特許第5965494号(P5965494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965494
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ミトコンドリア粒子を含む大気質センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20160721BHJP
   G01N 21/77 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01N21/78 C
   G01N21/77 A
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-545874(P2014-545874)
(86)(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-500481(P2015-500481A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】US2011065808
(87)【国際公開番号】WO2013095329
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】509348786
【氏名又は名称】エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109586
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】マニオン,マイケル ケオニ
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−119378(JP,A)
【文献】 特開2005−151843(JP,A)
【文献】 特開2006−296201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00,21/01
G01N 21/17−21/83
G01N 33/48−33/98
C12Q 1/02
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離し不活性化したミトコンドリア粒子を含む大気質検知粒子であって、
前記ミトコンドリア粒子は0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの直径を有する大気質検知粒子。
【請求項2】
前記ミトコンドリア粒子は0.05マイクロメートルから2マイクロメートルの直径を有する請求項1に記載の大気質検知粒子。
【請求項3】
前記ミトコンドリア粒子は0.1マイクロメートルから0.4マイクロメートルの直径を有する請求項1に記載の大気質検知粒子。
【請求項4】
前記ミトコンドリア粒子の内膜にわたる大幅な陽子勾配はない請求項1に記載の大気質検知粒子。
【請求項5】
前記ミトコンドリア粒子は1つまたは複数のヘム基を含み、
前記ミトコンドリア粒子中のヘム基の少なくとも80%は、第二鉄状態にある鉄原子を含む請求項1に記載の大気質検知粒子。
【請求項6】
前記ミトコンドリア粒子は脂質、蛋白質、または、炭水化物の少なくとも1つを含む請求項1に記載の大気質検知粒子。
【請求項7】
大気質センサであって、
単離し不活性化したミトコンドリア粒子を含む少なくとも1つの検知粒子と、
半透明または透明な表面と、を含み、
前記少なくとも1つの検知粒子は前記表面に付着している大気質センサ。
【請求項8】
前記表面に少なくとも10個の検知粒子が付着している請求項7に記載の大気質センサ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの検知粒子は前記表面に共有結合による架橋で結合している請求項7に記載の大気質センサ。
【請求項10】
前記表面は200ナノメートルから600ナノメートルの波長を有する放射の透過を可能にするように構成した請求項7に記載の大気質センサ。
【請求項11】
第1の単離し不活性化したミトコンドリアの膜を準備することと、
前記ミトコンドリア膜を第1の量の試験対象大気に接触させることと、
前記ミトコンドリア膜に第1の量の放射線を照射することと、
前記ミトコンドリア膜または前記ミトコンドリア膜が発した放射線の光学特性を測定することと、を含む大気質を検知する方法。
【請求項12】
前記ミトコンドリア膜が発した放射線の光学特性を測定することは、a)前記発した放射線の波長、b)前記発した放射線の強度、c)フェルスター共鳴エネルギー転移、d)光退色、またはe)蛍光の寿命の少なくとも1つを測定することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ミトコンドリア膜に第2の量の放射を照射することをさらに含み、
前記第2の量の放射線は前記第1の量の放射線とは実質的に異なる波長を有する請求項11に記載の方法。
【請求項14】
第2の単離し不活性化したミトコンドリアの膜を準備することと、
前記第2の単離し不活性化したミトコンドリアの膜を第2の量の試験対象大気に接触させることをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ミトコンドリア膜が発した放射線の光学特性を既知の汚染物質の光学特性と比較することをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の量の試験対象大気は既知の化合物を含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の量の試験対象大気は未知の化合物を含む請求項11に記載の方法。
【請求項18】
大気質検知粒子を作製する方法であって、
少なくとも1つのミトコンドリアを含むサンプルを準備することと、
.5マイクロメートルから16マイクロメートルの直径を有するミトコンドリア粒子を形成するように前記ミトコンドリアを少なくとも1つの細孔を介して押し出すことと、を含む方法。
【請求項19】
前記ミトコンドリア粒子を不活性化し、それによって、大気質検知粒子を作製することをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ミトコンドリア粒子は、前記ミトコンドリア粒子を還元剤に接触させることによって不活性化する請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書のいくつかの実施形態は、大気および/または他の流体の成分を検知するための構成、製造物、および、方法の全般に関する。
【背景技術】
【0002】
大気および他の流体中の汚染物質を検知するための様々な装置および方法がある。従来、このような装置は、例えば煙検知器または様々な気体検出器を含めて、可能性のある汚染物質のうちの非常に特殊なものへの対応に特化している。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態において、大気または他の流体の質を検知するための方法および構成を提供する。
【0004】
いくつかの実施形態において、検知粒子を準備する。この粒子は単離して不活性化した(de-energized)ミトコンドリア粒子を含み得る。いくつかの実施形態において、このミトコンドリア粒子は約0.01マイクロメートルから約10マイクロメートルの直径を有し得る。
【0005】
いくつかの実施形態において、大気質センサを提供し、この大気質センサは、単離して不活性化したミトコンドリア粒子を含む少なくとも1つの検知粒子と、半透明または透明の表面と、を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの検知粒子が表面に付着している。
【0006】
いくつかの実施形態において、大気質測定装置を提供する。この装置は、大気取入れポートと、ある量の大気を、大気質センサを収容するように構成した部位に差し向けるように構成した第1の大気排出口と、を含み得る。いくつかの実施形態において、大気取入れポートは、第1の大気排出口と流体連通している。いくつかの実施形態において、ほぼ均一な第1の波長を有する放射線をその部位に発するように構成した第1の放射源を提供し、かつ、その部位から発せられた放射線の波長、強度、もしくは、寿命、または、それら3項目の全てを測定するように構成した検出器を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、大気質を検知する方法を提供する。この方法は、第1の単離し不活性化したミトコンドリアの膜を準備することと、このミトコンドリア膜を、ある量の試験対象大気に接触させることと、ミトコンドリア膜に第1の量の放射線を照射することと、ミトコンドリア膜および/またはミトコンドリア膜によって発せられた放射線の光学特性を測定することと、を含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、大気質検知粒子を作製する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つのミトコンドリアを含むサンプルを準備することと、約0.5から約16マイクロメートルの直径を有するミトコンドリア粒子が形成されるように、少なくとも1つの細孔を介してミトコンドリアを押し出すことと、を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、ミトコンドリアから得られた粒子を提供する。いくつかの実施形態において、既知の化合物の正体および/または濃度を決定するために蛍光痕跡(fluorescence signature)を使用する。いくつかの実施形態において、未知の化合物の蛍光痕跡を採取し、かつ、1つまたは複数の既知の化合物の痕跡と、この痕跡を比較することによって、その化合物を同定するために使用する。いくつかの実施形態において、大気質を検知するための製造物、例えば、大気質検知装置および大気質測定装置を提供する。このような方法および装置は、例えば、工場内の有害汚染物質の検出または人工密集地での生物テロ攻撃の脅威の検出に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】検知粒子のいくつかの実施形態を示す図である。
