(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965495
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】フィロケイ酸塩上の階層的に秩序化された無機リン酸塩構造体を得るための方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/40 20060101AFI20160721BHJP
C01B 25/36 20060101ALI20160721BHJP
C01B 25/37 20060101ALI20160721BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
C01B33/40
C01B25/36 Z
C01B25/37 Z
C09K21/04
【請求項の数】47
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-548113(P2014-548113)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公表番号】特表2015-509069(P2015-509069A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】ES2012070340
(87)【国際公開番号】WO2013093139
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】P201132063
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】506129359
【氏名又は名称】トルサ・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】TOLSA, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・エステバン・クビリョ
(72)【発明者】
【氏名】フリオ・サンタレン・ロメ
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド・アギラル・ディエス
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・アルバレス・ベレンゲル
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・パラシオス・サンブラノ
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ピラル・レレット・モルト
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・フランシスコ・フェルナンデス・ロサノ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・エリオドロ・デ・アサ・モヤ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・アンヘル・ロドリゲス・バルベロ
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−046222(JP,A)
【文献】
特開昭54−046223(JP,A)
【文献】
特開昭53−075220(JP,A)
【文献】
特開昭54−007424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 39/54
C01B 25/36 − 25/46
C09K 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィロケイ酸塩の表面上で均質に堆積した無機リン酸塩粒子が階層的に秩序化された構造体の製造方法であって、
a)無機リン酸塩の前駆体化合物の酸性溶液を得る工程、
b)水性媒体を用いてフィロケイ酸塩粒子分散液を調製し、少なくとも1種の酸を添加して該フィロケイ酸塩分散液を酸性化することにより、酸性分散液を得る工程、
c)工程a)で得られた酸性溶液と、工程b)で得られた分散液を混合する工程、
d)撹拌しながら、フィロケイ酸塩粒子上に、対応する無機リン酸塩が堆積するのに必要なpH値に到達するまで、工程c)で得られた混合物に塩基を添加し、フィロケイ酸塩表面に担持された、均質に分散したサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子が階層的に秩序化された構造体を生成する工程を含む、製造方法。
【請求項2】
無機リン酸塩の前駆体化合物の酸性溶液が、少なくともリン酸を含有する酸性溶液中に少なくとも1種のカチオンの前駆体化合物を溶解させることにより得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程a)における無機リン酸塩の前駆体化合物の酸性溶液が、
a1)無機リン酸塩の少なくとも1種の前駆体カチオン化合物の溶液または分散液を調製する工程、および
a2)少なくともリン酸を含有する酸性溶液を、工程a1)で調製した溶液または分散液に添加する工程、
を用いることにより得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程d)の後に、
e)固体/液体分離工程を用いることにより、水性分散液のフィロケイ酸塩表面に担持され、均質に分散したサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子が階層的に秩序化された構造体を分離し、次いで、溶液中の未堆積試薬を除去するために、水を用いて、階層的に秩序化された構造体を洗浄する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
工程d)またはe)の後に、
工程f)フィロケイ酸塩表面に均質に分散し担持されたサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子が階層的に秩序化された構造体の表面を有機化するために、有機修飾剤またはカップリング剤を添加する工程を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
階層的に秩序化された構造体の固体/液体分離が、圧濾器、加圧濾過器、真空濾過器、回転真空濾過器およびヌーチェ濾過器から選択される濾過装置を用いる濾過工程または遠心分離工程により行われる、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程d)、e)またはf)の後に、
g)大気圧乾燥、低圧下または真空下で乾燥を行うことにより、階層的に秩序化された構造体中に残留する水または水分を除去する工程を更に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程g)の後に、
h)粉状生成物を得るために、乾燥した階層的に秩序化された構造体を粉砕または解砕する工程をさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
工程e)またはf)の後に、
i)衝撃乾燥ミルを用いて階層的に秩序化された構造体を粉砕しながら乾燥する工程
をさらに含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
無機リン酸塩のカチオンが、Al、Zn、Cd、Fe、Sn、Mn、Ni、Co、B、Sb、W、Mo、Zr、Cu、Ga、In、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、NH4、Li、Na、K、Rb、Csおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
無機カチオンモル/リン酸モル比が5:1から1:1.2の間で変化する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
フィロケイ酸塩が層状または針状形態を備える2:1フィロケイ酸塩型である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
2:1フィロケイ酸塩型が、二八面体スメクタイト、三八面体スメクタイト、セピオライト、アタパルジャイトまたはそれらの混合物である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
スメクタイトが、モンモリロナイト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイトまたはヘクトライト種あるいはそれらの混合物である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
セピオライトが、レオロジー的グレードセピオライトである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
アタパルジャイトが、レオロジー的グレードアタパルジャイトである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
工程b)における水性媒体を用いるフィロケイ酸塩分散液が、1重量%〜25重量%のフィロケイ酸塩濃度を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
工程b)におけるフィロケイ酸塩分散液のpHが3未満のpHにて酸で調整される請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
pHを調整するのに使用する酸が、有機酸または無機酸である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
酸が、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸およびそれらの混合物から選択される、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
工程b)におけるフィロケイ酸塩分散液が、高せん断にて、周速度が10m/sより速い条件下で分散される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
