にある。ノマルスキープリズムにより、2つの偏光依存反対位相勾配がノマルスキープリズムのウェッジの方向に沿って生じる。
【0041】
第2のノマルスキープリズムは、顕微鏡対物レンズの射出瞳の範囲内の結像放射経路中に物理的に配置される。光学的には、これは第1のノマルスキープリズムと同じ位置にあるが、結像列中で対象物の後ろにある。しかしながら、これは、第1のノマルスキープリズムの2つの偏光依存位相勾配を補償するように向けられる。
【0042】
顕微鏡中における部分的に干渉性の像の見地から考えると、ケーラー照明は、顕微鏡対物レンズの入射瞳中のほぼ全体的に非干渉性である置換光源を生成し、そのような置換光源は、結像列中で対象物の前にある。したがって、結像列中の対象物の前にも位置決めされ、入射瞳の中にある第1のノマルスキープリズムは、像について関連のある効果を有しない。これを省略することができる。第2のノマルスキープリズムは、射出瞳で反対の位相勾配を生成する。置換光源の非干渉性の点に属する対象物によって回折される各々の波の各々の個別の振幅分布は、2つの反対の位相勾配の1つの上に刻印される(aufgepragt/impressed)。これは、各々の非干渉性照明部分毎に偏光に依存して自動的に行なわれる。偏光子を結像列中の第2のノマルスキープリズムのすぐ前に置くことで十分である。照明放射経路中の偏光子は第1のノマルスキープリズムの動作についてしか関連がなく、したがって省略可能である。
【0043】
排他的に準線形位相勾配からなる顕微鏡対物レンズの射出瞳中の全体的に透明の振幅フィルタは顕微鏡像の横方向シフトを生じる。以下が当てはまる。
【0044】
【数7】
【0045】
式中、Δzは位相勾配の方向の顕微鏡の対物面中で対物面について算出される像の横方向シフトであり、
Aは顕微鏡の対物口径であり、
P
maxは、顕微鏡の射出瞳の端縁における最大絶対値を有する位相勾配の位相である。
【0046】
本発明に従う振幅フィルタは、偏光に依存する2つの準線形の反対の位相勾配+P
maxおよび−P
maxによって導出可能である。そのような振幅フィルタを用いる場合、光線の結像経路において第2のノマルスキープリズム、その偏光子、およびその検光子を省略することができる。
【0047】
仮想(fiktiven/fictive)振幅フィルタの反対の位相勾配±P
maxの偏光に対する依存性は、微分干渉コントラスト効果自体については無関係である。好ましくは、対象物の偏光特性は仮想振幅フィルタとも無関係である。仮想振幅フィルタは一般的な偏光コントラスト法との組合せを可能にする。
【0048】
仮想偏光独立振幅フィルタの数学的表現は、反対の位相勾配を表わしかつそれについて上記の記載が当てはまる仮想振幅透過率F
+およびF
-によって影響を受ける。
【0049】
【数8】
【0050】
振幅透過率T
0は実数であり、射出瞳に沿って一定であり、典型的には0から1の間にある。φは射出瞳における位相勾配の向きであり、−πから+πの間の値を有する。φ=0は「メリジオナル正」、すなわち射出瞳の座標系中の+yを意味する。φ=−π/2は「サジタル正」、すなわち射出瞳の座標系中の+xを意味する。
【0051】
仮想振幅透過率F
+は、たとえば、射出瞳における被覆ガラス板によって実際に実現可能である。ガラス板は、以上言及した記載にある分布を有する透過度F
+F
*+および厚みの変化Δd
+を有する位相板である。
【0052】
【数9】
【0053】
射出瞳において、以上の式が記述する位相板に反対の位相板を加えると、振幅フィルタの全体的な効果は以下のようになる。
【0054】
【数10】
【0055】
換言すると、対の反対のシフトは行なわれない。光は位相板の2つの部分に割当てられないので、横方向のシフトは全く存在しない。
【0056】
以下の特性
【0057】
【数11】
【0058】
を有する場合は技術的に実践できない請求される振幅フィルタは、光を2つの部分に分離し、これにより微分干渉コントラストの生成に必要な、所望の対にされた横方向シフトを生成する。組立てられた振幅フィルタの効果F
DIC(x,y)は、合算された位相分布を伴なう、合算された振幅透過率の分布を有することが重要である。仮想振幅フィルタ対F
+、F
-の組合せ効果は、透過度T(x,y)と位相P(x,y)との複素積の形態で振幅フィルタを表現することにより、技術的に実践可能な強度フィルタおよび技術的にも実践可能な位相板の上に分布可能である。T(x,y)およびP(x,y)は、複素光振幅に対してF
DIC(x,y)と同じ効果を有しなければならず、これは、(x,y)でのおそらくは負の振幅透過率
【0059】
【数12】
【0060】
が負でない振幅透過率
【0061】
【数13】
【0062】
によって置き換えられ、かつP(x,y)=P
0/2+πである付加的な位相πが位相P
0/2に加えられた場合にのみ、明白なやり方で行なうことができる。このように、振幅透過率は、光学密度の形態ではっきりと表現することができる。次に、おそらくは変更された位相P(x,y)を、フィルタ基板のガラス板の厚みの変化によって表現することができる。
【0063】
任意の分布I
T(x,y)=I
0・T(x,y)を、振幅フィルタF
DIC(x,y)の透過度I
T(x,y)の分布に用いることができ、ここで0<I
0はランダムな倍率である。以下の式は、おそらくは変更された位相P(x,y)を表わす位相板に当てはまる。
【0064】
【数14】
【0065】
記載のアセンブリはフーコーのナイフエッジとは異なる。フーコーのナイフエッジは対物レンズの結像平面または中間像平面に置かれる。DICナイフエッジは、射出瞳の中または対物レンズの瞳の中にある。理想的には、フーコーのナイフエッジとともに点対象物を用いる。対象物の延長は、少なくともエアリーの円盤のオーダ(1.22・λ/A)にあるべきである。DICナイフエッジは、延長された対象物に適用された場合のみ有用である。これは点状の対象物については意味をなさない。フーコーのナイフエッジは強度対象物について用いられ、位相物体には有用でない。DICナイフエッジは純粋な位相物体について特に有利である。
【0066】
本発明のさらなる変更例が従属請求項の主題である。添付の図面を参照して実施形態を以下により詳細に説明する。