図2】大気質測定装置および大気質センサのいくつかの実施形態を示す図である。
図3A】大気質を検知する方法のいくつかの実施形態を示すフロー図である。
図3B】大気質を検知する方法のいくつかの実施形態を示すフロー図である。
図4】検知粒子を作製する方法のいくつかの実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部をなす添付の図面を参照する。図面では、同じ記号は概して同じ構成部分を示すが、文脈に指示がある場合は除く。詳細な説明、図面、および、特許請求の範囲に記載した例示的な実施形態は、限定を意味するものではない。本明細書に提示した主題の精神および範囲から逸脱しなければ、他の実施形態も使用可能であり、かつ、他の変更を行うことも可能である。本明細書全体で説明され、かつ、各図面に示した本開示の各態様が、本明細書で明示的にその全てを熟考した非常に様々な異なった構成で配置、代用、組み合わせ、分離、および、設計することが可能であることは、容易に理解されよう。
【0012】
本明細書では、空気および他の流体中の物質または汚染物質の検出に採用可能な各実施形態を示す。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア膜、その各構成要素、および/または、その派生物は、(検知粒子または検知膜の形の)検出システムまたはその一部として使用可能である。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア膜の検知粒子および/または構成要素が、空気または流体中の汚染物質または他の含有物と相互作用を起こし得て、システムの少なくとも1つの光学特性に変化をもたらし得る。この光学的痕跡および/または変化(またはそのような各変化の組み合わせ)は、大気または流体中の汚染物質または不純物を同定するために使用可能である。
【0013】
図1は検知粒子100のいくつかの実施形態を示す。いくつかの実施形態において、検知粒子100は単一のミトコンドリアとすることが可能であり、単一のミトコンドリアの一部とすることが可能であり、単一のミトコンドリアから派生させたものとすることが可能であり、または、単一のミトコンドリアにも見出せる各成分を含むことが可能である。いくつかの実施形態において、検知粒子は単一のミトコンドリアの一部を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子は単一のミトコンドリア全体を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子は不活性化され、かつ/または、単離されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、検知粒子はミトコンドリアが元来有する脂質などの脂質130を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子はミトコンドリアが元来有する蛋白質などの蛋白質140を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子はミトコンドリアが元来有する炭水化物などの炭水化物150を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子はミトコンドリアが元来有するコレステロール成分などのコレステロール成分を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、検知粒子は約0.05マイクロメートルから約16マイクロメートル、例えば、以下の値のいずれか2つの間にあるいずれの範囲も含めて、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または、16マイクロメートルの直径110を有する。いくつかの実施形態において、検知粒子は約0.01マイクロメートルから約10マイクロメートルの直径110を有する。いくつかの実施形態において、検知粒子は約0.05マイクロメートルから約2マイクロメートルの直径を有する。いくつかの実施形態において、検知粒子は約0.1マイクロメートルから約0.4マイクロメートルの直径を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、検知粒子は第1のミトコンドリアの少なくとも一部および第2(またはそれ以上)のミトコンドリアの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子は3個またはそれ以上のミトコンドリアの少なくとも一部を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、検知粒子は少なくとも部分的に不活性化されている。いくつかの実施形態において、検知粒子は完全に不活性化されている。いくつかの実施形態において、検知粒子は、粒子を形成するために少なくとも1つの細孔を介してミトコンドリアを押し出すことによって不活性化されている。
【0018】
いくつかの実施形態において、検知粒子は1つまたは複数のヘム基120を含む。いくつかの実施形態において、検知粒子内のヘム基の少なくとも80%は、第二鉄状態の鉄原子を含む。例えば、ヘム基の80、85、90、95、99、99.9%、または、それ以上は第二鉄の状態にある。
【0019】
いくつかの実施形態において、検知粒子には、検知粒子の膜にわたる大きな陽子勾配はない。いくつかの実施形態において、検知粒子は無損傷の内膜を有さない。
【0020】
当業者には理解されるように、本開示によれば、ミトコンドリア膜内に存在する化合物はセンサとして有用とすることが可能である。なぜなら、この膜は蛋白質が豊富であり、スペクトルに関して充分な痕跡を持つ多くのシトクロムを含んでいるからである。いくつかの実施形態において、これらの痕跡は1つまたは複数の固有の蛍光ピークを有している。いくつかの実施形態において、他の細胞系膜が使用可能である。実施形態において、生物細胞の外部膜が使用可能である。
【0021】
いくつかの実施形態において、脂質は汚染物質または他の化合物と相互作用を起こし、それによって、(例えば、脂質または脂質と粒子との相互作用を介して)粒子に光学的またはスペクトル上の変化をもたらす立体構造変化を脂質にもたらす。いくつかの実施形態において、粒子の蛍光特性は変化する。いくつかの実施形態において、粒子の吸光特性は変化する。
【0022】
いくつかの実施形態において、蛋白質140は汚染物質または他の化合物と相互作用を起こし、それによって、(例えば、蛋白質または蛋白質と粒子との相互作用を介して)粒子の少なくとも1つの蛍光の状態に変化をもたらす立体構造変化を蛋白質にもたらす。
【0023】
いくつかの実施形態において、炭水化物150は汚染物質または他の化合物と相互作用を起こし、それによって、(例えば、炭水化物または炭水化物と粒子との相互作用を介して)粒子の少なくとも1つの蛍光の状態に変化をもたらす立体構造変化を炭水化物にもたらす。
【0024】
いくつかの実施形態において、検知粒子にはさらに多くの化合物を添加する。例えば、クロロフィルがミトコンドリア粒子に添加可能であり、それによって、クロロフィルと様々な化合物、例えば汚染物質との間で相互作用が可能となる。
【0025】
いくつかの実施形態において、大気質センサ200を提供する(図2)。いくつかの実施形態において、大気質センサは少なくとも1つの検知粒子210を含む。いくつかの実施形態において、大気質センサは支持台221の少なくとも1つの表面220を含む。いくつかの実施形態において、表面220および/または支持台221は半透明または透明である。いくつかの実施形態において、表面220および/または支持台221は透明でない。いくつかの実施形態において、支持台221および/または表面220は可視光が透過可能である。いくつかの実施形態において、支持台221および/または表面220は200から700の波長の光が透過可能である。いくつかの実施形態において、支持台221および/または表面220は、第1の側面から第2の側面へ、第2の側面から第1の側面へ、または、両方向に透過する光の波長を選択するフィルタとして機能する。いくつかの実施形態において、例えば少なくとも1つの検知粒子を励起し、少なくとも1つの検知粒子の蛍光または他の光学特性を観察するために、センサは少なくとも1つの波長の放射線の透過が可能である。