階層的に秩序化された構造体における無機リン酸塩/フィロケイ酸塩の重量比が、70重量部の無機リン酸塩と30重量部のフィロケイ酸塩から、30重量部の無機リン酸塩と70重量部のフィロケイ酸塩の範囲に変化する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
フィロケイ酸塩粒子が150μm未満の平均粒径を有する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
フィロケイ酸塩上に堆積し担持された無機リン酸塩粒子が、1μm未満の粒径を有する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
工程f)で用いる有機修飾剤が、第四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、ポリアミネート、ポリグリコール、シリコンオイル、ポリジメチルシロキサン、有機金属化合物、アミンおよびポリアミンならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項5〜24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
有機金属化合物が、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アルキルアミントリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン、ケチミノプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランおよびアミノプロピルトリメトキシシランを含む群から選択される有機シラン、
有機チタン酸塩、
有機ジルコン酸塩
およびそれらの任意の組み合わせ
を含む群から選択される、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
第四級アンモニウム塩が、トリメチルアルキルアンモニウム、ジメチルベンジルアルキルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジメチルアルキル2−エチルヘキシルアンモニウムおよびメチルアルキルビス−2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩(該アルキル鎖が少なくとも12の炭素原子を有し、天然由来または合成由来である)を含む群から選択され;
ホスホニウム塩は、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、トリブチル(テトラデシル)ホスホニウム、テトラブチルホスホニウムおよびテトラn−オクチルホスホニウム塩を含む群から選択される、請求項25に記載の製造方法。
【請求項28】
階層的に秩序化された構造体におけるフィロケイ酸塩上に堆積し担持された無機リン酸塩が、
リン酸アルミニウム、
一塩基性リン酸アルミニウム、
二塩基性リン酸アルミニウム、
それらの組み合わせ
を含む群から選択される、請求項1〜27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
階層的に秩序化された構造体のフィロケイ酸塩がセピオライトである、請求項27または28のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項30】
階層的に秩序化された構造体におけるアルミニウム/セピオライトリン酸塩の重量比が50:50である請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
アルミニウム/セピオライトリン酸塩の重量比が50:50である階層的に秩序化された構造体が第四級アンモニウム塩で表面修飾される、請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
第四級アンモニウム塩がジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウム塩である、請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウム塩の含有量が、アルミニウム/セピオライトリン酸塩の階層的に秩序化された構造体の重量に対して10重量%〜30重量%である、請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
階層的に秩序化された構造体が、物理的な乾式または湿式方法を用いて、他の有機材料粒子または無機材料粒子と混合される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項35】
フィロケイ酸塩の表面で均質に担持された少なくとも1種の無機カチオンのサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズリン酸塩粒子が階層的に秩序化された構造体。
【請求項36】
無機リン酸カチオンが、Al、Zn、Cd、Fe、Sn、Mn、Ni、Co、B、Sb、W、Mo、Zr、Cu、Ga、In、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、NH4、Li、Na、K、Rb、Csおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された構造体。
【請求項37】
フィロケイ酸塩が、層状または針状形態を備える2:1フィロケイ酸塩型であり、二八面体スメクタイト、三八面体スメクタイト、セピオライト、アタパルジャイトまたはそれらの混合物から選択される、請求項35に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された構造体。
【請求項38】
階層的に秩序化された構造体における無機リン酸塩およびフィロケイ酸塩の重量比が、70重量部の無機リン酸塩と30重量部のフィロケイ酸塩から、30重量部の無機リン酸塩と70重量部のフィロケイ酸塩の範囲で変化する、請求項35に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子の階層的に秩序化された構造体。
【請求項39】
フィロケイ酸塩粒子の平均粒径が、150μm未満であり、フィロケイ酸塩に堆積し担持された無機リン酸塩粒子の平均粒径が1μm未満である、請求項35に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された構造体。
【請求項40】
請求項35〜39のいずれか1項に記載の階層的に秩序化された構造体を含み、粒子が、有機修飾剤またはカップリング剤に結合した、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された修飾構造体。
【請求項41】
使用する有機修飾剤が、第四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、ポリアミネート、ポリグリコール、シリコンオイル、ポリジメチルシロキサン、有機金属化合物、アミンおよびポリアミンならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項40に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された修飾構造体。
【請求項42】
階層的に秩序化された構造体または階層的に秩序化された修飾構造体におけるフィロケイ酸塩上に堆積し担持された無機リン酸塩が、
リン酸アルミニウム、
一塩基性リン酸アルミニウム、
二塩基性リン酸アルミニウム、
それらの組み合わせ
を含む群から選択される、請求項35または40に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された構造体。
【請求項43】
階層的に秩序化された構造体または階層的に秩序化された修飾構造体のフィロケイ酸塩がセピオライトである、請求項35または40に記載のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された構造体。
【請求項44】
請求項35〜43のいずれか1項に記載されたサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子が階層的に秩序化された構造体を含有する組成物。
【請求項45】
熱可塑性物質、熱硬化性物質およびエラストマーから選択される1種以上のポリマーを含有することを特徴とする、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
2〜40重量%の階層的に秩序化された構造体または階層的に秩序化された修飾構造体を含有することを特徴とする、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
燃焼が生じた場合に、難燃性およびセラミック化特性を有する有機材料を提供するための、請求項35〜39のいずれか1項に記載の階層的に秩序化された構造体、または請求項40〜43のいずれか1項に記載の階層的に秩序化された修飾構造体、あるいは、それらを含有する組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィロケイ酸塩上の階層的に秩序化された無機リン酸塩構造体を得るための方法、およびポリマー用難燃添加剤としてのそれらの使用に関する。したがって、本発明は、ポリマー用難燃添加剤分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーのひとつの特性は、それらの相対的な燃焼性である。したがって、この現象を改善するための新たな試みが、現在、例えば、難燃剤を使用することによって探求されている。難燃剤は、このように母材の耐火性を改良し、燃焼時における毒性および/または腐食性ガスの生成を防止するか低減する。多くの場合、これらの配合物は、さらに、機械的またはレオロジー的改良、熱安定化、ガス透過性等を含めて、ポリマーの他の特性において顕著な改良をもたらす。
【0003】