【0026】
いくつかの実施形態において、表面220は放射線230の透過が可能であるように構成されている。いくつかの実施形態において、放射線は第1の波長230のものである。いくつかの実施形態において、放射線は同じく第2の波長231のものである。いくつかの実施形態において、放射線は同じく第3の波長232のものである。いくつかの実施形態において、放射線は同じく第4の波長233のものである。いくつかの実施形態において、放射線は同じく第5の波長234のものである。いくつかの実施形態において、第5の波長に加えて、少なくとも1つの波長の放射線が存在する。いくつかの実施形態において、支持台および/または表面は、検知粒子を励起またはモニタするために使用している波長のいずれかおよび/または全てに対して透明である。
【0027】
いくつかの実施形態において、表面220はスポンジ状物質、例えば透明または半透明のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、表面は発泡体を含む。いくつかの実施形態において、スポンジ状物質は、表面が検知粒子210を保持することを可能にする。いくつかの実施形態において、表面はポリマーを含む。いくつかの実施形態において、スポンジ状物質および/またはポリマーは、検知粒子210に対して、より広い表面積を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、大気質センサは、少なくとも2個の検知粒子、例えば、以下の値のいずれかを超えるいずれの範囲、および、以下の値のいずれか2個の間のいずれの範囲も含めて、10、50、100、200、500、1,000、10,000、100,000、1,000,000、10,000,000、または、100,000,000個の検知粒子を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、検知粒子は表面上で移動不能になっている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの検知粒子は表面に付着している。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの検知粒子は表面に接触するが付着していない。いくつかの実施形態において、少なくとも第1の検知粒子は表面に付着している一方、少なくとも第2の検知粒子は表面に接触しているが、表面に付着していない。いくつかの実施形態において、検知粒子210は表面220に埋め込まれている。例えば、表面が発泡体を含んでいると、検知粒子は発泡体に埋め込み可能である。いくつかの実施形態において、検知粒子は表面に共有結合による架橋で結合されている。いくつかの実施形態において、架橋は特有のものではない。いくつかの実施形態において、架橋はアルデヒドまたはアルデヒドに類似した架橋を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの粒子を表面に付着させるために充分な架橋が存在するが、粒子の分子のほぼ全てを表面と、または、互いとは架橋で結合していない。いくつかの実施形態において、各検知粒子と表面との間では、ほぼ均一な数の結合架橋が達成されている。いくつかの実施形態において、このことはバッチ毎の変動を低減可能である。いくつかの実施形態において、検知粒子210はジスルフィド結合などのように硫黄原子を介して付着されている。いくつかの実施形態において、検知粒子210は表面との疎水性相互作用を介して付着している。いくつかの実施形態において、表面220は、検知粒子との共有結合性または非共有結合性の会合を可能にするために、(疎水性鎖、硫黄族、金などの)化学成分または変異物を含むことが可能である。
【0030】
いくつかの実施形態において、表面は、約200ナノメートルから約600ナノメートル(例えば230、231、232、および、234)の波長の放射線の透過を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態において、放射線は、以下の値のいずれかを下回るいずれの範囲、以下の値のいずれかを超えるいずれの範囲、および、以下の値のいずれか2個の間のいずれの範囲も含めて、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、または、640nmの波長を有する。いくつかの実施形態において、処理は1から5nmの増減量で200から640nmの波長にわたる走査を含むことが可能である。
【0031】
いくつかの実施形態において、支持台221は平坦な表面220を有することが可能である。いくつかの実施形態において、支持台221は湾曲した表面を有することが可能である。いくつかの実施形態において、この表面は平滑とすることが可能である。いくつかの実施形態において、この表面は粗面とすることが可能である。いくつかの実施形態において、支持台は1つまたは複数の粒子および/または小粒子とすることが可能であり、表面220は多数の粒子にわたり効果的に配分することが可能である。
【0032】
いくつかの実施形態において、各センサ200は、これに伴う異なった種類の検知粒子210を有することが可能である。いくつかの実施形態において、各センサは、以下の値のいずれか1つを超えるいずれの範囲、および、以下の値のいずれか2個の間のいずれの範囲も含めて、これに伴う1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100、200、または、500種類の検知粒子を含む。いくつかの実施形態において、各センサ200上では、単一(および/または一致した)種類の検知粒子210を使用する。いくつかの実施形態において、混合物は、試験対象サンプル中の検出可能な品目(例えば、汚染物質)に基づくものである。いくつかの実施形態において、各センサ200上では、検知粒子210の混合物を使用する。いくつかの実施形態において、混合物は、試験対象サンプル中に存在する可能性のある品目に基づくものである。いくつかの実施形態において、混合物は、懸念される品目または検出を所望する品目に基づくものである。
【0033】
いくつかの実施形態において、大気質測定装置300を提供する(図2)。いくつかの実施形態において、大気質測定装置は、大気質センサ200または大気質センサを収容するように構成した空間に、大気を差し向けるように構成した少なくとも1つの大気排出口330を含む。いくつかの実施形態において、大気質測定装置300は、大気質センサ200または大気質センサ200を収容するように構成した空間に放射線を発するように構成した第1の放射源340を含む。いくつかの実施形態において、大気質測定装置は、センサが発した放射線の少なくとも1つの特性を測定するように構成した1つまたは複数の検出器350を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、検出器350および放射源340は大気質センサの同じ側にある(例えば、それによって、放射源340が発した放射線はセンサ200に当たり、これが発した放射線は、上記の放射線が辿った経路を検出器350まで戻る)。いくつかの実施形態において、検出器350および放射源340は大気質センサの互いに反対の側にある(例えば、それによって、放射源340が発した放射線はセンサ200に当たり、これが発した放射線は反対側に発せられ、支持台221を透過し(または、のそばを通り過ぎ)、検出器350に至る)。この配置において、放射吸収などの態様も検査可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、装置300は大気取入れポート310を含む。いくつかの実施形態において、この装置は、ある量の大気を大気質センサ200の部位320に差し向けるように構成した1つまたは複数の大気排出口(例えば、330、360、361、および、362)を含む。いくつかの実施形態において、大気取入れポート310は第1の大気排出口330と流体連通している。
【0036】