極めて異なる性質の難燃剤が市場に存在する。さらに、作動および防火機構も相互に異なる。これらの機構は、とりわけ、材料の表面に不燃性のスス層を形成することを含み得る。ススまたは炭素質残留物のこの層は、燃焼ガスおよび溶融ポリマーが火炎に向かって通過することを防ぐと共に、熱エネルギー供給に対して材料を保護する重要な役割を果たしている。しかしながら、所望の要求を得るために、1つの特定の種類の難燃剤を用いることは、一般的に十分ではない。通常、耐火性を向上させる相乗的挙動を得るために異なる難燃剤が、添加される。最も一般的に使用される難燃剤は、ハロゲン化化合物である。
しかし、それらは、燃焼時にダイオキシンやフランなどの有害ガスおよび有毒ガスを生成するので[D. Santillo, P. Johnston., Environment International, September 2003, 第725頁-第734頁]、多くの国際指令および規制は、その使用を制限している(EN135501、CDP89/106/EEC、EN 45545)。常套の無害な難燃剤として、金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、窒素化合物、リン化合物、特殊粘土などを挙げることができる。難燃剤の性質および構造に加えて、別の重要な側面は、最終産物に影響を与える、マトリックス内における難燃剤の分散状態である。難燃剤の性質における注目すべき改良点は、それらがサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズである場合、すなわち、それらが1μmより小さく、好ましくは100nmより小さい場合に、難燃剤の反応性が増加することによって実証されている。しかし、分散状態に由来する問題も、細かく分割した材料を使用する場合、特に、それらがナノメートルサイズにナノ粒子化される場合に増加する。様々な方法が幅広く専門文献に記述されている一方で、ナノメートル難燃剤の組合せの相乗的な使用を効率的に可能にする方法は、先行技術において知られていない。
【0004】
リン化合物に関して、それらは、燃焼中にリン酸のポリマー形態を放出し、表面上にスス層の形成を誘発する、赤リン、ホスホネート、ホスフィネート、リン酸アンモニウムおよびリン酸アルミニウムを含む多くのリン難燃剤が存在する。しかし、それらは保護層の形成を促進するにもかかわらず、それらは望ましい堅さが不足し、亀裂を生じることが多いので、それらの機械的特性は完全に満足できるものではない。例えば、GB1485828特許は、難燃性を改良するために添加剤を添加した、難燃性を有する合成樹脂発泡体の製造方法を開示しているが、とりわけ、難燃性の特性は、前記目的を達成するための多種多様の物質のうち、リン化合物において見出されている。
【0005】
リン酸塩は、他の用途のうちでも、住宅建築において使用され、その重合能力のために長年にわたって知られている化合物の一種である。例えば、耐熱材料などの、セラミック分野におけるバインダーとしてそれらを使用することは既知であり、数多くの特許において長年に亘り記載されており、セラミックバインダー;顔料用添加剤(ES347.891特許、ES385.956特許、ES407.749特許、ES417.124特許、ES2.000.396特許、EU0.615.953特許);触媒支持体(ES2.001.762特許、ES2.009.775特許、ES2.091.973特許);シーリング材料(EU0.600.741特許);または腐食に対する保護コーティング(ES8.207.096特許)を含む。
【0006】
別の態様において、反応性の高いナノ粒子の形態で、例えば、金属カチオンからリン酸塩を得ることは、当該技術分野において既知である。それにもかかわらず、金属リン酸塩のナノ粒子の凝集状態に関する技術の限界が見出されている。様々な金属カチオンのナノ粒子を得ることは、種々の方法により可能であるが、ある場合においては十分に効果的でない凝集状態を低減するために、一般に、後処理が必要である。その結果、これらのナノ粒子化金属リン酸塩は、それらが異なる系、例えばポリマーマトリックス内に導入される場合、好適に分散しない。また、金属リン酸塩を結晶化するため、および圧縮材料を製造する形成過程に熱処理が必要である。
【0007】
別の態様において、ある難燃剤の主な欠点の一つは、それらを効果的に用いるためには、非常に高い濃度を必要とする事実である。例えば、金属水酸化物、主に、Al(OH)
3およびMg(OH)
2は、50〜75%以下の濃度、またはある場合においては更に高い濃度を必要とし(F. Laoutid, L. Bonnaud, J.M. Lopez-Cuesta, Ph. Dubois. Materials Science and Engineering, 2009年1月、 第100頁-第125頁)、このことは、幾つかの基材の特性、例えば、機械的性質などを損なう。例えば、GB2436395特許は、2種類の保護コーティングを有する導電性ワイヤを得る発明に関し、最初のコーティングは、ポリマーと、Al(OH)
3およびMg(OH)
2を含む難燃剤との混合物により生成した材料を含有する。該層において、耐熱性充填剤の濃度は、65〜95重量%である。
【0008】
近年、従来の難燃剤と組合せて、層状および疑似層状のフィロケイ酸塩種の特定のクレーを含有する配合物が、火炎に対するポリマーの性質を改良する添加物として、より頻繁に使用されている。フィロケイ酸塩が、生じる材料の熱伝導率と粘度を変性するので、これらのフィロケイ酸塩の使用は、燃焼を抑制するか妨げる。また、フィロケイ酸塩は、スス層の完全性を改良する。広く使用されている層状フィロケイ酸はモンモリロナイトである。この層状のクレーは、多くの場合、フィロケイ酸塩とポリマーマトリックスとの親水性表面の相溶性を促進する、有機的に修飾された形態で組み込まれるので、その薄層の剥離および分散がもたらされる。しかし、高温では改質剤の有機鎖が分解するので、改質剤の有機特性を付与する、この添加剤の使用は、高い処理温度を必要としない系に制限される。特許出願GB2400107は、層状のケイ酸塩(望ましくはモンモリロナイト)を加えることによって、ポリウレタンフォームから耐火性材料を製造する発明に関する。同様に、この特許は、三酸化アルミニウムおよびポリリン酸アンモニウムを含む他の難燃剤を添加する可能性を開示する。
【0009】
一般に充填剤として使用される別の種類の特別なクレーは、ポリマーの機械的、熱的およびガスバリヤー性を改良するために使用され得るセピオライトである。このクレーは、疑似層状ケイ酸塩の群に属し、それらの粒子の形状は層状でなく針状であり、マイクロファイバー形態であり、1〜2μmの平均長を有することを特徴とする。他の難燃剤と併用して相乗効果を有する、ポリマーにおける難燃添加剤としてのこのクレーの使用が、[T. Dhanushka Hapuarachchi, Ton Peijis. Composites Part A: Applied Science and Manufacturing, 2010年8月, 第954頁〜第963頁]に記載されている
【0010】
モンモリロナイトおよびセピオライトなどのクレーを比較的少量導入することは、特に、同様の難燃性をもたらすための、他の難燃剤(例えば、金属水酸化物など)の必要量を低減できる。しかし、両難燃剤の相乗効果およびフィロケイ酸塩がスス層の完全性を改良することの結果として、これらの系に対して改良がなされるが、この生成した保護層の特性は不十分なままである。主な問題は、前記バリアは、通常、低い機械的強度を有していることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】GB1485828特許
【特許文献2】ES347.891特許
【特許文献3】ES385.956特許
【特許文献4】ES407.749特許
【特許文献5】ES417.124特許
【特許文献6】ES2.000.396特許
【特許文献7】EU0.615.953特許
【特許文献8】ES2.001.762特許
【特許文献9】ES2.009.775特許
【特許文献10】ES2.091.973特許
【特許文献11】EU0.600.741特許
【特許文献12】ES8.207.096特許
【特許文献13】GB2436395特許
【特許文献14】特許出願GB2400107
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】D. Santillo, P. Johnston., Environment International, September 2003, 第725頁-第734頁
【非特許文献2】EN135501
【非特許文献3】CDP89/106/EEC
【非特許文献4】EN 45545
【非特許文献5】F. Laoutid, L. Bonnaud, J.M. Lopez-Cuesta, Ph. Dubois. Materials Science and Engineering, 2009年1月、 第100頁-第125頁
【非特許文献6】T. Dhanushka Hapuarachchi, Ton Peijis. Composites Part A: Applied Science and Manufacturing, 2010年8月, 第954頁〜第963頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、簡単で安価かつ実現可能な方法で、フィロケイ酸塩上に無機リン酸塩の階層的に秩序化された構造を有する材料の製造方法を提供する。この種の材料、特に、疑似層状のフィロケイ酸塩(例えば、セピオライトおよびアタパルジャイト)に基づくものは、ポリマーマトリックスに導入される場合、優れた形態および予期せぬ形態で燃焼挙動および温度特性を改良できる。好適には、ポリマー全体に亘る均質な分散体を得るため、および、それらの凝集を防止するために、これらの材料を、ポリマーマトリックスに導入し分散できる。さらに、燃焼の結果として温度が上昇する際に、常套の難燃剤から生じたスス層よりも、より安定し均質な保護バリアを形成する重合反応が起こる。従って、これらの階層的に秩序化された無機リン酸塩構造、例えば、フィロケイ酸塩上のリン酸アルミニウム、および、特にセピオライトおよびアタパルジャイト上のリン酸アルミニウムなどを使用することは、剛性の不足と、生成する炭化残渣の堅さの不足に関する既存の問題を解決する。前述のように、炭素は保護バリアとして機能し、材料内への伝熱、分解生成物の揮発、および燃焼を生じ維持するのに必要な酸素の拡散を制限する機能を有する。しかし、現在の技術では、層は、最適なパフォーマンスに必要な十分な安定性を欠いている。本発明の生成物は、燃焼期間に無機ポリマーを生成し、その網状構造はセラミック様(ceramifiable)特徴を有する保護層を生じ、それは剛性および緻密性における優れた機械的特性を示し、優れた難燃性を有するので、本発明の生成物はこの問題を解決する。