いくつかの実施形態において、装置300は、ある量の大気を第2の部位370に差し向けるように構成した第2の大気排出口360を含む。いくつかの実施形態において、装置は、ある量の大気を第3の部位371に差し向けるように構成した第3の大気排出口361を含む。いくつかの実施形態において、装置300は、ある量の大気を第4の部位372に差し向けるように構成した第4の大気排出口362を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、第1、第2、第3、および/または、第4の大気排出口(330、360、361、および、362)は、異なった大きさ、例えば、異なった直径のものであり、それによって、第1、第2、第3、および/または、第4の部位(320、370、371、および/または、372)に異なった量の大気を排出する。いくつかの実施形態において、大気排出口の直径は、以下の値のいずれかを超えるいずれの範囲、および、以下の値のいずれか2個の間のいずれの範囲も含めて、1、2、3、4、5、10、20、50、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000、または、10,000,000マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態において、大きさの範囲は、様々な量の大気および/または流体のサンプルが一回にセンサを横切って移動することを可能にする。いくつかの実施形態において、大気または他の流体によるセンサを横切る移動は連続して行うことが可能である。いくつかの実施形態において、大気または他の流体の移動は、一部が重複する時間および/または同時に行うことが可能である。
【0038】
いくつかの実施形態において、装置300は1つまたは複数の放射源340、350を含むことが可能である。いくつかの実施形態において、放射源340は、センサ200を収容するように構成した空間にほぼ均一な第1の波長を有する放射線を発するように構成されている。いくつかの実施形態において、放射源340ならびに/または(レンズ、鏡、および/もしくは、フィルタなどの)他の放射線差し向けおよび/またはフィルタリングシステムは、放射線の一部または全部を部位320、360、361、および、362の1つまたは複数に差し向けることが可能であり、そのため、部分的に(または、全体として)サンプル用の量の大気または流体への露出を経験中の部位から、光学的励起および/または発光が起こる。
【0039】
いくつかの実施形態において、放射源340はスペクトルの広い放射を発する。いくつかの実施形態において、放射源340ならびに/または(レンズ、鏡、および/もしくは、フィルタなどの)他の放射線差し向けおよび/もしくはフィルタリングシステムは、部位320、360、361、および、362の1つまたは複数に様々な態様の放射線を選択的に差し向けることが可能であり、そのため、部分的に(または、全体として)サンプル用の量の大気への露出を経験中の部位から、光学的励起および/または発光が起こる。いくつかの実施形態において、このことは、同時にモニタすべき検知粒子に起きる様々な光学的態様を可能にする。いくつかの実施形態において、様々な波長、強度、持続時間などの放射線は、部位320、370、371、および、372の1つまたは複数を照射するためにそれぞれ提供され、そのため、1つまたは複数の結果として得られる光学特性はモニタ可能である。
【0040】
いくつかの実施形態において、同じ種類の検知粒子210を各部位において採用可能である。いくつかの実施形態において、検知粒子210は各部位において異なることが可能である。いくつかの実施形態において、一群の各種検知粒子は適切な照射パラメータと組み合わせることが可能であり、それによって、励起のある種類の態様(例えば、強度、波長、持続時間)を、特定の汚染物質を検出するための適切な検知粒子と組み合わせることが可能となる。
【0041】
いくつかの実施形態において、装置300は、部位からの放射線の波長、強度、寿命、または、それらのいずれかの組み合わせを測定するように構成した少なくとも1つの検出器350を含む。いくつかの実施形態において、装置300は2つ以上の検出器を含み、それによって、様々な光学特性(例えば、放射線の波長、強度、吸収特性、FRET、または、寿命)を、同時または並列して測定することが可能となる。いくつかの実施形態において、装置は、検知粒子210から到来する放射を収集するための光学入力を含む。いくつかの実施形態において、この光学入力は、別種の分析のために放射を分割するために分割可能である。
【0042】
いくつかの実施形態において、大気質測定装置300は少なくとも1つの大気取入れポート310を含む。いくつかの実施形態において、設定された流速でこのポートに大気を送り込むための送風機/真空システムが存在する。いくつかの実施形態において、大気は、人々またはバッグをモニタするための保安システムなどの検査区画から採取する、および/または、パイプで送られる。
【0043】
いくつかの実施形態において、各放射源は、大気排出口が大気を溜める各部位の全てに放射線を差し向けるように構成されている。いくつかの実施形態において、各放射源は、約200ナノメートルから約600ナノメートルの波長230を有する放射線を発するように構成されている。いくつかの実施形態において、放射線は、200nmから640nm、例えば、以下の値のいずれか2個の間のいずれの範囲も含めて、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、または、640nmの波長を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、大気質測定装置300は少なくとも1つの大気質センサ200を含み、このセンサは支持台に付着した検知粒子を含む。いくつかの実施形態において、大気質測定装置300は、大気質センサを収容するように構成した空間を含む。例えば、空間は、大気質センサを定置するように構成されている一方、大気または別の流体をこの空間に差し向けることを可能にし、放射線が空間を照射することを可能にし、かつ、発せられた放射線を収集および/または分析することを可能にする。
【0045】
いくつかの実施形態において、大気取入れポート310は、設定された流速の大気の流れを作り出し、この大気の流れは、リアルタイムの用量反応を得るために各大気排出口(例えば、第1および第2大気排出口、第1、第2、および、第3大気排出口、第1、第2、第3、および、第4大気排出口、または、第1、第2、第3、第4、および、少なくとも1つの追加の大気排出口)に差し向けられる。いくつかの実施形態において、排出口のうちの2つの間の大きさの差は、用量反応を作り出すために大気を分離する。したがって、いくつかの実施形態において、装置300は、同時に作り出された各用量反応の曲線を作成可能である。なぜなら、異なった量の大気サンプルを同時に試験することが可能だからである。
【0046】
いくつかの実施形態において、大気取入れポート310または大気取入れポートと流体連通している小室は、大気の流れを各大気排出口に差し向け、それによって、各大気排出口に差し向けた大気の各流れは異なった圧力を有し、それによって、用量反応を作り出す。
【0047】
いくつかの実施形態において、大気取入れポート310または大気取入れポートと流体連通している小室は異なった露出持続時間を達成し、それによって、用量反応を作り出すように大気の流れを各大気排出口に差し向ける。いくつかの実施形態において、用量反応はその大きさを数オーダにわたって変化可能である。
【0048】
いくつかの実施形態において、装置は、大気および/または流体が溜まらない対照用部位を有するように構成されている。いくつかの実施形態において、対照用部位は、汚染物質の不在が知られている大気を収容する。いくつかの実施形態において、対照用部位は、濾過済みの大気を収容する。いくつかの実施形態において、対照用部位は、検索すべき汚染物質の不在が知られている大気を収容する。いくつかの実施形態において、対照用部位は、既知の量の汚染物質を含む大気を収容する。
【0049】
いくつかの実施形態において、大気質測定装置300は並列蛍光定量を提供および/または可能にするように構成されている。いくつかの実施形態において、検出器350は、約200nmから約700nmなどの様々な励起波長の放射線放出を収集する。いくつかの実施形態において、装置は、収集した各波長について時間分解能を測定し、それによって、半減期の算出が可能となる。いくつかの実施形態において、装置は半減期を決定する。いくつかの実施形態において、装置はある範囲の励起波長を走査し、ある範囲の波長にわたって放射強度および寿命を測定する。いくつかの実施形態において、装置は、ある範囲の励起波長および放射波長にわたり走査した蛍光強度および半減期の測定値を得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、装置は1、2、3、4、5、6、7、8、9、または、10個の項目、すなわち、蛍光の強度x、励起波長x、放射波長x、用量x、および、時間、ならびに、蛍光の寿命x、励起波長x、放射波長x、用量x、および、時間の測定値をリアルタイムで作成する。いくつかの実施形態において、装置はリアルタイムの測定値をコンピュータによって組み合わせ、用量に依存する蛍光痕跡を作成する。実施形態において、これのための装置および構成部分も熟考している。
【0051】
上記に述べたように、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の検知粒子と様々な化合物、例えば汚染物質との間の分子間相互作用は、検知粒子の蛍光痕跡を変化させる。いくつかの実施形態において、装置は蛍光痕跡の変化を算出または決定する。いくつかの実施形態において、これは、蛍光痕跡のサンプルと対照用蛍光痕跡との比較によって行う。いくつかの実施形態において、対照用蛍光痕跡はデータベースおよび/またはコンピュータ読取り可能な媒体からのものである。いくつかの実施形態において、対照用蛍光痕跡は、サンプルと同時におよび/または平行して得る。いくつかの実施形態において、対照用蛍光痕跡は、サンプルの蛍光痕跡を作り出すために、蛍光痕跡から自動的に差し引く。いくつかの実施形態において、蛍光痕跡(または最終的な蛍光痕跡)のこの変化は、既知の化合物の様々な蛍光痕跡と比較する。いくつかの実施形態において、一致(および/または部分的一致)を確認すると、大気および/または流体中の汚染物質が同定される。いくつかの実施形態において、一致が得られなくともよいが、代わりに、ベースライン対照レベルを超えた蛍光痕跡のいずれの変化も汚染物質の存在を示し得る。いくつかの実施形態において、装置または装置と連動したコンピュータ(および/またはコンピュータ読取り可能媒体)は、本明細書に記載した方法および/または処理のいずれかのためのコードを実行および/または保存するようにプログラムされている。例えば、いくつかの実施形態において、このコンピュータおよび/またはコンピュータ読取り可能媒体は、サンプルの一体積内の化合物の種類および用量を決定するために、既知の汚染物質が引き起こした変化同士を比較する。いくつかの実施形態において、装置(および/またはコンピュータ読取り可能媒体)は、少なくとも1つの未知の化合物が引き起こした変化を検出および/または同定する。いくつかの実施形態において、装置はデータベースに動作の面で接続され、可能性のある今後の同定のために、コンピュータ読取り可能媒体上に、既知および/もしくは未知の汚染物質および/もしくは化合物ならびに/または対照用試料の情報を保存している。いくつかの実施形態において、装置および/またはコンピュータ読取り可能媒体は、化合物の濃度および/または濃度の変化を決定するために、比較を行うように構成されている。
【0052】
いくつかの実施形態において、装置および/またはコンピュータ読取り可能媒体上のコードは自己学習する。いくつかの実施形態において、データセットを得て、装置の自己学習機能は非常に敏感かつ堅牢な検出結果を提供する。いくつかの実施形態において、大気のサンプル中の最初は未知の化合物が、その後の試験(例えば、サンプルの蛍光痕跡と一部にせよ全体にせよ一致する蛍光痕跡を既知の汚染物質が作成するまで様々な既知の汚染物質で試験を続けること)によって一旦同定されれば、その結果をデータベースおよび/またはコンピュータ読取り可能媒体に追加し、それによって、次回にこの痕跡と比較を行うことが可能となる。
【0053】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した動作、処理などのいずれもがコンピュータ読取り可能媒体上に保存したコンピュータ読取り可能指示として実施可能である。コンピュータ読取り可能指示は移動体内のプロセッサ、ネットワーク要素、および/または、他のいずれかの演算装置によって実行可能である。
【0054】
システムの側面でのハードウェアの実装形態とソフトウェアの実装形態との間には、ほとんど相違が残されていない。ハードウェアまたはソフトウェアの使用は、一般に(いつもそうではないが、ある状況ではハードウェアとソフトウェアの間の選択が重要になり得るという点で)コスト対効果のトレードオフを表す設計上の選択である。本明細書に記載された、プロセスおよび/またはシステムおよび/または他の技術をもたらすことができる様々な達成手段があり(例えば、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェア)、好ましい達成手段は、プロセスおよび/またはシステムおよび/または他の技術が導入される状況によって異なる。例えば、実装者が速度と正確性が最も重要であると決定すると、実装者は主にハードウェアおよび/またはファームウェアの達成手段を選択することができる。フレキシビリティが最も重要なら、実装者は主にソフトウェアの実装形態を選択することができる。または、さらに別の代替案として、実装者は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアのなんらかの組み合わせを選択することができる。
【0055】
詳細な説明では、ブロック図、フローチャート、および/または例の使用によって、装置および/またはプロセスの様々な実施形態を説明してきた。そのようなブロック図、フローチャート、および/または例が1つまたは複数の機能および/または動作を含む限りにおいて、そのようなブロック図、フローチャート、または例の中のそれぞれの機能および/または動作は、広範囲のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または実質上それらの全ての組み合わせにより、個別におよび/または集合的に実装可能であることが、当業者には理解されるであろう。ある実施形態では、本明細書に記載された主題のいくつかの部分は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または他の集積化方式によって実装することができる。しかし、本明細書で開示された実施形態のいくつかの態様が、全体においてまたは一部において、1つまたは複数のコンピュータ上で動作する1つまたは複数のコンピュータプログラムとして(例えば、1つまたは複数のコンピュータシステム上で動作する1つまたは複数のプログラムとして)、1つまたは複数のプロセッサ上で動作する1つまたは複数のプログラムとして(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ上で動作する1つまたは複数のプログラムとして)、ファームウェアとして、あるいは実質上それらの任意の組み合わせとして、等価に集積回路に実装することができることを、当業者は認識するであろうし、電気回路の設計ならびに/またはソフトウェアおよび/もしくはファームウェアのコーディングが、本開示に照らして十分当業者の技能の範囲内であることを、当業者は認識するであろう。さらに、本明細書に記載された主題のメカニズムを様々な形式のプログラム製品として配布することができることを、当業者は理解するであろうし、本明細書に記載された主題の例示的な実施形態が、実際に配布を実行するために使用される信号伝達媒体の特定のタイプにかかわらず適用されることを、当業者は理解するであろう。信号伝達媒体の例には、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ、CD、DVD、デジタルテープ、コンピュータメモリ、などの記録可能なタイプの媒体、ならびに、デジタル通信媒体および/またはアナログ通信媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波管、有線通信リンク、無線通信リンクなど)の通信タイプの媒体が含まれるが、それらには限定されない。
【0056】
本明細書で説明したやり方で装置および/またはプロセスを記載し、その後そのように記載された装置および/またはプロセスを、データ処理システムに統合するためにエンジニアリング方式を使用することは、当技術分野で一般的であることを当業者は認識するであろう。すなわち、本明細書に記載された装置および/またはプロセスの少なくとも一部を、妥当な数の実験によってデータ処理システムに統合することができる。通常のデータ処理システムは、一般に、システムユニットハウジング、ビデオディスプレイ装置、揮発性メモリおよび不揮発性メモリなどのメモリ、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ、オペレーティングシステムなどの計算実体、ドライバ、グラフィカルユーザインタフェース、およびアプリケーションプログラムのうちの1つもしくは複数、タッチパッドもしくはスクリーンなどの1つもしくは複数の相互作用装置、ならびに/またはフィードバックループおよびコントロールモータを含むコントロールシステム(例えば、位置検知用および/もしくは速度検知用フィードバック、コンポーネントの移動用および/もしくは数量の調整用コントロールモータ)を含むことを、当業者は理解するであろう。通常のデータ処理システムは、データコンピューティング/通信システムおよび/またはネットワークコンピューティング/通信システムの中に通常見られるコンポーネントなどの、市販の適切なコンポーネントを使用して実装することができる。
【0057】