【0014】
具体的には、本発明は、フィロケイ酸塩上に階層的に秩序化された無機リン酸構造を得るための方法に関する。該構造は、フィロケイ酸塩上に、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの金属カチオンリン酸塩の配列を有する。これらの階層的に秩序化された構造は、本明細書に記載の化学的方法によって、粉末形態で得られる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、フィロケイ酸塩粒子を用いる金属カチオンリン酸塩のナノ粒子を得るための方法を提供する。得られた生成物は、金属カチオンリン酸塩のナノ粒子がフィロケイ酸塩粒子上に階層的に秩序化された材料である。階層的に秩序化されたとは、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの金属カチオンリン酸塩の最小粒子が、より大きなサイズ粒子フィロケイ酸塩により担持されることを意味する。得られる生成物は、少なくとも1種の金属カチオン溶液、少なくとも1種のフィロケイ酸塩懸濁液、および少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤を用いることを含む化学的方法を用いることにより得られる。本発明に係るフィロケイ酸塩の表面上に堆積した均質な無機リン酸塩粒子の階層的に秩序化された構造体を形成するための化学的方法は、
a)無機リン酸塩の前駆体化合物の酸性溶液を得る工程、
b)水性媒体を用いてフィロケイ酸塩粒子分散液を調製し、酸を添加することによりフィロケイ酸塩分散液を酸性化することにより、フィロケイ酸塩の酸性分散液得る工程、
c)工程a)で得られた酸性溶液と工程b)で得られた分散液とを混合することにより、均質な懸濁液を得る工程、および
d)フィロケイ酸塩粒子上に対応する無機リン酸塩が堆積するのに必要なpH値に到達するまで、撹拌しながら、工程c)で得られた混合物に塩基を添加し、フィロケイ酸塩表面に分散し担持された、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子の階層的に秩序化された構造体を生成する工程
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に従って得られる生成物の電界放射型走査電子顕微鏡写真
【
図2】本発明の実施例2に従って得られる生成物の透過型電子顕微鏡写真
【
図3】a)実施例1、2および3に記載されている生成物を製造するのに用いるセピオライト、b)本発明の実施例1において得られた生成物およびc)本発明の実施例2において得られた生成物のX線回折ダイアグラム。セピオライト構造に対応する主X線回折の標準曲線が示されている。
【
図4】本発明の実施例1で得られた生成物の熱重量および示唆熱分析(TG−DTA)
【
図5】500℃にて5分間熱処理した、本発明の以下の実施例2で得られた生成物の、電界放射型走査電子顕微鏡写真。
【
図6】900℃にて5分間熱処理した、本発明の以下の実施例2で得られた生成物の、電界放射型走査電子顕微鏡写真。
【
図7】それぞれ、600℃にて5分間熱処理した、および900℃にて5分間熱処理した、本発明の以下の実施例2で得られた生成物の灰における間隙サイズ分布
【
図8】900℃にて5分間熱処理した、以下の実施例3により得られた生成物の電界放射型走査電子顕微鏡写真
【
図9】実施例7において記載するように、本発明の以下の実施例2で得られた階層的に秩序化された構造体を、EVA中におけるナノ配合物として900℃にて5分間熱処理した後に得られた灰の電界放射型走査電子顕微鏡写真
【
図10】実施例8において記載するように、本発明の以下の実施例2で得られた階層的に秩序化された構造を、EVA中におけるナノ配合物として900℃にて5分間熱処理した後に得られた灰の電界放射型走査電子顕微鏡写真
【
図11】実施例8において記載するように、本発明の以下の実施例2で得られた生成物を、EVA中におけるナノ配合物として600℃および900℃にて5分間熱処理した後の灰における間隙サイズ分布
【発明を実施するための形態】
【0017】
工程a)において、無機リン酸塩の前駆体化合物は、対応するリン酸塩を生成するために相互に反応しなければならない、リン酸アニオンの前駆体化合物および無機カチオンの前駆体化合物に関する。金属カチオンの前駆体化合物は、とりわけ水酸化物、炭酸塩または酸化物の多様な化合物であることができる。
【0018】
無機リン酸カチオンは、Al、Zn、Cd、Fe、Sn、Mn、Ni、Co、B、Sb、 W、 Mo、Zr、Cu、Ga、In、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、NH
4OH、Li、Na、K、Rb、Csおよびそれらの混合物から群から選択され得る。
【0019】
無機リン酸塩の前駆体化合物の酸性溶液は、少なくともリン酸を含む酸性溶液中でカチオンの前駆体化合物を溶解することによって得ることができる。
【0020】
あるいは、工程a)における無機リン酸塩の前駆体化合物の酸性溶液は、
a1)無機リン酸塩の前駆体カチオン化合物の溶液または分散液を調製する工程、および
a2)少なくともリン酸を含有する酸性溶液を、工程a1)で調製した溶液または分散液に添加する工程、
を用いて得ることができる。
【0021】
工程d)に続いて、階層的に秩序化された構造体を、所望により、濾過および洗浄工程に付してもよい。
【0022】
有機修飾剤を添加することにより、得られた階層的に秩序化された構造体の表面を、所望により有機官能化できる。
【0023】
得られた階層的に秩序化された構造体を所望により乾燥してもよい。
【0024】
得られた階層的に秩序化された構造体を所望により粉砕してもよく、または粉末状に調整してもよい。
【0025】
生成物に求められる特性に応じて使用する合成方法は、難燃剤として適用し得るさまざまな粉末状物質を得ることに適している。したがって、たとえば、二塩基性リン酸アルミニウム(aluminum dibasic phosphate)を得るために、最終的なpHが10になるまで、工程c)で得られた溶液にアルカリ性溶液を添加することによりリン酸塩を沈殿させる。
【0026】
カチオン塩(例えば、硫酸アルミニウム)から出発し得る金属カチオン水溶液を得る工程において、特に、リン酸アルミニウム水溶液を得る場合、カチオン塩を撹拌することにより水中に溶解させることが望ましい。溶液は、機械的な撹拌、例えばパドル状撹拌器を用いることにより得られる。金属カチオンの塩の粒径を小さくすると、対応する溶解過程が促進する。塩の濃度は、それが完全に溶解できる範囲内である。
【0027】
本発明によると、所望により、工程a1)において、水溶解を得るための方法の一変形例は、水に不溶であるが、酸に可溶の金属カチオン化合物、例えば、特に水酸化アルミニウムの粒子を水性媒体中に分散させた分散液を利用する。粒子分散液を得るための固体前駆体は、水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩および金属カチオン酸化物またはそれらの混合物から、所望により選択され得る。本発明の方法において、前駆体は、その後リン酸を添加することにより、または、例えば、リン酸および他の酸(例えば塩酸溶液)を含有する酸混合物を用いる温浸により、本発明の工程a2)において溶解する。方法のこの変形例は、塩を使用する場合に生じる中間生成物の数を低減することに加え、より高価な塩の使用を低減するので有利であり、それ故に、続く洗浄工程を顕著に低減する利点を有する。方法のこの変形例において、金属カチオン化合物(例えば、水酸化物)の粒径は限定されないが、推奨される最大粒径は40μm、好ましくは30μmであり、その結果、それらの的確な溶解を確保できる。粒径は、金属カチオン粒子を予め粉砕することによりもたらされ、この目的のために通常の方法、例えば、ボールミル中で粉砕することにより行われる。
【0028】
工程a1)の間および金属カチオン前駆体化合物粒子の分散液を調製する場合、粒子の脱凝集および分散体懸濁工程を促進するために、分散助剤、例えばポリアクリル酸を更に使用できる。
【0029】
得られる金属リン酸塩組成物に適した比率で、工程a)の溶液または分散液にリン酸を添加することは、撹拌しながら、pH値が3未満となるまで行われる。添加するリン酸の割合は、金属カチオンモル/リン酸モル比が5:1から1:1.2以下の範囲で、存在する金属カチオンの割合に応じて変動する。固体粒子、例えば、金属カチオンの水酸化物の懸濁液を用いて開始する場合、溶液中に存在する金属カチオンに相当する割合に対するリン酸の割合の規定値が好ましく示される。方法のこの変形例は、リン酸の全てが反応において消費されることを確かにする点で著しく有利である。溶液中のリン酸アニオンの完全な消費は重要な利点となる。なぜならば、最終生成物を所望により洗浄工程から生じる残留水において、その存在を中和するのに必要な処理を最小限にできるからである。方法の工程a)において得られる溶液は、選択された量のリン酸と、必要に応じて、他の酸、例えば、塩酸を添加することにより選択したpH値で維持され得る。過剰な金属カチオンの前駆体化合物を含有する方法の工程a)において得られる溶液は、また、リン酸の割合が不十分である場合、リン酸と異なる酸を添加することにより望ましいpHを維持する。異なる試薬の添加は、激しい撹拌条件下、塩溶液を保ちながら行われ、または、適用できる場合、前駆体化合物の分散液を保持しながら行われる。
【0030】
フィロケイ酸塩粒子は、層状、疑似層状またはフィブリル構造を有するこれらの材料から選択される。フィロケイ酸塩は、1:1型、すなわち、シリカ四面体の層とカチオンの八面体層を含むものであってもよく、または、2:1型、すなわち、2層のシリカ四面体層と、1層のカチオンの中心八面体層を含むものであってもよい。1:1型フィロケイ酸塩の一例は、カオリンであり、2:1型フィロケイ酸塩の例には、八面体層のカチオンが主にマグネシウムである三八面体スメクタイトと、八面体層のカチオンが主にアルミニウムである二八面体スメクタイトとを含むスメクタイトが含まれる。二八面体スメクタイトの一例は、モンモリロナイトであり、三八面体スメクタイトの例としては、サポナイトおよびスチブンサイトが含まれる。これらのすべてのフィロケイ酸塩は、層状構造および形態を有する。層状フィロケイ酸塩に加えて、繊維状または針状構造および形態を有する疑似層状ケイ酸塩を使用できる。これらの疑似層状ケイ酸塩の例には、セピオライトおよびアタパルジャイトが含まれる。その形態は針状または微細繊維形態である、これらの疑似層状フィロケイ酸塩の構造は、アルミニウムおよび/またはマグネシウム八面体の中心層に酸素原子を介して結合し、二つの平行なシリカ鎖によって形成される。ケイ素四面体を含むこれらの鎖は、セピオライトの場合、各六単位、およびアタパルジャイトの場合、各四単位を反転させ、ゼオライトと呼ばれるチャネルを生成する八面体層中に不連続性を生じさせ、針状粒子のc軸の方向に配向し、セピオライトに関して3.7×10.6Åの寸法、およびアタパルジャイトに関して3.7×6.4Åの寸法を有する。この構造の結果、セピオライトおよびアタパルジャイトは、それらの外部表面だけでなく、ゼオライトチャネル内部においても、水(沸石水)および(分子の寸法および極性に基づき)他の化合物を吸着する。
【0031】
これらのクレーは、その細長い相に起因する高い比表面積を有し、また、小さな粒径を有する極めて多孔質なものである。理論モデル(C. J. Serna, G.E. Van Scoyoc, in: Mortland, M.M., Farmer, V.C. (eds), Proc. of the Int. Clay Conf., 1978. Elsevier, Amsterdam, 第197頁〜第206頁)を用いて算出した、これらのクレーの(内部および外部)比表面積の合計は、900m
2/gであり、セピオライトにおいて、外部面積は400m
2/gであり、内部面積は500m
2/gであり、アタパルジャイトにおいて外部面積は300m
2/gであり、内部面積は600m
2/gである。しかしながら、異なる化合物と吸着質に接近可能な、これらのクレーの表面積は、それらの大きさおよび極性に依存し、それは、クレー細孔およびチャネルにおける分子の浸透能を決定する。例えば、セピオライトの場合、N
2へのBET表面近接性は300m
2/gより高く、アタパルジャイトの場合、約150m
2/gである。
【0032】
これらのクレーは、その外表面に、シリカ四面体層の端部に由来するシラノール基(SiOH基)の高い密度を有する。これらのシラノール基は、このクレーの外表面を覆い、そこに高い親水性を授与して、それらに水分子を吸着する能力を与えるように配置される。これらのシラノール基は、活性吸着中心として作用し、別の分子と水素結合を形成することができる。
【0033】
本発明の好ましい態様において、工程b)で使用するフィロケイ酸塩は、スメクタイト、アタパルジャイト、セピオライト種またはそれらの混合物のクレーまたはフィロケイ酸塩から選択される。スメクタイトフィロケイ酸塩は、モンモリロナイト、サポナイト、および/またはスチブンサイトを含み得る。フィロケイ酸塩は、ベントナイト種のクレーであってもよいことに留意しなければならない。用語ベントナイトは、モンモリロナイトの同義語として誤って使用される場合があるが、用語ベントナイトは、特定のフィロケイ酸塩または鉱物種を指定するのではなく、通常はモンモリロナイト種であり得る、主にスメクタイトで構成される岩に適用される。
【0034】
クレー型粒子、例えば、繊維状形態のクレー(例えば、セピオライトなど)の水性懸濁液を調製することは、好ましくは高せん断下、機械的撹拌器を用い、1〜25重量%、好ましくは4重量%〜12重量%の濃度で水中にフィロケイ酸塩を分散することを含む方法を用いて行われる。フィロケイ酸塩の平均粒径は150μmより小さく、好ましくは44μmより小さい。本発明の特に有利な態様は、フィロケイ酸塩の粒径が5μmより小さい態様である。例えば、インパクトミルまたはボールミルを用いてクレー粒子サイズを減少させるためおよび研削するために通常用いる乾式または湿式粉砕法により得られるフィロケイ酸塩を使用できる。その構造を破壊することなくクレーの元素粒子を分離し、最大限にその外部表面を露出させることができる特別な湿式微粉化工程により得られたこれらのクレーの生成物を使用してもよい。これらの生成物の例には、EP0170299、EP045422およびEP0170299に記載された方法により得られる、レオロジーグレードのセピオライトおよびアタパルジャイト生成物が含まれる。その後、工程b)の分散液を得るために、分散液のpHが3より低くなるまで酸を添加してフィロケイ酸塩の分散液を酸性化する。あるいは、酸をフィロケイ酸塩の前に添加し、 その後、フィロケイ酸塩を、好ましくは、高剪断条件下で、
例えば、周速度が10m/sより速い条件下で、機械的撹拌器を使用して酸水溶液に分散させてもよい。添加される酸の量は、クレーまたはフィロケイ酸塩分散液のpHが3より低くなるのに十分な量でなければならない。
例えば、pHを調整するのに使用する酸は、有機酸または無機酸、好ましくは4未満のpKaを有する無機酸である。例えば、酸は、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸およびそれらの混合物から選択される。
【0035】
次いで、工程b)のフィロケイ酸塩粒子の分散液と工程a)の溶液とを混合し、均質な分散液を得るために、適当な攪拌系を使用し、工程c)において均質な分散液を得るために必要な時間を減少させるために、好ましくは、激しい撹拌を伴う。この工程c)において高い均質性をもたらすために、改良された方法は、高剪断法を用いる撹拌方法を適用することを含む 。
【0036】
続いて、工程d)において、所望のリン種の堆積に相当する値まで混合物のpHを上昇させるために塩基を添加する。塩基は、通常、水酸化ナトリウムであるが、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムなどの他の塩基も使用できる。
【0037】
望ましくないリン酸相の析出を生じ得る、部分的なpHの過度な増加を防ぐために、塩基を、好ましくは高剪断下にて、撹拌しながら前工程の溶液を維持するように制御された方法で添加する。この工程において、フィロケイ酸塩の表面にサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子の形態で無機リン酸相を堆積させて、水性分散液中で階層的に秩序化された構造体を生じさせる。
【0038】
所望による工程e)において、フィロケイ酸塩上に無機リン酸塩を堆積させることにより得られた階層的に秩序化された構造体を、固体/液体分離工程を用いることにより溶液から分離できる。固体/液体分離法の例には、例えば、加圧濾過器、真空域濾過器、回転真空濾過器、ヌーチェ濾過器(Nucha filter)から選択される濾過装置を用いる、遠心分離または濾過工程が含まれる。 得られた生成物は、堆積が完全ではない場合に溶解した試薬の存在を除去するために洗浄され得る。工程e)の濾過および洗浄工程は、必要に応じて繰り返すことができる。
【0039】
所望により、工程e)の結果として得られた材料は、要求される生成物に応じて完全にまたは部分的に所望により行うことができる後続の工程f)、g)およびh)により処理され得る。
【0040】
工程f)において、フィロケイ酸塩に対して階層的に秩序化された無機リン酸塩構造体と異なる有機マトリックスとの相溶性を向上させるために、得られた生成物表面の有機官能化は、有機修飾剤またはカップリング剤を添加することによって行われる。
この修飾または有機官能化により、ポリマーなどの有機マトリックス中での分散性を向上できる。有機修飾剤は、フィロケイ酸塩の親水性表面に対して親和性を有する分子部分と有機ポリマーに対する親和性を備える疎水性特性を有する分子部分を有する、両親媒性を示す有機化合物であってもよい。有機修飾剤のこの種の例としては、アルキルまたはアリール基を有する第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩が含まれる。それらはまた、階層的配列構造の活性部位上に、およびポリマーマトリックスと反応できるカップリング剤であってもよい。カップリング剤のこの種類の例には、オルガノシランが含まれる。
【0041】
有機修飾剤またはカップリング剤による処理は、洗浄および濾過工程e)の後であり乾燥の前に行ってもよく、 または、好ましくは、フィロケイ酸塩表面にサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子を堆積させるためにpHを調整した後の工程d)において行ってもよい。それらを乾燥前に添加する場合、修飾剤を良好に分散することを確実に行えるので、材料が凝集することを防ぐことができる。工程f)において生成物の有機修飾中に高剪断速度分散工程を使用することは、修飾剤またはカップリング剤の正確な分散を促進する。修飾処理は、必要に応じて、濾過および洗浄工程e)の後であって、乾燥させる前に、所望の割合で、湿潤した階層的に秩序化された構造体と修飾剤を強く撹拌することにより、行い得る。
【0042】
過剰量の水分を除去するために、工程e)および所望により工程f)で得られた生成物を、工程g)において乾燥処理に付してもよい。この工程は、標準的な乾燥方法に続いて、大気圧乾燥機または減圧乾燥機を用いて、300℃以下の温度にて行うことができるが、この例に限定されない。工程g)の収量を向上させる、固体/液体分離および乾燥工程の一つの代替例は、工程d)で得られた懸濁液を乾燥させる噴霧乾燥工程である。
【0043】
種々の応用要件に適合させるために、所望による工程h)または乾燥工程において、乾燥生成物を必要に応じて粉砕できる。例えば、生成物の粒径および見掛け密度が包装、輸送、取扱いおよび投与に適する生成物を得ることができる。最終生成物は所望されるように研削されるべきであり、 乾燥および研削工程g)およびh)の代わりに、研削チャンバ内に高温ガスを注入することにより同時乾燥を容易にする衝撃式製粉機を用いる、所望による工程i)において同時研削/乾燥システムを用いてもよい。最終粒径は、静的または動的選別装置を用いて選択できる。