本明細書に記載された主題は、様々なコンポーネントをしばしば例示しており、これらのコンポーネントは、他の様々なコンポーネントに包含されるか、または他の様々なコンポーネントに接続される。そのように図示されたアーキテクチャは、単に例にすぎず、実際には、同じ機能を実現する多くの他のアーキテクチャが実装可能であることが理解されよう。概念的な意味で、同じ機能を実現するコンポーネントの任意の構成は、所望の機能が実現されるように効果的に「関連付け」される。したがって、特定の機能を実現するために組み合わされた、本明細書における任意の2つのコンポーネントは、アーキテクチャまたは中間のコンポーネントにかかわらず、所望の機能が実現されるように、お互いに「関連付け」されていると見ることができる。同様に、そのように関連付けされた任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「動作可能に接続」または「動作可能に結合」されていると見なすこともでき、そのように関連付け可能な任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「動作可能に結合できる」と見なすこともできる。動作可能に結合できる場合の具体例には、物理的にかみ合わせ可能な、および/もしくは物理的に相互作用するコンポーネント、ならびに/またはワイヤレスに相互作用可能な、および/もしくはワイヤレスに相互作用するコンポーネント、ならびに/または論理的に相互作用する、および/もしくは論理的に相互作用可能なコンポーネントが含まれるが、それらに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、大気質を検知する方法を提供する(図3A)。いくつかの実施形態において、この方法は第1の検知粒子を準備すること(ブロック400)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は検知粒子を、ある量の試験対象大気に接触させること(ブロック403)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は第1の量の放射線を検知粒子に照射すること(ブロック406)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は検知粒子が発した放射線の光学特性を測定すること(ブロック408)を含む。
【0059】
当業者は、本明細書に記載したこの、および、他の処理および方法について、それらの処理および方法で実行される機能が異なった順序で実施可能であることを理解されよう。さらに、概略を示した工程および動作は例としてのみ提供され、かつ、開示の実施形態の本質を損なわなければ、それらの工程および動作の一部は任意でよく、より少ない工程および動作に組み合わせてもよく、または、さらに多くの工程および動作に拡張してもよい。
【0060】
本明細書で提供した様々な装置および構成要素は、様々な方法に対して採用可能である。いくつかの実施形態において、汚染物質を比較および/または同定する方法は、第1の検知粒子を準備すること(ブロック410)を含む(図3B)。いくつかの実施形態において、この方法は検知粒子を、ある量の試験対象大気に接触させること(ブロック420)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は検知粒子に第1の量の放射線を照射すること(ブロック430)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は検知粒子が発した放射線の光学特性を測定すること(ブロック440)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は検知粒子が発した放射線の光学特性を測定することを含む。いくつかの実施形態において、サンプルに露出された時に検知粒子が発する放射線の光学特性または「痕跡」は、サンプル中に汚染物質が存在するか否かを識別するためのどのような数の方法においても使用する。この方法は、いくつかの実施形態において、どんな種類のどんな量などの汚染物質が存在するかも同定可能である。いくつかの実施形態において、これは、作成された蛍光痕跡、(対照用サンプルとの比較における)作成された蛍光痕跡における変化、ならびに/または、様々な既知のおよび/もしくは対照用サンプルの1つまたは複数の蛍光痕跡に対する蛍光痕跡(および/またはその変化)の比較結果を観察することによって達成可能である。
【0061】
いくつかの実施形態において、光学特性は、発せられた放射線の波長、発せられた放射線の強度、フェルスター共鳴エネルギー転移、光退色、吸収光の波長もしくは量、または、蛍光の寿命の少なくとも1つを測定することを含む。いくつかの実施形態において、光学特性は、ストークス偏移および/または量子収量を測定することを含む。いくつかの実施形態において、光学特性は、より短い波長の発光につながる二光子吸収をモニタすることを含む。いくつかの実施形態において、光学特性は、蛍光の変動、光退色後の蛍光の復活(FRAP)、および/または、蛍光消光を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、方法は、検知粒子に第2の量の放射線を照射することを含み、第2の量の放射線は第1の量の放射線とは実質的に異なる波長を有する(ブロック450)。いくつかの実施形態において、方法は、第2の単離不活性化粒子を準備すること(ブロック460)を含む。いくつかの実施形態において、方法は、第2の検知粒子を第2の量の試験対象大気に接触させること(ブロック470)を含む。いくつかの実施形態において、方法は、第2の検知粒子に第2の量の放射線を照射することを含み、第2の量の放射線は第1の量の放射線とは実質的に異なる波長を有する。いくつかの実施形態において、方法は、第2の検知粒子が発した放射線の光学特性を、既知の汚染物質の光学特性と比較すること(ブロック480)を含む。いくつかの実施形態において、ある量の試験対象大気は少なくとも1つの既知の化合物を含む(ブロック490)。いくつかの実施形態において、ある量の試験対象大気は少なくとも1つの未知の化合物を含む(ブロック495)。
【0063】
いくつかの実施形態において、データは、リアルタイムの用量反応曲線を提供するために少なくとも2つの異なった量の大気について収集する。例えば、収集を設定した各波長について(例えば、励起および発光の波長の三次元走査)、蛍光の強度および蛍光の寿命の双方について用量反応曲線を確定可能である。いくつかの実施形態において、定期的な間隔で取った測定値を使用してデータセットを繰り返し収集する。間隔は所望のものとすることが可能であり、かつ、応用例に固有のものとすることも可能であり、可能ないくつかの時間は、以下の値のいずれかを下回るいずれの範囲、以下の値のいずれかを超えるいずれの範囲、および、以下の値のいずれか2個の間のいずれの範囲も含めて、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、もしくは、50秒間毎、または、1、2、3、4、もしくは、5分間毎である。
【0064】
いくつかの実施形態において、方法は、ミトコンドリア膜に第2の量の放射線を照射することを含み、第2の量の放射線は第1の量の放射線とは実質的に異なった波長を有する。いくつかの実施形態において、第2の量の放射線は、約200nmから約640nm、例えば、以下の値のいずれか2個の間のいずれかの範囲を含めて、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、または、640nmの波長を有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、少なくとも第1の量の放射線は、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または、さらに多くの検知粒子に照射する。いくつかの実施形態において、少なくとも第2の量の放射線は、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または、さらに多くの検知粒子に照射する。
【0066】
いくつかの実施形態において、検知粒子が発した放射線の光学特性は、既知の汚染物質の光学特性と比較する。いくつかの実施形態において、光学特性は第1の検知粒子のものである。いくつかの実施形態において、光学特性は第2の検知粒子のものである。いくつかの実施形態において、光学特性は第1および第2の検知粒子のものである。
【0067】
いくつかの実施形態において、ある量の試験対象大気は少なくとも1つの未知の化合物を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの未知の化合物の少なくとも1つの光学特性は、データベース、例えば、コンピュータ読取り可能媒体に保存されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの未知の化合物の少なくとも1つの光学特性は、今後の同定のためにデータベースに保存されている。いくつかの実施形態において、未知の化合物の正体を知るか、または、未知の化合物の機能的特性を得て、データベースをこの正体または機能的特性で更新し、それによって、以前は未知であった化合物の今後の同定が可能となる。
【0068】