【0044】
本発明の方法から得られる生成物は、低い凝集状態で、フィロケイ酸塩粒子に担持された、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの非晶質水和無機リン酸塩粒子の階層的に秩序化された構造体であることを特徴とする。これらのフィロケイ酸塩粒子が、不均一核形成過程に好都合な高い比表面積を有するので、フィロケイ酸塩粒子は、フィロケイ酸塩の表面に担持され、均質に分散したサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子を有するこれらの秩序構造体を得るために特に有利である。したがって、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子は、フィロケイ酸塩の表面上で低い凝集状態を示し、かつ、均質に分散している。
【0045】
工程d)の最終pHは、階層的に秩序化された構造でフィロケイ酸塩上において得られる無機リン酸塩種により決定され、また、リン酸塩のリン酸塩前駆体化合物の性質により決定される。得られた生成物は、非晶質生成物でありその構造内に水和水を有することを特徴とする。得られた生成物はまた、無機リン酸塩粒子が、1μm未満のサブマイクロメートルサイズであり、好ましくは100ナノメーター未満のナノメーターサイズであることを特徴とする。これらのナノ粒子は個々の粒子として、またはナノ粒子の凝集体あるいは両者の混合物として分散される。適当な場合、ナノ粒子凝集体は、400nmより小さく、好ましくは200nm未満である。無機リン酸塩粒子は、フィロケイ酸塩粒子に担持され、階層的な配列を形成する。サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズのリン酸塩粒子を得ることは既知な方法であるが、その高い凝集状態を特徴とする。本発明に記載された方法は、得られた無機リン酸塩粒子の高い分散性および低い凝集性をもたらすことを特徴とする。更なる利点は、無機リン酸塩粒子が均質に分散し、また、担持体として使用するフィロケイ酸塩粒子を構成するより大きな粒子上に無機リン酸塩粒子が階層的に担持されることである。
【0046】
本発明において行われる方法において、フィロケイ酸塩粒子はその形態を維持する。実施される方法において、その表面上に、フィロケイ酸塩粒子の再凝集を防ぐサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子が存在することにより、フィロケイ酸塩粒子の分散性は、乾燥後であっても保持される。さらに説明するように、この方法は、様々なマトリックス中での、階層的に秩序化された構造体に関する分散工程に有利に作用するので、さらなる利点をもたらす。
【0047】
所望による工程f)で得られた生成物は、低い凝集状態であり、フィロケイ酸塩粒子に担持され、表面が有機修飾剤またはカップリング剤で被覆され、階層的に秩序化された構造をもたらし、また、有機性のマトリックス、例えばポリマーマトリックスとの相性が良い、非晶質であり水和したサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズの無機リン酸塩粒子を階層的に秩序化された構造体であることを特徴とする。
【0048】
得られた生成物は、過剰量の金属カチオン前駆体化合物のから出発して製造され得るか、またはモル過剰量の予め調製した金属カチオン溶液から出発して製造され得る。その結果、金属カチオン化合物の過剰な存在に加えて、既に記載したような生成物が得られる。本発明において、リン酸に対して過剰量の金属塩が存在する場合、無機リン酸塩粒子のサイズの有意な減少が得られる。サイズの減少は高剪断撹拌工程と酸性溶液の使用の複合効果の結果としてもたらされる。この方法において中間化合物は生産されず、異なるカチオンは溶液から除去されるので、既に記載したように、過剰量の金属カチオンの前駆体化合物を使用することのさらなる利点は、洗浄工程を廃止できることである。
【0049】
好ましい態様において、リン酸アルミニウム塩(リン酸アルミニウム、一塩基性リン酸アルミニウムおよび二塩基性リン酸アルミニウム)のサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子は、工程a)、b)、c)、d)、e)、f)およびi)において実施される方法に従い、硫酸アルミニウム、リン酸および針状セピオライト粒子懸濁液の溶液を用いることにより得られる。リン酸アルミニウム前駆体粒子およびセピオライトの最終重量比は、70重量部のリン酸アルミニウムと30重量部のセピオライトから、30重量部のリン酸アルミニウムと70重量部のセピオライトの範囲であり得る。リン酸アルミニウムとセピオライトのこの階層構造の組成は、好ましくは、60重量部のリン酸アルミニウムと40重量部のセピオライトから、40重量部のリン酸アルミニウムと60重量部のセピオライトの範囲で構成される。特に有利な態様は、50重量部の一塩基性リン酸アルミニウムと50重量部のセピオライトを含む。
【0050】
針状セピオライト粒子上に分散し担持されたサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズのリン酸アルミニウム粒子を階層的に秩序化した構造体を含む乾燥粉末は、加圧成形、例えば一軸加圧成形により成形でき、あるいは、これらの例に限定されるものではないが、例えば、テレビン油などの担体を用いて、基体上のコーティングとして使用できる。
【0051】
300℃より高い熱処理は、リン酸アルミニウム中の水和水の損失を生じ、また、リン酸塩の重合を生じさせる。この工程は、エネルギーを吸収するので、吸熱工程であることを特徴とする。水和水の除去は、難燃性過程において有利である。重合過程は、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズのリン酸アルミニウムと針状セピオライト粒子により形成される階層構造の完全性を高める点で有利である。セピオライト表面上の水和リン酸アルミニウム粒子の縮合および重合は、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズのリン酸塩粒子で被覆したセピオライト粒子間の接触部位において、針状セピオライト粒子間の結合を形成する。異なるセピオライト針状粒子または繊維を被覆するリン酸塩粒子が反応し縮合する場合、ポリホスフェートが形成され、最大900℃の熱処理は、リン酸アルミニウムを用いて、セピオライトフィブリル上のナノメートルコーティングの形成を促進する。熱処理の間に形成される構造体は、リン酸アルミニウム粒子がセピオライト針状粒子を被覆する三次元構造体を形成するので、異なる被覆フィブリル間に結合を形成することを特徴とする。この三次元構造体は、被覆針状粒子間に結合が存在し、均質に分散して相互接続した多孔質を保持していることを特徴とする。前記材料の機械的強度は、前記結合が生成していない材料と比べて増加する。
【0052】
本発明の階層的に秩序化された構造体を、有機または無機材料のナノ粒子などの他の粒子と混合してもよい。混合物は、物理的方法、乾式法または湿式法を用いて行われ得る。材料を一体に形成する場合、成分間の反応により材料を生じた後に行う熱処理のために、混合物を調製する。その反応は、均質に分布した多孔性に起因して、加熱中に揮発性成分を除去できることを特徴とする。材料または成形体は、それを脱水処理に付した後、リン酸塩粒子の重合によりその完全性を維持し、最終的に、添加した成分と反応し得る。特定の態様において、添加される成分との反応は、液相を形成してもよく、また、反応による連続マトリックスを形成し得る。部分的な融合、例えば、リン酸アルミニウムと、フィロケイ酸塩由来のアルカリカチオンまたは液相を形成するために有利に添加したアルカリカチオンとの融合は、特定の温度で生じ得る。
【0053】
例えば、鉄およびアルミニウム塩(硫酸鉄および硫酸アルミニウムなど)から出発する、 対応する無機金属リン酸塩を形成するために、上記方法の変形例は、工程a)において、異なる無機金属カチオンを使用することを含む。フィロケイ酸塩ナノ粒子系で担持された、鉄リン酸塩とアルミニウムリン酸塩または、アルミニウム鉄リン酸塩溶液の固体リン酸塩溶液を得ることができる。記載された方法は、前の実施例に限定されない。
【0054】
工程f)を含む好ましい態様において得られる乾燥生成物は、該生成物を溶融混合により、熱可塑性樹脂中に直接導入できることを特徴とする。また、フィロケイ酸塩に無機リン酸塩上で階層的に秩序化された構造体の均質な分散体が得られるように、工程f)を含む工程で得られるこの粉状生成物を、熱硬化性化合物の重合工程の前に、熱硬化性ポリマーに導入してもよく、あるいは、対応するポリマーを得るためにその場で重合する前に、対応するモノマーの中に分散させてもよい。フィロケイ酸塩の粒子上に担持される際に、無機リン酸塩粒子のナノメーター特性およびそれらの低い凝集状態を有することは、重合前にモノマーに施す溶融混合または分散工程の間に、ポリマーマトリックス中のその均質な分散を促進する。
【0055】
この方法により得られる階層的に秩序化された構造体の一特徴は、ポリマーマトリックス(例えば、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ただし、この化合物に限定されない)に、3〜50重量の配意の割合で該構造体を導入した後、最終化合物はナノ化合物から構成され、フィロケイ酸塩上の階層的に秩序化された無機リン酸塩構造体がポリマーマトリックス中に分散することである。それ故に、分散した生成物を含有するポリマーナノ配合物は、難燃性特性を有し、反応は、無機金属ポリリン酸塩粒子と結合した、フィロケイ酸塩粒子、好ましくはセピオライトなどの疑似層状ケイ酸塩のフィブリルの階層的ナノメーター構造を、温度を加えることにより、生成が促進されるこの網状構造が骨格として機能し、それは、ナノ化合物の有機成分の段階的な燃焼を促すので、フィロケイ酸塩上の金属無機リン酸塩の階層的に秩序化された構造体を内部に導入していないナノ化合物と比べて、ナノ複合材料を完全燃焼させるためにより長い時間が必要となることを意味する。
【0056】