いくつかの実施形態において、特定の汚染物質または汚染物質の量について、少なくとも1つの参照痕跡を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、既知の化合物の少なくとも1つの光学特性を提供および/または決定可能である。いくつかの実施形態において、参照痕跡は多数の蛍光ピークおよび谷を有することが可能であり、そのそれぞれは、それに伴う蛍光半減期(または、他の光学特性)を有する。いくつかの実施形態において、対照用センサは、この基線痕跡を確立および/または保持可能である。したがって、いくつかの実施形態において、他のチャンネルからのデータを参照痕跡と比較可能であり、センサとの分子間相互作用による相違を高い感度で決定可能である。いくつかの実施形態において、参照痕跡はコンピュータ読取り可能媒体に保存可能である。いくつかの実施形態において、参照痕跡は陽性対照である。いくつかの実施形態において、コンピュータまたは他の装置は1つまたは複数の参照痕跡を(検知粒子を介して)サンプルが作り出した蛍光痕跡と比較可能であり、かつ、両者の間で共通のピークを同定可能である。いくつかの実施形態において、サンプル痕跡が参照痕跡に充分に類似している場合、一致を宣言することが可能である。いくつかの実施形態において、サンプル痕跡は参照痕跡のピークの少なくとも全てを有するが、いくつかの実施形態において、さらに多くのピークを有することが可能である。
【0069】
いくつかの実施形態において、検知粒子内の分子に化合物が結合し、粒子の蛍光(または他の光学特性)を変える構造変化を引き起こした場合、その化合物は光学特性の特定の痕跡を伴う。例えば、光学特性の痕跡は、ピーク/谷強度および半減期、ストークス偏移の変化、新ピーク/谷の出現、ならびに/または、システム内に存在するいずれかのFRETの変化のいずれか1つまたは複数を変化させるものとして明示可能である。いくつかの実施形態において、痕跡の変化は化合物に独特なものであり、用量反応曲線によって説明可能である。いくつかの実施形態において、化合物は独特な時間痕跡を有する。いくつかの実施形態において、痕跡の変化の全体ならびに差分変化(例えば、異なった波長での時間反応および用量反応の曲線の傾き)は、検知粒子と特定の化合物との相互作用を説明するために使用可能である。いくつかの実施形態において、上記のいずれも、サンプルの蛍光痕跡および/または参照の蛍光痕跡の作成のために使用可能である。
【0070】
いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なった量の試験対象大気を、少なくとも2つの異なった検知粒子に適用し、用量反応曲線が算出可能となる。いくつかの実施形態において、既知の量の化合物についての用量反応曲線は、その量の試験済みの大気からの用量反応曲線と比較し、それによって、その量の試験済みの大気中の化合物の濃度を決定する。いくつかの実施形態において、この曲線の導関数または第2導関数は情報をもたらす。いくつかの実施形態において、多数の用量反応曲線(例えば、強度および寿命の各曲線)ならびに、それらの導関数は、痕跡を提供するために作成する。したがって、いくつかの実施形態において、検知粒子が測定中の化合物の核種、例えば汚染物質の正体および/または濃度は、痕跡の適合を介して決定可能である。
【0071】
いくつかの実施形態において、並列蛍光光度分析が実行可能である。いくつかの実施形態において、各放射線放出は同時に測定する。いくつかの実施形態において、収集した各波長に対する時間分解能のデータを測定し、それによって、半減期の算出が可能となる。いくつかの実施形態において、ある範囲の励起波長を走査し、その波長範囲にわたる発光の強度および寿命を測定する。いくつかの実施形態において、ある範囲の励起および発光の波長にわたって走査した蛍光の強度と半減期の測定値を得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または、それ以上の項目のリアルタイムの測定値、例えば、第1の量の放射線についての蛍光の強度x、励起波長x、発光波長x、用量x、時間、ならびに、第2の量の放射線についての蛍光の寿命x、励起波長x、発光波長x、用量x、および、時間がもたらされる。いくつかの実施形態において、リアルタイムの測定値をコンピュータによって組み合わせ、用量に依存する蛍光痕跡を作成する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの汚染物質と検知粒子の少なくとも1つの成分との間の少なくとも1つの分子間相互作用が蛍光痕跡を変化させる。いくつかの実施形態において、蛍光痕跡の変化を算出し、既知の化合物が引き起こした変化と比較して、汚染物質の種類と用量を決定する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの未知の化合物が引き起こした変化も検出する。いくつかの実施形態において、この変化をデータベースに追加する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの未知の化合物が引き起こした変化を今後の同定のために使用する。
【0073】
いくつかの実施形態において、測定値は、既知の濃度の既知の化合物を使用して最初に較正し、それらの痕跡を確立する。異なった汚染物質はそれぞれ異なった形でセンサの分子の組立てと相互作用を起こすので、多くの異なった分子およびそれらの組み合わせについて独特な痕跡を決定するためにデータセットを充分堅牢にすることが可能である。
【0074】
いくつかの実施形態において、大気のサンプルをモニタし、既知のデータセット内の痕跡に対応しない「未知の痕跡」を同定する。いくつかの実施形態において、未知の痕跡は、これがきっかけとなって、例えばGC−MSまたはGC−FTIRの技術を使用した継続分析についての警告を出させる。この化合物の組成または機能的特性の今後の同定結果はデータベースに入力可能であり、それによって、その化合物の今後の同定が可能となる。いくつかの実施形態において、データセットはコンピュータ読取り可能媒体に入力する。
【0075】
いくつかの実施形態において、図4に概略を示したように、大気質検知粒子を作製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、少なくとも1つのミトコンドリア(または、その膜)を含むサンプルを準備すること(ブロック510)を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、検知粒子が形成されるように少なくとも1つの細孔を介してミトコンドリアを押し出すこと520を含み、それによって、大気質検知粒子を作製する540。
【0076】
ミトコンドリアは、例えば、肝臓またはその抽出物のような食肉処理場からの臓物などの多くの供給源から入手可能である。いくつかの実施形態において、ミトコンドリアは、細胞を破裂させるための標準的な技術を使用して単離し、残骸および細胞小器官を除去する。いくつかの実施形態において、ミトコンドリアは標準的な技術を使用して精製する。いくつかの実施形態において、精製済みのミトコンドリアを使用して、設定されたサイズの少なくとも1つの細孔を介してこのミトコンドリアを押し出すことによってミトコンドリア粒子を作製し、それによって、ミトコンドリアを均質化する。いくつかの実施形態において、ミトコンドリアを使用しないが、代わりにミトコンドリア膜に存在する蛋白質、脂質、および、他の分子を収集し、それらを使用して人工膜を作製する。したがって、全ての実施形態において、検知粒子はミトコンドリア由来のもの、または、ミトコンドリアの形である必要はない。いくつかの実施形態において、細孔は約0.5マイクロメートルから16マイクロメートル、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは、16ミクロン、または、これらの値のいずれか2個の間の範囲の直径を有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの細孔を介してミトコンドリアを押し出すことは検知粒子を不活性化する。例えば、少なくとも1つの細孔を介してミトコンドリアを押し出すことは、ミトコンドリアの内膜を破壊し、それによって、それらの内膜にわたる全ての実質的な陽子勾配を排除し、それによって、検知粒子を不活性化する。
【0078】
いくつかの実施形態において、押し出すことは、様々な検知粒子にわたる安定したベースラインおよび/または一貫性を提供するようにミトコンドリア粒子を不活性化する。いくつかの実施形態において、検知粒子は部分的に不活性化する。いくつかの実施形態において、検知粒子は完全に不活性化する。いくつかの実施形態において、不活性化は、少なくとも部分的には、ミトコンドリアまたは検知粒子を脱結合剤、例えばFCCPに接触させることによって行う。
【0079】
いくつかの実施形態において、不活性化は、少なくとも部分的には、ミトコンドリアまたは検知粒子を還元剤、例えば金属に接触させることによって行う。
【0080】
さらなる代替実施形態
いくつかの実施形態において、低コストの大気質モニタリングを提供可能である。いくつかの実施形態において、大気質モニタリングのための携帯用の解決策を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書では、様々な大気汚染物質について適切な識別能力を提供する低コストの携帯用大気質モニタリングシステムを提供する。
【0081】
いくつかの実施形態において、ミトコンドリアから生成した粒子は、スペクトル活物質ならびに多くの既知の汚染物質に対する結合相手の双方を非常に広い範囲で提供する。いくつかの実施形態において、完全に活性化したミトコンドリアは、その不安定性と、したがって、変化を続けるベースラインのために非実用的である。そのため、代わりに、不活性化したミトコンドリア粒子を使用する。
【0082】
いくつかの実施形態において、痕跡のデータセット(例えば、対照用および/または参照用および/またはサンプルの各痕跡)は、サンプルと相互作用を起こす分子の様々な用量とともに変化する蛍光のピークおよび谷を測定することによってさらに強化可能である。いくつかの実施形態において、独特な分子間相互作用は、独特な痕跡を、この作用が変化させたピークおよび谷にだけではなく出現させ得るが、独特な用量反応によって説明される。したがって、いくつかの実施形態において、参照用痕跡およびサンプルの痕跡の双方について用量反応痕跡を得て、用量反応曲線を比較することが可能である。いくつかの実施形態において、この決定は複合混合物中の独特な分子間相互作用の区別を可能にし、それらの核種だけでなく、任意でそれらの濃度も決定する。
【実施例1】
【0083】
大気質センサの作製
本実施例は大気質センサの作製方法の概略を示す。一群の細胞を集め、それらの細胞からのミトコンドリアを単離する。単離したミトコンドリアは、約1マイクロメートルの平均直径を有する粒子を形成するように細孔膜を介して押し出す。これらの粒子は表面上に固定され、少なくとも幾分かの粒子は大気交換に露出させるか、または、露出可能とし、これによって、大気質センサを作製する。
【実施例2】
【0084】
別の大気質センサの作製
本実施例は大気質センサを作製するための別の方法を開示する。一群の細胞を集め、それらの細胞からのミトコンドリアを単離する。単離したミトコンドリアは、約2マイクロメートルの平均直径を有するさらに小さな粒子を作製するために分画し、かつ、超音波分解する。これらの粒子は、金で被覆した表面の上に固定され、これによって、大気質センサを作製する。
【実施例3】
【0085】
別の大気質センサの作製
本実施例は大気質センサの作製するための別の方法を開示する。蛋白質、炭水化物、および、脂質の混合物を作製する。蛋白質、炭水化物、および、脂質の選択は、ミトコンドリア膜内でのこれらの蛋白質、炭水化物、および、脂質の既知の存在に基づく。この混合物を超音波分解し、疎水性表面上に単分子膜を形成することを可能とし、これによって、大気質センサを形成する。
【実施例4】
【0086】
大気のサンプルの試験
本実施例は大気質を検知する方法の概略を示す。単離して不活性したミトコンドリア膜を含む大気質センサを提供する。ある量の試験対象大気を集めることが可能であり、試験対象大気が膜と接触するように大気質センサに差し向けることが可能である。大気が膜と接触する間、430nmの波長の光を膜に照射し、膜が発する光の波長を検出する。(照射に使用した光から)検出した光の波長の変化は、大気の質においてどのような分子が存在する可能性があるかを、例えば既知の汚染物質が引き起こした光学的変化と比較することによって決定するために使用する。
【実施例5】
【0087】
サンプル大気の試験
本実施例は大気質を検知するための別の方法を開示する。多数の不活性化検知粒子を含む大気質センサを提供する。いくつかの異なった量の試験対象大気を集め、試験対象大気が異なったミトコンドリア粒子と接触するようにそれぞれの量を異なった部位における大気質センサに差し向ける。大気が粒子と接触している間、粒子に照射するために300nmから600nmの波長を持つ広いスペクトルの光を使用する。膜が発した光の波長の変化、膜からの蛍光の寿命、および、光退色を別個の部位毎にモニタする。これらの変化は、一旦異なった部位に差し向けた様々な量の大気と関連させると、大気サンプル中の様々な物質の内容および量に関した情報を提供する。代替形態において、励起/発光の全体像を決定するために、1nmの増減量で300nmから600nmを走査し、各工程でデータを収集することが可能である。
【実施例6】
【0088】
サンプルのデータベース
本実施例は大気汚染物質データベースを開発する方法の概略を示す。不活性化検知粒子を含む大気質センサを提供する。既知の量の汚染物質を含む大気のサンプルを検知粒子に対して連続的に流す。各サンプルが粒子に接触すると、粒子にスペクトルの広い放射線を照射し、異なった汚染物質を有した各サンプルが粒子と接触する間、粒子が発した放射線の光学特性をモニタする。(汚染物質に露出された時の粒子の)最終的な光学特性、および、粒子の(既知の汚染物質を有する大気のサンプルに対する清浄な大気からの)光学特性の変化の双方は、記録可能であり、それらの個々のサンプル汚染物質に関連付けることが可能であり、データベースに保存可能である。検査した光学特性は、a)発した放射線の1つまたは複数の波長、b)発した放射線の強度、c)フェルスター共鳴エネルギー転移、d)光退色、またはe)蛍光の寿命の1つまたは複数を含む。これらの基線対照実験およびこれらの実験からの光学特性の同定を実行することによって、大気または他の流体中の様々な物質を同定するために使用可能な光学的痕跡のライブラリが作成可能となる。
【実施例7】
【0089】
用量反応曲線による大気のサンプルの試験
本実施例は大気質を検知するための別の方法を開示する。多数の不活性化検知粒子を含む大気質センサを提供する。大気サンプルが検知粒子に対して流れている間、検知粒子を240nmで照射し、200nmから500nmでの放射線放出について検知粒子をモニタする。大気のサンプルの少なくとも3つの異なった用量を使用してサンプルの蛍光の用量反応曲線を作成する。作成した用量反応曲線を用量反応参照用曲線のライブラリと比較する。サンプルの用量反応曲線に存在する参照用曲線を同定し、それによって、サンプル中に存在する汚染物質を同定する。
【0090】
本開示は、様々な態様の例示を意図した本出願に記載した特定の実施形態に関して限定するものではない。当業者には明らかなように、本開示の精神および範囲から逸脱せずに多くの改変および変更を行うことが可能である。本明細書で列挙した方法および装置に加えて、本開示の範囲内にある機能的に等価な方法および装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。このような改変および変更は従属する特許請求の範囲の範囲内に該当すると考えられる。本開示は、従属する特許請求の範囲の文言によってのみ、その特許請求の範囲が権利を与える等価物の全範囲とともに、限定されるものである。本開示が、当然変化し得る特定の方法、試薬、化合物、組成、または、生物学的システムに限定されないことは理解されよう。本明細書で使用した用語が特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定を意図していないことも理解されよう。
【0091】
本明細書における実質的に全ての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、当業者は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。
【0092】
通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることが、当業者には理解されよう(例えば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む実施形態に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0093】
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点から説明されている場合、当業者は、マーカッシュグループのいずれかの個々の要素または要素のサブグループに関しても本開示が同観点によって説明されていることを理解されよう。
【0094】
当業者が理解されるように、書面での説明を提供する観点など、いずれかの、および、全ての目的のために、本明細書に開示した全ての範囲はそれらの範囲のいずれかの、および、全ての考えられる下位範囲および下位範囲の組み合わせをも包含している。列挙したいずれの範囲も、少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などされたその範囲を充分に説明および可能にすることを、容易に理解できよう。非限定的な例として、本明細書で検討された各範囲は、下部三分の一、中央三分の一、および、上部三分の一などに容易に分割可能である。当業者が同じく理解されるように、「まで」、「少なくとも」などの全ての用語は引用した数を含み、かつ、上記に検討したように後に下位範囲に分割可能な範囲を指す。最後に、当業者が理解されるように、範囲はそれぞれの個々の要素を含む。したがって、例えば、1から3個の細胞を有する群は、1、2、または、3個の細胞を有する群を指す。同じく、1から5個の細胞を有する群は1、2、3、4、または、5個の細胞を有する群を指し、以下、同様である。
【0095】
前述の内容より、本明細書では例示の目的のために本開示の様々な実施形態を記載したこと、および、本開示の範囲および精神から逸脱せずに様々な変更が可能であることを理解されよう。したがって、本明細書で開示した様々な実施形態は限定を意図せず、真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示す。
図1
図2
図3A
図3B
図4