さらに、階層的に配列し、内部結合した、上記ナノメーター繊維の網状構造体が存在する結果、ポリマー焼成工程後に生じた灰生成物は、高い硬度を示す。本発明の方法により得られた生成物を導入することは、生成した灰を破壊するのに必要な力を増加させ、フィロケイ酸塩のみを含有するナノ複合材料と比べて、この力は少なくとも一桁増加する。実施例5の表1は、生成した灰を破壊するのに必要な力を示す。
【0057】
フィロケイ酸塩上で金属リン酸塩が階層的に秩序化された構造体の1特徴は、その金属ポリリン酸塩を生成することによる相互結合が、有機マトリックスの燃焼工程と同時に形成され、難燃剤として作用し、得られる灰に機械的性質を与えることである。今までは、ポリマーマトリックスの減少が生じていた灰に顕著な堅さをもたらすことができるので、この工程は、他の難燃剤に対して優れた特徴となる。例えば、セピオライトに担持されたリン酸アルミニウムをEVAマトリックス内に導入する好ましい態様の場合、広範囲の温度にて一貫した灰が得られる。したがって、この特徴は、高温溶融またはセラミック化相を導入することが必要な他の組成物に対する更なる利点となる。
【0058】
難燃性とセラミック化特性をもたらすために、その内部にフィロケイ酸塩上で金属リン酸塩が階層的に秩序化された構造体を導入し得る他のポリマーマトリックスには、熱可塑性ホモポリマーおよびコポリマーが含まれ、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリオキシメチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、熱可塑性ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニルおよびポリスチレン、ならびにそれらの任意の組合せを含む群から選択される。また、ポリマーマトリックスは、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ビスマレイミド、ポリイミドおよびアクリル樹脂およびそれらの任意の組合せを含む群から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する熱硬化性リマー化合物であってもよい。
【0059】
本発明の階層的に秩序化された構造体は同様に、この化合物に限定されないが、例えば水酸化アルミニウムのようなナノまたはマイクロメートル種の他の難燃性充填剤と相乗的であることを特徴とする。前記相乗効果は、改良された難燃応答性、特に得られた灰が、その機械的な破損に必要な強度を維持することに加えて、一体的に無傷のままであるので、燃焼試験後に取り除かなくてもよいことを特徴とする。
【0060】
また、本発明は、フィロケイ酸塩の表面に均質に堆積した少なくとも1種の無機カチオンのサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズのリン酸塩粒子が階層的に秩序化された構造体に関する。無機リン酸塩カチオンは、Al、Zn、Cd、Fe、Sn、Mn、Ni、Co、B、Sb、W、Mo、Zr、Cu、Ga、In、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、NH
4OH、Li、Na、K、Rb、Csおよびそれらの混合物から選択され得る。
【0061】
サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子の階層的に秩序化された構造体において、フィロケイ酸塩は、好ましくは層状または針状形態の2:1型フィロケイ酸塩であり、より好ましくは、2:1型であり、二八面体スメクタイト、三八面体スメクタイト、セピオライト、アタパルジャイトまたはそれらの混合物である。
【0062】
スメクタイトは、好ましくは、モンモリロナイト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイトまたはヘクトライト種あるいはそれらの混合物である。
【0063】
階層的に秩序化された構造体における無機リン酸塩とフィロケイ酸塩の重量比は、70重量部の無機リン酸塩と30重量部のフィロケイ酸塩から、30重量部の無機リン酸塩と70重量部のフィロケイ酸塩の範囲であり、好ましくは60重量部の無機リン酸塩と40重量部のフィロケイ酸塩から、40重量部の無機リン酸塩と60重量部のフィロケイ酸塩の範囲である。
【0064】
フィロケイ酸塩粒子は、150μm未満の平均粒径、好ましくは45μm未満の平均粒径、およびより好ましくは10μm未満の平均粒径を有する。
【0065】
フィロケイ酸塩上に堆積し担持された無機リン酸塩粒子の粒径は1μm未満、好ましくは100nm未満である。
【0066】
階層的に秩序化された構造体の粒子は、所望により有機修飾剤またはカップリング剤と結合して、修飾した階層的に秩序化された構造体を生じる。
【0067】
修飾した階層的に秩序化された構造体を得るのに使用する有機修飾剤は、第四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、ポリアミネート、ポリグリコール、シリコンオイル、ポリジメチルシロキサン、有機金属化合物、アミンおよびポリアミンならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。
【0068】
有機金属化合物は、以下のものを含む群から選択され得る:
有機シラン、好ましくは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アルキルアミントリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン、ケチミノプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランおよびアミノプロピルトリメトキシシラン、
有機チタン酸塩、
有機ジルコン酸塩
およびそれらの任意の組み合わせ。
【0069】
第四級アンモニウム塩は、トリメチルアルキルアンモニウム、ジメチルベンジルアルキルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジメチルアルキル2−エチルヘキシルアンモニウムおよびメチルアルキルビス−2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩(該アルキル鎖が少なくとも12の炭素原子を有し、獣脂または水素化獣脂
のような、
合成由来または天然由来成分
である)を含む群から選択され;
ホスホニウム塩は、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、トリブチル(テトラデシル)ホスホニウム、テトラブチルホスホニウムおよびテトラn−オクチルホスホニウム塩を含む群から選択される。
【0070】
階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体におけるフィロケイ酸塩上に堆積し担持された無機リン酸は、特定の態様に従い、以下のものを含む群から選択され得る:
リン酸アルミニウム、
一塩基性リン酸アルミニウム
二塩基性リン酸アルミニウム
およびそれらの任意の組み合わせ。
【0071】
特定の態様において、階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体におけるフィロケイ酸塩は、セピオライトである。
【0072】
更なる特定の態様において、階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体におけるアルミニウム/セピオライトのリン酸塩比は、重量比で50:50である。
【0073】
更なる特定の態様において、50:50の重量比でアルミニウム/セピオライトリン酸塩を含有する修飾した階層的に秩序化された構造体は、第四級アンモニウム塩で表面修飾される。
【0074】
更なる特定の態様において、修飾した階層的に秩序化された構造体は、第四級アンモニウム塩を含有し、該アンモニウム塩はジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウム塩である。ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウム塩の含有量は、アルミニウム/セピオライトリン酸塩の階層的に秩序化された構造体の重量に対して10重量%〜30重量%である。
【0075】
階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体は、乾式または湿式物理的方法を用いて、他の有機材料粒子または無機材料粒子と混合され得る。
【0076】
また、本発明は、本発明の明細書に記載した方法により得られるフィロケイ酸塩の表面に無機リン酸塩が均質に堆積し担持された、サブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子の階層的に秩序化された構造体、または、修飾した階層的に秩序化された構造体に関する。
【0077】
また、本発明は、本発明の明細書に記載したサブマイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ粒子の階層的に秩序化された構造体、または、修飾した階層的に秩序化された構造体を含む組成物に関する。
【0078】
該組成物は、1種以上のポリマーを含有し、それは、熱可塑性物質、熱硬化性物質またはエラストマーである。
【0079】
特定の態様において、組成物は、2重量%〜40重量%の階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体、好ましくは4重量%〜25重量%の階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体を含有する。
【0080】
また、本発明は、階層的に秩序化された構造体または修飾した階層的に秩序化された構造体の使用に関し、あるいは、それを含有する組成物の使用に関し、万が一燃焼が生じた場合には難燃性でセラミック化特性である有機材料、特に、ポリマーおよびエラストマー材料を提供する。
【実施例】
【0081】
実施例1.針状セピオライト粒子上で一塩基性水和リン酸アルミニウム粒子が階層的に秩序化された構造体
針状セピオライト粒子上で一塩基性水和リン酸アルミニウム粒子が階層的に秩序化された構造体を含む生成物を得た。このために、以下の工程が続く:
a)210gのAl(OH)
3を、1550gのH
3PO
4(51%純度)に溶解させた。その結果、Al/Pモル比は1:3となった。H
3PO
4中にAl(OH)
3が完全に溶解するまで、分散液の撹拌状態を続ける。
b)EP特許0170299に記載された方法に従い得た、1000gのレオロジー的セピオライト生成物を、9000gの蒸留H
2Oに分散させ、13cm径のコールズ型の歯付き円盤撹拌器を用い、1500rpmの速度(10.2m/sの周速に相当)にて、3分間撹拌した。10%濃度の事前分散液を得た。7重量%の最終セピオライト濃度を有する分散液を得るために、次いで、更に428gの蒸留H
2Oを添加し、2000rpmにて5分間撹拌した。次いで、最終的なpHが2以下になるように、HClをセピオライト分散液に添加し10分間撹拌する。
c)工程a)で得られたH
3PO
4中のAl(OH)
3溶液を工程b)で得られたセピオライト懸濁液に添加する。
d)次いで、NH
4OHの飽和溶液を、pH=5に達するまで、攪拌下、工程c)で得られた分散液にゆっくりと添加する。一塩基水和リン酸アルミニウムは、このpHにて、針状セピオライト粒子上に堆積し、これにより、セピオライト上で一塩基性水和リン酸アルミニウムが階層的に秩序化された構造体を形成する。
e)工程d)で得られた階層的に秩序化された構造体の分散液を真空ろ化し、1500mlの蒸留H
2Oで洗浄する。
f)約60%の湿度を有する、工程e)で得られたフィルターケーキを、60℃にてオーブンで乾燥し、最終的な粉末生成物を得るために、衝撃ミルで解砕した。
この生成物は、セピオライト/アルミニウムリン酸塩の重量比が50:50である、針状セピオライト粒子上で分散し担持された水和リン酸アルミニウムナノ粒子が階層的に秩序化された構造体から構成される。
【0082】
得られた生成物を、電子顕微鏡法(
図1)で観察した。セピオライトナノファイバー上に担持された一塩基性リン酸アルミニウム前駆体ナノ粒子を観察できる。また、得られた生成物の示唆熱および熱重量分析を
図4に示す。X線回折図(
図3b)は、結晶セピオライト構造に対応するピークのみを示し、一塩基性水和リン酸アルミニウム前駆ナノ粒子における結晶性の欠如を確認できる。
【0083】
実施例2. 有機修飾針状セピオライト粒子上で一塩基性水和リン酸アルミニウムナノ粒子が階層的に秩序化された構造体
20重量%の第四級アンモニウム塩を、実施例1に記載の方法の工程a)およびe)に従い得られた湿潤ろ過ケーキに、変性剤として添加した。 使用される第四級アンモニウム塩は、ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウムクロリドであり、重量%は、針状セピオライト粒子上の水和リン酸アルミニウム粒子の階層的に秩序化された構造体の乾燥重量に基づく。混合物を、10分間、プラウ形状翼を用いるレーディゲ型集中撹拌機を用いて調製した。次いで、得られた生成物を60℃にてオーブン中で乾燥させ、実験室用衝撃ミルで解砕した。ポリマーマトリックス中のそれらの分散を容易にするために、このようにして、有機修飾したセピオライト上で一塩基性水和リン酸アルミニウムが階層的に秩序化された構造体を得た。
得られた生成物を、電子顕微鏡法で観察したところ(
図2)、セピオライトナノファイバー上に担持された一塩基性リン酸アルミニウム前駆体ナノ粒子を観察できる。X線回折図(
図3c)は、セピオライト結晶構造に対応するピークを示し、また、一塩基性水和リン酸アルミニウム前駆ナノ粒子における結晶性の欠如を確認できる。
【0084】
実施例3. 堆積剤としてNaOHを用いて得られた針状セピオライト粒子上で一塩基性水和リン酸アルミニウムナノ粒子が階層的に秩序化された構造体
生成物を、実施例1に記載した方法に従い得たが、違いは、pHを5に調整するために、工程d)においてNH
4OHを用いず、25%NaOHを沈殿剤として用いたことである。最終生成物中のNa含有量が3%になるまで、得られた生成物を工程e)で濾過し洗浄する。このようにして、セピオライト/アルミニウムリン酸塩の重量比が50:50であり、3%Naを含有する、修飾セピオライト上で一塩基性水和リン酸アルミニウム粒子が階層的に秩序化された構造体を得る。
【0085】
この生成物を、一軸プレスを用いて成形し、900℃に加熱する。伴って生じた灰を、電子顕微鏡で観察した(
図8)。灰は、連続したガラス質マトリックス中に埋め込まれた針状セピオライト粒子の形態を維持していることを特徴とすることが観察できる。
【0086】
実施例4. 針状セピオライト粒子上で二塩基性リン酸鉄ナノ粒子が階層的に秩序化された構造体
針状セピオライト粒子上で二塩基性リン酸鉄が階層的に秩序化された構造体を得る。このために、以下の工程が続く:
a)430.8gのFe
2O
3を、1550gのH
3PO
4(51%純度)に溶解させ、その結果、Fe/Pの最終モル比は2:3となる。H
3PO
4中にFe
2O
3が完全に溶解するまで、分散液の撹拌を続ける。
b)EP特許0170299に記載された方法に従い得た、1000gのレオロジー的セピオライト生成物を、9000gの蒸留H
2Oに分散させ、13cm径のコールズ型の歯付き円盤撹拌器を用い、1500rpmの速度(10.2m/sの周速に相当)にて、3分間撹拌する。10%濃度の事前分散液を得た。7重量%の最終セピオライト濃度を有する分散液を得るために、次いで、更なる428gの蒸留H
2Oを添加し、2000rpmにて5分間撹拌する。次いで、最終的なpHが2以下になるように、HClをセピオライト分散液に添加し10分間撹拌する。
c)工程a)で得られたH
3PO
4中のFe
2O
3溶液を工程b)で得られたセピオライト懸濁液に添加する。
d)次いで、NH
4OHの飽和溶液を、pH=10に達するまで、攪拌下、工程c)で得られた分散液に、できるだけ早く添加する。このpHにて、二塩基性リン酸鉄を、針状セピオライト粒子上に堆積させ、これにより、セピオライト上で二塩基性リン酸鉄が階層的に秩序化された構造体を形成する。
e)工程d)で得られた階層的に秩序化された構造体の分散液を真空ろ化し、1500mlの蒸留H
2Oで洗浄する。
f)約60%の湿度を有する、工程e)で得られた濾過ケーキを、60℃にてオーブンで乾燥し、最終的な粉末生成物を得るために、衝撃ミルで解砕した。この生成物は、針状セピオライト粒子上で分散し担持された二塩基性リン酸鉄ナノ粒子が階層的に秩序化された構造体から構成される。
【0087】
実施例5. セピオライト上で一塩基性リン酸アルミニウムのナノ粒子が階層的に秩序化された構造体の熱挙動
熱処理後に得られた材料の強度を測定する目的で、実施例2で得られた生成物を圧縮し、500℃および900℃で5分間処理した。続いて、灰の破断強度を測定し、灰の電子顕微鏡観察を行った。実施例2の階層的に秩序化された構造体を得るための出発物質として使用セピオライト生成物をコントロールとして使用した。結果(表1)は、階層的に秩序化された構造体を用いて得られた灰が、出発セピオライトよりも大きな耐性を有することを示している。
【0088】
【表1】
【0089】
生じた灰の微細構造を
図5および
図6に示す。500℃で処理した生成物は、縮合リン酸アルミニウムナノ粒子で被覆された、針状粒子またはセピオライト繊維上の一貫した灰を示し、それ故に、階層的に秩序化された構造体が繊維と共に結合し、機械的強度を増加させる階層的に秩序化された構造を形成することを特徴とする。900℃で処理した生成物は、クリストバライト構造を有し、結晶リン酸アルミニウムナノ粒子で被覆された針状粒子またはセピオライト繊維に一貫した灰が存在し、階層的に秩序化された構造体が繊維と共に結合し、機械的強度を増加させる階層的に秩序化された構造を形成することを特徴とする。灰の細孔サイズの分布が示されている
図7から分かるように、それらは、熱処理後に、開孔を有し、相互接続したサブミクロンサイズの多孔性を有することを特徴とする。
【0090】
実施例6.
EVAにおける難燃剤およびセラミック化添加剤としての、セピオライト上で一塩基性リン酸アルミニウムナノ粒子が階層的に秩序化された構造体
EVAに階層的に秩序化された構造のナノ化合物を得るために、実施例2で得られた生成物を、溶融混合により、12重量%〜40重量%の濃度で、47重量%の水酸化アルミニウムと共にまたはそれを併用することなく、EVAポリマーに添加した。熱量測定コーン中でポリマーを燃焼した後、生成した灰の破断強度を測定した。
結果(表2)は、実施例2で得られた階層的に秩序化された構造体を添加することは、非常に有意に灰の機械的強度を増加させることを示している。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例7. EVAにおけるセピオライト上で一塩基性リン酸アルミニウムナノ粒子が階層的に秩序化された構造体のナノ化合物灰の微細構造
次のようにして調製したナノ化合物を得るために、実施例2で得られた生成物を、溶融混合によりEVAポリマーに導入した:
12重量%の実施例2で得られた生成物、43重量%のEVAおよび45重量%の水酸化アルミニウムマイクロ粒子。
得られたナノ化合物を5分間900℃にて熱処理し、生成した灰を電子顕微鏡で観察した(
図9)。これらの灰は、リン酸アルミニウムナノ粒子で被覆された針状セピオライト粒子を含有することにより、階層的に秩序化された構造体を形成し、三次元網目が形成され、それは、繊維を相互に結合し、出発時の水酸化アルミニウム粒子から導かれるガンマアルミニウム粒子を含有することを特徴とする。
【0093】
実施例8.EVAにおけるセピオライト上で一塩基性リン酸アルミニウムナノ粒子が階層的に秩序化された構造体のナノ化合物灰の微細構造
次のようにして調製したナノ化合物を得るために、実施例2で得られた生成物を、溶融混合によりEVAポリマーに導入した:
40重量%の実施例2で得られた生成物、60重量%のEVA。得られたナノ化合物を5分間900℃にて熱処理し、生成した灰を電子顕微鏡で観察した(
図10)。これらの灰は、相互接続した多孔性のない連続マトリックスを有するので、セラミック化され得る材料を生成することを特徴とする。
600℃および900℃での処理後の灰の細孔径分布に関する測定(
図11)によると、これらの灰は、600℃にて開口し、相互接続したナノメートル多孔性を有し、それは900℃にて閉じ、また、セラミック化材料特性をそれらにもたらすことを特徴とすることが分かる。